説明

スイングバック式ミラーの位置調整装置

【課題】 スイングバック式ミラーの水平方向の傾きを調整する。
【解決手段】 ミラーホルダ2の右側面に突設した第1,第2のピン3,6を夫々駆動するメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7の軸5,8を水平調整板11の両端部に枢着し、この水平調整板11を固定ねじ13とガイドピン14及び長孔12aにより垂直調整板12に左右方向に変位可能に装着し、垂直調整板12を固定ねじ15と長孔12bによりミラーボックス1の右側面1aに垂直方向に変位可能に装着する。ミラーボックス1の左側面には、対応する第1,第2のピン,メイン及びサブミラーアームが夫々設けてあり、夫々の軸はミラーボックス1の左側面に軸着してある。水平,垂直調整板11,12を調整して軸5,8を左右上下に変位させることにより、ミラーホルダ2の傾きが調整される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一眼レフカメラのスイングバック式ミラーの下降状態における水平方向の傾きを調整するスイングバック式ミラーの位置調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一眼レフカメラのミラーは、その長さを長くしてミラー切れを防止しながら、レンズのバックフォーカスを可能な限り長くとることが要求される。このような相反する要求を満たすミラー駆動方法として、従来からミラーを保持するミラーホルダを後退させながら跳ね上げるようにしたスイングバック式ミラー駆動機構がある。
【0003】図4は、その一例を示す側面図であり、ミラーボックス1内に収納されたミラーホルダ2の側面の中間部に突設した突起2aに第1のピン3を植設し、この第1のピン3をコの字状のメインミラーアーム4の先端付近に連結し、メインミラーアーム4の基部をミラーボックス1の側面に軸5で枢着している。また、ミラーホルダ2の側面基端部に植設した第2のピン6にローラ6aを回転自在に装着し、このローラ6aをミラーボックス1のカム孔1cに転動自在に緩嵌している。そして、ミラーホルダ2の斜在角度は、ミラーボックス1に調整可能に突設したミラー角度規制ピン9によって決定される。
【0004】なお、ミラーボックス1及びミラーホルダ2の他の側面にも図4に対応する位置に同様のカム孔,第1,第2のピン,ローラ等が設けてあり、第1のピンにメインミラーアーム4の他の辺の先端付近を連結するとともに、軸5に対応する軸によりその基部を枢着している。
【0005】このような構成でメインミラーアーム4を軸5を支点として反時計方向に回動させると、ミラーホルダ2の第2のピン6はローラ6aを介してカム孔1cにガイドされて斜め上後方へ変位し、第1のピン3は、軸5を支点とする円弧上を移動して図4に仮想線で示す上昇位置へ変位する。このとき、ミラーホルダ2は後退しながら跳ね上げられるのでバックフォーカスの短いレンズが装着可能になる。
【0006】また、図5は、スイングバック式ミラー駆動機構の他の例を示す側面図であり、図4のミラーホルダ2の側面に設けた第2のピン6をコの字状のサブミラーアーム7の先端側に連結し、その基部をミラーボックス1に軸8で枢着し、図4のローラ6a,カム孔1cをなくしたものである。なお、その他の構成は図4と同様である。
【0007】このような構成でメインミラーアーム4を軸5を支点として反時計方向に回動させると、ミラーホルダ2を介してサブミラーアーム7が軸8を支点として同方向に回動し、ミラーホルダ2の第1,第2のピン3,6が軸5,8を支点とする円弧上を移動して図5に仮想線で示す上昇位置へ変位する。このときも、ミラーホルダ2は図4と同様に後退しながら跳ね上げられる。この図5に示すものは、ミラーホルダ2の第1,第2の軸3,6がそれぞれメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7によって支持されているので、ミラーホルダ2の駆動が図4に示すものより円滑且つ確実になるという利点があり、現行のスイングバック式ミラー駆動機構の主流となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のスイングバック式ミラー駆動機構にあって、前者は、ミラーホルダ2の左右両側面に突設した第1のピン3が、ミラーボックス1の軸5に枢着されたメインミラーアーム4によってその位置が規制され、第2のピン6がミラーボックス1のカム孔1cによってその位置が規制されているので、左右の第1,第2のピン3,6の位置,軸5の位置,カム孔1cの位置、あるいはメインミラーアーム4の左右のアーム部の形状等に僅かでも誤差があると、ミラーホルダ2の左右が水平方向から傾くという問題点があった。
【0009】また、後者は、ミラーホルダ2の左右両側面に突設した第1のピン3が、ミラーボックス1の軸5に枢着されたメインミラーアーム4によってその位置が規制され、第2のピン6がミラーボックス1の軸8に枢着されたサブミラーアーム7によってその位置が規制されている。したがって、この場合も左右の第1,第2のピン3,6の位置,軸5,8の位置,あるいはメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7の左右のアーム部の形状等に僅かでも誤差があると、ミラーホルダ2の左右が水平方向から傾くという問題点があった。そして、いずれの場合も、ミラーホルダ2の左右方向の傾きを調整する手段を有していなかった。
【0010】図6は、図5に示した従来例において、ミラーホルダ2が水平方向から左に傾いている状態を示している。ミラーホルダ2の水平方向の傾きがない場合、撮影レンズLの光軸Aに沿う水平光線は、ミラーホルダ2のミラーMによって直角に向きを変え、ファインダ光軸FAに沿う垂直光線となり接眼レンズELを通して覗視される。このとき、ファインダスクリーン面FSはファインダ光軸FAに直交する水平面となる。
【0011】ここで、ミラーホルダ2のミラーMの水平方向が図で左方向に角度Δだけ傾いたとすると、ファインダ光軸FA′は角度2Δだけ左方にずれ、ファインダスクリーン面FS′となる。従来、このようにミラーMの水平方向が傾いてもそれを調整する手段がなかったので、ファインダスクリーン面FS′をファインダ光軸FA′に直交するように傾けることによりファインダ画像周辺の焦点調整を行っていた。
【0012】しかし、ファインダ光軸FAが角度2Δ傾くと、ファインダ画面中心Cは点C′へ移動する。通常ファインダスクリーン面FSは、水平面からの角度はある程度調整可能であるが、その位置は水平方向へ移動させることができないので、ファインダ画面中心Cはそのままとなる。これは、ファインダ視野の中心が実画面の中心からずれることを意味する。
【0013】ミラーMの傾きがファインダスクリーン面の角度調整可能な範囲内であり、且つファインダ視野が実画面範囲内にある場合は調整可能であるが、ミラーMがそれ以上傾いた場合には調整不能となる。この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、スイングバック式ミラーの水平方向の傾きを調整可能なスイングバック式ミラーの位置調整装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するため、一眼レフカメラのミラーを保持するミラーホルダの両側面の中間部及び基端部に設けた第1のピン及び第2のピンを、ミラーボックスの両側面に回動自在に設けたメインミラーアーム及びサブミラーアームによって駆動することにより、ミラーホルダを後退させながら跳ね上げるようにしたスイングバック式ミラーの位置調整装置であって、上記ミラーボックスの一側面に上記メインミラーアーム及びサブミラーアームを枢着するとともに、他側面のメインミラーアーム及びサブミラーアームの支点位置を変位可能とする支点可変手段を設けたスイングバック式ミラーの位置調整装置を提供するものである。
【0015】そして、上記の装置において、支点可変手段が、メインミラーアーム及びサブミラーアームの支点をそれぞれ水平方向及び垂直方向へ移動させる水平調整板と垂直調整板とからなり、これらの水平調整板及び垂直調整板のいずれか一方を他方に、他方をミラーボックス側面にそれぞれ調整可能に固定し得るようにするのがよく、水平調整板及び垂直調整板はそれぞれ独立して調整し得るようにすると好都合である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態を示すミラーボックスの右側面図、図2は同じくその左側面図である。なお、ここで右側面及び左側面というのは、撮影レンズ側から見た方向を示している。
【0017】ミラーボックス1の右側面1aには、図1に示すように、ミラーホルダ2の右側面中間部の突起2aに植設した第1のピン3を駆動するメインミラーアーム4と、ミラーホルダ2の右側面の基部に植設した第2のピン6を駆動するサブミラーアーム7とが設けてある。なお、メインミラーアーム4の支点である軸5及びサブミラーアーム7の支点である軸8は、Z字状の水平調整板11の両端部に設ける。
【0018】この水平調整板11は、十字状の垂直調整板12に水平方向の長孔12a,12aと固定ねじ13,13及びガイドピン14,14により図で左右方向に変位可能に装着され、垂直調整板12は、垂直方向の長孔12b,12bと固定ねじ15,15とにより図で上下方向に変位可能にミラーボックス1の右側面1aに装着されて、これらによりメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7の支点位置を変位可能とする支点可変手段10を構成している。
【0019】ミラーボックス1の右側面1aの下方には、ミラーホルダ2の下面に係合してミラーMの斜在角度(45度)を規制するミラー角度規制ピン9が設けてある。このミラー角度規制ピン9は、ミラーボックス1の右側面1aに軸16で枢着さればね17により左旋方向へ付勢されたミラー角度規制レバー18の自由端部に固設してあり、偏心カムからなるミラー角度調整カム19の回転によってその位置を可変とする。
【0020】一方、ミラーボックス1の左側面1bには、図2に示すように、ミラーホルダ2の左側面中間部の突起2a′に植設した第1のピン3′を駆動するメインミラーアーム4′と、ミラーホルダ2の左側面基部に植設した第2のピン6′を駆動するサブミラーアーム7′とを設け、メインミラーアーム4′とサブミラーアーム7′の支点となる軸5′,8′はミラーボックス1の左側面1bに直接軸止してある。
【0021】以上のような構成からなるスイングバック式ミラーの位置調整装置において、図1に示したミラーボックス1の右側面1a上の固定ねじ13を固定して水平,垂直調整板11,12を固定したまま固定ねじ15を緩めると、垂直調整板12を水平調整板11とともに上下方向に変位させることができ、水平調整板11上の軸5,8を変位させてメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7の支点位置を上下方向に調整することが可能になる。
【0022】また、固定ねじ15を固定して固定ねじ13を緩めると、垂直調整板12を固定したまま、水平調整板11のみを左右方向に変位させることができ、水平調整板11上の軸5,8を変位させてメインミラーアーム4及びサブミラーアーム7の支点位置を左右方向に調整することができる。
【0023】一方、図2に示したミラーボックス1の左側面1bでは、メインミラーアーム4′の軸5′及びサブミラーアーム7′の軸8′はいずれもミラーボックス1の左側面1bに固定されているので、右側面の軸5,8の上下左右方向の変位により、ミラーホルダ2の第1,第2のピン3,6の位置を移動させてミラーMの水平方向の傾きを調整することができる。なお、ミラーホルダ2の下降時の角度調整は、ミラー角度調整カム19を回動させ、ミラー角度規制レバー18を揺動させてミラー角度規制ピン9を上下することにより行う。
【0024】図3は、このようにして調整した一眼レフカメラのファインダ光学系を示すもので、撮影レンズLの光軸Aに沿う水平光線は、ミラーホルダ2のミラーMによって直角に向きを変え、ファインダ光軸FAに沿う垂直光線となり接眼レンズELを通して覗視される。このとき、ミラーボックス1の加工誤差等によるミラーMの水平方向の傾きは、水平,垂直調整板11,12により調整され、斜在角度調整はミラー角度規制ピン9により調整されるので、反射光軸を図3に示すように設計上のファインダ光軸FAと完全に一致させることができる。
【0025】なお、上記の実施形態では、水平調整板11上に垂直調整板12を水平方向に変位可能に装着し、垂直調整板12をミラーボックス1に垂直方向に変位可能に装着するとともに、水平調整板11にメインミラーアーム4とサブミラーアーム7の軸5,8を設けるようにしたが、垂直調整板12上に水平調整板11を垂直方向に変位可能に装着し、水平調整板11をミラーボックス1に水平方向に変位可能に装着して、垂直調整板12にメインミラーアーム4とサブミラーアーム7の軸5,8を設けるようにしても差支えない。
【0026】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によるスイングバック式ミラーの位置調整装置は、ミラーホルダ側面の中間部及び基端部に設けた第1,第2のピンをそれぞれ駆動するメインミラーアーム及びサブミラーアームの支点位置を変位可能とする支点可変手段を設けたので、従来調整不能であったミラーボックスの加工誤差等によるミラーの水平方向の傾きを調整してファインダ光軸がファインダ画面中心を通るようにし、ファインダ視野を実画面と完全に一致させることが可能になる。
【0027】そして、その支点可変手段が、メインミラーアーム及びサブミラーアームの支点を水平方向及び垂直方向へ移動させる水平調整板と垂直調整板とからなるようにすると、ミラーのいかなる方向の傾きをも調整することができ、水平調整板と垂直調整板とをそれぞれ独立して調整し得るようにすれば、ミラーの傾き方向に応じて迅速な調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示すミラーボックスの右側面図である。
【図2】同じくその左側面図である。
【図3】同じくそのファインダ光学系を示す説明図である。
【図4】従来のスイングバック式ミラー駆動機構の一例を示す側面図である。
【図5】従来のスイングバック式ミラー駆動機構の他の例を示す側面図である。
【図6】図5に示したスイングバック式ミラー駆動機構を有する一眼レフカメラのファインダ光学系を示す説明図である。
【符号の説明】
1:ミラーボックス 2:ミラーホルダ
3,3′:第1のピン 4,4′:メインミラーアーム
5,5′:軸 6,6′:第2のピン
7,7′:サブミラーアーム 8,8′:軸
9:ミラー角度規制ピン 10:支点可変手段
11:水平調整板 12:垂直調整板
18:ミラー角度規制レバー
19:ミラー角度調整カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一眼レフカメラのミラーを保持するミラーホルダの両側面の中間部及び基端部に設けた第1のピン及び第2のピンを、ミラーボックスの両側面に回動自在に設けたメインミラーアーム及びサブミラーアームによって駆動することにより、ミラーホルダを後退させながら跳ね上げるようにしたスイングバック式ミラーの位置調整装置であって、上記ミラーボックスの一側面に上記メインミラーアーム及びサブミラーアームを枢着するとともに、他側面のメインミラーアーム及びサブミラーアームの支点位置を変位可能とする支点可変手段を設けたことを特徴とするスイングバック式ミラーの位置調整装置。
【請求項2】 支点可変手段が、メインミラーアーム及びサブミラーアームの支点をそれぞれ水平方向及び垂直方向へ移動させる水平調整板と垂直調整板とからなり、該水平調整板及び垂直調整板のいずれか一方を他方に、他方をミラーボックス側面にそれぞれ調整可能に固定し得るようにしたことを特徴とする請求項1記載のスイングバック式ミラーの位置調整装置。
【請求項3】 水平調整板及び垂直調整板はそれぞれ独立して調整し得るようにしたことを特徴とする請求項2記載のスイングバック式ミラーの位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平10−171015
【公開日】平成10年(1998)6月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−333585
【出願日】平成8年(1996)12月13日
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)