説明

スクシンイミド共重合体の新規な製造方法

【課題】 耐熱性、剛性に優れ、各種光学部品、電気電子部品、照明部品、自動車部品、医療部品、食品容器、雑貨および建材など多くの用途に利用可能な加工性、透明性等に優れるスクシンイミド共重合体を生産効率よく製造する新規な製造方法を提供する。
【解決手段】 マレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位とオレフィン残基単位からなる共重合体(A)、好ましくはマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体と、一種類以上のアミン化合物、好ましくはアニリンとを反応し、オレフィン残基単位及びスクシンイミド単位からなるスクシンイミド共重合体、好ましくはN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体とする新規な製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性に優れ光学フィルム用途に適したスクシンイミド共重合体を製造する新規な方法に関するものであり、更に詳細には、耐熱性、剛性に優れ、各種光学部品、電気電子部品、照明部品、自動車部品、医療部品、食品容器、雑貨および建材など多くの用途に利用可能な加工性、透明性等に優れるスクシンイミド共重合体を生産効率よく製造する新規な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクシンイミド単位を有する共重合体は、高い耐熱性を有するため古くから種々の検討がなされている。例えばメタクリル酸メチル系樹脂やスチレン系樹脂にN−芳香族置換基マレイミドを共重合する方法が提案されている(例えば特許文献1〜7参照。)。
【0003】
一方、マレイミド化合物を原材料として用いずにスクシンイミド単位を有する重合体を得る方法として、例えば無水マレイン酸とオレフィン類からなる共重合体とメチルアミンとの反応によりスクシンイミド共重合体を製造する方法が提案されている(例えば特許文献8参照。)。該方法は、無水マレイン酸共重合体をベンゼン中でメチルアミンによりアミド化した後、溶媒を除去しながらオーブン中で加熱し、脱水閉環イミド化することにより黄色の強靭な樹脂を得ている。また、該脱水閉環イミド化反応を押出機中で行なう事も提案されている。
【0004】
無水マレイン酸共重合体とアルキルアミンのイミド化反応について酢酸中あるいはベンゼン中での反応についても提案されている(例えば非特許文献1参照。)。
【0005】
さらに、スクシンイミド樹脂の生産性や色相を飛躍的に向上させる方法として、無水マレイン酸共重合体とアミンの反応から得られるアミド化物を第二ポリマーの存在下で反応押出しする方法が提案されている(例えば特許文献9参照。)。
【0006】
その他に、溶液中でアミド化及び脱水閉環イミド化し、スクシンイミド樹脂を製造する方法として、例えば水溶媒中でアミド化及び脱水閉環イミド化する方法(例えば特許文献10参照。)、アルコール中でのアミド化及び脱水閉環イミド化する方法(例えば特許文献11参照。)、等が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特公昭43−9753号公報
【特許文献2】特開昭61−141715号公報
【特許文献3】特開昭61−171708号公報
【特許文献4】特開昭62−109811号公報
【特許文献5】特開昭47−6891号公報
【特許文献6】特開昭61−76512号公報
【特許文献7】特開昭61−276807号公報
【特許文献8】英国特許第815821号公報
【特許文献9】特開2002−003528号公報
【特許文献10】特公昭56−039651号公報
【特許文献11】特許3286860号公報
【非特許文献1】Journal of Polymer Science PartC No16 p387(1967)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の先行技術は、それぞれ優れた点を有しているが、例えば特許文献1〜7に提案されているマレイミド化合物を共重合させる方法においては、マレイミド化合物が高価である、毒性が高い等の理由により工業的規模で生産、販売されているものは数種に過ぎない、等の課題があり入手が困難な場合がある。
【0009】
一方、特許文献8〜11に提案されているような無水マレイン酸−オレフィン共重合体にアミンを反応する方法は、マレイミドの毒性や入手の問題が無い点で優れているが、反応に高温を必要とする、用いるアミンによってはイミド化が十分に進行しない場合がある、等の課題を有するものであった。
【0010】
そこで、本発明は、より容易にスクシンイミド化を達成することが可能となるスクシンイミド共重合体の新規な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のカルボン酸エステル残基単位−特定のオレフィン残基単位からなる共重合体と特定のアミン化合物を反応することにより、容易にスクシンイミド共重合体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、一般式(1)で示されるマレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位と一般式(2)で示されるオレフィン残基単位からなる共重合体(A)と、一種類以上のアミン化合物とを反応し、一般式(2)で示されるオレフィン残基単位及び一般式(3)で示されるスクシンイミド単位からなるスクシンイミド共重合体とすることを特徴とするスクシンイミド共重合体の新規な製造方法に関するものである。
【0013】
【化1】

(ここで、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【0014】
【化2】

(ここで、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基を示す。)
【0015】
【化3】

(ここで、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基を示す。)
本発明を以下詳細に説明する。
【0016】
本発明は共重合体(A)とアミン化合物とを反応し、スクシンイミド共重合体とする新規な製造方法に関するものである。
【0017】
本発明で用いられる共重合体(A)は、上記一般式(1)で示されるマレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位と上記一般式(2)で示されるオレフィン残基単位からなる共重合体であり、特に本発明の目的を損なわない限りにおいて他の共重合可能な単量体残基単位を含有しているものであってもよい。
【0018】
一般式(1)におけるR、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等を挙げることができ、中でもメチル基であることが好ましい。ここで、炭素数12を越えるアルキル基である場合、反応効率に劣るものとなり、効率よくスクシンイミド共重合体を製造することが困難となる。
【0019】
また、一般式(2)におけるR、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等を挙げる事ができる。
【0020】
該一般式(2)で示されるオレフィン残基単位を誘導するオレフィン類としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−へキセン、2−メチル−1−へプテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−へキセン、スチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特にスクシンイミド共重合体とした際に耐熱性、機械的特性に優れたスクシンイミド共重合体が得られる事からイソブテンまたはスチレンが好ましい。また、該オレフィン類は、1種または2種以上組み合わせて用いる事ができる。
【0021】
本発明に用いられる共重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、共重合可能な他の単量体残基単位を含有するものであってもよく、該単量体残基単位を誘導する共重合可能な他の単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;2−ブテン、ノルボルネン等の内部オレフィン類;ビニルピリジン;酢酸ビニルが挙げられ、これら1種または2種以上組み合わせて用いる事が出来る。
【0022】
共重合体(A)を構成するマレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位とオレフィン残基単位の組成比は、機械的特性、成形加工性、透明性に優れたスクシンイミド共重合体が得られることから、該マレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位40〜60モル%、該オレフィン残基単位60〜40モル%であることが好ましく、共重合可能な他の単量体残基単位を含む場合においては、該他の単量体残基単位は0.1〜20モル%であることが好ましい。
【0023】
該共重合体(A)の分子量については、制限なく、その中でも得られるスクシンイミド共重合体が特に成形加工性、機械的特性に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により臭化リチウム−N、N−ジメチルホルムアミドを溶媒とし40℃の温度で測定した際の標準ポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量が1×103〜1×10であることが好ましく、特に5×103〜5×10であることが好ましい。
【0024】
該共重合体(A)としては、例えばマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジメチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジエチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジエチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジn−プロピルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジn−プロピルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジイソプロピルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジイソプロピルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジn−ブチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジn−ブチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジi−ブチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジi−ブチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジs−ブチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジs−ブチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジtert−ブチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジtert−ブチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジn−ペンチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジn−ペンチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジアミルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジアミルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジn−ヘキシルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジn−ヘキシルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジn−ヘプチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジn−ヘプチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジオクチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジオクチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジノニルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジノニルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジデシルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジデシルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジドデシルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジドデシルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジメチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジエチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジエチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジn−プロピルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジn−プロピルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジイソプロピルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジイソプロピルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジn−ブチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジn−ブチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジi−ブチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジi−ブチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジs−ブチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジs−ブチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジtert−ブチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジtert−ブチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジn−ペンチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジn−ペンチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジアミルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジアミルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジn−ヘキシルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジn−ヘキシルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジn−ヘプチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジn−ヘプチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジオクチルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジオクチルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジノニルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジノニルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジデシルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジデシルエステル−スチレン共重合体、フマル酸ジドデシルエステル−イソブテン共重合体、フマル酸ジドデシルエステル−スチレン共重合体等が例示でき、その中でも特に反応効率よくスクシンイミド共重合体が得られることから、マレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジメチルエステル−スチレン共重合体、マレイン酸ジエチルエステル−イソブテン共重合体、マレイン酸ジエチルエステル−スチレン共重合体が好ましく、特にマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体が好ましい。
【0025】
該共重合体(A)は、本発明の目的を達成する限りどのような方法により入手したものでもよく、例えばマレイン酸ジエステル及び/又はフマル酸ジエステルとオレフィン類とをラジカル共重合する方法、無水マレイン酸とオレフィン類とのラジカル共重合により得られる無水マレイン酸−オレフィン共重合体をエステル化する方法、等により入手することが可能である。
【0026】
マレイン酸ジエステル及び/又はフマル酸ジエステルとオレフィン類とのラジカル共重合により入手する際のマレイン酸ジエステルやフマル酸ジエステルに特に制限はなく、市販のものを使用することができる。
【0027】
該マレイン酸ジエステル、該フマル酸ジエステルとしては、例えばマレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジn−プロピルエステル、マレイン酸ジイソプロピルエステル、マレイン酸ジn−ブチルエステル、マレイン酸ジi−ブチルエステル、マレイン酸ジs−ブチルエステル、マレイン酸ジtert−ブチルエステル、マレイン酸ジn−ペンチルエステル、マレイン酸ジアミルエステル、マレイン酸ジn−ヘキシルエステル、マレイン酸ジn−ヘプチルエステル、マレイン酸ジオクチルエステル、マレイン酸ジノニルエステル、マレイン酸ジデシルエステル、マレイン酸ジドデシルエステル、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸ジn−プロピルエステル、フマル酸ジイソプロピルエステル、フマル酸ジn−ブチルエステル、フマル酸ジi−ブチルエステル、フマル酸ジs−ブチルエステル、フマル酸ジtert−ブチルエステル、フマル酸ジn−ペンチルエステル、フマル酸ジアミルエステル、フマル酸ジn−ヘキシルエステル、フマル酸ジn−ヘプチルエステル、フマル酸ジオクチルエステル、フマル酸ジノニルエステル、フマル酸ジデシルエステル、フマル酸ジドデシルエステル等が例示できる。
【0028】
該ラジカル重合を実施する際の重合溶媒としては、重合を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;酢酸エステルや芳香族溶媒とアルコールの混合溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;水等が挙げられる。該ラジカル重合には、セルロース系、ビニルアルコール系などの分散安定剤を使用することもできる。
【0029】
該ラジカル重合を行なう際の重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジーtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、パーブチルネオデカノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(2,2−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0030】
重合温度は重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40℃〜120℃の範囲で行なう事が好ましい。
【0031】
重合時間は重合開始剤量にも関係するが、0.5時間から48時間であり、好ましくは3時間から30時間である。
【0032】
また、共重合体(A)の別の入手方法として、無水マレイン酸−オレフィン共重合体をエステル化する方法を挙げることもできる。
【0033】
無水マレイン酸−オレフィン共重合体は、本発明の目的を達成する限りにおいては特に制限されるものではなく、例えば無水マレイン酸とオレフィン類とをラジカル共重合する方法、等により入手することが可能であるし、また、無水マレイン酸−イソブテン共重合体については市販品を用いる事も可能である。
【0034】
エステル化反応については、触媒の存在下、無水マレイン酸−オレフィン共重合体とアルコールとを、常圧、加圧下または減圧下に生成する水を除去しながら反応することにより得ることができる。
【0035】
触媒としては、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸;フッ化ホウ素、塩化アルミ等のルイス酸;トリエチルアミン、ピリジンやモルフォリン等のアミン類、等を挙げる事ができる。
【0036】
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール等を挙げることができる。
【0037】
反応温度は、例えば0℃〜300℃であり、好ましくは50℃〜200℃である。
【0038】
反応時間は、反応温度や触媒量により適宜選択すればよく、例えば0.5時間から48時間であり、好ましくは1時間から30時間である。
【0039】
本発明のスクシンイミド共重合体の製造方法は、共重合体(A)とアミン化合物とを反応し、一般式(2)で示されるオレフィン残基単位及び一般式(3)で示されるスクシンイミド単位からなるスクシンイミド共重合体とするものである。Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基等を挙げる事ができる。その中でもスクシンイミド共重合体とした際に機械的特性、透明性に優れるスクシンイミド共重合体となることからメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基であることが好ましい。
【0040】
また、本発明に用いられるアミン化合物は一般式(3)で示されるスクシンイミド単位を誘導するものであり、該アミン化合物としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロへキシルアミン、アニリン、ナフチルアミン、2−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2−エチルアニリン、2−イソプロピルアニリン等が挙げられ、特に耐熱性に優れるスクシンイミド共重合体が得られることからメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロへキシルアミン、アニリン、2−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2−エチルアニリン、2−イソプロピルアニリンであることが好ましく、特にアニリンが好ましい。この際のアミン化合物の使用量は、本発明の目的が達成される限り特に制限はなく、その中でも特に得られるスクシンイミド共重合体が熱安定性に優れ、アミン化合物に由来する悪臭の発生が抑えられることから、共重合体(A)中のマレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位に対して40〜500モル%であることが好ましく、特に45〜100モル%であることが好ましい。
【0041】
共重合体(A)とアミン化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行う事ができ、その中でも均一な反応が可能となることから、溶媒の存在下で反応する事が好ましい。該溶媒としては、共重合体(A)および該アミン化合物と反応しないものであることが好ましく、例えばベンゼン、トルエン、キシレンの様な芳香族系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;共重合体(A)のエステル基と同じ骨格を有するアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒及びこれらの混合溶媒を例示することが出来る。その際の反応溶液濃度としては、本発明が実施できる限りにおいて如何なる濃度でもよく、特に生産効率に優れるスクシンイミド共重合体の製造方法となることから5〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
反応温度としては特に制限はなく、50〜250℃の範囲であることが好ましい。また、反応圧力も特に制限はなく、減圧下、常圧下、加圧下で行う事ができ、例えば常圧から10MPaで行うのが一般的である。
【0043】
反応時間は、反応温度にもよるため一概には決まらないが、0.5時間から48時間であり、好ましくは1時間から30時間である。
【0044】
使用する反応装置に特に制限はなく、通常の反応装置を用いることが可能であり、例えば槽型反応器、管型反応器等が用いられる。また、回分式、連続式のいずれでもよい。
【0045】
本発明で得られるスクシンイミド共重合体を、光学材料用途に使用する場合は、共重合体(A)および/またはスクシンイミド共重合体が製造工程中に溶媒に溶解した状態で、濾過により異物を取り除くことが好ましく、該濾過に用いる濾過材としては、例えば金属製網、金属性焼結フィルター、ガラスフィルター、ポリプロピレン製フィルター等のフィルター;活性炭、セライト、ゼオライト等を挙げることができ、その中でも、濾過時の圧力損失が小さく生産性への影響も小さくスクシンイミド共重合体とした際に異物の混入が少なく光学フィルム用途に適したものとなることから絶対濾過精度0.5μm以上50μm以下のフィルターを用いることが好ましい。
【0046】
スクシンイミド共重合体の回収方法としては、例えばスクシンイミド共重合体が溶解しない溶媒と混合し析出させる方法、スクシンイミド共重合体溶液をトレイ等に流延し自然状態又は加熱し溶媒を留去する方法、脱揮機能を有する二軸ニーダにスクシンイミド共重合体溶液を供給し溶媒を留去する方法、スクシンイミド共重合体溶液を噴霧し加熱された気体と接触させる事で溶媒を留去する方法、ドラム状のロールにスクシンイミド共重合体溶液を膜状に流し溶媒を除去する方法、等が挙げられる。また、溶媒の除去は常圧のみならず減圧下または加圧下で行なう事ができ、減圧下で行なう方が低い温度で溶媒を除去することができるため好ましい。
【0047】
本発明の製造方法より得られるスクシンイミド共重合体は、射出成形、ブロー成形、ガスアシスト成形、押出し成形、多層押出し成形、回転成形、溶媒キャスティング成形、熱プレス成形、真空成形などの公知の成形法での成形が可能であり、得られた成形体、フィルム、シート、チューブには、印刷、塗装、ハードコート、金属蒸着、反射防止コート等の表面処理をすることもできる。得られた成形体、フィルム、シート、チューブは、塩化メチレン、ジオキサン等の溶剤を用いて接着することができる。超音波接着やレーザー接着等も可能である。
【0048】
本発明の製造方法により得られたスクシンイミド共重合体は、剛性、耐熱性に優れ、ピックアップレンズ、ファクシミリレンズ、カメラレンズなどの光学レンズ;CDディスク、MOディスクなどの光ディスク基板;位相差フィルム、透明電極フィルム、OHPフィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、前方拡散フィルム、偏光分離フィルム、プリズムシートなどの光学フィルム;導光版、ディスプレー用シートなどの光学シート;カメラ、コピー機、コンピュータ、携帯電話などのハウジング、コネクターカバー、ヒューズカバー、リレーケース、スイッチ、コイルボビン;アイロン部品、ドライアーカバー、シェーバーカバー、温水器カバー、コーヒーメーカー部品、VTR部品、エアコン部品、冷蔵庫部品などの電気電子部品;照明カバーや看板などの照明部品;ヘッドライトレンズ、テールランプ、ストップランプ、バンパー、ラジエターグリル、エンブレム、フェンダー、フェンダーミラー、ドアパネル、ドアミラー、テールランプリム、ホイールキャップ、外装用トリムモール、インストルメントパネル、コンソールボックス、グローブボックス、内装用トリム、ピラーガーニッシュ、メーターフード、カーエアコングリルダクト、自動車外装板などの自動車部品;屋根瓦、窓ガラス、高速道路フェンス、アーケードドーム、採光板、サッシ、バスタブなどの建材部品;食器、飲料用ボトル、醤油、オイルなどのボトル類;電子レンジ対応食器などの食品容器・包装材料;医療バック、カテーテル、注射器、人工骨、コンタクトレンズ、水晶体、各種薬品ボトルなどの医療部品;ボタン、ファスナー、化粧品容器、シャンプー容器などの服飾雑貨類など幅広い用途で有用である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、高価なマレイミド類を使用することなく、耐熱性、透明性に優れたスクシンイミド共重合体をより容易に生産効率よく供給することが出来る。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
以下に実施例により得られたスクシンイミド共重合体の測定・評価方法を示す。
【0052】
〜分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC8020GPC)を用い、臭化リチウム−N,N−ジメチルホルムアミド溶液(10mmo/l)を溶媒として40℃で測定した溶出曲線より標準ポリエチレンオキサイド換算値として測定した。
【0053】
〜赤外吸収スペクトル(IR)の測定〜
赤外吸収測定装置(日立製作所製、商品名Infrared Spectrophotometer270−30)を用い、KBr法でIRスペクトルを測定した。
【0054】
〜NMRスペクトルの測定〜
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、商品名GSX270WB)を用い、重溶媒に重塩化メチレンを用い測定した。
【0055】
製造例1(マレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体の製造例)
攪拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた3リットルオートクレーブにマレイン酸ジメチルエステル280g、メチルエチルケトン1.9リットルを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン520ミリリットルを仕込み、tert−ブチルパーオキシピバレート0.63gを窒素で圧入し、70℃で6時間重合を行なった。得られた重合液をメタノール4リットルに落としポリマーを回収した。
【0056】
得られたポリマーは、真空乾燥機で真空下、100℃で3日間乾燥し、440gのマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体を得た。
【0057】
得られたマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体は、H-NMR分析より、50モル%のマレイン酸ジメチルエステル残基を含んでいた。また、GPC分析より重量平均分子量は20000であった。
【0058】
製造例2(無水マレイン酸−イソブテン共重合体の製造例)
攪拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた3リットルオートクレーブにエチルベンゼン1256gと無水マレイン酸135gを仕込み、窒素で十分置換した後、イソブテン145gを仕込んだ。オートクレーブにアゾビスイソブチロニトリル4.53gをエチルベンゼン50gに希釈した溶液を窒素で圧入し、90℃で4時間重合を行なった。得られた重合液スラリーを濾過してポリマーを回収した。
得られたポリマーは、真空乾燥機で真空下、100℃で3日間乾燥し、202gの無水マレイン酸−イソブテン共重合体を得た。
【0059】
得られた無水マレイン酸−イソブテン共重合体は、H-NMR分析より、50モル%の無水マレイン酸残基を含んでいた。また、GPC分析より重量平均分子量は20000であった。
【0060】
実施例1
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートの付いた500ミリリットル四つ口フラスコにN−メチルピロリドン200ミリリットルと製造例1で得られたマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体70gを入れた。撹拌しながら系内を窒素で充分置換した後、アニリン35.6gを添加した。内温を180℃まで上げ5時間反応した。
【0061】
得られた反応液を室温まで冷却し、水2リットルに落としポリマーを回収した。得られたポリマーはアセトン200gに溶解し、メタノール0.5リットルに落とす操作を2回繰り返し精製した。得られたポリマーを真空下、110℃で2日間乾燥し80gを回収した。
【0062】
IRおよびNMRから、イソブテン−N−フェニルマレイミド共重合体であることを確認した。GPC分析より重量平均分子量は20000であった。
【0063】
比較例1
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートの付いた500ミリリットル四つ口フラスコにN−メチルピロリドン(NMP)200ミリリットルと製造例2により得られた無水マレイン酸−イソブテン共重合体53.470gを入れた。撹拌しながら系内を窒素で充分置換した後、アニリン35.6gを添加した。内温を180℃まで上げ5時間反応した。
【0064】
得られた反応液を室温まで冷却し、水2リットルに落としポリマーを回収した。得られたポリマーはアセトンに溶解しなかった。未精製のまま、真空下、110℃で2日間乾燥し88gを回収した。
【0065】
得られたポリマーは、IRおよびNMRから、スクシンイミド単位となる前のフェニルマレアミド酸残基が残存した共重合体であることを確認した。
【0066】
比較例2
500ミリリットルオートクレーブにメタノール200ミリリットル、製造例2により得られた無水マレイン酸−イソブテン共重合体53.5gおよびアニリン35.6gを入れた。撹拌しながら系内を窒素で充分置換した後、内温を180℃まで上げ5時間反応した。
【0067】
得られた反応液を室温まで冷却し、SUS製のトレイに流延し減圧下、110℃でメタノールを除去しポリマーを回収した。
【0068】
得られたポリマーは、IRおよびNMRから、スクシンイミド単位となる前のフェニルマレアミド酸残基が残存した共重合体であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるマレイン酸ジエステル残基単位及び/又はフマル酸ジエステル残基単位と一般式(2)で示されるオレフィン残基単位からなる共重合体(A)と、一種類以上のアミン化合物とを反応し、一般式(2)で示されるオレフィン残基単位及び一般式(3)で示されるスクシンイミド単位からなるスクシンイミド共重合体とすることを特徴とするスクシンイミド共重合体の新規な製造方法。
【化1】

(ここで、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化2】

(ここで、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基を示す。)
【化3】

(ここで、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または芳香族基を示す。)
【請求項2】
共重合体(A)がマレイン酸ジメチルエステル−イソブテン共重合体、アミン化合物がアニリン、スクシンイミド共重合体がN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のスクシンイミド共重合体の新規な製造方法。
【請求項3】
共重合体(A)と、アミン化合物との反応を反応温度50〜250℃の間で行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のスクシンイミド共重合体の新規な製造方法。

【公開番号】特開2006−257233(P2006−257233A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75592(P2005−75592)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】