説明

スイッチ

【課題】スイッチにおいて、各種の負荷がスイッチにかかったとしても自身の破損を抑制すると共に、一部が実際に破損した場合におけるスイッチの導通制御の安全性を向上させる。
【解決手段】 第1収納体及び第2収納体を含む外囲部、操作部、第1端子体及び第2端子体の設けられた固定基体、操作部に接続された操作応力伝達部、端子間の電気的な接続を切り換える端子間接続体の設けられ、操作応力伝達部に連動して移動する可動基体を含むスイッチの構成を、第2収納体が自己に形成された第1係止部及び第1収納体に形成された第1被係止部により第1収納体に係止され、また、固定基体が自己に形成された第2係止部及び第1収納体に形成された第2被係止部により第1収納体に係止されており、第2収納体が固定基体と第1収納体との係止が外れた場合に外囲部の外部への端子部の移動を規制する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに関し、入力ボタンの操作に応じて状態を切り替える押ボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的なスイッチとして、操作ボタンの操作によって一対の端子間の導通を制御する押ボタンスイッチが知られている。具体的には、押ボタンスイッチは、一対の固定端子と、操作ボタンの操作に応じて移動し、一対の固定端子間の導通を制御する可動端子とを備えている。押ボタンスイッチは、大別して、操作ボタンの押圧操作に応じて可動端子が一対の端子間を短絡するように基準位置から押下位置へ移動し、操作ボタンの復帰操作(自動復帰を含む)に応じて可動端子が一対の端子間を開放するように押下位置から基準位置へ移動する構成(A接点型)と、その逆に、押下操作によって一対の端子間を開放し、復帰操作によって一対の固定端子間を短絡する構成(B接点型)とが知られている。また、押ボタンスイッチとして、複数対の固定端子とそれらの一対ごとに対応する複数の可動端子とを含んでおり、複数系統の導通を一括して又は操作ボタンの操作方法や操作回数に応じて個別に制御する構成(多重系統型)が知られている。多重系統型の押ボタンスイッチとしては、複数系統の各々がA接点型である構成や、複数系統の各々がB接点型である構成や、複数系統がA接点型及びB接点型を含む構成が知られている。
【0003】
押ボタンスイッチにおいては、少なくとも一対の固定端子の接点及び可動端子の接点は収納体の内部に封止されている。これによって、それらの接点の表面が埃や気体や溶液の進入等による汚染や腐蝕によって、可動端子が一対の固定端子間を短絡させる位置へ移動したにもかかわらず、一対の固定端子と可動端子との接点間の接続抵抗の増大や、それらの接点間の絶縁により実質的に短絡されないことを防止している。
【0004】
また、従来の典型的なスイッチにおいては、全体を構成する部材が複数のユニットにユニット化され、各ユニットを組み付けることによってスイッチを完成させる構成が知られている。この構成の場合には、歩留まりを向上させることができ、また、スイッチが故障した際に部分的に取り替えたりすることが容易となる。この組み付けにおいては、機械操作に因らず人為的な操作のみによって行える構成が知られ、更に、組み付け後に所定の操作によって、複数のユニットに分解できる構成が知られている。
【0005】
従来の一般的な構成としては、一対の固定端子の設けられた構造体を収納体の内側に収納し、その基体を収納体の一端を塞ぐ封止体によって固定される構成(例えば、特許文献1参照)や、一対の固定端子が設けられると共に収納体に結合することによって収納体の一端を封止する構造体(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。つまり、収納体と封止体との結合によって、固定端子の設けられた構造体は、所定の位置に固定されていた。
【0006】
【特許文献1】特開平5−174668号公報
【特許文献2】特開2001−35302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の典型的な各種のスイッチにおいて、スイッチを装着するために外部に突出した端子を溶接する作業中に引張力が端子に作用し、また、使用中において固定端子の接点と可動端子の接点とが溶着した場合の操作部の押下によって、固定端子を介した負荷が封止体にかかる場合がある。また、操作部の通常の押下や不測の操作部への強い衝撃によって、可動端子の形成された構造体や可動端子の移動を規制する付勢部材を介した付加が封止体にかかる場合があった。特に、非常停止スイッチや安全スイッチ等の不測の緊急事態が発生した場合に操作されるスイッチにおいては、急を要するために押下操作が乱雑となったり、押下強度が大きくなったりして、このような状況が発生し易くなる。このような負荷によって、収納体から封止体が外れた場合には、固定端子の設けられた構造体が自由に移動できることとなる。この場合、固定端子が可動端子に対して相対的に自由に移動できることとなり、操作部の操作によって固定端子間の導通を制御することができなくなる。特に、安全スイッチ等の場合には、少なくとも固定端子間の導通を確実に断絶しなければ、被害が拡大する恐れがあるために、このような状況が発生することを防止しなければならない。
【0008】
そこで、本発明に係るスイッチでは、各種の負荷がスイッチにかかったとしてもスイッチ自体が破損することを抑制すると共に、破損し易い場所の一部が実際に破損したとしてもスイッチの導通制御が行えるように安全性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスイッチは、
第1収納体及び前記第1収納体の一端を実質的に塞ぐ第2収納体を含む外囲部と、
前記外囲部の他端に配設された操作部と、
前記外囲部の内側に配設された固定基体、前記固定基体に固定され、一端が前記外囲部を貫通して外方向に突出する第1端子体、及び、前記固定基体に固定され、一端が前記外囲部を貫通しての外方向に突出する第2端子体を含む端子部と、
前記操作部に接続され、前記操作部の押下操作に伴い前記第2収納体側に移動する操作応力伝達部と、
前記外囲部の内側に配設され、前記操作応力伝達部の移動に連動して前記第2収納体側に移動する可動基体、及び、前記可動基体に固定され、前記第1端子体と前記第2端子体との間の電気的な接続を切り換える端子間接続体を含む端子間接続切換部と、
を含むスイッチであって、
前記第2収納体に形成された第1係止部と、
前記第1収納体に形成され、前記第1係止部に対応する第1被係止部と、
前記固定基体に形成された第2係止部と、
前記第1収納体に形成され、前記第2係止部に対応する第2被係止部と、
を更に含み、
前記第2収納体が、前記第1係止部及び前記第1被係止部により前記第1収納体に係止され、
前記固定基体が、前記第2係止部及び前記第2被係止部により前記第1収納体に係止され、
前記第2収納体が、前記固定基体と前記第1収納体との係止が外れた場合における前記端子部の前記外囲部の外部への移動を規制することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスイッチであれば、第2収納体にかかる負荷を第1係止部及び第1被係止部によって受け、第1端子体又は第2端子体を介しての負荷を第1係止部及び第1被係止部によって受けることができるために、それらの負荷を特定の1種類の固定部で受ける場合よりも累積負荷を低減することができる。これによって、スイッチの耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、第1係止部と第1被係止部との係止がそれらの破損等により外れた場合には、第2係止部と第2被係止部との係止によって第1端子体及び第2端子体が第1収納体に対して固定された状態を維持するために、スイッチの導通制御を正常に行うことができる。一方、第2係止部と第2被係止部との係止が外れた場合であっても、第1係止部と第1被係止部との係止によって固定された第2収納体によって端子部の移動が規制されるために、端子部に含まれる第1端子体及び第2端子体が第1収納体に対して実質的に固定された状態を維持することとなり、スイッチの導通制御を正常に行うことができる。これによって、安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るスイッチの最良の形態について説明する。なお、本発明の概念的な構成について説明した後に、具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明に係るスイッチは、上述のように、第1収納体及び第2収納体を含む外囲部と、外囲部の他端に配設された操作部と、操作部に接続された操作応力伝達部と、外囲部の内側に配設された固定基体、固定基体に固定された第1端子体及び第2端子体を含む端子部と、外囲部の内側に配設され、操作部の押下操作に応じて第2収納体側に移動する可動基体、前記可動基体に固定された端子間接続体を含む端子間接続切換部とを備えている。更に、本発明に係るスイッチは、第2収納体に形成された第1係止部と、第1収納体に形成された第1被係止部とを備え、第2収納体が第1係止部及び第2被係止部により第1収納体に係止されている。更に、固定基体に形成された第2係止部と、第1収納体に形成された第2被係止部とを更に備え、固定基体が第2係止部及び第2被係止部により第1収納体に係止されている。また。第2収納体が、固定基体と前記第1収納体との係止が外れた場合における端子部の外囲部の外部への移動を規制している。なお、本発明に係るスイッチは、A接点型のスイッチであってもよいし、B接点型のスイッチであってもよい。
【0014】
外囲部における第1収納体及び第2収納体は、それのみで内側空間を実質的に封止する構成であってもよいし、操作部との協同によって内側空間を実質的に封止する構成であってもよい。ここで、実質的に封止するとは、第1端子体及び第2端子体を通すための貫通部分や操作応力伝達部を通すための貫通部分以外については、意図的に内側空間と外側空間とを連通する貫通部分が設けられていないことを意味する。第2収納体は、第1収納体の一端を実質的に塞ぐ構成である。ここで、実質的に塞ぐとは、完全に塞ぐ場合に限らず、第1端子体及び第2端子体を通すための貫通部分を形成するように塞ぐ場合を含意する。
【0015】
第1係止部及び第1被係止部としては、具体的には、一方が係止爪であり、他方が係止穴である構成が挙げられる。なお、係止穴は、貫通穴であっても陥没穴であってよい。第2係止部及び第2被係止部についても同様である。
【0016】
第2収納体は、固定基体と第1収納体との係止が外れた場合における端子部の外囲部外部への移動を規制している。例えば、固定基体の少なくとも一部が第2収納体の少なくとも一部と押下移動方向に対向し、固定基体と第2収納体との対向部位が少なくとも所定の間隔の空隙により離隔している構成や、空隙を設けずに固定基体と第2収納体とが接触している構成が挙げられる。
【0017】
スイッチは、可動基体が操作応力伝達部に係合し、可動基体が操作部の押下操作により前記第2収容体に当接する構成であることが好ましい。この構成の場合、極めて過剰な力によって操作部が押下されたとしても、可動基体が第2収納体に当接することで、可動基体と操作応力伝達部との係合が外れることを防止できる。
【0018】
スイッチは、可動基体が操作応力伝達部に係合し、第1端子体と第2端子体とは操作部の非押下状態において端子間接続体を介して電気的に接続され、操作部の押下操作に応じた端子間接続体の移動により操作部の押下状態において電気的に断絶され、スイッチが、可動基体と前記操作応力伝達部との係合が外れた場合に、第1端子体及び第2端子体との電気的な接続を断絶させる方向に端子間接続体を移動させる付勢部を更に含む構成であることが好ましい。この構成の場合、可動基体と操作応力伝達部との係合が外れたときに、付勢部からの付勢力によって端子間接続体を強制的に所定の方向に移動させることができる。端子間接続体を移動させるとは、付勢部が直接に端子間接続体に作用することによって移動する場合に限らず、付勢部が他の部材、例えば、可動基体に作用することによって間接的に端子間接続体が移動する場合を含意している。第1端子体と第2端子体との電気的な接続が断絶する方向は、望ましくは、押下操作に応じた可動基体の移動方向と同一方向である。これによって、第1端子体と第2端子体との電気的な接続を、確実に、断絶することができる。
【0019】
ここで、本発明に係るスイッチについて、B接点型の非常停止スイッチを一例として図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るスイッチの構成の一例を表す斜視図である。図2は、本発明に係るスイッチの構成の一例を機能別に説明するための部分分解斜視図である。図3及び図4は、本発明に係るスイッチの構成を表す分解斜視図であり、図3が前方から見た場合を表し、図4が後方から見た場合を表している。なお、説明の便宜上、非常停止スイッチの中心軸に平行であって操作ハンドル11側の方向を前方と称し、封止ベース51側を後方と称す。また、固定端子32と固定端子33とが対向する方向であって、固定端子33から固定端子32に向かう方向を上方と称し、その逆方向を下方と称す。図1〜図4を参照して本発明に係る非常停止スイッチの構成の概略について説明する。
【0021】
本発明の非常停止スイッチは、図2に示されたように、収納ケース21(〔第1収納体〕の一種)と、収納ケース21の一端に係合された操作ハンドル11(〔操作部〕の一種)と、操作ハンドル11の操作に応じて、固定端子32(〔第1端子体〕の一種)と固定端子34(〔第2端子体〕の一種)との間及び固定端子33(〔第1端子体〕の一種)と固定端子35(〔第2端子体〕の一種)との間の導通状態を変化させる応力を伝達すると共に短絡状態又は開放状態にロックするロック機構60(〔操作応力伝達部〕の一種)(図3及び図4参照)とで構成された操作ユニット20を備えている。収納ケース21の短径筒部には、上方側の係止貫通穴1(〔第1被係止部〕の一種)と、下方側の係止貫通穴1(〔第1被係止部〕の一種)(図4参照)と、上方側の2つの係止貫通穴2(〔第2被係止部〕の一種)と、下方側の2つの係止貫通穴(〔第2被係止部〕の一種)(図示せず)と、上方側の後方端の2つの切り欠き21cと下方側の後方端の2つの切り欠き21c(一部図示せず)とが形成されている。
【0022】
また、非常停止スイッチは、固定端子部30と端子間接続部40とで構成された素子ユニットを備えている。固定端子部30は、固定端子用ベース31(〔固定基体〕の一種)と、固定端子用ベース31に固定された固定端子32〜35とで構成されている。固定端子32〜35は固定端子30に対して着脱自在である。固定端子用ベース31には、上方側の左右の係止爪3(〔第2係止部〕の一種)と、下方側の左右の係止爪3(〔第2係止部〕の一種)(一部図示せず)とが形成されている。各係止爪3は、固定端子用ベース31と一体成形されている。これによって、固定端子用ベース31に対する各係止爪3の剥離耐性を接着等により形成する場合よりも向上する。一方、端子間接続部40(〔端子間接続切換部〕の一種)は、ホルダ41(〔可動基体〕の一種)に配設され、固定端子32と固定端子34との導通状態を制御するための可動端子42と、可動端子42をホルダ41に対して前方向に付勢する接圧用弾性体43と、ホルダ41に配設され、固定端子33と固定端子35との導通状態を制御するための可動端子44と、可動端子44を前方向に付勢する接圧用弾性体45(例えば、コイルバネ)(〔付勢部〕の一種)と、ホルダ41の円板部の前方に配置されてホルダ41を収納ケース21に対して後方に付勢する弾性体46(例えば、コイルバネ)とで構成されている。なお、図2において、操作ハンドル11の押下操作に応じて移動する部分とそれに応じては移動しない部分とを明確にするために、固定端子部30と、端子間接続部40とを分離して表示したが、これらを一体化した後に、収納ケース21に組み付けられることとなる。具体的には、固定端子用ベース31に各固定端子32〜35を取り付ける前に、端子間接続部40を所定の位置に挿入し、その後、固定端子用ベース31に各固定端子32〜35を取り付けると共に、弾性体46をホルダ41の円板部の前方に配置することによって一体化される。このようにして一体化された素子ユニットは、固定端子用ベース31の係止爪3の位置が収納ケース21の係止貫通穴2と整合するように収納ケース21に挿入され、係止爪3と係止貫通穴2とによって収納ケース21に係止される。
【0023】
また、非常停止スイッチは、収納ケース21の後方端を実質的に塞ぐ封止ベース51(〔第2収納体〕の一種)を備えている。封止ベース51には、上方側の係止爪4と、下方側の係止爪(図示せず)と、上方側及び下方側の両端に延設された4つの嵌合爪51aとが形成されている。封止ベース51は、その係止爪4の位置が収納ケース21の係止貫通穴1と整合するように収納ケース21に挿入され、係止爪4と係止貫通穴1とによって収納ケース21に係止される。収納ケース21と封止ベース51との間には4つの貫通穴が形成され、それらの貫通穴を通して各固定端子32〜35が封止ベース51よりも後方側に突出する。上述のようにして組み立てられた最終状態が図1に示された状態である。なお、封止ベース51が収納ケース21から脱離しない限り、素子ユニットを収納ケース21から脱離させることはできない。また、切り欠き21c及び嵌合爪51aは省略してもよい。
【0024】
ここで、非常停止スイッチの構成及び動作について詳細に説明する。図5、図6及び図7は、復帰状態における非常停止スイッチの構成の一例を表す断面図であり、それぞれ、図1におけるA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を表している。また、図8、図9及び図10は、ロック状態における非常停止スイッチの構成の一例を表す断面図であり、それぞれ、図1におけるA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を表している。なお、非常停止スイッチが復帰状態である場合には固定端子32,34と固定端子33,35とが電気的に接続された短絡状態であり、ロック状態である場合にはそれらが電気的に断絶された開放状態である。
【0025】
まず、固定端子32及び固定端子34が端子間接続体42によって短絡されている場合について図5〜図7を参照しながら説明する。上記で説明したように、固定端子部30と端子間接続部40とで構成された素子ユニットを収納ケース21に挿入することによって、ホルダ41の応力受軸41aが応力伝達体62の応力伝達軸62aの中空内部に挿入されて、応力受軸41aの係合爪41bと応力伝達体62の係合爪62bによって係合されている。また、固定端子用ベース31と封止ベース51とは、非常停止スイッチの軸方向に沿った対向部位の最小間隔が微少間隔dだけ隔てた状態でそれぞれ収納ケース21に係止されている。
【0026】
応力伝達体62は、その後方側に配設された状態固定用弾性体65による軸心方向への付勢を受けた状態固定爪64によって後方への移動が規制されている。なお、弾性体61は概ね自然長に復帰しており、これによって、応力伝達体62と操作ハンドル11との間は引き離された状態で、操作ハンドル11は応力伝達体62に対して所定の位置に留まっている。
【0027】
ホルダ41は、弾性体46による後方側への付勢と、固定端子32,34の固定接点32a,34aと端子間接続体42の可動接点42aとの接触によって接圧用弾性体43による後方側への付勢とを受けているが、ホルダ41の応力受軸41aの係合爪41bが応力伝達軸62aの係合爪62bに係合されているために後方側への移動は規制されている。これによって、ホルダ41が所定の位置に留まっている。なお、接圧用弾性体43の付勢力によって固定接点32a,34aと可動接点42aとは所定の接圧が印加された状態で確実に接触することとなる。
【0028】
この状態から、操作ハンドル11が押下操作されると、復帰用弾性体61が縮み始め、応力伝達体62と操作ハンドル11との間隔が狭くなる。しかし、暫くの間は、状態固定用弾性体65による軸心方向への付勢を受けた状態固定爪64を移動させるために必要な応力が印加されないので、応力伝達体62は後方への移動を開始しない。更に操作ハンドル11の押下が進行すると、操作ハンドル11は応力伝達体62を押下する。応力伝達体62は状態固定爪64の傾斜部を押下し、状態固定爪64が状態固定用弾性体65の付勢力に抗して、非常停止スイッチの軸心から離れるように移動を始める。これによって、応力伝達体62は後方への移動を開始する。また、ホルダ41は応力受軸41aの係合爪41bと応力伝達体62の係合爪62bとの係合によって応力伝達体62に接続されているために、ホルダ41も応力伝達軸62の移動に追従して後方側へ移動を開始する。なお、ホルダ41の移動が開始されても、接圧用弾性体43が自然長に復帰するまでは端子間接続体42は移動せず、固定接点32a,34aと可動接点42aとの接触は維持される。その後、更に操作ハンドル11の押下が進行すると、固定接点32a,34aと可動接点42aとの接触しない状態となり、端子間接続体42はホルダ41と共に後方へ移動することとなる。更に、操作ハンドル11の押下が進行して、応力伝達体62の突起62cの先端が状態固定爪64の先端を越えると、収縮させられていた状態固定用弾性体65による軸心方向への復元力を受けて状態固定爪64が軸心方向へ移動を開始し、これに伴って応力伝達体62も後方側への付勢力を受けることとなる。そして、応力伝達体62は後方側へ移動し、ロック機構本体63に当接して停止すると共に、ホルダ41は、この後方端41cが封止ベース51に当接する。この状態で応力伝達体62は状態固定爪64によって動かない状態に固定される。また、後方端41cが封止ベース51に当接するように構成されていることで、過剰な押圧力によって操作ハンドル11が押下された場合に、応力受軸41aの係合爪41bと応力伝達体62の係合爪62bとの係合が外れそうになっても、後方端41cが封止ベース51に当接しているためにそれらが外れることを防止する。その後、操作ハンドル11の押下操作を止めると、操作ハンドル11は、収縮していた復帰用弾性体61による復元力を受けて、応力伝達体62と操作ハンドル11との間が引き離され、操作ハンドル11は応力伝達体62に対して所定の位置に留まる。これによって、図8〜図10に示されたロック状態となる。
【0029】
逆に、ロック状態から図5〜図7に示された復帰状態に戻すには、作業者が操作ハンドル11を引き抜くか、又は、操作ハンドル11を回転させればよい。操作ハンドル11を引き抜いた場合には、上述した復帰状態からロック状態への逆動作により復帰状態に戻る。操作ハンドル11を回転された場合には、後述のようにしてロック状態から復帰状態に戻る。ロック機構本体63には傾斜カム63aが設けられており、操作ハンドル11の内側には、傾斜カム63に摺接する傾斜カム(図示せず)が設けられている。これにより、作業者が操作ハンドルを回転させると、両端が操作ハンドル11及び応力伝達体62に接続された復帰用弾性体61(例えば、捻りコイルバネ)がねじられるとともに、操作ハンドル11は傾斜カムの摺接によって前方に移動する。操作ハンドル11が前方に移動することで応力伝達体62の突起62cの先端が状態固定爪64の先端を越える。そして、作業者が手を離すと、操作ハンドル11は捻られた復帰用弾性体61の復元力によって作業者が回転させた方向とは逆方向に回転する。これによって、復帰状態に戻る。以上のようにロック状態から復帰状態に戻すには、作業者が操作ハンドル11を引っ張ったり、回転させたりすることで行うことができる。
【0030】
上記の非常停止スイッチの構成であれば、封止ベース51にかかる負荷を係止爪4及び係止貫通穴1によって受け、固定端子32〜35を介しての負荷を係止爪3及び係止貫通穴2によって受けることができるために、それらの負荷が特定の1種類の固定部で受ける従来の場合よりも係止部ごとの累積負荷を低減することができる。これによって、非常停止スイッチの耐久性を向上させることができる。
【0031】
また、上記の非常停止スイッチの構成であれば、係止爪4と係止貫通穴1との係止がそれらの破損等により外れた場合であっても、係止爪3と係止貫通穴2との係止によって固定端子32〜35が収納ケース21に対して固定端子用ベース31を介して固定された状態を維持するために、非常停止スイッチの導通制御を正常に行うことができる。
【0032】
また、上記の非常停止スイッチの構成であれば、係止爪3と係止貫通穴2との係止が外れた場合であっても、係止爪4と係止貫通穴1とによる係止によって固定された封止ベース51によって固定端子部30の移動が規制されるために、固定端子部30に設けられた固定端子32〜35が収納ケース21に対して微少間隔dだけの移動しか許容されない実質的に固定された状態を維持することとなり、非常停止スイッチの導通制御を正常に行うことができる。これらによって、安全性を向上させることができる。
【0033】
また、上記の非常停止スイッチの構成であれば、極めて過剰な力によって操作ハンドル11が押下されたとしても、ホルダ41が封止ベース51に当接することで、ホルダ41の係合爪41bと応力伝達体62の係合爪62bとの係合が外れることを抑制できる。
【0034】
また、上記の非常停止スイッチの構成であれば、ホルダ41と応力伝達体62との係合が外れたときに、弾性体46からの付勢力によって端子間接続体を強制的に後方側に移動させることができ、確実に、固定端子32〜35を開放状態に移行させることができる。
【0035】
上記においては、B接点型のスイッチを一例として説明したが、A接点型のスイッチに対して本発明を適用することができる。この場合にも上記で説明した場合と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、非常停止ボタン、安全スイッチ、セレクタスイッチに代表される押ボタンスイッチ等のスイッチ全般に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るスイッチの構成の一例を表す斜視図。
【図2】本発明に係るスイッチの構成の一例を表す部分分解斜視図。
【図3】本発明に係るスイッチの構成の一例を表す正面側から見た分解斜視図。
【図4】本発明に係るスイッチの構成の一例を表す裏面側から見た分解斜視図。
【図5】復帰状態における図1のA−A’断面を表す断面図。
【図6】復帰状態における図1のB−B’断面を表す断面図。
【図7】復帰状態における図1のC−C’断面を表す断面図。
【図8】ロック状態における図1のA−A’断面を表す断面図。
【図9】ロック状態における図1のB−B’断面を表す断面図。
【図10】ロック状態における図1のC−C’断面を表す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1: 係止貫通穴(第1被係止部)
2: 係止貫通穴(第2被係止部)
3: 係止爪(第2係止部)
4: 係止爪(第1係止部)
10: 操作ハンドル(操作部)
21: ケース(第1収納体)
30: 固定端子部(端子部)
31: 固定端子用ベース(固定基体)
32,33: 固定端子(第1端子体)
34,35: 固定端子(第2端子体)
32a,33a: 固定接点
40: 端子間接続部
41: ホルダ(可動基体)
42,43: 端子間接続体
42a:可動接点
43:接圧用弾性体
46:弾性体(付勢部)
50: 封止部(第2収納体)
60: ロック機構(操作応力伝達部)
61: 復帰用弾性体
62: 応力伝達体
63: ロック機構本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1収納体及び前記第1収納体の一端を実質的に塞ぐ第2収納体を含む外囲部と、
前記外囲部の他端に配設された操作部と、
前記外囲部の内側に配設された固定基体、前記固定基体に固定され、一端が前記外囲部を貫通して外方向に突出する第1端子体、及び、前記固定基体に固定され、一端が前記外囲部を貫通しての外方向に突出する第2端子体を含む端子部と、
前記操作部に接続され、前記操作部の押下操作に伴い前記第2収納体側に移動する操作応力伝達部と、
前記外囲部の内側に配設され、前記操作応力伝達部の移動に連動して前記第2収納体側に移動する可動基体、及び、前記可動基体に固定され、前記第1端子体と前記第2端子体との間の電気的な接続を切り換える端子間接続体を含む端子間接続切換部と、
を含むスイッチであって、
前記第2収納体に形成された第1係止部と、
前記第1収納体に形成され、前記第1係止部に対応する第1被係止部と、
前記固定基体に形成された第2係止部と、
前記第1収納体に形成され、前記第2係止部に対応する第2被係止部と、
を更に含み、
前記第2収納体が、前記第1係止部及び前記第1被係止部により前記第1収納体に係止され、
前記固定基体が、前記第2係止部及び前記第2被係止部により前記第1収納体に係止され、
前記第2収納体が、前記固定基体と前記第1収納体との係止が外れた場合における前記端子部の前記外囲部の外部への移動を規制することを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記可動基体が、前記操作応力伝達部に係合し、
前記可動基体が、前記操作部の押下操作により前記第2収容体に当接する請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記可動基体が、前記操作応力伝達部に係合し、
前記第1端子体と前記第2端子体とは、前記操作部の非押下状態において前記端子間接続体を介して電気的に接続され、前記操作部の押下操作に応じた前記端子間接続体の移動により前記操作部の押下状態において電気的に断絶され、
前記スイッチが、前記可動基体と前記操作応力伝達部との係合が外れた場合に、前記第1端子体及び第2端子体との電気的な接続を断絶させる方向に前記端子間接続体を移動させる付勢部を更に含む請求項1又は2に記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−163916(P2009−163916A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339782(P2007−339782)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】