説明

スキン及びスティフナーを含む構造体の製造方法

【課題】スキン(2)と、スキン(2)上に固定されたスティフナーと呼ばれるV字型断面をもつ成型部品(4)とを含む構造体、より詳細には複合材料でできた航空機胴体の製造方法を提供する。
【解決手段】本方法は、ダイをマンドレル上に位置づけして、ダイの間に溝を形成するステップを含む。これら溝は少なくとも2つの網状組織(6a、6b、6c)に沿って配置され、1つの同じ網状組織(6a、6b、6c)の各々の溝は、ノードにおいて、別の網状組織の少なくとも1つの溝と交わる。この方法は、同様に、少なくとも2つのスティフナー(4)が前記ノード(8)において交わるように、溝内にスティフナーの予備成形物を位置づけするステップと、スティフナー(4)を組立てるように樹脂を注入するステップとを含む。このようにして、モノブロックで構成された構造体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキン及びスティフナーを含む構造体、詳細には複合材料製航空機胴体の製造方法及びそれに付随する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、複合材料で航空機胴体を製造する場合、この胴体は、T字形、L字形、Z状又はオメガ状(平滑型と呼ばれる)の断面をもつ長手方向スティフナーを有するパネルで構成されている。
【0003】
構造体を強化するため、胴体のフレームは、スティフナーに対して垂直に取付けられ、一般に山形材と呼ばれる部品(英語では「clips」)を介してパネルに固定される。実際、ほとんどの場合、フレームはスキンと直接接触していない。
【0004】
スタビライザーと呼ばれる部品(英語では「cleats」)が、さらに利用されて、フレームをスティフナーに連結し、詳細には、フレームが機械的応力を受けた場合に反りによりたわむのを防ぐ。
【0005】
スキン及びスティフナーですでに構成されたパネル上へのフレーム、山形材及びスタビライザーの組立ては、その長さ及びそれが必要とする調整のためにコストが高くつく作業である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
互いに60°を成して配向されたスティフナーの網状組織で強化されたスキンで構成され、これらスティフナーがブレードの形をしておりパネルに一体化されている飛行機の構造体が、すでに「Isogrid」という構造体名で公知である。しかしながら、この構造体は、通常、等方性材料についてのみ使用され、複合材料については使用されない。本発明は、上述の欠点のうち少なくとも1つを改善することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、スキンと、スキン上に固定されたスティフナーを有する構造体の製造方法において、
成形用要素をマンドレル上に位置づけして、前記成形用要素の間に溝を形成するステップであって、前記溝が少なくとも2つの網状組織に沿って配置され、1つの網状組織の溝が、ノードと呼ばれる点において、別の網状組織の少なくとも1つの溝と交わる、ステップと;
少なくとも2つのスティフナーが前記ノードにおいて交わるように、溝内にスティフナーの予備成形物を位置づけするステップと;
前記2つのスティフナーを組立てるように樹脂を注入するステップと;
を含む、製造方法に関する。
【0008】
有利にもスティフナーに所望される配置を溝が再現することから、例えば円周方向で且つ互いに平行なこのような網状組織の形でのスティフナーの配置は、それが同等の強度の構造体を得ることができるようにすることを理由として、フレーム、山形材及びスタビライザーの使用からの解放を可能にする。
【0009】
したがって、定義された通りの方法によれば、モノブロックで作られた強度の高い構造体を得ることができ、このため、製造の際の時間の節約と、従来の構造体に比べた付随コストの最少化とが可能となる。
【0010】
本発明の目的である方法によれば、もはや、山形材及びスタビライザーの固定と調整というコストの高い厄介な作業を実施する必要がなくなる。
【0011】
実際、この方法に際して必要とされる唯一の作業は、スティフナーの位置づけとスティフナーを互いに結合させる樹脂の注入作業とであり、これらは、マンドレル上の溝の存在により大幅に容易化されている。
【0012】
本発明の考えられる1つの特徴によれば、少なくとも1つの網状組織の溝の長手方向延在部分によって画定される表面はマンドレルの軸線に対して垂直ではない。
【0013】
換言すると、網状組織は、この特定の利用分野のためには、マンドレルの円周、換言すると(フレームの従来の構造体において使用される)胴体の円周との関係において斜めに配置されている。一部のスティフナーは円周方向(つまり胴体の軸線に対し垂直)であってもよく、他は胴体の軸線に平行であってもよい。
【0014】
考えられる1つの構成には、2つのスティフナー網状組織が含まれており、スティフナーにより画定されている表面のいずれも、胴体の軸線に対して垂直ではない。例えば、異なる網状組織に属する2つのスティフナーで形成される角度は45°に等しい。しかしながら、他の角度を企図することもできる。
【0015】
考えられるもう1つの構成には、2つのスティフナー網状組織が含まれており、第1の網状組織のスティフナーにより画定されている表面は胴体の軸線に対して垂直(通常のフレーム網状組織のものと等価の形で円周方向)であり、第2の網状組織のスティフナーによって画定される表面はそうではない。異なる2つの網状組織の2つのスティフナー間の角度は、例えば30°に等しいが、異なるものであってもよい。より多くの網状組織を企図することも同様に可能である。
【0016】
詳細には、より強度の高い構造体を得るため、スティフナーは少なくとも3つの網状組織に沿って配置され得、各ノードは、少なくとも3つの異なる網状組織の少なくとも3つのスティフナーの間の交差点である。
【0017】
したがって、考えられる1つの構成は、3つの網状組織を含み、そのうち1つの網状組織のスティフナーにより画定される表面は、胴体の軸線に対して垂直(通常のフレーム網状組織のものと等価の形、すなわち円周方向)であり、他の2つはこの軸線に対して斜めに配置される。
【0018】
好ましくは、スティフナー網状組織の配置は測地線的である。
【0019】
測地線構造は、スティフナー網状組織に対して、実現しやすく且つ機械的応力の分布の観点から見て最適である幾何学的配置を提供する。
【0020】
樹脂の注入前に、スキン又はスティフナーのような構成要素は、好ましくは織物予備成形物の形をしている。
【0021】
これは、乾燥繊維で構成され且つ織物若しくは単方向多軸繊維で製造され又は直接例えば製織によって製造される構造体である。
【0022】
これら織物予備成形物に対して凝集力を与えるため、乾燥繊維は好ましくは、少量(例えば2〜5質量%)のエポキシ粉末によって、縫製によって、又は熱可塑性シートの載置によって、互いに結合される。
【0023】
詳細には、スティフナーは被覆材と強化材とで構成されている。
【0024】
こうして、この方法は、溝内にスティフナーの被覆材の予備成形物を位置づけする第1のステップと、前記被覆材上にスティフナーの強化材を位置づけする第2のステップとをさらに含むことができる。
【0025】
これら2つのステップは好ましくは、互いに続けて、且つスティフナーの位置づけステップの間、すなわち樹脂の注入ステップの前に行なわれる。
【0026】
強化材は主として、引張−圧縮応力、さらには曲げ応力を支持するのに役立つ。被覆材の役割は、特に、スキンとの結合を確保し且つスティフナーの強化材に保護をもたらすことにある。
【0027】
本発明の考えられる一つの特徴によれば、製造方法はさらに、スキンの予備成形物をドレーピングする(draping)ステップを含む。
【0028】
このステップは、好ましくは、樹脂の注入前の最後のステップである。
【0029】
本発明の考えられる一つの特徴によれば、スティフナーはV字形の断面形状を呈する。
【0030】
V字形の断面形状は、スティフナーの製造の際に介入する樹脂の注入ステップに際して使用される成形用要素を容易に取り去ることを可能とする。しかしながら、従来のT字形又はオメガ状の断面形状などの他の断面を企図することもできる。
【0031】
構造体を強固にするために、スティフナーの強化材は単方向性のストランド又はコードで構成され、スティフナーの被覆材は織物又は多軸繊維で構成される。
【0032】
強化材は主として、引張−圧縮応力、さらには曲げ応力を支持するのに役立つ。これら強化材は、例えば炭素繊維などの複合繊維製の単方向性(UD)の乾燥ストランド又はコードと、強化織物又は多軸繊維で構成され得る機能的被覆材とで構成されている。好ましくは、フィルターは0°すなわちスティフナーの長手方向軸線内に配向される。
【0033】
これら単方向強化材は好ましくは連続的である。
【0034】
一方、被覆材は、好ましくは織物又は多軸繊維で構成され、こうしてスキンとの結合を確保し、且つスティフナーの単方向繊維に保護をもたらすことができる。
【0035】
例えば、各々の被覆材は、0°、90°、45°及び−45°に配置された層を有する多層複合繊維のプライで構成されている。
【0036】
ここで問題となっているのは、介入する応力に対する耐性をもつ構成である。
【0037】
代替的には、各被覆材は、0°、90°、30°及び−30°に配置された層を有する多層複合繊維プライで構成されてもよい。
【0038】
モノブロックで作られた構造体を得るために、スキンの予備成形物はスティフナーの予備成形物上にドレーピングされる。
【0039】
考えられる1つの特徴によれば、本発明に係る方法は、ノードにおいて中心に穴があき、且つ、各ノードにおいて交わるスティフナー間の機械的結合を保証するほぼ円形の織物片(キャップと呼ばれる)を位置づけするステップを同様に含んでいる。
【0040】
キャップは特に、スティフナーの被覆材を互いに連結し、これによりせん断応力の一部を分布させることを目的とする。これらキャップはそのために、各ノードにおいてスティフナーの全ての端部を覆っている。
【0041】
穴のあいた円形形状により、ドレーピングが容易になり、応力のより良い分布を得ることができる。
【0042】
この目的で、キャップは例えば、複合材料の強化織物又は多軸繊維で構成される。
【0043】
スティフナーとスキンとの間に強度の高い結合を確保するため、樹脂は、成形用要素の間、及びスキンの予備成形物とダイとの間で、スティフナーの予備成形物内に注入される。この樹脂の同時含浸によっても同様に残留応力の吸収が可能となる。
【0044】
樹脂による予備成形物の良質の含浸を得るように、スティフナーの注入とスキンの注入とを別個に実施することが可能である。
【0045】
詳細には、スティフナーの注入は、ダイ間の溝内への線形注入であり得、実際にはスティフナーの長さ全体にわたって行なわれる。一方、スキンの注入は、スキンの下のダイの中心で局所的であるか、又はスキンの含浸の質を良くするため、ダイとスキンとの界面でダイの表面全体にわたる表面的なものであり得る。好ましくは、樹脂は、注入され、その後重合される。
【0046】
特定の一つの特徴によれば、注入は、拡散グリッドを用いてオーブン内でバッグ成形法により行なわれる。
【0047】
本発明は同様に、スキンと、スキン上に固定されたスティフナーとを有する構造体の製造装置において、
マンドレルと;
ダイであって、ダイの間に溝を形成するようにマンドレル上に固定され、前記溝が少なくとも2つの網状組織に沿って配置され、1つの網状組織の溝が、ノードと呼ばれる点において、別の網状組織の少なくとも1つの溝と交わる、ダイと;
少なくとも2つのスティフナーが前記ノードにおいて重なり合うように、溝内にスティフナーの予備成形物を位置づけするシステムと;
前記2つのスティフナーを組立てるように樹脂を注入するシステムと;
を含む、製造装置にも関する。
【0048】
本発明の考えられる一つの特徴によれば、この装置は、前記溝内でスティフナーの被覆材の予備成形物をドレーピングする第1のシステムと、スティフナーの強化材を構成するように前記予備成形物において単方向コードを巻回する第2のシステムとをさらに含む。
【0049】
好ましくは、スティフナーの被覆材の予備成形物の製造は、単純且つ経済的な解決法であるプレス加工システム又は連続予備成形システムによって行なわれる。
【0050】
類似の理由から、巻回は、自動フィラメント巻回手段を用いて又は乾燥繊維の設置によって行なわれる。詳細には、自動巻回は、特に製造中の時間の節約を可能にする。
【0051】
本発明の1つの考えられる特徴によれば、装置は同様に、スキンの予備成形物のドレーピングシステムを有する。
【0052】
装置の詳細な実施形態によれば、ダイは台形断面を有する。
【0053】
互いの間に溝を形成することから、ダイのこの断面は、スティフナーについて所望される形状に関連する。こうして、溝の断面がV字形となるように、ダイの断面は、面取りされ、詳細には台形状であり、特にマンドレル上でのその位置づけの際には平坦な表面をもつダイを利用する方がより簡単である。
【0054】
したがって、スティフナーに付与したい形状に応じて他のダイ断面を企図することもできる。
【0055】
考えられる一つの特徴によれば、マンドレル上へのダイの固定は、第1のネジが中に配置されるネジ立てされた穴及びガイドピンを有している第2のネジが中に配置される穴という、各ダイ内で専用に設けられた穴の中に挿入される少なくとも2本のネジを介して行われる。
【0056】
例えばアルミニウムで製造されたダイ内のネジ立てされた穴の中に、好ましくは鋼製且つ/又はらせんタイプの挿入体を使用すると、ネジ込みの寿命を改善させることができる。
【0057】
さらに、ガイドピンを使用することで、異なる製造ステップに際してマンドレルとダイとの間の膨張差を許容しつつ、1本のネジの回転自由度を拘束することができる。
【0058】
本発明は、最終的に、本発明に係る方法を用いて製造された航空機胴体にも関する。
【0059】
添付図面を参照して非限定的な例として提供されている以下の説明から、他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1a】第1の実施形態における本発明に係る胴体である1つの構造体の一部の概略図である。
【図1b】第2の実施形態における本発明に係る胴体である1つの構造体の一部の概略図である。
【図1c】第3の実施形態における本発明に係る胴体である1つの構造体の一部の概略図である。
【図2】図1aの胴体の一部の一断面の概略図である。
【図3】スキンの予備成形物のドレーピング前の図1aの胴体の製造用要素の一部の一断面の概略図である。
【図4】図3の要素の上面図である。
【図5】図3の要素の固定システムの概略断面図である。
【図6】スキンのドレーピング後の図1aの胴体の製造用要素の一部の概略断面図である。
【図7】胴体の要素であると考えられる円筒形構造体の成形原理の概略図である。
【図8】樹脂の重合前の外装に際しての、図1aの胴体の製造用要素の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1aに示した胴体の区分はスキン2を含み、このスキンにスティフナー4が一体化されている。スキン2は強化繊維層で構成されている。
【0062】
スティフナー4は、スキンとスティフナーとの一体化方法と同様、以下で説明する織物又は多軸繊維内に包み込まれた単方向性繊維を有する強化材で構成されている。
【0063】
この図1aで呈示されている実施形態において、スティフナー4は、3つの網状組織6a、6b及び6cに沿って分布しており、各網状組織は、互いに平行な平面内に延在するスティフナーで構成されている。
【0064】
網状組織6a、6b、6cは、2つの異なる網状組織の2つのスティフナーの間の全ての交差点すなわちノード8が同様に、第3の網状組織のスティフナーの1つとの交差点でもあるような形で、配置されている。任意には、例えば外形寸法を制限する目的で、第3の網状組織との交差点を、最初の2つの網状組織の交差点との関係においてわずかにずらすことができる。
【0065】
ただし、他の実施形態、特に2つの異なる網状組織の2つのスティフナーの間の交差点が必ずしも第3の網状組織のもう1つのスティフナーとの交差点とはならないような網状組織の配置も企図可能である。例えば、同じ網状組織の2つのスティフナーのうちの1つが他の2つの網状組織のスティフナーと交わるように、同じ網状組織の複数のスティフナー間の距離を選択することができる。図1bに示されている他の実施形態は、通常、フレーム、山形材及びスタビライザーが支持する応力を取込むために、フレームの円周方向網状組織との関係において斜めに配置された2つのスティフナー網状組織6b、6cしか含んでいない。
【0066】
考えられる別の構成(図示せず)には、網状組織6b、6cの1つを図1aの網状組織6aにならってスキン2上で円周方向に配置することが含まれるものと考えられる。
【0067】
図1aに示されている実施形態では、網状組織6a、6b、6cが測地線的に配置されるということに留意されたい。詳細には、同じ網状組織6のスティフナー4は互いに等距離のところに設置され、この距離は3つの網状組織6a、6b、6cについて同じである。
【0068】
代替的には、同じ網状組織のスティフナー4の離隔距離は、図1cに示されるように、各網状組織について異なっている。
【0069】
この図1cでは、網状組織6aのスティフナー間の距離は、網状組織6b及び網状組織6cのスティフナー間の距離と異なり、例えば、その値は他の距離との関係において2倍である。したがって、網状組織6aのスティフナー4は、2つに1つのノード8において他のスティフナーと交わる。
【0070】
したがって、全ての実施形態において、網状組織は、一平面内の投影で、頂点がノード8である多角形を形成する。例示された図1a、1b及び1cの実施例において、これらの多角形は三角形又は菱形である。
【0071】
任意には、図1a〜図1cで表わされているように、ノード8にはキャップ10が具備されている。
【0072】
キャップ10は、特に複合材料の強化織物又は多軸繊維で構成されており、その役目は、各ノード8で交わるスティフナー4間の機械的結合を確保し、且つせん断応力の一部を取込むことにある。このため、これらは、各ノード8においてスティフナー4の全ての端部を覆っている。
【0073】
スティフナー4の構造体は図2に示されている。各々のスティフナーは、好ましくは、スティフナーの方向に延在する単方向強化材の繊維又はストランドと、織物又は多軸繊維の被覆材とで構成されている強化材12を含む。
【0074】
詳細には、これら繊維強化材は、炭素又は航空機製造技術の分野のこの種の利用分野において一般的に用いられている他の任意の材料で製造され得る。このようにして、スティフナーは、優れた引張強度の恩恵を享受し且つ部分的には優れた曲げ強度の恩恵さえも享受している。
【0075】
単方向強化材12は織物又は多軸繊維の被覆材14内に包み込まれる。これら強化材は、三角形の断面を有するが、T字形又はオメガ状などの他の断面を企図することも可能である。
【0076】
優先的に、被覆材14は、例えば0°、90°、−45°及び45°、0°、90°、−30°及び30°、−45°及び45°、又は−30°及び30°で分布した層状の構造体を通して、公知の態様で織物又は多軸繊維で構成されている。
【0077】
スキン2は、成形作業中に、被覆材14と単方向強化材12との上にドレーピングされる。こうして、モノブロックで作られた構造体を得ることができ、これにより製造コストは削減される。
【0078】
以下の図は、本発明に係る構造体の製造方法を例示している。ここでは、注入ステップの前のスティフナーの予備成形物について説明する。
【0079】
図3に示されているように、製造方法の第1のステップでは、好ましくはアルミニウム製で台形断面を有するダイ18をマンドレル16の上に設置する。
【0080】
図7に示された実施形態において、マンドレル16は円筒であるが、図3に示されているように湾曲した鋼板であってもよい。
【0081】
詳細には、マンドレル16は熱膨張可能であり得る。
【0082】
ダイ18は、ここでは同一で、且つ、図4に示された上面図が表わす通り、ほぼ三角形の形状を有する。
【0083】
この特定の選択は、網状組織6a、6b、6cが測地線的に分布されることが望まれているという事実に関連したものである。
【0084】
他の実施形態(図示せず)では、ダイ18の形状は変動してよく、詳細には、45°で配向された2つの網状組織を有する構造体の場合に菱形の形状に近いものであってもよい。さらに他の実施形態では、ダイ18は全て同じ形状を有さなくてもよい。
【0085】
ダイの断面18は、スティフナーについて所望される形状と関連する。実際、ダイ18は、規則的に分布させられ、互いの間に溝19を形成するように互いにわずかな間隔がとられている。
【0086】
これら溝19は、スティフナー4の予備成形物のエンベロープとして役立つ。
【0087】
これらの形状及びサイズは、スティフナーに所望される断面が得られるような形で選択される。こうして、図3に示された実施形態では、ダイ18の断面は、溝がV字形の断面を有するように面取りされている。
【0088】
他の実施形態では、特に、スティフナーがT字形又はオメガ状の形状を有する実施形態では、ダイ18の断面は、それに応じて適応されると考えられる。
【0089】
ダイ18は、明確さを期して図3、6及び8では鎖線により概略的に表わされている固定用手段20を用いて、マンドレル16に固定されている。
【0090】
これらは、図5により詳細に示されている。
【0091】
この特定の一実施形態において、固定手段20は、少なくとも2本のネジ22、挿入体21、ガイドピン23及び継手のシール24で構成されている。
【0092】
変形実施形態では、固定用手段20は、先に列挙した要素の各々を異なる数だけ含んでもよく、さらには挿入体又はガイドピンを含まなくてもよい。
【0093】
各ダイについて、2本のネジ22のうちの1本は、マンドレルを貫通し、専用に設けられた長穴26内でのガイドピン23として役立つ。これらネジは、ダイに加えられる荷重を支持し、ダイとマンドレルとの間の膨張差を許容するような形で位置づけされる。取付けを容易にするために、ネジはマンドレル16の内部側にネジ込まれる。
【0094】
好ましくは鋼製で「らせん」タイプである挿入体21が、ネジ22のうちの少なくとも1本とダイ18の間に組込まれ、ネジ込みの寿命を延長させている。
【0095】
全体が発熱した場合のネジ22とダイ18との膨張差を許容しつつ回転自由度を拘束すべく、長穴26内に、少なくとも1本のガイドピン23が設置される。
【0096】
継手のシール24は、ネジ22の頭とマンドレル16の内側表面との間に配置されるように想定されている。これら継手のシールは特に、真空下での樹脂の注入の際に金型内に空気が流入して、複合材料内に気孔を誘発し、ひいてはその機械的特徴に影響が及ぶのを避けることを可能にしている。
【0097】
図5に表わされていない継手のシールを、マンドレル16とダイ18との界面でネジ22のシャフトのまわりに設置して、注入ステップの際にダイとネジとの間に樹脂が進入するのを避けることも同様に可能である。こうして、部品の型抜きの際のネジの撤去が容易になる。
【0098】
一旦ダイ18がマンドレル16に固定されると、キャップ10の設置という任意のステップ(図示せず)を実施することができる。
【0099】
キャップ10は、典型的には、ノードにおいて中心に穴が明けられたほぼ円形形状の織物又は多軸繊維の部品であるということを喚起しておきたい。
【0100】
この形状により、キャップのドレーピングを容易にし、且つノードにおいて受けるせん断応力をうまく分布させることが可能になる。
【0101】
ただし、キャップを製造するのに、代替的形状及び異なる材料を企図することができる。
【0102】
その後、スティフナー4の予備成形物の被覆材14を、例えばプレス加工システムさらには連続予備成形システムを用いて、溝19内に設置する。
【0103】
その後、スティフナー4の予備成形物の強化材12を構成する単方向性繊維を、被覆材14で全面的に覆われた溝19内に設置する。
【0104】
この設置は特に、巻回ステップを用いて実施され、このステップでは、マンドレル16及びダイ18がリール本体の代わりとなり、且つ単方向繊維がコードの代わりとなる。
【0105】
最後に、ダイ及びスティフナー4の予備成形物の表面上に、胴体のスキン2の予備成形物をドレーピングする。
【0106】
図6及び7は、これら位置づけステップが一旦実施された後の胴体構造体1の状態を示している。
【0107】
図8は、胴体1の製造装置の樹脂注入ステップを示している。
【0108】
この特定の実施形態では、注入は、オーブン内でのバッグ成形というそれ自体公知の方法によって行なわれる。
【0109】
より詳細には、スキン2は、連続的にピーリング用織物30、平滑化用鋼板32(英語では「caul plate」)、ドレン用織物34及び真空バッグ36で覆われる。
【0110】
例えば、注入は、スティフナー4の予備成形物において各ノード8の下に設置されたゲート28を用いて行なわれる。ノード8及びスティフナー4の予備成形物において低圧樹脂注入(英語では一般に「resin transfer moulding」を略してRTMと呼ばれる)が実施され、LRI(英語で「liquid resin influsion」)タイプの注入が、スティフナー4の予備成形物の間で実施される。
【0111】
樹脂による予備成形物の良質な含浸を得るように、スティフナーの注入及びスキンの注入は別個に実施される。
【0112】
実際、スティフナーの注入は、ダイ間の溝内における線形注入であり、実際にはスティフナーの全長にわたって実施される。一方、スキンの注入は、スキン下のダイの中心で局所的なものであり、又はスキンの含浸の質を良くするため、ダイとスキンとの界面においてダイの表面全体にわたり表面的な(LRIタイプ)ものである。
【0113】
LRIタイプの注入は特に、図8に表わされた(明確さを期して他の図に示していない)拡散グリッド40を用いて行われる。設置されている継手のシール38は、金型内の真空レベルを良好なものにするように設けられたものである。
【0114】
これら継手のシール38の配置は、マンドレル16の形状に準じて変更される。円筒である場合には、これらは真空バッグの縁部上及びマンドレル16上でマンドレル16の端部に設置される。マンドレル16が湾曲した鋼板である場合、継手のシール38は、マンドレル16の周囲に設置される。
【0115】
オートクレーブ成形、真空成形、加圧成形、プレス成形又は伸張性マンドレルを用いた成形などの他の成形技術も同じく企図可能である。
【0116】
したがって、以上で記述した方法は、必ずしも山形材(「clips」)及びスタビライザー(「cleats」)を組込む必要はなく(又はこれらを少ない数で使用し)、これら部品を含む従来の構造体のものと同等の機械的強度を有し、モノブロックで作られ、このため製造コスト及び取付けコストが削減された胴体構造体を得ることを可能にする。
【0117】
以上で提示した実施形態は、本発明の考えられる実施例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキン(2)と、該スキン(2)上に固定されたスティフナー(4)とを有する構造体の製造方法において、
成形用要素(18)をマンドレル(16)上に位置づけして、前記成形用要素(18)の間に溝(19)を形成するステップであって、該溝(19)が少なくとも2つの網状組織(6a、6b、6c)に沿って配置され、1つの網状組織の溝が、ノード(8)と呼ばれる点において、別の網状組織の少なくとも1つの溝(19)と交わる、ステップと;
少なくとも2つのスティフナー(4)が前記ノード(8)において交わるように、前記溝(19)内にスティフナー(4)の予備成形物を位置づけするステップと;
前記スティフナー(4)を組立てるように樹脂を注入するステップと;
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの網状組織(6a、6b、6c)の溝(19)の長手方向延在部分によって画定される表面がマンドレル(16)の軸線に対して垂直ではないことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溝(19)内にスティフナーの被覆材(14)を位置づけする第1のステップと、該被覆材(14)上にスティフナーの強化材(12)を位置づけする第2のステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記スティフナー(4)の予備成形物上にスキン(2)の予備成形物をドレーピングするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記スティフナー(4)がV字形の断面形状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
スティフナーの強化材(12)が単方向性のストランド又はコードで構成され、スティフナーの被覆材(14)が織物又は多軸繊維で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
ノード(8)において中心に穴が開けられ、且つ、各ノード(8)において交わる前記スティフナー(4)間の機械的結合を保証するほぼ円形の織物片(10)を位置づけするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
樹脂は、前記成形用要素(18)の間、及びスキン(2)の予備成形物と前記成形用要素(18)との間で、前記スティフナー(4)の予備成形物内に注入されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
注入が、拡散グリッド(40)を用いてオーブン内でバッグ成形法により行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
スキン(2)と、該スキン(2)上に固定されたスティフナー(4)とを有する構造体の製造装置において、
マンドレル(16)と;
ダイ(18)であって、該ダイ(18)の間に溝(19)を形成するように前記マンドレル(16)上に固定され、前記溝(19)が少なくとも2つの網状組織(6a、6b、6c)に沿って配置され、1つの網状組織(6a、6b、6c)の溝(19)が、ノード(8)と呼ばれる点において、別の網状組織(6a、6b、6c)の少なくとも1つの溝(19)と交わる、ダイ(18)と;
少なくとも2つのスティフナー(4)が前記ノード(8)において交わるように、前記溝(19)内にスティフナー(4)の予備成形物を位置づけするシステムと;
前記スティフナー(4)を組立てるように樹脂を注入するシステムと;
を含むことを特徴とする、製造装置。
【請求項11】
前記溝(19)内でスティフナー(4)の被覆材の予備成形物をドレーピングする第1のシステムと、スティフナーの強化材(12)を構成するように前記予備成形物において単方向コードを巻回する第2のシステムとをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の製造装置。
【請求項12】
前記ダイ(18)が台形断面を有することを特徴とする、請求項10に記載の製造装置。
【請求項13】
前記ダイ(18)が、各ダイ(18)内において専用に設けられた穴(26)の中に挿入された少なくとも2本のネジ(22)を介してマンドレル(16)上に固定されており、第1のネジ(22)が中に配置される前記ダイ内の穴(26)が挿入体(21)を有し、第2のネジ(22)が中に配置される前記ダイ内の穴(26)がガイドのために長穴になっていることを特徴とする、請求項10に記載の製造装置。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法を用いて実現された、航空機胴体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−56665(P2013−56665A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197171(P2012−197171)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(509347273)エアバス オペラシオン ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (33)