説明

スクイズ容器

【課題】 本発明は、スクイズ容器における液垂れの問題を、弁機構等の複雑な機構を使用することなく、簡単な構造で、効果的に解消することを技術的な課題とするものである。
【解決手段】 スクイズ変形可能に形成した胴部の上端にテーパ筒状の肩部を介して口筒部を起立設した容器本体を有するスクイズ容器において、口筒部の上方に口筒部と連通する吐出孔を配設し、口筒部の下端から吐出孔に至る内容液の注出流路の所定高さ位置に、この注出流路を部分的に縮径する縮径流路部を配設して、この縮径流路部と吐出孔の間に縮径流路部及び吐出孔よりも大きな径の注出流路であるバッファー室を形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクイズ性を利用して内容液を注出するスクイズ容器に関するものである。

【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マヨネーズ、ドレッシング、ソース等の液状の食品を収納して使用するスクイズ容器の代表的な例が記載されており、実施例には合成樹脂製の容器本体の口筒部の先端部に吐出弁や吸入弁を備えた中栓が配設した例が示されており、内部からの液垂れや、外部からの外気の浸入がないように構成されている。
そして、この種のスクイズ容器では収納する内容液の種類、特にはその粘度によってスクイズ操作性を考慮すると共に、注出開始の際の液垂れの問題や、注出後における液切れの問題を考慮して製品設計をする必要がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−196357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、注出開始の際の液垂れの問題は概略次のようなものである。
この種のスクイズ容器(以降、単に容器と記載する場合がある。)では、注出開始の際には、まず容器を倒立状にまで傾け、注出先である他の容器や手のひらや塗布具等に吐出孔の向きを定め、その後、手で胴部を押圧し、すなわちスクイズ操作を実施して内容液を注出する。そしてこの種の容器は、使用する温度環境も考慮したスクイズ操作性を考慮すると、粘度が0.5〜10Pa・s程度の内容液(食料品の代表的な例では蜂蜜、コンデンスミルク、ケチャップ等がある。)を注出するのに適している。
ところが、この程度の粘度の内容液は、使用温度にもよるが、スクイズ容器を倒立状に傾けるとすぐ、吐出孔の向きを定める前に内容液が意図しない方向に流出してしまい、周辺を汚してしまうと云う問題が発生する場合があり、これが、所謂、液垂れの問題である。
そして、この液垂れ問題の解消はこの種のスクイズ容器にとって重要な課題のひとつである。
【0005】
液垂れの問題を解決する方法としては、前述したように口筒部の先端に吐出弁を配設する等の方法があるが、容器の構造が複雑になる、内容物が弁体に固着して弁体の機能が低下する、また冷蔵庫に保管したものを使用する際には、粘度が数倍にもなり吐出弁のためにスクイズ性が損なわれると云うような問題がある。
【0006】
本発明は、スクイズ容器における液垂れの問題を、弁機構等の複雑な機構を使用することなく、簡単な構造、構成で効果的に解消することを技術的な課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
スクイズ変形可能に形成した胴部の上端にテーパ筒状の肩部を介して口筒部を起立設した容器本体を有するスクイズ容器において、
口筒部の上方に口筒部と連通する吐出孔を配設し、
口筒部の下端から吐出孔に至る内容液の注出流路の所定高さ位置に、この注出流路を部分的に縮径する縮径流路部を配設して、この縮径流路部と吐出孔の間に縮径流路部及び吐出孔よりも大きな径の注出流路であるバッファー室を形成する構成とする、と云うものである。
【0008】
上記構成によれば、内容液の注出を開始しようとして、スクイズ容器を倒立状に傾けた際、収納されている内容液は口筒部の下端から吐出孔に至る内容液の注出流路を経て、吐出孔に流動するが、
まず、注出流路中でオリフィスとしての機能を発揮する縮径流路部とそれに連結するバッファー室により、縮径流路部により一端急激に縮径された内容液の流束が逆にバッファー室に急激に拡散するため、内容液の流動先端の吐出孔への移動速度を小さくすることができると共に、さらにバッファー室により液溜め状の緩衝領域としての機能が発揮され、
容器を傾けてから内容液の自然落下による吐出孔からの流出までの時間を十分に遅延させることができ、通常の使用態様の範囲で、液垂れを防ぎながら、余裕をもって吐出孔の向きを調整してから、スクイズ操作を実施することができる。
【0009】
また、上記構成によれば、弁体等の複雑な部材を使用する必要がなく、簡単な構造で液垂れを防止することができ、使用する内容液の粘度や、温度環境、使用態様を考慮して縮径流路部の径、バファー室の径や体積、吐出孔の径等を適宜決めることにより、多様な内容液に対し、液垂れの抑制されたスクイズ容器を提供することができる。
【0010】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、縮径流路部、バッファー室、及び吐出孔における注出流路の平断面形状を円形状とし、縮径流路部の流路径と、バッファー室の流路径と、吐出孔の流路径の大小関係が下記式(1)と(2)に示す条件を満足するようにする、と云うものである。
D2>D1≧D3 (1)
D2>1.5*D1 (2)
但し、D1は縮径流路部の流路径、D2はバッファー室の流路径、D3は吐出孔の流路径を示す。
ここで、縮径流路部あるいは吐出孔における径がテーパ状、あるいは段差状に変化する場合はD1、D3はその最小径とし、またバッファー室の流路径D2はその全高さ範囲に亘る平均値とする。
【0011】
前述したように、使用する内容液の粘度や、温度環境、使用態様を考慮して縮径流路部の径、バファー室の径、吐出孔の径等は適宜決めることができるものであるが、上記構成は縮径流路部、バッファー室、及び吐出孔の流路の大小関係の目安を決めるものである。
ここで、縮径流路部の径D1の径を吐出孔の径D3より小さくすると、注出流路の途中で大きな抵抗を受けるために、スクイズ操作で大きな押圧力が必要となったり、内容液の吐出が途切れる等の問題、すなわちスクイズ性が損なわれるため、D1、D2、D3の大小関係は式(1)のようにするのが好ましい。
また、縮径流路部でのオリフィス効果や、バッファー室における緩衝効果を十分に発揮させるために、D1とD2の大小関係は式(2)のようにするのが好ましい。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、バッファー室の体積を0.5〜2mlの範囲とする、と云うものである。
【0013】
バファー室の体積についても、使用する内容液の粘度や、温度環境、使用態様を考慮して適宜決めることができるものであるが、体積が大きすぎるとスクイズした際に内容液が注出するまでにタイムラグが生じるようになるので、安定した液溜め状の緩衝領域としての機能とのバランスを考慮し、バファー室の体積は0.5〜2mlの範囲とするのが好ましい。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、円板の中央部に流路孔を開口形成したオリフィス部材を口筒部内に配設し、このオリフィス部材により縮径流路部を形成する、と云うものである。
【0015】
上記構成は、縮径流路部の配設方法の一つであり、別部材として用意したオリフィス部材を口筒部に配設するものである。
ここで、オリフィス部材はさまざまな態様で口筒部内に組付き固定させることが可能であるが、たとえばオリフィス部材を底壁の中央に流路孔を開口した有底筒状とすることにより、口筒部内に容易に、嵌入し乗越え係止部を利用して口筒部内に組付け固定することが可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、容器本体をブロー成形品とし、ブロー成形時に口筒部の所定の高さ位置でこの口筒部の径を部分的に縮径して縮径短筒部を形成し、この縮径短筒部により縮径流路部を形成すると云うものである。
【0017】
上記構成も、縮径流路部の配設方法の一つである。ブロー成形方法によれば、割金型で筒状のパリソンの一部を押潰し状にすると共に、内部にエアブローすることにより、上記構成にあるように、口筒部の所定の高さ位置でこの口筒部の径を部分的に縮径して縮径短筒部を形成することができ、別部材を使用することなく縮径流路部を形成することができる。
【0018】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、有頂筒状で吐出孔を開口形成した頂壁を有する注出キャップ体をこの出キャップ体の筒状部で容器本体の口筒部に嵌合組付けし、口筒部と注出キャップ体を連通して注出流路を形成する構成する、と云うものである。
【0019】
上記構成は、容器本体の口筒部に組付け固定される注出キャップ体の頂壁に吐
出孔を開口する構成であり、注出キャップ体を利用して、吐出孔に至る注出流路をテーパ状にする、筒状部の内側に垂下設にシール筒を口筒部に嵌入してシール性を確実にする、またこのシール筒を利用して前述したオリフィス部材を口筒部内に配設する等、注出操作に適した機能を付加することができると共に、スクイズ容器の構成に係る選択肢を広げることができる。
【0020】
本発明のさらに他の構成は、上記注出キャップ体を有する構成において、容器本体の口筒部の上部開口端に中央部に流路孔を開口形成した頂板を配設し、この頂板により縮径流路部を形成し、バッファー室を頂板の上方に注出キャップ体の筒状部により形成する、と云うものである。
【0021】
上記構成も、縮径流路部の配設方法の一つであり、容器本体の口筒部の上部開口端に、オリフィスとしての機能を発揮する、中央部に流路孔を開口形成した頂板を配設するものである。また、この構成ではバッファー室は口筒部の上方で注出キャップ体の筒状部により形成される。
容器本体がブロー成形品のような場合には、円筒状の口筒部の上端面に別部材として用意した円板を溶着して頂壁を形成することができる。
また、容器本体がチューブ体からなる胴部の上方開口端に、肩部および口部からなるヘッド部を射出成形や圧縮成形により溶着状に一体設したようなチューブ容器の場合には、ヘッド部の成形の際に口筒部を、頂壁を有する有頂筒状に成形することができる。
【0022】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、底壁に流路孔を開口形成した有底筒状の中栓体を、この中栓体の開口端面を口筒部の上端面から突出させた状態で口筒部に嵌入状に組付き固定し、底壁により縮径流路部を形成し、
中栓体の開口端面に吐出孔を開口形成した頂板を付設し、口筒部と中栓体を連通して注出流路を形成する構成とする、と云うものである。
【0023】
上記構成は、口筒部に嵌入状に組付け固定される有底筒状の中栓体により、注出流路に縮径流路部と吐出孔を配置しようとするものである。
ここで、吐出孔を開口形成した頂板は、別途準備した流路孔を開口形成した円板状の部材を中栓体の開口端面に溶着状に固定したり、接着したりすることができ、簡便的には、円形のフィルム片を用意し、これを超音波溶着法や高周波溶着法により開口端面に溶着固定することもできる。
そして上記中栓体を利用する構成は、中栓体を交換するだけで内容液の粘度等の性状や、使用態様によって吐出孔と縮径流路部の径を自在に変更することができる。
【0024】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、−5℃から常温(23℃)における粘度が0.5〜10Pa・s(500〜10、000cP)の範囲の内容液を収納して使用するものとする、と云うものである。
【0025】
本発明のスクイズ容器は、縮径流路部の径、バファー室の径や体積、吐出口の径を適宜決めることにより、−5℃から常温(23℃)における粘度が0.5〜10Pa・sの範囲におよぶ広い範囲の内容液において、液垂れの抑制されたスクイズ容器を提供することができる。

【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明のスクイズ容器の主たる構成を有するものにあっては、注出流路中でオリフィスとしての機能を発揮する縮径流路部とそれに連結するバッファー室により、縮径流路部により一端急激に縮径された内容液の流束が逆にバッファー室内に急激に拡散するため、内容液の流動先端の吐出孔への移動速度を小さくすることができると共に、さらにバッファー室により液溜め状の緩衝領域としての機能が発揮され、
容器を傾けてから内容液の自然落下による吐出孔からの流出までの時間を十分に遅延させることができ、通常の使用態様の範囲で、液垂れを防ぎながら、余裕をもって吐出孔の向きを調整してから、スクイズ操作を実施することができる。
【0027】
また、弁体等の複雑な部材を使用する必要がなく、簡単な構造で液垂れを防止することができ、使用する内容液の粘度や、温度環境、使用態様を考慮して縮径流路部の径、バファー室の径や体積、吐出孔の径等を適宜決めることにより、多様な内容液に対し、液垂れの抑制されたスクイズ容器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のスクイズ容器の第1実施例の半縦断正面図である。
【図2】図1の容器の使用態様を示す説明図であり、(a)は倒立状に傾斜した状態、(b)は胴部を押圧して内容液を注出した状態である。
【図3】本発明のスクイズ容器の第2実施例を一部縦断して示す正面図である。
【図4】本発明のスクイズ容器の第3実施例の縦断側面図である。
【図5】図4の容器の使用態様を示す説明図である。
【図6】本発明のスクイズ容器の第4実施例の半縦断正面図である。
【図7】図6の容器の吐出孔の形成方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1と図2は本発明によるスクイズ容器の第1実施例を示すものであり、
図1は半縦断正面図、図2はこのスクイズ容器の使用態様を示す説明図である。この容器は、チューブ容器状の容器本体1と容器本体1の口筒部2に組付き固定する注出キャップ体11と、口筒部2の内側に配設される有底筒状のオリフィス部材21から構成されている。
なお図1では、注出キャップ体11から容器本体1の肩部3に至る範囲を外装するようにオーバーキャプ31を装着した状態を示している。
【0030】
本実施例では、容器本体1は高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製で、径を40mm、高さを120mmとした円筒状の胴部4にテーパ筒状の肩部3を介して口筒部2を起立設したものである。
また、この容器本体1は、まずブロー成形により有底円筒状の壜体を成形し、胴部4の下端から底部を切除し、胴部4の下端を開口端としたものである。
そして、この胴部の開口端から内容液を充填し、その後、下端部を熱溶着や超音波法によりシールし、図1中2点鎖線で示したように扁平状のシール部7を形成し、チューブ状の容器として使用する。(後述する第2実施例、第3実施例及び第4実施例の容器本体についても同様である。)
【0031】
注出キャップ体11は、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂製の射出成形品で、全体としては有頂筒状で、吐出孔15を開口形成した頂壁12を有し、筒状部は上半分の領域では頂壁12に向かって縮径するようにテーパ状とし、下半分の領域では外側に嵌合筒13を、またその内側にはシール筒14を垂下設した構成としている。
なお、図1では注出キャップ体11の頂壁12にシール片32を貼付し、吐出孔15を塞ぐようにした状態が示されている。
【0032】
そして、注出キャップ体11は、嵌合筒13が口筒部2の上部に乗越え係止状に外嵌した状態で口筒部2に組付き固定される。またシール筒14が、口筒部2に液密状に嵌入し、口筒部2と注出キャップ体11内が連通し、吐出孔15に至る内容液の注出流路P(図2(a)参照)が形成される。
【0033】
オリフィス部材21は全体として有底筒状の形状をしており、中央に流路孔23を開口形成した円板22を底壁とし、この円板22の周縁の少し内側に嵌合短筒片24起立設されている。
このオリフィス部材21は嵌合短筒片24をシール筒14に下方から乗越え係止状に嵌入して、口筒部2内に配設され、このオリフィス部材21により口筒部2内の注出流路Pを縮径する縮径流路部Sが形成される。
なお、円板22の周縁によりシール筒14への嵌入限界を決めるフランジとしての機能を発揮させている。
【0034】
そして、上記説明したように容器本体1の口筒部2にキャップ本体11とオリフィス部材21を配設することにより、口筒部2の下端から吐出孔15に至る内容液の注出流路Pが形成され、口筒部2内の注出流路Pにはオリフィス部材21により縮径流路部Sが形成され、この縮径流路部Sと吐出孔15の間には、縮径流路部Sや吐出孔15よりも径の大きな注出流路Pであるバッファー室Rが形成される。
ここで、本実施例は、口筒部2の内径を8mm、縮径流路部Sの径D1であるオリフィス部材21の流路孔23の直径を3mm、吐出孔15の径D3を3mmとし、またバッファー室Rの径の平均値D2は5.5mmであり、その大小関係は、
D2>D1=D3で、D2/D1は1.7である。またバッファー室の体積は0.6mlである。
【0035】
図2は、本実施例のスクイズ容器の使用態様を示す説明図であり、(a)は注出操作の開始時にまず容器を倒立状に傾斜させた状態、(b)は胴部4を押圧して内容液を注出した状態を表しており、内容液Lとして常温23℃での粘度が2Pa・sのコンデンスミルクを充填した場合の注出態様の観察結果を概略的に示したものである。
【0036】
まず、図2(a)に示されるように、内容液Lの注出を始めようとして、スクイズ容器を倒立状に傾けた際、内容液Lは口筒部2と注出キャップ体11内に形成される注出流路Pを経て、吐出孔15に流動するが、
まず、注出流路中Pでオリフィス部材21の流路孔23を開口形成した円板22により形成される縮径流路部Sとそれに連結するバッファー室Rにより、縮径流路部Sにより一端急激に縮径された内容液Lの流束がバッファー室R内に急激に拡散するため、内容液Lの流動先端の吐出孔15への移動速度を小さくすることができると共に、さらにバッファー室Rにより液溜め状の緩衝領域としての機能が発揮され、
容器を傾けてから内容液Lの自然落下による吐出孔15からの流出までの時間を十分に遅延させることができ、通常の使用態様の範囲で、液垂れを十分に防ぎながら、余裕をもって吐出孔15の向きを調整し、図2(b)に示されるように、白抜き矢印の方向に手により押圧力を作用させてスクイズ操作を実施し、内容液Lを意図した方向、箇所に注出することができた。
【0037】
一方、本実施例のスクイズ容器からオリフィス部材21を除いた比較例のスクイズ容器を準備し、上記したのと同様にコンデンスミルクを充填して、図2に示されるような注出操作を実行した。
比較例の容器では図2(a)に示されるように倒立状に傾けると、短時間に内容液Lの自然落下による吐出孔15からの意図しない流出が始まり通常の使用態様では液垂れを防ぐことは困難であった。
また、上記実施例と比較例のスクイズ容器について、スクイズに要する押圧力や、スクイズ中の内容液の注出態様等のスクイズ性を調べたが、スクイズ性については両容器、ほぼ同等であり、実施例の容器でオリフィス部材21を配設した影響は見られなかった。
【0038】
また、低温での使用を想定し、コンデンスミルクを充填した状態で、冷蔵庫で−5℃まで冷却した容器について液垂れ現象を観察した。
その結果、実施例の容器ではもちろん液垂れは見られなかったが、比較例の容器では低温で内容液Lの粘度が大きくなったにも拘わらず、多少の液垂れ現象が観察された。
【0039】
次に、図3は本発明のスクイズ容器の第2実施例を一部縦断して示す正面図であり、このスクイズ容器は、HDPE樹脂製のチューブ容器状の容器本体1と容器本体1の口筒部2に組付き固定するLDPE樹脂製の注出キャップ体11とから構成されている。
なお、本実施例の容器では、容器本体1の注出キャップ体11から容器本体1の肩部3に至る範囲を外装するようにオーバーキャプ31を装着しており、注出キャップ体11の頂壁12に開口する吐出孔15をこのオーバーキャップ31の頂壁の下面でシールするような構成としている。
【0040】
容器本体1は第1実施例の容器と同様に、HDPE樹脂製のブロー成形品から下端を切除したもので、径を40mm、高さを120mmとした円筒状の胴部4にテーパ筒状の肩部3を介して口筒部2を起立設したものである。
そして、本実施例の容器の特徴は、容器本体1のブロー成形時に口筒部2の所定の高さ位置でこの口筒部2の径を部分的に縮径して縮径短筒部2sを形成し、この縮径短筒部2sにより縮径流路部Sを形成した点にある。
当該構成によれば、図1、2に示される第1実施例の容器に配設したオリフィス部材21のような縮径流路部Sを構成する部材を別途用意し、それを組付ける必要がなくなる。
【0041】
注出キャップ体11の全体的な形状は第1実施例の注出キャップ体11と略同様であり、中央部に吐出孔15が形成された頂壁12を有し、嵌合筒13とシール筒14を垂下設したものである。
そしてこれら口筒部2と注出キャップ体11により、口筒部2の下端から吐出孔15に至る内容液の注出流路が形成され、口筒部2内の注出流路には縮径短筒部2sにより縮径流路部Sが形成され、この縮径流路部Sと吐出孔15の間には、縮径短筒部2sと吐出孔15よりも径の大きな注出流路であるバッファー室Rが形成されている。
【0042】
次に、図4は本発明のスクイズ容器の第3実施例の縦断側面図であり、この容器は、チューブ容器状の容器本体1と容器本体1の口筒部2に組付き固定するLDPE樹脂製の注出キャップ体11とから構成されている。
なお、本実施例の容器では注出キャップ体11にはヒンジ34を介して蓋部33が一体連設され、この蓋部33の下面に垂下設される蓋栓35により、注出キャップ体11の頂壁12に開口する吐出孔15をシールするような構成としている。
また、注出キャップ体11には外装筒36が垂下付設されている。
【0043】
容器本体1は、HDPE樹脂製の外層にガスバリア性を向上させるたにエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂製の内層を積層した押出成形による円筒状のチューブ体により胴部4を形成し、この胴部4の上端部に射出成形によるHDPE樹脂製の肩部3と口筒部2からなるヘッド部Hを溶着状に一体化したものであり、円筒状で径を40mm、高さを120mmとした胴部4にテーパ筒状の肩部3を介して口筒部2を起立設したものである。
【0044】
本実施例の容器の特徴の一つは、ヘッド部Hの成形時に口筒部2の上部開口端に中央部に流路孔26を開口形成した頂板25を配設し、この頂板25により縮径流路部Sを形成した点、にあり、この場合も図1と図2に示される第1実施例の容器に配設したオリフィス部材21のような縮径流路部Sを構成する部材を別途用意し、それを組付ける必要がなくなる。
ここで、頂板25は本実施例のように射出成形で一体成形する他にも、別途流路孔26を形成した円板状の部材を用意し、これを口筒部2の上端面に熱溶着して形成することもできる。
【0045】
また、蓋部33や外装筒36や頂壁12の拡径状に延設された部分を除いた注出キャップ体11の基本的な形状は、中央部に吐出孔15が形成された頂壁12を有し、嵌合筒13とシール筒16を垂下設したものであるが、
嵌合筒13が口筒部2に螺合し、この螺合力によりシール筒16の下端面を口筒部2の頂板25の天面に押圧状に当接させてシールしている点が、本実施例のもう一つの特徴である。
【0046】
そしてこれら口筒部2と注出キャップ体11により、口筒部2の下端から吐出孔15に至る内容液の注出流路が形成され、口筒部2内の注出流路の上端部には頂板25により縮径流路部Sが配設され、この縮径流路部Sと吐出孔15の間に、本実施例ではシール筒16の内側に縮径流路部Sと吐出孔15よりも径の大きな注出流路であるバッファー室Rが形成される。
図5は本実施例の容器の使用態様を示す説明図であり、蓋部33を開いて倒立状に傾斜させた状態を示したものである。
【0047】
次に図6と図7は本発明によるスクイズ容器の第4実施例を示すものであり、図6は半縦断正面図である。
本実施例のスクイズ容器の容器本体1とオーバーキャップ31は図1に示される第1実施例の容器と全く同じ構成のものであり、第1実施例の容器の注出キャップ体11の替わりに中栓体41を使用しているのが特徴的である。
【0048】
この中栓体41は有底筒状で、中央部に流路孔43を開口形成した底壁42とこの底壁42から起立設された嵌入筒45を有し、この嵌入筒45の外側に外嵌筒片44を垂下設し、底壁42により縮径流路部Sを形成したものである。
また、中栓体11の上部開口端面、すなわち嵌入筒45の開口端面には中央部に吐出孔15を開口形成した頂板としての機能を発揮する円形のフィルム片47が高周波溶着法により接着固定されている。
そして嵌入筒45を口筒部2の上方から嵌入すると共に、外嵌筒片44を口筒部2に乗越え係止状に外嵌して中栓体41を口筒部2に嵌合固定し、口筒部2と中栓体11を連通して注出流路Pを形成する構成としている。
【0049】
図7は本実施例の容器における吐出孔15の形成方法を説明するための説明図であり、図7(a)、(b)に示されるように、フィルム片47を中栓体11の嵌入筒45の上端面に高周波溶着法で接着固定し、さらに吐出孔15を塞ぐようにアルミラミネートフィルム製のシールフィルム片48でシールした状態で製品は出荷され、使用開始時には図(c)に示されるようにシールフィルム片48を剥がして、使用される。(図6には、シールフィルム片48を剥がした状態が示されている。
【0050】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では容器本体をチューブ容器状としたが、ブロー成形した壜体をそのままの形状で使用することもできる。また胴部の形状は円筒状に限定されるものではなく、楕円筒状、長円筒状とすることもできる。
容器本体に使用する合成樹脂については、HDPE樹脂単体やHDPE樹脂とEVOH樹脂を積層した例について説明したが、スクイズ性、ガスバリア性、耐薬品性、成形性等を考慮して他の合成樹脂や、積層様式を選択することができる。また高度なガスバリア性を発揮させるためにアルミラミネートチューブ体を使用することもできる。
【0051】
また、縮径流路部の径、バファー室の径や体積、吐出孔の径等は、内容液の粘度や、使用温度環境を考慮して適宜決めることができる。
また、縮径流路部の形成方法についてはいくつかの例を示したが、この形成方法についても、様々な態様とすることができる。

【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明のスクイズ容器は簡単な構成で注出開始時の液垂れを効果的に抑制したものであり、0.5〜10Pa・s程度の粘度を有する液状物の注出容器として幅広い利用が期待される。

【符号の説明】
【0053】
1 ;容器本体
2 ;口筒部
2s;縮径短筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
7 ;シール部
11;注出キャップ体
12;頂壁
13;嵌合筒
14;シール筒
15;吐出孔
16;シール筒
21;オリフィス部材
22;円板
23;流路孔
24;嵌合短筒
25;頂板
26;流路孔
31;オーバーキャップ
32;シール片
33;蓋部
34;ヒンジ
35;蓋栓
36;外装筒
41;中栓体
42;底壁
43;流路孔
44;外嵌筒片
45;嵌入筒
47;フィルム片
48;シールフィル片
H ;ヘッド部
L ;内容液
P ;注出流路
R ;バッファー室
S ;縮径流路部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイズ変形可能に形成した胴部(4) の上端にテーパ筒状の肩部(3)を介して口筒部(2)を起立設した容器本体(1)を有し、前記口筒部(2)の上方に該口筒部(2)と連通する吐出孔(15)を配設し、口筒部(2)の下端から吐出孔(15)に至る内容液(L)の注出流路(P)の所定高さ位置に、該注出流路(P)を部分的に縮径する縮径流路部(S)を配設して、前記縮径流路部(S)と吐出孔(15)の間に該縮径流路部(S)及び吐出孔(15)よりも大きな径の注出流路(P)であるバッファー室(R)を形成する構成としたスクイズ容器。
【請求項2】
縮径流路部(S)、バッファー室(R)、及び吐出孔(15)における注出流路(P)の平断面形状を円形状とし、縮径流路部(S)の流路径と、バッファー室(R)の流路径と、吐出孔(15)の流路径の大小関係が下記式(1)と(2)に示す条件を満足するようにした請求項1記載のスクイズ容器。
D2>D1≧D3 (1)
D2>1.5*D1 (2)
但し、D1は縮径流路部(S)の流路径、D2はバッファー室(R)の流路径、D3は吐出孔(15)の流路径を示す。
【請求項3】
バッファー室(R)の体積を0.5〜2mlの範囲とした請求項1または2記載のスクイズ容器。
【請求項4】
円板(22)の中央部に流路孔(23)を開口形成したオリフィス部材(21)を口筒部(2)内に配設し、該オリフィス部材(21)により縮径流路部(S)を形成した請求項1、2または3記載のスクイズ容器。
【請求項5】
容器本体(1)をブロー成形品とし、ブロー成形時に口筒部(2)の所定の高さ位置で該口筒部(2)の径を部分的に縮径して縮径短筒部(2s)を形成し、該縮径短筒部(2s)により縮径流路部(S)を形成した請求項1、2または3記載のスクイズ容器。
【請求項6】
有頂筒状で吐出孔(15)を開口形成した頂壁(12)を有する注出キャップ体(11)を該注出キャップ体(11)の筒状部で容器本体(1)の口筒部(2)に嵌合組付けし、前記口筒部(2)と注出キャップ体(11)を連通して注出流路(P)を形成する構成とした請求項1、2、3、4または5記載のスクイズ容器。
【請求項7】
容器本体(1)の口筒部(2)の上部開口端に中央部に流路孔(26)を開口形成した頂板(25)を配設し、該頂板(25)により縮径流路部(S)を形成し、前記頂板(25)の上方に注出キャップ体(11)の筒状部によりバッファー室(R)を形成した請求項6記載のスクイズ容器。
【請求項8】
底壁(42)に流路孔(43)を開口形成した有底筒状の中栓体(41)を、該中栓体(41)の開口端面を口筒部(2)の上端面から突出させた状態で口筒部(2)に嵌入状に組付き固定し、前記底壁(42)により縮径流路部(S)を形成し、
前記中栓体(11)の開口端面に吐出孔(15)を開口形成した頂板を付設し、前記口筒部(2)と中栓体(11)を連通して注出流路(P)を形成する構成とした請求項1、2または3記載のスクイズ容器。
【請求項9】
−5℃から常温(23℃)の温度範囲における粘度が0.5〜10Pa・s(500〜10、000cP)の範囲の内容液(L)を収納して使用する請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のスクイズ容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−51584(P2012−51584A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193822(P2010−193822)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】