説明

スクラッチカード剥離装置

【課題】スクラッチカード2を、刃物30と刃物台40の間に挟み込み、搬送ローラー50で搬送してカード上のスクラッチ隠蔽層20を剥離するスクラッチカード剥離装置において、剥離されるスクラッチ隠蔽層20の剥離片22を収集し易く、かつカード等周辺に付着しないような形状にし、さらに刃物30の先端でカード2表面や刃物台40を傷めることのないスクラッチカード剥離装置の提供にある。
【解決手段】刃物30の刃角が50〜70°、仰角が10〜20°、逃げ角が10〜20°の範囲であり、刃物30の刃先部分がR3〜20μmの丸味処理されている、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理されているスクラッチカード剥離装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置に関するものであり、さらに詳細には、刃物を用い素早く安全(カード面を傷めず)に、かつ剥離カスが確実に収集されるスクラッチカード剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、インスタント抽選券やゲーム用カードなどにおいて、「当たり」、「外れ」あるいはそれに該当する絵柄などでなる個別(機密)情報を隠蔽するために、隠蔽性とスクラッチ性(引っ掻き易さ)を有し、凝集破壊性のあるゴム系のインキによりその個別情報を隠蔽し、購入した顧客がその使用に際し、コイン等でスクラッチオフ(引っ掻き落とすこと)してその個別情報を視認するスクラッチ印刷物が知られ、ゲーム用等を含め種々の分野で利用されている。
【0003】
上記のスクラッチ隠蔽層が施された印刷物として、例えば紙やプラスチックシートでなる基材シート上に絵柄、文字、数字などの個別情報が印刷されていて、その個別情報を覆うようにスクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードがあり、このスクラッチカードを購入した顧客や、場合によっては顧客が持ち込んだスクラッチカードを販売所等でまとめてコインや爪等でスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフして、文字、数字などでなる個別情報や当落等を表す判定情報を目視で認識できるようになっている。
【0004】
このように、特に販売所等では、大量のスクラッチカード等のスクラッチ隠蔽層を剥離(スクラッチオフ)する作業があり、この際コインや爪などを用いた人手によるものでは多くの時間と労力を要し、かつ剥離されたスクラッチ隠蔽層の屑が散乱し、周辺を汚すという問題があった。
【0005】
上記問題点を解決するものとして、搬送路の上にスクレイパ(刃物)の先端が接触するよう配置し、その搬送路とスクレイパの間にスクラッチ券を通すことによって、簡単に素早く媒体のスクラッチ隠蔽層を剥がし、また、スクレイパの下部にスクラッチ隠蔽層の屑を集める収集箱を設けて、スクレイパ先端部によって剥がされたスクラッチ隠蔽層の屑は収集箱に収集されて散らばることを防止するようになっている。さらにスクレイパに押圧調整機構を持たせて厚さ・硬さの異なるスクラッチ券の剥離作業にも対応可能なスクラッチ券剥離機構がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2003−40520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来技術(スクラッチ券剥離機構)においては、簡単に、かつ素早い剥離作業は可能であるが、剥離されたスクラッチ隠蔽層の屑は、細かく砕けたりしてカードやスクレイパ、搬送路等周辺にその粘着性と帯電等で付着し、カードとスクレイパの間に噛み込んで剥離性能を低下させたりし、収集箱への収集も儘ならないという問題があった。さらにスクレイパに押圧調整機構を持たせたものとして、カードの厚さ・硬さに対応可能としているが、このためスクレイパの刃先でカード表面の印刷面等を傷めたり、また、カードが通過した後の搬送路を傷めたりするという問題点があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、スクラッチカードを、刃物と刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引張り搬送してカード上のスクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置において、剥離されるスクラッチ隠蔽層の屑を収集し易く、かつカード等周辺に付着しないような形状にし、さらに刃物の先端でカード表面や刃物台を傷めることのないスクラッチカード剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置において、前記刃物の刃角が50〜70°、仰角が10〜20°、逃げ角が10〜20°の範囲であることを特徴とするスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0010】
また、請求項2の発明では、前記刃物の刃先部分がR3〜20μmの丸味処理されている、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理されていることを特徴とする請求項1記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0011】
また、請求項3の発明では、前記刃物と刃物台との接点に、前記スクラッチカードの走行方向と逆方向に回転し、外周縁が軽く当たる軟質ブラシローラーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0012】
また、請求項4の発明では、前記回転する軟質ブラシローラーの下部で、該ブラシ先端に食い入るようにドクターブレードが当設されていることを特徴とする請求項3記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0013】
また、請求項5の発明では、前記刃物の刃先が刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止される機構を有していることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0014】
また、請求項6の発明では、スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と回転するローラー状の刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置であって、前記ローラー状の刃物台がスクラッチカードの走行方向に準じて回転し、該回転方向に対し先端が対向するように当設しているドクターブレードを設けたことを特徴とするスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0015】
また、請求項7の発明では、前記刃物の刃角が50〜70°、仰角が10〜20°、逃げ角が10〜20°の範囲であることを特徴とする請求項6記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0016】
また、請求項8の発明では、前記刃物の刃先部分がR3〜20μmの丸味処理されている、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理されていることを特徴とする請求項6乃至7のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【0017】
さらにまた、請求項9の発明では、前記刃物の刃先が回転するローラー状の刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止される機構を有していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0019】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置において、前記刃物の刃角を50〜70°、仰角を10〜20°、逃げ角を10〜20°の範囲とすることによって、スクラッチカードから剥離されたスクラッチ隠蔽層の剥離片(削りカス)を削り方向に小さく丸めることができ、従来のように剥離片が細かく砕けたりしてカードや刃物等周辺に付着するようなことが無くなり、剥離片の排出、回収を容易にするスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0020】
また、上記請求項2に係る発明によれば、前記刃物の刃先部分をR3〜20μmの丸味処理を施したものとし、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理したものとすることによって、スクラッチカードの表面あるいは表面の印刷面を刃先で傷めることのないスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0021】
また、上記請求項3に係る発明によれば、前記刃物と刃物台との接点に、前記スクラッチカードの走行方向と逆方向に回転し、外周縁が軽く当たる軟質ブラシローラーを設けたことによって、剥離されたスクラッチ隠蔽層の剥離片を排出し易いように丸めるとともにスクラッチカードが通過した後、刃物等付近の剥離片残りカスを回転する軟質ブラシローラーで排除するスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0022】
また、上記請求項4に係る発明によれば、前記回転する軟質ブラシローラーの下部で、その先端に食い入るようにドクターブレードを当設することによって、ブラシ自体に付着した剥離片カスを自動的に除去することができる。
【0023】
さらにまた、上記請求項5に係る発明によれば、前記刃物の刃先を刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止させる機構とすることによって、スクラッチ隠蔽層を削りとることができるとともに、スクラッチカードが通過した後、従来のような刃物に押圧調整機構を持たせた単純な押し付けでは刃先が刃物台に突き当たるといった弊害(傷等)を防止するスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0024】
また、上記請求項6に係る発明によれば、スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と回転するローラー状の刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置であって、前記ローラー状の刃物台がスクラッチカードの走行方向に準じて回転し、該回転方向に対しドクターブレードの先端を対向するように当設せしめることによって、刃物で剥離されたスクラッチ隠蔽層の剥離片(削りカス)は、刃物に押されてスクラッチカード上に溜まるようになるが、剥離終了とともにローラー状の刃物台の外周面に付着し、この付着した剥離片をドクターブレードによって掻き取られて排出するスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0025】
また、上記請求項7に係る発明によれば、前記刃物の刃角を50〜70°、仰角を10〜20°、逃げ角を10〜20°の範囲とすることによって、スクラッチカードから剥離されたスクラッチ隠蔽層の剥離片(削りカス)を削り方向に小さく丸めることができ、従来のように剥離片が細かく砕けたりしてカードや刃物等周辺に付着するようなことが無くなり、この剥離片をローラー状の刃物台に丸められた状態で付着させることができ、よって、より剥離片の排出、回収を容易にするスクラッチカード剥離装置とすることができる

【0026】
また、上記請求項8に係る発明によれば、前記刃物の刃先部分をR3〜20μmの丸味処理を施したものとし、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理したものとすることによって、スクラッチカードの表面あるいは表面の印刷面を刃先で傷めることのないスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0027】
さらにまた、上記請求項9に係る発明によれば、前記刃物の刃先をローラー状の刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止させる機構とすることによって、スクラッチ隠蔽層を削りとることができるとともに、スクラッチカードが通過した後、従来のような刃物に押圧調整機構を持たせた単純な押し付けでは刃先がローラー状の刃物台に突き当たるといった弊害(傷等)を防止するスクラッチカード剥離装置とすることができる。
【0028】
従って本発明は、スクラッチカードのスクラッチ隠蔽層を簡便で素早く、かつスクラッチ隠蔽層の剥離片を容易に排出・収集できるスクラッチカード剥離装置として、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明のスクラッチカード剥離装置の一事例を示す側面概略図であり、図2は、本発明のスクラッチカード剥離装置の他の一事例を示す側面概略図である。また図3は、本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物の角度等状態を示す側面概略図であり、図4は、本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物の刃先の状態を示す側面概略図である。また図5から図9は、本発明のスクラッチカード剥離装置を用いてスクラッチ隠蔽層を剥離する事例を示す側面概略図である。
【0031】
本発明は、例えば図1に示すように、刃物(30)とその下の刃物台(40)と、後方の1対の搬送ローラー(50)とでなり、スクラッチ隠蔽層(20)が施されているスクラッチカード(2)を、その刃物(30)と上面が平らな刃物台(40)の間に挟み込み、さらに後方の搬送ローラー(50)間を走行させ、このとき、刃物(30)でスクラッチカード(2)のスクラッチ隠蔽層(20)を剥離するようにしたスクラッチカード剥離装置である。
【0032】
また、本発明のスクラッチカード剥離装置の他の形態として、例えば図2に示すように、刃物(30)とその下の回転する刃物台(40)と、後方の1対の搬送ローラー(50)とでなり、スクラッチ隠蔽層(20)が施されているスクラッチカード(2)を、その刃物(30)と回転するローラー状の刃物台(42)の間に挟み込み、さらに後方の搬送ローラー(50)間を走行させ、このとき、刃物(30)でスクラッチカード(2)のスクラッチ隠蔽層(20)を剥離するようにしたスクラッチカード剥離装置である。
【0033】
そこで、上記請求項1に係る発明は、例えば図3に示すように、刃物(30)の刃角(a)を50〜70°、その仰角(b)を10〜20°、逃げ角(c)を10〜20°の範囲とするスクラッチカード剥離装置である。
【0034】
このように、刃物(30)の各角度(a、b、c)を上記のようにすることによって、図3に示すように、スクラッチカード(2)から剥離されたスクラッチ隠蔽層(20)の剥離片(22)が削り方向に小さく丸めることができ、そのためこの丸められた剥離片(22)は容易に排出・回収されるようにしたスクラッチカード剥離装置とするものである

【0035】
また、上記請求項2に係る発明は、例えば図4(a)に示すように、刃物(30)の先端部分に3〜20μmの丸み(R)を設けたものであり、この丸み(R)を持った先端とすることによって、スクラッチカード(2)の表面、特に「当たり」「外れ」等個別情報を含め表面の印刷層を傷めずにスクラッチ隠蔽層(20)を剥離することができるようにしたものである。
【0036】
上記刃物(30)の先端部分の丸み(R)が3μmに満たないと、スクラッチカードの表面に傷が付く危惧があり、20μmを越えるとスクラッチ隠蔽層(20)の剥離がしにくくなるので好ましくない。
【0037】
さらにまた、上記請求項2に係る発明では、例えば図4(b)に示すように、刃物(30)の先端部分に5〜30μmの鈍化処理幅(W)を施したスクラッチカード剥離装置であり、この鈍化処理幅(W)を持った先端とすることによって、スクラッチカード(2)の表面、特に「当たり」「外れ」等個別情報を含め表面の印刷層を傷めずにスクラッチ隠蔽層(20)を剥離することができるようにしたものである。
【0038】
上記刃物(30)の先端部分の鈍化処理幅(W)が5μmに満たないと、スクラッチカードの表面に傷が付く危惧があり、30μmを越えるとスクラッチ隠蔽層(20)の剥離がしにくくなるので好ましくない。
【0039】
また、上記請求項3に係る発明では、例えば図5に示すように、刃物(30)と、刃物台(40)と、スクラッチカード(2)との接点に外周縁が軽く当たる軟質ブラシローラー(52)を設け、この軟質ブラシローラー(52)はスクラッチカード(2)の走行方向(P)と逆方向に回転させる。この回転は、後方の1対の搬送ローラー(50)の駆動からベルト(51)を介して伝達することもできる。
【0040】
このように軟質ブラシローラー(52)を設けることによって、例えば図6(a)に示すように、スクラッチカード(2)から剥離された剥離片(22)を回転する軟質ブラシローラー(52)の先端で引っ掻き方向に丸めて排出し易いようにし、図6(b)に示すように、スクラッチカード(2)が刃物(30)から通り抜けた後、刃物(30)や刃物台(40)等付近の剥離片残りカス(22a)を除去することができる。
【0041】
さらに上記請求項4に係る発明では、例えば図6(c)に示すように、軟質ブラシローラー(52)の下部で、回転する方向に向かって、その先端に食い入るようにドクターブレード(54)を当設したものである。
【0042】
このように、軟質ブラシローラー(52)にドクターブレード(54)を設けることによって、ブラシ自体に付着した剥離片カス(22c)をも自動的に除去することができる。
【0043】
また、上記請求項5に係る発明は、例えば図7に示すように、刃物(30)の刃先を、刃物台(40)の上面から、通過させるスクラッチカード(2)の厚み(D)よりやや狭い位置、即ち刃物(30)の刃先と刃物台(40)の上面との距離(E)が通過させるスクラッチカード(2)の厚み(D)よりやや小さい値となるようにしたものである。
【0044】
さらに具体的には、例えば図7に示すように、刃物(30)は、上部の駆動力(K)からスプリング(35)を介して刃物台(40)上のスクラッチカード(2)に押し当てられるが、刃物(30)の上端の突起部(30a)が調整可能な固定部(33)に突き当た
り、刃物台(40)上面に対しスクラッチカード(2)の厚み(D)よりやや小さい上面との距離(E)に相当する間隔で停止するようにしたもので、この距離(E)は、スクラッチカード(2)の基材の種類(紙、PVC、PET等)やその厚み(D)等も考慮するなどして、カード(2)の厚み(D)を適宜設計してよい。
【0045】
上記のようにすることによって、スクラッチカード(2)上のスクラッチ隠蔽層(20)をスクラッチオフすることができるとともに、スクラッチカード(2)が通過した後、単純な刃物(30)の押し付けで起こる弊害(刃先が刃物台(40)に突き当たり、刃先を傷めること)を防止することができる。
【0046】
また、上記請求項6に係る発明は、例えば図2に示すように、スクラッチ隠蔽層(20)が施されているスクラッチカード(2)を、刃物(30)と回転するローラー状の刃物台(42)の間に挟み込み、1対の搬送ローラー(50)で引っ張り搬送し、スクラッチ隠蔽層(20)を剥離するスクラッチカード剥離装置で、ローラー状の刃物台(42)はスクラッチカード(2)の走行方向(P)に準じて回転し、その回転方向(Q)に対し、先端が対向するように当設しているドクターブレード(47)を設けたスクラッチカード剥離装置である。
【0047】
このように、回転するローラー状の刃物台(42)の回転方向(Q)に対しドクターブレード(47)当設せしめることによって、例えば図8(a)に示すように、刃物(30)で剥離されたスクラッチ隠蔽層(20)の剥離片カス(22c)は、刃物(30)に押されてスクラッチカード(2)上に溜まるようになるが、図8(b)に示すように、剥離終了とともに刃物(30)を外し、スクラッチカード(2)が通過すれば、ローラー状の刃物台(42)の外周面にまとまって付着するようになり、さらにローラー状の刃物台(42)が回転して図8(c)に示すように、剥離片カス(22c)がドクターブレード(47)で掻き取られ、剥離片収集箱(図示せず)等へ排出除去されるようになり、次のスクラッチカードの供給時には清掃されたローラー状の刃物台(42)となる。
【0048】
上記請求項7に係る発明は、例えば図9に示すように、回転するローラー状の刃物台(42)上を走行するスクラッチカード(2)のスクラッチ隠蔽層(20)を剥離する刃物(30)の刃角(a)を50〜70°、その仰角(b)を10〜20°、逃げ角(c)を10〜20°の範囲とするスクラッチカード剥離装置である。
【0049】
また、上記請求項8に係る発明は、特に図示しないが上記請求項2に係る発明の上面が平坦な刃物台に代え回転するローラー状の刃物台としたもので、同様に上記請求項9に係る発明も上記請求項5に係る発明の刃物台に代え回転するローラー状の刃物台としたものであり、その効果も略同様なものである。
【0050】
以下に本発明のスクラッチカード剥離装置に用いられるスクラッチカードの材料等について説明する。
【0051】
本発明に関わるスクラッチカードは、例えば図10に示すように、プラスチック等でなる基材シート(10)上に、文字、数字等でなる個別情報(12)が印刷されていて、この個別情報(12)を覆うように透明ニスでなる易剥離層(14)が個別情報(12)の保護とこの上に形成するスクラッチオフ性と隠蔽性を兼ね備えたスクラッチ隠蔽層(20)の剥離性を良くするために形成されてスクラッチカード(2)としているのが一般的である。
【0052】
また、スクラッチゲームカードなどでは、前記のスクラッチ隠蔽層(20)上にチタン白を主体とした白色インキで白色隠蔽層(図示せず)を設け、当落や等級等を表す判定(
判別)情報上のスクラッチ隠蔽層(20)の存在を隠す場合があるが、このような場合は、販売所等で上記本発明のスクラッチカード剥離装置が有用になる。
【0053】
上記スクラッチカード(2)を構成する基材シート(10)としては、例えば、インスタントスクラッチ券等で使用されている上質紙やコート紙などが挙げられ、またテレフォンカードなどに用いられている白色ポリエチレンテレフタレート(PET)やクレジットカードなどに用いられている白色塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0054】
また、上記基材シート(10)の所定の位置に数字、記号、文字等の個別情報(12)を、例えばサーマルヘッドによる感熱転写方式、インキジェット方式、レーザー等によるトナー転写方式あるいはドットインパクト方式等で形成される。
【0055】
上記個別情報(12)上に、スクラッチ隠蔽(20)のスクラッチ(剥離)性の確保と個別情報(12)の保護を兼ねた易剥離層(14)を設けるのが一般的で、この易剥離層(14)としては、例えばポリウレタンアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂に添加剤としてシリコンやワックス(ポリエチレンワックス等)を5%以下添加したものをスクリーン印刷、グラビア印刷方式等で部分塗布して得られる。
【0056】
また、上記スクラッチ隠蔽(20)としては、スクラッチインキを用いてスクリーン印刷法やグラビア印刷法あるいはアニロックスロールを介して印刷するフレキソ印刷法で厚さ5〜10μmに形成されるが、そのスクラッチインキの組成は、例えば隠蔽性を付与するアルミニウム粉15〜25重量部、アルミナ白等体質顔料を含めた着色顔料15〜25重量部、凝集破壊(団塊)性のあるSBR、NBR等合成ゴム系樹脂15〜25重量部、これらにトルエンやキシレン、メチルイソブチルケトン等芳香族炭化水素系溶剤35〜45重量部と消泡剤等助剤5〜15重量部を加えてスクリーン印刷用インキやグラビア印刷用インキあるいはフレキソ印刷用インキとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のスクラッチカード剥離装置の一実施の形態を示す側面概略図である。
【図2】本発明のスクラッチカード剥離装置の他の一実施の形態を示す側面概略図である。
【図3】本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物の角度等形状の一実施の形態を示す側面概略図である。
【図4】本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物の刃先の形状の一実施の形態を示すもので、(a)は、丸みを表す側面概略図であり、(b)は、鈍化処理を表す側面概略図である。
【図5】本発明のスクラッチカード剥離装置に軟質ブラシローラーを備えた一実施の形態を示す側面概略図である。
【図6】本発明のスクラッチカード剥離装置に軟質ブラシローラーを備えた場合の効果の形態を示すもので、(a)、(b)、(c)はその工程を示す側面概略図である。
【図7】本発明のスクラッチカード剥離装置に刃物の下降停止機構を備えた一事例を示す側面概略図である。
【図8】本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物台がロール状の刃物台とした場合の効果の形態を示す側面概略図である。
【図9】本発明のスクラッチカード剥離装置を構成する刃物の角度等形状の他の一実施の形態を示す側面概略図である。
【図10】本発明のスクラッチカード剥離装置に使用されるスクラッチカードの一事例を側断面で表した説明図でる。
【符号の説明】
【0058】
2‥‥スクラッチカード
10‥‥基材シート
12‥‥個別情報
14‥‥易剥離層
20‥‥スクラッチ隠蔽層
22‥‥剥離片
22a‥‥剥離片残りカス
22c‥‥剥離片カス
30‥‥刃物
30a‥‥突起部
33‥‥調整可能な固定部
35‥‥スプリング
40‥‥上面が平坦な刃物台
42‥‥ロール状の刃物台
47‥‥刃物台用ドクターブレード
50‥‥搬送ローラー
51‥‥ベルト
52‥‥軟質ブラシローラー
54‥‥ブラシローラー用ドクターブレード
D‥‥スクラッチカードの厚み
E‥‥刃先と刃物台の距離
K‥‥駆動力
P‥‥スクラッチカードの走行方向
Q‥‥ロール状刃物台の回転方向
R‥‥刃先の丸み
W‥‥鈍化処理幅
a‥‥刃物の刃角
b‥‥刃物の仰角
c‥‥刃物の逃げ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置において、前記刃物の刃角が50〜70°、仰角が10〜20°、逃げ角が10〜20°の範囲であることを特徴とするスクラッチカード剥離装置。
【請求項2】
前記刃物の刃先がR3〜20μmの丸味処理されている、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理されていることを特徴とする請求項1記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項3】
前記刃物と刃物台との接点に、前記スクラッチカードの走行方向と逆方向に回転し、外周縁が軽く当たる軟質ブラシローラーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項4】
前記回転する軟質ブラシローラーの下部で、該ブラシ先端に食い入るようにドクターブレードが当設されていることを特徴とする請求項3記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項5】
前記刃物の刃先が刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止される機構を有していることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項6】
スクラッチ隠蔽層が施されているスクラッチカードを、刃物と刃物台の間に挟み込み、搬送手段で引っ張り搬送して前記スクラッチ隠蔽層を剥離するスクラッチカード剥離装置において、前記刃物台がスクラッチカードの走行方向に回転するローラー状でなり、該ローラー状の刃物台の外周にドクターブレードが当設されていることを特徴とするスクラッチカード剥離装置。
【請求項7】
前記刃物の刃角が50〜70°、仰角が10〜20°、逃げ角が10〜20°の範囲であることを特徴とする請求項6記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項8】
前記刃物の刃先がR3〜20μmの丸味処理されている、もしくは幅5〜30μmの鈍化処理されていることを特徴とする請求項6乃至7のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置。
【請求項9】
前記刃物の刃先が回転するローラー状の刃物台面から、搬送されるスクラッチカードの厚みよりやや狭い位置で停止される機構を有していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のスクラッチカード剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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