説明

スイツチング電源用プリント配線基板の配線構造

【目的】コンバータトランスからコモンモードチョークコイルに対する雑音電圧をシールド板によってカットするのではなく、プリント配線基板に配線するときに同時にそのシールド板と同等の機能を果たす配線パターンを形成することで安価でかつ容易に該雑音電圧をカットないしは抑制できるようにする。
【構成】プリント配線基板PB1,PB2は、それぞれの裏面側が相対向した状態で所定間隔を隔てて並行配置されている状態でコモンモードチョークコイルL1,L2とコンバータトランスCTとが近接されている。第1のプリント配線基板PB1の裏面側には、該コモンモードチョークコイルL1,L2とコンバータトランスCTとの間を電磁的にシールドする配線パターンHP5が形成されている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、スイッチング電源用プリント配線基板の配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源として図2に示すような周知のものがある。このスイッチング電源においては、入力端子IN,INとコンバータトランスCTの一次側巻線一端との間に、雑音電圧抑制用としてのノイズフィルタNFと、交流入力の整流平滑用としての第1の整流平滑回路RH1とがこの順序で接続されている。コンバータトランスCTの二次側巻線と出力端子OUT,OUTとの間には、該二次側巻線に誘起の交流の整流平滑用としての第2の整流平滑回路RH2が接続されている。
【0003】
コンバータトランスCTの一次側巻線他端にはスイッチング素子としてのスイッチングトランジスタSWのコレクタが接続されている。第2の整流平滑回路RH2出力は帰還回路FCを介して制御回路CCに与えられる。帰還回路FCはスイッチング電源の電圧変動を検出し、その検出を制御回路CCに帰還させる。制御回路CCにおいては、スイッチング電源の電圧出力を安定化させるように、帰還回路FC出力に応答してスイッチング素子SWをスイッチング駆動する。
【0004】
このような回路構成のスイッチング電源においては、1枚のプリント配線基板に平面的にそれを構成する各電子部品のすべてを搭載させたのでは全体のサイズが大型化してしまうから、これを避けるためにも、図3および図4にそれぞれ示すように2枚のプリント配線基板PB1,PB2を上下に対向させた状態に配備するとともに、それを構成する各電子部品を2枚のプリント配線基板PB1,PB2に各別に搭載するようにして平面的なサイズを小型にできるようにしたものがある。
【0005】
これらの図を参照して従来例のプリント配線基板の配線構造について説明する。図3は2枚のプリント配線基板を側面から見た状態を示しており、図4は、第1のプリント配線基板を裏面側から見た状態を示している。また、これらの図のプリント配線基板は従来例の課題の説明に必要となる要部のみが示されている。
第1のプリント配線基板PB1の表面にはノイズフィルタNFを構成するコンデンサC1,C2と、コモンモードチョークコイルL1,L2とが搭載されている。第1のプリント配線基板PB1の裏面側には入力端子IN,INに接続される図で上下一対の配線パターンHP1,HP2と、第1の整流平滑回路RH1の各入力部に接続される図で上下一対の配線パターンHP3,HP4とがハッチングで示されており、入力端子IN,IN側の一対の配線パターンHP1,HP2間には第1のプリント配線基板PB1の表面側に実装されてあるコンデンサC1のリードC1aが半田付けされている。第1の整流平滑回路RH1の各入力部に接続される一対の配線パターンHP3,HP4間には第1のプリント配線基板PB1の表面側に実装されてあるコンデンサC2のリードC2aが半田付けされている。そして、配線パターンHP1とHP3間には、第1のプリント配線基板PB1の表面側に実装の一方側コモンモードチョークコイルL1の端部Laが、配線パターンHP2,HP4間には、同じく第1のプリント配線基板PB1の表面側に実装の他方側コモンモードチョークコイルL2の端部La′(図にあらわれない)が、それぞれ、半田付けされている。
【0006】
また、第2のプリント配線基板PB2の表面側にはコンバータトランスCTが搭載されている。その第2のプリント配線基板PB2の裏面側には図に示していないが、該コンバータトランスCTのリードCTaが配線パターンに半田付けされている。そして、両プリント配線基板PB1,PB2間には絶縁シートZSが介在されており、この絶縁シートZSによって耐圧の対策が施されている。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
このようなプリント配線基板の配線構造においては、両プリント配線基板PB1,PB2を介して相対向しているコモンモードチョークコイルL1,L2とコンバータトランスCTとが距離的に近いことから、入力端子IN,INからの雑音電圧抑制用であるコモンモードチョークコイルL1,L2に対して、コンバータトランスCTからの雑音電圧が直接与えられるような状態となっている。
【0008】
このような状態では、コモンモードチョークコイルL1,L2の雑音電圧抑制用としての機能に支障を来すものとなり、不都合であるから、同じく図2に示すように両プリント配線基板PB1,PB2間の絶縁シートZSに代えて、金属板を絶縁物でサンドイッチ状に挟んだようにしてなるシールド板を入れ、このシールド板によってコンバータトランスCTからコモンモードチョークコイルL1,L2に対して雑音電圧が入らないようにしていた。
【0009】
しかしながら、このような雑音電圧対策では、シールド板のコストが高くつくうえ、シールド板を両プリント配線基板PB1,PB2間に対して電気的・機械的に接続する作業が特段に必要となり、その作業工数によって製造の歩留まりが低下するのみならずコストも余計にかかるものとなる。
【0010】
したがって、本考案においては、コンバータトランスからコモンモードチョークコイルに対する雑音電圧をシールド板によってカットするのではなく、プリント配線基板に配線するときに同時にそのシールド板と同等の機能を果たす配線パターンを形成することで安価でかつ容易に該雑音電圧をカットないしは抑制できるようにすることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本考案においては、コモンモードチョークコイルが表面に搭載されている第1のプリント配線基板の裏面側に、該コモンモードチョークコイルと、第2のプリント配線基板表面側のコンバータトランスとの間を電磁的にシールドすることのできる配線パターンを形成したことに特徴がある。
【0012】
【作用】
該第1のプリント配線基板の裏面側の配線パターン形成と同時に、コモンモードチョークコイルとコンバータトランスとを電磁的にシールドすることのできる配線パターンを形成されるから、該電磁シールドのための工数としては何等増加することがない。
【0013】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施例に係るスイッチング電源用プリント配線基板の配線構造の説明に供するものであって、第1のプリント配線基板の裏面側を示す平面図である。
【0015】
本実施例のプリント配線基板の配線構造においては、図1に示すように、コモンモードチョークコイルL1,L2が表面に搭載されている第1のプリント配線基板PB1の裏面側に、該コモンモードチョークコイルL1,L2と、第2のプリント配線基板PB2表面側のコンバータトランスCTとの間を電磁的にシールドすることのできる配線パターンHP5を形成したことに特徴がある。
【0016】
この電磁シールド用の配線パターンHP5にあっては、第1のプリント配線基板PB1の裏面側に形成する他の配線パターンHP1〜HP4のパターン形成と同時に形成することができるから、従来例のようなシールド板によるものとは異なってその工数が何等増加することがない。
【0017】
【考案の効果】
以上説明したことから明らかなように、本考案によれば、コモンモードチョークコイルが表面に搭載されている第1のプリント配線基板の裏面側に、該コモンモードチョークコイルと、第2のプリント配線基板表面側のコンバータトランスとの間を電磁的にシールドすることのできる配線パターンを形成するようにしたから、該電磁シールドのための工数としては何等増加することがなくなり、したがって、従来例のように両プリント配線基板間の絶縁シートに代えて、金属板を絶縁物でサンドイッチ状に挟んだようにしてなるシールド板を入れてコンバータトランスからコモンモードチョークコイルに対して雑音電圧が入らないようしていたものとは異なって、作業工数が減少することで製造の歩留まりを向上させることができるのみならずコストも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例に係るスイッチング電源用プリント配線基板における第1のプリント配線基板の裏面側の要部の平面図である。
【図2】スイッチング電源の概略化回路図である。
【図3】従来例のプリント配線基板における第1および第2のプリント配線基板それぞれの側面の要部の側面図である。
【図4】従来例における第1のプリント配線基板の裏面側の要部の平面図である。
【符号の説明】
IN,IN 入力端子
NF ノイズフィルタ
L1,L2 コモンモードチョークコイル
CT コンバータトランス
PB1,PB2 プリント配線基板
HP1〜HP5 配線パターン

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 入力端子(IN,IN)とコンバータトランス(CT)の一次側巻線一端との間に、雑音電圧抑制用としてのノイズフィルタ(NF)と、交流入力の整流平滑用としての第1の整流平滑回路(RH1)とがこの順序で接続され、該コンバータトランス(CT)の二次側巻線と出力端子(OUT,OUT)との間に、該二次側巻線に誘起の交流の整流平滑用としての第2の整流平滑回路(RH2)が接続され、かつ、該一次側巻線他端にスイッチング素子(SW)が接続されてなるスイッチング電源において、第1のプリント配線基板(PB1)の表面に、前記ノイズフィルタ(NF)を構成するコモンモードチョークコイル(L1,L2)が、また、第2のプリント配線基板(PB2)の表面にコンバータトランス(CT)が、それぞれ、配備されており、両プリント配線基板(PB1,PB2)は、それぞれの裏面側が相対向した状態で所定間隔を隔てて並行配置されているとともに、該配置状態でコモンモードチョークコイル(L1,L2)とコンバータトランス(CT)とが近接されており、前記第1のプリント配線基板(PB1)の裏面側には、該コモンモードチョークコイル(L1,L2)とコンバータトランス(CT)との間を電磁的にシールドする配線パターン(HP5)が形成されていることを特徴とするスイッチング電源用プリント配線基板の配線構造。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate