説明

スキージ観察装置及びスキージ観察方法

【課題】基板上にソルダーペーストを印刷するスキージのスキージング中における撓り状態を、精度良く検証することの可能な技術を提供する。
【解決手段】透明な平板材と、平板材の上面に接するようにスキージを保持し、スキージを平板材の上面に沿ってスキージングさせるスキージ駆動手段と、平板材の下方に配置されており、スキージング中のスキージを、平板材を透して撮像する撮像手段と、を備える。スキージのうち、スキージング中の進行方向側に面するスキージ面には、スキージの撓りに応じて変形する所定の模様が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキージ観察装置及びスキージ観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の表面実装工程において、基板上にクリーム半田(以下、「ソルダーペースト」ともいう。)を供給する方法として、スクリーン印刷が知られている。この印刷方法は、印刷対象部位に応じて印刷開口が形成されたマスクプレートを基板上に配置し、マスクプレートの上面に沿ってスキージをスキージングさせることで、印刷開口を介して基板上にソルダーペーストを印刷(転写)する。
【0003】
近年、中・大型電子部品と小型の電子部品とを混載実装するケースが増えている。小型電子部品に対応する印刷開口は版厚に対する開口寸法が相対的に小さくなり易い。その結果、印刷開口にソルダーペーストが適切に充填されず、印刷開口寸法に見合う適切な量のソルダーペーストを充填することが難しい。
【0004】
また、スキージング動作中のスキージには撓り(しなり)が生じ、この撓りはスキージの長手方向(スキージ方向と直交する方向)において一様とならない場合がある。例えば、スキージの中央部を保持してスキージングさせる場合、スキージの中央部に比べて両端部の撓り度合いが大きくなる傾向がある。このように、スキージの長手方向における撓り状態が異なると、印刷開口へのソルダーペーストの充填量がばらつく要因になる。
【0005】
一方、スクリーン印刷における印刷条件のパラメータは多種に及ぶため、印刷条件パラメータの条件選定は容易でない。スクリーン印刷を行う際の最適な印刷条件を選定するための観察装置として、被印刷物として透過性を有する基板を使用し、印刷開口に充填されるソルダーペーストの充填過程を撮像カメラによって基板を透して撮像する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−167111号公報
【特許文献2】特開2004−1554号公報
【特許文献3】特許第2982617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、印刷開口へのソルダーペーストの充填状態を観察しても、スキージの撓り状態まで把握することは困難である。したがって、スキージの撓り度合いを考慮したソルダーペーストの最適な印刷条件を見出すことが困難であった。本件は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、基板上にソルダーペーストを印刷するスキージのスキージング中における撓り状態を、精度良く検証することの可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件の一観点によるスキージ観察装置は、透明な平板材と、前記平板材の上面に接するようにスキージを保持し、前記スキージを前記平板材の上面に沿ってスキージングさせるスキージ駆動手段と、前記平板材の下方に配置されており、前記スキージング中の前記スキージを、前記平板材を透して撮像する撮像手段と、を備え、前記スキージのうち、前記
スキージング中の進行方向側に面するスキージ面には、前記スキージの撓りに応じて変形する所定の模様が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、基板上にソルダーペーストを印刷するスキージのスキージング中における撓り状態を、精度良く検証することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ソルダーペーストのスクリーン印刷を説明する説明図である。
【図2】スキージング中のスキージの状態を説明する説明図である。
【図3】スキージング中におけるスキージ先端側の部分拡大図である。
【図4】スキージング開始前及び開始後におけるスキージの状態を表す図である。
【図5】実施形態1に係るスキージ観察装置の概略構成図である。
【図6】スキージの第1構成例を示す図である。
【図7】第1及び第2カメラとスキージとの相対的な位置関係を模式的に示す図である。
【図8】撓り検証処理における各装置の動作内容を説明する説明図である。
【図9】初期状態とスキージング状態において、スキージ面をガラス基板の下方から眺めた図である。
【図10】表示装置の画面を例示した図である。
【図11A】印刷条件パラメータの選定方法に係る手順を示すフローチャートである。
【図11B】印刷条件パラメータの選定方法に係る手順を示すフローチャートである。
【図12】スクリーン印刷において、スキージング後の状況と版離れ後の状況を説明する説明図である。
【図13】スキージの第2構成例を示す図である。
【図14】第2構成例に係るスキージのスキージ画像を表示装置に表示させた図である。
【図15】スキージの第3構成例を示す図である。
【図16】第3構成例に係るスキージのスキージ画像を表示装置に表示させた図である。
【図17】スキージの第4構成例を示す図である。
【図18】第4構成例に係るスキージのスキージ画像を表示装置に表示させた図である。
【図19】第5構成例に係るスキージ及びバックアッププレートの斜視図である。
【図20】第5構成例に係るスキージの撓り度合いの検証方法を説明する説明図である。
【図21】強調平行表示線21aの移動量Dtと撓りスキージ角度θsとの関係を示す図である。
【図22】実施形態3に係るスキージ観察装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)に係るスキージ観察装置、及びスキージ観察方法について例示的に詳しく説明する。
【0012】
<実施形態1>
図1は、ソルダーペーストのスクリーン印刷を説明する説明図である。図2は、スキージング中のスキージの状態を説明する説明図である。スクリーン印刷は、例えば、プリント基板101の上面にマスクプレート(印刷版)102を配置した状態で行われる。マス
クプレート102には、プリント基板101の上面に形成されたフットパターン101aに対応する印刷開口102aが形成されており、印刷開口102aを通じてフットパターン101aが露出するようにマスクプレート102が位置決めされている。マスクプレート102を作製する材料としては、例えばステンレス(SUS)、ニッケル(Ni)等を挙げることができる。
【0013】
スキージ2は平板状を呈しており、例えば、ステンレス、ウレタン、プラスチック等を材料として用いることができる。スキージ2は、スキージホルダ103に着脱自在に装着されている。スキージホルダ103は、スキージ2とマスクプレート102の上面とがなす角度(以下、「初期スキージ角度」という。)θiを調整可能に、スキージ2を把持する構造となっている。図中の符号104は、バックアッププレートを表す。バックアッププレート104は、スキージ2がスキージホルダ103から片持ち状態で下方に延出する長さ(以下、「スキージ有効長」という。)Lsを規定する機能を有する。スキージホルダ103に対するバックアッププレート104の装着位置を変更したり、使用するバックアッププレート104そのものを交換することにより、スキージ有効長を変更することができる。その結果、スキージ2の可撓性を調整することが可能となる。
【0014】
スキージホルダ103は、駆動装置(不図示)によってマスクプレート102の上面に沿って駆動される。スキージホルダ103が駆動されることにより、スキージ2の先端縁部2aがマスクプレート102の上面に当接しつつ、マスクプレート102の上面に沿って移動するスキージング動作が行われる。マスクプレート102の上面にソルダーペースト105を載置した状態でスキージ2をスキージングさせると、ソルダーペースト105がスキージ2の先端縁部2aによって印刷開口102aへと押し込まれる。これにより、プリント基板101のフットパターン101a上にソルダーペースト105が転写される。その後、プリント基板101からマスクプレート102を引き離すことで、ソルダーペースト105のスクリーン印刷が完了する。
【0015】
図1及び図2に示す符号Dsは、スキージング中におけるスキージ2の進行方向(以下、「スキージ方向」という。)を表す。両図から判るように、スキージング中におけるスキージ2は、先端縁部2aがマスクプレート102と当接した状態で移動するため、撓った状態に維持される。図3は、スキージング中におけるスキージ先端側の部分拡大図である。スキージングの際、スキージ2における先端縁部2a及びその周辺部は撓るため、先端縁部2a及びその周辺部とマスクプレート102の上面とがなす角度(以下、「撓りスキージ角度」という。)θsが、初期スキージ角度θiよりも小さな角度となる。
【0016】
スクリーン印刷時において、マスクプレート102の印刷開口102aにソルダーペースト105を押し込む作用は、スキージ2のしなり強度、及び撓りスキージ角度θsの寄与する度合いが大きい。スキージ2のしなり強度は、撓った状態の先端縁部2aを元の状態に復元しようとする復元力であり、スキージング中においてスキージ2をマスクプレート102の上面に押し付ける印刷圧(以下、「スキージ圧」という。)の影響を主に受ける。
【0017】
一方、撓りスキージ角度θsは、スキージ2の材質や厚さによって適正範囲が定まっている。しかしながら、撓りスキージ角度θsは、初期スキージ角度θi、スキージ2の材質・厚さ、スキージ有効長Ls、スキージ速度、スキージ圧(印刷圧)等、他種の因子の影響を受けるため、適正度を検証することが難しい。更に、スキージングの際にスキージホルダ103を駆動するための機構は、スキージホルダ103(スキージ2)の長手方向(図2中、符号Dwで表す。)における特定部位(例として、中央部)に駆動力を作用させる構造が広く採用されている。そうすると、図4に示すように、スキージング中における端部2cの撓り量(撓り度合い)が、中央部2bに比べて大きくなる傾向がある。
【0018】
図4において、左図はスキージングの開始前におけるスキージ2の状態を表し、右図はスキージング中におけるスキージ2の状態を表す。何れの図においても、スキージ2を上部から眺めた状態を示している。図4の右図に示すように、スキージ2の長手方向Dwに関して、スキージング中における撓り量が相違すると、印刷開口102aに対するソルダーペースト104の充填量(供給量、転写量)のばらつきを招く要因となる。
【0019】
そこで本実施形態では、スクリーン印刷時におけるソルダーペースト105の最適な印刷条件を見出すために、スキージ観察装置1によって、スキージング中におけるスキージ2の撓り状態を観察し、撓りスキージ角度θsの適正度を検証する。以下、スキージ観察装置1について詳しく説明する。
【0020】
〈スキージ観察装置の構成〉
図5は、スキージ観察装置1の概略構成図である。スキージ観察装置1は、上方に開口する箱状の印刷台3、印刷台3を昇降駆動する印刷台駆動部4、印刷台3の上方に配設されたスキージヘッド部5を印刷台3と平行に往復駆動するスキージ駆動部6等を有する。
【0021】
印刷台3の開口部3aには支持枠3bが配設されており、支持枠3bに透明な平板状であるガラス基板7が取り付けられている。ガラス基板7は、不図示のクランパを介して支持枠3bに固定されている。印刷台駆動部4は、例えば、印刷台3の底部3cに接続されたパルスモータ4aを有しており、このパルスモータ4aを用いて印刷台3を昇降駆動することができる。尚、支持枠3bに取り付ける部材は、ガラス基板7に限定されるものではなく、透明な平板材であれば他の部材を採用しても良い。ガラス基板7は透明な平板材の一例として挙げられる。
【0022】
スキージ駆動部6は、例えばサーボモータ6a、サーボモータ6aにより回転駆動されるスキージ駆動軸6b、及び、スキージ駆動軸6bに嵌装されたスキージ駆動ブロック6c等を有する。スキージ駆動軸6bの外周面にはネジ加工が施されており、スキージ駆動ブロック6cはスキージ駆動軸6bのネジに係合している。サーボモータ6aによってスキージ駆動軸6bが回転駆動されると、スキージ駆動軸6bに嵌装されているスキージ駆動ブロック6cが、スキージ駆動軸6bの軸方向に沿って駆動する。スキージ駆動部6はスキージ駆動手段の一例として挙げられる。
【0023】
スキージヘッド部5は、スキージ2を保持(把持)するスキージホルダ103、バックアッププレート104、スキージ駆動ブロック6c及びスキージホルダ103の間に介在するスキージ圧駆動機構9等を有する。スキージ2、スキージホルダ103、及びバックアッププレート104は、図1〜4を参照して説明した通りである。スキージ圧駆動機構9は、例えば空気圧シリンダ機構を有しており、空気圧シリンダ機構の空気圧を調節することにより、スキージ2をガラス基板7に押し付ける圧力であるスキージ圧を調整できる。
【0024】
また、ガラス基板7の下方(具体的には印刷台3の底部3c)には2台のカメラ(以下、第1カメラ、第2カメラとする。)10a,10bが設置されている。第1及び第2カメラ10a,10bは、スキージホルダ103に保持されているスキージ2の長手方向Dw(図4を参照)に所定の距離だけ離れた状態で並設されている固定式カメラである。第1及び第2カメラ10a,10bは、撮像手段の一例として挙げられる。
【0025】
更に、スキージ観察装置1は、制御装置11、表示装置12、ハードディスク装置等の記録装置13等を備えている。制御装置11は、図示しない中央処理装置(CPU)、ROMやRAM等のメモリを有しており、スキージ観察装置1の全体動作を制御する。制御装
置11には、印刷台駆動部4のパルスモータ4a、スキージ駆動部6のサーボモータ6a、スキージ圧駆動機構9、第1カメラ10a、第2カメラ10b等が電気配線を介して接続されており、各装置が制御装置11によって制御される。また、制御装置11には、表示装置12及び記録装置13が電気配線を介して接続されている。
【0026】
〈スキージの第1構成例〉
図6は、本実施形態におけるスキージ2の第1構成例を示す図である。図6は、スキージ2のスキージ面2dを正面として眺めた状態を示している。スキージ2のスキージ面2dとは、スキージ2を形成する面のうち、スキージング中における進行方向(スキージ方向)に向かって前方に位置する面を指す。ここでいうスキージ2のスキージングとは、後述する撓り検証処理において、スキージ2の先端縁部2aがガラス基板7の上面に当接しつつ、ガラス基板7の上面に沿って移動する動作を指す。
【0027】
スキージ2のスキージ面2dには、所定の模様(パターン)が付与されている。スキージ面2dに設けられた模様は、スキージ2のスキージング中に第1カメラ10a、第2カメラ10bによって撮像される。スキージ2は、スキージングを開始することによって撓るため、スキージ面2dに設けた模様も変形することになる。スキージ観察装置1では、第1カメラ10a、第2カメラ10bによって、スキージ面2dの変形を捉えることによって、スキージ2の撓り状態の検証や撓りスキージ角度θsの取得を実現する。
【0028】
スキージ2のスキージ面2dには、所定の模様として、先端縁部2aと平行な複数の表示線(以下、「平行表示線」という。)21が設けられている。平行表示線21は、複数(2本以上)であれば、その本数は何ら限定されない。各平行表示線21の表示間隔は、等間隔となっている。例えば、図6に示す例では、各平行表示線21の表示間隔を1mmとしているが、他の値を採用しても良い。また、平行表示線21の幅は、例えば0.1〜0.2mm程度としているが、これに限定されるものではない。平行表示線21をスキージ面2dに表示させる手法としては、インク等を用いて平行表示線21を印刷しても良いし、スキージ面2dに傷をつけて平行表示線21を描くケガキ加工を施しても良い。このケガキ加工においては、加工深さを50μm以下とするのが好ましい。また、平行表示線21を印刷したシール等をスキージ2のスキージ面2dに貼り付けても良い。
【0029】
〈撓り検証処理〉
以上のように構成されるスキージ観察装置1では、制御装置11によって撓り検証処理が行われる。この撓り検証処理では、概略、ガラス基板7に沿ってスキージ2をスキージングさせ、スキージング中におけるスキージ2の撮像結果を用いて撓りスキージ角度θsを検証する。撓り検証処理は、スキージ圧、スキージ速度等が設定されたスキージングプログラムに基づき、制御装置11が印刷台駆動部4、スキージ駆動部6、スキージ圧駆動機構9等を制御することで実行することができる。撓り検証処理を実行する際、初期スキージ角度θiの初期値は60°に設定されている。初期スキージ角度θiの定義は既述の通りである。但し、スキージ観察装置1でいう初期スキージ角度θiとは、スキージ2が初期位置にある状態でのスキージ面2dとガラス基板7の上面とがなす角度を指す。また、初期スキージ角度θiの初期値として60°を採用したのは例示的なものであり、適宜変更しても構わない。
【0030】
撓り検証処理にあたって、スキージ2の先端縁部2dをガラス基板7の上面に押し当てるスキージ圧は、スキージ圧駆動機構9によって調節される。また、スキージ2のスキージ方向Dsに沿ったスキージング動作は、スキージ駆動部6によってスキージ駆動軸6bを回転駆動することで実現される。
【0031】
次に、撓り検証処理において、第1カメラ10a及び第2カメラ10bがスキージ2の
スキージ面2dを撮像する態様を説明する。図7は、第1及び第2カメラ10a,10bとスキージ2との相対的な位置関係を模式的に示す図である。図7には、上述したスキージ2の長手方向Dw及びスキージ方向Dsを示している。また、図7には、スキージ2を上部から眺めた状態が示されており、ガラス基板7の作図は割愛している。
【0032】
図7に示すように、第1カメラ10aは、スキージング中におけるスキージの端部2cが、第1カメラ10aの上方を通過する位置に配置されている。一方、第2カメラ10bは、スキージング中におけるスキージの中央部2bが、当該第2カメラ10bの上方を通過する位置に配置されている。撓り検証処理では、スキージ2のスキージングに際して、スキージ2の端部2cを第1カメラ10aによって撮像し、スキージ2の中央部2bを第2カメラ10bによって撮像する。尚、制御装置11は、第1カメラ10a及び第2カメラ10bが撮像した画像(以下、「スキージ画像」という。)のデータを受け取り、スキージ画像を表示装置12に表示させたり、記録装置13に記録することができる。
【0033】
図8は、撓り検証処理における各装置の動作内容を説明する説明図である。撓り検証処理が開始されると、制御装置11は、まず、スキージ方向Dsにおけるスキージ2の位置が初期位置と一致するようにスキージ駆動部6を制御する。この初期位置は、スキージ2のスキージングを開始するスタート位置に相当するものである。ここで、スキージ2が初期位置に配置されている状態を、「初期状態」として定義する(図8中、破線で示す。)。初期状態にあるスキージ2は、先端縁部2aとガラス基板7の上面との間に僅かなクリアランスが形成されている。
【0034】
次に、制御装置11は、印刷台駆動部4を制御することによって、スキージ2の先端縁部2aがガラス基板7の上面に押し付けられるまで印刷台3を上昇させる。その際、印刷台3の上昇量は、スキージ2のスキージング時において所定のスキージ圧が得られるように調節されている。その後、制御装置11は、スキージ駆動部6を制御することによって、スキージ2をスキージ方向Dsにスキージングさせる。そして、スキージ2が第1カメラ10a及び第2カメラ10bの真上を通過するスキージ撮像位置に到達した時点で、第1カメラ10a及び第2カメラ10bはスキージ2(スキージ面2d)を撮像する。そして、スキージ方向Dsにおけるスキージ2の位置が所定のスキージング終点位置に到達すると、制御装置11はスキージ駆動部6の作動を停止させる。その結果、スキージ2のスキージングが停止する。
【0035】
図9は、初期状態とスキージング状態において、スキージ面2dをガラス基板7の下方から眺めた図である。図9中、左図に初期状態のスキージ面2dを示し、右図にスキージング状態のスキージ面2dを示している。初期状態のスキージ面2dを下方から眺めた場合、スキージ面2dに正対する方向から眺める場合に比べて、平行表示線21の間隔が狭く見える。
【0036】
次に、スキージング中におけるスキージ2の平行表示線21の見え方について説明する。スキージング中のスキージ2は撓り変形を伴っている。そのため、撓りスキージ角度θsは初期スキージ角度θiに比べて小さくなる。また、スキージ2の撓り変形によって、スキージ面2d側が伸びるため、スキージ面2dに設けられている平行表示線21同士の間隔が広がる。その際、スキージ2の撓り度合いが大きいほど、平行表示線21同士の間隔の広がり方も顕著となる。その結果、スキージング中におけるスキージ面2dを下方から眺めた場合には、初期状態のときに比べて、平行表示線21同士の間隔が広がって視認される。
【0037】
撓り検証処理では、スキージング中におけるスキージ2のスキージ面2dを、ガラス基板7の下方に配置した第1及び第2カメラ10a,10bを用いて撮像する。これによっ
て、スキージ画像を得ることができる。ここで、スキージ2の端部2cにおけるスキージ画像を「端部スキージ画像」と称し、スキージ2の中央部2bにおけるスキージ画像を「中央部スキージ画像」と称する。制御装置11は、各カメラ10a,10bから取得した各スキージ画像を表示装置12に表示させると共に、その画像データを記録装置13に記録する。
【0038】
図10は、表示装置12の画面12aを例示した図である。図示の例では、中央部スキージ画像が画面12aに映し出されている。ここで、例えばマウスやキーボードなどの入力装置(図示せず)を介して使用者からの画像切り替え要求を受け付けると、画面12aへの出力対象が中央部スキージ画像から端部スキージ画像へと切り替えられる。尚、画面12aに、中央部スキージ画像及び端部スキージ画像を並べて表示させても良い。
【0039】
表示装置12に表示されるスキージ画像に映った平行表示線21の間隔を、「画像表示間隔X1」と定義する。平行表示線21の画像表示間隔X1は、スキージ2のスキージ面2dに形成された平行表示線21の実際の間隔(以下、「現実印刷間隔C」と定義する。)と撓りスキージ角度θsと相関がある。撓りスキージ角度θsは、下記数式(1)によって算出することができる。
θs=cos-1(X1/C)・・・(1)
【0040】
ここで、現実印刷間隔Cは1mmに設定されている。例えば、スキージ観察装置1の使用者が、スキージ画像から読み出した平行表示線21の画像表示間隔X1が0.6mmであったとする。この場合、数式(1)のCに1、X1に0.6を代入することで、撓りスキージ角度θsを53.1°として算出することができる。尚、表示装置12の画面12aには、スケールが表示されているので、使用者は画像表示間隔X1を容易に読み取ることができる。
【0041】
本実施形態では、スキージ観察装置1の使用者が表示装置12の画面12aに表示するスキージ画像から撓りスキージ角度θsを求める例を説明したが、制御装置11によって撓りスキージ角度θsを自動で算出しても良い。この場合、制御装置11は、例えばカメラ10a,10bから取得したスキージ画像に画像処理を行う。そして、制御装置11は、スキージ画像に対する画像処理結果に基づき、撓りスキージ角度θsを算出する。このようにして、制御装置11が取得した撓りスキージ角度θsは、表示装置12の画面12aに出力されたり、記録装置13に記録される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るスキージ2によれば、スキージ面2dに所定の模様を付与し、スキージング中における当該模様を撮像することによって、初期状態からの模様の変形度合いに基づいて撓りスキージ角度θsを好適に求めることができる。すなわち、第1構成例に係るスキージ2では、スキージ面2dの先端縁部側に複数の平行表示線21を付与(印刷)するようにした。そして、カメラ10a,10bで撮像したスキージ画像において、スキージング中における平行表示線21の間隔の、初期状態を基準としたときの広がり方(変形)に基づき、撓りスキージ角度θsを容易に求めることができる。これによって、スキージング中におけるスキージ2の撓り量(撓り度合い)の適正度を検証することができる。
【0043】
更に、本実施形態のスキージ2によれば、スキージ面2dに、平行表示線21を互いに等間隔で設けるようにした。これによれば、撓りスキージ角度θsを算出する際の基礎となる現実表示間隔Cが何れの箇所においても一定となるため、撓りスキージ角度θsをより簡単に算出することができる。したがって、本実施形態によれば、プリント基板101上にソルダーペースト105を印刷するスキージ2のスキージング中における撓り状態を、精度良く検証することが可能である。
【0044】
そして、撓り検証処理によって求めた撓りスキージ角度θsが、スクリーン印刷に係る印刷条件パラメータの設定、仕様によって定まる所定の適正範囲に収まっているか否かに基づき、その適正度を検証することができる。印刷条件パラメータとしては、例えば初期スキージ角度θi、スキージ速度、スキージ圧等が挙げられる。仮に、撓りスキージ角度θsが適正範囲から外れていることが判明した場合、印刷条件パラメータを適宜変更した上で撓り検証処理を再実施すると良い。スキージ観察装置1を用いて撓りスキージ角度θsの適正度を検証し、その検証結果を印刷条件パラメータの選定にフィードバックすることで、ソルダーペーストの最適な印刷条件を見出すことができる。つまり、スキージング中におけるスキージ2の撓り度合いを考慮して、スクリーン印刷における印刷条件パラメータを、適正に選定することができる。
【0045】
ところで、図1〜4で説明した様に、スキージング中におけるスキージ2は、中央部2bに比べて端部2cの撓り度合いが大きくなる傾向がある。これに対して、スキージ観察装置1では、中央部スキージ画像及び端部スキージ画像の双方を取得するようにした。これにより、スキージ2の中央部2b及び端部2cの双方で撓りスキージ角度θsが適正範囲となるように、印刷条件パラメータを選定できる。したがって、スキージ2の長手方向Dwの全範囲に亘って、最適な印刷条件下においてスクリーン印刷を実施できる。故に、プリント基板101に対するソルダーペースト105の供給量のばらつきを抑制することが可能となり、プリント基板101に実装する電子部品の品質が担保される。
【0046】
〈変形例〉
尚、本実施形態に係るスキージ観察装置1では、2台の固定式の第1及び第2カメラ10a,10bをガラス基板7の下方に配置したが、カメラの設置態様は種々の変更を加えることができる。例えば、ガラス基板7の下方であって、第1カメラ10aが配置されていない方の端部2cが上部を通過する位置に第3カメラ(図示せず)を配置し、当該端部2cのスキージ画像を第3カメラによって取得しても良い。これによれば、スキージング中におけるスキージ2の撓り状態を、より一層精度良く検証することができる。
【0047】
また、ガラス基板7の下方に配置するカメラを平面移動可能なスライド式にしても良い。この場合、スキージ観察装置1は、印刷台3の底部3cに沿ってスライド式カメラを移動可能なスライド機構を備えると良い。これによれば、1台のスライド式カメラで、スキージ2の中央部2b及び端部2cの双方の撮像が可能となる。この場合、例えば、一回のスキージング動作を行う際に中央部2bにおけるスキージ画像を取得し、次回のスキージング動作を行う際に端部2cにおけるスキージ画像を取得しても良い。また、1台の固定式カメラをガラス基板7の下方に配置することも可能である。この場合、スキージング中におけるスキージ2の中央部2bと端部2cが同時にカメラの視野内に収まるように、カメラを設置すると良い。これにより、スキージ2の長手方向Dwの全範囲に亘って、スキージング中におけるスキージ2の撓り状態の適正度を検証することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る撓り検証処理の変形例として、スキージング中におけるスキージ画像に加えて、初期状態におけるスキージ画像(以下、「初期状態スキージ画像」という。)をカメラ10a,10bによって取得しても良い。この場合、スキージ観察装置1は、第1カメラ10a及び第2カメラ10bを、少なくともスキージ方向Dsに移動させるスライド機構を備えることが好ましい。本変形例では、まず第1及び第2カメラ10a,10bを、図8において説明した初期位置に移動させておき、スキージ2の端部2c及び中央部2bの夫々において、初期状態におけるスキージ面2dを撮像する。その後は、第1及び第2カメラ10a,10bを上記スライド機構によってスキージ撮像位置まで移動させ、スキージング中におけるスキージ画像(以下、「撓り状態スキージ画像」という。)を撮像する。
【0049】
初期状態スキージ画像に映った平行表示線21の間隔を、「画像表示間隔X2」とする。画像表示間隔X2は、平行表示線21の現実印刷間隔C、及び初期スキージ角度θiと相関があり、これらの関係は下記数式(2)によって規定されている。
X2=C×cosθi・・・(2)
【0050】
本実施形態では、現実印刷間隔Cが1mm、初期スキージ角度θiが60°に設定されている。そのため、初期状態スキージ画像から読み取った平行表示線21の画像表示間隔X2と現実印刷間隔Cを数式(2)に代入すると、理論上は初期スキージ角度θiが60°として算出される。但し、スキージ観察装置1の各種構成部材(例えば、スキージホルダ103)に製造誤差、組み立て誤差、劣化等の何らかの誤差要因が介在する場合には、数式(2)から算出した初期スキージ角度θiと、設定値との間に誤差が生じることがある。そのような場合には、当該誤差の影響が相殺されるように、撓り状態スキージ画像から求めた撓りスキージ角度θsの値を補正しても良い。そうすることで、スキージング中におけるスキージ2の撓りスキージ角度θsを、より精度良く検証することが可能となる。
【0051】
〈パラメータ選定方法〉
次に、スクリーン印刷を行う際の印刷条件パラメータを選定する方法について説明する。本実施形態における印刷条件パラメータの選定方法は、撓り検証処理により取得した撓りスキージ角度θsが適正範囲にあるか否かの判定結果に基づき、図11A、11Bに示すフローに沿って行われる。図11A、11Bは、印刷条件パラメータの選定方法に係る手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、ステップS101では、撓り検証処理を実施し、スキージ2の中央部2b及び端部2cを夫々取得する。ここで、中央部2bについて取得したスキージ角度θsを、中央部スキージ角度θsmと定義し、端部2cについて取得したスキージ角度θsを、端部スキージ角度θseと定義する。ステップS102では、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が、適正範囲に含まれているか否かを判定する。
【0053】
上記の適正範囲は、スキージ2の材質、厚さ、スキージ圧等の仕様に応じて、予め定めておくことができる。例えば、スキージ2の材質がステンレス、厚さが0.2mm、スキージ圧が0.25±0.05(N)の場合、スキージ角度θsの適正範囲は55±3°(52°〜58°)として定めておいても良い。また、スキージ2の材質がウレタン、厚さが0.5mm、スキージ圧が0.40±0.05(N)の場合、スキージ角度θsの適正範囲は52±3°(49°〜55°)として定めておいても良い。但し、ここで示したスキージ角度θsの適正範囲は例示的に挙げたものである。
【0054】
図12は、スクリーン印刷において、スキージング後の状況と版離れ後の状況を説明する説明図である。スキージ角度θsが適正範囲の上限値を超える場合、スクリーン印刷時にスキージ2によるソルダーペースト105の押し込み不足が起こり易い(図中、左列を参照)。その結果、ソルダーペースト105の充填後にマスクプレート102をプリント基板101から引き離した版離れ後において、カケ・印刷不足等が生じ易くなる。一方、スキージ角度θsが適正範囲の下限値より小さい場合、スクリーン印刷時にスキージ2がソルダーペースト105を強く押し込み過ぎてしまう(図中、中列を参照)。その結果、版離れ後において、ソルダーペースト105のニジミ・ダレ等が生じ易くなる。
【0055】
ステップS102で肯定判定、すなわち、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が適正範囲内に含まれていると判定された場合、長手方向Dwに亘ってスキージ2の撓り状態にばらつきが小さいと判断できる。この場合、撓り検証処理を実施
したときと同一条件にてスクリーン印刷を行えば、印刷開口102aへのソルダーペースト105の充填量のばらつきが小さく抑えられる。したがって、本ステップにおいて肯定判定された場合には、特に印刷条件のパラメータを変更せずに、そのまま本フローを終了する。
【0056】
一方、ステップS102で否定判定された場合には、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの少なくとも何れか一方が、適正範囲から外れている。この場合、ステップS103にて、中央部スキージ角度θsmのみが適正範囲に含まれているか否かを判定する。本ステップで肯定判定された場合、ステップS104に進む。一方、本ステップで否定判定された場合には、中央部スキージ角度θsmのみ、或いは中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が適正範囲から外れていることになる。その場合には、ステップS111に進む。
【0057】
ステップS104では、スキージ圧の設定値の変更、及び、マスクプレート102のクリアランス調整を行う。まず、スキージ圧の設定値の変更について述べる。ここで、端部スキージ角度θseが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ圧の設定値を高くする。一方、端部スキージ角度θseが適正範囲の下限値よりも小さい場合には、スキージ圧の設定値を低くする。これにより、撓り検証処理を再実施した場合に、端部スキージ角度θseが適正範囲に収まる可能性が高くなる。尚、スキージ圧の設定値を変更する際の増減値は、予め定めておく一定値であっても良いし、現在の設定値に一定比率を乗じて求めた値であっても良い。
【0058】
更に、本ステップでは、マスクプレート102及びプリント基板101間のクリアランスが少なくなるように、設定値を変更する。ここで、実際のスクリーン印刷装置においては、マスクプレート102の反り等によって、マスクプレート102の端部側がプリント基板101から僅かに浮き上がる場合がある。そのような場合、スキージング中のスキージ2は、中央部2bより端部2cの方が大きな抵抗を受け、撓り度合いが大きくなり易い。これに対して、マスクプレート102とプリント基板101とのクリアランスを減らす方向に調整することで、プリント基板101に対するマスクプレート102の密着度が高まる。その結果、スキージ2の端部2cにおける撓り度合いを、中央部2bにおける撓り状態に近づけることが可能となる。尚、本ステップにおいて、クリアランスの設定値の減少量は一定値であっても良いし、現在の設定値に一定比率を乗じて求めた値であっても良い。
【0059】
尚、スキージ観察装置1においては、プリント基板101及びマスクプレート102の代わりにガラス基板7が設置されている。そこで、プリント基板101に対するマスクプレート102の密着度を変更した状態を、スキージ観察装置1において再現するには、支持枠3bに対するガラス基板7の固定度、密着度を変更すると良い。具体的には、支持枠3bに対してガラス基板7を固定するクランパ(図示せず)の締め付け具合を調整すると良い。
【0060】
ステップS104が終了すると、ステップS105に進み、撓り検証処理を再実施して、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseを取得する。そして、ステップS106では、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が、適正範囲に含まれているか否かを判定する。ステップS106で肯定判定された場合、特に印刷条件のパラメータを変更せずに、そのまま本フローを終了する。
【0061】
一方、ステップS106で否定判定された場合、ステップS107においてスキージ速度の設定値を変更する。具体的には、端部スキージ角度θseが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ速度の設定値を速くする。一方、端部スキージ角度θseが適
正範囲の下限値よりも小さい場合には、スキージ速度の設定値を遅くする。これにより、撓り検証処理を再実施した場合に、端部スキージ角度θseが適正範囲に収まる可能性が高くなる。尚、スキージ速度の設定値を変更する際の増減値は、予め定めておく一定値であっても良いし、現在の設定値に一定比率を乗じて求めた値であっても良い。
【0062】
ステップS108では、撓り検証処理を再実施して、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseを取得する。そして、ステップS109では、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が、適正範囲に含まれているか否かを判定する。ステップS109で肯定判定された場合、特に印刷条件のパラメータを変更せずに、そのまま本フローを終了する。
【0063】
一方、ステップS109で否定判定された場合、ステップS110においてスキージ仕様(材料、寸法等)を変更する。具体的には、端部スキージ角度θseが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ2の厚さがより薄くなるように材料寸法を変更したり、曲げ強度がより低くなるように使用材料を変更する。一方、端部スキージ角度θseが適正範囲の下限値よりも小さい場合には、厚さがより厚くなるように材料寸法を変更したり、曲げ強度がより高くなるように使用材料を変更する。本ステップが終了すると、本フローを終了する。
【0064】
次に、ステップS111について説明する。ここでは、少なくとも中央部スキージ角度θsmが適正範囲から外れている。この場合、スキージ圧の設定値を変更する。中央部スキージ角度θsmが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ圧の設定値を高くする。一方、中央部スキージ角度θsmが適正範囲の下限値よりも小さい場合には、スキージ圧の設定値を低くする。これにより、撓り検証処理を再実施した場合に、中央部スキージ角度θsmが適正範囲に収まる可能性が高くなる。
【0065】
ステップS112では、撓り検証処理を再実施して、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseを取得する。そして、ステップS113では、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が、適正範囲に含まれているか否かを判定する。ステップS113で肯定判定された場合、特に印刷条件のパラメータを変更せずに、そのまま本フローを終了する。
【0066】
一方、ステップS113で否定判定された場合、ステップS114においてスキージ速度の設定値を変更する。具体的には、中央部スキージ角度θsmが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ速度の設定値を速くする。一方、中央部スキージ角度θsmが適正範囲の下限値よりも小さい場合には、スキージ速度の設定値を遅くする。これにより、撓り検証処理を再実施した場合に、端部スキージ角度θseが適正範囲に収まる可能性が高くなる。尚、スキージ速度の設定値を変更する際の増減値は、予め定めておく一定値であっても良いし、現在の設定値に一定比率を乗じて求めた値であっても良い。
【0067】
ステップS115では、撓り検証処理を再実施して、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseを取得する。そして、ステップS116では、中央部スキージ角度θsm及び端部スキージ角度θseの双方が、適正範囲に含まれているか否かを判定する。ステップS116で肯定判定された場合、特に印刷条件のパラメータを変更せずに、そのまま本フローを終了する。
【0068】
一方、ステップS116で否定判定された場合、ステップS117においてスキージ仕様(材料、寸法等)を変更する。具体的には、中央部スキージ角度θsmが適正範囲の上限値を超えている場合には、スキージ2の厚さがより薄くなるように材料寸法を変更したり、曲げ強度がより低くなるように使用材料を変更する。一方、中央部スキージ角度θs
mが適正範囲の下限値よりも小さい場合には、厚さがより厚くなるように材料寸法を変更したり、曲げ強度がより高くなるように使用材料を変更する。本ステップが終了すると、本フローを終了する。
【0069】
上記フローにて示したように、印刷条件パラメータの設定変更は、例えば、スキージ圧の変更、スキージ速度の変更、スキージ仕様(材料、寸法等)の変更等を挙げることができる。本実施形態では、設定変更を行う印刷条件パラメータに優先順位を設けるようにした。ここで、優先順位の高いパラメータから並べると、スキージ圧、スキージ速度、スキージ仕様の順になる。
【0070】
スキージ仕様の変更は、スキージ2に用いる材料や寸法の変更を伴うため、手間やコスト等が掛り易い。そのため、スキージ仕様の変更については、スキージ圧やスキージ速度に比べて、その優先順位を低く設定している。次に、スキージ圧の変更とスキージ速度の変更とを比較すると、スキージ速度を変更する方がスキージ2の撓り度合いを微調整することが可能である。但し、スクリーン印刷時におけるスキージ速度を過剰に速くすると、マスクプレート102に係る印刷開口102aへのソルダーペースト105の充填性が悪化し易くなる。そのため、本実施形態では、スキージ速度よりに比べて、スキージ圧を変更する優先順位を高くすることとした。
【0071】
以上のように、このパラメータ選定方法によれば、撓り検証処理により取得した撓りスキージ角度θsが適正範囲にあるか否かの判定結果に基づき、スクリーン印刷に係る最適な印刷条件を見出すことができる。その結果、スクリーン印刷時に、ソルダーペースト105をスキージ2によって適正な押し込み力にて押し込むことができる。よって、ソルダーペースト105の供給量がばらつくことを抑制できる(図12、右列を参照)。
【0072】
尚、上述した印刷条件パラメータの選定方法については、スキージ観察装置1の制御装置11が、各ステップに係る処理をプログラムに従って実行することで実現されても良い。
【0073】
また、上記ステップS106(S116)において否定判定された場合、現在のスキージ圧の設定値を更に変更しても問題ないと判断される場合には、ステップS104(S111)に戻っても良い。例えば、スキージ圧の設定値と初期値との差が所定の閾値を超えない範囲で、スキージ速度の変更に優先してスキージ圧の設定値の変更を行っても良い。同様に、ステップS109(S113)において否定判定された場合、現在のスキージ速度の設定値を更に変更しても問題ないと判断される場合には、ステップS107(S114)に戻っても良い。例えば、スキージ速度の設定値と初期値との差が所定の閾値を超えない範囲で、スキージ仕様の変更に優先してスキージ速度の設定値の変更を行っても良い。
【0074】
<実施形態2>
次に、実施形態2では、主としてスキージの他の構成例について説明する。スキージ観察装置1の基本的なハードウェア構成は実施形態1と同様である。実施形態1と共通する構成については同じ符号を付すことにより、その説明を適宜省略する。実施形態2については、実施形態1の変形例で述べたように、スキージ2のスキージング中のスキージ画像(以下、「スキージング画像」という。)に加えて、初期状態のスキージ画像(以下、「初期状態画像」という。)を取得する。スキージ2の初期状態とは、図8(左図、破線)に示すように、スキージ2がガラス基板7に当接する前の状態を指す。また、実施形態2においても、スキージ観察装置1における初期スキージ角度θiは、実施形態1と同様、例示的に60°に設定されている。
【0075】
〈スキージの第2構成例〉
図13は、スキージの第2構成例を示す図である。第2構成例に係るスキージを、以下では符号2Aにて表す。図13は、スキージ2Aのスキージ面2dを正面として眺めた状態を示している。同図には、スキージ2Aの先端縁部2a側の部分拡大図を併せて示す。図13に示すスキージ2Aと、図9に示すスキージ2の相違点は、スキージ面2dに設けられた平行表示線21のうち、一組の平行表示線21aが他の平行表示線21bと識別(区別して視認)可能に強調表示された態様で設けられている点にある。
【0076】
以下では、強調表示された一組の平行表示線21aを、特に「強調平行表示線」と称する。また、強調表示されていない平行表示線21bを、特に「一般平行表示線」と称する。図13に示す例では、強調平行表示線21aは、一般平行表示線21bとは異なる色で印刷されている。これによって、強調平行表示線21aと一般平行表示線21bとを識別することができる。但し、強調平行表示線21aを一般平行表示線21bと識別するための強調表示の方法としては、印刷色を相違させることに限定されない。例えば、強調平行表示線21aと一般平行表示線21bとで線種を相違させたり、表示線の太さを相違させる等、種々の方法を採用することができる。
【0077】
次に、強調平行表示線21aの技術的意義について述べる。例えば、スクリーン印刷の際には、スキージ面2dの或る特定領域(以下、「撓り検証対象領域」という。)でのスキージ角度θsを、適正範囲(例えば、52±3°)に収めたいという要求があるとする。ここでは、撓り検証対象領域を、例えば先端縁部2aから10mmの領域として設定する。スキージ面2dにおいて、特定の撓り検証対象領域におけるスキージ角度θsを検証したい場合、撓り検証対象領域の境界(上端、下端)に対応する部分の平行表示線を強調平行表示線21aとして設ける。上記条件の場合、撓り検証対象領域の幅は10mmに設定されているので、強調平行表示線21a同士の間隔(距離)も10mmに設定されている。尚、各平行表示線21(強調平行表示線21a、一般平行表示線21bを区別せず)同士の現実印刷間隔Cは、第1構成例のスキージ2と同様に、例えば1mmとしている。上記した撓り検証対象領域の幅や平行表示線21の現実印刷間隔Cの数値は、例示的なものである。
【0078】
図14は、第2構成例に係るスキージ2Aのスキージ画像を表示装置12に表示させた図である。画面12aの左側に初期状態スキージ画像を表示し、右側にスキージ2Aの撓り状態スキージ画像を表示している。尚、図示の例では、画面12aに、スキージ2の中央部2bと端部2cの何れか一方におけるスキージ画像を表示させているが、使用者からの画像切り替え要求を受け付けた場合には、他方のスキージ画像に表示を切り替えても良い。これは、後述する他の構成例についても同様である。
【0079】
まず、スキージ2Aが初期状態にあるときの初期状態スキージ画像について説明する。初期状態スキージ画像に映った平行表示線21(ここでは、強調平行表示線21aと一般平行表示線21bを区別せず)の画像表示間隔X2は、数式(2)によって算出できる。この場合、数式(2)のCに1、θiに60を代入することで、画像表示間隔X2を0.5mmとして算出できる。図示の例でも、初期状態スキージ画像に映し出されている平行表示線21の間隔は0.5mmとなっており、また、一組の強調平行表示線21a同士の間隔(図中、X2´で示す。)は5.0mmとなっている。
【0080】
次に、画面12aの右側に表示する撓り状態スキージ画像について説明する。第1構成例に係るスキージ2の場合と同様、撓り状態スキージ画像から平行表示線21の画像表示間隔X1を読み出すことで、数式(1)に基づいて撓りスキージ角度θsを求めることができる。
【0081】
次に、第1構成例に係るスキージ2との構成上の差異点がもたらす作用効果を説明する。スキージ2Aでは、一組の強調平行表示線21aを設けるようにしたので、各強調平行表示線21aに挟まれた撓り検証対象領域におけるスキージ角度θsを以下のように容易に求めることができる。すなわち、使用者は、強調平行表示線21a同士の間隔を撓り状態スキージ画像から読み出す。スキージ2Aの撓り検証対象領域において、撓りスキージ角度θsの適正範囲が例えば49〜55°であるとする。この場合、数式(1)のθsに49と55を、Cに1を代入することで、撓りスキージ角度θsの適正範囲に対応する強調平行表示線21a同士の間隔X1´を、5.7〜6.6mmとして算出できる。したがって、使用者は、撓り状態スキージ画像から読み出した強調平行表示線21a同士の間隔が、上記適合範囲(上記例では、5.7〜6.6mm)に含まれているか否かを確認すれば良い。
【0082】
以上のように、第2構成例に係るスキージ2Aでは、一組の強調平行表示線21aを一般平行表示線21bと識別可能に強調表示したので、撓り検証対象領域に関して、撓り度合いの適正度の検証が一層容易なものとなる。
【0083】
〈スキージの第3構成例〉
図15は、スキージの第3構成例を示す図である。第3構成例に係るスキージを符号2Bにて表す。図15は、スキージ2Bのスキージ面2dを正面として眺めた状態を示している。同図には、スキージ2Bの先端縁部2a側の部分拡大図を併せて示す。以下、上述までの構成例との相違点を中心に説明する。
【0084】
図15に示すように、スキージ面2dの先端縁部2a側の部位には、先端縁部2aに対して斜めに伸びる直線状の斜め表示線22が形成されている。また、スキージ2Bにおいては、平行表示線21が、斜め表示線22上における異なる少なくとも2箇所から先端縁部2aに対して平行に伸びている。また、2本の平行表示線21は何れも、斜め表示線22の端部ではない中途部に接続されている。また、図15に示す例では、一の斜め表示線22に対して2本の平行表示線21が接続されているが、斜め表示線22と平行表示線21は交差していても良い。更に、一の斜め表示線22に対して、3本以上の平行表示線21が斜めに接続又は交差する態様であっても良い。
【0085】
ここで、一の斜め表示線22と、その斜め表示線22から互いに平行に伸びる2本の平行表示線21を模様の一単位として説明する。平行表示線21が設けられる位置(高さ)は、スキージ2Aの強調平行表示線21aと同様、撓り検証対象領域の上端及び下端の高さに一致させている。
【0086】
次に、撓り検証処理において、スキージ2Bをカメラ10a,10bが撮像して得たスキージ画像について説明する。図16は、第3構成例に係るスキージ2Bのスキージ画像を表示装置12に表示させた図である。画面12aの左側にスキージ2Bの初期状態スキージ画像を表示し、右側にスキージ2Bの撓り状態スキージ画像を表示している。
【0087】
初期状態スキージ画像を参照すると、初期状態におけるスキージ2Bは撓っていないため、斜め表示線22の直線性は維持されている。一方、撓り状態スキージ画像を参照すると、斜め表示線22の直線性が失われているのが判る。これは、スキージング動作によってスキージ2Bが撓ることに起因するものである。また、撓り状態スキージ画像に映し出される平行表示線21の画像表示間隔は、初期状態スキージ画像と比較して、幅が広がっている。
【0088】
ここで、2本の平行表示線21によって挟まれる領域は、スキージ2Bの撓り検証対象領域に対応する。したがって、本構成例に係るスキージ2Bの場合においても、使用者は
、撓り状態スキージ画像から平行表示線21同士の間隔を読み出すと良い。そして、読み出した平行表示線21同士の間隔が、撓り検証対象領域に要求される撓りスキージ角度θsの適正範囲(例えば、49〜55°)に対応する数値範囲(この例では、5.7〜6.6mm)に含まれているか否かを確認すれば良い。これにより、スキージ2Bの撓り検証対象領域に関して、スキージング中における撓り量が適正であるかどうかを検証することができる。
【0089】
また、斜め表示線22と下方の平行表示線21とがなす角度θdが、初期状態スキージ画像に示す角度(以下、「表示線接続角度」という)よりも撓り状態スキージ画像に示す角度の方が大きくなっているのが判る。図示の例では、例えば、初期状態における表示線接続角度θdが60°、スキージング中における表示線接続角度θdが65.8°となっている。このように、スキージング中における表示線接続角度θdが初期状態よりも大きくなるのは、スキージ2Bが撓ることに起因する。一方、斜め表示線22に対する各平行表示線21の接続部同士の水平距離(図中、符号Yで表し、以下では「接続部水平距離」という。)は、両図において互いに一致する。
【0090】
そこで、撓り状態スキージ画像から、表示線接続角度θd2と接続部水平距離Yを読み出し、双方の読み出し値に基づいて平行表示線21同士の画像表示間隔X1を算出しても良い。具体的には、数式(3)に基づいて平行表示線21同士の画像表示間隔X1を算出できる。
X1=Y×tanθd・・・(3)
【0091】
例えば、撓り状態スキージ画像から読み出した接続部水平距離Yが2.9mm、表示線接続角度θdが65.8°であったとする。この場合、数式(3)にこれらの値を代入することで、平行表示線21同士の画像表示間隔X1を6.5mmとして算出することができる。この場合、平行表示線21同士の間隔X1が、撓りスキージ角度θsの適正範囲に対応する数値範囲(この例では、5.7〜6.6mm)に収まっているため、スキージ2Bの撓り状態が適正であると判断できる。もっとも、撓り状態スキージ画像から読み取れる接続部水平距離Yの値は、スキージ面2d上における実寸法とも一致する。そのため、接続部水平距離Yに関しては、既知の値として予め用意しておけば良く、表示線接続角度θdだけを画像から読み出しても良い。これにより、スキージング中におけるスキージ2Bの撓り度合いの適正度を、より容易に検証できる。
【0092】
以上のように、第3構成例のスキージ2Bによれば、先端縁部2aに対して斜めに伸びる直線状の斜め表示線22と、この斜め表示線22から先端縁部2aに沿って平行に伸びる2本の平行表示線21を、スキージ面2dに設けた。これによれば、斜め表示線22の歪み具合に基づいて、スキージ2Bの撓り度合いの適正度を検証することができる。
【0093】
また、撓り状態スキージ画像から平行表示線21同士の間隔を直接読み取る手法と、表示線接続角度θdを読み出してから上記間隔を算出する手法の何れを採用しても、スキージ2Bの撓り状態の適正度を検証できる。つまり、スキージ2Bの撓り状態を検証する手法の選択枝を増やすことができる。また、双方の手法に基づいてスキージ2Bの撓り状態の適正度を検証することで、検証結果の信頼性を高めることが可能となる。
【0094】
〈スキージの第4構成例〉
図17は、スキージの第4構成例を示す図である。第4構成例に係るスキージを符号2Cにて表す。図17は、スキージ2Bのスキージ面2dを正面として眺めた状態を示している。同図には、スキージ2Cの先端縁部2a側の部分拡大図を併せて示す。
【0095】
スキージ2Cのスキージ面2dに形成された模様は、第1〜第3構成例を組み合わせた
模様に概ね等価である。すなわち、スキージ面2dの先端側には、先端縁部2aと平行な多数の平行表示線21が設けられている。また、各平行表示線21に対して、斜めから交差する複数の斜め表示線22が設けられている。また、平行表示線21のうち、スキージ面2dにおける撓り検証対象領域の上端と下端に位置する線を強調平行表示線21aとし、一般平行表示線21bと識別可能に強調表示している。
【0096】
図18は、第4構成例に係るスキージ2Cのスキージ画像を表示装置12に表示させた図である。画面12aの左側にスキージ2Cの初期状態スキージ画像を表示し、右側にスキージ2Bの撓り状態スキージ画像を表示している。スキージング中にスキージ2Cが撓ることによって、各平行表示線21同士の間隔が、初期状態に比べて広がることは既に述べた通りである。したがって、第1構成例において述べたように、撓り状態スキージ画像から平行表示線21の画像表示間隔X1を読み取り、数式(1)に基づいて、平行表示線21の任意箇所毎の撓りスキージ角度θsを算出することができる。
【0097】
また、本構成例では、平行表示線21に加えて、第3構成例で述べた斜め表示線22をスキージ面2に設けているので、スキージ2Cの撓り箇所を判断し易い。これは、スキージ2Cが撓っている箇所で、斜め表示線22の直線性が失われるからである。そして、撓り状態スキージ画像から表示線接続角度θdを読み取り、数式(3)に表示線接続角度θdを代入することで、平行表示線21の任意箇所毎の撓りスキージ角度θsを算出できる。その際、数式(3)に代入する接続部水平距離Yは、読み取った表示線接続角度θdに対応する一対の平行表示線21が斜め表示線22と接続される接続部同士の水平間距離である。
【0098】
更に、スキージ2Cによれば、スキージ面2dにおける撓り検証対象領域の上端と下端に位置する線を強調平行表示線21aとしている。そのため、使用者は、撓り検証対象領域におけるスキージ角度θsを、撓り状態スキージ画像から読み取った強調平行表示線21a同士の間隔、或いは、対応する表示線接続角度θdに基づいて、容易に求めることができる。したがって、スキージ2Cにおける撓り検証対象領域での撓り状態を、容易に検証することができる。
【0099】
〈スキージの第5構成例〉
図19は、第5構成例に係るスキージ2D及びバックアッププレート104の斜視図である。スキージ2Dは、図6に示した第1構成例に係るスキージの構成と概ね同様である。すなわち、スキージ2Dのスキージ面2dには、所定の模様として、先端縁部2aと平行な複数の平行表示線21が設けられている。平行表示線21は、スキージ面2dの幅方向の全範囲に亘って設けられており、また、各平行表示線21は等間隔に設けられている。図6に示すスキージ2との相違点は、平行表示線のうちの1本(強調平行表示線21a)が、他の平行表示線(一般平行表示線21b)と識別可能に強調表示された態様で設けられている点にある。ここでは、強調平行表示線21aを強調表示する方法として、一般平行表示線21bと異なる色で強調平行表示線21aを印刷しているが、双方の線種や線太さを相違させても良い。尚、強調平行表示線21a及び一般平行表示線21bを区別して言及する必要が無い場合には、これらを総称して平行表示線21と呼ぶ。
【0100】
次に、バックアッププレート104について説明する。バックアッププレート104は、スキージ2の背面に位置する本体プレート部104Aと、本体プレート部104Aの両端に配置される側方プレート部104Bとを有する。本体プレート部104Aの幅は、スキージ2の長手方向の長さと等しい。したがって、本体プレート部104Aの両端部に配置される側方プレート部104Bは、スキージ2の端部2cよりも外側に突出するように配置されている。また、側方プレート部104Bの下端は、本体プレート部104Aよりも下方に延伸(突出)している。尚、図19において、スキージホルダ103の図示を省
略している。また、図19において、側方プレート部104Bを鎖線で表している。
【0101】
本構成例においては、図示のスキージ2及びバックアッププレート104をスキージホルダ103に装着して、撓り検証処理に係るスキージ2のスキージングを行う。図20は、第5構成例に係るスキージ2の撓り度合いの検証方法を説明する説明図である。図中の左側には、初期状態におけるスキージ2及び初期状態スキージ画像を示す。また、図中の右側には、スキージング中におけるスキージ2及び撓り状態スキージ画像を示す。尚、各画像内における上下方向は、スキージ面2dの上下方向に対応している。
【0102】
側方プレート部104Bの底面110には、スキージ2の撓り量の適正範囲を示す上限基準線111と下限基準線112が設けられている。この上限基準線111と下限基準線112は、初期状態スキージ画像及び撓り状態スキージ画像内に示す。尚、図示の各スキージ画像は、第1カメラ10aによってスキージ2の端部2cを撮像したものである。尚、底面110において、上限基準線111と下限基準線112に挟まれることで画定される領域を基準範囲113と称呼する。この基準範囲113は、撓り状態スキージ画像において、スキージ面2dに印刷された強調平行表示線21aと照合されることで、スキージ2Dの撓り量の適正度が判断される。
【0103】
側方プレート部104Bの底面110における基準範囲113と、スキージ2Dのスキージ面2dに印刷された強調平行表示線21aとの相対関係について説明する。図20の初期状態スキージ画像に示すように、初期状態においては、スキージ面2dの強調平行表示線21aが、側方プレート部104Bの基準範囲113に含まれないように、双方の位置関係が設定されている。
【0104】
次に、スキージ2Dのスキージングが開始されると、スキージ2Dが撓る結果、平行表示線21の間隔が広がる。したがって、初期状態からスキージング状態に移行すると、スキージ面2dに印刷された強調平行表示線21aは、スキージ画像内の下方に向かって移動する。
【0105】
図21は、強調平行表示線21aの移動量Dtと、撓りスキージ角度θsとの関係を示す図である。強調平行表示線21aの移動量Dtとは、初期状態からスキージング状態に移行する際に、スキージ画像内の基準範囲113に対する強調平行表示線21aの相対移動量を指す。本構成例においても、撓りスキージ角度θsの適正範囲が例えば49〜55°に設定されているとする。図21中、上記適正範囲の下限値である49°に対応する強調平行表示線21aの移動量Dtは、例えば1.6mmとして読み出すことができる。また、撓りスキージ角度θsの適正範囲の上限値である55°に対応する強調平行表示線21aの移動量Dtは、例えば0.7mmとして読み出すことができる。ここで、撓りスキージ角度θsが小さいほど、スキージ2Dの撓り量は大きくなり、強調平行表示線21aの移動量Dtも大きくなる。また、撓りスキージ角度θsの適正範囲に対応する強調平行表示線21aの移動量Dtを「表示線適正移動量」と称する。
【0106】
側方プレート部104Bの上限基準線111は、初期状態スキージ画像内においてスキージ面2dに印刷された強調平行表示線21aとの離間距離(画像内上下方向)が表示線
適正移動量の下限値と一致するように、底面110に印刷されている。一方、側方プレート部104Bの下限基準線111は、初期状態スキージ画像内においてスキージ面2dに印刷された強調平行表示線21aとの離間距離が表示線適正移動量の上限値と一致するよ
うに、底面110に印刷されている。
【0107】
その結果、スキージング中における撓りスキージ角度θsが適正範囲内であれば、撓り状態スキージ画像内において、強調平行表示線21aが基準範囲113に含まれることに
なる。したがって、撓り状態スキージ画像に基づき、強調平行表示線21aが基準範囲1
13に含まれているか否かを確認するだけで、スキージ2Dの撓り量が適正であるかどうかを簡単に確認することができる。
【0108】
なお、本構成例では、スキージ2Dのスキージ面2dに、複数の平行表示線21を設けたので、第1構成例で述べたように、各平行表示線21の間隔の広がり方に基づいて、スキージ2Dの撓り量が適正であるかどうかを併せて検証しても良い。また、スキージ2Dにおいては、平行表示線21をスキージ面2dに複数本印刷しなくても構わない。例えば、基準範囲113(上限基準線111、下限基準線112)との位置関係が規定される単一の平行表示線を、スキージ面2dに印刷するようにしても良い。また、バックアッププレート104の側方プレート部104Bは、少なくとも本体プレート部104Aの一端に配置すれば良く、必ずしも両端に配置しなくても構わない。この場合、側方プレート部104Bが配置される側のスキージ2Dの端部2cに設けられた平行表示線21と、基準範囲113とを照合して、スキージ2Dの撓り状態を検証すれば良い。
【0109】
<実施形態3>
次に、実施形態3を説明する。図22は、実施形態3に係るスキージ観察装置1を説明するための図である。本実施形態に係るスキージ観察装置1は、プリント基板101にソルダーペースト105を供給する印刷機構を有する。つまり、実施形態3に係るスキージ観察装置1は、スクリーン印刷装置として捉えることが可能である。尚、上述までの実施形態と共通する装置、部材については同じ符号を付すことで、その詳しい説明を省略する。尚、本実施形態に係るスキージ2は、図6に示すスキージ2と同一である。
【0110】
図示のように、プリント基板101の上面には、マスクプレート102が載置されている。マスクプレート102は、プリント基板101のフットパターンに対応する位置に形成された印刷開口102aを有しており、印刷開口102aによってフットパターンが露出している。また、マスクプレート102のうち、印刷開口102aとは異なる位置に、3個のスキージ観察用開口114が形成されている。スキージ観察用開口114には、透明なガラス平板102bが嵌め込まれている。ガラス平板102bは、透明な平板材の一例として挙げられる。また、スキージ観察用開口114に嵌め込む部材は、透明な平板材であれば、ガラス平板とは異なる他の部材を採用しても良い。尚、マスクプレート102に形成される印刷開口102a及びスキージ観察用開口102bは、何れもマスクプレート102を貫通する貫通孔である。また、スキージ観察用開口114の詳細については後述する。マスクプレート102はマスク部材の一例として挙げられる。
【0111】
図22には図示を省略しているが、実施形態3に係るスキージ観察装置1においても、図5に示すように、印刷台3、印刷台駆動部4、スキージヘッド部5、スキージ駆動部6、カメラ10、制御装置11等を備えており、適宜、図5を参照することとする。また、本実施形態におけるカメラ10は、マスクプレート102の下方に配置されており、印刷台3の底部3cを平面方向に移動可能なスライド式カメラを採用している。
【0112】
実施形態3に係るスキージ観察装置1は、マスクプレート102の上面にソルダーペースト105を供給するペースト供給装置(図示せず)を備えている。制御装置11は、スキージ駆動部6を作動させることによって、スキージ2を、図中に示すスキージ方向Dsにスキージングさせる。その際、スキージ2は、マスクプレート102の上面に形成されている印刷開口102aにソルダーペースト105を充填しつつ移動する。これにより、印刷開口102aを通じて、プリント基板101のフットパターン上にソルダーペースト105が転写(印刷)される。
【0113】
次に、スキージ観察用開口114について説明する。各スキージ観察用開口114は、
スキージ2の中央部2b及び双方の端部2cがスキージング時に通過する位置に、設けられている。図中、114aで表す第1スキージ観察用開口は、スキージ2の中央部2bが真上を通過する位置に設けられている。図中、114bで表す第2スキージ観察用開口は、スキージ2の一方の端部(以下、「右端部」という)2cが真上を通過する位置に設けられている。114cで表す第3スキージ観察用開口は、スキージ2の他方の端部(以下、「左端部」という)2cが真上を通過する位置に設けられている。
【0114】
以上のように構成されるスキージ観察装置1では、プリント基板101にソルダーペースト105を印刷しながら、上述までの実施形態で説明した撓り検証処理を行い、スキージング中におけるスキージ2の撓り量の適正度を検証することが可能である。
【0115】
スキージ2の中央部2bについてスキージング中の撓り量を検証する場合、カメラ10を第1スキージ観察用開口114aの真下に配置する。これにより、ガラス平板102bを透して、スキージ2の中央部2bにおけるスキージ面2dを撮像できるので、中央部2bでの撓りスキージ角度θsを求めることができる。尚、スキージ面2dのうち、撓り量を検証したい部位がソルダーペースト105によって覆われてしまう場合、プリント基板101の上部をスキージ2が通過し終わった時点で、中央部2cにおけるソルダーペースト105を取り除くと良い。
【0116】
同様に、スキージ2の右端部又は左端部2c,2cについてスキージ2の撓り量を検証する場合、カメラ10を第2スキージ観察用開口114b、又は第3スキージ観察用開口114cの真下に移動させる。この状態で、スキージ2をスキージングさせることにより、スキージ2の端部2cにおける撓りスキージ角度θsを求めることができる。また、スキージ2の端部2cは、プリント基板101の上方を通過しないようになっている。したがって、第2及び第3スキージ観察用開口114b,114cに嵌め込まれたガラス平板102bを透してスキージ面2dを撮像するに当たり、撓り量を検証したい部位がソルダーペースト105によって覆われることがない。
【0117】
以上のように、本実施形態のスキージ観察装置1によれば、プリント基板101に対するソルダーペースト105の充填中、すなわち、製品の製造ライン中においても、スキージ2の撓り状態を観察することが可能となる。尚、本実施形態では、マスクプレート102に設けるスキージ観察用開口114bの数を3個としているが、その設置数を増やしても良いし、減らしても良い。また、本実施形態のスキージ観察装置1では、第1構成例に係るスキージ2を適用しているが、他の構成例に係るスキージ2A〜Dを適用しても良い。以上の各実施形態は、可能な限りこれらを組み合わせて実施する事ができる。
【符号の説明】
【0118】
1 スキージ観察装置
2,2A〜2D スキージ
2a 先端縁部
2b 中央部
2c 端部
2d スキージ面
7 ガラス基板
10,10a,10b カメラ
12 表示装置
12a 画面
21 平行表示線
21a 強調平行表示線
21b 一般平行表示線
22 斜め表示線
101 プリント基板
102 マスクプレート
103 スキージホルダ
104 バックアッププレート
105 ソルダーペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な平板材と、
前記平板材の上面に接するようにスキージを保持し、前記スキージを前記平板材の上面に沿ってスキージングさせるスキージ駆動手段と、
前記平板材の下方に配置されており、前記スキージング中の前記スキージを、前記平板材を透して撮像する撮像手段と、
を備え、
前記スキージのうち、前記スキージング中の進行方向側に面するスキージ面には、前記スキージの撓りに応じて変形する所定の模様が設けられていることを特徴とするスキージ観察装置。
【請求項2】
前記模様は、前記スキージ面の先端縁部と平行に設けられた複数の平行表示線、を有することを特徴とする請求項1に記載のスキージ観察装置。
【請求項3】
前記複数の平行表示線は、他の表示線と識別可能な態様で設けられている一組の表示線を有することを特徴とする請求項2に記載のスキージ観察装置。
【請求項4】
前記模様は、前記スキージ面の先端縁部に対して斜めに伸びる直線状の斜め表示線と、前記斜め表示線上の異なる少なくとも2箇所から前記先端縁部に対して平行に伸びる平行表示線と、を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のスキージ観察装置。
【請求項5】
前記スキージの背面に配置されたプレート部材と更に備え、
前記模様は、前記スキージ面の先端縁部と平行に設けられた平行表示線を含み、
前記プレート部材の長手方向における少なくとも一方の端部には、前記スキージの端部よりも外側に突出する側方プレート部が設けられており、
前記撮像手段は、前記スキージング中に前記スキージ面と共に前記側方プレート部の底面を撮像し、
前記側方プレート部の前記底面には、前記スキージ面に設けられた前記平行表示線と照合するための基準領域が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のスキージ観察装置。
【請求項6】
プリント基板と、
前記プリント基板の上面に配置され、前記プリント基板にペーストを供給するために形成された印刷開口、及び、スキージ観察用開口を有するマスク部材と、
を更に備え、
前記スキージ観察用開口には、前記透明な平板材が嵌め込まれ、
前記スキージは、前記マスク部材上に供給されたペーストを、スキージング動作によって前記印刷開口に充填し、
前記印刷開口に前記ペーストを充填している前記スキージの撓り状態を観察することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のスキージ観察装置。
【請求項7】
透明な平板材の上面に接するように且つ前記平板材の上面に沿って、スキージをスキージングさせるスキージング工程と、
前記スキージング中の進行方向側に面する前記スキージのスキージ面を、前記平板材の下方から前記平板材を透して撮像する撮像工程と、
を含み、
前記スキージング中の進行方向側に面するスキージ面には、前記スキージの撓りに応じて変形する所定の模様が設けられており、前記スキージング中における前記模様の変形を
観察することを特徴とするスキージ観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−76684(P2013−76684A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218303(P2011−218303)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】