説明

スキー及びスノーボード

【課題】 雪面上でも人工スキー場のスキー用マット上でも使用可能なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードを提供すること。
【解決手段】
本発明は、雪面上での滑走性能に優れた合成樹脂からなる主滑走面1と、当該主滑走面1を構成する合成樹脂より耐熱性に優れた補強材からなり、前記主滑走面1と両側縁のエッジ2との間においてエッジ2と接して設けられた補強滑走面3とを備えたスキー10及びスノーボードであって、前記補強滑走面3は、滑走者による荷重によってスキー及びスノーボードが平坦な状態となる接雪部と対応してその接雪部の長さSの少なくとも90%以上の長さL1に亘って設けられており、かつ、当該補強滑走面3の幅L2は10〜30mmであることを特徴とするスキー10及びスノーボードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキー及びスノーボードに関するものであって、より詳細には、雪面上でも人工スキー場のスキー用マット上でも使用可能なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雪面上を滑走するには雪面上を滑走するのに適した滑走面を備えた冬用のスキー及びスノーボードを使用し、夏に人工スキー場のスキー用マット上を滑走するには合成樹脂製のスキー用マット上を滑走するのに適した滑走面を備えた夏用のスキー及びスノーボードを使用している。
【0003】
冬用のスキー及びスノーボードの滑走面は、ワックス浸透性に優れ、かつ、雪や氷が付着して凍結することのない材料から構成する必要があり、ポリエチレン樹脂がこれらの条件を満たし軽量で安価に入手できることから、冬用のスキー及びスノーボードの滑走面として一般的に広く用いられている。
【0004】
そして、雪面上を滑走するのに適した冬用のスキー及びスノーボードにて夏にスキー用マット上を滑走すると、滑走面が損傷し、すぐに雪面上での使用に適さなくなってしまうという問題がある。
なお、図5に示すように、人工スキー場のスキー用マット(プラスキー)40は、一般的にポリエチレン樹脂製又はポリアミド樹脂製であり、高さ20〜30mm程度の棒状突起41を備えたものが一般的である。
【0005】
この滑走面の損傷箇所について調査すべく、図5に示すようにポリエチレン樹脂製の棒状突起41を立設したスキー用マット40上を外気温10〜22℃の条件下で一般的な冬用のスキーで200m滑走したところ、滑走面42の損傷は、硬い平坦な床面上で滑走者による荷重を中央部に加えた場合にスキー及びスノーボードが床面に沿って平坦な状態となる部分(本明細書中において「接雪部」という。)に対応するエッジの近傍に発生していることが認められた。
【0006】
そこで、この滑走面の損傷の原因について詳細に検討すべく、滑走直後の滑走面の温度を調査したところ、接雪部と対応するスキーのエッジ近傍の温度が70℃〜100℃に達していることが認められた。従って、滑走中において最も高温となるエッジと接する滑走面の温度は130℃〜140℃程度まで上昇しているものと考えられる。
【0007】
一方、一般的な冬用のスキーの滑走面を構成するポリエチレン樹脂の融点について確認したところ、高くても135℃程度であり、滑走面が140℃に達すると滑走面が著しく溶融して損傷することが確かめられた。
上記の試験結果から、図5に示すようにターンの際に滑走面42がスキー用マット40の棒状突起41と強く接することで生じる摩擦熱によって滑走面42のポリエチレン樹脂が溶けてしまうことが主たる原因であることが判明した。
【0008】
一方、合成樹脂製のスキー用マットとの摩擦に耐えられる夏用のスキー及びスノーボードとしては、滑走面の強度を高めるために滑走面を全てステンレスなどの金属板で被覆したり金属メッキを施したものが提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら、滑走面を全てステンレスの金属板で被覆した現在市販されている夏用のスキーは、一般的な冬用のスキーより硬く、また、冬用のスキーより約40%も重いものになっている(本明細書中の表2及び表3参照)。
【0009】
従って、1)特に初心者にとってはそれらのスキー及びスノーボードを雪面上で使用するのは難しいという問題や、2)それらのスキー及びスノーボードを雪面上で使用すると、金属製の滑走面に雪や氷が付着して凍結し、滑走が困難になるといった問題がある。
【0010】
また、滑走面の強度を高めて滑走面の損傷を防ぐために、先端部のみを金属化したスキーが提案されているが、先端部以外の滑走面が合成樹脂製であるため、夏にスキー用マット上を滑走する際に生じる滑走面の損傷に対処できるものではない(特許文献3)。
【0011】
さらに、金属製のレールの上を滑ることをも意図したパーク用スキーとして現在市販されているものとして、図6に示すように、金属製のレールと接するスキー50の中央部付近のエッジ2と隣接してセラミック製の補強材51を滑走面52に設けたものが提案されている。なお、この補強材51の全長は、スキー全体の長さの約30%程度である。
【0012】
しかしながら、かかるパーク用スキーは、あくまでも冬用のスキーであって、補強材51が設けられていない大半の滑走面52が雪面上の滑走に適したポリエチレン樹脂から構成されており、やはり夏にスキー用マット上を滑走する際に生じる滑走面の損傷に対処できるものではない。
【0013】
上記のように、冬用のスキー及びスノーボードと夏用のスキー及びスノーボードの滑走面は、その構造及び特性が異なっているため互いに互換性を有するものではなく、従来、冬に雪面上を滑走し、夏に人工スキー場のスキー用マット上を滑走するには、2つの異なる用途に適した冬用のスキー及びスノーボードと、夏用のスキー及びスノーボードとを別個に用意する必要がある。
【0014】
従って、1)両者を揃えるのには費用的な負担が大きい、2)両者を保管するのは住宅事情からも不便である、3)冬用のスキー及びスノーボードとの特性の違いが非常に大きいため、冬用のスキー及びスノーボードを雪面上で使用する場合に備えた練習として夏用のスキー及びスノーボードをスキー用マット上で使用するのは適当ではないという問題があった。
【0015】
スキー及びスノーボードのレンタル業務を行う際においても、冬用と夏用のスキー及びスノーボードを購入する必要があるといった不都合、及び、冬用と夏用のスキー及びスノーボードの保管場所を確保する必要があるといった不都合を生じている。
【0016】
なお、滑走面を高強度のポリアミド樹脂から構成し、軽量化した夏用のスキーが市販されているが、かかるスキーは滑走時の摩擦抵抗を減ずるために滑走面に網目状の凹凸形状を形成しており、雪面上での滑走に適したものではなく、また、夏にスキー用マット上を滑走した場合に滑走面の損傷を完全に防ぐことはできないという問題があった。
【0017】
その理由は、ポリアミド樹脂の融点が175℃程度であり、ターンの際にスキー用マットの棒状の突起と強く接することで生じる摩擦熱によって滑走面の樹脂が軟化するためであると考えられる。
さらに、ポリアミド樹脂はワックス浸透性に欠け、高価であるとか、低温下で割れ易いという問題もある。
【0018】
そこで、スキー及びスノーボードの滑走面全体を耐熱性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂から構成することも考えられる(本発明との比較例として本明細書中の表3に記載)。しかしながら、かかるスキー及びスノーボードにおいても、ワックスの浸透性が悪いため、雪面上の滑走性能が劣ってしまうという問題がある。
従って、雪面上での滑走性に優れ、かつ、夏に人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードは実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実用新案登録第3036255号公報
【特許文献2】特開平11−164930号公報
【特許文献3】実開昭62−90673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、冬に雪面上を滑走し、夏に人工スキー場のスキー用マット上を滑走するには、冬用のスキー及びスノーボードと、夏用のスキー及びスノーボードとを別個に用意する必要があることであって、本発明の目的は、雪面上での滑走性に優れ、かつ、夏に人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、「雪面上での滑走性能に優れた合成樹脂からなる主滑走面と、当該主滑走面を構成する合成樹脂より耐熱性に優れた補強材からなり、前記主滑走面と両側縁のエッジとの間においてエッジと接して設けられた補強滑走面とを備えたスキー及びスノーボードであって、
前記補強滑走面は、滑走者による荷重によってスキー及びスノーボードが平坦な状態となる接雪部と対応してその接雪部の長さの少なくとも90%以上の長さに亘って設けられており、かつ、当該補強滑走面の幅は10〜30mmであるスキー及びスノーボード。」を最も主要な特徴とするものである。
【0022】
本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記主滑走面は、ポリエチレン樹脂からなり、前記補強滑走面は、融点が200℃以上の合成樹脂又は金属から構成されていてもよい。
特に、前記補強滑走面は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アルミ合金、チタン合金又はステンレスから構成されているとよい。
【0023】
本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記補強滑走面は、その長手方向において、スキー及びスノーボードの有効エッジ長の少なくとも前後20mmまで延設されていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記の構成により、本発明のスキー及びスノーボードは、滑走面の大半を雪面上での滑走性に優れる主滑走面が占めており、かつ、スキー用マット上を滑走することで温度が上昇する滑走面に対応して耐熱性に優れた補強材からなる補強滑走面を備えているため、夏に人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードとして使用できる。
【0025】
従って、1)冬用と夏用のスキー(スノーボード)の両者を揃える費用的な負担を生じることがなく、2)冬用と夏用のスキー(スノーボード)の両者の保管場所を確保する必要が無く、さらには、3)雪面上とスキー用マット上を1本のスキー(スノーボード)にて滑走できるため、雪面上で滑走する場合に備えた練習として夏にスキー用マット上を滑走する練習が非常に効果的なものとなるばかりか、春に人工スキー場の積雪量を心配する必要が無いといった効果をも奏する。
【0026】
また、本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記主滑走面をポリエチレン樹脂から構成し、前記補強滑走面を融点が200℃以上の合成樹脂又は金属から構成することで、一般的に広く用いられている冬用のスキーと同様の滑走性能を備え、かつ、スキー用マット上での滑走にも対応したスキー及びスノーボードを安価に提供することができる。
【0027】
本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記補強滑走面がポリブチレンテレフタレート樹脂から構成されることにより、主滑走面と補強滑走面の重量、剛性、ワックス浸透性、雪や氷が凍結することがないなどといった点で従来の一般的な冬用のスキーと同等の滑走性能及び使い勝手の良さを雪面上での使用において発揮することができるばかりか、春及び夏においてスキー用マット上を滑走する使用によっても滑走面が損傷することがなく、しかも製造コストの上でも有利なものとすることができ、オールシーズン対応のスキー及びスノーボードとして実用上優れたものを提供することができる。
【0028】
本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記補強滑走面がアルミ合金、チタン合金又はステンレスから構成されることにより、補強滑走面の重量が若干増大したり、ワックス浸透性に欠けたり、雪や氷が凍結することがあるが、補強滑走面の幅は10〜30mmと抑えられているため、従来の一般的な冬用のスキーと比較してもさほど劣ることのない滑走性能及び使い勝手の良さを雪面上での使用において発揮することができるばかりか、春及び夏においてスキー用マット上を滑走する使用によっても滑走面が損傷することがなく、しかも製造コストの上でも有利なものとすることができ、オールシーズン対応のスキー及びスノーボードとして実用上何ら問題のないものを提供することができる。
【0029】
本発明のスキー及びスノーボードにおいて、前記補強滑走面をその長手方向においてスキー及びスノーボードの有効エッジ長(スキー用マット上を滑走してターンする際にスキー用マットと接するエッジの長さ)の少なくとも前後20mmまで延設されたものとすることで、上記の効果に加え、スキー用マット上を滑走する使用によって滑走面が損傷することを確実に防止することができ、オールシーズン対応のスキー及びスノーボードとして非常に優れたものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明を具体化したスキーの一実施例の滑走面(底面)及び側面を示す図である。
【図2】図2は本発明を具体化したスキーの横断面形状の概略を示す図である。
【図3】図3は本発明を具体化したスキーの他の実施例の滑走面(底面)及び側面を示す図である。
【図4】図4は本発明を具体化したスノーボードの一実施例の滑走面(底面)及び側面を示す図である。
【図5】図5はスキー又はスノーボードのターン時における滑走面との接触状態を示すスキー用マットの側面図である。
【図6】図6は従来のパーク用スキーの滑走面(底面)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、雪面上での滑走性能に優れた合成樹脂からなる主滑走面と、当該主滑走面を構成する合成樹脂より耐熱性に優れた補強材からなり、前記主滑走面と両側縁のエッジとの間においてエッジと接して設けられた補強滑走面とを備えたスキー及びスノーボードであって、前記補強滑走面は、滑走者による荷重によってスキー及びスノーボードが平坦な状態となる接雪部(硬い平坦な床面上で滑走者による荷重を中央部に加えた場合にスキー及びスノーボードが床面に沿って平坦な状態となる部分)と対応してその接雪部の長さの少なくとも90%以上の長さに亘って設けられており、かつ、当該補強滑走面の幅は10〜30mmであるスキー及びスノーボード。である。
【0032】
本発明の上記スキー及びスノーボードは、その主滑走面をポリエチレン樹脂から構成し、補強滑走面を融点が200℃以上の合成樹脂又は金属から構成するとよい。
特に、本発明の上記スキー及びスノーボードは、その補強滑走面をポリブチレンテレフタレート樹脂、アルミ合金、チタン合金又はステンレスから構成するとよい。
【0033】
さらに、本発明の上記スキー及びスノーボードは、その補強滑走面をその長手方向において、スキー及びスノーボードの有効エッジ長(スキー用マット上を滑走してターンする際にスキー用マットと接する部分の長さ)の少なくとも前後20mmまで延設するとよい。
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3について説明する。
【実施例1】
【0035】
図1及び図2は、本発明を前後の端部が斜め上方に向かって反っているタイプのスキー(TWIN TIP SKI)に具体化した一実施例のスキー10を示す図であって、雪面上での滑走性に優れ、かつ、春、夏及び秋において、人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスキーである。
【0036】
1はポリエチレン樹脂からなる主滑走面、2はスキー10の周縁に配置された金属製のエッジである。この主滑走面1は、ポリエチレン樹脂から構成されているため、ワックス浸透性に優れ、雪や氷が凍結することが無く、雪面上での滑走性能に優れている。
【0037】
3は前記主滑走面1と両側縁のエッジ2との間においてそれらのエッジ2及び主滑走面1と接するように設けられた補強滑走面であって、当該補強滑走面3は、硬い平坦な床面上で滑走者による荷重によってスキーが平坦な状態となる接雪部4と対応して設けられている。
【0038】
前記各補強滑走面3は、本発明において前記主滑走面1を構成する合成樹脂より耐熱性に優れた補強材から構成する必要があり、特にエッジ2及び補強滑走面3が合成樹脂製のスキー用マットと強く接することで生じる摩擦熱によっても軟化したり溶けてしまうことが無い合成樹脂又は金属から構成する必要がある。
【0039】
従って、補強滑走面3は、融点が200℃以上の合成樹脂又は金属から構成することが好ましく、本実施例においてはポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)からなる。
このポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は、約225℃である。
【0040】
前記主滑走面1及び各補強滑走面3の厚さは、約1.3〜1.7mmであり、前記エッジ2の底面と面一となるような厚さに設定されている(図2参照)。なお、前記エッジ2の上下方向の厚さは一般的に2〜2.3mm程度となっている。
【0041】
前記各補強滑走面3は、本発明に従ってオールシーズン対応のスキーとして実用上問題のないものとするために、接雪部4の長さ(接雪長S)の少なくとも90%以上の長さに亘って設けられる必要があり、本実施例においては前記接雪部4の長さより長く、スキー10の有効エッジ長Eの前後20mmまで延設されている(図1に示す補強長さL1)。
そして、各補強滑走面3の前後の端部は、幅が徐々に狭くなるように斜状に形成されており、主滑走面1の損傷を少ない面積で効率的に防止するとともに、補強滑走面3が剥離するトラブルが生じないようにしている。
【0042】
また、前記各補強滑走面3の幅(図1に示す補強幅L2)は、本発明において10〜30mmである必要があり、本実施例においては15mmとなっており、2本の補強滑走面3により滑走面全体の約30%を補強滑走面3が占めている。
【0043】
5はスキー10のインサートとして使用されスキー10の長手方向に延びる芯材であり、6はFRP層であって、前記芯材5の上面及び下面と接して設けられている。
7は上面側のFRP層6の上面を覆うように設けられた表面シートである。
【0044】
上記のように構成されたスキー10は、エッジ2に囲まれた滑走面が全て合成樹脂から構成されているため、重量及び剛性が冬用のスキーとほぼ同じであり、かつ、滑走面の大部分(約60%)をポリエチレン樹脂製の主滑走面1が占めているため、雪面上の滑走について従来の冬用のスキーと同等の優れた滑走性能を備えている。
2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は、約40%となっている。
【0045】
さらに、上記のように構成されたスキー10は、スキー用マットの棒状突起と強く接する滑走面が、耐熱性に優れた合成樹脂からなる補強滑走面3となっているため、夏に人工スキー場のスキー用マット上を滑走しても滑走面が損傷することがなく、良好な滑走性能を発揮することができた。
但し、金属製のレール上を滑走するパーク用スキーとして使用した場合においては、通常の冬用スキー程ではないが、滑走面に損傷が発生した。
【0046】
次に、本発明のスキー10を製造する方法について説明する。
本発明のスキー10を製造するには、滑走面にロゴや模様を形成する際に従来用いられているダイカット製法を用いればよい。
従って、通常のスキーと同一の設備にて本発明によるスキー10も製造可能である。
【0047】
本発明によりスキー10を製造するには、スキー10の主滑走面を構成することとなるポリエチレン樹脂製のシートと、補強滑走面を構成することとなるPBT樹脂製のシートを用意し、それらのシートをそれぞれ主滑走面1と補強滑走面3の形状に合わせてカットする。
また、予め複数本の角材を並べて接着剤にて一体化した木製芯材などの芯材5を用意する(図2参照)。
【0048】
そして、本実施例においてはエポキシ系の接着剤を塗布しつつ主滑走面1及び補強滑走面3を構成する合成樹脂製のシート上に金属製のエッジ2、ガラス繊維製のシート、芯材5、ガラス繊維製のシート、表面シート7を配置したものを加熱しながら金型を使ってプレスし、数十分から1時間半程度の時間をかけて接着剤を硬化させ、その後、常温に冷却する。
【0049】
なお、前記ガラス繊維製のシートは、接着剤が硬化することでFRP層6を形成するものであり、上記の製造工程は、スキー10の滑走面として2つの異なる材料からなる主滑走面1と補強滑走面3を使用するということ以外の点では従来の一般的なスキーを製造するための工程と異なるものではない。
【0050】
次に、スキー10の滑走面を研磨仕上げ加工することで、プレス成型加工後の滑走面において部材同士が強く密着した状態となって生じている歪みなどを除去する。
従って、特別の金型などを用意することなく従来の設備を使用して公知の製法にてスキー10を迅速かつ容易に製造することができる。
【0051】
ここで、代表的なテールが長いスキーについて本発明を具体化する際の各部の寸法について以下の表に示す。
【0052】
【表1】

【実施例2】
【0053】
図3は、本発明をテールが短いスキーに具体化した他の実施例のスキー20を示す図であって、前記実施例のスキー10と同様に雪面上での滑走性に優れ、かつ、春、夏及び秋に人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスキーである。
【0054】
本実施例のスキー20において、前記実施例のスキー10と同様の構成については、同一の符号を付して以下のとおり説明する。
1は雪面上での滑走性能に優れたポリエチレン樹脂からなる主滑走面、2はスキー20の周縁に配置された金属製のエッジである。
【0055】
3は前記主滑走面1と両側縁のエッジ2との間に設けられた補強滑走面であって、当該補強滑走面3は、硬い平坦な床面上で滑走者による荷重によってスキーが平坦な状態となる接雪部4と対応して設けられている。
前記補強滑走面3は、本実施例のスキー20においてはアルミニウム合金からなる。
このアルミニウム合金は、軽量で強度及び加工性に優れたアルミニウムとチタンの合金であるチタナール(オーストリア メタル アクチエンゲゼルシャフト社製)を使用している。
【0056】
この実施例のスキー20のように金属材料から補強滑走面3を構成する場合には、前記主滑走面1を構成する合成樹脂より耐熱性に優れ、加工性にも優れた金属を使用することが好ましいため、アルミ合金、チタン合金又はステンレスなどから適宜選択するとよい。
【0057】
前記主滑走面1及び補強滑走面3の厚さは、約1.3〜1.7mmであり、前記エッジ2の底面と面一となるような厚さに設定される(図2参照)。なお、前記エッジ2の上下方向の厚さは一般的に2〜2.3mm程度となっている。
前記各補強滑走面3は、本実施例のスキー20において前記接雪部4の長さ(図3に示す接雪長S)より長く、スキー10の有効エッジ長Eの前20mm、後40mmまで延設されている(図3に示す補強長さL1)。
【0058】
そして、各補強滑走面3の前端部は、幅が徐々に狭くなるように斜状に形成されており、主滑走面1の損傷を少ない面積で効率的に防止するようになっている。
一方、本実施例のスキー20は、テールが短いスキーであって、接雪部の後端とスキー20の後端との距離が短いため、前記各補強滑走面3の後端部をスキー20の後端部まで延設している。
また、前記各補強滑走面3の幅(図3に示す補強幅L2)は、本実施例においても15mmとなっている。
【0059】
上記のように構成されたスキー20は、滑走面の大半がポリエチレン樹脂から構成されているため、重量が冬用のスキーより5%程度大きいだけであり、冬用のスキーとほぼ同じであり、剛性は冬用のスキーより10%程度大きいだけであり、冬用のスキーと大差がない。
【0060】
従って、この実施例のスキー20は、雪面上での使用時において金属製の補強滑走面3に雪又は氷が付着して凍結することがあるが、滑走面の大半を占める主滑走面1が雪面上での滑走に適したポリエチレン樹脂製であるため、従来の冬用のスキー程ではないが良好な滑走性能を発揮できた。
【0061】
そして、スキー用マット上での滑走及びパーク用スキーとしての使用については、前記実施例1のスキー10と同等の性能を発揮できた。
他の性能及び特徴についての詳細は、下記の表3に示されている。
このスキー20は、前記スキー10と同様にプレス金型を用いる従来公知のダイカット製法にて製造可能である。
【0062】
ここで、従来のスキーに使用されている滑走面の材料と、上記各実施例にて使用したPBT樹脂とアルミ合金の特性の比較結果を以下の表に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
本発明によるスキー10,20と、比較例と、従来の一般的な冬用スキー、夏用スキー及びパーク用スキーの用途、性能及び特徴を比較評価した結果を以下の表に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
ここで、代表的なテールが短いスキーについて本発明を具体化する際の各部の寸法について以下の表に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
上記各実施例のスキー10,20において、前記補強滑走面3の幅を10mmとすると、2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は約20%となり、前記補強滑走面3の幅を30mmとすると、2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は約62%となる。
従って、本発明によるスキーにおいて、補強滑走面3を形成する面積は、滑走面全体の20%〜62%が適当であるが、主滑走面1の損傷を効果的に防ぎつつ良好な滑走性能を確保するためには、20%〜40%の範囲が特に好ましい(各補強滑走面3の幅が10〜15mmの範囲に相当する)。
【実施例3】
【0069】
図4は、本発明を具体化したスノーボードの一実施例を示す図であって、前記実施例のスキー10,20と同様に雪面上での滑走性に優れ、かつ、夏に人工スキー場のスキー用マット上をも好適に滑走することができる実用的なオールシーズン対応のスノーボード30である。
【0070】
本実施例のスノーボード30において、前記実施例のスキー10と同様の構成については、同一の符号を付して以下のとおり説明する。
1は雪面上での滑走性能に優れたポリエチレン樹脂からなる主滑走面、2はスノーボード30の周縁に配置された金属製のエッジである。
3は前記主滑走面1と両側縁のエッジ2との間に設けられた補強滑走面であって、当該補強滑走面3は、硬い平坦な床面上で滑走者による荷重によってスノーボードが平坦な状態となる接雪部4と対応して設けられている。
そして、前記各補強滑走面3は、本実施例においてはポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)からなる。
【0071】
前記主滑走面1及び各補強滑走面3の厚さは、約1.3〜1.7mmであり、前記エッジ2の底面と面一となるような厚さに設定される(図2参照)。なお、前記エッジ2の上下方向の厚さは一般的に2〜2.3mm程度となっている。
前記各補強滑走面3は、本実施例のスノーボード30において前記接雪部4の長さ(図4に示す接雪長S)より長く、スノーボード30の有効エッジ長Eの前後各20mmまで延設されている(図4に示す補強長さL1)。
【0072】
そして、各補強滑走面3の前後の端部は、幅が徐々に狭くなるように斜状に形成されており、主滑走面1の損傷を少ない面積で効率的に防止するようになっている。
また、前記各補強滑走面3の幅(図4に示す補強幅L2)は、本実施例において20mmとなっており、それらの2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は、約13%となっている。
【0073】
上記のように構成されたスノーボード30は、エッジ2に囲まれた滑走面が全てポリエチレン樹脂から構成されているため、重量及び剛性が冬用のスノーボードとほぼ同じである。
従って、この実施例のスノーボード30は、雪面上での使用時において従来の冬用のスノーボードと同様の良好な滑走性能を発揮できた。
【0074】
そして、スキー用マット上での滑走及びパーク用スノーボードとしての使用については、前記実施例1のスキー10と同等の性能を発揮できた。即ち、滑走面に実用上問題となるような損傷は発生しなかった。
また、このスノーボード30は、前記スキー10と同様にプレス金型を用いる従来公知のダイカット製法にて製造可能である。
【0075】
ここで、代表的なスノーボードについて本発明を具体化する際の各部の寸法について以下の表に示す。
【0076】
【表5】


上記実施例のスノーボード30において、前記補強滑走面3の幅を10mmとすると、2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は約6%となり、前記補強滑走面3の幅を30mmとすると、2本の補強滑走面3が滑走面全体に占める面積の割合は約19%となる。従って、本発明によるスノーボードにおいて、補強滑走面を形成する面積は、滑走面全体の6%〜19%が適当である。
【0077】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、補強滑走面3の長さを接雪部の長さの90%以上の長さで適宜変更して実施したり(例えば、補強滑走面3の長さを接雪長Sと同じ長さにしたり、有効エッジ長Eと同じ長さにして実施してもよい。)、補強滑走面3をスキー及びスノーボードの左右の側縁において非対称となる位置又は大きさに形成して実施したり(例えば、左右の補強滑走面3の長さ、幅、形状を異なるものとして実施してもよい。)、主滑走面1と補強滑走面3の接する部分の形状を波線状にして実施したり、補強滑走面3の前端又は後端の幅を徐々に小さくすることなく形成して実施してもよい。
【0078】
また、補強滑走面を構成する原材料を効率よく使用したり、外観デザインを向上するため、或いは部分的に耐熱温度又は強度を変更するために、短い補強材を継ぎ合わせるようにして補強滑走面3を構成してもよい。
【0079】
例えば、補強滑走面3を構成する中央部の補強材を強度の高い金属製又はセラミック製とすることで、パーク用スキーとしての使用にも耐えられるようにして実施してもよい。
また、補強滑走面3を構成する合成樹脂にセラミックス粉末又は無機粉末などを添加することで、補強滑走面3の強度を高めるようにして実施してもよい。
【0080】
さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でスキー及びスノーボードの滑走面などの材質、形状、寸法、強度、設置位置、厚さ、大きさ、数などを適宜変更して実施してもよい。
特に補強滑走面の材料としては、上記にて説明した材料の他、傷付きにくく、耐熱性に優れ(好ましくは融点が200℃以上)、ワックス浸透性、加工性、低温での強度に優れた合成樹脂から適宜選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、1本で雪面上でも人工スキー場のスキー用マット上でも使用可能なオールシーズン対応のスキー及びスノーボードとして用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 主滑走面
2 エッジ
3 補強滑走面
4 接雪部
5 芯材
6 FRP層
7 表面シート
10 スキー
20 スキー
30 スノーボード
40 スキー用マット
41 棒状突起
42 滑走面
50 パーク用スキー
51 補強材
52 滑走面
E 有効エッジ長
L1 補強長さ
L2 補強幅
S 接雪長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪面上での滑走性能に優れた合成樹脂からなる主滑走面と、
当該主滑走面を構成する合成樹脂より耐熱性に優れた補強材からなり、前記主滑走面と両側縁のエッジとの間においてエッジと接して設けられた補強滑走面と
を備えたスキー及びスノーボードであって、
前記補強滑走面は、滑走者による荷重によってスキー及びスノーボードが平坦な状態となる接雪部と対応してその接雪部の長さの少なくとも90%以上の長さに亘って設けられており、かつ、当該補強滑走面の幅は10〜30mmであることを特徴とするスキー及びスノーボード。
【請求項2】
前記主滑走面は、ポリエチレン樹脂からなり、前記補強滑走面は、融点が200℃以上の合成樹脂又は金属からなることを特徴とする請求項1に記載のスキー及びスノーボード。
【請求項3】
前記補強滑走面は、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスキー及びスノーボード。
【請求項4】
前記補強滑走面は、アルミ合金、チタン合金又はステンレスからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスキー及びスノーボード。
【請求項5】
前記補強滑走面は、その長手方向において、スキー及びスノーボードの有効エッジ長の少なくとも前後20mmまで延設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のスキー及びスノーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−316(P2012−316A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139149(P2010−139149)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)