説明

スイッチ

【課題】主に自動車のストップランプの点消灯制御等に用いられるスイッチに関し、接離の安定したものを提供することを目的とする。
【解決手段】作動体2の上下動に伴い弾接摺動する固定接片4と接触片7の間に、基油に軟らかな樹脂ポリマーと界面活性剤が配合された潤滑剤15を塗布することによって、弾接摺動時の接触片7や固定接片4の磨耗を少なくすると共に、潤滑剤15の他の箇所への流失を防ぐことができるため、接離の安定したスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダル操作時の、ストップランプの消点灯制御等に用いられるスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキペダルを踏み込んだ際にはストップランプを点灯させ、離した際には消灯させる、ブレーキペダルの操作に伴うストップランプの制御用として、押圧操作型のスイッチが多く使用されている。
【0003】
このような従来のスイッチについて、図2を用いて説明する。
【0004】
図2は従来のスイッチの断面図であり、同図において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は同じく絶縁樹脂製の作動体で、ケース1内側壁には複数の固定接点3や固定接片4が植設されると共に、作動体2がケース1内に上下動可能に収納されている。
【0005】
そして、5は導電金属製の可動接点で、この可動接点5がケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状の接圧ばね6によって、複数の固定接点3に下方から弾接し、複数の固定接点3が可動接点5を介して電気的に接続されている。
【0006】
また、7は導電金属製の接触片で、この接触片7の一端が作動体2側面に装着固定されると共に、やや撓んだ状態で、他端が固定接片4上方のケース1右内側壁に弾接している。
【0007】
さらに、8はコイル状の戻りばね、9はケース1上面の開口部を覆うカバーで、戻りばね8が作動体2下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2を上方に付勢している。
【0008】
また、カバー9には上方ヘ突出する中空筒部9Aが設けられ、この中空筒部9A内に作動体2の操作軸2Aが上下動可能に挿通すると共に、操作軸2A上端が中空筒部9Aから上方ヘ突出している。
【0009】
そして、固定接片4と接触片7の間には、作動体2の上下動に伴う接触片7の弾接摺動を滑らかにするために、オレフィン系やエステル系の基油にリチウム系やカルシウム系、アルミニウム系の金属石鹸が配合された潤滑剤10が塗布されて、スイッチが構成されている。
【0010】
そして、このように構成されたスイッチは、一般に自動車のブレーキペダルの手前に、アーム(図示せず)等によって作動体2の操作軸2Aが押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した固定接点3の端子部3Aが、コネクタ等によってストップランプに、固定接片4の端子部4Aが車両の電子回路に各々接続される。
【0011】
つまり、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態では、作動体2の操作軸2Aが下方へ押圧操作され、接圧ばね6や戻りばね8が撓んで、可動接点5が下方へ移動して固定接点3から離れ、電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯した状態となる。
【0012】
また、この状態では、作動体2側面に装着固定された接触片7が下方へ移動し、固定接片4へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に接続された状態となっているため、車両の電子回路が制御する機能、例えばアクセルペダルを踏まないでも車両の走行速度を一定に保つ、所謂クルーズコントロール等が動作した状態となっている。
【0013】
そして、ブレーキペダルが踏み込まれると、アーム等が操作軸2Aから離れ押圧力が除かれるため、戻りばね8の弾性復帰力によって作動体2が上方ヘ移動すると共に、可動接点5も接圧ばね6に押圧されて固定接点3に弾接し、複数の固定接点3が電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯する。
【0014】
また、この状態では、接触片7が上方へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に切断されるため、電子回路のクルーズコントロール等は停止した状態となるように構成されているものであった。
【0015】
なお、このようにストップランプの消点灯を行う固定接点3と可動接点5には、一般にDC12V数A程度の比較的大きな電圧電流が通電され、電子回路の接離を行う固定接片4と接触片7には数mA程度の小さな電流が通電されるため、固定接片4と接触片7の間には、上述したように潤滑剤10が塗布されているが、電流が大きく接点の開閉時にアークの発生する、固定接点3と可動接点5には潤滑剤が塗布されていない。
【0016】
但し、固定接片4や接触片7に塗布された潤滑剤10が、固定接点3や可動接点5に流れ付着することも考えられるため、潤滑剤10には、アークによって絶縁性のシリカ等が生じ易いシリコン系のものではなく、上述のようにオレフィン系やエステル系の基油を用いたものが、通常使用されている。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−84867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来のスイッチにおいては、固定接片4と接触片7の間に塗布された潤滑剤10に、リチウム系やカルシウム系、アルミニウム系の金属石鹸が配合されているため、作動体2の押圧操作によって接触片7の固定接片4への弾接摺動を繰返すと、これら金属の配合剤によって接触片7や固定接片4に磨耗が生じ、安定した接触を保つことが困難となるという課題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、確実な接離の可能なスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、作動体の上下動に伴い弾接摺動する固定接片と接触片の間に、基油に樹脂ポリマーと界面活性剤が配合された潤滑剤を塗布してスイッチを構成したものであり、軟らかな樹脂ポリマーが配合された潤滑剤を用いることによって、弾接摺動時の接触片や固定接片の磨耗を少なくすると共に、界面活性剤によって潤滑剤の他の箇所への流失を防ぐことができるため、接離の安定したスイッチを得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、接離の安定したスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。
【0023】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図であり、同図において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は略円柱状で絶縁樹脂製の作動体で、ケース1内側壁には複数の固定接点3や固定接片4が植設されると共に、作動体2がケース1内に上下動可能に収納されている。
【0025】
そして、5は銅合金等の導電金属製の可動接点で、この可動接点5がケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状の接圧ばね6によって、複数の固定接点3に下方から弾接し、複数の固定接点3が可動接点5を介して電気的に接続されている。
【0026】
また、7は銅合金等の導電金属製の接触片で、この接触片7の一端が作動体2側面に装着固定されると共に、やや撓んだ状態で、他端が固定接片4上方のケース1右内側壁に弾接している。
【0027】
さらに、8はコイル状の戻りばね、9はケース1上面の開口部を覆う絶縁樹脂製のカバーで、戻りばね8が作動体2下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2を上方に付勢している。
【0028】
また、カバー9には上方ヘ突出する中空筒部9Aが設けられ、この中空筒部9A内に作動体2の操作軸2Aが上下動可能に挿通すると共に、操作軸2A上端が中空筒部9Aから上方ヘ突出している。
【0029】
そして、固定接片4と接触片7の間には、作動体2の上下動に伴う接触片7の弾接摺動を滑らかにするために、オレフィン系やエステル系の基油にオレフィン系やエステル系の樹脂ポリマーが1〜30重量%、フッ素系の界面活性剤が0.1〜5重量%配合された潤滑剤15が塗布されて、スイッチが構成されている。
【0030】
そして、このように構成されたスイッチは、一般に自動車のブレーキペダルの手前に、アーム(図示せず)等によって作動体2の操作軸2Aが押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した固定接点3の端子部3Aが、コネクタ等によってストップランプに、固定接片4の端子部4Aが車両の電子回路に各々接続される。
【0031】
つまり、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態では、作動体2の操作軸2Aが下方へ押圧操作され、接圧ばね6や戻りばね8が撓んで、可動接点5が下方へ移動して固定接点3から離れ、電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯した状態となる。
【0032】
また、この状態では、作動体2側面に装着固定された接触片7が下方へ移動し、固定接片4へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に接続された状態となっているため、車両の電子回路が制御する機能、例えばアクセルペダルを踏まないでも車両の走行速度を一定に保つ、所謂クルーズコントロール等が動作した状態となっている。
【0033】
そして、ブレーキペダルが踏み込まれると、アーム等が操作軸2Aから離れ押圧力が除かれるため、戻りばね8の弾性復帰力によって作動体2が上方ヘ移動すると共に、可動接点5も接圧ばね6に押圧されて固定接点3に弾接し、複数の固定接点3が電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯する。
【0034】
また、この状態では、接触片7が上方へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に切断されるため、電子回路のクルーズコントロール等は停止した状態となるように構成されている。
【0035】
そして、このように作動体2の上下動に伴って接触片7が固定接片4に弾接摺動する際に、これらの間に塗布された潤滑剤15によって、接触片7の固定接片4への弾接摺動が滑らかに行われると共に、接触片7や固定接片4の磨耗が少なくなるように形成されている。
【0036】
つまり、固定接片4と接触片7の間に塗布された潤滑剤15には、基油にオレフィン系やエステル系の軟らかな樹脂ポリマーが配合されているため、金属石鹸等が配合された潤滑剤を塗布したものに比べ、銅合金等の接触片7や固定接片4の磨耗が少なくなり、滑らかな摺動が行われる構成となっている。
【0037】
さらに、潤滑剤15にはフッ素系の界面活性剤が配合され、この界面活性剤が外周に膜を形成し、潤滑剤15が他の箇所へ流れにくいようになっているため、接触片7と固定接片4の確実な潤滑が保たれると共に、電流が大きく接点の開閉時にアークの発生する固定接点3や可動接点5への付着も防止できるようになっている。
【0038】
このように本実施の形態によれば、作動体2の上下動に伴い弾接摺動する固定接片4と接触片7の間に、基油に軟らかな樹脂ポリマーと界面活性剤が配合された潤滑剤15を塗布することによって、弾接摺動時の接触片7や固定接片4の磨耗を少なくすると共に、潤滑剤15の他の箇所への流失を防ぐことができるため、接離の安定したスイッチを得ることができるものである。
【0039】
なお、以上の説明では、主にブレーキペダルによって操作される押圧操作型のスイッチについて説明したが、他の機能に用いられるスイッチや、或いは、作動体を揺動したり平行にスライドさせる等、他の操作方式のスイッチにおいても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるスイッチは、接離の安定したものを得ることができるため、主に自動車のブレーキペダル操作時のストップランプ点消灯制御等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図
【図2】従来のスイッチの断面図
【符号の説明】
【0042】
1 ケース
2 作動体
2A 操作軸
3 固定接点
3A 端子部
4 固定接片
4A 端子部
5 可動接点
6 接圧ばね
7 接触片
8 戻りばね
9 カバー
9A 中空筒部
15 潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接片が植設された略箱型のケースと、このケース内に上下動可能に収納された作動体と、この作動体の上下動に伴い上記固定接片に弾接摺動する接触片からなり、上記固定接片と接触片の間に、基油に樹脂ポリマーと界面活性剤が配合された潤滑剤を塗布したスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−92987(P2006−92987A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279060(P2004−279060)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】