説明

スクラッチ隠蔽層付き印刷物

【課題】 スクラッチオフ以前に有価情報印刷部が透視され難いので盗み見されにくいスクラッチ隠蔽層付き印刷物を提供する。
【解決手段】 基材11と、該基材11の一方の面に有価情報印刷部21、透明性の剥離層13、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15B、隠蔽文字部23、及び隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15Aから構成され、前記有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とは重なり合う位置に設けられ、前記有価情報印刷部21が数字及び/又はアルファベットの文字列であり、前記隠蔽文字部23が全ての数字を重ね合わせた文字及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字の文字列であり、前記有価情報印刷部21と前記隠蔽文字部23とのPCS値の差で0.2以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽選券等の有価情報印刷部をスクラッチ隠蔽層で隠蔽してあるスクラッチ隠蔽層付き印刷物に関し、さらに詳しくは、スクラッチ隠蔽層をコイン等で引っ掻き落とし(スクラッチオフ)て、有価情報印刷部を認識する前に、有価情報印刷部を盗み見しにくいスクラッチ隠蔽層付き印刷物に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)スクラッチ隠蔽層付き印刷物はコインなどで隠蔽性のスクラッチ隠蔽層を引っ掻くと削りとって、下地の文字や図柄などの有価情報印刷部を目視でき、認識するものである。例えば抽選券やゲーム用カードなどにおいて、「当たり」、「外れ」又はそれに相当する絵柄などの有価情報印刷部を隠蔽性とスクラッチオフ性(引っ掻き落とし易さ性)を有るスクラッチ隠蔽層で隠蔽されている。そして、購入した顧客が使用時にコイン等でスクラッチオフして有価情報印刷部を視認する。このように、スクラッチ隠蔽層付き印刷物は有価情報印刷部を隠蔽性及びスクラッチ性を有するスクラッチ隠蔽層で隠蔽されているが、スクラッチオフ前でも、強い光を透過させて観察すると有価情報印刷部が透かして見え、所謂盗み見されるという欠点があった。このために、次のような提案がされている。(1)光不透過性のアルミニウムを挟んだ特殊用紙を用いる方法では、盗み見は防止できるものの、アルミニウムという余分な材料と、その積層が必要で、複雑な製造方法、長納期化、コスト高となる問題点がある。(2)スクラッチ性を有するインキを重ね刷りして隠蔽性を増す方法では、インキ代と印刷工程がかかり、長納期化、高コストとなる問題点がある。(3)有価情報印刷部の反対面に隠蔽層を追加する方法では、インキ代と印刷工程がかかり、長納期化、高コストとなる問題点がある。(4)スクラッチ性を有するインキ上に地紋を印刷する方法では、インキ代、製版代、印刷工程がかかり、長納期化、高コストとなる問題点がある。
【0004】
従って、スクラッチ隠蔽層付き印刷物はスクラッチオフ以前に有価情報印刷部が透視され難いので盗み見されにくく、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層として、スクラッチ隠蔽層を薄くでき、スクラッチ隠蔽層の重ね刷りを少なくでき、しかも、安価で透けやすいオフセット用のスクラッチ隠蔽も使用でき、スクラッチ隠蔽層付き印刷物の製造や流通でも引っかかって削れる心配も少なく、さらに、既存の設備や技術で安価に製造することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−34578号公報
【特許文献2】特開2007−144692号公報
【特許文献3】特開平11−254870号公報
【特許文献4】特開2002−103866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術)従来、スクラッチ印刷物(本願のスクラッチ隠蔽層付き印刷物に相当する)は、基材シート11面に、透明性の剥離剤を用いて印字された剥離性隠蔽情報層12を備え、該隠蔽情報層12(請求項2;非磁性1成分トナーからなる透明性の剥離剤を用いて静電印字方式にて印字されている)上より被覆する着色インキによる着色層13を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、非磁性1成分トナーを用い、しかも、静電印字方式にて印字するので、高コストで、専用の設備が必要であるという欠点がある。
【0007】
また、スクラッチ隠蔽層付印刷物は、シート状基材上に有価情報印刷部がスクラッチ性を有するインキにより隠蔽されているスクラッチ隠蔽層付印刷物であって、前記有価情報印刷部の一部分あるいは全面のいずれかの下部にすくなくとも贋造防止層(請求項2:感熱インキまたは示温インキ、)、(請求項3;赤外吸収インキを含む機能性インキ、)を設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、感熱インキ、示温インキ、赤外吸収インキを用いるために高コストであり、しかも、贋造や偽造の防止が課題であり盗み見については記載も示唆もされていない。
【0008】
さらに、スクラッチオフ籤券(本願のスクラッチ隠蔽層付き印刷物に相当する)は、基材上に、下地絵柄部と当たり、ハズレ等を表示する文字、番号、パターン等の抽選パターンとを設け、該抽選パターンを被覆するように隠蔽層を設けた籤券であって、前記下地絵柄部と抽選パターンを紫外線硬化型(UV)インキで印刷し、前記隠蔽層(請求項4;PCS濃度0.9以上)が油性の黒色プロセスインキ(請求項2;黒色UVインキ)により印刷されているものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、高コストなUVインキを用いた両層の密着性が低く、スクラッチ性が生じることでスクラッチ性を確保し、盗み見防止はPCS濃度0.9以上と過大なる隠蔽性の隠蔽層を必要とするという問題点がある。
【0009】
さらにまた、本出願人は、基材シートの上面にプリンターを用いて秘密情報が表示された秘密情報表示部と、少なくとも前記秘密情報表示部の上に形成され、下地の隠蔽性を有するとともにスクラッチ可能なスクラッチ隠蔽層と、前記基材シートの下面に形成され、基材シートの下側から光透過による前記秘密情報の判読を困難にする融和印刷層とを備えたスクラッチ隠蔽層付き印刷物を開示している(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、基材の両面に印刷するので、印刷工程が多く高コストであり、また、融和印刷層については、光透過による前記秘密情報の判読を困難にする融和印刷層とのみ記載され、さらに、融和印刷層/基材シート/保護層/スクラッチ隠蔽層で光透過濃度3.6とすることで、ほとんど光を透過しないようにすることで、裏面側から透かして不正に盗み見をできなくするものである。本願発明の基材11/有価情報印刷部21/透明性の剥離層13/隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15B/隠蔽文字部23/隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15Aと層構成が異なります。さらに、特許文献4では融和印刷層(強いていえば、本願の隠蔽文字部23に相当する)によって、光透過による前記秘密情報の判読を困難にするもので、融和印刷層は図3からも全面ベタ印刷であって、本願発明の限定された文字状模様である隠蔽文字部23がなく、隠蔽文字部23で有価情報印刷部21の情報をカムフラージュして判読しにくくするという技術的発想とは異なっています。
【0010】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、スクラッチオフ以前に有価情報印刷部が透視され難いので盗み見されにくく、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層として、スクラッチ隠蔽層を薄くでき、スクラッチ隠蔽層の重ね刷りを少なくでき、しかも、安価で透けやすいオフセット用のスクラッチ隠蔽も使用でき、スクラッチ隠蔽層付き印刷物の製造や流通でも引っかかって削れる心配も少なく、さらに、既存の設備や技術で安価に製造するスクラッチ隠蔽層付き印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わるスクラッチ隠蔽層付き印刷物10は、基材11と、該基材11の一方の面に有価情報印刷部21、透明性の剥離層13、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15B、隠蔽文字部23、及び隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15Aから構成され、前記有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とは重なり合う位置に設けられ、前記有価情報印刷部21が数字及び/又はアルファベットの文字列であり、
前記隠蔽文字部23が全ての数字を重ね合わせた文字及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字の文字列であり、前記有価情報印刷部21と前記隠蔽文字部23との濃度差がJIS−X−0501で測定したPCS値の差で0.2以上であり、前記スクラッチ隠蔽層付き印刷物10へ光を透かしても前記有価情報印刷部21が前記隠蔽文字部23で隠蔽されて透視され難いことを特徴とするスクラッチ隠蔽層付き印刷物である。
【0012】
請求項2の発明に係わるスクラッチ隠蔽層付き印刷物10は、前記有価情報印刷部21が赤系の色調で、隠蔽文字部23が墨系の色調であることを特徴とする請求項1に記載のスクラッチ隠蔽層付き印刷物10である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の本発明によれば、スクラッチオフ以前に有価情報印刷部21が透視され難いので盗み見されにくく、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15A、15Bを薄くでき、スクラッチ隠蔽層15A、15Bの重ね刷りを少なくでき、しかも、安価で透けやすいオフセット用のスクラッチ隠蔽インキを用いてスクラッチ隠蔽層15A、15Bを形成でき、スクラッチ隠蔽層付き印刷物10の製造や流通でも引っかかって削れる心配も少なく、さらに、既存の設備や技術で安価に製造するという効果を奏する。
【0014】
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、スクラッチオフ以前に有価情報印刷部21がより透視され難く盗み見されにくい、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の1実施例を示すスクラッチ隠蔽層付き印刷物の断面図である。
【図2】本願発明の1実施例を示すスクラッチ隠蔽層付き印刷物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0017】
(スクラッチ隠蔽層付き印刷物)本願発明のスクラッチ隠蔽層付き印刷物10は、図1に示すように、基材11と、該基材11の一方の面に有価情報印刷部21、透明性の剥離層13、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15B、隠蔽文字部23、及び隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15Aが設けられている。そして、有価情報印刷部21を数字及び/又はアルファベットの文字列とし、かつ、隠蔽文字部23を全ての数字を重ね合わせた文字状模様及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字状模様の文字列とし、かつまた、有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とは重なり合う位置に設け、有価情報印刷部21と隠蔽文字部23との濃度差がJIS−X−0501で測定したPCS値の差で0.2以上とする。このようにすることで、スクラッチ隠蔽層付き印刷物へ光を透かしても有価情報印刷部21が前記隠蔽文字部23で隠蔽されて透視され難い。この場合の隠蔽とは単なる光を透さない隠蔽性に加えて、全ての数字及び/又はアルファベットを重ね合わせた文字状模様が有価情報印刷部21をカムフラージュする効果も含むので、有価情報印刷部21をより目視し難く、従って、認識し難い。また、図2に示すように、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15Bを設けなくてもよく、さらに、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15A、15Bは重ね刷りによる複数層で形成してもよい。
【0018】
(作用効果)本願発明によれば、次のような効果を奏することができる。(1)スクラッチ隠蔽層付き印刷物10はスクラッチオフ以前に、有価情報印刷部21が透視され難いので盗み見されにくく、有価情報印刷部21の情報を判読されにくい。また、仮に有価情報印刷部21が若干透視されたとしても、隠蔽文字部23の文字状模様に含まれているのでカムフラージュされて、有価情報印刷部21の情報は極めて判読されにくいのである。(2)また、有価情報印刷部21が隠蔽文字部23で隠蔽されて透視され難いので、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層15A、15Bとして、スクラッチ隠蔽層の厚さを薄くすることができ、スクラッチ隠蔽層付き印刷物10の製造する際や、流通の際でも表面に突起物などが引っかかっても削れる心配が少ない。(3)さらに、有価情報印刷部21が透視され難いので、スクラッチ隠蔽層15A、15Bの重ね刷りを少なくできる。(4)しかも、スクラッチ隠蔽層15A、15Bとしては、安価で透けやすいオフセット用のスクラッチ隠蔽インキも使用することができる。(5)さらにまた、既存の設備や技術で安価に大量生産することができる。
【0019】
(基材)基材11としては特に限定されるものではなく、使用される目的によって適宜選択すればよい。例えば、上質紙、中質紙、コート紙、アイボリー紙、ポストカード、両面カード紙、マニラボール紙、白ボールなどの紙類や、これらの紙類には必要に応じて、耐水性、耐油性、耐熱性、耐薬品性などを付与してもよい。また、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂性フイルムも使用できる。
【0020】
(有価情報印刷部)基材11の一方の面へ有価情報印刷部21を印刷する。有価情報印刷部21の印刷は、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、活版印刷、インキジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方式で、公知のインキで印刷すればよい。有価情報印刷部21としては、スクラッチオフ以前に、透視されては困る情報部であり、数字及び/又はアルファベットの文字列とする。
【0021】
(剥離層)有価情報印刷部21面へ剥離層13を印刷する。透明性の剥離層13としては、例えば、ポリウレタン・アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトロセルロース系樹脂に、必要に応じて、シリコーンやポリエチレンワックスなどの添加剤を添加した剥離二ス(インキ)を用いて、グラビア印刷、スクリーン印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法で印刷し、必要に応じて乾燥して、厚さ2〜10μmに形成すればよい。
【0022】
(スクラッチ隠蔽層)透明性の剥離層13面へスクラッチ隠蔽層15Bを印刷する。なお、スクラッチ隠蔽層15A、15Bは同じ性能を有するものであり、同じ組成物でも異なったものでもよい。スクラッチ隠蔽層15A、15Bは説明上、両者を合わせてスクラッチ隠蔽層15として説明する。
【0023】
スクラッチ隠蔽層15は隠蔽性とスクラッチ性とを合わせ持つ層である。スクラッチ隠蔽層15としては、凝集破壊性のある天然ゴム系、塩酸ゴム系などの天然ゴム系樹脂、ポリブタジエン、スチレン、ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどのジエン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂へ、アルミニウム粉末,黄銅微粉末、銅微粉末などの金属系微粉末や、それらの酸化微粉末などを着色剤として40〜60質量%含有させる。これらへ必要に応じて添加剤を添加してもよい。
【0024】
上記の組成物を溶剤で稀釈し、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷法、又は、ロールコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどのコーティング法で、塗布し乾燥して、厚さ3〜15μmに形成すればよい。
【0025】
(隠蔽文字部)スクラッチ隠蔽層15B面へ隠蔽文字部23を印刷する。なお、スクラッチ隠蔽層15Bを設けない場合には、剥離層13面へ隠蔽文字部23を印刷する。隠蔽文字部23の印刷及びインキは有価情報印刷部21の印刷と同様でよい。隠蔽文字部23は全ての数字を重ね合わせた文字状模様及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字状模様の文字列とする。
【0026】
(盗み見)有価情報印刷部21としては数字及び/又はアルファベットの文字列とし、隠蔽文字部23は全ての数字を重ね合わせた文字状模様及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字状模様の文字列とする。また、例えば、有価情報印刷部21がデジタル標記の数字のアタリNoとすれば、「8」が隠蔽文字部23の隠蔽文字となり、透かして見ると、図3に示すように、アタリNoより隠蔽文字が見えるため、透視され難い。有価情報印刷部21が数字だけの場合には、隠蔽文字部23の隠蔽文字となるダミーNoとして単純に「8」を印刷しても効果がある。さらに、有価情報印刷部21の情報を隠蔽しやすくするために、隠蔽文字部23の隠蔽文字を太くすることが好ましい。このようにすることで、スクラッチ隠蔽層付き印刷物10へ光を透かしても、有価情報印刷部21よりも隠蔽文字部23が見えるために透視され難く、情報が判読され難い。
【0027】
(PCS)バーコードの光学的特性は、JIS−X−0501にて、PCS値(Print Contrast Signal)なる量が定義され、そのPCS値が或る一定以上の値でなければならない、と規定されている。該PCS値とは、バーコードのバーコードシンボル面の法線に対して、JIS−Z−8720に規定するA光源の45°の入射角度で照射された時の、白バー及びマージン部分の反射率と黒バーの反射率と、から算出される。白バー及びマージンの反射率をRL、黒バーの反射率をR0とすると、PCS値=(RL−R0)/RLとして定義される。PCS値は、商品管理に多用されているバーコードを読取装置(バーコードリーダ)で読み取る際の基準で、表示の読み取りやすさとしてPCS値を引用する。バーコードの白バー(下地)と黒バー(表示部)とは、コントラストが高いほど、バーコードリーダで読み取りやすい。
【0028】
JIS−X−0501では共通商品用バーコードシンボルとして必要な最小PCS値を白バーの反射率の関数として規定している。また、本明細書では、PCS値の測定としては、反射濃度計マクベスPCM−2機(マクベス社製、商品名)を用いて、Aフィルタ
ーで測定で測定したものである。スクラッチ隠蔽層付き印刷物10の有価情報印刷部21と隠蔽文字部23との濃度差がJIS−X−0501で測定したPCS値の差で0.2以上であるようにする。このように、PCS値の差を0.2以上とすることで、有価情報印刷部21が隠蔽文字部23で隠蔽されて透視され難く、さらに、隠蔽文字部23でカムフラージュされて、透視がよりされ難く、情報が判読されにくい。
【0029】
(文字の色)スクラッチ隠蔽層付き印刷物10は有価情報印刷部21が赤系の色調で、隠蔽文字部23が墨系の色調であることが好ましく、有価情報印刷部21の赤系の色調を、隠蔽文字部23の墨系の色調とすることで隠蔽しやすいので、透視され難く、情報を判読されにくい。例えば、表1のように、組合せ番号No1では黒数字列と黒い数字8の列の組み合わせ、組合せ番号No2では淡いピンク数字列と黒い数字8の列の組み合わせ、組合せ番号No3では淡い紫数字列と黒い数字8の列の組み合わせ、組合せ番号No4ではピンク数字列と黒い数字8の列の組み合わせ、組合せ番号No5では細い黒数字列と黒い数字8の列の組み合わせ、組合せ番号No6では黒数字列(有価情報印刷部21)と該黒数字列を覆う黒ベタ印刷(隠蔽文字部23)の組み合わせで行った。
【0030】
【表1】

これらのスクラッチ隠蔽層付き印刷物10のスクラッチ隠蔽層15A面から、強い光をあてて、光を透しにくい筒状物を介して、肉眼で観察した。その結果も表1へ併記する。
【0031】
組合せ番号No6では判読ができ、組合せ番号No1、5でも透視像が観察され、何とか判読ができてしまった。組合せ番号No4でも何とか透視像が観察され、複数候補ではあるが判読ができる可能性があった。しかしながら、組合せ番号No2、3では判読ができなかった。このように、組合せ番号No6の隠蔽文字部23が黒いベタ状よりも、他の組合せである隠蔽文字部23として隠蔽文字状模様を見せた方が効果が高かった。
【0032】
スクラッチ隠蔽層15A、15Bを重ね刷りすることで、さらに隠蔽性を高めることもできる。しかしながら、隠蔽文字部23である隠蔽文字状模様を見せた方が効果が高いので、スクラッチ隠蔽層15A、15Bの重ね刷りを少なくでき、安価に仕上げることもできる。また、隠蔽文字部23である隠蔽文字状模様を見せた方が、透視され難く、情報を判読されにくいので、安価で透けやすいスクラッチ性を有するオフセット用インキを使用でき、スクラッチ隠蔽層15A、15Bの厚さを薄くできるため、スクラッチ隠蔽層付き印刷物10の製造する際や、流通の際でも表面に突起物などが引っかかっても削れる心配が少ないという効果もある。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0034】
(参考例1)基材11としてマットコート紙(王子製紙製、135kg/四六判)を用いて、基材11の一方の面に有価情報印刷部21をオフセット印刷で印刷し、有価情報印刷部21面へ透明性の剥離層13をセルロース系剥離インキを用いてスクリーン印刷法で厚さ5μmで設け、剥離層13面へスクラッチ隠蔽層15Bをスクラッチ用隠蔽銀インキでスクリーン印刷法で厚さ10μmで設け、スクラッチ隠蔽層15B面へ隠蔽文字部23をオフセット印刷で印刷し、隠蔽文字部23面へスクラッチ隠蔽層15Aをスクラッチ用隠蔽銀インキでスクリーン印刷法で厚さ10μmで設けて、実施例1のスクラッチ隠蔽層付き印刷物10を得た。なお、有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とは表1の組み合わせNo1とし、有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とのPCS値の差は0.00であった。
【0035】
(参考例2、3)有価情報印刷部21と隠蔽文字部23との組み合わせを、表1の組み合わせNo4、5とする以外は、参考例1と同様にして、参考例2、3のスクラッチ隠蔽層付き印刷物10を得た。有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とのPCS値の差は、参考例2では0.08、参考例3では0.00であった。
【0036】
(実施例1〜2)有価情報印刷部21と隠蔽文字部23との組み合わせを、表1の組み合わせNo2、3とする以外は、参考例1と同様にして、実施例1〜2のスクラッチ隠蔽層付き印刷物10を得た。有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とのPCS値の差は、実施例1では0.30で、実施例2では0.42であった。
【0037】
(比較例1)有価情報印刷部21と隠蔽文字部23との組み合わせを、表1の組み合わせNo6とする以外は、実施例1と同様にして、比較例1のスクラッチ隠蔽層付き印刷物を得た。なお、比較例1の有価情報印刷部21と隠蔽文字部23とのPCS値の差は0.00であった。
【0038】
(評価方法)ハロゲン光源の強力な光をあてて、アルミニウム製の筒状物を介して、肉眼で観察したところ、表1のように観察され、前述のような結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
(産業上の利用可能性)本発明は、コインなどで隠蔽性のスクラッチ隠蔽層を引っ掻くと削りとって、下地の「当たり」、「外れ」又は文字や図柄などの有価情報印刷部を目視で認識する抽選券やゲーム用カードなどに利用することができる。しかしながら、スクラッチ隠蔽層を引っ掻き落として、下地の情報を認識する用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
10:スクラッチ隠蔽層付き印刷物
11:基材
13:剥離層
15、15A、15B:スクラッチ隠蔽層
21:有価情報印刷部
23:隠蔽文字部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラッチ隠蔽層付き印刷物(10)であって、
該スクラッチ隠蔽層付き印刷物(10)が基材(11)と、該基材(11)の一方の面に有価情報印刷部(21)、透明性の剥離層(13)、隠蔽性のスクラッチ隠蔽層(15B)、隠蔽文字部(23)、及び隠蔽性のスクラッチ隠蔽層(15A)から構成され、
前記有価情報印刷部(21)と隠蔽文字部(23)とは重なり合う位置に設けられ、
前記有価情報印刷部(21)が数字及び/又はアルファベットの文字列であり、
前記隠蔽文字部(23)が全ての数字を重ね合わせた文字及び/又は全てのアルファベットを重ね合わせた文字の文字列であり、
前記有価情報印刷部(21)と前記隠蔽文字部(23)との濃度差がJIS−X−0501で測定したPCS値の差で0.2以上であり、
前記スクラッチ隠蔽層付き印刷物(10)へ光を透かしても前記有価情報印刷部(21)が前記隠蔽文字部(23)で隠蔽されて透視され難いことを特徴とするスクラッチ隠蔽層付き印刷物(10)。
【請求項2】
前記有価情報印刷部(21)が赤系の色調で、隠蔽文字部(23)が墨系の色調であることを特徴とする請求項1に記載のスクラッチ隠蔽層付き印刷物(10)。

【図1】
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【図2】
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