説明

スイッチ

【課題】電気機械式のマイクロウェーブ・スイッチの特性を改善する
【解決手段】スイッチは、シャフトに接続された回転接触子20を含む印刷回路基板10中で使用され、電気信号、特にマイクロウェーブ信号を選択的に切り替える。第1モータ40は、シャフト30を回転するように構成され、第2モータ44は印刷回路基板10に対する接触子の距離を変化させるため、シャフト30を軸方向に移動させる。第1及び第2モータ40及び44は、ポジション・コントローラが生成した駆動信号を受けて、印刷回路基板10から接触子20を引き離し、所望の位置に接触子20を回転させ、そして接触子20を印刷回路基板10上に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに関し、特に電気機械式のマイクロウェーブ・スイッチに関する。多くの電子回路が、回路中の異なる部品間で選択的に電気信号の伝達経路を変えるために1つ以上のスイッチ機構を含んでいる。こうしたスイッチ機構は、多くの場合、ソリッドステートのトランジスタ・ベースのスイッチ、リレーのような電気機械デバイス、又は、手で動かす純粋な機械スイッチである。こうしたスイッチは、比較的低い周波数の信号では良く動作するものの、スイッチされる電気信号の周波数がギガ・ヘルツ帯まで達していると、より高度な機構が必要となる。
【0002】
マイクロウェーブ信号のような高周波数信号をスイッチングするときは、スイッチは信号の不必要な反射や信号経路中の損失を防ぐよう注意深く設計される必要がある。例えば、広く用いられているマイクロウェーブ・スイッチは、典型的にはプラスチック製ロッド(棒)の端部に装着された複数のソレノイド駆動接触パッドを有する。接触パッドは、電気的な切断又は接続のために、回路基板から離れたり、回路基板上に載置されたりが選択的に行われる。各接触パッドは精密に製造された機械部品で、曲げられると跳ね返るので、接触パッドはある程度セルフ・クリーニングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−20312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたスイッチの部品の設計は精密でなければならないので、こうしたスイッチの設計は製造メーカーとってはコスト高となる。さらには、接触子(contact:コンタクト)のクリーニング動作を接触子の摩耗に対して(マイクロマシニング(微細機械加工)、手動調整又は潤滑油によって)適切にバランスするのは大変難しい。接触子の長寿命(1千万回を超える動作)又は初期動作保証を実現するのは大変で、満たせないことも多い。最後に、こうしたスイッチは、接触子が離れたとき、回路基板からの距離が短く、容量性接続が形成されるので比較的絶縁性が比較的低い。
【0005】
これら課題などから、マイクロウェーブ等の信号で使用できる改善された電気スイッチング・システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願で説明する技術は、電気スイッチに関し、特に高周波数のマイクロウェーブ信号をスイッチングできるスイッチに関する。1つの実施形態では、スイッチは、複数のマイクロストリップ・ラインのような導体の1つと選択的に配置が揃えられる(align:アラインする)回転接触子を含んでいる。この回転接触子は、1対のモータによって動き、これらモータは、プログラムによって印刷回路基板から接触子を引き離し、所望の位置に接触子を回転させ、そして接触子を所望の位置に降ろす(載置する)。また、これらモータは、回路基板上の適当な位置に一旦動かして、接触子をクリーニング(清掃)することもできる。
【0007】
1つの実施形態では、接触子はロッド(棒又はシャフト)に保持される。このロッドは、第1ステッピング・モータによって長手方向の軸の周りで回転させられ、第2ステッピング・モータによって長手方向に沿って前後に動かされる。第2ステッピング・モータによる動きによって、圧力を調整して印刷回路基板上に接触子を載置できる。この圧力は、接触子の寿命、摩耗、機械加工公差(tolerance)を補ったり、確実な動作のために、調整可能である。
【0008】
上述した本発明の概要は、本発明のコンセプトを精選してシンプルな形で紹介したもので、以下で更に詳しく説明する。上述の概要は、本発明のキーとなる特徴を特定するものでなく、また、本発明の範囲を決定するために用いることを意図したものではない。
【0009】
本発明の第1の観点は、印刷回路基板中の電気信号を選択的に切り替えるスイッチであって、
シャフトと、
該シャフトに結合された接触子(contact:コンタクト)と、
上記シャフトを選択的に回転させる第1モータと、
上記接触子を印刷回路基板に対して前後移動させるために上記シャフトを軸方向に動かす第2モータとを具え、
上記第1及び第2モータが、上記印刷回路基板から上記接触子を離し、上記印刷回路基板上の新しい位置へと上記接触子を回転させ、そして上記接触子を上記印刷回路基板上に載置する駆動信号をポジション・コントローラから受けるよう構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点としては、第1観点のスイッチにおいて、上記接触子の一方の端部が上記印刷回路基板上の1つのマイクロストリップ・ライン上に選択的に載置され、上記接触子の他方の端部がRFコネクタに電気的に接続されていても良い。
【0011】
本発明の第3の観点としては、第1観点のスイッチにおいて、上記接触子が接触子キャリアを用いて上記シャフトに結合され、上記接触子が上記接触子キャリアの側壁内に固定され、そして、上記接触子の一方の端部が上記接触子キャリアから放射状に外へ伸び、上記接触子の他方の端部が上記接触子キャリア内の凹部へと放射状に内側へ伸びているようにしても良い。
【0012】
本発明の第4の観点としては、第1観点のスイッチにおいて、上記第2モータは上記印刷回路基板に対してスリーブを前後移動させる共に、第1端部が上記スリーブに固定され、第2端部が上記シャフトに固定されたスプリングによって、上記スリーブの動きで、上記接触子がマイクロストリップに係合する圧力を調節するようにしても良い。
【0013】
本発明の第5の観点としては、第1観点のスイッチにおいて、上記スイッチが上記シャフトの角度位置及び軸方向の位置を示す信号を生成するエンコーダ回路を含むようにしても良い。
【0014】
本発明の第6の観点は、印刷回路基板上の複数のマイクロウェーブ・マイクロストリップ・ラインの1つをRFコネクタに選択的に接続するスイッチであって、
一端部が選択された1つのマイクロストリップ・ラインと電気的に接触するよう載置され、他端部がRFコネクタと電気的に接触している回転可能な接触子と、
上記接触子に結合されるシャフトと、
上記接触子を回転させるために上記シャフトを回転させる手段と、
上記選択された1つのマイクロストリップ・ライン及び上記RFコネクタに対して上記接触子を前後移動させるために上記シャフトを軸方向に移動させる手段と、
上記接触子を、印刷回路基板から離し、上記選択された1つのマイクロストリップ・ラインと配置を揃えるために回転し、上記選択された1つのマイクロストリップ・ライン上に載置するように、上記シャフトを回転させる手段及び上記シャフトを軸方向に移動させる手段が受ける駆動信号を生成するよう構成されるコントローラと
を具えるようにしても良い。
【0015】
本発明の第7の観点としては、第6観点のスイッチが、上記シャフトの角度位置及び上記シャフトの軸方向の位置を示す信号を生成するエンコーダ回路を含むようにしても良い。
【0016】
本発明の第8の観点としては、第6観点のスイッチが、上記接触子が上記印刷回路基板上のマイクロストリップ・ラインと係合するのに用いられる圧力を制御するスプリングを更に具えていても良い。
【0017】
本発明の第9の観点としては、第6観点のスイッチにおいて、上記接触子がマイクロストリップ・ラインと係合したときに、回転可能な上記接触子を清掃するための駆動信号を生成し、上記シャフトを回転させる手段でこの駆動信号を受けるように上記コントローラが構成されていても良い。
【0018】
本発明の第10の観点としては、第9観点のスイッチにおいて、上記接触子を清掃するために上記シャフトを回転させる駆動信号は、アナログの駆動信号としても良い。
【0019】
本発明の第11の観点は、印刷回路基板内の信号を選択的に切り替えるよう構成されたスイッチであって、
第1電気接触子と、
回転接触子が固定されたシャフトと、
上記印刷回路基板上で上記第1電気接触子から外方向に伸びる複数の電気導体と、
上記回転接触子が複数の上記電気導体の1つと配置を揃えるために上記シャフトを回転させるよう構成される第1モータと、
上記回転接触子を電気導体から離すか又は上記回転接触子を電気導体上に降ろすように上記シャフトを移動させるよう構成される第2モータと、
上記回転接触子を複数の上記電気導体の1つから遠ざけて、複数の上記電気導体の別のものと配置を揃えるよう回転させ、複数の上記電気導体の上記別のもの及び上記第1電気接触子に降ろすように上記第1及び第2モータを駆動するよう構成されるコントローラと
を具えるようにしても良い。
【0020】
本発明の第12の観点としては、第11観点のスイッチが、複数の上記電気導体の上記別のものに上記回転接触子上に降ろす力を調整するスプリングを更に具えていても良い。
【0021】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の1つの実施形態による多数のマイクロストリップ・ライン及び回転接触子を有する印刷回路基板の一部を示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の1つの実施形態によるスイッチの構造を示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の1つの実施形態による接触子キャリア内の同軸回転接触子を支持するチューブ内の絶縁軸受け筒を示す図である。
【図2C】図2Cは、本発明の1つの実施形態によるスイッチの分解立体図である。
【図2D】図2Dは、本発明の1つの実施形態による回転スイッチ接触子を通過する信号経路を示した図である。
【図3】図3は、印刷回路基板に対して大きさが合っていて、スイッチ中で使用される回転接触子を収納する裏が金属の遮蔽板の一部を示した図である。
【図4】図4は、プログラム可能な減衰回路を形成するよう配置された本発明の1つの実施形態によるスイッチ対を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述のように、本願で開示する技術は、電気信号、特に入力端子から出力端子まで高周波数の電気信号の伝達経路を変えるのに用いられるスイッチに関する。図1は、裏が金属の印刷回路基板10の一部を描いたもので、これにはマイクロストリップ・ライン12a〜12hが固定されている。マイクロウェーブ工学の当業者であれば理解されるように、接地領域14a〜14hがマイクロストリップ・ライン12a〜12hの間に配置され、マイクロウェーブ信号がマイクロストリップ・ラインと接地領域の間の空間を伝達する。印刷回路基板10は円形であるが、マイクロストリップ・ライン又は配線の他のパターンが固定されたもっと大きな回路基板の一部として、この回路基板が含まれていてもよいことが理解されるであろう。
【0024】
図示した実施形態では、マイクロストリップ・ライン12a〜12hが、裏面金属印刷回路基板10の中心点から放射状に伸びている。回転可能な接触子(contact:コンタクト)20は、接触子20の一端部がマイクロストリップ・ライン12a〜12gの1つと選択的に係合し、接触子20の他端部がRFコネクタ(図示せず)と選択的に係合するように配置される。接触子20の角度方向を変更することによって、複数のマイクロストリップ・ラインの1つとRFコネクタとの間の導電経路が選択的に形成される。
【0025】
図2Aは、ここ開示する技術による電気機械式マイクロウェーブ・マルチプレクサ、つまり、スイッチの1実施形態を示している。このスイッチは、シャフト30を有し、これは回転接触子20を支持し、移動させる。金属接触子キャリア32が、シャフト30の一端部に固定される。接触子キャリア32には中心開口のある第1空洞があり、ここにシャフト30の一端部がはめ込まれる。1つの実施形態では、回転接触子20が導電性金属のストリップ(strip:帯板)を含み、これが絶縁軸受け筒(ブッシュ:bush)34内にはめ込まれる。接触子キャリア32から接触子の一部が放射状に外へ伸びるように、絶縁軸受け筒34は接触子キャリア32の側壁内に固定される。絶縁軸受け筒34によって、接触子20の両端部はマイクロストリップ及びRFコネクタ上のピンと係合したり、離れたりできる一方で、絶縁軸受け筒34は接触子が放射状に内側方向又は外側方向に移動するのを防止する。
【0026】
絶縁軸受け筒34及び接触子キャリア32のもっと詳細な実施形態が図2Bに示されている。このスイッチの断面図では、印刷回路基板10は外縁が八角形をしており、このため、多数のRFコネクタ16a、16b等をスイッチに装着し、対応するマイクロストリップ・ライン12a〜12b等の1つに接続できる。接触子20は、接触子の端部が自由に曲げられるようにして軸受け筒34の内壁内のホール(hole:穴)内に保持される。1つの実施形態では、接触子20は、導電性金属の小さな矩形バーとして形成されるが、この矩形バーはその周りを囲む(surrounding)チューブ内で、マイクロウェーブの信号品位(インテグリティ:integrity)及び整合性に関して最適化され、また、セルフ・クリーニングのための設計は必要ない。軸受け筒34は、接触子キャリア32の側壁中の放射状のホール内に据え付けられ、接触子20の一端部は接触子キャリアから外方向に放射状に伸び、接触子の他端部は内側の接触子キャリア内に広がる空洞の方へ放射状に伸びる。
【0027】
図2Aに戻ると、1対のステッピング・モータ40及び44がポジション・コントローラ64からの信号で駆動され、シャフト30を回転させたり、接触子20を印刷回路基板から離したり近づけたりする。これら両ステッピング・モータは、印刷回路基板10に対して固定した位置関係で保持される。1つの実施形態では、ステッピング・モータ40及び44は、表面が金属遮蔽(screen)の印刷回路基板70に固定され、金属表面遮蔽回路基板70は印刷回路基板10上のマイクロストリップ・ラインを覆うように装着されると共に、印刷回路基板10に対して固定される。
【0028】
図示した実施形態では、ステッピング・モータ40は、スプライン駆動(splined drive)ステッピング・モータであり、これはシャフト30の外面上の長手方向の多数のスプライン(キー溝)42とかみ合うギア歯を有している。ポジション・コントローラ64からの命令でステッピング・モータ40を駆動すると、シャフト30は長手方向の軸の周りで回転し、その結果、接触子20の角度方向が変化する。ステッピング・モータは、1.8度以下の分解能、200以上のステップを有している。もっと細かい分解能のために、より多数のステップを用いることも可能であるが、接触子の移動時間が長くなる。同様に、ステップ数を減らせば、接触子の移動時間は短くなるが、分解能は低くなる。
【0029】
ステッピング・モータ44は、リニア駆動であり、ナットのようなねじ山付部材46を回転させる。ナットには、シャフト30を囲むスリーブ48の外面上の連携するねじ山と係合するねじ山がある。スリーブ48の一端部には、フランジ50が含まれる。スプリング52は、一端部でフランジ50に固定され、他方の端部でシャフト30上の放射状フランジ54に固定される。ポジション・コントローラ64からの命令でステッピング・モータ44を駆動すると、ナット46は、スリーブ48を接触子キャリア32の方向へ移動させるか又は離れる方向へ移動させる。
【0030】
ステッピング・モータ44がスリーブ48を接触子キャリア32の方向へ行けるだけ動かすと、接触子20の一端部は印刷回路基板10上に押しつけられ、マイクロストリップ・ラインと係合する。接触子20の他端部は、図2Dがもっともよく示すように、RFコネクタ80の中心導体ピン82と係合する。1つの実施形態では、RFコネクタ80は2.92型コネクタで、これは回路基板10に固定される。しかし、他の形式の適切なマイクロウェーブ・コネクタを用いてもよい。これに代えて、接触子20に係合するピン82が、印刷回路基板の別の面上に配線されるマイクロストリップ・ラインに接続されていてもよい。
【0031】
印刷回路基板10及び中心導体ピン82に対してコネクタ20を押しつける力は、スプリング52の圧縮量で制御される。
【0032】
ステッピング・モータ44がスリーブ48を接触子キャリア32から離れる方向に動かすと、スプリング52は、スリーブが更に接触子キャリア32から離れると、接触子20が回路基板から持ち上げられるという点まで伸びる。開示した実施形態では、接触子20の印刷回路基板に対する圧力を調整するのに、巻きスプリング52を用いたが、接触子をマイクロストリップ・ラインに係合させる圧力を変化させるのに、板バネ(リーフ・スプリング)、磁気スプリング又はガス・スプリングのような他のメカニズムを用いてもよいことが理解されるであろう。
【0033】
エンコーダ回路基板60上には、従来型の回路があり、これはシャフト30の回転(角度)及び軸方向位置を検出する。エンコーダ回路基板60上のこの回路は、シャフト30の回転及び軸方向位置を表現するポジション(位置)信号をポジション・コントローラ64に供給する。ポジション・コントローラ64は、マイクロコントローラ又は他のプログラム可能な回路を含んでもよく、これはコンピュータで読み出し可能なメモリ(IC、フラッシュ・メモリ、CD、DVDなど)に蓄積されたプログラムされた命令のシーケンスを実行する。プルグラムされた命令は、ポジション・コントローラ64にポジション信号を読ませ、接触子20を所望の位置に配置するためにステッピング・モータ40及び44の一方又は両方を動かす適切な駆動信号を生成する。ポジション・コントローラ64は、回路中の他の構成要素のような多数のデバイス、リモート(遠隔)のコンピュータやマイクロコントローラ、又は、接触子20の所望方向の角度を選択するために手動でアクチュエートしたスイッチからの信号を受けるようにしてもよい。1つの実施形態では、ポジション・コントローラ64がリモート(遠隔)制御したり、リモート・リセットのようなタスクを実行したり、ファームウェアをアップデートするといったことができるように、ポジション・コントローラ64がコンピュータ通信リンク(IC、SPI、USB、Firewire、WI−FI、LAN、WANなど)を介して、他のコンピュータ又は他の回路と通信するよう構成されてもよい。
【0034】
金属表面遮蔽(screen)回路基板70は、印刷回路基板10を覆っているが、これには複数のスロットがあり、それらの中にマイクロストリップ・ラインが重なる。図2C及び図3が最もよく示しているが、金属表面遮蔽回路基板70には多数のスロット72a〜72hがあり、これらは印刷回路基板10上のマイクロストリップ・ライン12a〜12hと重なる。金属表面にはホール(穴)72があり、これを通してシャフト30が装着される。組み立てられると、金属表面遮蔽回路基板70は、印刷回路基板10に対して同一平面上に配置される。金属表面遮蔽回路基板70には、接触子20が印刷回路基板10から引き離されたときに、接触子キャリア32を十分に受けられる程度の深い第1凹部74が含まれる。第2凹部76には、接触子20が印刷回路基板10から引き離されてシャフト30によって回転させることができるだけの深さと直径がある。
【0035】
動作の間、ステッピング・モータ40及び44は、接触子20を回転又は前後に移動させるために、一緒に動作する。もしステッピング・モータ40及び44の両方が同じ量だけ動くと、接触子20は回転するが、印刷回路基板の方向に関して前後移動(lift up or down)しない。ステッピング・モータ44がシャフト30に対して相対的にナット46を動かすと、シャフトは回路基板10から後退するか、又は、回路基板方向に進む。
【0036】
1つの実施形態では、ポジション・コントローラ64は、印刷回路基板から接触子20を離す信号を供給する。次に、ポジション・コントローラは、ステッピング・モータ40及び44に接触子20が所望のマイクロストリップと配置が揃う(align:アラインする)ように回転させる信号を供給する。接触子20が、一旦、所望のマイクロストリップ・ラインと揃ったら、接触子20が所望のマイクロストリップ・ライン及びRFコネクタと係合するように、信号がポジション・コントローラ64からステッピング・モータ44に印加される。また、ポジション・コントローラ64は、接触子がマイクロストリップ・ライン及びRFコネクタと係合するときに、ステッピング・モータ40に接触子を前後に移動させるようにする信号(例えば、アナログ駆動信号)を生成することもできる。これは、接触子についての「きさげ(scraping)」動作となり、これによって接触子が清掃(クリーニング)にされ、スイッチの導電性が改善される。こうした清掃サイクルは、周期的に実行させたり、リブート、リセットのような他の所定回路条件や、操作者の命令に応じて実行させることができる。
【0037】
1つの実施形態では、スイッチの直流抵抗が適切な試験回路で検出され、この回路がポジション・コントローラ64内に内蔵されるか、又は、別個の回路コンポーネントとして構成されてもよい。直流抵抗の検出に応じて、ポジション・コントローラ64は、回転接触子20についてのきさげ(scraping)サイクルを開始することが可能であるが、これに代えて、マイクロストリップ・ライン及びRFコネクタ80の中心導体82に対して接触子を駆動させる圧力を増減させるようにしてもよい。
【0038】
図4は、ここに開示する技術に従って構成されたスイッチを対で使った実施形態を示し、プログラマブル・アッテネータ(減衰回路)を形成するように配置されている。この構成では、第1スイッチ100は、回転接触子102を有し、これはスイッチの中心で入力端子として機能するRFコネクタ(図示せず)を、多数のマイクロストリップ・ライン104a〜104hの1つに接続する。第2スイッチ110は、回転接触子112を有し、これはスイッチの中心で出力端子として機能するRFコネクタを、多数のマイクロストリップ・ライン114a〜114hの1つに接続する。マイクロストリップ・ライン104a〜104h及び114a〜114hのそれぞれは、異なる減衰回路130a〜130hで互いに接続される。例えば、各減衰回路は、Pi型又はT型減衰回路としてもよい。接触子102及び112の角度位置を制御することによって、入力及び出力RFコネクタ間で減衰量を可変できる。スイッチ100及び110は1つの印刷回路基板上に形成されているので、減衰回路中に複数のケーブルを必要とせず、また、減衰回路130a〜130hの値は、正確な動作を与えるように、綿密に制御できる。
【0039】
開示技術によるスイッチ/マルチプレクサは、ソレノイド動作の従来のスイッチ/マルチプレクサに対して、いくつかの利点があることが理解されるであろう。第1に、開示したスイッチは回路基板に直接マウント(装着)できる。加えて、回転接触子が、選択されたマイクロストリップ・ラインとほぼ一直線に載置されるので、挿入損失及びインピーダンス不整合を減少させる。複数のステッピング・モータの制御による前後移動及び載置動作によって、接触子の摩耗が低減され、接触子の寿命が伸びる。加えて、基板エンコーダ回路60上の回路からの信号をモニタ(観測)することによって、接触子20とマイクロストリップ・ラインの配置を揃える動作(alignment:アライメント)を、労力を要する手動調整なしで行える。更には、接触子の時間経過による摩耗をポジション・コントローラ64によって考慮することが可能になる。例えば、スイッチの動作回数を記録し、接触子の摩耗を補うように接触子に対する圧力を調整するようポジション・コントローラ64にプログラムできる。加えて、このスイッチによれば、精密加工部品の数を減らすことができる。最後に、開示したスイッチでは、接触子が非接続のマイクロストリップ・ラインから相対的に遠い位置で移動し、また、遮蔽(screening)金属がその位置に入れ替わって存在するので、絶縁性が改善される。
【0040】
いくつかの実施形態を図示し説明してきたが、本発明の要旨から離れることなく種々の変更が可能なことが理解されるであろう。例えば、ねじ山を付けたリニア・ステッピング・モータを用いて接触子を回路基板に対して前後させる代わりに、カム・メカニズムのような別のメカニズムを用いて接触子を回路基板に対して前後させてもよいことが理解されるであろう。他の代替としては、ステッピング・モータを等価な動作をするサーボ・モータで置き換えることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 印刷回路基板
12a〜12h マイクロストリップ・ライン
14a〜14h 接地領域
16a〜16h RFコネクタ
20 接触子
30 シャフト
32 接触子キャリア
34 絶縁軸受け筒
40 ステッピング・モータ
42 スプライン(キーみぞ)
44 ステッピング・モータ
46 ねじ山付部材
48 スリーブ
52 スプリング
54 放射状フランジ
60 エンコーダ回路基板
64 ポジション・コントローラ
70 金属遮蔽印刷回路基板
72 ホール
72a〜72h スロット
74 第1凹部
76 第2凹部
80 RFコネクタ
82 中心導体ピン
100 第1スイッチ
110 第2スイッチ
102 回転接触子
112 回転接触子
104a〜104h マイクロストリップ・ライン
114a〜114h マイクロストリップ・ライン
130a〜130h 減衰回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷回路基板中の電気信号を選択的に切り替えるスイッチであって、
シャフトと、
該シャフトに結合された接触子と、
上記シャフトを選択的に回転させる第1モータと、
上記接触子を印刷回路基板に対して前後移動させるために上記シャフトを軸方向に動かす第2モータとを具え、
上記第1及び第2モータが、上記印刷回路基板から上記接触子を離し、上記印刷回路基板上の新しい位置へと上記接触子を回転させ、そして上記接触子を上記印刷回路基板上に載置する駆動信号をポジション・コントローラから受けるよう構成されることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
印刷回路基板上の複数のマイクロウェーブ・マイクロストリップ・ラインの1つをRFコネクタに選択的に接続するスイッチであって、
一端部が選択された1つのマイクロストリップ・ラインと電気的に接触するよう載置され、他端部がRFコネクタと電気的に接触している回転可能な接触子と、
上記接触子に結合されるシャフトと、
上記接触子を回転させるために上記シャフトを回転させる手段と、
上記選択された1つのマイクロストリップ・ライン及び上記RFコネクタに対して上記接触子を前後移動させるために上記シャフトを軸方向に移動させる手段と、
上記接触子を、印刷回路基板から離し、上記選択された1つのマイクロストリップ・ラインと配置を揃えるために回転し、上記選択された1つのマイクロストリップ・ライン上に載置するように、上記シャフトを回転させる手段及び上記シャフトを軸方向に移動させる手段が受ける駆動信号を生成するよう構成されるコントローラと
を具えるスイッチ。
【請求項3】
印刷回路基板内の信号を選択的に切り替えるよう構成されたスイッチであって、
第1電気接触子と、
回転接触子が固定されたシャフトと、
上記印刷回路基板上で上記第1電気接触子から外方向に伸びる複数の電気導体と、
上記回転接触子が複数の上記電気導体の1つと配置を揃えるために上記シャフトを回転させるよう構成される第1モータと、
上記回転接触子を電気導体から離すか又は上記回転接触子を電気導体上に降ろすように上記シャフトを移動させるよう構成される第2モータと、
上記回転接触子を複数の上記電気導体の1つから遠ざけて、複数の上記電気導体の別のものと配置を揃えるよう回転させ、複数の上記電気導体の上記別のもの及び上記第1電気接触子に降ろすように上記第1及び第2モータを駆動するよう構成されるコントローラと
を具えるスイッチ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−139467(P2011−139467A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291011(P2010−291011)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(509233459)フルークコーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
【Fターム(参考)】