説明

スクラップ回収装置

【課題】 屑巻取りにおいてフレームへの屑引っ掛かりを防止する。
【解決手段】 水平軸線を持つマンドレルにヒモ状スクラップを巻き付けるものである。マンドレルを貫通してフレームが設けられ、該フレームは外形が直方体箱状を呈し、マンドレルの先側および基側に位置する先外壁および基外壁と底壁とで構成される。マンドレルの先端に僅かな間隙を存して、先内壁が前記先外壁に回転自在、かつ、進退手段で付勢されて設けられ、前記基外壁に近接して基内壁がマンドレルに、回転自在に支持される。前記先外壁および基外壁にはそれぞれ前記先内壁および基内壁の外円周部より半径方向外側を僅かな間隔を存して覆うような、断面爪状先部を持つ円環部材が固定される。前記先内壁および基内壁の外円周部はそれぞれ、先外壁側および基外壁側に大径となるテーパ面となり、前記爪状先部の内円周部は前記外壁側に大径となるテーパ面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップ回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種装置の一例として次のようなものがあった。スクラップピットからヒモ状スクラップを引き出して、基台に回転自在に支持された水平軸線を持つマンドレルに巻き付けるようにしたものである。前記スクラップピットに近接してマンドレルを貫通して、フレームが設けられ、該フレームは外形が直方体箱状を呈し、マンドレルの先側および基側に位置する先外壁および基外壁と底壁とで構成され、前記フレームはマンドレル軸線方向に往復動される。
【0003】
スクラップ巻き付け作動状態で前記フレームが基側に位置しているとき、前記基外
壁が前記マンドレルを貫通させ、マンドレルの先端は前記先外壁の近くまで延びている。そして、前記マンドレルの先端に僅かな間隙を存して、先内壁が前記先外壁に回転自在、かつ、ピストンシリンダーで付勢されて設けられ、前記基外壁に近接して基内壁がマンドレルに、回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−217553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこのような従来のスクラップ回収装置では、裁断装置によって3.5〜30mm幅に切断された屑を巻き取る際に、裁断装置から排出されたトリム屑がスクラップピット(巻き取るまでにトリム屑をいったん溜められる空間)内で溜められた屑同士が絡まる。
【0006】
そして、塊となった屑がスクラップ回収装置本体のフレームに接触し、屑がフレーム突起部(ボルト、ナット、フレーム角、機器間の隙間など)で引っ掛かり、スクラップ屑をスムーズに回収することができなかった。また、フレームの外壁と内壁との間に隙間があり、外壁が固定のため、屑が隙間に入り込んで引っ掛かり、モーターに負荷がかかり、動かなくなっていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、屑巻取りにおいてフレームへの屑引っ掛かりを防止するスクラップ回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、水平軸線を持つマンドレルにヒモ状スクラップを巻き付けるようにしたものであって、マンドレルを貫通してフレームが設けられ、該フレームは外形が直方体箱状を呈し、マンドレルの先側および基側に位置する先外壁および基外壁と底壁とで構成され、前記マンドレルまたは前記フレームはマンドレル軸線方向に往復動され、スクラップ巻き付け作動状態で前記フレームが基側に位置しているとき、前記基外壁が前記マンドレルを貫通させ、マンドレルの先端は前記先外壁の近くまで延びているスクラップ回収装置であって、前記マンドレルの先端に僅かな間隙を存して、先内壁が前記先外壁に回転自在、かつ、進退手段で付勢されて設けられ、前記基外壁に近接して基内壁がマンドレルに、回転自在に支持され、前記先外壁および基外壁にはそれぞれ前記先内壁および基内壁の外円周部より半径方向外側を僅かな間隔を存して覆うような、断面爪状先部を持つ円環部材が固定され、前記先内壁および基内壁の外円周部はそれぞれ、先外壁側および基外壁側に大径となるテーパ面となり、前記爪状先部の内円周部は前記外壁側に大径となるテーパ面となっていることである。
【0009】
本発明の第2の解決手段は、第1解決手段に加え、前記フレームの先外壁と基外壁と間で、スクラップピット側の入口に、入口の周囲にガイドフレームが取り付けられ、該ガイドフレームの下辺および左右辺に沿ってガイドロールが回転自在に設けられたことである。そして、前記内壁のテーパ面と前記爪状先部のテーパ面との間隔は1.5〜2.5mmに定めるのが適当である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、前記先外壁および基外壁にはそれぞれ前記先内壁および基内壁の外円周部より半径方向外側を僅かな間隔を存して覆うような、断面爪状先部を持つ円環部材が固定される。そして、前記先内壁および基内壁の外円周部はそれぞれ、先外壁側および基外壁側に大径となるテーパ面となり、前記爪状先部の内円周部は前記外壁側に大径となるテーパ面となっている。従って、屑巻取りにおいてフレームへの屑引っ掛かりを防止できることとなった。また、スクラップのフレームへの入口にガイドロールが設けられているので、スクラップの導入がスムーズになされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の側面図である。
【図2】図1のY2−Y2断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1,2において、スクラップピットPからヒモ状スクラップAを引き出して、基台Bに回転自在に支持された水平軸線を持つマンドレル1に巻き付けるようにしたものである。前記スクラップピットPに近接してマンドレル1を貫通して、レール21上を油圧ピストンシリンダー22で、往復動するように移動フレーム10が設けられる。
【0013】
該移動フレーム10は外形が直方体箱状を呈し、マンドレル1の先側および基側に位置する先外壁11および基外壁12と底壁13とで構成される。スクラップ巻き付け作動状態で、前記移動フレーム10が基側に位置しているとき、前記基外壁12が前記マンドレル1を貫通させ、マンドレルの先端は先内壁14の近くまで延びている。
【0014】
図3において、前記マンドレル1の先端に僅かな間隙を存して、先内壁14が前記先外壁11に回転自在、かつ、進退手段14eで付勢されて設けられる。即ち、先外壁11は、矩形平板部11aと、マンドレルの回転軸線に同心な有底円筒部11bと補強用リム11cとよりなる。先内壁14はマンドレル回転軸線に同心な円板部14aと、リム14bと、円板部14aの中心に同心に固定された軸部14cと、これに軸受けを介して回転自在に支持する軸受け筒14dと、これをマンドレル軸方向に進退する油圧ピストンシリンダー14eが設けられる。
【0015】
前記基外壁12に近接して基内壁15がマンドレル1に、回転自在に支持されている。即ち、基外壁12はマンドレル1の貫通孔を持つ矩形平板部12aと、マンドレルの回転軸線に同心な円筒部12bと、補強用リム12cとよりなる。先内壁15はマンドレル回転軸線に同心な円板部15aと、リム15bと、円板部15aの中心に同心に固定された円筒軸部15cと、これを前記円筒部12b内で回転自在に支持する軸受け15dとからなる。
【0016】
前記先外壁11および基外壁12にはそれぞれ前記先内壁14および基内壁15の外円周部より半径方向外側を僅かな間隔を存して覆うような、断面爪状先部11e,12eを持つ円環部材11d,12dが固定される。
【0017】
前記先内壁14および基内壁15の外円周部はそれぞれ、先外壁11側および基外壁12側に大径となるテーパ面となり、また、前記爪状先部11e,12eの内円周部は前記外壁11,12側に大径となるテーパ面となっている。そして、前記内壁14,15のテーパ面と前記爪状先部11e,12eのテーパ面との間隔Tは2mmに定められている。
【0018】
ここで、この間隔Tは1.5〜2.5mmの間で定めるのが好ましい。前記内壁14,15のテーパ面が前記爪状先部11e,12eに対し大きな摩擦抵抗なく動くようにするには、最小1.5mmが必要である。また、最小1.5mm程度あれば比較的容易に加工できる。間隔Tが大きくなりすぎると、スクラップの先端が引っかかるため、最大2.5mmとした。
【0019】
前記移動フレーム10の先外壁11と基外壁12と間で、スクラップピットP側の入口に、入口の周囲にガイドフレーム5aが取り付けられ、該ガイドフレームの下辺および左右辺に沿ってガイドロール5bが回転自在に設けられる。
【0020】
マンドレル駆動部2はチェン伝導手段2a,減速機2bおよびモーター2cからなる。内壁間で昇降できるように、押えロール3が側壁に設けられる。ロール昇降部4において、外壁11および12の上端にわたって支持軸4bが回転自在に支持され、支持軸に支持レバー4aが支持され、この支持レバーに押えロール3が自由回転自在に支持される。そして、支持軸4bの両端に揺動レバー4cが固定され、揺動バーの一端は揺動軸4d、他端はピストンシリンダー4eに接続される。
【0021】
以上において作動状態を説明する。図1の状態から僅かにフレーム10を右側に寄せ、ピットPのスクラップAを作業者が引き出し、その先端をマンドレル1の先端の溝1a
(図2示)に挿入して、マンドレル先端部にスクラップAを引っ掛ける。その後、フレーム10を図1の状態に戻し、マンドレル1を起動する。スクラップAはピットPから引き出されてマンドレル1に巻きつけられていく。巻付け量が増加するに従い、押さえロール3が押上げられていく。
【0022】
巻付け作業が終わると、ピットPとマンドレル1間に渡されたスクラップAを作業者が切断する。次いで、移動フレーム10を右側へ移動させると、巻付けられたスクラップ塊はマンドレル1から抜き出され、底壁13に落下し、底の傾斜に案内されて、フレーム10の出口から転がり出て行く。
【0023】
さてここで、前記先内壁14および基内壁15と、爪状先部11e,12eとの間隔は僅かであり、かつ、外壁11,12側に大径となるテーパ面となっているので、スクラップが挟み込まれても容易に脱出することができる。もし、スクラップが挟み込まれても、テーパ面の方向が挟み込み方向と逆であり、かつ、先内壁14および基内壁15が回転して容易に脱出することができるのである。また、スクラップのフレーム10への入口にガイドロール5bが設けられているので、スクラップの導入がスムーズになされる。
【0024】
本発明は前記した実施例や実施態様に限定されず、特許請求の精神および範囲を逸脱せずに種々の変形を含む。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、スクラップ回収装置に利用される。
【符号の説明】
【0026】
A スクラップ
B 基台
P スクラップピット
1 マンドレル
2 マンドレル駆動部
2a チェン伝導手段
2b 減速機
2c モーター
3 押えロール
4 ロール昇降部
4a 支持レバー
4b 支持軸
4c 揺動レバー
4d 揺動軸
4e ピストンシリンダー
5 スクラップガイド部
5a ガイドフレーム
5b ガイドロール
10 移動フレーム
11 先外壁
11a 平板部
11b 有底円筒部
11c リム
11d 円環部材
11e 爪状先部
12 基外壁
12a 平板部
12b 円筒部
12c リム
12d 円環部材
12e 爪状先部
13 底壁
14 先内壁
14a 円板部
14b リム
14c 軸部
14d 軸受け筒
14e 進退手段
15 基内壁
15a 円環板部
15b リム
15c円筒軸部
15d 軸受け
21 レール
22 ピストンシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸線を持つマンドレルにヒモ状スクラップを巻き付けるようにしたものであって、マンドレルを貫通してフレームが設けられ、該フレームは外形が直方体箱状を呈し、マンドレルの先側および基側に位置する先外壁および基外壁と底壁とで構成され、前記マンドレルまたは前記フレームはマンドレル軸線方向に往復動され、スクラップ巻き付け作動状態で前記フレームが基側に位置しているとき、前記基外壁が前記マンドレルを貫通させ、マンドレルの先端は前記先外壁の近くまで延びているスクラップ回収装置であって、
前記マンドレルの先端に僅かな間隙を存して、先内壁が前記先外壁に回転自在、かつ、進退手段で付勢されて設けられ、前記基外壁に近接して基内壁がマンドレルに、回転自在に支持され、
前記先外壁および基外壁にはそれぞれ前記先内壁および基内壁の外円周部より半径方向外側を僅かな間隔を存して覆うような、断面爪状先部を持つ円環部材が固定され、
前記先内壁および基内壁の外円周部はそれぞれ、先外壁側および基外壁側に大径となるテーパ面となり、前記爪状先部の内円周部は前記外壁側に大径となるテーパ面となっているスクラップ回収装置。
【請求項2】
前記フレームの先外壁と基外壁と間で、スクラップピット側の入口に、入口の周囲にガイドフレームが取り付けられ、該ガイドフレームの下辺および左右辺に沿ってガイドロールが回転自在に設けられた請求項1記載のスクラップ回収装置。
【請求項3】
前記内壁のテーパ面と前記爪状先部のテーパ面との間隔は1.5〜2.5mmに定められている請求項1または2記載のスクラップ回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−84358(P2011−84358A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237348(P2009−237348)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)