説明

スイッチ装置

【課題】2つのスイッチがオンした状態で回転操作が解除された場合に、回転操作方向を誤って判定することがないスイッチ装置を提供する。
【解決手段】隣接する2つのスイッチがオン状態となってから何れか一方のスイッチがオフし、そのタイミングからキャンセル判定期間内に他方のスイッチがオフするキャンセル条件が成立するような場合は、判定した回転方向を示す回転信号の出力をキャンセルする。これにより、制御回路が誤った回転信号を出力してしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブに対する回転操作により順にオンする複数のスイッチを備えたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノブに対する回転操作により環状に配置されたスイッチが順にオンすることで、表示装置に複数表示されている制御対象を順に選択したり、選択した制御対象を拡大、縮小したりすることが提案されている(特許文献1参照)。この場合、スイッチが環状に多数配置されている構成の場合は、押圧位置、及び押圧解除位置を精度よく判定可能であり、スイッチが順にオンすることで回転操作方向を判定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−85972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチが上下左右方向の4個しか設けられていない構成の場合には、斜め方向の押圧を検出できないことから、例えば上方向及び右方向のスイッチがオン状態となった場合に、それらの中間位置、つまり斜め右上方向が押圧されたと判定することが可能となる。従って、制御装置は、上方向のスイッチ、上方向及び右方向のスイッチ、右方向のスイッチ、右方向及び下方向のスイッチ……という順にスイッチがオンした場合は、時計回りに回転操作されていると判定して表示している制御対象を順に選択し、全てのスイッチがオフした場合は、押圧操作が解除されたと判定してその時点で選択されている制御対象を選択する。
【0005】
しかしながら、表示されている制御対象を選択するために隣接する2つのスイッチ、例えば上方向と右方向のスイッチがオンした状態(斜め右上方向が押圧操作された状態)でノブに対する押圧操作が解除された場合、両方のスイッチが全く同時にオフすることは現実にありえず、一方のスイッチが他方のスイッチよりも早くオフする。このため、制御装置は、2つのスイッチのうち回転方向に位置するスイッチが早くオフした場合は、反対方向に45度回転操作が行われた判定してしまい、ユーザが意図する制御対象を適切に選択できないという不具合が発生する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、2つのスイッチがオンした状態で回転操作が解除された場合に、回転操作方向を誤って判定することがないスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスイッチ装置は、中心位置に対して同心円状に配置された3個以上のスイッチと、前記スイッチをオンするためのノブと、前記スイッチのうちの1番目のスイッチがオンしてから当該1番目のスイッチと当該1番目のスイッチに隣接する2番目のスイッチとがオン状態となった場合、或いは前記1番目のスイッチ及び2番目のスイッチがオン状態となってから前記1番目のスイッチがオフした場合は、前記1番目のスイッチから前記2番目のスイッチへの回転方向にそれらの配置角度の1/2角度だけ回転操作されたと判定する回転操作判定手段と、前記回転操作判定手段が回転操作したと判定する毎に回転方向を示す回転信号を出力する信号出力手段と、前記1番目のスイッチ及び前記2番目のスイッチがオン状態となってから何れか一方のスイッチがオフし、そのタイミングから第1判定期間内に他方のスイッチもオフするキャンセル条件が成立するような場合は、前記回転操作判定手段による回転操作判定をキャンセルするキャンセル手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
第1スイッチと第2スイッチのオン状態でノブに対する回転操作が解除された場合、第1スイッチに対して回転方向に位置する第2スイッチがオフするのに続けて第1スイッチがオフしたり、その逆となったりする場合があり、このような場合は、回転操作判定手段により回転操作が行われたと誤って判定されてしまうことになる。しかしながら、本発明によれば、このようにスイッチが第1判定期間内に変化するような場合は、キャンセル手段が回転操作判定手段による判定をキャンセルするので、信号出力手段が誤った回転方向の回転信号を出力してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態における全体構成を示すブロック図
【図2】スイッチ装置の正面図
【図3】制御回路の動作を示すフローチャート
【図4】回転操作に応じたスイッチのオンオフ状態を示す図
【図5】ディスプレイに表示されている方向操作を示す図
【図6】ディスプレイに表示されている回転操作を示す図
【図7】キャンセル判定を示す図4相当図
【図8】各信号の出力タイミングを示す図
【図9】本発明の第2実施形態を示す図4相当図
【図10】図8相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図8を参照して説明する。
車両のインストルメントパネルにはオーディオ装置、及びそのオーディオ装置を操作するためのスイッチ装置が設けられている。
図1はスイッチ装置の電気的構成を示すブロック図、図2はスイッチ装置の正面図である。スイッチ装置1は、中心位置Aに対して同心円状に配置された第1〜第4スイッチ2a〜2dと、これらのスイッチ2a〜2dを押圧操作するための円盤状のノブ3と、第1〜第4スイッチ2a〜2dからの信号を受ける制御回路4(回転操作判定手段、信号出力手段、キャンセル手段に相当)とから構成されている。ノブ3には操作方向を示す矢印が記されており、図示上方向の矢印が記された部位に対応して第1スイッチ2aが配置され、図示右方向の矢印が記された部位に対応して第2スイッチ2bが配置され、図示下方向の矢印が記された部位に対応して第3スイッチ2cが配置され、図示左方向の矢印が記された部位に対応して第4スイッチ2dが配置されている。スイッチ装置1の下方となる部位には決定ボタン5が設けられている。
【0011】
オーディオ装置のディスプレイ6(図5,6参照)には、ハードディスク装置或いはオーディオ装置に接続された外部装置(DVD、CD、USBメモリなど)に記憶されている曲から所定数の曲を表示可能となっている。尚、ディスプレイ6に曲を表示したり、ディスプレイ6に表示する曲を変更したりするには、ディスプレイ6の周囲に設けられている図示しないキーに対する操作で行うようになっている。
【0012】
制御回路4は、第1〜第4スイッチ2a〜2dから受信するオン信号に基づいて後述するように方向モード又は回転モードを設定可能となっている。方向モードとはノブ3の上下左右方向、或いは斜め方向の何れかの部位を押圧することによりディスプレイ6に表示されている複数の曲から所望の曲を選択する方向を指示するためのモードである。回転モードとは、ノブ3を時計周り或いは反時計周りに回転操作することにより音量レベルを調整するためのモードである。
【0013】
ところで、本来なら回転モードの検出分解能(判定角度)は各スイッチ2a〜2dの配置角度である90度であるが、各スイッチ2a〜2dの接点信号は回転方向に隣接するスイッチ(例えば第1スイッチ2aと第2スイッチ2b)の2個同時押しを含めると判定角度を45度に設定可能であることから、2個同時押しも回転操作の判定条件に含めることにより判定角度を90度から45度に高めるようにしている。
【0014】
次に上記構成の作用について説明する。
スイッチ装置1の制御回路4は、図3に示すモード判定用のフローチャートを実行している。このフローチャートは、全てのスイッチ2a〜2dがオフしている状態を起点として開始する。尚、制御回路4は、電源投入(イグニッションスイッチのアクセサリON)時は何れのモードも設定しておらず、判定前の状態を設定しているものとする。また、ディスプレイ6には複数の曲が表示されており、ディスプレイ6の中央に位置する曲が反転表示されて選択されているものとする。
制御回路4は、ユーザによる回転操作により全てのスイッチ2a〜2dがオフした状態から何れかのスイッチ、例えば第1スイッチ2aがオンした場合は、Ams(例えば0.5秒)以内に後述する回転操作条件が成立したか否かを判定する。この判定中においては、何の信号もオーディオ装置に送信することはない。
【0015】
さて、ユーザが、現在選択されている曲と異なる曲を選択する場合は、現在選択されている曲に対する希望の曲が位置する方向に基づいてスイッチ装置1のノブ3を押圧操作する。つまり、ディスプレイ6には図5に示すように現在選択されている曲に対して移動可能な方向を示す矢印Bが表示されているので、ノブ3において移動方向に位置する部位を押圧することにより希望する曲を選択する。具体的には、希望する曲が現在選択されている曲の斜め右上方向に位置している場合は、ノブ3の何れかの部位に対する操作からAms以上経過したところでノブ3の図示上部位を押圧操作してから、さらにAms以上経過したところで図示右部位を押圧操作、或いは図示右部位を押圧操作してから、さらにAms以上経過したところで図示上部位を押圧操作する。この場合、Ams経過するまで回転操作条件が不成立となるので、方向モードが設定され、現在選択されている曲の斜め右上方向に表示されている曲を選択することができる。そして、曲の選択を終了した場合は、スイッチ装置1の下方に設けられている決定ボタン5を押圧操作する。すると、オーディオ装置が現在選択されている曲を再生し、車室内の図示しないスピーカから曲が出力される。
【0016】
一方、再生されている曲の音量レベルを調整する場合は、ユーザは、ノブ3に対して回転操作する。つまり、音量レベルを高める場合は、ノブ3の外周縁部を時計周りで回転操作し、音量を低下する場合は、ノブ3の外周縁部を反時計周りで回転操作する。この場合、回転操作の起点となる部位は何れであっても構わない。具体的には、ユーザがノブ3の上方向の部位を起点としてスイッチ装置1を時計周りに押圧操作した場合は、まず、第1スイッチ2a(1番目のスイッチに相当)のみがオンしてから、押圧位置がノブ3の斜め右上方向の部位となると、第1スイッチ2aに加えて第2スイッチ2b(2番目のスイッチに相当)もオン状態となり、押圧位置がノブ3の右方向の部位となると、第1スイッチ2aがオフし、第2スイッチ2bのみがオンする(このように何れかのスイッチがオンしてから当該スイッチに隣接するスイッチもオン状態となる、或いは隣接する2つのスイッチがオンしている状態から一方のスイッチがオフする条件を「回転操作条件」という)。この回転操作条件がAms以内に成立した場合は(図4参照)、回転操作が行われたと判定し、回転モードを設定する。この場合、制御回路4は、回転が確定したことから、+信号を出力する。
【0017】
オーディオ装置は、スイッチ装置1から+信号を受信したときは、図6に示すようにディスプレイ6にボリューム画面Cをポップアップ表示し、音量レベルを高めることを示す時計回りの矢印を表示すると共に音量レベルを1段階高める。
上述のように回転モードを設定した状態で、ユーザが回転操作を継続すると、回転操作条件が成立する毎に+信号が出力されるので、オーディオ装置は、+信号が入力する毎に音量レベルを段階的に高める。そして、ユーザは、所望の音量レベルとなったところで回転操作を終了する。スイッチ装置1は、スイッチがオフしてから、次のスイッチがBms内にオンするかを監視しており、オンすることなくBms経過したときは判定前状態(全てのスイッチがオフ状態)となる。そして、オーディオ装置は、+信号が入力しなくなることから、ボリューム画面の表示を終了すると共にその時点の音量レベルを確定する。
【0018】
一方、スイッチ装置1は、反時計周りとなるようにノブ3が回転操作された場合は、回転モードを設定し、回転操作条件が成立する毎に−信号を送信するので、オーディオ装置は、−信号を受信したときは、音量レベルを低下することを示す反時計周りの矢印をポップアップ表示すると共に−信号を受信する毎に音量レベルを低下する。
このような回転モードから方向モードを設定するには、ノブ3の何れかの部位に対する操作からAms以上経過したところでノブ3に対する方向操作により希望する曲を選択する。これにより、スイッチ装置1の制御回路4は、図3に示すようにAms経過するまでに上述した回転操作条件が成立しないので、方向モードであると判定してから、方向を確定し、その確定した方向を送信する。これにより、ノブ3に対する上下左右方向への押圧操作により方向モードを設定して希望する曲を選択することができる。
【0019】
ところで、回転操作時に隣接する2つのスイッチがオンしている状態で回転操作を解除した場合、両方のスイッチが全く同時にオフすることは現実にはありえず、回転方向に位置する一方のスイッチが他方のスイッチよりも早くオフするのが通常である。このような場合、制御回路4が反対方向の45度の回転操作を判定して反対方向の回転方向を示す回転信号を出力してしまうことになり、ユーザが意図する音量に調整できないという不具合が発生する。
【0020】
しかしながら、制御回路4は、図7,8に示すように例えば2つのスイッチ2a,2bがオンした状態から第2スイッチ2bのみがオフした場合は、キャンセル判定期間(第1判定期間に相当)としてHmsを設定して本来出力すべき回転方向信号の出力をキャンセルする。このとき、回転モードは維持している。そして、スイッチ2bがオフしてからHms以内にスイッチ2aもオフするような場合は、キャンセルを正式に有効なものとする。尚、スイッチ2bのオフ後にHms以上経過してからスイッチ2aがオフするような場合は、その時点で左回転信号を出力する。
【0021】
このような実施形態によれば、隣接する2つのスイッチがオン状態となってから何れか一方のスイッチがオフし、そのタイミングからキャンセル判定期間内に他方のスイッチがオフするキャンセル条件が成立するような場合は、判定した回転方向を示す回転信号の出力をキャンセルするようにしたので、制御回路4が誤った回転信号を出力してしまうことを防止できる。
【0022】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について図9及び図10も参照して説明する。この第2実施形態は第1実施形態で説明したキャンセル機能により発生する虞がある不具合を解決したことを特徴とする。
第1実施形態で説明したキャンセル機能により隣接する2つのスイッチがオンしている状態で回転操作を解除した場合の不具合を防止することができる。しかしながら、ユーザが回転操作中に意図せずにノブ3から指が浮いてしまうことがあり、このような場合は、隣接する2つのスイッチがほぼ同時にオフしてしまい、回転操作を行っているにも関わらずキャンセル機能により回転操作が解除されてしまったと判定されてしまう虞がある。
【0023】
そこで、制御回路4は、例えば隣接する2つのスイッチ2a,2bがオンした状態で、それらのスイッチがHms以内に連続してオフすることでキャンセル機能により回転操作が解除されてしまったと判定した場合であっても、全てのスイッチ2a〜2dがオフしてからIms(第2判定期間に相当)以内にスイッチ2c(3番目のスイッチに相当)がオンしたときは、回転操作が継続していると判定し、回転操作方向を示す回転信号を出力する。
【0024】
このような実施形態によれば、隣接する2つのスイッチがオンした状態からそれらがほぼ同時にオフすることで回転操作がキャンセルされたと判定された場合であっても、所定の判定期間内に回転操作方向に位置するスイッチがオンした場合は、回転操作が継続していると判定するようにしたので、回転操作中にノブ3から指が瞬間的に浮いた場合であっても、回転操作方向を示す回転信号を確実に出力することができる。
【0025】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
スイッチの数は3個あれば回転方向を検出可能であることから、スイッチとしては3個以上設ければよい。
ノブをスイッチに1対1で対応して複数設けるようにしてもよい。
スイッチ装置をステアリングホイールに設けるようにしてもよい。
オーディオ装置に信号を出力するためのスイッチ装置以外に適用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
図面中、1はスイッチ装置、2a〜2dはスイッチ、3はノブ、4は制御回路(回転操作判定手段、信号出力手段、キャンセル手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置に対して同心円状に配置された3個以上のスイッチと、
前記スイッチをオンするためのノブと、
前記スイッチのうちの1番目のスイッチがオンしてから当該1番目のスイッチと当該1番目のスイッチに隣接する2番目のスイッチとがオン状態となった場合、或いは前記1番目のスイッチ及び2番目のスイッチがオン状態となってから前記1番目のスイッチがオフした場合は、前記1番目のスイッチから前記2番目のスイッチへの回転方向にそれらの配置角度の1/2角度だけ回転操作されたと判定する回転操作判定手段と、
前記回転操作判定手段が回転操作したと判定する毎に回転方向を示す回転信号を出力する信号出力手段と、
前記1番目のスイッチ及び前記2番目のスイッチがオン状態となってから何れか一方のスイッチがオフし、そのタイミングから第1判定期間内に他方のスイッチもオフするキャンセル条件が成立するような場合は、前記回転操作判定手段による回転操作判定をキャンセルするキャンセル手段と、
を備えたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記信号出力手段は、前記キャンセル条件が成立した場合に、その成立タイミングから第2判定期間内に回転方向に位置する3番目のスイッチがオンしたときは、その回転方向を示す回転信号を出力することを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記ノブは、前記中心位置から全方向に対して揺動操作可能に設けられ、前記スイッチに対応した部位を押圧する押圧操作に応じて対応する前記スイッチをオンすると共に、前記中心位置を中心とした所定の回転方向に沿って押圧操作する回転操作に応じて回転方向に沿って位置するスイッチを順にオンするように設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88851(P2013−88851A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225771(P2011−225771)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】