説明

スキャニング照射方法およびスキャニング照射装置

【課題】呼吸や脈拍などの生体活動による反復的な位置の変動に伴って照射領域が動いてしまう場合であっても、予め設定された形状および線量に基づいて正確な照射を行うことのできる、3次元スキャニング法を用いたスキャニング照射方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るスキャニング照射方法は、線量算出ステップS2と、差分線量算出ステップS3と、照射線量設定ステップS4と、を含み、所定の条件を満たすまで差分線量算出ステップS3および照射線量設定ステップS4を繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元スキャニング法を用いた放射線のスキャニング照射方法およびスキャニング照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陽子線や重粒子線などを用いた放射線治療(粒子線治療)が注目されている。粒子線治療は、照射エネルギを制御することによって、被照射体の体内の深層にある、予め設定された照射領域に対してほぼ選択的に放射線を照射することができるので、当該照射領域以外の正常な組織に対する障害の発生を低減させることが可能である。
【0003】
かかる粒子線治療を行う際の放射線の照射制御方法には、大別して拡大ビーム照射法と3次元スキャニング法がある。
拡大ビーム照射法は、粒子加速器から取り出した細いビームを、照射領域全体を覆うように当該ビームの進行方向に対して垂直方向および深さ方向に拡げ、横方向をコリメータによって整形し、深さ方向をボーラスによって調整することによって、照射領域全体に放射線を照射する照射制御方法である。
【0004】
3次元スキャニング法は、粒子加速器から取り出した細いビームを拡大することなく、コンピュータ制御によって、当該ビームの進行方向に対して垂直方向および深さ方向の3次元方向にスキャンし、複雑な形状の照射領域を塗りつぶすように放射線を照射する照射制御方法である。
【0005】
3次元スキャニング法には、複雑な形状の照射領域に対応することが可能であり、正常な組織への余分な照射を抑えるができるという利点を有する。また、ボーラスやコリメータが不要であり、オンデマンド照射への適応が可能な上、ビーム利用効率が良いという利点がある。
【0006】
しかし、3次元スキャニング法は、呼吸や脈拍などの生体内の反復的変動を伴う照射領域の変動に弱いため、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術が提案されている。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、半導体位置検出素子(Position Sensitive Detector;PSD)の機能を利用することを特徴としている。具体的には、特許文献1に記載の技術は、呼吸と連動する生体の表皮の変動に対応して光源の位置あるいは光線の方向が変動する光源部と、この光源部からの光を生体の表皮の変動信号として受光してこれを呼吸の周期位相に対応した電気信号に変換するPSDと、この電気信号を基に他の被制御機器の作動制御信号を送出する制御回路を備えた呼吸同期制御装置によって、生体内の反復的変動を伴う照射領域の変動を精度よく迅速に検知してこれに基づいて放射線照射等を行うものである。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、スポット状の照射領域をスキャニングすることで任意の形状の標的に放射線を照射する技術であり、予め設定された照射領域に対して必要とされる線量の放射線を複数回に分割して照射することにより、当該照射領域を処方線量で放射線を照射する旨が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−201922号公報
【特許文献2】特開2006−87649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、放射線の発生および停止に時間的遅れが生じてしまう医療用シンクロトロン放射線加速器を放射線発生装置として用いるため、例えば、図11に示すように、制御装置から停止信号が発信され、これを受信した後、放射線が実際に停止するまでの間に放射線の漏れが発生する。そのため、予め設定した計画線量と実際に照射された放射線の実測線量に誤差が生じるという問題がある。なお、図11は、制御装置から停止信号が発信されてから放射線が実際に停止するまでの間に放射線の漏れが発生する様子を説明する説明図である。
【0011】
特に、3次元スキャニング法のように、時間的に照射領域を移動しつつ放射線を照射する場合、呼吸や脈拍などの生体活動による反復的な位置の変動に伴って照射領域が動いてしまうと、前記した誤差が原因で実測線量にむらができて、予め設定された形状および線量に基づく正確な照射が行えないという問題がある。
【0012】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、呼吸や脈拍などの生体活動による反復的な位置の変動に伴って照射領域が動いてしまう場合であっても、予め設定された形状および線量に基づいて正確な照射を行うことのできる、3次元スキャニング法を用いた放射線のスキャニング照射方法およびスキャニング照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決した本発明に係るスキャニング照射方法は、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域ごとに設定された総照射計画線量となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射方法であって、前記総照射計画線量に対する不足分を許容することのできる閾値を算出する閾値算出ステップと、各回ごとに設定される照射線量と、この照射線量に基づいて前記単位領域に放射線を照射するとともに、照射した放射線の実測線量を測定し、前記照射線量と前記実測線量との差分線量を算出する差分線量算出ステップと、この差分線量に基づいて設定される次回の照射線量を、少なくとも、当該差分線量と、前記次回の照射線量の強度に基づいて求めることのできる照射誤差線量と、の差分をもって設定する照射線量設定ステップと、を含み、前記差分線量が前記閾値未満となるまで前記差分線量算出ステップと、前記照射線量設定ステップと、を繰り返して行うことを特徴としている。
【0014】
本発明に係るスキャニング照射方法は、前記差分線量算出ステップにおいて、前記放射線の照射は、前記標的の変動を検出し、前記標的が予め定められた位置に変動したときの検出信号を生成することのできる標的変動検出手段から得られた前記検出信号に同期して行うのが好ましい。
本発明に係るスキャニング照射方法は、前記差分線量算出ステップにおいて、前記実測線量の測定は、デッドタイムが重複しない少なくとも2つの放射線測定手段を用いて行うのが好ましい。
本発明に係るスキャニング照射方法は、前記放射線が粒子線であるのが好ましい。
【0015】
課題を解決した本発明に係るスキャニング照射装置は、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域ごとに設定された総照射計画線量となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射装置であって、前記単位領域ごとに放射線を照射する放射線照射手段と、放射線照射手段で照射した放射線の実測線量を測定する放射線測定手段と、前記総照射計画線量に対する不足分を許容することのできる閾値を算出する閾値算出手段と、各回ごとに設定された前記照射線量と前記実測線量との差分線量を算出する差分線量算出手段と、前記差分線量算出手段で算出された差分線量に基づいて設定される次回の照射線量を、少なくとも、当該差分線量と、前記次回の照射線量の強度に基づいて求めることのできる照射誤差線量と、の差分をもって設定する照射線量設定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
本発明に係るスキャニング照射装置は、前記放射線照射手段は、前記標的の変動を検出し、前記標的が予め定められた位置に変動したときの検出信号を生成することのできる標的変動検出手段から得られた前記検出信号に同期して放射線を照射するのが好ましい。
本発明に係るスキャニング照射装置は、前記放射線測定手段は、デッドタイムが重複しない少なくとも2つの放射線測定手段を用いて放射線を測定するのが好ましい。
本発明に係るスキャニング照射装置は、前記放射線が粒子線であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスキャニング照射方法によれば、呼吸や脈拍などの生体活動による反復的な位置の変動に伴って照射領域が動いてしまう場合であっても、予め設定された形状および線量に基づいて正確な照射を行うことができる。
本発明のスキャニング照射装置によれば、呼吸や脈拍などの生体活動による反復的な位置の変動に伴って照射領域が動いてしまう場合であっても、予め設定された形状および線量に基づいて正確な照射を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照して本発明に係るスキャニング照射方法、スキャニング照射装置およびスキャニング照射プログラムについて詳細に説明する。
参照する図面において、図1は、本発明に係るスキャニング照射方法の一実施形態の内容を示すフローチャートである。図2は、本発明に係るスキャニング照射方法の他の実施形態の内容を示すフローチャートである。図3は、単位領域x(x=x1、x2、・・・xk)ごとの総照射計画線量Dall(x)を設定した様子を示す説明図である。図4は、単位領域x1におけるn巡目、n+1巡目・・・N巡目における各種線量の算出や設定を説明する説明図である。図5は、単位領域x(x=x1、x2、・・・xk)ごとにn巡目、n+1巡目・・・N巡目で照射した放射線の線量を例示する説明図である。図6(a)および(b)は、放射線の強度、漏洩放射線量および漏洩放射線量の照射誤差線量について説明する説明図である。図7の(a)は、放射線照射測定ステップS6の内容を示すフローチャートであり、(b)は、(a)のステップS607の内容を示すフローチャートであり、(c)は、(a)のステップS612の内容を示すフローチャートである。図8は、本発明に係るスキャニング照射装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図9は、本発明に係るスキャニング照射装置の他の実施形態の構成を示すブロック図である。図10は、本発明に係るスキャニング照射プログラムの内容を示すフローチャートである。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るスキャニング照射方法は、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域x(x=x1,x2,・・・,xk)ごとに設定された総照射計画線量Dall(x)となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射方法であって、総照射計画線量Dall(x)に対する不足分を許容することのできる閾値ε(x)を算出する閾値算出ステップS2と、各回ごとに設定される照射線量Dn(x)と、この照射線量Dn(x)に基づいて単位領域xに放射線を照射するとともに、照射した放射線の実測線量D’n(x)を測定し、照射線量Dn(x)と実測線量D’n(x)との差分線量ΔDn(x)を算出する差分線量算出ステップS3と、この差分線量ΔDn(x)に基づいて設定される次回の照射線量Dn+1(x)を、少なくとも、当該差分線量ΔDn(x)と、次回の照射線量Dn+1(x)の強度In+1に基づいて求めることのできる照射誤差線量δD(In+1(x))と、の差分をもって設定する照射線量設定ステップS4と、を含み、差分線量ΔDn(x)が閾値ε(x)未満となるまで差分線量算出ステップS3と、照射線量設定ステップS4と、を繰り返して行うものである。
【0020】
ここで、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的としては、例えば、肺、心臓、動脈などのようにほぼ一定のリズムで一定の位置を往復動するようなものが挙げられる。
また、標的としては、例えば、腫瘍などの異常組織が挙げられ、標的の性状とは、例えば、腫瘍の種類や被照射体の有する標的の放射線の感受性などの要因をいう。
【0021】
また、本発明に係るスキャニング照射方法は、3次元スキャニング法を用いて、単位領域xについて各回ごとに設定された放射線の照射線量Dn(x)を、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的の全体を一巡することにより、複数回に分割して照射する。分割して放射される放射線は、n巡目(nは、1以上の自然数)の強度Inよりもn+1巡目の強度In+1が低くなるように変調して制御される。
放射線として粒子線を用いれば、被照射体内の深層にある標的に対して選択的に放射線を照射することができるので、標的の奥側や手前側に存在する正常組織に余分な放射線を照射することなく放射線治療を実施することができるので好ましい。
【0022】
なお、差分線量算出ステップS3において、例えば、放射線の照射が初回である場合は、これまでに測定された実測線量D’n(x)は、0(ゼロ)であるので、照射線量Dn(x)(この場合は、総照射計画線量Dall(x)がこれに相当することになる。)と、線量が0である実測線量D’n(x)との差分線量ΔDn(x)を算出することになる。つまり、初回の場合は、差分線量ΔDn(x)は、そのまま総照射計画線量Dall(x)の値となる。
【0023】
次に、図2を参照して、前記した本発明に係るスキャニング照射方法について、その内容をより詳細に示したものを他の実施形態として説明する。
図2に示すように、本発明の他の実施形態に係るスキャニング照射方法は、単位領域設定ステップS1と、閾値算出ステップS2と、差分線量算出ステップS3と、照射線量設定ステップS4と、標的変動検出ステップS5と、放射線照射測定ステップS6と、を含むものである。
【0024】
単位領域設定ステップS1は、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的の形状および性状と、スキャン能力とに基づいて当該標的を複数個の区分に分割し、それぞれを放射線の照射を行う単位領域xとして設定する。
ここで、スキャン能力とは、照射する放射線の直径や出力、放射線治療を行う上で効果的とされる照射範囲などによって決定される処理能力をいい、用いる放射線照射装置によって異なる。したがって、前記した複数個の区分に分割されてなる単位領域xは、特定の形状や大きさを有さず、放射線治療を行う度に適宜設定されるものである。
【0025】
線量算出ステップS2は、図3〜5に示すように、設定した単位領域xごとに、照射する放射線の総照射計画線量Dall(x)と、当該総照射計画線量Dall(x)に対して不足する線量を誤差として許容できる閾値ε(x)と、を算出する。つまり、単位領域x1、単位領域x2、・・・、単位領域xkというように、単位領域xごとに適切な総照射計画線量Dall(x)および閾値ε(x)を設定するので、それぞれの単位領域で過不足ない線量で放射線治療を行うことができる。
【0026】
総照射計画線量Dall(x)は、標的に設定された単位領域xの性状等によって設定することができる。例えば、事前にPET装置やCT装置などで腫瘍が発見されており、これらの装置で得られたシグナルの強さや腫瘍の進行度などに基づいて設定することができる。単位領域xごとに、照射する放射線の総照射計画線量Dall(x)を設定するので、被照射体は過剰な被ばくを防ぐこともできる。
閾値ε(x)は、単位領域xごとに設定された総照射計画線量Dall(x)に対して、実測線量が不足した場合であっても、ある程度の治療効果を期待することができる線量をもって設定する。かかる閾値ε(x)としては、例えば、総照射計画線量Dall(x)の±1%、望ましくは総照射計画線量Dall(x)の−1%に設定することを例示することができる。
【0027】
差分線量算出ステップS3は、単位領域xごとに、既に照射されている放射線の実測線量の総和D’all(x)を算出し、前記した総照射計画線量Dall(x)からこの放射線の実測線量の総和D’all(x)を減算処理して差分線量ΔDn(x)を算出する。
【0028】
したがって、例えば、1巡目の放射線の照射であれば、既に照射されている放射線の実測線量の総和D’all(x)は0(ゼロ)であるので、差分線量ΔD1(x)は、総照射計画線量Dall(x)から、0を減じた線量となる。
また例えば、2巡目の放射線の照射であれば、既に照射されている放射線の実測線量の総和D’all(x)は零と1巡目の放射線の実測線量D’1(x)を加算したものとなるので、差分線量ΔD2(x)は、総照射計画線量Dall(x)から、零と1巡目の放射線の実測線量D’1(x)の総和D’all(x)を減じた線量となる。3巡目以降の放射線の照射を行う場合もこれと同様にして差分線量ΔDn(x)を算出する。
【0029】
なお、差分線量算出ステップS3における減算処理によって、実測線量D’n(x)が、前記総和D’all(x)を超えた場合は、放射線の照射を中止するのが好ましい。このようにすれば、実際に照射された実測線量D’n(x)が放射線の実測線量の総和D’all(x)を超えるような異常が発生した場合、すぐに放射線の照射を中止するので、照射線量Dn(x)を超えた過剰な放射線の照射を防止することが可能となる。
【0030】
照射線量設定ステップS4は、差分線量ΔDn(x)以下の線量で、差分線量ΔDn(x)以下の線量で、n巡目の照射線量Dn(x)を、n巡目に照射しようとする放射線の強度In(x)と照射時間t、および、当該強度In(x)により予め設定されている放射線の漏洩放射線量LD(In(x))と、に基づき、少なくとも漏洩放射線量LD(In(x))の有する照射誤差線量δD(In(x))分の余裕をもって設定する。
【0031】
ここで、漏洩放射線量LD(In(x))は、放射線の強度In(x)によって変わる線量であり、放射線の強度In(x)が大きいほどその値は大きくなり、放射線の強度In(x)が小さいほどその値は小さくなる。かかる漏洩放射線量LD(In(x))は、任意に設定することもできるが、例えば、M. Kanazawa et al., Proceedings of the Second Asian Particle Accelerator Conference, Beijin, China, 2001, p.846-848に記載されており、これにしたがって設定してもよい。
そして、漏洩放射線量LD(In(x))の照射誤差線量δD(In(x))は、図6(b)に示すように、漏洩放射線量LD(In(x))を中心に一定の幅で増減する。
【0032】
標的変動検出ステップS5は、標的の変動を検出し、標的が予め定めた位置に変動したときの検出信号を得る。
例えば、標的が肺であって被照射体が動かないように固定した状態とすれば、呼気時または吸気時に肺の変動量が少なくなるので、変動量が少なくなる位置を予め定めた位置とすることで、かかる位置に肺が位置したことを安定して検出することができる。
前記した例であれば、被照射体の体表にマーカーなどを貼り付け、マーカーの動きを後記する標的変動検出手段でモニタリングすることで検出することができる。そして、マーカーの位置が呼気時または吸気時に達したところでONの検出信号を得、マーカーの位置が呼気時または吸気時以外にあるときはOFFの検出信号を得るようにするとよい。
【0033】
放射線照射測定ステップS6は、設定したn巡目の照射線量Dn(x)に基づいて、放射線を単位領域xごとに、前記したONの検出信号に同期させて順次照射するとともに、単位領域xごとに、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)を測定する。なお、放射線照射測定ステップS6におけるn巡目の放射線の実測線量D’n(x)の測定は、デッドタイムが重複しない少なくとも2つの放射線測定手段を用いて行うのが好ましい。このようにすれば、常時全ての単位領域xについて、どの程度の実測線量D’n(x)で放射線を照射したか確実に把握することができる。なお、デッドタイムとは、放射線の測定を行わない時間のことをいう。放射線測定手段については後記する。
【0034】
この放射線照射測定ステップS6では、図7(a)に示すように、放射線照射測定ステップS6を開始して、n巡目の放射線の照射を開始する(ステップS601)。はじめに、照射線量Dn(x)に従って、n巡目の放射線の強度を強度Inに変更し(ステップS602)、単位領域xに照射位置を切り替える(ステップS603)。
【0035】
ここで、照射線量Dn(x)が、漏洩放射線量LD(In(x))の揺らぎも含めた最小の漏洩放射線量LD(In(x))−δD(In(x))(図6(b)参照)よりも小さい場合(Dn(x)<LD(In(x))−δD(In(x));ステップS604で「Yes」)は、このような条件で単位領域xに放射線を照射すると、実測線量D’n(x)が総照射計画線量Dall(x)を超えることになり好ましくないので、その単位領域xについてのn巡目の放射線の照射をスキップして他の単位領域xについてのn巡目の放射線の照射を行わせる。このとき、差分線量算出ステップS3で算出した差分線量ΔDn(x)を前回の差分線量ΔDn-1(x)とし(ステップS605)、当該単位領域xについての次回(n+1巡目)の照射にて、今回(n巡目)の強度Inよりも低い強度In+1で照射する。
【0036】
そして、全ての単位領域xで照射線量Dn(x)に基づく放射線の照射が完了していなかった場合(ステップS606で「No」)、ステップS603に戻って、放射線の照射の完了していない単位領域xに照射位置を切り替え、ステップ604以降のステップを再び繰り返す。
一方、全ての単位領域xで照射線量Dn(x)に基づく放射線の照射が完了した場合(ステップS606で「Yes」)、ステップS614を行う(図2参照)。
【0037】
一方、ステップS604において、照射線量Dn(x)が、漏洩放射線量LD(In(x))の揺らぎも含めた最小の漏洩放射線量LD(In(x))−δD(In(x))(図6(b)参照)以上である場合(Dn(x)<LD(In(x))−δD(In(x));ステップS604で「No」)は、図7(a)(b)に示すように、単位領域xへの照射を開始する(ステップS607)。このとき、単位領域xへの放射線の照射は、照射線量設定ステップS4で設定したn巡目の照射線量Dn(x)に基づいて行われる(ステップS608)。また、放射線の照射の開始とともに、実測線量の測定を開始する。
放射線を所定の時間照射した後、図7においては図示しない制御計算機によって放射線の停止信号により、放射線照射装置から放射線を照射するのを停止する(ステップS609)。そして、放射線の照射が開始されてから、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)を測定し(ステップS610)、ステップS611を行う。
【0038】
放射線の照射を行ったら、差分線量ΔDn(x)を下記式により求める(ステップS611)。
ΔDn(x)=ΔDn-1(x)−D’n(x)
なお、前記式において、ΔDn-1(x)は、前回の差分線量を表し、D’n(x)は、(今回の)実測線量を表す。
【0039】
次いで、図7(a)(c)に示すように、異常線量の確認を開始する(ステップS612)。異常線量の確認は、例えば、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)が総照射計画線量Dall(x)を超えた場合などが該当する(ステップS613)。異常線量が確認された場合(ステップS613で「Yes」)、即座に放射線の照射を中断する。一方、異常線量が確認されない場合(ステップS613で「No」)、ステップS606を行う。ステップS606における処理は既に説明しているので省略する。
【0040】
そして、放射線照射測定ステップS6後、ステップS614において以下の判断処理を行う。差分線量ΔDn(x)が、閾値ε(x)以上となる単位領域xについては、さらにn+1巡目の放射線の照射を行うため、差分線量算出ステップS3から放射線照射測定ステップS6を再び行い(ステップS614で「No」)、全ての単位領域xにおける差分線量ΔDn(x)が、閾値ε(x)よりも小さくなったら放射線の照射、つまり、放射線治療を終了する(ステップS614で「Yes」)。
【0041】
次に、図8を参照して本発明に係るスキャニング照射装置の一実施形態について説明する。
図8に示すように、本発明に係るスキャニング照射装置1は、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域xごとに設定された総照射計画線量Dall(x)となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射装置であって、放射線照射手段72と、放射線測定手段73と、閾値算出手段3と、差分線量算出手段4と、照射線量設定手段5と、を備えている。なお、本願では放射線照射手段72および放射線測定手段73は、後記する放射線発生手段71とともに、放射線照射測定手段7ということもある。
【0042】
また、図8に示すように、閾値算出手段3、差分線量算出手段4および照射線量設定手段5は、一般的なコンピュータである制御計算機10に備えられている。そして、この制御計算機10は、実測線量制御手段12を介して標的変動検出手段6および放射線照射測定手段7と接続されている。
【0043】
線量算出手段3は、総照射計画線量Dall(x)に対する不足分を許容することのできる閾値ε(x)を算出する。
差分線量算出手段4は、各回ごとに設定された照射線量Dn(x)と実測線量D’n(x)との差分線量ΔDn(x)を算出する。
照射線量設定手段5は、差分線量算出手段4で算出された差分線量ΔDn(x)に基づいて設定される次回の照射線量Dn+1(x)を、少なくとも、当該差分線量ΔDn(x)と、次回の照射線量Dn+1(x)の強度In+1に基づいて求めることのできる照射誤差線量δD(In+1(x))と、の差分をもって設定する。
【0044】
放射線照射手段72は、放射線発生手段71と接続されており、単位領域xごとに放射線を照射する。放射線照射手段72は、例えば、水平及び垂直走査電磁石と高速レンジシフターにより構成されたスポットスキャニング照射装置(E. Urakabe et al., Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 2540.)などを用いることができる。
放射線発生手段71は、通常用いられる放射線を発生させるための加速器、例えば、シンクロトロンやサイクロトロンを用いることができるが、粒子線を発生させるための加速器であれば好適に用いることができる。
放射線測定手段73は、放射線照射手段72によって標的(単位領域x)に対して実際に照射した放射線の実測線量D’n(x)を測定する。放射線測定手段73としては、例えば、平行平板型電離箱などを用いることができる。放射線の実測線量D’n(x)の測定は、デッドタイムが重複しないよう、少なくとも2セットの平行平板型電離箱731、732を用いて行うのがよい。
【0045】
実測線量制御手段12は、照射線量設定手段5によって設定された照射線量Dn+1(x)に基づいた放射線の照射を行わせるため、後記する放射線発生手段71に対して放射線を発生させるための発生信号や、放射線を停止させるための停止信号、放射線の強度Inを変調させるための変調信号を出力する。実測線量制御手段12は、放射線の照射位置を変更するための照射位置変更信号を出力する。
放射線発生手段71と放射線照射手段72は、これらの信号に基づいて適宜動作を行い、放射線の発生、停止および強度Inの変調や、照射位置の変更を行うことができる。
【0046】
なお、本発明に係る放射線照射制御装置1は、記憶手段11を備えており、単位領域xの位置や総照射計画線量Dall(x)、閾値ε(x)、実測線量の総和D’all(x)、差分線量ΔDn(x)、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)などを必要に応じて記憶し、読み出すことができる。
【0047】
次に、図9を参照して本発明に係るスキャニング照射装置の他の実施形態について説明する。
図9に示すように、本発明の他の実施形態に係るスキャニング照射装置1aは、単位領域xごとに設定された放射線の照射線量Dn(x)を、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的の全体を一巡することにより、複数回に分割して照射する放射線照射制御装置であって、放射線は、n巡目(nは、1以上の自然数)の強度Inよりもn+1巡目の強度In+1が低くなるように変調して制御され、単位領域設定手段2aと、線量算出手段3aと、差分線量算出手段4aと、照射線量設定手段5aと、標的変動検出手段6aと、放射線照射測定手段7aと、を備えている。
【0048】
なお、図9に示すように、単位領域設定手段2a、線量算出手段3a、差分線量算出手段4aおよび照射線量設定手段5aは、一般的なコンピュータである制御計算機10aに備えられている。そして、この制御計算機10aは、実測線量制御手段12aを介して標的変動検出手段6aおよび放射線照射測定手段7aと接続されている。
【0049】
単位領域設定手段2aは、標的の形状および性状と、スキャン能力と、に基づいて当該標的を複数個の区分に分割し、それぞれを放射線の照射を行う単位領域x(x=x1,x2,・・・,xk)として設定する。
そして、線量算出手段3aは、単位領域設定手段2aで設定された単位領域xごとに、照射する放射線の総照射計画線量Dall(x)と、当該総照射計画線量Dall(x)に対して不足する線量を誤差として許容できる閾値ε(x)と、を算出する。
【0050】
差分線量算出手段4aは、線量算出手段3aで算出された単位領域xごとに、既に照射されている放射線の実測線量の総和D’all(x)を算出し、総照射計画線量Dall(x)から前記総和D’all(x)を減算処理して差分線量ΔDn(x)を算出する。
照射線量設定手段5aは、差分線量ΔDn(x)以下の線量で、n巡目の照射線量Dn(x)を、n巡目に照射しようとする放射線の強度In(x)と照射時間t、および、当該強度In(x)により予め設定されている放射線の漏洩放射線量LD(In(x))と、に基づき、少なくとも漏洩放射線LD(In(x))の有する照射誤差線量δD(In(x))分の余裕をもって設定する。
【0051】
標的変動検出手段6aは、標的の変動を検出し、標的が予め定めた位置に変動したときの検出信号を得て同期信号を制御計算機10aの実測線量制御手段12aに出力する。実測線量制御手段12aは、入力された検出信号(同期信号)に同期させて放射線を照射させるための発生信号を放射線発生手段71aに出力する。標的変動検出手段6としては、前記したように、被照射体の体表にマーカーなどを貼り付け、マーカーの動きを検出器でモニタリングすることで標的の変動を検出することができる。そして、マーカーの位置が呼気時または吸気時に達したところでONの検出信号を得、マーカーの位置が呼気時または吸気時以外にあるときはOFFの検出信号を得るようにするとよい。
【0052】
放射線照射測定手段7aは、標的変動検出手段6aで得た検出信号に同期させて、照射線量設定手段5aで設定したn巡目の照射線量Dn(x)に基づいて、放射線を単位領域xごとに順次照射するとともに、単位領域xごとに、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)を測定する。測定した実測線量D’n(x)は、制御計算機10の差分線量算出手段4に入力され、n+1巡目の照射線量を算出するために総和D’all(x)が算出され、さらにこれを用いて差分線量ΔDn+1(x)が算出される。
【0053】
なお、放射線照射測定手段7aは、放射線発生手段71aと、放射線照射手段72aと、放射線測定手段73a(平行平板型電離箱73a1、73a2)と、を備えているが、これらは図8に示す一の実施形態に係るスキャニング照射装置1の放射線発生手段71、放射線照射手段72および放射線測定手段73と同様であるのでその説明を省略する。
【0054】
次に、図10を参照して、スキャニング照射プログラムについて説明する。
図10に示すように、スキャニング照射プログラムは、単位領域xごとに設定された放射線の照射線量を、生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的の全体を一巡することにより、複数回に分割して照射するために一般的なコンピュータ(制御計算機)を以下のようにして制御するものである。
ここで、放射線は、n巡目(nは、1以上の自然数)の強度Inよりもn+1巡目の強度In+1が低くなるように変調して制御される。また、制御計算機は、標的の変動を検出し、標的が予め定めた位置に変動したときの検出信号を得る標的変動検出手段と、放射線を検出信号に同期させて順次照射するとともに、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)を測定する照射測定手段と、に接続されている。
【0055】
スキャニング照射プログラムは、図10に示すように、制御計算機に、単位領域設定ステップS11と、線量算出ステップS12と、差分線量算出ステップS13と、照射線量設定ステップS14と、放射線照射測定ステップS15と、を実行させ、放射線照射測定ステップS15において、照射線量Dn(x)が漏洩放射線LD(In(x))よりも小さい場合は、その単位領域xについてのn巡目の放射線の照射をスキップして他の単位領域xについてのn巡目の放射線の照射を行わせ、ステップS16において、差分線量ΔDn(x)が、閾値ε(x)以上となる単位領域xについては、さらにn+1巡目の放射線の照射を行うため、差分線量算出ステップS13から放射線照射測定ステップS15を再び行わせ、全ての単位領域xにおける差分線量ΔDn(x)が、閾値ε(x)よりも小さくなったら放射線の照射を終了させる。
【0056】
なお、スキャニング照射プログラムにおける単位領域設定ステップS11、線量算出ステップS12、差分線量算出ステップS13、および照射線量設定ステップS14はそれぞれ、既に説明した本発明に係るスキャニング照射方法における単位領域設定ステップS1、線量算出ステップS2、差分線量算出ステップS3、および照射線量設定ステップS4に相当し、その処理内容も実質的に同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0057】
スキャニング照射プログラムにおける放射線照射測定ステップS14では、前記した標的変動検出手段6(6a)で得た検出信号に同期させて、照射線量設定ステップS14で設定したn巡目の照射線量Dn(x)に基づいて、放射線照射測定手段7(7a)に対して放射線を単位領域xごとに順次照射させるとともに、単位領域xごとに、実際に照射されたn巡目の放射線の実測線量D’n(x)を測定させる処理(命令)を行う。
【0058】
以上に説明したスキャニング照射プログラムは、CD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に記録し、記録媒体駆動装置(不図示)によって、当該記録媒体からスキャニング照射プログラムを読み出して記憶手段11にインストールして実行するようにしてもよい。
【0059】
また、通信ネットワークなどの通信手段を備えたスキャニング照射装置(クライアント)が、放射線照射制御プログラムが通信ネットワークを介して接続された他のコンピュータ(サーバ)に記憶されている場合、当該コンピュータからネットワークを介してスキャニング照射プログラムをダウンロードして実行するようにしてもよい。また、この場合、各ステップで算出したり、測定したりして得た線量や、設定した単位領域の位置情報などをサーバに備えられた記憶手段(不図示)に記憶することとしてもよい。
【0060】
以上、本発明のスキャニング照射方法、スキャニング照射装置およびスキャニング照射プログラムについて、発明を実施するための最良の形態により詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るスキャニング照射方法の一実施形態の内容を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るスキャニング照射方法の他の実施形態の内容を示すフローチャートである。
【図3】単位領域x(x=x1、x2、・・・xk)ごとの総照射計画線量Dall(x)を設定した様子を示す説明図である。
【図4】単位領域x1におけるn巡目、n+1巡目・・・N巡目における各種線量の算出や設定を説明する説明図である。
【図5】単位領域x(x=x1、x2、・・・xk)ごとにn巡目、n+1巡目・・・N巡目で照射した放射線の線量を例示する説明図である。
【図6】(a)および(b)は、放射線の強度、漏洩放射線量および漏洩放射線量の照射誤差線量について説明する説明図である。
【図7】(a)は、放射線照射測定ステップS6の内容を示すフローチャートであり、(b)は、(a)のステップS607の内容を示すフローチャートであり、(c)は、(a)のステップS612の内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るスキャニング照射装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係るスキャニング照射装置の他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係るスキャニング照射プログラムの内容を示すフローチャートである。
【図11】制御装置から停止信号が発信されてから放射線が実際に停止するまでの間に放射線の漏れが発生する様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
S1 単位領域設定ステップ
S2 線量算出ステップ
S3 差分線量算出ステップ
S4 照射線量設定ステップ
S5 標的変動検出ステップ
S6 放射線照射測定ステップ
x 単位領域
Dall(x) 総照射計画線量
ε(x) 閾値
Dn(x) 照射線量
D’n(x) 実測線量
ΔDn(x) 差分線量
Dn+1(x) 次回の照射線量
In+1 次回の照射線量の強度
δD(In+1(x)) 照射誤差線量
1,1a 放射線照射制御装置
2,2a 単位領域設定手段
3,3a 線量算出手段
4,4a 差分線量算出手段
5,5a 照射線量設定手段
6,6a 標的変動検出手段
7,7a 放射線照射測定手段
71,71a 放射線発生手段
72,72a 放射線照射手段
73,73a 放射線測定手段
10,10a 制御計算機
11,11a 記憶手段
12,12a 照射線量制御手段
S11 単位領域設定ステップ
S12 線量算出ステップ
S13 差分線量算出ステップ
S14 照射線量設定ステップ
S15 放射線照射測定ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域ごとに設定された総照射計画線量となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射方法であって、
前記総照射計画線量に対する不足分を許容することのできる閾値を算出する閾値算出ステップと、
各回ごとに設定される照射線量と、この照射線量に基づいて前記単位領域に放射線を照射するとともに、照射した放射線の実測線量を測定し、前記照射線量と前記実測線量との差分線量を算出する差分線量算出ステップと、
この差分線量に基づいて設定される次回の照射線量を、少なくとも、当該差分線量と、前記次回の照射線量の強度に基づいて求めることのできる照射誤差線量と、の差分をもって設定する照射線量設定ステップと、
を含み、
前記差分線量が前記閾値未満となるまで前記差分線量算出ステップと、前記照射線量設定ステップと、を繰り返して行う
ことを特徴とするスキャニング照射方法。
【請求項2】
前記差分線量算出ステップにおいて、
前記放射線の照射は、
前記標的の変動を検出し、前記標的が予め定められた位置に変動したときの検出信号を生成することのできる標的変動検出手段から得られた前記検出信号に同期して行う
ことを特徴とする請求項1に記載のスキャニング照射方法。
【請求項3】
前記差分線量算出ステップにおいて、
前記実測線量の測定は、
デッドタイムが重複しない少なくとも2つの放射線測定手段を用いて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスキャニング照射方法。
【請求項4】
前記放射線が粒子線であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスキャニング照射方法。
【請求項5】
生体活動による反復的な位置の変動を伴う標的に対して設定した複数の単位領域ごとに設定された総照射計画線量となるように放射線を複数回に分割して照射するスキャニング照射装置であって、
前記単位領域ごとに放射線を照射する放射線照射手段と、
放射線照射手段で照射した放射線の実測線量を測定する放射線測定手段と、
前記総照射計画線量に対する不足分を許容することのできる閾値を算出する閾値算出手段と、
各回ごとに設定された前記照射線量と前記実測線量との差分線量を算出する差分線量算出手段と、
前記差分線量算出手段で算出された差分線量に基づいて設定される次回の照射線量を、少なくとも、当該差分線量と、前記次回の照射線量の強度に基づいて求めることのできる照射誤差線量と、の差分をもって設定する照射線量設定手段と、を備えた
ことを特徴とするスキャニング照射装置。
【請求項6】
前記放射線照射手段は、
前記標的の変動を検出し、前記標的が予め定められた位置に変動したときの検出信号を生成することのできる標的変動検出手段から得られた前記検出信号に同期して放射線を照射する
ことを特徴とする請求項5に記載のスキャニング照射装置。
【請求項7】
前記放射線測定手段は、
デッドタイムが重複しない少なくとも2つの放射線測定手段を用いて放射線を測定する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のスキャニング照射装置。
【請求項8】
前記放射線が粒子線であることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のスキャニング照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−45229(P2009−45229A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214122(P2007−214122)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】