説明

スイングレジスタ装置

【課題】動力伝達機構のフィン側ギアと動力源側ギアとのバックラッシを従来に比べて小さくできる、スイングレジスタ装置の提供。
【解決手段】駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で、動力伝達機構60が、一対の回動機構50の間に位置している。そのため、動力伝達機構60が一対の回動機構50の外側に位置する場合(従来)に比べて、駆動フィン30のフィン側ギア61が設けられる部分31が撓みにくくなる(変形しにくくなる)。そのため、動力伝達機構60で動力源40からの力を駆動フィン30に伝達する際の、駆動フィン30のフィン側ギア61が設けられる部分31の撓み量が、従来に比べて小さくなり、動力伝達機構60のフィン側ギア61と動力源側ギア62とのバックラッシを従来に比べて小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のスイングレジスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−30750号公報は、図2に示すように、レジスタ本体2に設けられる回動軸受け部5aと駆動フィン3に設けられる回動軸部5bとを備え駆動フィン3をレジスタ本体2に対して回動可能にする一対の回動機構5と、駆動フィン3に設けられるフィン側ギア6aと動力源4に設けられる動力源側ギア6bとを備え動力源4からの力を駆動フィン3に伝達する動力伝達機構6と、を有するスイングレジスタ装置1を開示している。
上記公報開示のスイングレジスタ装置1では、駆動フィン3の回動軸芯P1の延び方向(図2の上下方向)で、動力伝達機構6が一対の回動機構5の外側に位置している。
【0003】
しかし、上記公報開示のスイングレジスタ装置1には、つぎの問題点がある。
回動軸芯P1の延び方向で動力伝達機構6が一対の回動機構5の外側に位置しているため、動力伝達機構6で動力源4からの力を駆動フィン3に伝達する際、フィン側ギア6aが動力源側ギア6bによって押され、図3の二点鎖線に示すように、駆動フィン3の、フィン側ギア6aが設けられる部分3aが、動力源側ギア6bから離れる方向に比較的容易に撓んでしまう。その結果、フィン側ギア6aと動力源側ギア6bとのバックラッシが比較的大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、動力伝達機構のフィン側ギアと動力源側ギアとのバックラッシを従来に比べて小さくできる、スイングレジスタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) レジスタ本体と、駆動フィンと、動力源と、回動機構と、動力伝達機構と、を有し、
前記レジスタ本体は、通風路を備えており、
前記駆動フィンは、前記レジスタ本体に前記回動機構により回動可能に支持されており、前記通風路を流れる風の向きを変更可能であり、
前記回動機構は、前記レジスタ本体に設けられる回動軸受け部と、前記駆動フィンに設けられており前記回動軸受け部に回動可能に支持される回動軸部と、を備えており、前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向の両側部に対応させて一対設けられており、
前記動力伝達機構は、前記駆動フィンに設けられるフィン側ギアと、前記動力源に設けられており前記フィン側ギアと噛合う動力源側ギアと、を備えており、前記動力源からの力を前記駆動フィンに伝達しており、
前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、前記動力伝達機構が、前記一対の回動機構の間に位置している、スイングレジスタ装置。
(2) 前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、前記動力伝達機構は、前記一対の回動機構の一方の回動機構に近接する位置にある、(1)記載のスイングレジスタ装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)のスイングレジスタ装置によれば、駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、動力伝達機構が、一対の回動機構の間に位置しているため、つぎの効果を得ることができる。
動力伝達機構が一対の回動機構の外側に位置する場合(従来)に比べて、駆動フィンのフィン側ギアが設けられる部分が撓みにくくなる(変形しにくくなる)。そのため、動力伝達機構で動力源からの力を駆動フィンに伝達する際の、駆動フィンのフィン側ギアが設けられる部分の撓み量が、従来に比べて小さくなり、動力伝達機構のフィン側ギアと動力源側ギアとのバックラッシを従来に比べて小さくできる。
【0008】
上記(2)のスイングレジスタ装置によれば、駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、動力伝達機構が、一対の回動機構の一方の回動機構に近接する位置にあるため、つぎの効果を得ることができる。
駆動フィンの回動軸芯の延び方向で動力伝達機構が一対の回動機構の一方の回動機構に近接する位置に無い場合に比べて(駆動フィンの回動軸芯の延び方向で動力伝達機構が一対の回動機構の中央部またはその近傍に設けられている場合に比べて)、駆動フィンのフィン側ギアが設けられる部分がより撓みにくくなり、動力伝達機構のフィン側ギアと動力源側ギアとのバックラッシを効果的に小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例のスイングレジスタ装置の概略断面図である。
【図2】従来のスイングレジスタ装置の模式断面図である。
【図3】従来のスイングレジスタ装置の、動力伝達機構とその近傍の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明実施例のスイングレジスタ装置を、図1を参照して、説明する。
本発明実施例のスイングレジスタ装置(以下、単に装置ともいう)10は、車両用であり、車両の内装部材であるインストルメントパネル80の、車両左右方向右側端部と、車両左右方向左側端部と、車両左右方向中央部とに配置される。ただし、装置10の配置場所は、上記の場所に限定されるものではない。
装置10は、レジスタ本体20と、駆動フィン30と、動力源40と、回動機構50と、動力伝達機構60と、を有する。
【0011】
レジスタ本体20は、たとえば樹脂製である。レジスタ本体20は、インストルメントパネル80に固定して取り付けられる。レジスタ本体20は、冷暖房用の空気が通る(風が流れる)通風路21を備える。通風路21の風流れ方向下流側端は、車室内に開放している。
【0012】
駆動フィン30は、レジスタ本体20に回動機構50により回動可能に支持されており、通風路21を流れる風の向きを変更可能である。
駆動フィン30は、レジスタ本体20に回動(揺動を含む)可能に設けられ互いにリンク結合等されることで連動して動く複数の横フィン70の1つ、または、レジスタ本体20に回動(揺動を含む)可能に設けられ互いにリンク結合等されることで連動して動く複数の縦フィン71の1つからなる。なお、本発明図示例では、駆動フィン30が複数の縦フィン71の1つからなる場合を示している。
【0013】
横フィン70は、たとえば樹脂製である。横フィン70は、レジスタ本体20の風流れ方向下流側端部またはその近傍に設けられる。横フィン70は、通風路21を通る風の向きを上下方向に変更するように、車両左右方向に延びる軸芯まわりにレジスタ本体20に上下方向に回動可能に取付けられている。
縦フィン71は、たとえば樹脂製である。縦フィン71は、レジスタ本体20の風流れ方向下流側端部またはその近傍に設けられる。縦フィン71は、通風路21を通る風の向きを車両左右方向に変更するように、上下方向に延びる軸芯まわりにレジスタ本体20に車両左右方向に回動可能に取付けられている。縦フィン71は、横フィン70より風流れ方向下流側に設けられている。ただし、縦フィン71は、横フィン70より風流れ方向上流側に設けられていてもよい。
【0014】
複数の横フィン70および複数の縦フィン71は、操作ノブ72を操作することで、動力源40によらずに手動でも操作可能とされている。
操作ノブ72は、複数の縦フィン71の1つに上下方向に摺動可能に設けられており、複数の横フィン70の1つに設けられる図示略のギアに上下方向に噛み合うノブ側ギア72aを備えている。そのため、操作ノブ72を操作ノブ72が設けられる縦フィン71の回動軸芯まわりに左右方向に手動で回動させることにより、縦フィン71を手動で直接回動させることができ、操作ノブ72を操作ノブ72が設けられる縦フィン71に対して上下方向に摺動させることにより、横フィン70を手動で直接回動させることができる。なお、操作ノブ72は、複数の横フィン70の1つに車両左右方向に摺動可能に設けられており、複数の縦フィン71の1つに設けられる図示略のギアに車両左右方向に噛合うノブ側ギアを備えていてもよい。
【0015】
動力源40は、複数の横フィン70の1つまたは複数の縦フィン71の1つからなる駆動フィン30を、手動でなく自動で回動させるために設けられる。動力源40は、とくに限定するものではないが、たとえば電動モータからなる。動力源40は、レジスタ本体20に対して移動不能とされている。動力源40は、通風路21を流れる風の流れを阻害することを抑制するために、通風路21の外部に設けられている。動力源40には、動力源40の力を駆動フィン30に伝えることを許容し、駆動フィン30からの力を動力源40に伝えないようにする、図示略のクラッチ機構が設けられている。
【0016】
回動機構50は、駆動フィン30をレジスタ本体20に対して駆動フィン30の回動軸芯Pまわりに回動可能にするために設けられる。回動機構50は、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向(図1の上下方向)の両側部に対応させて一対設けられている。回動機構50は、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向の各端部(その近傍を含む)にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0017】
回動機構50は、レジスタ本体20に設けられる回動軸受け部51と、駆動フィン30に設けられており回動軸受け部51に回動可能に支持される回動軸部52と、を備える。
回動軸受け部51は、レジスタ本体20に設けられる円形孔からなり、回動軸部52は、駆動フィン30に設けられる円柱形状部または円筒形状部からなる。回動軸受け部51の孔径は、回動軸部52の外径と略同じであり、回動軸部52の外径より僅かだけ大とされている。そのため、回動軸部52は、回動軸受け部51内で回動軸芯Pの延び方向と直交する方向に、移動しないかまたは移動しても無視できる程度とされている。
【0018】
動力伝達機構60は、動力源40からの力を駆動フィン30に伝達するために設けられる。動力伝達機構60は、通風路21を流れる風の流れを阻害することを抑制するために、通風路21の外部に設けられている。
【0019】
動力伝達機構60は、駆動フィン30に設けられるフィン側ギア(歯車)61と、動力源40に設けられておりフィン側ギア61と噛合う動力源側ギア(歯車)62と、を備える。
動力伝達機構60が互いに噛合するフィン側ギア61と動力源側ギア62とを備えるため、フィン側ギア61と動力源側ギア62との噛合部には適正なギアの噛み合いを確保するためにバックラッシが存在する。
【0020】
動力伝達機構60は、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で、一対の回動機構50の間に位置している。動力伝達機構60は、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で、一対の回動機構50のいずれか一方の回動機構(図1で符号50aにて示す回動機構)に近接する位置にある。ここで、「近接する位置」とは、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向に一対の回動機構50の間隔を複数分割(2分割以上であり、望ましくは3分割以上、さらに望ましくは5分割以上、さらに望ましくは10分割以上)したときに、最も一対の回動機構50の一方の回動機構50a側の領域にある位置である。
【0021】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で、動力伝達機構60が、一対の回動機構50の間に位置しているため、つぎの作用を得ることができる。
動力伝達機構60が一対の回動機構50の外側に位置する場合(従来)に比べて、駆動フィン30のフィン側ギア61が設けられる部分31が、駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向と直交する方向に撓みにくくなる(変形しにくくなる)。そのため、動力伝達機構60で動力源40からの力を駆動フィン30に伝達する際の、駆動フィン30のフィン側ギア61が設けられる部分31の撓み量が、従来に比べて小さくなり、動力伝達機構60のフィン側ギア61と動力源側ギア62とのバックラッシを従来に比べて小さくできる。
【0022】
駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で、動力伝達機構60が、一対の回動機構50の一方の回動機構50aに近接する位置にあるため、つぎの作用を得ることができる。
駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で動力伝達機構60が一対の回動機構50の一方の回動機構50aに近接する位置に無い場合に比べて(駆動フィン30の回動軸芯Pの延び方向で動力伝達機構60が一対の回動機構50の中央部またはその近傍に設けられている場合に比べて)、駆動フィン30のフィン側ギア61が設けられる部分31がより撓みにくくなり、動力伝達機構60のフィン側ギア61と動力源側ギア62とのバックラッシを効果的に小さくできる。
【符号の説明】
【0023】
10 スイングレジスタ装置
20 レジスタ本体
21 通風路
30 駆動フィン
40 動力源
50,50a 回動機構
51 回動軸受け部
52 回動軸部
60 動力伝達機構
61 フィン側ギア
62 動力源側ギア
70 横フィン
71 縦フィン
72 操作ノブ
80 インストルメントパネル
P 駆動フィンの回動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスタ本体と、駆動フィンと、動力源と、回動機構と、動力伝達機構と、を有し、
前記レジスタ本体は、通風路を備えており、
前記駆動フィンは、前記レジスタ本体に前記回動機構により回動可能に支持されており、前記通風路を流れる風の向きを変更可能であり、
前記回動機構は、前記レジスタ本体に設けられる回動軸受け部と、前記駆動フィンに設けられており前記回動軸受け部に回動可能に支持される回動軸部と、を備えており、前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向の両側部に対応させて一対設けられており、
前記動力伝達機構は、前記駆動フィンに設けられるフィン側ギアと、前記動力源に設けられており前記フィン側ギアと噛合う動力源側ギアと、を備えており、前記動力源からの力を前記駆動フィンに伝達しており、
前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、前記動力伝達機構が、前記一対の回動機構の間に位置している、スイングレジスタ装置。
【請求項2】
前記駆動フィンの回動軸芯の延び方向で、前記動力伝達機構は、前記一対の回動機構の一方の回動機構に近接する位置にある、請求項1記載のスイングレジスタ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67208(P2013−67208A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205434(P2011−205434)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】