説明

スキャン相関処理装置、レーダ装置、及びスキャン相関処理方法

【課題】レーダ映像の分解能を向上させる場合においても、スキャン相関処理におけるメモリ使用量の増加を抑制する。
【解決手段】スキャン相関処理装置は、1回前に算出された出力値に対応する級を選択するとともに、入力されるスイープデータ値に対応する級を選択する級選択部と、出力値に対する級と、スイープデータ値に対する級との組合せそれぞれに、出力値を算出する演算を示す命令コードを対応付けた命令テーブルを予め記憶している命令記憶部と、級選択部が選択した1回前に算出された出力値に対応する級と、入力されるスイープデータ値に対応する級との組合せに応じた命令コードを命令記憶部から読み出す命令コード読出部と、命令コード読出部が読み出した命令コードに基づいて、1回前に算出された出力値、及び入力されるスイープデータ値から出力値を算出する演算部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャン相関処理装置、レーダ装置、及びスキャン相関処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などに用いられるレーダ装置では、海象や気象の状況に応じて発生する不要な反射波などのノイズ(クラッタ)を除去するスキャン相関処理が行われている。このスキャン相関処理は、1スキャン前における自船の位置と、今回のスキャンにおける位置と差分に基づいて、1スキャン前に得られた前回スキャン相関結果と、今回のスキャンにおいて得られたスイープデータから取り出された今回入力値とから、ノイズを検出して当該ノイズを除去する処理である。
ここで、スイープデータとは、レーダ装置における電波の送信と当該電波の反射波の受信とによる送受信(スイープ)1回ごとに得られるデータである。
【0003】
時系列に連続するスイープデータにおける相関の算出は、今回のスイープにより得られたスイープデータ値と、前回までのスイープに基づいて得られた1回前の出力値とに対して、所定の演算を用いて今回の出力値を得ることにより行われる。このような演算は、スイープデータ値と、1回前の出力値との各組合せに対応付けられた出力値が記憶されているルックアップテーブルを用いることで行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−371145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーダ装置において、エコーのわずかな振幅差を画面表示上で区別できるようにするために、量子化の度合いを細かくしてデータの階調を増やす必要がある。この場合、データの取り得る値の数が増加するので、ルックアップテーブルに記憶させるスイープデータ値と出力値との組合せ数が増加することになる。また、出力値の算出に用いるルックアップテーブルには、スイープデータ値と出力値との組合せごとに出力値が記憶されるので、ルックアップテーブルに要する記憶領域が著しく増加することになる。例えば、スイープデータ値及び出力値の取り得る値を16通りから128通りに増加させると、ルックアップテーブルに記憶させる各組合せに対応する出力値が16×16(=256)通りから128×128(=16384)通りになるので、ルックアップテーブルに要する記憶領域が著しく増加することになる。
スキャン相関処理における処理をASIC(特定用途向けの集積回路)に実装する場合、データの階調を増やす変更は、ルックアップテーブルの実装に要するメモリサイズを増加させ、ASICのチップサイズが大きくなり、ASICチップの製造コストの増加を招いてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、レーダ映像の分解能を向上させる場合においても、スキャン相関処理におけるメモリ使用量の増加を抑制することができるスキャン相関処理装置、レーダ装置、及びスキャン相関処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、出力値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち1回前に算出された出力値に対応する級を選択するとともに、スイープデータ値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち入力されるスイープデータ値に対応する級を選択する級選択部と、出力値に対する級と、スイープデータ値に対する級との組合せそれぞれに、出力値を算出する演算を示す命令コードを対応付けた命令テーブルを予め記憶している命令記憶部と、前記級選択部が選択した1回前に算出された出力値に対応する級と、入力されるスイープデータ値に対応する級との組合せに応じた命令コードを前記命令記憶部から読み出す命令コード読出部と、前記命令コード読出部が読み出した命令コードに基づいて、前記1回前に算出された出力値、及び前記入力されるスイープデータ値から出力値を算出する演算部とを備えることを特徴とするスキャン相関処理装置である。
【0008】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記命令記憶部には、海象条件及び気象条件ごとに対応付けられた複数の命令テーブルが記憶されており、前記命令コード読出部は、更に、前記命令記憶部に記憶されている複数の命令テーブルから、外部より入力される海象条件及び気象条件を示す情報に対応する命令テーブルを選択し、選択した命令テーブルから命令コードを読み出すことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記に記載の発明のスキャン相関処理装置と、電波の送受信ごとに得られる前記スイープデータ値を前記スキャン相関処理装置に入力するレーダ送受信部と、前記スキャン相関処理装置において算出される出力値に基づいた表示画像データを出力する画像出力部とを具備することを特徴とするレーダ装置である。
【0010】
また、本発明は、出力値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち1回前に算出された出力値に対応する級を選択するとともに、スイープデータ値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち入力されるスイープデータ値に対応する級を選択する選択ステップと、出力値に対する級と、スイープデータ値に対する級との組合せごとに、出力値を算出する演算を示す命令コードが含まれる命令テーブルを予め記憶している命令記憶部から、前記選択ステップにおいて選択した、1回前に算出された出力値に対応する級と、入力されるスイープデータ値に対応する級との組合せに対応した命令コードを前記命令記憶部から読み出す命令コード読出ステップと、前記命令コード読出ステップにおいて、読み出した命令コードに基づいて、前記1回前に算出された出力値、及び前記入力されるスイープデータ値から出力値を算出する演算ステップとを有することを特徴とするスキャン相関処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、スキャン相関処理の演算対象となる、1回前の出力値及び今回の入力値を各値が取り得る数値範囲を区分した級の組合せごとに、1回前の出力値及びスイープデータ値から出力値を算出する演算を示す命令コードが命令テーブルに含まれる構成にした。
これにより、命令テーブルに含まれる命令コードの数は、1回前の出力値及びスイープデータ値の組合せ数を、1回前の出力値及びスイープデータ値が取り得る値に対する数値範囲を区分した級の組合せ数に削減することができ、出力値及びスイープデータ値の取り得る値の組合せ数によらず一定に保つことができる。その結果、出力値及びスイープデータ値が取り得る値を細かくして分解能を向上させる場合においても、命令テーブル(ルックアップテーブル)の実装に要するメモリサイズの増加を抑えることができ、スキャン相関処理におけるメモリ使用量の増加、及びチップサイズの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態におけるスキャン相関処理部12の構成例を示すブロック図である。
【図3】命令記憶部124に記憶されている命令テーブルの例を示す図である。
【図4】同実施形態における表示メモリ部11を更新する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるスキャン相関処理装置、レーダ装置、及びスキャン相関処理方法を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す概略ブロック図である。このレーダ装置は、空中線部2から送信された電波が物標に反射した反射波(エコー)を空中線部2が受信し、受信した反射波に応じた画像情報を表示部16に出力するものである。
ここで、本実施形態では、反射波に基づいて出力される受信信号を7ビットの精度で量子化し、レーダ装置が船舶に設置されている場合について説明する。
【0015】
同図に示すように、レーダ装置は、送受信制御部1、空中線部2、A/D(Analog-to-digital;アナログ・デジタル)変換部3、レーダ信号処理部4、スイープメモリ部5、空中線回転信号生成部6、距離角度信号制御部7、ジャイロインターフェース部8、座標変換部9、速度情報入力部10、表示メモリ部11、スキャン相関処理部12、表示情報生成部13、グラフィックメモリ部14、画像合成部15、及び表示部16を具備している。
【0016】
送受信制御部1は、自装置が具備している空中線部2の送受信の制御を行う。
空中線部2は、送受信制御部1の制御に応じて、予め定められた回転周期で回転するアンテナから電波を送信し、物標などで反射した電波を受信し、受信した電波の電力レベル(振幅)に応じた受信信号をA/D変換部3に出力する。
【0017】
A/D変換部3は、空中線部2から入力される受信信号を7ビットで量子化し、量子化したデジタル信号をレーダ信号処理部4に出力する。
レーダ信号処理部4は、公知の技術を用いて誤警報確率をある一定水準以下に抑圧するCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を入力されたデジタル信号に対して行い、その結果をスイープデータとしてスイープメモリ部5に記憶させる。スイープメモリ部5には、反射波の受信電力レベルをデジタル化されたスイープデータが時系列順に記憶される。
【0018】
空中線回転信号生成部6は、空中線部2が有するアンテナの回転角度に同期したパルス信号を生成し、生成したパルス信号を距離角度信号制御部7に出力する。
ジャイロインターフェース部8は、自装置が設置されている船舶の針路を検出し、検出した針路を示す情報を距離角度信号制御部7に出力する。
距離角度信号制御部7は、空中線回転信号生成部6から入力されるパルス信号と、ジャイロインターフェース部8から入力される情報とから角度を算出し、算出した角度を示す情報を座標変換部9に出力する。
【0019】
速度情報入力部10には、自装置が設置されている船舶の移動する速度を示す速度情報が外部より入力される。
座標変換部9は、距離角度信号制御部7が算出した角度と、速度情報入力部10に入力された速度情報とに基づいて、表示メモリ部11における読み出しアドレス及び書き込みアドレスを算出する。換言すると、座標変換部9は、アンテナの方位、及び、自船の針路と速度情報に基づいて算出される自船の位置を用いて、極座標系から直交座標系への変換を行い、表示メモリ部11に記憶されているデータのうち、スイープメモリ部5に記憶されているスイープデータに対応するデータを選択する読み出しアドレス及び書き込みアドレスを算出する。
【0020】
表示メモリ部11は、アンテナが1回転して得られるデータ、すなわち1スキャン分のデータを記憶する複数の記憶領域を有し、PPI(Plan Position Indicator;平面位置表示)表示データを記憶する。また、表示メモリ部11の複数の記憶領域は、座標変換部9が算出する読み出しアドレス及び書き込みアドレスを用いて、いずれか1つが選択される。
【0021】
スキャン相関処理部12は、スキャン間の相関に基づいて、海象や気象の状況に応じて発生する不要な反射波などのノイズ(クラッタ)を除去する処理を行う。具体的には、スキャン相関処理部12は、1回前のスキャンにより得られたデータである前回出力値を表示メモリ部11から読み出すとともに、今回のスイープにより得られたデータである今回入力値をスイープメモリ部5から読み出す。
そして、スキャン相関処理部12は、前回出力値と今回入力値との相関に基づいた演算を行い、演算結果である今回出力値を表示メモリ部11に記憶させる。このとき、前回出力値は、座標変換部9が算出した読み出しアドレスで選択される記憶領域に記憶されたデータである。また、今回出力値は、座標変換部9が算出した書き込みアドレスで選択される記憶領域に記憶される。
【0022】
表示情報生成部13は、海図や、電子方位線、VRM(Variable Range Marker;可変距離環)などを示す情報に基づいて、表示部16に表示させる表示データを生成し、生成した表示データをグラフィックメモリ部14に記憶させる。
画像合成部15は、表示メモリ部11に記憶されているデータと、グラフィックメモリ部14に記憶されている表示データとを合成し、合成したデータを表示部16に出力する。
表示部16は、画像合成部15から入力されたデータを画像として表示する。表示部16は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display;液晶表示装置)などである。
【0023】
図2は、本実施形態におけるスキャン相関処理部12の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、スキャン相関処理部12は、区分閾値記憶部121、級選択部122、4つのパイプラインレジスタ123a〜123d、命令記憶部124、命令コード読出部125、3つのパイプラインレジスタ126a〜126c、及び演算部127を備えている。
スキャン相関処理部12は、前回出力値及び今回入力値それぞれに対応した級を選択する処理と、前回出力値及び今回入力値それぞれに対応した級に基づいて今回出力値を算出する際の演算コードを読み出す処理と、読み出した演算コードに基づいて今回出力値を算出する処理との3つの処理をパイプライン処理して、演算時間の短縮を図っている。
【0024】
区分閾値記憶部121には、7ビットで量子化されたデータである前回出力値及び今回入力値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲(0〜127)を区分するための複数のしきい値が記憶されている。例えば、区分閾値記憶部121には、数値範囲(0〜127)を8つに区分された級に分けるように、各級の上限値が小さい順に記憶されている。
【0025】
級選択部122は、表示メモリ部11から読み出される前回出力値と、スイープメモリ部5から読み出される今回入力値とを区分閾値記憶部121に記憶されている各しきい値と比較し、前回出力値と今回入力値とそれぞれに対応する級を選択し、選択した級を示す信号を出力する。ここで、級選択部122が出力する級を示す信号は、8つの級のいずれかを示す4ビットの情報量を有する信号である。
【0026】
パイプラインレジスタ123aは、表示メモリ部11から読み出される前回出力値が入力され、入力される前回出力値を記憶する。パイプラインレジスタ123bは、スイープメモリ部5から読み出される今回入力値が入力され、入力される今回入力値を記憶する。
パイプラインレジスタ123cは、級選択部122から前回出力値に対応する級が入力され、入力された級を記憶する。パイプラインレジスタ123dは、級選択部122から今回入力値に対応する級が入力され、入力された級を記憶する。各パイプラインレジスタ123a〜123dは、例えば、フリップ・フロップなどの記憶素子で構成されており、入力されている信号・情報を予め定められた周期ごとに記憶し、記憶した信号・情報を出力する。
【0027】
命令記憶部124には、前回出力値に対応する級と、今回入力値に対応する級との組合せそれぞれに、今回出力値を算出する演算を示す命令コードが対応付けられた命令テーブルが予め記憶されている。本実施形態においては、命令テーブルには、前回出力値に対応する級(8通り)と、今回入力値に対応する級(8通り)との全組合せ(64通り)に対応付けられた命令コードが記憶されている。命令記憶部124に記憶されている命令コードは、演算部127において実行させる演算を示す情報である。この命令コード内の情報により、前回出力値、今回入力値、命令コード内に含まれる即値のいずれかが演算対象となる入力値として選択される。また、同様に命令コード内の情報により入力値に対する演算内容が選択される。
【0028】
図3は、命令記憶部124に記憶されている命令テーブルの例を示す図である。ここでは、説明を簡単にするために、前回出力値に対応する級、及び今回入力値に対応する級が「0」と「1」との2通りであり、各級の組合せが4通りの場合が示されている。
同図に示すように、(前回出力値,今回出力値)の組合せが、(0,0)の場合、「前回出力値より「1」を減算して出力する」という演算が対応付けられている。また、(0,1)には「前回出力値を出力する」という演算が対応付けられ、(1,0)には「即値「0」を出力する」という演算が対応付けられ、(1,1)には「今回入力値に「1」を加算して出力する」という演算が対応付けられている。
【0029】
図2に戻って、説明を続ける。命令コード読出部125には、パイプラインレジスタ123c、123dから前回出力値に対応する級、及び今回入力値に対応する級とが入力される。命令コード読出部125は、入力された2つの級の組合せに対応する命令コードを命令記憶部124から読み出し、読み出した命令コードを出力する。
【0030】
パイプラインレジスタ126aは、パイプラインレジスタ123aから前回出力値が入力され、入力される前回出力値を記憶する。パイプラインレジスタ126bは、パイプラインレジスタ123bから今回入力値が入力され、入力される今回入力値を記憶する。パイプラインレジスタ126cは、命令コード読出部125から命令コードが入力され、入力された命令コードを記憶する。各パイプラインレジスタ126a〜126cは、パイプラインレジスタ123a〜123dと同様に、フリップ。フロップなどの記憶素子で構成されており、入力されている信号・情報を予め定められた周期ごとに記憶し、記憶した信号・情報を出力する。
【0031】
演算部127には、パイプラインレジスタ126aに記憶されている前回出力値と、パイプラインレジスタ126bに記憶されている今回入力値と、パイプラインレジスタ126cに記憶されている命令コードとが入力される。演算部127は、入力される命令コードに基づいて、前回出力値及び今回入力値から今回出力値を算出する。
【0032】
図4は、本実施形態における表示メモリ部11を更新する処理を示すフローチャートである。レーダ装置において、表示メモリ部11を更新する処理が開始されると、座標変換部9がアンテナの方位、及び、自船の針路と速度情報に基づいて算出される自船の位置を用いて極座標系から直交座標系への変換を行い、スイープメモリ部5に記憶されているスイープデータに対応する、表示メモリ部11のアドレスを算出する(ステップS1)。
【0033】
スキャン相関処理部12は、座標変換部9が算出したアドレスに記憶されている値(前回出力値)を読み出すとともに(ステップS2)、スイープメモリ部5からスイープデータ値(今回入力値)を読み出し、相関処理を行い今回出力値を算出する(ステップS3)。この相関処理は、上述のスキャン相関処理部12の構成に基づいて、前回出力値と、今回入力値との組合せに応じた演算を行うことにより行われる。
【0034】
スキャン相関処理部12は、表示メモリ部11の記憶領域のうち、ステップS2において算出されたアドレスに、算出した今回出力値を記憶させる(ステップS4)。
上述のステップS1〜ステップS4の処理を繰り返して行うことにより、表示メモリ部11に記憶されている値を更新する。
【0035】
このように、区分閾値記憶部121に記憶させるしきい値と、命令記憶部124に記憶させる命令テーブルを適宜変更することにより、級選択部122が今回入力値及び前回出力値に対して級を選択し、任意の振幅に応じた任意演算を行うことが可能となる。これにより、様々な海象条件、気象条件に応じた適切なスキャン相関処理のアルゴリズムを設定することができる。また、区分閾値記憶部121及び命令記憶部124に記憶させる情報を随時変更することで、リアルタイムで海象条件、気象条件に応じたスキャン相関処理に切り替えることが可能となる。
【0036】
上述のように、スキャン相関処理部12は、級選択部122が、表示メモリ部11から読み出された前回出力値に対する下限値から上限値までの数値範囲を、区分閾値記憶部121に記憶されている各しきい値と比較し、前回出力値が属する級を選択する。また、級選択部122が、スイープメモリ部5から読み出された今回入力値に対する下限値から条件値までの数値範囲を、区分閾値記憶部121に記憶されている各しきい値と比較し、今回入力値が属する級を選択する。命令コード読出部125が、級選択部122が選択した、前回出力値の級と、今回入力との級との組合せに対応付けられた命令コードを命令記憶部124から読み出す。
【0037】
このように、前回出力値と今回入力値とを級に区分し、前回出力値に対応する級と、今回入力値に対応する級との組合せごとに命令コードを対応付けるようにしたので、命令記憶部124に記憶させる命令コードの数を、前回出力値が取り得る値と今回入力値が取り得る値との組合せより少なくすることができる。その結果、前回出力値と、今回入力値との分解能を向上させる場合においても、命令テーブルの実装に要するメモリサイズの増加を抑えることができ、スキャン相関処理におけるメモリ使用量の増加、及びスキャン相関処理を実装するASICチップの大型化を抑制することができる。
また、命令コードのサイズは、前回出力値及び今回入力値の分解能、すなわち情報量に依存しておらず、前回出力値及び今回入力値の分解能を向上させた場合においても、命令コードのサイズを変更する必要がないので、前回出力値と、今回入力値との分解能を向上させる場合においても、命令テーブルの実装に要するメモリサイズの増加を抑えることができ、スキャン相関処理におけるメモリ使用量の増加、及びスキャン相関処理を実装するASICチップの大型化を抑制することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、命令記憶部124が記憶する命令テーブルが1つの場合について説明したが、命令記憶部124が記憶する命令テーブルが複数であってもよい。この場合、複数の命令テーブルそれぞれが、海象条件及び気象条件ごとに対応付けられており、命令コード読出部125に外部より入力される海象条件及び気象条件を示す情報が入力されるようにする。そして、命令コード読出部125は、入力された海象条件及び気象条件を示す情報に対応する命令テーブルを選択し、選択した命令テーブルから命令コードを読み出すようにしてもよい。これにより、海象条件及び気象条件に応じた命令テーブルを選択することができ、海象条件及び気象条件に応じたスキャン相関処理を行うことができ、ノイズ除去の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…送受信制御部、2…空中線部、3…A/D変換部、4…レーダ信号処理部、5…スイープメモリ部、6…空中線回転信号生成部、7…距離角度信号制御部、8…ジャイロインターフェース部、9…座標変換部、10…速度情報入力部、11…表示メモリ部、12…スキャン相関処理部、13…表示情報生成部、14…グラフィックメモリ部、15…画像合成部、16…表示部、121…区分閾値記憶部、122…級選択部、123a,123b,123c,123d…パイプラインレジスタ、124…命令記憶部、125…命令コード読出部、126a,126b,126c…パイプラインレジスタ、127…演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち1回前に算出された出力値に対応する級を選択するとともに、スイープデータ値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち入力されるスイープデータ値に対応する級を選択する級選択部と、
出力値に対する級と、スイープデータ値に対する級との組合せそれぞれに、出力値を算出する演算を示す命令コードを対応付けた命令テーブルを予め記憶している命令記憶部と、
前記級選択部が選択した1回前に算出された出力値に対応する級と、入力されるスイープデータ値に対応する級との組合せに応じた命令コードを前記命令記憶部から読み出す命令コード読出部と、
前記命令コード読出部が読み出した命令コードに基づいて、前記1回前に算出された出力値、及び前記入力されるスイープデータ値から出力値を算出する演算部と
を備えることを特徴とするスキャン相関処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスキャン相関処理装置において、
前記命令記憶部には、海象条件及び気象条件ごとに対応付けられた複数の命令テーブルが記憶されており、
前記命令コード読出部は、更に、前記命令記憶部に記憶されている複数の命令テーブルから、外部より入力される海象条件及び気象条件を示す情報に対応する命令テーブルを選択し、選択した命令テーブルから命令コードを読み出す
ことを特徴とするスキャン相関処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスキャン相関処理装置と、
電波の送受信ごとに得られる前記スイープデータ値を前記スキャン相関処理装置に入力するレーダ送受信部と、
前記スキャン相関処理装置において算出される出力値に基づいた表示画像データを出力する画像出力部と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
出力値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち1回前に算出された出力値に対応する級を選択するとともに、スイープデータ値が取り得る値に対する下限値から上限値までの数値範囲を区分した複数の級のうち入力されるスイープデータ値に対応する級を選択する級選択ステップと、
出力値に対する級と、スイープデータ値に対する級との組合せごとに、出力値を算出する演算を示す命令コードが含まれる命令テーブルを予め記憶している命令記憶部から、前記級選択ステップにおいて選択した、1回前に算出された出力値に対応する級と、入力されるスイープデータ値に対応する級との組合せに対応した命令コードを前記命令記憶部から読み出す命令コード読出ステップと、
前記命令コード読出ステップにおいて、読み出した命令コードに基づいて、前記1回前に算出された出力値、及び前記入力されるスイープデータ値から出力値を算出する演算ステップと
を有することを特徴とするスキャン相関処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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