説明

スキーブーツのソール

【目的】 スキー屈曲中にスキー締め具に生じる遊びを弾性的に回復可能とする、スキーブーツのソールの提供。
【構成】 ソールの爪先部材(2)及び踵部材(3)は、ブーツを構成するシェル(4)の端に滑動自在に関連づけられている。爪先部材と踵部材との間にはスプリング(19)及びカバー要素(14)が介在している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特にスキーブーツ用のソールに関する。
【0002】
【従来の技術】スキー運動において現在認められる問題は、ブーツの使用中にブーツの爪先と踵との間隔が固定されていることと、ブーツの爪先及び踵が、スキーに関連するスキー締め具の夫々と相互作用することとに起因して、雪面の窪みによりスキーが屈曲する度にスキー屈曲中のスキー締め具の位置変化を補償する必要が生じることである。
【0003】斯かる問題の部分的な解決策として、連結要素を僅かに滑動自在とするようにした内部装置を有するスキー締め具を用いて上記補償を行えるようにすることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スキー締め具の極めて小さいスペース内に多数の部品を含める必要があるので、斯かる解決策はコスト高であると共に設計が困難である。本発明の目的は、スキーに生じ得る屈曲中に、スキーに関連するスキー締め具とソールとの間の遊びを回復できるスキーブーツを提供することにより、上述の問題を解消することにある。
【0005】上述の目的の範囲内において、重要な目的は、極めて簡単な方法で互いに相互作用し部品点数が少ない部品を用いて、上記回復を達成可能な装置を提供することにある。別の重要な目的は、スキー締め具とは独立して上記遊びを回復可能とする装置を提供することにある。
【0006】更に別の目的は、使用上の信頼性及び安全性に富むと共に製造コストが低廉である装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の及び後述の説明から明かとなる目的は、シェルを備えるスキーブーツのソールにより達成されるもので、該ソールは爪先部材及び踵部材を備え、両部材の少なくとも一方が、少なくとも一つの弾発部材と、シェルに関連づけられたカバー部材とを介して、シェルの夫々の端に滑動自在に関連づけられることを特徴とする。
【0008】好ましくは、カバー要素には、爪先及び/又は踵に関連づけられた相補的形状のセンタリング手段のためのガイド手段が設けられる。更に、弾性圧縮可能な要素が、該要素の位置を調整するための手段と便宜に相互作用する。本発明の別の特徴および利点は、制限的にではなく添付図面に例として図示した特定的であって制限的ではない実施例の詳細な説明から明かになろう。
【0009】
【作用】ブーツを構成するシェルの端に滑動自在に関連づけられた爪先部材及び踵部材と、両部材間に介在する弾発部材及びカバー要素とを備えるソールは、スキー屈曲中にスキー締め具に生じる遊びを弾性的に回復可能とする。
【0010】
【実施例】添付図面を参照すると、参照符号1はソールを示し、該ソールは、2つの部材すなわち爪先部材2と踵部材3とによって構成されている。両部材は、通常のスキー締め具を用いた結合に便宜な標準的な寸法にされている。爪先部材2あるいは踵部材3のいずれか少なくとも一方は、スキーブーツのシェル4の夫々の端に滑動自在に関連づけられている。斯く関連づけられた部材は、シェル4の長手方向軸に沿って滑動するための適合型のガイド手段を更に有している。又、関連づけられた部材のストロークを制限するために、停止手段が設けられている。
【0011】爪先部材2及び/又は踵部材3は、好ましくはケース状に形成され、参照符号5,6及び7で示す一対または複数対のウィングが、長手方向側面において内方に突出して、ガイド手段を構成している。ウィングは、参照符号8及び9で示す相補形状のシートに配設可能である。該シートは、シェル4の両端に関して横方向および長手方向にかつシェルの下方に画成されている。
【0012】好ましくは、シェルは両端に横断タング10a及び10bを有し、爪先部材2及び/又は踵部材3の上方周縁11及び12がタングにおいて上方位置で滑動する。爪先部材2及び/又は踵部材3の長手方向延長部は、おおよそ足のソールの領域13において、カバー要素14を介設可能になっている。該領域13においてシェル4には適合型の凹部が設けられている。
【0013】カバー要素14には、例えばねじによって該要素をシェルに結合するための、適合型の孔15が設けられている。又、カバー要素14には、長手方向及び中央に画成されたボックスシート16等の適合型のガイド手段が、相補形状のセンタリング手段のために設けられている。センタリング手段は、互いに対向する面において爪先部材及び踵部材に関して長手方向及び軸方向に突出する第1ラグ17及び第2ラグ18によって構成されている。
【0014】爪先部材及び/又は踵部材をシェルに一旦関連づけると、スプリング19等の少なくとも一つの弾発部材を、第1ラグ17の端と第2ラグ18の端との間に画成される間隔内に介設できるようになる。本発明は以下のように使用されるものであって、爪先部材2及び/又は踵部材3をシェル4に関連づけ、爪先部材と踵部材との間に弾発部材を位置づけ、更に、カバー部材14をシェルに関連づける。次いで、踵部材及び/又は爪先部材に力が加わると、上述の様にして得たソール構造が、シェルに関して長手方向の軸に沿って移動可能となる。
【0015】実際、弾発部材により、踵部材及び/又は爪先部材がシェルに関して滑動可能となる。スキー中、スキーが雪面の不均一領域に遭遇して屈曲すると、斯かる条件が生じることがあり、ブーツの爪先及び踵に夫々連結されたスキー締め具の両端間の距離に変動を来す。
【0016】以上の説明から、本発明が企図する目的が本発明により達成可能であることが明かで、又、スキー中でのスキー締め具の位置変化を容易に弾性的に回復可能とすると共に極めて簡易かつ低コストで製造されるソール構造が提供されることが明かである。有用なことに、弾発部材は、第1ラグの端と第2ラグの端との間における弾発部材位置を調整可能とするのに適した手段と相互作用可能でもある。
【0017】ソールは、種々に変形可能であり、全ての変形例は本発明の発明概念内に入る。本発明の個々の部品を構成する材料及び寸法は、特定要件に従って最適にすることができる。
【0018】
【発明の効果】上述のように、本発明によるソールは、爪先部材及び踵部材の少なくとも一方が、少なくとも一つの弾発部材と、シェルに関連づけられたカバー部材とを介して、シェルの夫々の端に滑動自在に関連づけられるので、スキー屈曲中にスキー締め具とソールとの間の遊びを回復できる。又、上記回復を、極めて簡単な方法で互いに相互作用し部品点数が少ない部品を用いて達成可能で、又、スキー締め具とは独立して上記遊びを回復可能である。更に、本発明の装置は、使用上の信頼性及び安全性に富むと共に製造コストが低廉である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるソールの部分断面分解図である。
【図2】ソールの中間長手方向断面に沿う断面側面図である。
【図3】図2のIII−III 面に沿う断面正面図である。
【符号の説明】
1 ソール
2 爪先部材
3 踵部材
4 シェル
5,6,7 ウィング(ガイド手段)
8,9 相補形状のシート
10a,10b 横断タング
14 カバー部材
16 ボックスシート
17 第1ラグ
18 第2ラグ
19 スプリング(弾発部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シェルを備えるスキーブーツのソールにおいて、爪先部材及び踵部材を備え、前記爪先部材及び前記踵部材の少なくとも一方が、少なくとも一つの弾発部材と、前記シェルに関連づけられたカバー部材とを介して、前記シェルの端に滑動自在に関連づけられていることを特徴とするスキーブーツのソール。
【請求項2】 前記爪先部材及び前記踵部材の少なくとも一つには、前記シェルに関して長手方向である軸に沿って滑動するための適合型のガイド手段と、そのストロークを停止するための手段とが設けられていることを特徴とする請求項1のスキーブーツのソール。
【請求項3】 前記爪先部材及び前記踵部材はケース状に形成され、各該部材の内側において少なくとも一対のウィングが長手方向側面において突出していることを特徴とする請求項2のスキーブーツのソール。
【請求項4】 前記少なくとも一つのウィングは、少なくとも一つの端に関して横方向及び長手方向にかつ前記シェルの下方に画成された相補形状のシートに配設されていることを特徴とする請求項3のスキーブーツのソール。
【請求項5】 前記シェルは、その少なくとも一端に横断タングを有し、前記部材の上方周縁が前記横断タングにおいて上方位置で滑動することを特徴とする請求項4のスキーブーツのソール。
【請求項6】 前記爪先部材及び前記踵部材の長手方向延長部は、およそ足のソールの領域に前記カバー要素を介在可能とするようにされていることを特徴とする請求項5のスキーブーツのソール。
【請求項7】 前記カバー要素にはガイド手段が設けられ、前記ガイド手段は、互いに対向する面において前記爪先部材及び前記踵部材において長手方向及び軸方向に夫々突出する第1ラグ及び第2ラグにより構成される相補形状のセンタリング手段についての、長手方向中央に画成されるボックスシートにより構成されることを特徴とする請求項6のスキーブーツのソール。
【請求項8】 前記弾発部材は、前記第1ラグの端と前記第2ラグの端との間に画成される間隔に介在するスプリングを備えることを特徴とする請求項7のスキーブーツのソール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−209803
【公開日】平成6年(1994)8月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−227014
【出願日】平成4年(1992)8月26日
【出願人】(591007767)
【氏名又は名称原語表記】NORDICA SOCIETA PER AZIONI