説明

スイッチ部材の製造方法およびそれに用いられるレーザ切断治具

【課題】レーザ光を用いてキーパッドを切断する際、キーパッドの表面に傷がつくのを効果的に防止する。
【解決手段】レーザ切断治具上に、複数のキートップを連接した状態のキーパッドを載置し、上記キーパッドにレーザ光を照射して、複数のキートップに分離するスイッチ部材の製造方法であって、上記キーパッドの切断位置を上記レーザ切断治具の溝部にあわせて、当該キーパッドを上記レーザ切断治具上に載置する載置工程(ステップS101)と、当該レーザ切断治具の当該溝部に沿ってレーザ光を走査し、当該キーパッドを当該複数のキートップに分離するキートップ分離工程(ステップS103)と、を含むことを特徴とする、スイッチ部材の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ部材の製造方法およびそれに用いられるレーザ切断治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を用いて、金属や樹脂に穴加工あるいは切断加工を施すことは、広く行われている。レーザ光を用いた切断加工の場合、レーザ発振器からのレーザ光を、集光レンズで細く絞って加工物に照射し、切断部位を局部的に溶融または昇華させることにより、高精度な切断が行われている。
【0003】
切断用のレーザ光としては、COレーザあるいは、YAGレーザが用いられることが多く、特にCOレーザが好適に用いられる。この理由として、切断に必要なレーザ出力が容易に、安定かつ安価に得られること、およびレーザ光の品質が高く、高品質の切断ができることが挙げられる。
【0004】
レーザ切断には次のようなメリットがある。一つ目は、熱影響が少ないので、熱変形が極めて小さく切断精度が向上することである。二つ目は、レーザ光の照射によって溶融した部分のみを除去するため、切断幅がレーザ光の集光径とほぼ同じ微小な幅で切断できることである。三つ目は、高出力にてレーザ光を照射することができるので、溶融物を迅速に除去することができ、他の切断法に比べて切断速度が速いことである。四つ目は、非接触加工なので、工具に要する刃の交換などが不必要であることである。このようなメリットが存在することから、レーザ光は、様々な産業分野で切断の手段として用いられてきた。(たとえば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平8−20037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電話等に用いられているスイッチ用部材のキーパッドを複数のキートップ毎に切断する際、レーザ光を好適に使用することができる。スイッチ用部材の小型化が進むにつれて、キートップ間の間隔をより狭くする必要があり、切り代の幅を狭くかつ自在に制御可能なレーザ切断が、これに適しているためである。
【0006】
しかし、レーザ光を用いるキーパッドの切断には、以下のような問題が生じる可能性がある。すなわち、キーパッドを完全に切断するためにレーザ光出力を十分に高くした場合には、キーパッドを透過したレーザ光が、キーパッドを載置している加工台にまで達し、加工台に傷をつけ、あるいは加工台が加熱されるという問題が生じる。台の傷および熱損傷は、キーパッドの表面に傷をつけ、キーパッドの外観を損ねる。
【0007】
さらに、キーパッドを透過したレーザ光は、加工台で反射するという問題も生じ得る。特に、キーパッドをレーザ光で切断する際に用いる加工台は、キーパッドの表面に傷がつかないように、平面かつ平滑な面を有するので、レーザ光が反射しやすい。このため、その反射したレーザ光によって、キーパッドの切断部位以外の部位も、損傷するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、レーザ光を用いてキーパッドを切断する際、キーパッドの表面に傷がつくのを効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明は、レーザ切断治具上に、複数のキートップを連接した状態のキーパッドを載置し、そのキーパッドにレーザ光を照射して、複数のキートップに分離するスイッチ部材の製造方法であって、キーパッドの切断位置をレーザ切断治具の溝部にあわせて、そのキーパッドを上記レーザ切断治具上に載置する載置工程と、そのレーザ切断治具の溝部に沿ってレーザ光を走査し、キーパッドを複数のキートップに分離するキートップ分離工程とを含む、スイッチ部材の製造方法としている。
【0010】
この製造方法を採用すると、レーザ光がキーパッドを通過して、レーザ切断治具の溝部に到達するまでの距離が存在するため、溝部にて反射したレーザ光がキーパッドに照射される際、レーザ光の焦点が大きくずれる。このため、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。加えて、レーザ切断治具の表面にも傷がつきにくくなる。それは、キーパッドと直接触れることのない溝部内部にてレーザ光が反射するためである。
【0011】
また、別の本発明は、そのレーザ切断治具における少なくとも溝部の内表面が粗面化された、スイッチ部材の製造方法としている。
【0012】
この製造方法を採用すると、さらに、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。それは、レーザ切断治具の表面が粗面化されていると、レーザ光が当該表面にて拡散し、反射するレーザ光の強度が一層弱くなるためである。
【0013】
また、別の本発明は、そのレーザ切断治具の表面が、フッ素を含有する膜で覆われた、スイッチ部材の製造方法としている。
【0014】
この製造方法を採用すると、より一層、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。それは、レーザ切断治具の表面に到達したレーザ光が、フッ素を含有する膜にて一部吸収されるので、反射されたレーザ光の強度が弱くなるためである。さらには、膜内のフッ素樹脂が膜の自己潤滑性を向上させるので、キーパッドとレーザ切断治具との摩擦により、キーパッドの表面に傷が生じるのをさらに効果的に防止できる。
【0015】
また、別の本発明は、複数のキートップを連接した状態のキーパッドを積載し、そのキーパッドにレーザ光を照射して、複数のキートップに分離するために用いられるレーザ切断治具であって、そのキーパッドにおける切断部分に相当する位置に溝部を有するレーザ切断治具としている。
【0016】
このようなレーザ切断治具を用いると、レーザ光がキーパッドを通過して、レーザ切断治具の溝部に到達するまでの距離が存在するため、溝部にて反射したレーザ光がキーパッドに照射される際、レーザ光の焦点が大きくずれる。このため、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。加えて、レーザ切断治具の表面にも傷がつきにくくなる。それは、キーパッドと直接触れることのない溝部内部にてレーザ光が反射するためである。
【0017】
さらに、別の本発明は、さらに、少なくとも溝部の内表面が粗面化されたレーザ切断治具としている。
【0018】
このような構成のレーザ切断治具を用いると、さらに、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。それは、レーザ切断治具の表面が粗面化されていると、レーザ光が当該表面にて拡散し、反射するレーザ光の強度が一層弱くなるためである。
【0019】
さらに、別の本発明は、さらに、フッ素を含有する膜で表面が覆われたレーザ切断治具としている。
【0020】
このような構成のレーザ切断治具を用いると、より一層、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。それは、レーザ切断治具の表面に到達したレーザ光が、フッ素を含有する膜にて一部吸収されるので、反射されたレーザ光の強度が弱くなるためである。さらには、膜内のフッ素樹脂が膜の自己潤滑性を向上させるので、キーパッドとレーザ切断治具との摩擦により、キーパッドの表面に傷が生じるのをさらに効果的に防止できる。
【0021】
本発明において、スイッチ用部材は、複数のキートップと、当該キートップを所定位置に貼付するキーシートとを備えている。スイッチ用部材は、例えば、キートップの表面を構成する樹脂フィルム成形体の裏側の凹部にコア材を充填したキートップ成形体をキートップ毎に切断してから、各キートップを、ゴム状弾性体もしくは樹脂製フィルム等の弾性に富む軟質材料からなるキーシート上に接着するという方法で製造される。
【0022】
キーパッドは、操作対象となるキートップを連接した状態の成形体であり、樹脂製のフィルムを成形した後、その裏側にコア材を形成した形態を有するものであっても、一種類の樹脂で構成されるものであっても良い。
【0023】
キーパッドの形成方法には、予め成形された熱可塑性フィルムの凹部にコア材として光硬化性樹脂を注入して硬化させる方法、熱可塑性フィルムを射出成形用の金型に配置して、そこにコア材となる溶融樹脂を射出する方法等を採用できる。たとえば、主剤である低重合体と光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂をコア材として用いることができる。光硬化性樹脂として、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、シリコーン系、ポリブタジエン系、若しくはアクリレート系の低重合体と、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、若しくはチオキサンソン系の光重合開始剤とを含むものが好ましい。また、溶融樹脂を射出してコア材を形成する場合には、コア材として、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。特に、コア材として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはポリカーボネート/ABS共重合樹脂が好適に用いられる。
【0024】
コア材の表面を覆う樹脂製のフィルムとしては、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂あるいはポリカーボネート/ABS共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。特に、透明性、耐候性、表面光沢および加工性に優れるアクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0025】
キーシートは、キートップの裏側に配置されるシート状の構成部分であって、キートップの押し込みによって、キーシートの裏方向に配置されるスイッチを押圧する必要から、先に例示したような、弾性に富む軟質の材料から構成されるのが好ましい。もっとも代表的な材料としては、シリコーンゴムが例示される。なお、キーシートは、そのまま用いても良いが、樹脂製フィルムからなるキーシート上に、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)素子を配置したもの(以後これを「ELシート」という。)を用いてもよい。また、レーザ光の走査は、キーパッドを固定して、レーザ光の焦点位置を移動させる方法でも良いし、レーザ光の焦点位置を固定して、キーパッドを移動させる方法でも良いし、レーザ光の焦点位置とキーパッドの両方を移動させる方法等が含まれるものと解釈する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、レーザ光を用いてキーパッドを切断する際、キーパッドの表面に傷がつくのを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係るスイッチ部材の製造方法およびそれに用いられるレーザ切断治具1の好適な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0028】
(第一の実施の形態)
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るスイッチ用部材の製造工程の主な流れを示すフローチャートである。図2は、本発明の第一の実施の形態に係るレーザ切断治具1の斜視図である。
【0029】
スイッチ用部材の製造工程は、まず、レーザ切断治具1上にキーパッドを載置する載置工程(ステップS101)と、レーザ切断治具1にキーパッドを固定する固定工程(ステップS102)と、レーザ光を走査してキーパッドを複数のキートップに分離する分離工程(ステップS103)と、複数のキートップにキーシートを貼付するキーシート貼付工程(ステップS104)とを有する。
【0030】
第一の実施の形態に係るレーザ切断治具1としては、縦150mm、横150mmの天面を有する、アルミニウム材の板を好適に用いることができる。キーパッドを複数のキートップに切断する切り代の位置には、溝部2が設けられている。ステップS101では、その溝部2にキーパッドの切断部位が合うように位置を決め、そしてキーパッドが載置される。
【0031】
レーザ切断治具1における各キートップの載置位置には、下方からキーパットを吸引するための吸引孔3が設けられている。ステップS102では、吸引孔3からキーパッドを吸引することによって、キーパッドがレーザ切断治具1に固定される。吸引孔3は、キーパッドを複数のキートップに分離した際に、各キートップが所定の位置からずれるのを防止する役割を有するので、各キートップの位置に少なくとも一箇所設けるのが好ましい。
【0032】
図3は、キーパッド10が載置されたレーザ切断治具1を、図2のA−A線にて切断した際の断面図である。
【0033】
第一の実施の形態に係るレーザ切断治具1に形成された溝部2は、深さ約5mm、幅約0.6mmの溝であり、その溝幅がレーザ切断治具1の天面から溝部2の底面まで同一で、かつ、溝部2の底面が水平の溝である。このような溝部2は、好適に、マシニングで加工できる。このような溝部2を形成することにより、キーパッド10を透過したレーザ光20が、レーザ切断治具1の溝部2の底面に到達するまでの距離が存在する。このため、溝部2の底面におけるレーザ光20の焦点は、キーパッド10の焦点よりも大きくずれる。したがって、反射するレーザ光の強度が弱くなり、キーパッドの表面に傷がつきにくくなる。
【0034】
第一の実施の形態に係るキーパッド10は、使用感および外観を良くするため、使用面に切断口が露出しないように、切断位置の厚さをキートップ部分の厚さよりも薄くするのが好ましい。すなわち、キートップの押圧面側から見て切断位置が凹部であるのが好ましい。第一の実施の形態において用いられるキーパッド10を構成するキートップの好適な厚さは0.8mmであるが、切断部の好適な厚さは0.4mmである。また、各キートップの幅は1.3mm〜1.5mm、キートップ間の凹部の幅は0.2〜0.3mmである。
【0035】
また、第一の実施の形態では、レーザ切断治具1にキートップの押圧面側が接するように、キーパッド10を載置することが好ましい。そのように載置することで、キートップに傷がつきにくくなるからである。
【0036】
ステップS103では、載置したキーパッド10の押圧面の裏側から、レーザ切断治具1の溝部2に沿ってレーザ光20を集光させて、レーザ光20を走査しながら、キーパッド10を複数のキートップに分離する。第一の実施の形態では、レーザ光の集光径をφ0.1mm〜φ0.2mmに設定し、同じ経路を3回走査することで、0.2〜0.3mmの幅で切断することができる。また、レーザ加工機として、最大出力30Wの炭酸ガスレーザ装置を用い、走査速度200mm/sec、にて最大出力の70%の条件にてキーパッド10の切断を行うことができる。
【0037】
図4は、レーザ切断治具1上でキーシート11を貼付された複数のキートップ10aを図2のA−A線にて切断した際の断面図である。
【0038】
キーパッド10をキートップ10aに切断した後、レーザ切断治具1に複数のキートップ10aを固定した状態で、複数のキートップ10aに、キーシート11が貼り付けられる。このため、キートップ10aの最終配置状態を保持したまま、キーシート11に各キートップを貼り付けることができる。したがって、キーシート11上に、分離された複数のキートップ10aを1つずつ貼り付ける作業を解消できる。
【0039】
最後に、吸引孔3からの吸引を止め、レーザ切断治具1からスイッチ用部材を解離する。
【0040】
(第二の実施の形態)
次に、第二の実施の形態に係るスイッチ用部材の製造方法について説明する。なお、先に示す図1および図2形態は、第二から第四の各実施の形態にて共通する。また、図4は、第二の実施の形態に係るレーザ切断治具1にキーパッド10が載置された状態を、図2のA−A線にて切断した際の断面図である。
【0041】
第二の実施の形態に係るレーザ切断治具1では、溝部2の内表面が粗面化されている。溝部2の内表面を粗面化するためには、例えば、溝部2以外の部位をマスキングした後、約0.5MPaの圧力で#100のガラスビーズを用いてブラスト処理を行うのが好ましい。係る粗面化の処理を行うには、株式会社不二製作所製のブラストマシン(型番SGK−3ST)を好適に用いることができる。このように、溝部2の内部を粗面化することにより、図5における矢印で示すように、レーザ光が溝部2の内表面にて乱反射しやすくなり、キーパッド10の表面に反射するレーザ光の強度を弱めることができる。
【0042】
(第三の実施の形態)
次に、第三の実施の形態に係るスイッチ用部材の製造方法について説明する。図6は、第三の実施の形態に係るレーザ切断治具1にキーパッド10が載置された状態を、図2のA−A線にて切断した際の断面図である。
【0043】
第三の実施の形態に係るレーザ切断治具1は、溝部2の内表面が粗面化され、かつ、その表面を、フッ素を含有するニッケルめっき(フッ素を含有する膜の一例)7にて覆われたものである。フッ素を含有するニッケルめっき7の材料としては、日本カニゼン株式会社製のカニフロン(登録商標)を好適に用いることができる。カニフロンは、無電解ニッケル皮膜中に、数マイクロメートルの大きさを有するPTFE粒子が20〜25体積%含有され、かつそれが一様に分布した複合皮膜である。つまり、PTFE粒子が固体潤滑材としてめっき皮膜の中に均一に分散共析しているため、自己潤滑性皮膜として機能する。このため、このPTFE薄膜の低いせん断力により、キーパッド10とレーザ切断治具1との間の摩擦係数が低くなる。したがって、キーパッド10がレーザ切断治具1と擦れ合っても、キーパッド10の表面に傷がつきにくくなる。さらに、フッ素によって、レーザ光20の吸収および拡散が生じるので、反射するレーザ光の強度をより低下できる効果もある。
【0044】
(第四の実施の形態)
次に、第四の実施の形態に係るスイッチ用部材の製造方法について説明する。図7は、第四の実施の形態に係るレーザ切断治具1にキーパッド10が載置された状態を、図2のA−A線にて切断した際の断面図である。
【0045】
第四の実施の形態に係るレーザ切断治具1が有する溝部2は、第一から第三の各実施の形態に係るレーザ切断治具1が有する溝部2とは異なる形状を有する。すなわち、溝部2の入口の溝幅は、溝部2の溝底面の溝幅に比べて狭い。具体的には、U字型の開口部分が狭くなっているような形状である。溝部2の入口の溝幅は約0.3mmである。溝部2の入口から底に向かって徐々に幅を増して、最も幅が大きくなる底部近傍では、溝幅は0.8mmになる。溝部2の底面は、最も溝幅が大きくなる位置から溝幅が小さくなるように湾曲している。このような形状の溝部2を採用すると、溝部2の出入口がその内部に比べて狭いので、キーパッド10を通過したレーザ光20が溝部2内に入った後、溝部2から出射しにくくなる。したがって、反射するレーザ光の強度を低下させることができる。特に、底面を曲面とすることにより、溝部2の底面でレーザ光が反射する際に、入射した方向と異なる方向に反射するので、溝部2内での反射回数が増し、反射するレーザ光の強度が低下しやすい。
【0046】
以上、本発明に係る押釦スイッチ用部材の製造方法およびレーザ切断治具の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0047】
例えば、各実施の形態にて例示した溝部2の深さは、レーザ光20の出力、切断対象であるキーパッド10の形状および種類等によって適宜変えることが出来る。また、第一から第三までの各実施の形態において、第四の実施の形態で例示した溝部2の形状を採用してもよい。さらに、溝部2の形状は、上述の実施の形態に限られず、他の形状も採用できる。例えば、図8に示すように、溝部2の入口部分を狭くし、当該入口部分より下方を同じ幅で、かつ当該入口部分より広い幅とする溝部2を採用しても良い。また、図2のA−A線断面において、断面が台形状の溝部2を採用してもよい。
【0048】
また、粗面化処理を行うためのブラストマシンは、特定のマシンに限られない。粗面化処理を行うための方法は、ショットブラストのように圧縮空気により粒子を金型表面に吹きつける方法でも良い。また、ウェットブラストのように、粒子をその他の液体と一緒に高圧で金型表面に吹き付ける方法でも良い。吹き付け圧力および吹き付け時間は、粗面化処理によって生じるキャビティ部の形状、治具の素材または、レーザ条件等により、適宜調整することができる。
【0049】
また、上述のようなブラスト加工を行うための粒子は、治具材質やレーザ条件などに応じて選択できる。例えば、アルミナジルコニア研削剤に代表されるアルミナ質研削剤、炭化珪素質研削剤、鉄粉、ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、およびホウケイ酸ガラスなどが例示できる。同様に、粒子の粒度は、#50〜300の粒子を適宜選択することができる。さらに、粒度の大きい粒子でブラスト加工を行った後、その粒子よりも粒度の小さい粒子でブラスト加工を行うことにより、大小のキャビティができるようにしてもよい。
【0050】
ブラスト加工は、溝部2の内部のみに施すのが好ましい。なぜなら、溝部2を除く治具1の天面には、キーパッド10の押圧面が接触するので、溝部2以外をブラスト加工すると、キーパッド10の押圧面に傷をつける危険性があるからである。しかし、フッ素を含有するニッケルめっき7で治具を覆う場合には、フッ素を含有するニッケルめっき7によって潤滑性が付与されるため、レーザ切断治具1の天面を含めた全体をブラスト加工してもよい。
【0051】
また、フッ素を含有するニッケルめっき7は、フッ素の含有量が多いほど、その表面の摩擦係数が低下するが、皮膜の硬度が低下するなどの問題もあるため、加工材料などに応じてフッ素の含有量を適宜調整するのが好ましい。加工材料を透過したレーザ光20を吸収するために、溝部2を黒く着色または、フッ素を含有するニッケルめっき7で黒色のものを用いることも考えられる。これは、黒色に着色することにより、光を吸収させるためである。例えば、黒色の油性塗料を用いて、溝部2の内表面を黒色に着色することもその好適な方法として挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、スイッチ用部材を搭載した携帯電子端末を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るスイッチ部材の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係るレーザ切断治具の斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係るレーザ切断治具の天面に、キーパッドが載置された状態のA−A部線断面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係るレーザ切断治具上にてキーパッドが切断された後に、キーシートを貼付した状態のA−A部線断面図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係るレーザ切断治具の天面に、キーパッドが載置された状態のA−A部線断面図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態に係るレーザ切断治具の天面に、キーパッドが載置された状態のA−A部の断面図である。
【図7】本発明の第四の実施の形態に係るレーザ切断治具の天面に、キーパッドが載置された状態のA−A部の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るレーザ切断治具の天面に、キーパッドが載置された状態のA−A部の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ切断治具
2 溝部
7 フッ素を含有するニッケルめっき(フッ素を含有する膜の一例)
10 キーパッド
10a キートップ
20 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ切断治具上に、複数のキートップを連接した状態のキーパッドを載置し、上記キーパッドにレーザ光を照射して、複数のキートップに分離するスイッチ部材の製造方法であって、
上記キーパッドの切断位置を上記レーザ切断治具の溝部にあわせて、当該キーパッドを上記レーザ切断治具上に載置する載置工程と、
当該レーザ切断治具の当該溝部に沿ってレーザ光を走査し、当該キーパッドを当該複数のキートップに分離するキートップ分離工程と、
を含むことを特徴とする、スイッチ部材の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ切断治具における少なくとも前記溝部の内表面は粗面化されていることを特徴とする、
請求項1に記載のスイッチ部材の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ切断治具の表面は、フッ素を含有する膜で覆われていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のスイッチ部材の製造方法。
【請求項4】
複数のキートップを連接した状態のキーパッドを積載し、上記キーパッドにレーザ光を照射して、複数のキートップに分離するために用いられるレーザ切断治具であって、
上記キーパッドにおける切断部分に相当する位置に溝部を有することを特徴とするレーザ切断治具。
【請求項5】
少なくとも前記溝部の内表面は粗面化されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザ切断治具。
【請求項6】
さらに、フッ素を含有する膜で表面が覆われていること特徴とする、請求項4から5に記載のレーザ切断治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−198383(P2008−198383A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29455(P2007−29455)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】