説明

スキュー付ステータの製造装置

【課題】捻りの程度が自由に調整でき、かつ接合時におけるステータコアの積層方向の厚さを均一にさせる。
【解決手段】スキュー付ステータの製造装置は、ステータコア11の一方の端面が載置されるベース51と、ベースに取外し可能であってかつ傾動可能に立設されステータコア11の軸方向に連通する切欠き16a又はスロット14に挿通されるピン54と、ステータコア11を周囲から包囲するようにベース51に立設された複数の支柱55と、複数の支柱の端部に設けられステータコア11の他方の端面に当接してステータコアを押圧可能に構成された押圧部材56と、ステータコア11の他方の端面側に位置しピン54の先端が係止された操作部材67と、操作部材に設けられステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材67を回転させる操作ハンドル69とを備え、ピン54の切欠き16aからの離脱を防止する複数の環状板61を備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性金属片を積層して構成されてその金属片が徐々にずれるように捻りが与えられたステータコアにコイルが装着されたスキュー付ステータの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに装着されたステータコイルとを備える。ステータコアは複数の磁性金属片を積層して形成され、このステータコアと別にステータコイルは製造され、その後、環状のステータコイルをステータコアの各スロットに収容するようにしている。
【0003】
一方、このようなステータには、後にロータ(回転子)が挿入されることになるけれども、このロータの回転を円滑にするため、そのステータコアに捻り(スキュー)を与えて、ロータの磁極との間で連続的な吸引又は反発力が付与されるようにして、その回転電機の振動や騒音を低減させることが知られている。そして、このようなスキュー付ステータの具体的な製造方法として、スロットがステータコアの軸方向に平行である状態で、そのスロットにコイルを挿入した後、磁性金属片が徐々にずれるように捻る方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。このスキュー付ステータの製造方法では、図12に示すように、ステータコア1を構成する複数の金属片2の外周に互いに整合する切欠き2aを設けておき、ステータコア1のスロット6に図示しないコイルを挿入した後、複数の金属片2の整合する切欠き2aに沿って板3を挿入し、この板3を実線矢印で示すように回転させてステータコア1の軸心に対して傾斜させることにより、複数の金属片2が徐々にずれるように捻るとしている。
【0004】
また、別のスキュー付ステータの製造装置として、図14に示すように、ステータコア1の内周にセンタポスト8を進退可能に挿入し、ステータコア1のスロット開口部に挿入されるヘリカル状の捻りガイド部8aをそのセンタポスト8の外周に形成した製造装置(例えば、特許文献2参照。)も提案されている。このスキュー付ステータの製造装置では、ステータコア1の磁性金属片に捻りを与えずに、スロットがステータコアの軸方向に平行である状態でコイル7を挿入し、その後ステータコア1の一方の端面からステータコア1の内部にスキューセンタポスト8を実線矢印で示すように挿入するとしている。すると、スキューセンタポスト8に形成されたヘリカル状のガイド部8aが、ステータコア1の内周のスロット開口部に挿入され、ステータコア1を構成する各磁性金属片は、ヘリカル状のガイド部8aによって捻られてスキューされるとしている。ここで、図14における符号9は、コイル7が挿入されたステータコア1を支持する支持具9を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−225461号公報(段落番号「0008」、「0009」)
【特許文献2】特開平11−299187号公報(段落番号「0008」、「0009」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図12に示すように、切欠き2aに挿入した板3を回転させることによりステータコア1を捻る上記特許文献1における製造装置では、複数の金属片2の外周に形成された切欠き2aは、図13の破線矢印で示すように、ステータコア1を構成する金属片2の外周に沿って円弧状に移動する。一方、その切欠き2aに挿入された板3をステータコア1の軸心に対して傾斜させると、ステータコア1の端部における切欠き2aに挿入された板3は、図13の実線矢印で示すように直線的に移動する。このため、ステータコア1の捻りの程度を大きくすると、当初挿入された板3がその切欠き2aから外れてしまうことになり、捻りの程度を大きくするには限界があると言う未だ解決すべき課題が残存していた。
【0007】
また、図14に示すスキューセンタポスト8を押し込んでステータコア1に捻りを与える上記特許文献2における製造装置では、実際にスキューを行うヘリカル状の捻りガイド部8aはそのセンタポスト8の外周に直接形成されているので、捻りの程度を変更させるためには、所望の捻りを付与するようなヘリカル状の捻りガイド部8aが外周に形成された別のセンタポスト8を準備する必要があり、その捻りの程度を変更することは困難であった。
【0008】
また、ステータコア1に捻りを与えた後には、そのスキューセンタポスト8をステータコア1から破線矢印で示すように引き抜くことが必要となる。けれども、実際にスキューを行うヘリカル状の捻りガイド部8aはそのセンタポスト8の外周に直接形成されているので、スキューされたステータコア1又はそのスキューセンタポスト8をその捻りの程度に合わせて回転させなければ、そのコア1からセンタポスト8を真っ直ぐに引き抜くことができないという不具合がある。このため、そのステータコア1又はスキューセンタポスト8をその捻りの程度に合わせて回転させるための構造が新たに必要となって、その構造が複雑化するという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0009】
更に、ステータコア1に捻りを与えた後には、その状態を維持するために溶接等により複数の磁性金属片を相互に接合する必要がある。けれども、所定枚数の磁性金属片を積層して形成されたステータコアであっても、その磁性金属片と磁性金属片の間に隙間が生じると、その積層方向における厚さがばらつくことになる。このため、所望の捻りが与えられられたとしても、積層方向における厚さがばらついた状態で複数の磁性金属片を相互に接合すると、均一な品質のスキュー付ステータを得ることが困難になる不具合がある。そして、ステータコア1の接合時にその厚さのばらるきを押さえる手段に関して引用文献1及び2に記載はない。
【0010】
本発明の目的は、捻りの程度が自由に調整でき、かつ接合時におけるステータコアの積層方向の厚さを均一にし得るスキュー付ステータの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、互いに連通する切欠きを有する複数の磁性金属片を積層して形成されたステータコアの軸方向に平行なスロットにコイルを挿入した後、各磁性金属片が周方向に徐々にずれるように捻りを与えるスキュー付ステータの製造装置である。
【0012】
その特徴ある構成は、ステータコアの一方の端面が載置されるベースと、ベースに取外し可能であってかつ傾動可能に立設されステータコアの軸方向に連通する切欠き又はスロットに挿通されるピンと、ステータコアを周囲から包囲するようにベースに立設された複数の支柱と、複数の支柱の端部に設けられステータコアの他方の端面に当接してステータコアを押圧可能に構成された押圧部材と、ステータコアの他方の端面側に位置しピンの先端が係止された操作部材と、操作部材に設けられステータコアの中心軸を回転中心として操作部材を回転させる操作ハンドルとを備えたところにある。
【0013】
このスキュー付ステータの製造装置は、ステータコアの外周であってかつ軸方向に連通する切欠きにピンが挿通されるようにベースに立設された場合、ステータコアの外周に嵌入され切欠きに挿通されたピンの切欠きからの離脱を防止する複数の環状板を更に備えることが好ましく、その環状板が分割可能に構成されたことが更に好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスキュー付ステータの製造装置は、ステータコアの外周に形成された切欠き又は内周側におけるスロットに挿通されるピンを備えるので、操作ハンドルを回転させると、その回転量に応じてピンはベースに対して傾動し、切欠き又はスロットにピンが挿通された磁性金属片はピンに押されて回動する。これによりステータコアに捻りを付与することができる。このため、その捻りの程度を操作ハンドルの回転量により調整することが可能になり、その捻りの程度を自由に調整することができる。
【0015】
ステータコアの外周であってかつ軸方向に連通する切欠きにピンが挿通される場合、ステータコアが捩られた後には各金属片の切欠きは、緩やかな螺旋を描くようになる。ここで、ステータコアの外周に複数の環状板を嵌入すれば、そのピンはその複数の環状板によりその切欠きから離脱することは禁止される。このため、ステータコアに与える捻りの程度を従来よりも増加させることが可能になる。
【0016】
一方、本発明のスキュー付ステータの製造装置は、ステータコアの他方の端面に当接してステータコアを押圧可能に構成された押圧部材を、ベースに立設された複数の支柱の端部に設けたので、ステータコアに捻りを与えた後にその押圧部材によりステータコアを積層方向から押圧することにより、ステータコアを構成する複数の磁性金属片同士を互いに密着させて、それらの間に隙間を生じさせない。すると、ステータコアの積層方向における厚さは、磁性金属片の厚さにその枚数を乗じた値に一致し、その積層方向における厚さがばらつくようなことはない。そして、この状態で溶接等により複数の磁性金属片相互を接合することにより、ステータコアの積層方向の厚さが均一なスキュー付ステータを得ることができる。
【0017】
そして、本発明のスキュー付ステータの製造装置は、実際に捻りを与えるピンをベースに取外し可能に立設させるので、ベースに載置して捻りを与えたステータコアを押圧部材によりその積層方向から押圧した状態で、そのピンをベースから取外すことができる。よって、捻りを与えて接合されたステータコアの取外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要はなく、その取外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要がある従来の装置に比較して構造を単純化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のスキュー付ステータの製造装置の分解斜視図である。
【図2】その製造装置に設けられる複数の環状板を示す斜視図である。
【図3】その製造装置のピンによりコアに捻りが与えられるステータの斜視図である。
【図4】図6のA−A線断面図である。
【図5】その操作部材とピンと支柱との関係を示す図4に対応する断面図である。
【図6】その製造装置のピンを含む縦断面図である。
【図7】その製造装置にステータが装着される状態を示す正面図である。
【図8】そのステータに複数の環状板が嵌入され更に操作部材が装着される状態を示す図7に対応する図である。
【図9】その操作部材によりステータコアが捻られて押圧部材によりコアが押圧される状態を示す図7に対応する図である。
【図10】その捻られて押圧されたコアを接合する状態を示す図7に対応する図である。
【図11】本発明の別の分割可能な複数の環状板を示す斜視図である。
【図12】従来の製造装置によりコアにスキューを与える状態を示す概念図である。
【図13】図12のB方向から観た図である。
【図14】従来の別の製造装置によりスキューを与える状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0020】
本発明のスキュー付ステータの製造装置は、図3に示すように、複数の磁性金属片16を積層して形成されたステータコア11の軸方向に平行な別々なスロット14に環状のコイル20を掛け回すように挿入した後、各磁性金属片16が周方向に徐々にずれるように捻りを与える装置である。
【0021】
ここで、ステータコア11は、円環状の環状部12と、この環状部12の内周面からその環状部12の中心に向けて突出している複数のティース13とを備えた磁性材料からなり、複数のティース13の間にはステータコイル20を収容する複数のスロット14が形成される。即ち、ステータコア11は、環状部12及びティース13を備えた一定の厚さを有する磁性金属片16を、所定の枚数積層して所定の厚さとなるように構成された積層型のものである。そして、この実施の形態では、ステータコア11を構成する複数の磁性金属片16の外周に、互いに整合する切欠き16a,16bがそれぞれ形成される場合を示す。
【0022】
具体的に、この実施の形態では、図3〜図5に示すように、磁性金属片16の外周に8箇所の切欠き16aが中心から放射状に等角度で形成され、その内の一つの切欠き16aとそれに隣接する切欠き16aの間に、位置決め用の基準切欠き16bが更に形成される場合を示す。そして、スロット14がコア11の軸方向に平行になるように磁性金属片16が積層された状態で、それらの切欠き16a,16bはステータコア11の外周にあってステータコア11の軸方向に平行に連通するように形成される。
【0023】
一方、ステータコイル20は、ステータコア11とは別に予め環状に製造される。図示しないが、この環状のステータコイル20の製造は、巻芯を用いる一般的な巻線機を用いることができ、その巻芯に線材を複数回巻回させることにより所望の大きさのステータコイル20を得ることができる。この実施の形態における線材は、表面に絶縁皮膜が形成された断面円形の丸線である場合を示す(図4及び図5)。けれども、断面が方形を成すいわゆる角線を用いたコイル20であっても良い。このステータコイル20をステータコア11に挿入するコイル挿入にあっては、インサータ装置が用いられる。このインサータ装置は一般的なものが使用可能であり、コイル20がスロット14に収容されることにより、環状のコイル20は、ステータコア11の軸方向に平行な別々なスロット14に掛け回すように挿入される。そして、この実施の形態では、図3に、コイル20が3つのティース13を跨いで別々のスロット14に、それら3つのティース13を掛け回すように挿入されたものを例示する。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明のスキュー付ステータの製造装置50は、ステータコア11(図3)の一方の端面が載置されるベース51を備える。このベース51は四隅に取付孔52a(図2)が形成された基板52と、その基板52に固定されてステータコア11の一方の端面である下面が載置される複数個の載置ブロック53とを備える。載置ブロック53は、切欠き16aの数と同数又はそれ以上準備される。図では、切欠き16aの数と同じ数だけ準備された複数の載置ブロック53が、ステータコア11の切欠き16aに対応する位置であって、かつステータコア11の環状部12を載置可能にリング状を成して基板52に配置される(図4)。
【0025】
この複数の載置ブロック53には、ステータコア11の切欠き16a近傍の下面を実際に載置する台座53bが上方に突出して形成され、その台座53bに下面が載置されたステータコア11の切欠き16aに対応する載置ブロック53には、その台座53bに隣接して遊挿孔53aが形成される。図1及び図6に示すように、この遊挿孔53aにはステータコア11の切欠き16aに挿通可能なピン54が遊挿可能に構成される。ピン54は僅かに弾性変形が可能な鋼材から成るものが用いられ、遊挿孔53aに遊びを持って挿入されることから、このピン54は、そのベース51に取外し可能であって、傾動可能にそのベース51に立設される。そして、遊挿孔53aは切欠き16aに対応する位置に設けられるので、その遊挿孔53aに遊挿されるピン54は、ステータコア11の外周にあってステータコア11の軸方向に連通する切欠き16aに挿通されるものとなる(図4〜図6)。このピン54は、複数の載置ブロック53に下面が載置されたステータコア11の切欠き16aに挿通して遊挿孔53aに下部が挿入された状態で、その上端がそのステータコア11の上面より上方に突出するような長さのものが用いられる(図6)。
【0026】
図1及び図2に戻って、本発明のスキュー付ステータの製造装置50は、ステータコア11を周囲から包囲するように複数の支柱55がベース51に立設される。この実施の形態では、ピン54の数に等しい8本の支柱55が用いられる場合を示す。図4〜図6に示すように、その8本の支柱55は、断面が円形のものが用いられ、ステータコア11を周囲から僅かな隙間を持って包囲するように、ベース51である複数の載置ブロック53の台座53bにそれぞれ立設される。この支柱55は、複数の載置ブロック53に下面が載置されたステータコア11の上面よりその上端が上方に突出するような長さのものが用いられる(図6)。なお、この支柱55は断面が円形のものに限るものではなく、その断面は方形状であっても良く、3角形や5角形等の多角形を成すものであっても良い。
【0027】
図2及び図7に示すように、基板52には、複数の載置ブロック53にステータコア11の下面が載置された状態で、ステータコア11の基準切欠き16bに対応する位置に、基準板58が取外し可能に立設される。図2及び図7では、基板52に取付具58aがネジ止めされ、この取付具58aに基準板58が固定される。このため、基準板58は、この取付具58aを介して基板52に取外し可能に立設される。この基準板58は、複数の載置ブロック53に載置されたステータコア11の軸方向に平行になるように、基板52から鉛直方向に延びて設けられ、ステータコア11の軸方向に平行に連通する基準切欠き16bに進入して、複数の載置ブロック53に載置されたステータコア11のスロット14がコア11の軸方向に平行になるように形成される。
【0028】
図2及び図4に示すように、この装置50は、ステータコア11の外周に嵌入されてコア11の切欠き16aに挿通されたピン54の切欠き16aからの離脱を防止する複数の環状板61を備える。この実施の形態では同形同大の5枚の環状板61が用いられ、各環状板61はステータコア11の外径より僅かに大きな内径を有し、複数の支柱55との干渉を避けるための複数の凹部61aがその内周から外周方向に向けて形成される。そして、これらの環状板61は連結部材62を介して軸方向に所定の間隔を空けて連結され、図4に示すように、ステータコア11の外周に嵌入された状態で、その内周がコア11の外周に接近して、切欠き16aに挿通されたピン54がコア11の外周側に移動してその切欠き16aから離脱するような事態を防止するように形成される。そして、この連結部材62は環状板61から取外し可能に構成され、連結部材62が取外されて互いの連結が解除された複数の環状板61は、図10に示すように、互いに密着して積層可能に構成される。
【0029】
図2及び図4〜図6に示すように、ベース51における基板52には、ステータコア11の内周に僅かな隙間を持って挿入されるセンタポスト63が離脱可能に設けられる。この実施の形態におけるセンタポスト63は、基板に載置される下板63aとベース51に載置されたステータコア11の上面より上方に位置する上板63bと、その下板63aと上板63bを連結する複数の連結棒63cとを備える。上板63bと下板63aはステータコア11の内径より僅かに小さな外径を有する円形の板材であって、複数の連結棒63cは上下板63a,63bの周囲にその外径に内接するようにその上下板63a,63bの中心から放射状に配置される(図4及び図5)。図6に示すように、連結棒63cは、小ネジ63fによりその両端が上板63bと下板63aに固定される。また、下板63aにはその中央に下中央穴63eが形成され、その下中央穴63eに対向する基板52には、その下中央穴63eに挿入可能な下突起52bが形成される。そして、この下中央穴63eに下突起52bが挿入するようにセンタポスト63を基板52に載せることにより、そのセンタポスト63をベース51に載置されたステータコア11の中央に位置するように構成される。
【0030】
図1の実線及び図5の一点鎖線で示すように、この装置50は、ステータコア11の他方の端面側に位置しピン54の先端が係止される操作部材67を備える。この操作部材67は、複数の支柱55を包囲する円環部67aと、この円環部67aの内周面からその円環部67aの中心に向けて突出する突出部67bとを備える。突出部67bには、ステータコア11の切欠き16aに挿通されてコア11の上面から上方に突出するピン54が遊挿可能な貫通孔67cが形成される。
【0031】
図1及び図6に示すように、この操作部材67における円環部67aには、その操作部材67に平行な操作ハンドル69がボス68を介して固定される。図に示す操作ハンドル69は長い棒状部材71と短い棒状部材72が中央で交差する略十字状を成し、その交差する中央には突起69a(図6)が設けられる。一方、センタポスト63の上面中央にはその突起69a(図6)が挿通する上中央穴63dが形成され、長い棒状部材71の両端には、作業員がその手に把持する把持部69bが形成される。そして、上中央穴63dに突起69aが挿通された操作ハンドル69の長い棒状部材71における把持部69bを作業員がその手に把持し、その突起69aを回転中心として回転させることによりステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材67を回転可能に構成される。
【0032】
ベース51に立設された複数の支柱55の上端には雌ねじ穴55aがそれぞれ形成され、複数の支柱55の上端部にはステータコア11の他方の端面に当接してこのステータコア11を押圧可能に構成された押圧部材56が設けられる。図1及び図10の拡大断面図に示すように、この実施の形態における押圧部材56は、直方体状の外形を成し、その中心軸上に、支柱55の上端部が挿入可能な進入穴56aと、雄ねじ57が挿入可能な挿入孔56bが同軸に連続して形成される。この押圧部材56の進入穴56aに支柱55の上端部が挿入した状態で、この押圧部材56は、その下面の一部がステータコア11の他方の端面に当接するように構成される。そして、押圧部材56の挿入孔56bに挿入された雄ねじ57を雌ねじ穴55aに螺合することにより、下面がステータコア11の他方の端面に当接した押圧部材56をベース51側に押し付け、それによりステータコア11を押圧するように構成される。なお、この押圧部材56は直方体状のものに限るものではない。挿入孔56bに挿入された雄ねじ57を雌ねじ穴55aに螺合することによりステータコア11を押圧可能である限り、押圧部材56の形状は、直方体以外の形状、例えば、立方体であっても良く、円柱状を成すようなものであっても良い。
【0033】
次に、上述した製造装置50を用いて、コイル20が入されたステータコア11に捻りを与える(スキューさせる)手順を説明する。
【0034】
始めに、この装置50は、図7に示すように、取付孔52a(図2)に挿通されたボルト81によりそのベース51が作業台82に固定されて用いられる。コイル20が挿入されたステータコア11は、複数の支柱55に包囲される空間の上方から降ろし、そのステータコア11の下方の端面をベース51における載置ブロック53上、具体的には載置ブロック53の台座53bに載置する。この時、基板52から鉛直方向に延びて設けられた基準板58を、ステータコア11の外周に形成された基準切欠き16bに進入させる。このようにして、ステータコア11をベース51に載置し、その基準板58によりステータコア11のスロット14をコア11の軸方向に平行にして、コア11を捩る際の基準とする。
【0035】
その後、センタポスト63をステータコア11の中央に挿入し、その下端を基板52の中央に設置する。そして、図6に示すように、センタポスト63の下中央穴63eに基板52の下突起52bが挿入するようにセンタポスト63を基板52に載せ、そのセンタポスト63をベース51に載置されたステータコア11の中央に位置させる。このようにして、このセンタポスト63によりベース51に載置されたステータコア11の中心軸を鉛直方向に向けて真っ直ぐにさせ、スロット14をコア11の軸方向に平行な鉛直方向に向ける。その後、取付具58aを基板52から取外すことにより、コア11を捩る際の基準とした基準板58をその取付具58aとともに基板52から取外す。
【0036】
その後、図4及び図8に示すように、連結部材62により連結された5枚の環状板61をステータコア11に嵌入する。そして、図6及び図8に示すように、突起69aが上中央穴63dに挿入するように操作ハンドル69をセンタポスト63に載置する。そして、その操作ハンドル69にボス68を介して固定された操作部材67における貫通孔67cをステータコア11の外周における切欠き16aに対向させる。その後、図6に示すように、ピン54をその遊挿孔53aに挿入し、ステータコア11の外周にあってコア11の軸方向に平行に連続する切欠き16aに更に挿入する。このとき、その切欠き16aは、基準板58によりコア11の軸方向に平行に連続するように成されているので、比較的容易にピン54をその切欠き16aに挿通させることができる。そして、ピン54の下端を載置ブロック53の遊挿孔53aに挿入する。このようにして、複数の環状板61により、ピン54が切欠き16aから離脱することを防止しつつ、そのピン54をベース51に立設する。
【0037】
この状態で、操作ハンドル69の両端における把持部69bを作業員がその手に把持し、図9の実線矢印で示すように、ステータコア11の中心軸を回転中心としてその操作ハンドル69を回転させる。すると、ピン54はベース51に対して傾動し、図3(b)に示すように、切欠き16aにピン54が挿通された磁性金属片16は、センタポスト63の回りでピン54に押されて回動し、磁性金属片16に捻り作用が付与され、スキュー付ステータ10を得ることができる。よって、ステータコア11には、操作部材67の回転角度に相応した捻りが付与され、この装置50では、操作部材67の回転角度を調整することによりステータコア11の捻りの程度を容易に調整することができる。
【0038】
ステータコア11が捩られると、各金属片16の切欠き16aは緩やかな螺旋を描いて連なるようになる。けれども、この実施の形態では、その切欠き16aに挿通されたピン54の切欠き16aからの離脱を防止する複数の環状板61をステータコア11に嵌入しているので、そのピン54は複数の環状板61により切欠き16aから離脱することが禁止される。このため、そのピン54は螺旋を描くように連なる切欠き16aに沿って緩やかに弾性変形し、その切欠き16aから離脱することはない。よって、このピン54は、各磁性金属片16を確実に回動させることになり、その切欠き16aからの離脱する板3を用いてステータコア11に捻りを与える図12に示す従来の装置に比較して、本装置50は、その捻りの程度を増加させることが可能になり、ステータコア11に比較的大きな捻りを与えることができる。
【0039】
ステータコア11を所望の角度で捩った後には、その捩られたステータコア11を押圧部材56により押圧する。具体的には、図10の拡大断面図に示すように、押圧部材56の進入穴56aに支柱55の上端部を挿入し、その押圧部材56の下面の一部をステータコア11の他方の端面に当接させる。そして、押圧部材56の挿入孔56bに挿入された雄ねじ57を雌ねじ穴55aに螺合し、下面がステータコア11の他方の端面に当接した押圧部材56をベース51側に押し付ける。このようにステータコア11を押圧し、ステータコア11を構成する磁性金属片16と磁性金属片16を密着させて、その間に隙間を生じさせない。そして、ステータコア11の積層方向における厚さをその磁性金属片16の厚さにその枚数を乗じた値に一致させる。
【0040】
このようにステータコア1に捻りを与え、磁性金属片16と磁性金属片16とを互いに密着させた後には、複数の磁性金属片16を相互に接合する。図10に示すように、ステータコア11の接合時には、操作部材67を操作ハンドル69と共に取外し、更にステータコア11に捻りを与えたピン54も取外す。このピン54は、ベース51に取外し可能に立設させているので、ステータコア11に捻りを与えた後にあっても、取外すことができる。そして、連結部材62による連結を解除して、複数の環状板61を互いに重ね合わせ、ステータコア11の外周を表出させる。この実施の形態では、複数の磁性金属片16を溶接する場合を示し、複数の環状板61を重ね合わせることにより表出したステータコア11の外周の一部を積層方向に溶接する。ここで、図10における符号83は、そのステータコア11を溶接するために用いる溶接棒83を示す。このように、ピン54の切欠き16aからの離脱を防止する複数の環状板61を用いても、それらの環状板61を重ね合わせることにより、ステータコア11の外周を表出させることができるので、この複数の環状板61がステータコア11の接合における障害になることはない。そして、載置ブロック53には、ステータコア11の下方の端面が載置される台座53bを形成しているので、その台座53bに実際に載置された部分以外のステータコア11の下方の端面は空中に浮く状態になる。このため、例えその載置ブロック53の近傍のステータコア11外周を溶接したとしても、溶接棒83がその載置ブロック53に接触するようなことを回避できるので、その溶接棒83によりコア11を下方の端面まで確実に溶接することができる。
【0041】
このようにステータコア1に捻りを与え、磁性金属片16と磁性金属片16を密着させて接合することによりスキュー付ステータ10(図3(b))が得られ、このように得られたスキュー付ステータ10を、その後装置50から取外す。スキュー付ステータ10の取外しにあっては、先ず雄ねじ57を雌ねじ穴55aから取外し、その後、押圧部材56を支柱55から取外して、その押圧部材56によるステータコア11の押圧を解除する。そして、複数の支柱55により包囲されたスキュー付ステータ10を上方に引き上げるようにして装置50から抜き出す。よって、捻りを与えたステータコア11の取外しの際にステータコア11又はセンタポスト63を回転させる必要はなく、その取外しの際にステータコア1又はセンタポスト8を回転させる必要がある図14に示す従来の装置に比較してその構造を単純化させることができる。
【0042】
本発明の装置50により製造されたスキュー付ステータ10(図3(b))では、ステータコア11をスキューさせたので、磁性金属片16が徐々にずれて斜めに傾斜したティース13を有し、隣接するティース13同士において、一方の上端が他方の下端に周方向に沿って極めて近接し、それによって図示しない回転子の回転を滑らかにすることができる。
【0043】
そして、そのコア11は、所定枚数の磁性金属片16を積層して形成されているけれども、その磁性金属片16と磁性金属片16の間に隙間が生じない状態で互いに接合されるので、ステータコア11の積層方向における厚さのばらつきは生じない。即ち、押圧部材56の挿入孔56bに挿入された雄ねじ57を雌ねじ穴55aに螺合することにより、下面がステータコア11の他方の端面に当接した押圧部材56をベース51側に押し付け、この状態でステータコア11の外周を軸方向に溶接する。このため、雄ねじ57を雌ねじ穴55aに螺合する力を管理することにより、積層型のステータコア11に適正圧力を加えることができ、この状態でステータコア11の外周を軸方向に溶接するので、ステータコア11の積層方向における厚さは、その磁性金属片16の厚さにその枚数を乗じた値となり、ステータコア11の積層方向における厚さのばらつきは生じない。よって、同一の厚さの磁性金属片16が所定の枚数積層されて形成されたステータコア11を有するスキュー付ステータ10が、本発明の装置50により製造されると、常に同一の厚さのステータコア11となる。即ち、本発明の装置50では、捻りの程度が自由に調整でき、所定枚数の磁性金属片16が積層されて形成された全てのステータコア11の積層方向における厚さを均一にさせることが可能になる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、複数の環状板61が連結部材62を介して軸方向に所定の間隔を空けて連結される場合を説明したが、環状板61は分割可能に構成されていても良い。例えば、図11にその一例を示す。この図11に示す環状板61は、付き合わせることにより、円環状をなす一対の円弧部材61b,61cから成り、その一対の円弧部材61b,61cの一端が重ね合わされて枢支される。一対の円弧部材61b,61cの他端には、重ね合わされた状態で互いに貫通する連通孔61dがそれぞれ形成され、一端が枢支された一対の円弧部材61b,61cのそれぞれ他端における連通孔61dを互いに連通させることにより、円環状の環状板61を成して、ステータコア11の外周に嵌入された場合に、その切欠き16aに挿通されたピン54の切欠き16aからの離脱を防止するように構成される。そして、このような一対の円弧部材61b,61cから成る環状板61は、連結部材62を介して軸方向に所定の間隔を空けて連結される。
【0045】
図11に示す分割可能に構成された環状板61では、一対の円弧部材61b,61cを円環状にして、一端が枢支された一対の円弧部材61b,61cのそれぞれ他端における連通孔61dを互いに連通させ、その状態で係止ピン84をその連通孔61dに挿入することにより、一端が枢支された一対の円弧部材61b,61cの他端が互いに開放することを防止するように構成される。そして、他端が互いに開放することを防止された状態で、複数の環状板61をステータコア11の外周に嵌入することにより、その内周がコア11の外周に接近して、ステータコア11に捻りを与える際に、ピン54が切欠き16aから離脱するような事態を防止することができる。
【0046】
一方、ステータコア1に捻りを与えた後には、複数の磁性金属片16を相互に接合するけれども、このときは、一対の円弧部材61b,61cのそれぞれ他端における連通孔61dに挿通させた係止ピン84を引き抜き、破線矢印で示すように一端が枢支された一対の円弧部材61b,61cの他端が互いに開放することにより、その解放された他端の間からステータコア11を抜き出すことができる。このようにして、一対の円弧部材61b,61cからなる複数の環状板61をステータコア11から取外すことにより、ステータコア11の外周は表出し、表出したステータコア11の外周の一部を積層方向に溶接することができる。よって、この複数の環状板61がステータコア11の接合における障害になることを容易に回避することができる。
【0047】
また、上述した実施の形態では、上板63bと、下板63aと、その上板63bと下板63aを連結する複数の連結棒63cとを備え、複数の連結棒63cの間に空間を形成した比較的軽量なセンタポスト63を説明したが、作業上支障を生じないような重量となるようであれば、センタポストは、円柱状を成す中実のものであっても良い。
【0048】
また、上述した実施の形態では、センタポスト63の上中央穴63dに突起69aが挿通された操作ハンドル69を回転させる製造装置50を説明したけれども、ステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材67を回転させ得る限り、そのセンタポスト63は設けなくても良い。
【0049】
更に、上述した実施の形態では、ステータコア11の外周に互いに連通する切欠き16aを形成し、その切欠き16aに挿通されるピン54を備えた製造装置50を用いて説明したけれども、図示しないが、ピンは、ステータコア11の内周にあってステータコア11の軸方向に連通するスロット14に挿通しても良い。
【符号の説明】
【0050】
11 ステータコア
14 スロット
16 磁性金属片
16a 切欠き
20 コイル
50 スキュー付ステータの製造装置
51 ベース
54 ピン
55 支柱
56 押圧部材
61 環状板
67 操作部材
69 操作ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する切欠き(16a)を有する複数の磁性金属片(16)を積層して形成されたステータコア(11)の軸方向に平行なスロット(14)にコイル(20)を挿入した後、前記各磁性金属片(16)が周方向に徐々にずれるように捻りを与えるスキュー付ステータの製造装置において、
前記ステータコア(11)の一方の端面が載置されるベース(51)と、
前記ベース(51)に取外し可能であってかつ傾動可能に立設され前記ステータコア(11)の軸方向に連通する前記切欠き(16a)又は前記スロット(14)に挿通されるピン(54)と、
前記ステータコア(11)を周囲から包囲するように前記ベース(51)に立設された複数の支柱(55)と、
前記複数の支柱(55)の端部に設けられ前記ステータコア(11)の他方の端面に当接して前記ステータコア(11)を押圧可能に構成された押圧部材(56)と、
前記ステータコア(11)の他方の端面側に位置し前記ピン(54)の先端が係止された操作部材(67)と、
前記操作部材(67)に設けられ前記ステータコア(11)の中心軸を回転中心として前記操作部材(67)を回転させる操作ハンドル(69)と
を備えたスキュー付ステータの製造装置。
【請求項2】
ステータコア(11)の外周であってかつ軸方向に連通する切欠き(16a)にピン(54)が挿通されるようにベース(51)に立設され、
前記ステータコア(11)の外周に嵌入され前記切欠き(16a)に挿通されたピン(54)の前記切欠き(16a)からの離脱を防止する複数の環状板(61)を更に備えた
請求項1記載のスキュー付ステータの製造装置。
【請求項3】
環状板(61)が分割可能に構成された請求項2記載のスキュー付ステータの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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