説明

スイッチ

【課題】小型化の要請に応えつつも、可動電極への負荷を抑制して長寿命化と耐衝撃性の向上を可能とするスイッチを提供する。
【解決手段】回路基板上に実装されるケース2は、凹部2aを有する。凹部2a内には複数の固定電極3a、3bと、可動電極5が配置されている。可動電極5は、複数の固定電極3a、3b同士を導通状態とする第1の位置と、非導通状態とする第2の位置との間で変位可能とされている。押圧部材6は凹部2aの少なくとも一部を覆って配置され、外部からの押圧力によって可動電極5を第2の位置から第1の位置へ変位させる。緩衝部材7は、可動電極5と押圧部材6の間に配置され、前記押圧力によって弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種小型電子機器に使用されるスイッチに関し、特に回路基板上に実装されるプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置においては、回路基板上に実装されたケースに凹部が形成され、当該凹部内に複数の固定電極と、可動電極とが配置されている。可動電極は当該複数の固定電極同士を導通状態とする第1の位置と、非導通状態とする第2の位置との間で弾性変位可能とされており、通常時において第2の位置にある可動電極に対向するように押圧部材が配置されている。外部からの押圧力により押圧部材が可動電極を第1の位置へ変位させると、固定電極同士が導通状態とされる。押圧力が解除されると、可動電極が第2の位置に弾性復帰して固定電極同士が非導通状態とされる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
押圧部材としては、柔軟性を有するフィルム状の部材に押し子部材を接着したものが用いられている。押し子部材は熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂からなり、高い剛性を有している。外部からの押圧力によって押し子部材が可動電極に当接し、可動電極を変位あるいは変形させるように構成されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129383号公報
【特許文献2】特開2010−118200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子機器の小型化に伴い、スイッチ自体にも各構成部品の小型化が求められている。これに伴い可動電極の小型化が進行するにつれ、高い剛性を有する押し子部材の接触による可動電極への負荷が相対的に大きくなる。その結果、可動電極が塑性変形して然るべき弾性復帰ができなくなることがある。また高い剛性を有する押し子部材が可動電極の弾性変形に追従できないことから応力の局所的集中が発生し、可動電極の塑性変形だけでなく、押し子部材の破損や接着剥離といった事態が生じうる。
【0006】
またスイッチに予期せぬ衝撃が加わった場合、高い剛性を有する押し子部材が可動電極に衝突することにより、可動電極の塑性変形や押し子部材の破損が生じうる。その結果、スイッチに本来求められる機能を維持できなくなってしまう。
【0007】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、小型化の要請に応えつつも、可動電極への負荷を抑制して長寿命化と耐衝撃性の向上を可能とするスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一部を解決するために本発明が採り得る一態様は、スイッチであって、回路基板上に実装され、凹部を有するケースと、前記凹部内に配置された複数の固定電極と、前記凹部内に配置され、前記複数の固定電極同士を導通状態とする第1の位置と、非導通状態とする第2の位置との間で変位可能とされている可動電極と、前記凹部の少なくとも一部を覆って配置され、外部からの押圧力によって前記可動電極を前記第2の位置から前記第1の位置へ変位させる押圧部材と、前記可動電極と前記押圧部材の間に配置され、前記押圧力により弾性変形する緩衝部材とを備える。
【0009】
上記の構成によれば、押圧力による可動電極の変位に追従して緩衝部材が弾性変形するため、可動電極と押圧部材の相互間における局所的な応力集中を回避することができる。
【0010】
前記緩衝部材に耐熱性を有するシリコンゴム、フッ素系ゴム、UV樹脂のいずれかを含有する材料を用いる場合、リフロー処理でスイッチを回路基板に実装することができる。
【0011】
前記押圧部材は、前記可動電極全体を覆う第1の部分と、前記可動電極の変位する方向に沿って前記第1の部分から突出する第2の部分とを備え、前記第1の部分と前記第2の部分は一体構造を成す構成としてもよい。
【0012】
ここで「一体構造」とは、上記第1の部分と第2の部分の境界部が同一素材からなり、かつ連続している状態(モノリシックな状態)を指す。素材や特性の異なる二つ以上の部材を接着や溶着により一体とした構成とは区別する意味で用いる。
【0013】
このような構成によれば、上記第2部分を効果的に押し子部材として利用できるだけでなく、衝撃による第1部分と第2部分の剥離を回避することができる。
【0014】
前記緩衝部材は、前記可動電極全体を覆う第1の部分と、前記可動電極の変位する方向に沿って前記第1の部分から突出する第2の部分とを備える構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、緩衝部材を押し子部材として機能させることができる。また突出する第2部分がスイッチの外部に露出していないため、当該部分が他部材等との干渉によって損傷する事態を回避できる。したがってスイッチ操作の感触が劣化することを防止できる。
【0016】
前記押圧部材が前記緩衝部材よりも高い剛性を有する構成とすれば、押圧部材をボタン部材として機能させることができる。
【0017】
前記押圧部材にポリイミド、PEEK樹脂、フッ素系樹脂のいずれかを含有する材料を用いる場合、リフロー処理でスイッチを回路基板に実装することができる。
【0018】
前記可動電極が弾性を有する場合、第1位置から第2位置への復帰がより円滑になされ、緩衝部材の弾性復帰も促進される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可動電極と押圧部材相互間における局所的な応力集中を回避できるため、スイッチに対する小型化の要請に応えつつも、可動電極への負荷を抑制して長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のプッシュスイッチの外観を示す4面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。
【図3】図1のプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図4】図2の(a)における線IV−IVに沿った断面を示すとともに、外部から押圧力を加えた場合の各部の変形を説明する図である。
【図5】図1のプッシュスイッチの変形例を示す断面図である。
【図6】図1のプッシュスイッチの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0022】
本発明に係るスイッチの一実施形態として、プッシュスイッチ1の斜視図を図1に、四面図を図2に示す。図2において(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。背面および左側面から見た形状は、各々正面図と右側面図に示したものと対称であるため、図示を省略している。
【0023】
これらの図に示すように、プッシュスイッチ1は、回路基板上に実装される絶縁性樹脂製のケース2の上面に押圧部材6が設置された外観を呈している。
【0024】
図3の分解斜視図に示すように、ケース2は、凹部2aが開口した上面2bを有している。凹部2aの底部における四隅には複数の第1の固定電極3aが配置されており、底部中央には複数の第2の固定電極3bが配置されている。第1の固定電極3aおよび第2の固定電極3bは、本発明における複数の固定電極として機能する。
【0025】
第1の固定電極3aは、各々ケース2内において第1の外部接続端子4aと導通している。第2の固定電極3bは、各々ケース2内において第2の外部接続端子4bと導通している。第1の外部接続端子4aおよび第2の外部接続端子4bは、各々回路基板の実装面上に形成された配線端子のランドに半田付けによって接続される。
【0026】
ケース2の凹部2a内には可動電極5が収容されている。可動電極5は、弾性変形が可能なドーム形状の導電性部材である。図4の(a)において断面を示すように、可動電極5は、外縁部5aが第1の固定電極3aと接触するように、かつ中央部5bが第2の固定電極3bと間隔をあけて対向するように、凹部2a内に配置されている。すなわち可動電極5は通常時において上側に凸とされている。
【0027】
押圧部材6は、凹部2aを覆うようにケース2の上面2b(図3参照)上に配置されており、図示しないボタン等の操作によって上方(外部)から押圧操作を受ける。
【0028】
可動電極5と押圧部材6の間には、緩衝部材7が配置されている。緩衝部材7は、例えばシリコンゴム、フッ素系ゴム、UV樹脂のいずれかを含有する材料で形成されており、柔軟性に富み、弾性を有している。具体的には、緩衝部材7は、押圧部材6の弾性係数よりも高い弾性係数を有している。またこれらの材料は耐熱性を有するため、プッシュスイッチ1を回路基板に実装する際の半田付けにリフロー処理を用いる場合に有用である。
【0029】
図示しないボタン等の操作に伴う押圧力によって下方に位置する可動電極5の中央部5bが押圧部材6および緩衝部材7を介して押圧される。可動電極5に加わる負荷が所定値を超えると、中央部5bがクリック感を伴って反転して下方に凸の状態になるとともに、第2の固定電極3bに接触する。
【0030】
これに伴い、第1の固定電極3aと第2の固定電極3bが可動電極5を介して導通状態となる。押圧力を解除すると、可動電極5の自己復元力(弾性)により中央部5bがクリック感を伴って元の状態(上方に凸の状態)に復帰し、第1の固定電極3aと第2の固定電極3bの導通は解除される。したがって第1の固定電極3aおよび第2の固定電極3bは、各々少なくとも一つ設けられていればよい。
【0031】
すなわち可動電極5は、複数の固定電極同士を導通状態とする第1の位置と、非導通状態とする第2の位置との間で変位可能とされており、押圧部材6は、外部からの押圧力によって可動電極5を第2の位置から第1の位置へ変位させる。
【0032】
押圧部材6は、平坦部6a(第1の部分)および凸部6b(第2の部分)を備えている。平坦部6aは可動電極5全体を覆うように延在してケース2の上面2bに達している。換言するとケース2の上面2bの少なくとも一部は、押圧部材6の平坦部6aによって覆われている。凸部6bは円錐台形状を有し、平坦部6aの中央部において上方に突出している。換言すると、凸部6bの突出方向は可動電極5の変位する方向に一致している。
【0033】
また平坦部6aと凸部6bは一体構造を成すように形成されている。ここで「一体構造」とは、平坦部6aと凸部6bの境界部が同一素材からなり、かつ連続している状態(モノリシックな状態)を指す。素材や特性の異なる二つ以上の部材を接着や溶着により一体とした構成とは区別する意味で用いる。
【0034】
押圧部材6は、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、またはフッ素系樹脂のような熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有する材料からなる。これらの材料は耐熱性を有するため、プッシュスイッチ1を回路基板に実装する際の半田付けにリフロー処理を用いる場合に有用である。
【0035】
緩衝部材7は、押圧部材6の平坦部6aの下面すなわち可動電極5に面する側に適宜の接着剤により接着されており、押圧操作に伴う押圧部材6の変形に追随して弾性変形可能な構成とされている。
【0036】
次に図4を参照しつつ、プッシュスイッチ1が操作される際における各部の動作について詳細に説明する。
【0037】
図4の(a)には通常状態、すなわち図示しないボタン等の操作部材による押圧力が印加されていない状態を示す。上述のように、可動電極5は上方に凸の状態でケース2の凹部に収容されており、可動電極5の中央部5bと第2の固定電極3bは非接触状態にある。したがって第1の固定電極3aと第2の固定電極3b(第1の外部接続端子4aと第2の外部接続端子4b)は非導通状態にある。
【0038】
図4の(b)に矢印で示すように外部から押圧力を印加すると、相対的に剛性の低い押圧部材6の平坦部6aが変形し、凸部6bは原形を維持したまま下方に沈み込む。凸部6bはケース2の凹部2a内に進入して押し子部材として機能し、緩衝部材7を介して可動電極5を下方に押圧する。
【0039】
可動電極5は上方に凸の状態を維持しようとするため、可動電極5および緩衝部材7に加わる荷重は徐々に増大していく。したがって緩衝部材7は押し潰されるように弾性変形する。
【0040】
可動電極5に加わる荷重が所定値を超えると、中央部5bがクリック感を伴って反転し、下方に凸の状態となる。これにより中央部5bと第2の固定電極3bが接触し(可動電極5が第1の位置に変位し)、第1の固定電極3aと第2の固定電極3b(第1の外部接続端子4aと第2の外部接続端子4b)が可動電極5を介して導通状態となる。
【0041】
可動電極5と第2の固定電極3bの接触後(第1位置への変位後)にも継続して押圧部材6に押圧力が加えられた場合、可動電極5はもはや変形できないため、可動電極5および緩衝部材7に加わる荷重が再び増大する。しかしながら緩衝部材7は更に押し潰されるように弾性変形して可動電極5に過剰な負荷が加わることを防止する。
【0042】
押圧操作力を解除すると、可動電極5の自己復元力(弾性)により中央部5bがクリック感を伴って上方に凸の状態に復帰し(第2の位置に変位し)、第1の固定電極3aと第2の固定電極3bの導通は解除される。また緩衝部材7の自己復元力(弾性)により押圧部材6を上方へ押し戻す結果、図4の(a)に示す初期状態に至る。
【0043】
上記の構成を有する本実施形態のスイッチによれば、外部から加えられる押圧力によって緩衝部材7が弾性変形することにより、可動電極5への負荷の局所的集中を回避可能である。よって従来より用いられている比較的剛性の高い押圧部材6を用いつつも可動電極5の塑性変形を防止することができる。したがって小型化の要請に応えつつも、プッシュスイッチ1の長寿命化が可能である。
【0044】
また可動電極5の弾性変形に緩衝部材7が追従して弾性変形するため、可動電極5の弾性変形時における衝撃を緩衝部材7で吸収できる。したがって応力の局所的集中による可動電極5の塑性変形を防止できるだけでなく、当該衝撃が押圧部材6に伝達されて破損が生じるのを防止可能である。よって小型化の要請に応えつつも、プッシュスイッチ1の長寿命化が可能である。
【0045】
さらに可動電極5が第2の固定電極3bと接触した(第1の位置へ変位した)後に外部からの押圧力が継続して加えられた場合においても、可動電極5に加わる過剰負荷を緩衝部材7の弾性変形によって吸収することができるため、可動電極5の弾性変形後に継続して過剰な荷重が加えられることによる可動電極5の塑性変形を防止できる。またそのような荷重によって押圧部材6が破損することもない。よって小型化の要請に応えつつも、プッシュスイッチ1の長寿命化が可能である。
【0046】
本実施形態のように押し子として機能する凸部6bを有する押圧部材6は、可動電極5に対して押圧力を局所的に加えやすいため、プッシュスイッチ1が小型であるほど有用であることが知られている。一方で局所的に加わる負荷が可動電極5の塑性変形や押圧部材6の破損の要因となりうるが、本実施形態のように緩衝部材7が負荷を分散し衝撃を吸収することにより、小型化の要請に応えつつも、これらの不具合を回避することができる。
【0047】
また予期せぬ衝撃により押圧部材6が変位した場合においても、緩衝部材7が弾性変形することにより当該衝撃を吸収できるだけでなく、緩衝部材7の自己復元力(弾性)により押圧部材6を元の位置に復帰させてプッシュスイッチ1本来の機能を発揮できる状態を維持することが可能である。よって小型化の要請に応えつつも、プッシュスイッチ1の耐衝撃性を向上させることができる。
【0048】
次に図5および図6を参照しつつ、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態と実質的に同一または同等の機能を有する要素については同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。なお図5および図6に示す断面は、図4と同様に図2の(a)における線IV−IVに沿う断面に対応するものである。
【0049】
図5の(a)に示すプッシュスイッチ1Aは、押圧部材6Aが凸部6bを備えていない点において上記実施形態の押圧部材6と異なる。緩衝部材7は、押圧部材6Aの下面すなわち可動電極5に面する側に適宜の接着剤により接着されており、押圧操作に伴う押圧部材6Aの変形に追随して弾性変形可能とされている。
【0050】
図5の(b)に示すプッシュスイッチ1Bは、押圧部材6Bが上側凸部6cおよび下側凸部6dを備えるボタン部材として構成されている点において上記実施形態の押圧部材6と異なる。
【0051】
ケース2の凹部2aは、開口8aを有するカバー部材8によって覆われており、押圧部材6Bの上側凸部6cが開口8aを通じて上方に突出している。押圧部材6Bの下側凸部6dを含む一部は凹部2a内に収容され、上下方向に摺動可能に保持されている。
【0052】
押圧部材6Bは、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、またはフッ素系樹脂のような熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有する材料からなり、緩衝部材7よりも高い剛性を有している。また押圧部材6Bは、上側凸部6cおよび下側凸部6dを含む全体が一体構造を成すように形成されている。
【0053】
緩衝部材7は、押圧部材6Bの下側凸部6dの下面すなわち可動電極5に面する側に適宜の接着剤により接着されている。押圧部材6Bが下方に押圧操作(ボタン操作)されると、緩衝部材7は可動電極5に押し付けられて弾性変形する。
【0054】
図6の(a)に示すプッシュスイッチ1Cは、緩衝部材7Aが支持部7aおよび凸部7bを備えている点において、プッシュスイッチ1Aの緩衝部材7と異なる。
【0055】
緩衝部材7Aの第1部分としての支持部7aは、可動電極5全体を覆うように延び、ケース2の上面2bに達している。換言するとケース2の上面2bの少なくとも一部は、緩衝部材7Aの支持部7aによって覆われている。
【0056】
緩衝部材7Aの第2部分としての凸部7bは、支持部7aの中央部において下方に突出するように支持されている。すなわち凸部7bの突出方向は、可動電極5の変位する方向に一致している。
【0057】
支持部7aおよび凸部7bは、例えばシリコンゴム、フッ素系ゴム、UV樹脂のいずれかを含有する材料で形成されており、柔軟性に富むとともに弾性を有している。具体的には、緩衝部材7Aは、押圧部材6Aの弾性係数よりも高い弾性係数を有している。また支持部7aと凸部7bは一体構造を成すように形成されている。
【0058】
図6の(a)には通常状態、すなわちボタン等の操作部材10による押圧力が印加されていない状態を示す。緩衝部材7Aの凸部7bは原型を保って下方に突出し、可動電極5に対向している。可動電極5は上方に凸の状態でケース2の凹部に収容されており、可動電極5の中央部5bと第2の固定電極3bは非接触状態にある。したがって第1の固定電極3aと第2の固定電極3b(第1の外部接続端子4aと第2の外部接続端子4b)は非導通状態にある。
【0059】
操作部材10が下方に変位するように外部から押圧力を印加すると、図6の(b)に示すように、緩衝部材7Aの凸部7bがケース2の凹部2aに進入し、可動電極5に当接する。凸部7bは、操作部材10の下方への変位に伴い潰されるように弾性変形しつつ、可動電極5を下方に押圧する。すなわち凸部7bは、いわゆる押し子部材として機能する。
【0060】
可動電極5は上方に凸の状態を維持しようとするため、可動電極5および緩衝部材7Aに加わる荷重は徐々に増大していく。したがって凸部7bは更に押し潰されるように弾性変形し、可動電極5と押圧部材7Aの接触面積は徐々に増大していく。
【0061】
可動電極5に加わる荷重が所定値を超えると、中央部5bがクリック感を伴って反転し、下方に凸の状態となる。これにより中央部5bと第2の固定電極3bが接触し(可動電極5が第1の位置に変位し)、第1の固定電極3aと第2の固定電極3b(第1の外部接続端子4aと第2の外部接続端子4b)が可動電極5を介して導通状態となる。可動電極5の変形により操作部材10による荷重の一部は開放される。
【0062】
可動電極5と第2の固定電極3bの接触後(第1位置への変位後)にも継続して操作部材10に押圧力が加えられた場合、可動電極5はもはや変形できないため、可動電極5および緩衝部材7Aに加わる荷重が再び増大する。このとき凸部7bは更に押し潰されるように弾性変形し、緩衝部材7Aがケース2の凹部2a内に位置する部分の体積が徐々に増大していく。
【0063】
緩衝部材7Aの更なる弾性変形により操作部材10は下方に変位し、やがて操作部材10の一部が押圧部材6Aに当接する。操作部材10は、押圧部材6Aを介してケース2の上面2bに支持される。この状態において弾性変形された凸部7b全体がケース2の凹部2aに収容されうるように、凸部7bおよび凹部2aの寸法が定められている。
【0064】
この状態から更に継続して操作部材10に押圧力が加えられても、荷重はケース2の上面2bにより受け止められるため、可動電極5および緩衝部材7Aに更なる負荷が加わることはない。
【0065】
操作部材10に対する押圧力を解除すると、可動電極5の自己復元力(弾性)により中央部5bがクリック感を伴って上方に凸の状態に復帰し(第2の位置に変位し)、第1の固定電極3aと第2の固定電極3bの導通は解除される。また緩衝部材7Aの自己復元力(弾性)により操作部材10が上方へ押し戻され、図6の(a)に示す初期状態に至る。
【0066】
本実施形態の構成によれば、上記の実施形態に係るスイッチ1について説明したものと同様の効果が得られる。また緩衝部材7Aの凸部7bは、押圧部材6Aの下方で可動電極5に対向し、スイッチ1Cの外面に露出していない。そのため他部材等との干渉によって凸部7bが損傷する事態を回避でき、スイッチ操作の感触が劣化することを防止できる。
【0067】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0068】
上記の説明における「上方」「下方」という表現は、図面を参照した説明において便宜上用いたに過ぎず、製品の使用時における方向を限定する意図ではない。「上方」および「下方」は、各々「回路基板から離間する方向」および「回路基板に接近する方向」と言い換えることができる。
【0069】
緩衝部材7Aの支持部7aと凸部7bは、必ずしも一体構造をなすように形成されていることを要しない。所望の弾性変形が得られる限りにおいて、別部材として形成された支
持部7aと凸部7bを接着や溶着することにより緩衝部材7Aを構成してもよい。
【0070】
押圧部材6(6A、6B)と緩衝部材7(7A)は、必ずしも別材料からなる独立した部材として形成されることを要しない。所望の弾性変形が可能とされる限りにおいて、押圧部材6(6A、6B)と緩衝部材7(7A)は、適切に選択された同一の材料により一体成形された構成としてもよい。
【0071】
押圧部材6の凸部6bの形状および数は、上記の実施形態における態様に限定されるものではない。プッシュスイッチ1および操作部材10の仕様に応じて適宜定めることができる。
【0072】
可動電極5は、押圧部材6によって複数の固定電極同士を非導通状態とする位置から導通状態とする位置へ変位可能とされていれば、適宜の形状と構成を採ることができる。必ずしも弾性を備えている必要はない。
【符号の説明】
【0073】
1:プッシュスイッチ、2:ケース、2a:凹部、3a:第1の固定電極、3b:第2の固定電極、5:可動電極、6:押圧部材、6a:平坦部、6b:凸部、7:緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に実装され、凹部を有するケースと、
前記凹部内に配置された複数の固定電極と、
前記凹部内に配置され、前記複数の固定電極同士を導通状態とする第1の位置と、非導通状態とする第2の位置との間で変位可能とされている可動電極と、
前記凹部の少なくとも一部を覆って配置され、外部からの押圧力によって前記可動電極を前記第2の位置から前記第1の位置へ変位させる押圧部材と、
前記可動電極と前記押圧部材の間に配置され、前記押圧力により弾性変形する緩衝部材とを備える、スイッチ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、シリコンゴム、フッ素系ゴム、UV樹脂のいずれかを含有する材料からなる、請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記可動電極全体を覆う第1の部分と、前記可動電極の変位する方向に沿って前記第1の部分から突出する第2の部分とを備え、
前記第1の部分と前記第2の部分は一体構造を成している、請求項1または2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記可動電極全体を覆う第1の部分と、前記可動電極の変位する方向に沿って前記第1の部分から突出する第2の部分とを備える、請求項1または2に記載の、スイッチ。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記緩衝部材よりも高い剛性を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項6】
前記押圧部材は、ポリイミド、PEEK樹脂、フッ素系樹脂のいずれかを含有する材料からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項7】
前記可動電極は弾性を有している、請求項1から6のいずれか一項に記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93313(P2013−93313A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205686(P2012−205686)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】