説明

スカム排出装置及びその方法

【目的】 有機物汚水の処理が行われる単一の槽内の全水面上のスカムを排出する。
【構成】 スカム排出装置10は、回分槽20に設置され、その底部には、スカム排出管12及び上澄水排水管14が連結され、それぞれ回分槽20の外部へスカムS及び上澄水を排出する。スカム排出管12の回分槽20外部に突出した部分には、スカムSの排出量を調整するためのスカム排出弁16が設けられている。回分槽20の底部には、2基の曝気攪拌装置18が設置されている。曝気攪拌装置18は、空気管22を介してブロア24と連結され、空気を回分槽20内へ送気して曝気攪拌するように構成されている。スカム排出装置10は、上澄水が上澄水排水管14へ流出可能に構成されている。スカム排出管12と上澄水排水管14の上部は、蛇腹式の配管で構成されており、回分槽20の水位に応じて伸縮可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスカム排出装置及びその方法に係り、特に回分式活性汚泥処理槽に設置されてスカムを排出するスカム排出装置及びその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】排水口が水没して上澄水の排出を行う上澄水排出装置として、例えば、実開昭61−91399号公報に示されるものがある。この装置は、排出管が槽内に配設され、その下端が槽内の壁面に回動自在に支持されている。また、排出管の上部にはトラフが取り付けられ、このトラフの下部には下部フロートが固定されている。さらに、下部フロートには排気口が形成され、通気管及びバルブを介してエア源に連通されている。
【0003】この装置によれば、下部フロート内のエアを排気することによって、この装置は浮力を失いその自重により水没し、トラフ先端が水面下に位置し、上澄水がトラフに流入して排出管から槽外に排出される。
【0004】また、エア源から下部フロート内にエアを供給すると、この装置は、浮力によって浮上し、トラフの先端が水面上方に位置し、上澄水の排出が停止される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記上澄水排出装置では、トラフ先端から上澄水が排水される構成になっており、攪拌時にスカムが水流で集められたとしても、沈殿工程が終了し、汚水が上澄水と活性汚泥に分けられてから排水工程を開始し、スカムを排出する。
【0006】しかしながら、沈殿工程の終了時には、せっかく集められたスカムが拡散してしまい、排出口周辺部の近辺にあるスカムを排出することができても、槽内全域に広く拡散するスカムを排出することはできない。また、上記上澄水排出装置では、別の排出管によってスカムを排出する構成になっていないので、スカムの排出と上澄水の排水が別系統で行われず、スカム排出の効率がよくない。
【0007】本発明は上記事実を考慮して、回分式活性汚泥処理槽の全水面上のスカムを排出できるスカム排出装置及びその方法を提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のスカム排出装置は、有機物汚水の処理が行われる単一の槽内に設置され、上澄水を取水する取水手段と、前記取水手段と連通され、上澄水を前記槽の外へ排出する上澄水排出手段と、前記槽の水面上に配置され、水面上に浮遊するスカムの前記取水手段への侵入を防止する止水手段と、前記有機物汚水を攪拌して発生した水流によって前記スカムを前記止水手段近傍へ掻き寄せる攪拌手段と、前記止水手段に設けられ、前記攪拌手段によって掻き寄せられたスカムを前記槽の外へ排出するためのスカム排出手段と、を有することを特徴としている。
【0009】請求項2に記載のスカム排出方法は、有機物汚水の処理が行われる単一の槽内で行われるスカム排出方法であって、前記有機物汚水を攪拌して発生する水流を利用してスカム排出手段の近傍にスカムを連続的に集める攪拌工程と、前記攪拌工程中にスカムを前記槽の外へ排出するスカム排出工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
【作用】本発明に係るスカム排出装置及びその方法によれば、有機物汚水の処理が行われる単一の槽内へ有機物汚水を流入する。次に、汚水の流入を続けたまま、攪拌手段で槽内の汚水を攪拌する。このとき、攪拌手段によって発生した水流によって、水面に浮遊するスカムが止水手段の近傍に掻き寄せられ、続いてスカム排出手段によってスカムが順次槽の外へ排出される。最後に、有機物汚水から活性汚泥が沈殿されると、上澄水が分離する。最後に排水工程では、上澄水排出手段によって上澄水を槽内から外へ排水する。
【0011】これによって、沈殿工程の前にスカムを排出し、しかも、スカム排出工程と排水工程を分離しているので、スカムの排出を効率よく行うことができる。
【0012】
【実施例】図1には、本発明に係るスカム排出装置10が使用される回分槽20の断面図が示されている。この回分槽20の中央には、円盤状のスカム排出装置10が設置されている(図2参照)。このスカム排出装置10の底部には、スカム排出管12及び上澄水排水管14が連結され、それぞれ回分槽20の外部へスカムS及び上澄水を排出する構成になっている。このスカム排出管12の回分槽20外部に突出した部分には、スカムSの排出量を調整するためのスカム排出弁16が設けられている。
【0013】一方、回分槽20の底部には、2基の曝気攪拌装置18が設置されている。この曝気攪拌装置18は、空気管22を介してブロア24と連結され、空気を回分槽20内へ送気して曝気攪拌するように構成されている。
【0014】図2及び図3に示すように、上記スカム排出装置10の上方には、ガイド支持部26が配置され、下方へ伸びる一対のガイド28と、上澄水排水管14に挿通されたガイドパイプ32と、を固定している。また、スカム排出装置10の中央には、上澄水排水せき30が設けられている。この上澄水排水せき30には、上澄水を取水するための取水口30Aが形成されている。この取水口30Aから取水された上澄水を排水するための排水口30Bが形成され、この排水口30B側から上澄水排水管14側へ下り勾配の傾斜部30Cが形成されている。これによって、上澄水排水せき30は、排水口30Bから溢れ出た上澄水が上澄水排水管14へ流出可能に構成され、上澄水の取水手段として機能する。
【0015】この上澄水排水せき30の周囲には、上部フロート36が設置されている。また、上澄水排水せき30の下部にも、下部フロート38が設置されている。これらの上部フロート36と下部フロート38は、内部に空気が充填されており、上澄水排水せき30を浮力で持ち上げるように構成されている。これによって、上部フロート36の側壁36Aが水面よりも突き出すことができるので、この側壁36Aは水面上に浮遊するスカムSの上澄水排水せき30内への侵入を防止する止水手段として機能する。なお、上部フロート36と上澄水排水せき30は、添え板40を介して蝶ナット42とボルト44で連結されている。
【0016】上部フロート36の外周には、スカム排出せき46が設けられている。このスカム排出せき46は、水面より下に配置され水面に浮遊しているスカムが流入し、スカム排出管12へ排出可能に構成されている。また、このスカム排出管12と上澄水排水管14の上部は、蛇腹式の配管で構成されており、回分槽20の水位に応じて伸縮可能である。これによって、スカム排出装置10は、水位によって上下可能になり、その際ガイド28及びガイドパイプ32によって案内されるように構成されている(図3では、想像線で示す位置から実線で示す位置まで伸縮可能である。)。
【0017】上記構成のスカム排出装置10は、以下のように動作する。なお、図4には、回分槽20の汚水処理工程のタイムスケジュールの一例が示されている。
【0018】先ず、回分槽20へ汚水を流入する(汚水流入工程)。次に、汚水の流入を続けたまま、曝気攪拌装置18で回分槽20内の汚水を攪拌し、ブロア24からエアを供給し汚水を曝気攪拌処理する(曝気攪拌工程)。次に、ブロア24からのエアの供給を停止し曝気攪拌装置18で回分槽20内の汚水を攪拌する(攪拌工程)。これによって、水面にはスカム排出装置10の方向へ水流が生じ、水面に浮遊するスカムSはスカム排出装置10の近傍に押し流される。
【0019】ここで、スカム排出弁16を開けると、スカムSは、スカム排出せき46からスカム排出管12へ流入し、順次回分槽20の外部へ排出される(スカム排出工程)。このとき、図2に示すように、上澄水排出せき26の先端は、水面よりも高くなるように配置する。
【0020】スカムSの排出が完了してから、スカム排出弁16を閉じる。これらの汚水流入工程、曝気攪拌工程、攪拌工程及びスカム排出工程を4回繰り返してから、汚水の流入を停止する。次に、汚水を沈殿させて上澄水と活性汚泥とに分離する(沈殿工程)。次に、取水口30Aから上澄水を取水すると、排水口30Bから溢れた上澄水が傾斜部30Cを通って上澄水排水管14へ流入し、回分槽20の外部へ排水される(上澄水排水工程)。これらの汚水処理工程は、1サイクルが約6時間で終了し、1サイクルの終了後さらに同一の汚水処理工程を繰り返すように構成されている。
【0021】このように本実施例にあっては、回分槽20内の汚水を曝気攪拌装置18によって曝気攪拌し、回分槽20の水面に浮遊しているスカムSをスカム排出せき46の近傍に掻き寄せる構成にしたので、回分槽20全域のスカムSを排出することができる。しかも、上澄水排水管14へスカムSが流入することがないので、スカムSの排出と上澄水の排水が分離して行われ、スカムSの排出を効率よく行うことができると共に、スカムSをさらに処理する等の後工程への移行が容易になる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、攪拌手段を作動させて生じた水流によって水面上に浮遊するスカムを連続的に集めてからスカムを槽の外へ排出する構成にしたので、回分槽の全域にわたってスカムを排出できると共に、スカムの排出と上澄水の排水が分離して行われ、スカムの排出を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスカム排出装置が使用される回分槽を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係るスカム排出装置を示す図3の2−2線の平面図である。
【図3】本発明に係るスカム排出装置を示す図2の3−3線の断面図である。
【図4】本発明に係るスカム排出装置が使用される回分槽の汚水処理工程のタイムスケジュールを示す工程図である。
【符号の説明】
S スカム
10 スカム排出装置
12 スカム排出管(スカム排出手段)
14 上澄水排水管(上澄水排出手段)
16 スカム排出弁(スカム排出手段)
18 曝気攪拌装置(攪拌手段)
20 回分槽(単一の槽)
30 上澄水排水せき(取水手段)
30A 排水口(取水手段)
30B 取水口(取水手段)
30C 傾斜部(取水手段)
36 上部フロート(止水手段)
36A 側壁(止水手段)
46 スカム排出せき(スカム排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機物汚水の処理が行われる単一の槽内に設置され、上澄水を取水する取水手段と、前記取水手段と連通され、上澄水を前記槽の外へ排出する上澄水排出手段と、前記槽の水面上に配置され、水面上に浮遊するスカムの前記取水手段への侵入を防止する止水手段と、前記有機物汚水を攪拌して発生した水流によって前記スカムを前記止水手段近傍へ掻き寄せる攪拌手段と、前記止水手段に設けられ、前記攪拌手段によって掻き寄せられたスカムを前記槽の外へ排出するためのスカム排出手段と、を有することを特徴とするスカム排出装置。
【請求項2】 有機物汚水の処理が行われる単一の槽内で行われるスカム排出方法であって、前記有機物汚水を攪拌して発生する水流を利用してスカム排出手段の近傍にスカムを連続的に集める攪拌工程と、前記攪拌工程中にスカムを前記槽の外へ排出するスカム排出工程と、を有することを特徴とするスカム排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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