説明

スイッチ装置

【課題】 2段階の押圧操作によって2種類の制御信号が得られる小型薄型で安価なスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】 スイッチ装置1は、底壁2a上に固定接点部材群を配設したケース2と、固定接点部材3a,4aを支点として揺動可能に配置された導体板7,8と、導体板7,8上に昇降可能かつ回動可能に配置された駆動体9,10と、駆動体9,10を底壁2aへ向けて弾性付勢する板ばね11と、ケース2の上部開口を蓋閉するカバー12と、操作つまみ20の突起22,23に当接して押圧操作力が付与される揺動可能なアクチュエータ13とを備えている。アクチュエータ13の両端の押圧部13b,13cは、ケース2の外部に配置されている駆動体9,10の被押圧部9d,10dに係着させてあり、操作つまみ20を深く押し込むとアクチュエータ13は一方向へ回転した後に逆方向へ回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動操作型の操作つまみ(操作ノブ)によって操作される小型薄型化に好適なスイッチ装置に係り、特に、連続的な2段階の押圧操作によって2種類の制御信号を出力することができ、例えば車載用パワーウィンドウ装置の操作スイッチなどに適用されるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチ装置の従来例としては、スイッチユニットとプッシュスイッチとを組み合わせた構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記スイッチユニットは、底壁上に二組の固定接点部材群を露出させたケースの内部に、各固定接点部材群に対応する一対の可動接点部材として動作する一対の揺動可能な導体板と、ケースの側壁の外方へ突出する被押圧部を有して各導体板上に搭載された回動可能な一対の駆動体と、これら一対の駆動体の各軸部を前記底壁へ向けて常時付勢する板ばねとを配設して概略構成されており、ケースに隣接して一対のプッシュスイッチが設置されている。一対の駆動体の各被押圧部はケースの相対向する側壁の外側に位置し、駆動体の回動に伴って昇降するようになっている。そして、各被押圧部上に操作つまみの一対の押圧突起を配置させると共に、各被押圧部の下方にそれぞれプッシュスイッチの操作部を配置させている。
【0003】
かかる従来のスイッチ装置において、操作つまみの一方の押圧突起を介して一方の駆動体の被押圧部に押圧操作力を付与すると、該駆動体が一定量回転した時点で対応する導体板が該駆動体に回転駆動されるため、該導体板が所定の固定接点部材に当接したことによる検出信号が出力されるようになっている。また、この状態で該駆動体の被押圧部にさらに押圧操作力を付与すると、対応する導体板の姿勢は変化しないが該駆動体のさらなる回転に伴って被押圧部が下降するため、該被押圧部が下方に位置するプッシュスイッチの操作部を押し込んだことによる検出信号が出力されるようになっている。なお、操作つまみの他方の押圧突起を介して他方の駆動体の被押圧部に押圧操作力を付与する場合も同様であって、該駆動体が一定量回転した時点で、対応する導体板が所定の固定接点部材に当接したことによる検出信号が出力され、この状態で被押圧部にさらに押圧操作力を付与すると、該被押圧部が下方に位置するプッシュスイッチの操作部を押し込んだことによる検出信号が出力されるようになっている。
【0004】
すなわち、かかる従来のスイッチ装置は、操作つまみを浅く押し込むことによってスイッチユニットから検出信号を出力させ、操作つまみを深く押し込むことによってプッシュスイッチから別の検出信号を出力させることができる。したがって、このスイッチ装置を車載用パワーウィンドウ装置の操作スイッチに適用する場合、ウィンドウを開方向または閉方向へ動作させる駆動信号としてスイッチユニットからの検出信号を利用し、かつウィンドウを全開または全閉させる駆動信号としてプッシュスイッチからの検出信号を利用することができる。また、かかる従来のスイッチ装置は、復帰ばねである板ばねがケース内の狭いスペースに組み込めると共に、プッシュスイッチの操作部を押し込む専用の部材を付設する必要がないため、構造の簡素化や小型薄型化が比較的図りやすい。
【特許文献1】特開2003−331692号公報(第4−7頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のスイッチ装置では、連続的な2段階の押圧操作によって2種類の制御信号が得られるようにするため、ケース内で導体板を固定接点部材に接離させることによって検出信号を出力するスイッチユニットと、このスイッチユニットに隣接して設けられ別の検出信号を出力するプッシュスイッチとを組み合わせた構成を採用しているが、スイッチユニットに加えてプッシュスイッチが別途必要であることから装置全体を安価に製造することが困難であるという問題があった。また、かかる従来のスイッチ装置では、スイッチユニットの近傍にプッシュスイッチを設置するためのスペースを確保しなければならないので、その分、占有面積が拡大して小型化が制約されてしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、2段階の押圧操作によって2種類の制御信号が得られる小型薄型で安価なスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明のスイッチ装置では、少なくとも一対の対向する側壁を底壁から立設させてなるケースと、該ケースに固定されて前記底壁上に露出する二組の固定接点部材群と、前記底壁上に揺動可能に配置されて前記各固定接点部材群に対応する一対の可動接点部材として動作する一対の導体板と、軸部を中心に回動可能であって被押圧部を前記側壁の外方へ突出させた状態で前記各導体板上に搭載された一対の駆動体と、これら一対の駆動体の前記軸部を前記底壁へ向けて常時付勢するばね部材と、前記一対の駆動体の前記被押圧部を互いに独立に押圧駆動可能な一対の押圧部および該押圧部どうしを橋絡する橋絡部を有して該橋絡部に押圧操作力が付与される揺動可能なアクチュエータとを備え、前記橋絡部の中心から一方の前記被押圧部側へずらした部位に押圧操作力が付与されるようになし、その押圧操作時に前記アクチュエータが一方向へ回転するのに伴い、前記一方の被押圧部を有する前記駆動体が回転して、該駆動体を搭載している前記導体板が回転駆動されて対応する前記固定接点部材群から第1の検出信号が出力されると共に、この状態で前記橋絡部にさらに押圧操作力を付与することにより、前記一方の被押圧部との当接箇所を支点として前記アクチュエータが逆方向へ回転するのに伴い、他方の前記被押圧部を有する前記駆動体が回転して、該駆動体を搭載している前記導体板が回転駆動されて対応する前記固定接点部材群から第2の検出信号が出力されるように構成した。
【0008】
このように構成されたスイッチ装置では、操作つまみを浅く押し込んでアクチュエータの橋絡部に押圧操作力が付与されると、該アクチュエータが回転して一方の駆動体の被押圧部が一方の押圧部によって押し下げられるため、該駆動体を介して一方の導体板が回転駆動されて第1の検出信号を出力させることができるが、該被押圧部が最下点まで押し下げられた状態で操作つまみをさらに押し込むと、アクチュエータは該被押圧部との当接箇所を支点として逆方向へ回転していくため、他方の駆動体の被押圧部が他方の押圧部によって押し下げられていく。したがって、操作つまみを深く押し込むことにより、他方の駆動体を介して他方の導体板を回転駆動させて第2の検出信号を出力させることができる。つまり、このスイッチ装置は、連続的な2段階の押圧操作によって2種類の制御信号を得ることができる。そして、プッシュスイッチが不要な構成であることから、このスイッチ装置は部品コストが大幅に削減できると共に、プッシュスイッチの設置スペースが不要となるため小型化が促進できる。
【0009】
上記の構成において、前記橋絡部の中心から他方の前記被押圧部側へずらした部位にも押圧操作力が付与されるようになし、その押圧操作時に前記アクチュエータを前記逆方向へ回転させることにより前記第2の検出信号が出力されると共に、この状態で前記橋絡部にさらに押圧操作力を付与して前記アクチュエータを前記一方向へ回転させることにより前記第1の検出信号が出力されるようにしておくことが好ましい。これにより、例えばこのスイッチ装置を車載用パワーウィンドウ装置の操作スイッチに適用する場合、第2の検出信号が出力されていないときに第1の検出信号をウィンドウを開方向へ動作させる駆動信号として利用できると共に、第1の検出信号が出力されているときに第2の検出信号をウィンドウを全開させる駆動信号として利用でき、さらに、第1の検出信号が出力されていないときに第2の検出信号をウィンドウを閉方向へ動作させる駆動信号として利用できると共に、第2の検出信号が出力されているときに第1の検出信号をウィンドウを全閉させる駆動信号として利用できる。
【0010】
また、上記の構成において、前記アクチュエータは、前記橋絡部の両端の屈曲部分からそれぞれ前記押圧部が舌状に延設されており、各押圧部の先端部分がそれぞれ相異なる前記駆動体に係着されていることが好ましい。これにより、押圧操作力が付与されてアクチュエータが回転する際に、該アクチュエータの押圧部が弾性変形して駆動体の回転に追従しやすくなるため、アクチュエータや駆動体を円滑に動作させることができてスイッチ装置の操作性が向上する。
【0011】
また、上記の構成において、前記アクチュエータを金属板にて形成すれば、板厚が薄くて機械的強度が高く加工も容易なアクチュエータが得られるため好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、前記固定接点部材群が、対応する前記導体板と常時接触する第1の固定接点部材と、前記回転駆動時に該導体板と当接する第2の固定接点部材とを含み、前記第1の固定接点部材が該導体板の揺動支点となっていれば、接点切換えの確実性が高まるため好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスイッチ装置は、操作つまみを押し込んでアクチュエータの橋絡部に押圧操作力が付与されると、該アクチュエータが回転して一方の駆動体の被押圧部が一方の押圧部によって押し下げられるため、一方の導体板が回転駆動されて第1の検出信号を出力させることができ、この状態で操作つまみをさらに押し込むと、アクチュエータが逆方向へ回転して他方の駆動体の被押圧部が他方の押圧部によって押し下げられるため、他方の導体板が回転駆動されて第2の検出信号を出力させることができる。それゆえ、プッシュスイッチを別途設ける必要がなくなり、連続的な2段階の押圧操作によって2種類の制御信号が得られる小型薄型で安価なスイッチ装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るスイッチ装置の分解斜視図、図2は該スイッチ装置の非操作時の断面図、図3は該スイッチ装置を浅く押圧操作した状態を示す断面図、図4は該スイッチ装置を深く押圧操作した状態を示す断面図、図5は該スイッチ装置に備えられるケースの平面図、図6は該ケースに導体板を組み込んだ状態を示す平面図、図7は該導体板上に駆動体を組み込んだ状態を示す平面図、図8は該駆動体上に板ばねを組み込んだ状態を示す平面図、図9は該スイッチ装置のアクチュエータを除いたユニット品の外観図、図10は該アクチュエータの平面図、図11は該アクチュエータの正面図、図12は該アクチュエータの側面図である。
【0015】
本実施形態例に係るスイッチ装置1は、操作つまみ20によって押圧操作される双極・双投型のスイッチ装置である。このスイッチ装置1は、図1〜図8に示すように、底壁2a上に側壁2b,2cおよび仕切り壁2dを立設して一対の接点収納空間S1,S2を形成しているケース2と、インサート成形加工によってケース2の底壁2a上に配設された二組の固定接点部材群3a〜3cおよび4a〜4cと、各固定接点部材群3a〜3cから延設されてケース2の下方へ突出する3本の外部接続端子5と、各固定接点部材群4a〜4cから延設されてケース2の下方へ突出する3本の外部接続端子6と、各接点収納空間S1,S2内で底壁2a上に揺動可能に配置された一対の導体板(可動接点部材)7,8と、昇降動作が許容された状態で各導体板7,8上に配置されて軸部9a,10aを中心に回動可能な一対の駆動体9,10と、これら駆動体9,10の各軸部9a,10aを底壁2aへ向けて常時付勢している板ばね11と、ケース2に被着されてその上部開口2eを蓋閉している板金製のカバー12と、操作つまみ20とカバー12およびケース2との間に介設されて両端部が駆動体9,10に係着されている板金製のアクチュエータ13とによって主に構成されている。
【0016】
このスイッチ装置1は、操作つまみ20と組み合わせることによって車載用パワーウィンドウ装置の操作スイッチを構成しており、操作つまみ20は支軸21を介して図示せぬハウジングに揺動可能に支持されている。また、操作つまみ20の底面には一対の突起部22,23が下向きに突設されており、図2に示すように非操作時には両突起部22,23がアクチュエータ13の水平部分(橋絡部13a)の両端近傍に当接している。
【0017】
ケース2には、互いに平行な二つの側壁2cおよび四つの仕切り壁2dと、長辺側の側壁2cに対し直角な短辺側の二つの側壁2bとが、それぞれ底壁2aから立設されている。二つの側壁2cと四つの仕切り壁2dの各上端部(上部開口2e側の端部)には、各駆動体9,10の軸部9a,10aが昇降可能に挿入される切欠き状の凹部2f,2gが形成されている。また、短辺側の二つの側壁2bには、それぞれの中央部に上端が開放されている切欠き状のスリット2hが形成されている。これらのスリット2hには、駆動体9,10の腕部9c,10cが昇降可能に挿入される。さらに、二つの側壁2cと二つの仕切り壁2dの対向面にはそれぞれ突部2iが形成されており、これら突部2iは上部が円弧状に形成されている。
【0018】
固定接点部材群3a〜3cは、ケース2の接点収納空間S1の内底部に一列に並べて配設されており、揺動支点として導体板7に常時接触する第1の固定接点部材3aと、操作つまみ20の操作に伴って導体板7が接離する第2および第3の固定接点部材3b,3cとからなる。同様に、固定接点部材群4a〜4cは、ケース2の接点収納空間S2の内底部に一列に並べて配設されており、揺動支点として導体板8に常時接触する第1の固定接点部材4aと、操作つまみ20の操作に伴って導体板8が接離する第2および第3の固定接点部材4b,4cとからなる。なお、図5に示すように、これら二組の固定接点部材群3a〜3cと固定接点部材群4a〜4cは、ケース2内に平面視点対称に配設されている。また、固定接点部材群3a〜3cから導出された3本の外部接続端子5と、固定接点部材群4a〜4cから導出された3本の外部接続端子6は、図示せぬ外部回路に接続されている。
【0019】
導体板7は、操作つまみ20が取り付けられる前の無負荷状態で駆動体9を支える初期受け部7aと、この初期受け部7aの片側に形成された逆V字形の傾斜面からなる立上り部7bと、初期受け部7aの他側へ延出している平坦部7cと、立上り部7bから初期受け部7a側とは逆側へ延出している可動接点部7dとを有する金属板であり、可動接点部7dが固定接点部材3bと接離可能で、平坦部7cが固定接点部材3cと接離可能である。さらに、導体板7の短手方向両側部には初期受け部7aを挟んで4つの突起7eが形成されており、これら突起7eをケース2の突部2iに係合させることにより、揺動時に導体板7が長手方向へ位置ずれしないように規制している。導体板8は導体板7と同形状であり、初期受け部8aの両側に立上り部8bと平坦部8cを有し、長手方向一端側に延設された可動接点部8dが固定接点部材4bと接離可能で、長手方向他端側の平坦部8cが固定接点部材4cと接離可能である。この導体板8の短手方向両側部にも初期受け部8aを挟んで4つの突起8eが形成されており、これら突起8eをケース2の突部2iに係合させることにより、揺動時に導体板8が長手方向へ位置ずれしないように規制している。図6に示すように、これら一対の導体板7,8はケース2内に平面視点対称に配置されている。
【0020】
駆動体9は、回動中心となる軸部9aと、軸部9aから下方へ延びて導体板7上に配置される摺動作動部9bと、軸部9aから側方へ延びてケース2の一方の側壁2bのスリット2h内に挿入される腕部9cと、この腕部9cの先端に形成されて側壁2bの外方に配置される被押圧部9dとを有し、腕部9cと被押圧部9dとが連続する部分に形成されている段部にアクチュエータ13の一方の押圧部13bが係着される。同様に、駆動体10は、回動中心となる軸部10aと、軸部10aから下方へ延びて導体板8上に配置される摺動作動部10bと、軸部10aから側方へ延びてケース2の他方の側壁2bのスリット2h内に挿入される腕部10cと、この腕部10cの先端に形成されて側壁2bの外方に配置される被押圧部10dとを有し、腕部10cと被押圧部10dとが連続する部分に形成されている段部にアクチュエータ13の他方の押圧部13cが係着される。図7に示すように、これらの駆動体9,10はケース2内に平面視点対称に組み込まれて、互いの腕部9c,10cが一直線状に配置されている。すなわち、駆動体9,10をケース2に組み付ける際には、ケース2内で接点収納空間S1,S2の間に存する幅狭空間に腕部9c,10cを配置させて、該幅狭空間を介して対向する一対のスリット2hの外方へそれぞれ被押圧部9d,10dを配置させると共に、対をなす一方の凹部2f,2g内に駆動体9の軸部9aを挿入し、かつ対をなす他方の凹部2f,2g内に駆動体10の軸部10aを挿入する。
【0021】
板ばね部材11は、駆動体9に常時弾接する付勢部11aと、駆動体10に常時弾接する付勢部11bと、両付勢部11a,11bを連結する連結部11cとから構成されており、駆動体9,10とカバー12との間に圧縮状態で介設されている。付勢部11aは駆動体9の軸部9aをケース2の底壁2aへ向けて常時付勢しているので、その付勢力によって摺動作動部9bが導体板7に弾接している。そして、軸部9aを中心に駆動体9を回転させると、摺動作動部9bが導体板7上を摺動するため、導体板7の揺動支点である第1の固定接点部材3a上を摺動作動部9bが通過すると該導体板7が回転するようになっている。同様に、付勢部11bは駆動体10の軸部10aを底壁2aへ向けて常時付勢しているので、その付勢力によって駆動体10の摺動作動部10bが導体板8に弾接している。そして、軸部10aを中心に駆動体10を回転させると、摺動作動部10bが導体板8上を摺動するため、導体板8の揺動支点である第1の固定接点部材4a上を摺動作動部10bが通過すると該導体板8が回転するようになっている。
【0022】
カバー12は、ケース2の上部開口2eを蓋閉可能な大きさに形成された天板部12aと、この天板部12aの相対向する二辺から下向きに延設された一対の側板部12bと、各側板部12bの先端側の隅部に形成された係止片12cとから構成されている。このカバー12をケース2に取り付ける際には、天板部12aをケース2の上端に載せ、かつ側板部12bをケース2の側壁2cの外表面に当接させて位置合わせした後、図9に示すように各係止片12cを内方へ折り曲げてケース2の四隅に係止させる。
【0023】
アクチュエータ13は、図1と図10〜図12に示すように、舌状に形成された一対の押圧部13b,13cと、これら押圧部13b,13cどうしを橋絡する橋絡部13aと、各押圧部13b,13cの近傍に延設された計4片の位置決め部13dとから構成されており、橋絡部13aの両端部分は斜め下方へ折曲された屈曲部13eとなっている。このアクチュエータ13は、操作つまみ20とカバー12との間に揺動可能に介設されて、押圧部13b,13cの先端部分がそれぞれ駆動体9,10の被押圧部9d,10dに係着される。そして、図2に示すように、操作つまみ20の底面側の突起部22,23がアクチュエータ13の橋絡部13aの中心から大きく外れた2箇所に当接するように設定されるため、操作つまみ20の図示左側(または右側)を押し込むと、アクチュエータ13が突起部22(または23)に押し込まれて回転し、それに伴い押圧部13b(または13c)が駆動体9(または10)の被押圧部9d(または10d)を押圧駆動するようになっている。ただし、後述するように操作つまみ20を深く押し込む操作が行われた場合には、アクチュエータ13は一方向へ回転した後に逆方向へ回転するという連続的な揺動を行う。なお、アクチュエータ13の橋絡部13aおよび各位置決め部13dには補強用のビーディング加工が施されており、押圧部13b,13cの先端部分は駆動体9,10の摩耗を抑制するためカーリング加工によって二重に折り返されている。また、このアクチュエータ13を駆動体9,10に取り付ける際には、隣接する2片の位置決め部13dの間に被押圧部9dや被押圧部10dを挿入していくことによって各押圧部13b,13cの位置決めを行う。
【0024】
このように本実施形態例に係るスイッチ装置1は、接点収納空間S1内に固定接点部材3a〜3c、導体板7、駆動体9および付勢部11aを配置させてなる第1のスイッチ素子と、接点収納空間S2内に固定接点部材4a〜4c、導体板8、駆動体10および付勢部11bを配置させてなる第2のスイッチ素子とが、ケース2内に並設された構成になっている。そして、操作時にはアクチュエータ13の一方の押圧部13bを介して第1のスイッチ素子が駆動され、他方の押圧部13cを介して第2のスイッチ素子が駆動されるようになっている。
【0025】
また、このスイッチ装置1の上方に操作つまみ20が組み付けられると、アクチュエータ13の橋絡部13aに操作つまみ20の突起部22,23が弾接されて、アクチュエータ13の押圧部13b,13cがそれぞれ駆動体9,10の被押圧部9d,10dを押し下げるため、各駆動体9,10の軸部9a,10aにプリテンションがかけられる。これにより、固定接点部材群3a〜3cと導体板7と駆動体9との間のガタ、および固定接点部材群4a〜4cと導体板8と駆動体10との間のガタ、ならびに駆動体9,10とアクチュエータ13と操作つまみ20との間のガタを回避することができるので、固定接点部材群3a〜3c,4a〜4cと導体板7,8との接点切換えを円滑かつ確実に行うことができる。
【0026】
次に、上述の如く構成されたスイッチ装置1の動作について説明する。このスイッチ装置1は、操作つまみ20と組み合わされて車載用パワーウィンドウ装置の操作スイッチに適用されるものであるが、操作つまみ20に操作力が付与されていない非操作時には、図2に示すように、駆動体9の摺動作動部9bが導体板7の立上り部7bの下端部(初期受け部7aの近傍)に弾接しているので、固定接点部材3a,3cが導体板7を介して導通され、固定接点部材3a,3b間は非導通状態に保たれている。このとき、駆動体10の摺動作動部10bは導体板8の立上り部8bの下端部(初期受け部8aの近傍)に弾接しているので、固定接点部材4a,4cが導体板8を介して導通され、固定接点部材4a,4b間は非導通状態に保たれている。
【0027】
この状態で、図2に示す操作つまみ20を反時計回りに所定量回転させると、操作つまみ20の図示左側の突起部22によって端押しされたアクチュエータ13が反時計回りに回転駆動されるため、アクチュエータ13の押圧部13bが駆動体9の被押圧部9dを押し込んで、図3に示すように駆動体9が反時計回りに回転駆動される。この過程で、駆動体9は、軸部9aが若干上昇して板ばね11の付勢部11aを上向きに押し撓めながら、摺動作動部9bが導体板7の立上り部7b上を斜め上方へ摺動していき、摺動作動部9bが固定接点部材3a上を通過した時点で導体板7が図示時計回りに回転する。その結果、導体板7の平坦部7cが固定接点部材3cから離れて可動接点部7dが固定接点部材3bに当接するので、導体板7を介して固定接点部材3a,3bが導通されたことによるスイッチオン信号が外部接続端子5から出力される。このスイッチオン信号は、ウィンドウの開動作を行わせるための駆動信号として利用される。また、この過程で操作つまみ20の図示右側の突起部23は上昇するので、駆動体10が無負荷状態となって摺動作動部10bが導体板8の初期受け部8a上へ移動し、それに伴い被押圧部10dが若干押し上げられるが、導体板8の姿勢が変化するわけではないので外部接続端子6からの出力信号に変化は起きない。
【0028】
図3に示す状態で操作つまみ20に対する操作力が除去された場合には、板ばね11の付勢部11aの復元力が駆動体9に作用して摺動作動部9bが立上り部7b上を逆向き(斜め下方)に摺動するため、摺動作動部9bが固定接点部材3a上を通過した時点で導体板7が逆向き(反時計回り)に回転駆動されると共に、被押圧部9dが押圧部13bを押し上げて、図2の初期状態に戻る。その結果、導体板7の可動接点部7dが固定接点部材3bから離れて平坦部7cが固定接点部材3cに当接するので、固定接点部材3a,3bの導通が遮断されたことによるスイッチオフ信号が外部接続端子5から出力される。このスイッチオフ信号はウィンドウの開動作を停止させるための駆動信号として利用される。ただし、図3の状態から図2の状態へ移行しても導体板8の姿勢は変化しないので、外部接続端子6からの出力信号に変化は起きない。
【0029】
また、図3に示す状態で操作つまみ20をさらに深く押し込んで反時計回りに回転させた場合には、被押圧部9dがすでに最下点まで押し下げられているため駆動体9がさらに回転することはないが、操作つまみ20の突起部22からアクチュエータ13に付与される押圧操作力は、押圧部13bと被押圧部9dとの当接箇所を支点とする時計回りの回転力として作用するようになるので、アクチュエータ13はそれまでとは逆向きに回転して図示右側の押圧部13cが駆動体10の被押圧部10dを押し下げていき、図4に示す状態となる。すなわち、押圧部13cが被押圧部10dを押し込んで駆動体10が時計回りに回転駆動されることとなり、この過程で駆動体10は、軸部10aが若干上昇して板ばね11の付勢部11bを上向きに押し撓めながら、摺動作動部10bが導体板8の立上り部8b上を斜め上方へ摺動していき、摺動作動部10bが固定接点部材4a上を通過した時点で導体板8が回転する。その結果、導体板8の平坦部8cが固定接点部材4cから離れて可動接点部8dが固定接点部材4bに当接するので、導体板8を介して固定接点部材4a,4bが導通されたことによるスイッチオン信号が外部接続端子6から出力される。このスイッチオン信号はウィンドウを全開させるための駆動信号として利用される。また、この過程で駆動体9の被押圧部9dはアクチュエータ13の押圧部13bに押し込まれたままであり、駆動体9が回転駆動されることはないので、導体板7の姿勢は図3の状態と同じである。つまり、固定接点部材3a,3bが導通されている状態で固定接点部材4a,4bが導通された場合に、ウィンドウ全開信号が出力されるようになっている。
【0030】
なお、図4に示す状態で操作つまみ20に対する操作力が除去されると、板ばね11の付勢部11a,11bの復元力が駆動体9,10に作用して摺動作動部9b,10bがそれぞれ立上り部7b,8b上を斜め下方へ摺動するため、導体板7,8がそれぞれ第1の固定接点部材3a,4aを支点として逆向きに回転すると共に、被押圧部9d,10dがそれぞれ押圧部13b,13cを押し上げて、図2の初期状態に戻る。
【0031】
一方、図2の状態から操作つまみ20を時計回りに回転させた場合には、操作つまみ20の図示右側の突起部23によって端押しされたアクチュエータ13が時計回りに回転駆動されるため、アクチュエータ13の押圧部13cが被押圧部10dを押し込んで駆動体10が時計回りに回転駆動され、摺動作動部10bが導体板8の立上り部8b上を斜め上方へ摺動していく。したがって、摺動作動部10bが固定接点部材4a上を通過した時点で導体板8が回転し、この導体板8を介して固定接点部材4a,4bが導通されたことによるスイッチオン信号が外部接続端子6から出力される。このスイッチオン信号はウィンドウの閉動作を行わせるための駆動信号として利用される。また、この状態から操作つまみ20をさらに深く押し込むと、押圧部13cと最下点まで押し下げられた被押圧部10dとの当接箇所を支点としてアクチュエータ13が逆向きに回転するため、他方の押圧部13bが被押圧部9dを押し込んで駆動体9が反時計回りに回転駆動され、摺動作動部9bが導体板7の立上り部7b上を斜め上方へ摺動していく。したがって、摺動作動部9bが固定接点部材3a上を通過した時点で導体板7が回転し、この導体板7を介して固定接点部材3a,3bが導通されたことによるスイッチオン信号が外部接続端子5から出力される。このスイッチオン信号はウィンドウを全閉させるための駆動信号として利用される。つまり、固定接点部材4a,4bが導通されている状態で固定接点部材3a,3bが導通された場合に、ウィンドウ全閉信号が出力されるようになっている。なお、これら一連の動作や、途中で操作力が除去された場合の動作については、すでに述べた動作説明から容易に推測できるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
このように本実施形態例に係るスイッチ装置1は、操作つまみ20を浅く押し込んでアクチュエータ13を一方向へ回転させると、一方の押圧部13b(または13c)が駆動体9(または10)を回転駆動するため、一方の導体板7(または8)を回転させて所定のスイッチオン信号を出力させることができ、この状態で操作つまみ20をさらに押し込むと、アクチュエータ13が逆方向へ回転して他方の押圧部13c(または13b)が駆動体10(または9)を回転駆動するため、他方の導体板8(または7)を回転させて別のスイッチオン信号を出力させることができる。つまり、このスイッチ装置1は、連続的な2段階の押圧操作によって2種類の制御信号を得ることができる。そして、プッシュスイッチが不要な構成であることから、このスイッチ装置1は部品コストが大幅に削減できると共に、プッシュスイッチの設置スペースが不要となるため小型化が促進できる。しかも、このスイッチ装置1は、ケース2の底壁2a上に導体板7,8、駆動体9,10、板ばね11の順に搭載してカバー12を取り付けた後、アクチュエータ13を取り付けて操作つまみ20と組み合わせればよいので、組立性も良好である。
【0033】
また、本実施形態例に係るスイッチ装置1は、アクチュエータ13の押圧部13b,13cが橋絡部13aの両端の屈曲部13eから舌状に延設されて、各押圧部13b,13cの先端部分が駆動体9,10に係着されているので、押圧操作力が付与されてアクチュエータ13が回転する際に、押圧部13b,13cが弾性変形して駆動体9,10の回転に追従しやすくなっている。それゆえ、このスイッチ装置1はアクチュエータ13や駆動体9,10を円滑に動作させることができて、良好な操作性が期待できる。
【0034】
なお、本実施形態例のようにアクチュエータ13が板金製であれば、板厚が薄くても機械的強度を高めることができるため、装置全体の小型化を促進するうえで有利であり、かつアクチュエータ13の加工が容易になるためコスト面でも有利となる。
【0035】
また、本実施形態例にあっては、第1の固定接点部材3a,4aをそれぞれ導体板7,8の揺動支点となし、これらの導体板7,8が回転駆動されると第2の固定接点部材3b,4bや第3の固定接点部材3c,4cと接離するように構成してあるので、接点切換えが確実に行える高信頼性のスイッチ装置1が実現されている。ただし、第3の固定接点部材3c,4cを省略した構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態例に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】該スイッチ装置の非操作時の断面図である。
【図3】該スイッチ装置を浅く押圧操作した状態を示す断面図である。
【図4】該スイッチ装置を深く押圧操作した状態を示す断面図である。
【図5】該スイッチ装置に備えられるケースの平面図である。
【図6】該ケースに導体板を組み込んだ状態を示す平面図である。
【図7】該導体板上に駆動体を組み込んだ状態を示す平面図である。
【図8】該駆動体上に板ばねを組み込んだ状態を示す平面図である。
【図9】該スイッチ装置のアクチュエータを除いたユニット品の外観図である。
【図10】該アクチュエータの平面図である。
【図11】該アクチュエータの正面図である。
【図12】該アクチュエータの側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 スイッチ装置
2 ケース
2a 底壁
2b,2c 側壁
3a,4a 第1の固定接点部材
3b,4b 第2の固定接点部材
5,6 外部接続端子
7,8 導体板(可動接点部材)
9,10 駆動体
9a,10a 軸部
9b,10b 摺動作動部
9d,10d 被押圧部
11 板ばね
11a,11b 付勢部
12 カバー
13 アクチュエータ
13a 橋絡部
13b,13c 押圧部
13e 屈曲部
20 操作つまみ
22,23 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の対向する側壁を底壁から立設させてなるケースと、該ケースに固定されて前記底壁上に露出する二組の固定接点部材群と、前記底壁上に揺動可能に配置されて前記各固定接点部材群に対応する一対の可動接点部材として動作する一対の導体板と、軸部を中心に回動可能であって被押圧部を前記側壁の外方へ突出させた状態で前記各導体板上に搭載された一対の駆動体と、これら一対の駆動体の前記軸部を前記底壁へ向けて常時付勢するばね部材と、前記一対の駆動体の前記被押圧部を互いに独立に押圧駆動可能な一対の押圧部および該押圧部どうしを橋絡する橋絡部を有して該橋絡部に押圧操作力が付与される揺動可能なアクチュエータとを備え、
前記橋絡部の中心から一方の前記被押圧部側へずらした部位に押圧操作力が付与されるようになし、その押圧操作時に前記アクチュエータが一方向へ回転するのに伴い、前記一方の被押圧部を有する前記駆動体が回転して、該駆動体を搭載している前記導体板が回転駆動されて対応する前記固定接点部材群から第1の検出信号が出力されると共に、
この状態で前記橋絡部にさらに押圧操作力を付与することにより、前記一方の被押圧部との当接箇所を支点として前記アクチュエータが逆方向へ回転するのに伴い、他方の前記被押圧部を有する前記駆動体が回転して、該駆動体を搭載している前記導体板が回転駆動されて対応する前記固定接点部材群から第2の検出信号が出力されるように構成したことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記橋絡部の中心から他方の前記被押圧部側へずらした部位にも押圧操作力が付与されるようになし、その押圧操作時に前記アクチュエータを前記逆方向へ回転させることにより前記第2の検出信号が出力されると共に、この状態で前記橋絡部にさらに押圧操作力を付与して前記アクチュエータを前記一方向へ回転させることにより前記第1の検出信号が出力されるように構成したことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記アクチュエータは、前記橋絡部の両端の屈曲部分からそれぞれ前記押圧部が舌状に延設されており、各押圧部の先端部分がそれぞれ相異なる前記駆動体に係着されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記アクチュエータを金属板にて形成したことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記固定接点部材群が、対応する前記導体板と常時接触する第1の固定接点部材と、前記回転駆動時に該導体板と当接する第2の固定接点部材とを含み、前記第1の固定接点部材が該導体板の揺動支点となっていることを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−4866(P2006−4866A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182529(P2004−182529)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】