説明

スクラッチ印刷物、スクラッチ印刷用媒体及びその製造方法

【課題】コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるとともにオンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物、これを与えるためのスクラッチ印刷用媒体、及び、その製造方法の提供。
【解決手段】コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに有色インキを混入させてシート体11の上に与えた下地層14と、この上に下地層14と同色のネガ用有色インキで秘匿画像を象るように与えたネガ印刷層21と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物、これを与えるためのスクラッチ印刷用媒体及びその製造方法に関し、特に、オンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物、これを与えるためのスクラッチ印刷用媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白い紙の上に硬い酸化チタンなどの無機酸化物粒子を含む白色インキで文字や画像など(以下、単に「画像」とする。)を印刷しても、そのままでは視認できない。一方、印刷部分をコインなどで擦過すると、白色インキ中の無機酸化物粒子によりコインが削れて金属粉を生じ(ヤスリ効果)、この金属粉が印刷部分に付着して黒く着色し、画像を視認できるようになる。かかるタイプのスクラッチ印刷物は、印刷された画像の上に剥離可能なアルミペーストを被覆して与え、コインでこのアルミペーストを剥離して画像を視認できるようにする従来のタイプのスクラッチ印刷物と比べ、アルミペーストのスクラッチ滓を生じないなど、衛生的に優れる。
【0003】
ところで、印刷用紙にはその白みを高めるように蛍光増白剤が含まれており、ブラックライトのような紫外光を照射すると青白く蛍光発光する。一方、酸化チタンなどの無機酸化物粒子を含む白色インキは、このような紫外光を透過せず、また蛍光発光もしない。故に、上記したスクラッチ印刷物に紫外光を照射すると、印刷用紙の青白く発光する中に白色インキにより印刷された画像が影のように黒く浮き上がってしまう。つまり、印刷部分をコインなどで擦過することなしに画像を視認できてしまう、といった問題を生じるのである。
【0004】
これに対して、無機酸化物粒子を含む白色インキを白い紙の上にベタ塗りし、この上に画像を象るようにコート(被覆)を与えた、いわゆるネガタイプのスクラッチ印刷物が開発された。例えば、特許文献1では、紙媒体の上に酸化チタンを含む白色インキで下地層をベタ塗り印刷し、この上に白色剤を少なくとも含むマットニスで画像を象るようにネガパターン印刷を与えたネガタイプのスクラッチ印刷物が開示されている。かかるスクラッチ印刷物に紫外光を照射すると、印刷用紙の青白く発光する中にベタ塗り印刷された下地層全体が黒く浮き上がるものの、マットニスによるネガパターンで与えられた画像を視認することはできない。一方、画像部分をコインで擦過すると、ニスでコートされていない白色インキ部分だけにコインの金属粉が付着し着色して、画像を視認できるようになるのである。
【0005】
上記したネガタイプのスクラッチ印刷物において、透明ニスや白色インキによるコート(被覆)は、スクラッチ印刷物に特有の無機酸化物粒子を含む白色インキによるものとは異なり、一般的なインキ等を印刷して得られる。また、コートの印刷の仕方で着色される画像を自由に決定できる。すなわち、無機酸化物粒子を含む白色インキをベタ塗りした紙の供給を受ければ、コートを印刷する工程だけを一般的な印刷設備を有する場所で別途、行って、しかも着色される画像を自由に決定してスクラッチ印刷物を製造できる。すなわち、オンデマンド印刷が可能なのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4577909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ネガタイプのスクラッチ印刷物では、無機酸化物粒子を含む白色インキによるベタ塗り印刷とその上のコートとの境界線が着色される画像を象ることとなるため、かかる境界線における色差及び光沢差をなくす、若しくは、減じなければならない。特に、オンデマンド印刷では、コートを与える設備や環境が大きく異なり得るため、コートの印刷条件を厳格にすることなく、かかる境界線における色差及び光沢差を一定の範囲内に抑え得るようにすることが必要である。
【0008】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるとともにオンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物、これを与えるためのスクラッチ印刷用媒体及びかかるスクラッチ印刷用媒体を用いたオンデマンド印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるスクラッチ印刷物は、コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物であって、コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに有色インキを混入させてシート体の上に与えた下地層と、この上に前記下地層と同色のネガ用有色インキで前記秘匿画像を象るように与えたネガ印刷層と、を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、コインで擦過することによる秘匿画像の着色を抑制させることなく、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得て、特に、オンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物を提供できるのである。
【0011】
上記した発明において、前記有色インキは黄系色であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、無機酸化物粒子によるいわゆるヤスリ効果を失わせることなく容易に色を与えることができて、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得て、特に、オンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物を提供できるのである。また、ドライダウンによる色変化を抑制できて製造安定性にも優れるのである。
【0012】
上記した発明において、前記シート体と前記下地層との間には、前記有色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して与えた少なくとも1層以上の光沢層を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得て、特に、オンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物を提供できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記シート体と前記光沢層との間には、色の異なる少なくとも2色以上のインキで線画又は点描画を印刷して与えた迷彩画像層を更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差及び光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得て、特に、オンデマンド印刷に適した構成のスクラッチ印刷物を提供できるのである。
【0014】
本発明によるスクラッチ印刷用媒体は、コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物をオンデマンド印刷させて与えるためのスクラッチ印刷用媒体であって、コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに有色インキを混入させてシート体の上に下地層を与えたことを特徴とする。
【0015】
かかる発明によれば、コインで擦過することによる秘匿画像の着色を抑制させることなく、擦過前における秘匿画像の境界線にいて認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を提供できるのである。
【0016】
上記した発明において、前記有色インキは黄系色であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、無機酸化物粒子によるいわゆるヤスリ効果を失わせることなく容易に色を与えることができて、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を提供できるのである。また、ドライダウンによる色変化を抑制できて製造安定性にも優れるのである。
【0017】
上記した発明において、前記シート体と前記下地層との間には、前記有色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して与えた少なくとも1層以上の光沢層を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を提供できるのである。
【0018】
上記した発明において、前記シート体と前記光沢層との間には、色の異なる少なくとも2色以上のインキで線画又は点描画を印刷して与えた迷彩画像層を更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差及び光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を提供できるのである。
【0019】
本発明によるスクラッチ印刷用媒体の製造方法は、コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物をオンデマンド印刷させて与えるためのスクラッチ印刷用媒体の製造方法であって、コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに黄系色インキからなるコントラスト低減用インキを混入させた下地用インキでシート体の上にベタ印刷で下地層を与えることを特徴とする。
【0020】
かかる発明によれば、コインで擦過することによる秘匿画像の着色を抑制させることなく、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を得られるのである。
【0021】
上記した発明において、前記コントラスト低減用インキに赤系色インキからなる増色インキを更に混入させることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、いわゆるヤスリ効果を低減させることなく与えられる黄系色をより濃く発色させ得て、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を得られるのである。
【0022】
上記した発明において、前記下地層を与える前に、前記黄系色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して光沢層を与えることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を得られるのである。
【0023】
上記した発明において、前記光沢層を与える前に、色の異なる少なくとも2色のインキで線画又は点描画を印刷して迷彩画像層を与えることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、擦過前における秘匿画像の境界線において認識され得る色差及び光沢差をネガ印刷層の印刷状態に大きく依存させることなく更に容易に一定の範囲内に抑え得るオンデマンド印刷用のスクラッチ印刷用媒体を得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるスクラッチ印刷物の秘匿画像着色前の外観図である。
【図2】図1のA−A線での断面図である。
【図3】本発明によるスクラッチ印刷物の秘匿画像着色後の外観図である。
【図4】本発明によるスクラッチ印刷物の製造工程図である。
【図5】本発明によるスクラッチ印刷物の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による1つの実施例であるネガタイプのスクラッチ印刷物について図1乃至図3を用いて説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、スクラッチシート100は、印刷用の紙媒体11の上に、迷彩画像12、光沢画像13及び下地層14をこの順にオフセット印刷し、さらにこの上からネガパターン21をオンデマンド印刷先で印刷して得られるスクラッチ印刷物である。ここでは、文字「ABC」を秘匿画像1として、コインで擦過することで秘匿画像1が着色されて初めて視認可能となる(図3参照)。
【0027】
迷彩画像12は、赤色、青色、白黒スミ色などの色の異なる少なくとも2色以上のインキでそれぞれ線画又は点描画をオフセット印刷して与えられる。例えば、紙媒体11の上に白黒スミ色のインキで多数の細かいアルファベット文字を並べた図柄を印刷した上に、青色及び赤色のインキで水玉模様を印刷して与えられる。
【0028】
光沢画像13は、有色のインキで線画又は点描画を1回以上重ねて、オフセット印刷して与えられる。例えば、黄色のインキで瓦模様の如き繰り返し模様を迷彩画像12の上からオフセット印刷し第1の光沢画像13aを与え、更に、その上から、同様の黄色のインキで第1の光沢画像13aの模様と重ならないよう、位置をわずかにずらしてオフセット印刷し第2の光沢画像13bを与える。
【0029】
下地層14は、白色インキに、アルミナ、シリカ、二酸化チタンなどの無機酸化物粒子を加えた混合インキに、更に、有色顔料を含む有色インキを混合した下地用インキをベタ塗り印刷、または後述するようにオンデマンド印刷の脱落を防止するよう線画又は点描画を印刷して与えられる。特に、秘匿画像1を濃く着色するためには、下地層14を複層として表面の層に無機酸化物粒子をより多く含有させつつ、下地層14をより厚く設けることが好ましい。ここでは、下地層14は、第1下地層14a及び第2下地層14bの2層からなり、光沢画像13の上に、いわゆるヤスリ効果を与えるための二酸化チタンを加えた白色インキに黄色の顔料を含む黄色有色インキを混合した下地用インキをオフセット印刷でベタ塗り印刷し第1下地層14aを与え、更に、第1下地層14aよりも油分をより高め且つ二酸化チタンの量を高めた下地用インキをオフセット印刷でベタ塗り印刷又は線画又は点描画で印刷し第2下地層14bを与える。第1下地層14aの上により油分を高めた第2下地層14bを与えることで、下地層14のモットリングやパイリングを抑制できるのである。なお、第1下地層14a及び第2下地層14bを線画又は点描画とし、わずかにずらして与えることで、実質的にベタ刷り様になるようにして、後述するオンデマンド印刷の脱落を防止しても良い。
【0030】
ここで、下地用インキは、質量%で、顔料分と合わせて二酸化チタン粒子を45〜58%、樹脂分として合成樹脂を5〜16%、油分として鉱油を5〜16%及び植物油を5〜10%含み、光沢調整用のマット剤を5〜10%含む白色インキ1kgに対して、オフセット用黄色インキを10〜80gを混合したインキである。なお、乾燥剤及び被膜強化剤を合計で1%未満、乾燥被膜形成防止剤を1%未満を適宜含み得る。また、二酸化チタン粒子を多く含むインキはマット調の印刷を与えるが、白色インキ中の二酸化チタン粒子を質量%で50%以上含有させることで特に顕著にマット調の印刷となる。
【0031】
下地用インキとして、赤色顔料や青色顔料などの他の色の有色顔料を含む有色インキを白色インキに加えてもよい。但し、黄色顔料を含む有色インキにおいて黄系色を発色させると、より少量の有色インキで後述するオンデマンド印刷によるネガパターン21と見た目を同化させ得るので好ましい。つまり、二酸化チタンによるいわゆるヤスリ効果を失わせることがなく、また、剥離などの印刷落ちも生じにくくなるのである。さらに、ドライダウンによる色変化を抑制できて製造安定性を高めるのである。
【0032】
また、有色インキに色調を濃くする増色インキを加えることが好ましい。例えば、黄系色のインキに赤系色の顔料を含む赤系色のインキを増色インキとして加えると、下地層14はより濃い黄系色となる。よって、下地層14において無機酸化物粒子の相対的な含有量を減少させることなく黄系色の発色を濃くし得て、ネガパターン21との見た目を同化させることが更に容易になる。つまり、いわゆるヤスリ効果を低下させることなく、よりオンデマンド印刷に適した下地層14を印刷できる。
【0033】
図1及び図3に示すように、ネガパターン21は、オンデマンド印刷先において、例えば、文字「ABC」の秘匿画像1を象るように、下地用インキと同色のネガ用インキで印刷して与えられる。ネガ用インキは、一般的な印刷用インキであり、下地用インキと同系色のインキであって、できるかぎり色調を同じに印刷できるように調製されることが好ましい。つまり、ネガパターン21の間隙21aでは、同色の下地層14が裸出するが(特に図2参照)、秘匿画像1を視認できないのである。ここでは、ネガ用インキは、黄色の顔料を含む黄色インキである。黄系色で下地層14及びネガパターン21を与えることで、若干の色差を有したとしていても、人間の目による見た目を同化させやすいのである。一方で、黄系色であれば、コインで擦過され黒く着色された秘匿画像1との色差を大きくし、着色後の秘匿画像1を明瞭に視認させやすい。また、オンデマンド印刷によるネガパターン21の定着が悪いときにあっては、第2下地層14b、又は、これに加えて第1下地層14aを線画又は点描画とすることで、オンデマンド印刷の脱落を防止できる。
【0034】
なお、ネガパターン21の上には、赤色、青色、若しくは、白黒のドットからなるスミ色のいずれか又は複数からなる線画又は点描画を、クリスタリゼーションを生じるように与えてもよい。かかる線画又は点描画によれば、秘匿画像1をより視認できないようにできて好ましい。
【0035】
以上のように、かかるスクラッチシート100は、コインで秘匿画像1を擦過すると、ネガパターン21の間隙21aを介して、下地層14によっていわゆるヤスリ効果を生じて金属粉を生じる。かかる金属粉は、秘匿画像1の部分に付着してこれを黒く着色させ、秘匿画像1を視認できるようになる(図3参照)。ここで、下地層14は第1下地層14a及び第2下地層14bの2層で与えられ、ヤスリ効果のより高い第1下地層14aで生じた金属粉を、第1下地層14a及び第2下地層14bの2層で保持し、より濃く着色されるのである。
【0036】
また、かかるスクラッチシート100は、ブラックライトのような紫外光を表側に照射し、又は、紙媒体11を透過させようとしても、下地層14全体が影となって、秘匿画像1を視認することはできないのである。
【0037】
また、かかるスクラッチシート100は、下地用インキの中の黄色インキを減じても、下地層14に比較して強い光沢を有する光沢画像13により、下地層14とネガパターン21の見た目の同化、特に光沢の同化を図ることができるのである。また、第2下地層14bを線画又は点描画とすることで、見た目の同化がより図られ得るのである。加えて、赤系色の増色インキを黄系色の有色インキに添加すると、下地層14の発色の濃さを維持しつつ有色インキの量を減じて、相対的に二酸化チタン粒子を増加させることもできる。
【0038】
さらに、迷彩画像12は、色の異なる少なくとも2色以上のインキで線画又は点描画を印刷されて形成され、下地層14とネガパターン21の見た目の同化、特に色の同化を図ることができるのである。つまり、コインによる擦過無しでの秘匿画像1の視認をより確実に防止し得るのである。
【0039】
次に、本発明によるスクラッチ印刷物であるスクラッチシート100の製造方法について図4に沿って説明する。
【0040】
図5に示すようなオフセット印刷機30を用いて、紙媒体11の表面上に、上記した迷彩画像12、光沢画像13、及び下地層14を印刷する(オンデマンドスクラッチ用紙製造ステップ:S1)。なお、オフセット印刷機30が5胴式の場合、迷彩画像12を第1胴31、第2胴32及び第3胴33にて、光沢画像13を第4胴34及び第5胴35にて、それぞれ重ねて印刷する(下処理印刷ステップ:S11)。
【0041】
詳細には、迷彩画像12を与えるために第1胴31のインキタンクには白黒スミ色のインキ、第2胴32のインキタンクには青色のインキ、第3胴33のインキタンクには赤色のインキを、光沢画像13を与えるために第4胴34及び第5胴35のインキタンクには黄色のインキを充填して、それぞれ迷彩画像12及び光沢画像13を印刷する。なお、必要に応じて、排紙部Dにてスプレーパウダーを迷彩画像12及び光沢画像13の上に散布し、裏移りを防止してもよい。
【0042】
所定時間の経過後、下地層14を下地用インキで印刷する(下地印刷ステップ:S12)。詳細には、第1胴31、第2胴32及び第3胴33のインキタンク(図示せず)を空にし、第4胴34及び第5胴35のインキタンク(図示せず)に上記した下地用インキをそれぞれ充填し、光沢画像13が十分に乾燥したことを確認してから印刷を開始する。これにより、第1胴31、第2胴32及び第3胴33にて、下処理印刷ステップS11において散布したスプレーパウダーを除去することができ、第4胴34及び第5胴35にて、パイリングの発生を抑制し得て、下地層14を安定して印刷することができる。なお、印刷の開始までに、室内であれば光沢画像13を印刷後、約2〜3時間放置させることが好ましい。また、下処理印刷ステップS11において、黄色以外の色のインキを用いた第1胴31、第2胴32、第3胴33を用いる場合、それらのインキタンクをより入念に洗浄してから用いることが好ましい。
【0043】
かかるスクラッチ印刷用紙は、オフセット印刷機30の設備とは別の印刷設備に向けて出荷され、秘匿画像1を出荷先で適宜決定し、印刷を行い得る(オンデマンド印刷ステップ:S2)。
【0044】
次に、出荷されたスクラッチ印刷用紙の供給を受けた印刷設備では、オンデマンド印刷用機、例えば、電子写真式によるデジタル印刷機を用いて、ネガパターン21を出荷されたスクラッチ印刷用紙に印刷して与える(ネガ印刷ステップ:S21)。また、市販のトナープリンタのような家庭用印刷設備を用いてネガパターン21を印刷してもよい。なお、下地層14を十分に乾燥させた後、ネガパターン21を印刷することが好ましいが、スクラッチ印刷用紙を印刷設備に向けて出荷してからネガパターン21を印刷するまでにこれは一般的に乾燥している。
【0045】
更に必要に応じて、赤色、青色、若しくは、白黒のドットからなるスミ色のいずれか又は複数からなる線画又は点描画をクリスタリゼーションを生じるように与えてもよい(隠蔽画像印刷ステップ:S22)。
【0046】
上記した実施例によれば、オンデマンド印刷先で特殊な設備を有さずとも、秘匿画像1を決定し、これを視認可能とさせるスクラッチ印刷物を得られる。
【0047】
以上、本発明による代表的実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した請求項の範囲を逸脱することなく種々の代替的実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0048】
11 紙媒体
12 迷彩画像
13 光沢画像
14 下地層
21 ネガパターン
30 オフセット印刷機
100 スクラッチシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物であって、
コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに有色インキを混入させてシート体の上に与えた下地層と、
この上に前記下地層と同色のネガ用有色インキで前記秘匿画像を象るように与えたネガ印刷層と、を含むことを特徴とするスクラッチ印刷物。
【請求項2】
前記有色インキは黄系色であることを特徴とする請求項1記載のスクラッチ印刷物。
【請求項3】
前記シート体と前記下地層との間には、前記有色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して与えた少なくとも1層以上の光沢層を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクラッチ印刷物。
【請求項4】
前記シート体と前記光沢層との間には、色の異なる少なくとも2色以上のインキで線画又は点描画を印刷して与えた迷彩画像層を更に含むことを特徴とする請求項3記載のスクラッチ印刷物。
【請求項5】
コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物をオンデマンド印刷させて与えるためのスクラッチ印刷用媒体であって、コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに有色インキを混入させてシート体の上に下地層を与えたことを特徴とするスクラッチ印刷用媒体。
【請求項6】
前記有色インキは黄系色であることを特徴とする請求項5記載のスクラッチ印刷用媒体。
【請求項7】
前記シート体と前記下地層との間には、前記有色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して与えた少なくとも1層以上の光沢層を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のスクラッチ印刷用媒体。
【請求項8】
前記シート体と前記光沢層との間には、色の異なる少なくとも2色以上のインキで線画又は点描画を印刷して与えた迷彩画像層を更に含むことを特徴とする請求項7記載のスクラッチ印刷用媒体。
【請求項9】
コインで擦過することで秘匿画像を着色させて視認可能とさせるスクラッチ印刷物をオンデマンド印刷させて与えるためのスクラッチ印刷用媒体の製造方法であって、
コイン擦過用無機酸化物粒子を含む白色インキに黄系色インキからなるコントラスト低減用インキを混入させた下地用インキでシート体の上にベタ印刷で下地層を与えることを特徴とするスクラッチ印刷用媒体の製造方法。
【請求項10】
前記コントラスト低減用インキに赤系色インキからなる増色インキを更に混入させることを特徴とする請求項9記載のスクラッチ印刷用媒体の製造方法。
【請求項11】
前記下地層を与える前に、前記黄系色インキと同色のインキで線画又は点描画を印刷して光沢層を与えることを特徴とする請求項10記載のスクラッチ印刷用媒体の製造方法。
【請求項12】
前記光沢層を与える前に、色の異なる少なくとも2色のインキで線画又は点描画を印刷して迷彩画像層を与えることを特徴とする請求項11記載のスクラッチ印刷用媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75508(P2013−75508A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123927(P2012−123927)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【特許番号】特許第5031124号(P5031124)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(510125866)株式会社CBJスクラッチ (3)
【Fターム(参考)】