説明

スクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法

【課題】 画像に加わる撹乱の程度を制御できるスクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法を得ることを目的とする。
【解決手段】 スクランブル処理装置101は、被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測器126と、予測された特徴量に基づいて被交換対象ブロックになっていないブロックから交換対象ブロックの交換候補を抽出する候補抽出器123と、被交換対象ブロックと交換候補の特徴量を解析することにより交換候補内から交換対象ブロックを選択して被交換対象ブロックと相互に交換するスクランブル変換器122とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像や音声のようなコンテンツデータに対して撹乱を行い、または同撹乱を解除してデータを復元するためのスクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、例えば、放送時やインターネットでのデータ送受信時に、送信側ではスクランブル処理装置内部で符号化(圧縮)処理を行い、受信側ではデスクランブル処理装置内部で復号(伸長)処理を行っている。
具体的な処理方法としては、スクランブル処理装置で、先に画像を部分的に入れ替えてスクランブル処理を行った後に、符号化処理を行い、デスクランブル処理装置では、先に復号処理を行った後に、入れ替えられた部分画像を元通りに戻すデスクランブル処理を行う方法がある。
また、スクランブル処理装置で先に符号化処理を行った後に、その符号ビットストリームに対してスクランブル処理を行い、デスクランブル処理装置では、スクランブルされた符号ビットストリームを先に元に戻すデスクランブル処理を行った後に、復号処理を行う方法がある。
【0003】
画像を部分的に入れ替える前者の方法(例えば、特許文献1参照)では、圧縮率の低下により符号長が増加しないように輝度の代表値に基づいて並び替えるが、可逆性を保持するために、符号とは別に各ブロックを特定する位置情報を保存している。
【0004】
また、符号化ビットストリームを生成後にスクランブルする後者の方法(例えば、非特許文献1参照)では、例えばJPEG符号化やMPEG符号化で適用される離散コサイン変換(DCT変換)のブロック単位に、該当する符号化部分を相互に交換する。或いはブロック内の直流成分(以下、DC係数値)は保存して交流成分(以下、AC係数値)のみを他のブロックと交換する。これらの方法により、粗く見せた画像の概要把握を可能としつつ、符号長を変化させずに保持している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−77568号公報(第6項から第8項、図2、図12、図13)
【非特許文献1】高木亜有子、貴家仁志、“MPEG画像のビットストリーム型スクランブル手法”、電子情報通信学会総合大会A−4−9、pp.100、2004.3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置は、スクランブル適用領域内、またはその部分領域における交換単位全てを交換対象とし、明るさ等の極端に異なる交換単位も含めていた。その交換単位の中から乱数に基づき一つを選択して交換するために、画像に必要以上の撹乱が加わってしまうという課題があった。
加えて、輝度順に部分領域を並び替える場合は乱数を不要とするが、可逆性を保持するために、符号以外に位置情報が必要になるという課題があった。
また、画像にスクランブル処理した後に符号化する手順では、乱数系列に依存して符号長が変化してしまうという課題があった。
更に、DC係数値を保存するため、画像の概要が把握できる程度の撹乱に留まり、必要な撹乱の適用が不足するという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、スクランブル領域内、またはその部分領域内における交換単位全ての中から一部の交換候補を類似の特徴量に基づいて抽出して交換対象とし、その中から乱数に基づき一つを選択して交換することにより、画像に加わる撹乱の程度を交換候補の範囲指定により制御できるスクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法を得ることを目的とする。
加えて、スクランブル処理とデスクランブル処理で同系列の乱数を使用することで、可逆性を保持したまま、位置情報を不要とするスクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法を得ることを目的とする。
また、スクランブル処理前にビットストリームが形成される時に、ブロック単位、或いはブロック内のDC係数値またはAC係数値だけを再び符号化することなく交換することで、符号長を変化させないことを目的とする。
更に、DC係数値のみ、或いはDC係数値とAC係数値の両方を、限定候補から交換対象を選択して交換することにより、必要な撹乱の程度を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るスクランブル処理装置は、被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測器と、予測された特徴量に基づいて被交換対象ブロックになっていないブロックから交換対象ブロックの交換候補を抽出する候補抽出器と、被交換対象ブロックと交換候補の特徴量を解析することにより交換候補内から交換対象ブロックを選択して被交換対象ブロックと相互に交換するスクランブル変換器とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るスクランブル処理装置、デスクランブル処理装置、スクランブル処理方法及びデスクランブル処理方法によれば、スクランブル領域内、またはその部分領域内における交換単位全ての中から一部の交換候補を類似の特徴量に基づいて抽出して交換対象とし、その中から乱数に基づき一つを選択して交換することにより、画像に加わる撹乱の程度を交換候補の範囲指定により制御できる効果が得られる。
また、スクランブル処理とデスクランブル処理で同系列の乱数を使用することで、可逆性を保持したまま、位置情報を不要とする効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明のスクランブル処理装置は、特徴量をもつ少なくとも2つ以上のブロックに分割された画像を入力することにより、スクランブルされた画像を出力する。デスクランブル処理装置は、スクランブルされた画像を入力し、元の画像を出力する。本発明に係るスクランブル処理とデスクランブル処理は、その処理部の入出力において、画像の形式を変更することなく実行され、画像形式に依存しない。ここでいう画像形式とは、無加工の未圧縮形式の画像、圧縮過程の一時的な中間形式の画像、圧縮後の圧縮形式の画像等を指す。
また、本発明に係るスクランブル処理及びデスクランブル処理においては、ブロック自体の交換を行ってもよいし、JPEG等の符号化方式を適用して、ブロックを構成する符号の一部の交換を行ってもよい。
【0011】
図1は、本発明に係るスクランブル処理の概略を示すフローチャートである。先ず、ステップST11において、被交換対象ブロックの近隣にあるブロック(以下、近隣ブロック)の特徴量を参照して、被交換対象ブロックの特徴量を予測する。次に、ステップST12において、予測された特徴量に基づいて、被交換対象ブロックになっていないブロックから、交換対象ブロックとなる交換候補ブロックを抽出する。更に、ステップST13において、被交換対象ブロックと交換候補ブロックの特徴量を解析し、被交換対象ブロックに対して抽出された交換候補内から、交換対象ブロックを1つ選択して相互に交換する。ステップST14において、最後の被交換対象ブロックを走査するまで、ステップST11〜ST13によるスクランブル処理を進めていく。デスクランブル処理の概略についても、以上述べたスクランブル処理の概略と同様に説明できる。以下に、実施の形態1についての詳細を説明する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。スクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置に入出力される画像が、符号化された圧縮形式で与えられる場合について説明する。図2において、スクランブル処理装置101は、原画像を入力して符号化された画像を出力する符号化処理部102と、符号化された画像を入力して符号化されたスクランブル画像を出力するスクランブル処理部103を備えている。デスクランブル処理装置104は、符号化されたスクランブル画像を入力して符号化された画像を出力するデスクランブル処理部105と、符号化された画像を入力して再生画像を出力する復号処理部106を備えている。
スクランブル処理部103とデスクランブル処理部105にはスクランブル及びデスクランブルに必要な同一の暗号鍵が入力される。
また、画像において、符号化または復号の単位とスクランブルの交換単位は、同じサイズの領域(以下、ブロック)として説明する。スクランブル処理装置101への入力時に画像をブロックに分解し、デスクランブル処理装置104からの出力時にブロックを画像に組み立てる。
【0013】
図3は、図2と異なるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。図3では、図2と比較して、スクランブル処理装置101の符号化処理部102と、デスクランブル処理装置104の復号処理部106が両装置外に配置され、スクランブル処理装置101への入力、及びデスクランブル処理装置104からの出力が符号ビットストリーム(以下、符号)として入出力されるという相違点があるが、スクランブル処理部103とデスクランブル処理部105の動作説明上の差異は無いため、図2、3を併せて説明する。
【0014】
図4は、図2、3中のスクランブル処理部103の内部構成図であり、図5は、図2、3中のデスクランブル処理部105の内部構成図である。図4において、スクランブル処理部103は、バッファメモリ121、スクランブル変換器122、候補抽出器123、乱数発生器124、遷移処理器125、予測器126を備えている。また、図5において、デスクランブル処理部105は、バッファメモリ131、デスクランブル変換器132、候補抽出器133、乱数発生器134、遷移処理器135、予測器136を備えている。
【0015】
次に、動作について説明する。先ず、スクランブル処理について説明する。図2、3において、符号化処理部102は原画像を入力して符号化した画像を出力する。次に、スクランブル処理部103において、バッファメモリ121(図4)は、スクランブル適用領域を一時的に蓄積可能な容量のメモリであり、スクランブルを適用された符号を蓄え、また必要に応じて出力する。バッファメモリ121内では、必要に応じて画像の状態または符号化途中の段階まで符号を一旦展開する。スクランブル適用領域は画像全面でも問題ないが、バッファメモリ121の最低限必要なメモリサイズは、その適用領域の指定範囲に伴って変化することになる。汎用性を考慮すると、画像一枚分を蓄積できるメモリサイズが望ましい。
【0016】
図6は、実施の形態1において、画像に対して指定されたスクランブル適用領域を示す。スクランブル適用領域を一括処理する図6(A)の場合には、斜線部を含むスライスが最小バッファサイズとなるため、左右のスクランブル処理の対象外の部分も含めたメモリサイズが必要となる。バッファメモリ121のメモリサイズに制約がある場合には、図6(B)のように細かくスライスを定義して、スライス内の適用領域内でスクランブル処理を行えばよい。上下方向には、スクランブル適用領域の上端及び下端をスライスの上端及び下端に揃える必要は無く、一定のスライス容量でスクランブルを適用して構わない。
【0017】
スクランブル処理部103は、スクランブルを画像の特定領域に適用する時、暗号鍵と共に、外部からそのスクランブル適用領域情報を与えられる。暗号鍵とスクランブル適用領域情報はデスクランブル処理部105と共有されるものとする(図2、3中の破線矢印を参照)。
図4において、スクランブル変換器122は、先ずバッファメモリ121に蓄積された符号からスクランブル処理に必要な情報を参照できるようにする。ここで、必要な情報とは、画像のサイズやブロックの各符号長とその位置情報、ブロック間で相関をもつ特徴量等であり、これらはソートしたリストとして管理される。
【0018】
予測器126は、スクランブル時及びデスクランブル時に共通に参照できる、被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量から、被交換対象ブロックの特徴量を予測する(図1のステップST11)。
候補抽出器123は、スライス内のスクランブル適用領域内(図6中斜線部)でスクランブル未処理のブロック全て(n個)をリスト化して管理する。また、予測した特徴量に基づき、類似特徴量をもつ未処理の交換候補ブロック(k個)を抽出する(n>k)(図1のステップST12)。
スクランブル処理部103(スクランブル変換器122)に入力された暗号鍵に基づき、暗号鍵に関連付けされた設定値により乱数発生器124が乱数の生成を行う。得られた乱数値から、スクランブル変換器122は、交換候補ブロックの中から交換対象とするブロックを選択し、相互に交換する(図1のステップST13)。
遷移処理器125は、交換により遷移していくブロックの位置情報と特徴量を関連付けて、その遷移履歴を管理する。
【0019】
図7は、図4中のスクランブル処理部での処理フローを示すフローチャートである。図7を用いて、上記スクランブル処理部103の動作をより詳細に説明する。
図7において、ステップST101では、スライス内のスクランブル適用領域内でのブロック総数Nを未処理のブロック数nへと設定する。
ステップST102では、nが1以下であれば、ステップST103〜ST111にかけてのスクランブル処理は行わない。
nが2以上である時、ステップST103では、近隣ブロックの特徴量を参照して被交換対象ブロックの特徴量を予測する。
ステップST104では、必要があれば予測した特徴量を補正し、また別の特徴量に変換する。ここでいう変換とは、例えばJPEG符号化等により、DCTブロックのDC係数値(特徴量)からDC差分値(別の特徴量)に変換することである。また、補正とは、負数や実数を有効桁数に揃えること等が挙げられる。
ステップST105では、抽出する交換候補ブロックのブロック数kを設定する。ステップST105では、式k=Max(Integer(n+1)/2),2)で示されるように、kを未処理のブロック数nの半数としているが、半数でなくても問題ない。上式中で、“Max”は要素の最大値を選択する関数であり、“Integer”は数値を整数化する関数である。
ステップST106では、予測した特徴量、またはその特徴量をステップST104で変換した特徴量に基づき、未処理のブロックの中からk個のブロックを交換候補として抽出する。
【0020】
ステップST107では、抽出された交換候補ブロックの特徴量の中に被交換対象ブロックの特徴量が存在していればステップST108、ST109の処理(ブロックの交換処理)を行い、存在していなければステップST110に進む。
ステップST108では、抽出された交換候補ブロックの中に被交換対象ブロックが存在する場合は乱数を発生させ、乱数値に基づいた交換対象ブロックを選択する。
ステップST109では、被交換対象ブロックと選択された交換対象ブロックを相互交換し、ブロックの位置情報と特徴量を対応付けて、その遷移履歴を更新する。
ステップST110では、未処理のブロック数nを1だけ減じる。
ステップST111では、未処理のブロック数nが1になっていなければ、1になるまでステップST103〜ST110にかけてのスクランブル処理を実行する。
ステップST112では、スクランブル処理し終えたスライスがスクランブル適用領域での最終スライスでなければ、最終スライスに至るまでステップST101〜ST111にかけてのスクランブル処理を続行する。
【0021】
次に、デスクランブル処理について説明する。図5のデスクランブル処理部105において、バッファメモリ131はスクランブルを適用された符号を蓄え、スクランブルを解除された符号を出力する。ここで、スクランブルを適用された符号と解除された符号では、符号フォーマット上の規約は損なわないため、スクランブル処理部103のバッファメモリ121と同一機能を果たす。ここでは、スクランブル処理を画像の特定領域に適用している時、暗号鍵と共に、外部からそのスクランブル適用領域情報を与えられる。暗号鍵とスクランブル適用情報はスクランブル処理部103と共有されるものとする。
デスクランブル変換器132は、先ずバッファメモリ131に蓄積された符号からデスクランブル処理に必要な情報を参照できるようにする。必要な情報とは、スクランブル処理部103のスクランブル変換器122で扱う情報と同一である。
候補抽出器133、乱数発生器134、遷移処理器135、予測器136は、スクランブル処理とデスクランブル処理の表裏の関係により、候補抽出器123、乱数発生器124、遷移処理器125、予測器126の機能及び動作と差異はない。スクランブル処理で交換されたブロックがデスクランブル処理による再交換で元に戻され、デスクランブル処理部105の処理フローは、スクランブル処理部103において説明した図7の処理フローと同一となる。
最後に復号処理部106は、スクランブルを解除された符号を入力して再生画像を出力する。
【0022】
図8は、図6で示したスライスのスクランブル適用領域を構成するブロックの特徴量を示す図である。図8(A)はスクランブル処理前を示し、図8(B)はスクランブル処理後を示す。図9は図8におけるスクランブル処理過程(A)及びデスクランブル処理過程(B)を示す図である。
図8では、図6で示すスライスのスクランブル適用領域のブロックが、図8(A)のようなブロックの特徴量(1)〜(8)で構成されるものとする。
先ず図9(A)のスクランブル処理過程では、スクランブル変換器122(図4)は、スクランブル適用領域内で符号化対象にされるブロックの特徴量がソートされたリストを用意する。ここでは、特徴量(1)〜(8)はソートされて、“(4)、(2)、(1)、(8)、(5)、(7)、(3)、(6)”の順のリストになるものとする。
【0023】
最初に、特徴量(1)をもつ被交換対象ブロックに対する交換候補ブロックを求める。予測器126が被交換対象ブロックの近隣ブロックについてその特徴量を参照して予測値を算出する(ST103)。前述のソートされたリストから予測値に近い特徴量を交換候補ブロックの特徴量として抽出する。交換候補ブロックの特徴量は、図7のステップST105に従って、未処理ブロックの半数を抽出するものとし、図9のように{ }内の数字で示す。
ブロックの交換は、可逆性を保持するために交換可否を判定する。ステップST107で、交換候補ブロックの特徴量として抽出された{ }内の特徴量の中に被交換対象ブロックの特徴量が存在するかどうかを判定する。
被交換対象ブロックの特徴量が存在すれば、乱数発生器124の乱数値Rで{ }内の特徴量から交換対象ブロックの特徴量を抽出し、被交換対象ブロックと交換対象ブロックを交換し、存在しなければ交換は行われない(ST108、ST109)。
【0024】
以下、図8、図9(A)に基づき具体例を説明する。最初に、被交換対象ブロックの特徴量が(1)の時、N=8よりn=8と設定し(ST101)、ステップST105の式に従って、4つの交換候補ブロックの特徴量“(1)、(8)、(5)、(7)”を予測値に基づいて抽出する(ST106)。被交換対象ブロックの特徴量(1)が交換候補ブロックの特徴量に入っているので、乱数値Rに基づき、交換対象ブロックの特徴量(7)が選択される(ST107、ST108)。
次に、被交換対象ブロックの特徴量が(2)の時、全体のリストから処理済のブロックの特徴量(1)を外し、N=7に基づき4つの交換候補ブロックの特徴量“(8)、(5)、(7)、(3)”を予測値に基づいて抽出する。被交換対象ブロックの特徴量(2)が交換候補に入っていないので、ここでは交換は行われない。
【0025】
ここで、交換候補ブロックの特徴量(7)は、前述の特徴量(1)をもつ被交換対象ブロックと特徴量(7)をもつ交換対象ブロックの交換により、特徴量同士が交換されている。即ち特徴量(7)は特徴量(1)となっており、図9に示すように、“添え字1付きの特徴量(7)”で表す。
添え字1は交換による遷移先の特徴量であり、その遷移履歴を遷移処理器125が順次管理していく。添え字の無いものは遷移履歴が無く、そのまま初期の特徴量をもつ。
【0026】
続いて、被交換対象ブロックの特徴量が(3)の時、全体のリストから処理済のブロックの特徴量(2)も外し、N=6に基づき3つの交換候補ブロックの特徴量“(7)、(3)、(6)”を予測値に基づいて抽出する。被交換対象ブロックの特徴量(3)が候補に入っているので、乱数値Rに基づき、交換対象ブロックの特徴量(6)を選択して相互交換し、遷移履歴を管理する。以下、特徴量(8)を持つ被交換対象ブロックまで同処理を繰り返していく。
【0027】
図9(B)のデスクランブル処理過程では、同図(A)のスクランブル処理過程に対して、被交換対象ブロックの特徴量と交換対象ブロックの特徴量がそのまま入れ替わる。予測値及び乱数値は、スクランブル処理に対してそのまま再現される。
スクランブル処理とデスクランブル処理の相違点は、被交換対象ブロックの特徴量から交換対象ブロックの特徴量の探索を行う探索方法にある。
【0028】
先ず、図9において、同一交換候補ブロックが抽出され、スクランブル処理過程(A)において、特徴量(6)をもつ被交換対象ブロックを交換する場合、初期値が特徴量(6)の交換候補ブロックを探す。それに対して、対応するデスクランブル処理過程(B)では、特徴量(5)をもつ被交換対象ブロックを交換する場合、交換候補ブロックの中でその時点に特徴量(5)に遷移している特徴量をもつブロック(添え字5のブロック)を探して基準とする。
【0029】
次に、例えば、ここでは発生したR=1に基づいて、スクランブル時に、交換候補対象ブロックの中で被交換対象ブロックの特徴量(6)から左方向にR(=1)番目の特徴量(5)というような一定規則で交換対象を選択する。これにより、デスクランブル時に、特徴量(5)が被交換対象ブロックの特徴量となっても、逆の右方向にR(=1)番目まで辿ることで、特徴量(6)を交換対象ブロックの特徴量として正しく選択することが出来る。他の被交換対象ブロックと交換対象ブロックの組み合わせについても同様である。なお、乱数値は交換候補ブロック数をkとして、1から(k−1)を発生させ、一方の端点に到達したら他方の端点から重複無く交換候補ブロックの特徴量のリスト内を辿るようにすればよい。
また、図9において、被交換対象ブロックと交換対象ブロックの双方を交換後に、リストから同時に外していくスクランブル処理及びデスクランブル処理を適用しても構わない。
【0030】
図10は、実施の形態1において、ソートされた特徴量のリストから抽出した交換候補中に特徴量の重複がある場合を示す図である。図10では、ソートされた特徴量のリストから抽出した交換候補ブロックの特徴量(k=12個)において、特徴量(0)、(1)、(4)にそれぞれ重複がある例を示している。
スクランブル処理において、被交換対象ブロックの特徴量(1)に重複があるとき、特徴量(1)の基準を最も左側の特徴量(1)とすると、乱数値R=6により、基準から右側に6番目、即ち左から2番目の特徴量(4)が交換対象ブロックの特徴量となる。
【0031】
次に、デスクランブル処理において、被交換対象ブロックの特徴量(4)に重複がある時、最も左側の特徴量(4)から、乱数値R=6により、左側に辿ると特徴量(1)を通過し、誤った特徴量(0)のブロックが交換対象となってしまう。この時、スクランブル処理の被交換対象ブロックの特徴量に重複が無くても、交換対象ブロックに重複があると、スクランブル処理で真に選択された交換対象ブロックがデスクランブル処理で特定できなくなる。即ち、重複した5つの特徴量(4)のうち、単一または重複する中で最も左側の特徴量(4)が、複数存在してしまうことが問題となる。
【0032】
図11は、図10中の特徴量の重複分を縮退した様子を示す図である。図10の説明で述べたことにより、重複する特徴量が存在する場合でも誤りのないデスクランブル処理を行う方法が必要となる。
図11では、特徴量(0)、(1)、(4)の重複分をそれぞれ1つの特徴量として考え、重複のないk1=5個に縮退した交換候補ブロックの特徴量として扱う。ソートされた特徴量のリストは、重複した特徴量の間では処理ブロック順に並べておき、待ち行列を形成する。スクランブル処理のとき、被交換対象ブロックの特徴量(1)は待ち行列の先頭にあり、発生させた乱数値R1=3から、右に3つ先の特徴量(4)の待ち行列の先頭のブロックを交換対象とする。乱数生成の際には、縮退した交換候補ブロック数k1に対して、乱数値R1=1〜(k1−1)を発生させてもよいし、当初の個数kのまま乱数値R=1〜(k−1)を発生させ、k1の剰余からR1を得ても構わない。
【0033】
また、デスクランブル処理の時、特徴量(4)の待ち行列の先頭のブロックを被交換対象ブロックとすると、発生させた乱数値3から左に3つ先の特徴量(1)の待ち行列の先頭のブロックを交換対象とすることで元に戻せる。なお、乱数発生器124、134は、乱数系列として乱数値Rを発生させるが、例えば、交換候補ブロック数kまたはk1に対して、任意の固定値から上記剰余による算出方法で得られる値を乱数値として取り扱っても構わない。
【0034】
以下、これまで説明したこの発明のスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置について、JPEG符号化方式を適用する場合について説明を行う。
図12は、図2、3中の符号化処理部の内部構成図であり、図13は図2、3中の復号処理部の内部構成図である。図12において、符号化処理部102は、モデル化部111とエントロピー符号化部112を備えている。図13において、復号処理部106は、エントロピー復号部141と逆モデル化部142を備えている。
【0035】
図14は、JPEG符号化を実行する場合の、図12の符号化処理部のより詳細な内部構成図であり、図15は、同場合の、図13の復号処理部のより詳細な内部構成図である。図14において、符号化処理部102は、モデル化部111を構成するDCT変換器113と量子化器114、エントロピー符号化部112を構成する符号器115を備えている。図15において、復号処理部106は、エントロピー復号部141を構成する復号器143、逆モデル化部142を構成する逆量子化器144と逆DCT変換器145を備えている。なお、輝度、色差等の色成分によっては、量子化を適用しない場合もある。また、図には示されていないが、モデル化部のDCT変換の前に間引き処理を適用し、逆モデル化部の逆DCT変換の後に補間処理を適用しても構わない。
【0036】
図16は、図8のスクランブル適用領域に対応した同領域を示す。JPEG符号化においては、DCTブロックを交換単位のブロックとし、DCTブロックを4(=2×2)個まとめて最小符号化ユニット(MCU:Minimum Coding Unit)としている。また、MPEG符号化では、このMCUをマクロブロックと呼ばれる基本処理単位としている。そのため、図8とはブロックの処理順序が異なっているが、図9のスクランブル処理とデスクランブル処理の説明には影響しない。ここでは、図6で示したようなスライスは、処理上、MCUの高さの倍数にするのが望ましい。図16における各DCTブロックはDC係数値と複数のAC係数値で構成され、これらはそれぞれ符号化され、ブロックの処理順に出力される。DC係数値は、JPEG符号化で使用される、インターバルという単位の、最初のDCTブロックを除き、直前のDC係数値との差分値(以下、DC差分値という)として符号化される。
【0037】
次に、JPEG符号化方式を適用したスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成に実装され、スクランブル処理及びデスクランブル処理に使われる特徴量や予測関数について、スクランブル処理装置の構成要素に対応させて説明する。
図4において、スクランブル変換器122は、画像及びスライスのサイズや、各ブロックのDC係数値とAC係数値の符号長、そのブロックの位置情報、符号化されたDC差分値と、DC差分値から得たDC係数値を特徴量とする。また、DC差分値をソートしたリストとして管理する。
予測器126は、スクランブル変換器122から、被交換対象ブロックの近隣ブロックのDC係数値を参照し、被交換対象ブロックのDC係数値を予測する。例えば、左、上、左上といった近隣ブロックのDC係数値を参照して、そのうちのどれか1つの係数値、またはそれらの平均値や、その3点(左、上、左上)で決まる同一平面上に配置されると仮想した点の値として、被交換対象ブロックのDC係数値を予測してもよい。
続いて、スクランブル変換器122は、予測された被交換対象ブロックのDC係数値を、直前に符号化されたDC係数値との予測差分値(DC差分値)に変換する(図7のステップST104に相当)。
候補抽出器123は、未処理ブロックのDC差分値がソートされたリストから、近似値をもつブロックを交換候補ブロックとして、所定数k個を抽出する。
乱数発生器124は、乱数値Rを発生させる。
スクランブル変換器122は、乱数値Rに基づいて、交換候補ブロックから交換対象ブロックを選択し、被交換対象ブロックと符号を交換する。
遷移処理器125は、交換されて遷移していくブロックの位置情報とブロックの特徴量を対応付けて、その遷移履歴を管理する。
【0038】
以上示したスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置においては、非交換対象ブロックと交換対象ブロックとの間における交換対象の実体を、DC係数値の符号とAC係数値の符号の両方または一方とすることで、スクランブル処理を実現できる。また、交換対象をブロック単位より大きいMCU単位等の複数の交換単位にまとめて、スクランブル処理を行っても構わない。この時、予測に使う特徴量は、単一ブロックのDC係数値に代えて、その交換単位内に含むDC係数値の平均として交換対象単位を選択するようにすればよい。
【0039】
また、実施の形態1に示されるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置は、ハードウェアによる専用装置、計算機上のソフトウェアによる汎用装置のような実現形態に限定されない。また、図3におけるスクランブル処理装置101外に配置された符号化処理部102についても、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話のカメラ、スキャナ、計算機といった実現形態に限定されない。同様に、デスクランブル処理装置105外に配置された復号処理部106についても、デジタルカメラ上のモニタ、カメラ付き携帯電話上のモニタ、プリンタ、ディスプレイ、計算機等の実現形態に限定されるものではない。また、これらの各装置間の接続は、有線や無線、デジタルやアナログの伝送方式を問わない。
【0040】
以上のように、この実施の形態1によれば、スクランブル領域内、またはその部分領域内における交換単位全ての中から一部の交換候補を類似の特徴量に基づいて抽出して交換対象とし、その中から乱数に基づき一つを選択して交換することにより、画像に加わる撹乱の程度を交換候補の範囲指定により制御できる効果が得られる。
また、スクランブル処理とデスクランブル処理で同系列の乱数を使用することで、可逆性を保持したまま、位置情報を不要とする効果が得られる。
更に、交換候補として特徴量の類似したブロックを選択するだけでなく、特徴量の近過ぎるブロックを交換候補から外すことができるという効果がある。
【0041】
スクランブル処理での交換単位であるブロックについて、ブロック同士で符号を相互に交換するだけであるので、ブロックの符号並び替えによる通信上の制御信号の増減を除き、エントロピー符号化部が出力した符号長が変化しないという効果が得られる。
また、JPEG符号化におけるブロックのDC係数値とAC係数値のように複数の符号構成要素に分類して符号を生成して、一部の符号構成要素だけを交換対象とする際には、類似の特徴量の交換単位であるブロックを選択する。その結果、AC係数値の符号のみを交換する場合には、DC係数値が保存されて、粗い概要把握を保持しながら、DC係数値を特徴量として選択して交換されたAC係数値が詳細を撹乱する効果が得られる。
一方、最低域のDC係数値の符号のみ交換する場合には、高域となるAC係数値により詳細が保存されるが、輝度による明暗の撹乱が得られるという効果がある。
更に、DC係数値とAC係数値を同時に交換する場合には、ブロック毎位置が交換され、撹乱が得られるという効果がある。
【0042】
実施の形態2.
この実施の形態2では、スクランブル処理及びデスクランブル処理に入出力される画像が、スクランブル処理装置に内蔵される符号化処理及びデスクランブル処理装置に内蔵される復号処理の過程で変換され、一時的な中間形式で与えられる場合について説明する。
図17は、この発明の実施の形態2に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。図17は図2に対して、符号化処理部102のモデル化部111とエントロピー符号化部112の間にスクランブル処理部103を配置する。また、復号処理部106のエントロピー復号部141と逆モデル化部142の間にデスクランブル処理部105を配置する。
【0043】
以下、JPEG符号化方式を適用する場合について説明を行う。入出力画像の中間形式とは、スクランブル処理ではモデル化部111で、DCT変換、量子化された後の状態、即ちエントロピー符号化部112でエントロピー符号化される前の状態であり、デスクランブル処理ではエントロピー復号部141で復号された後の状態、即ち逆モデル化部142で逆量子化、逆DCT変換される前の状態である。
実施の形態1と同様に、スクランブル処理部103及びデスクランブル処理部105は予測差分値(DC差分値)を算出して、未処理のブロックのDC差分値をソートしたリストを用いて交換対象ブロックを選択しても構わない。符号化処理部102のモデル化部111とエントロピー符号化部112において、DC係数値をDC差分値に変換(補正)するのがエントロピー符号化部112であれば、スクランブル処理部103は、入力されるDC係数値からDC差分値を一時的に算出してスクランブル処理を行う。同様に、復号処理部106のエントロピー復号部141と逆モデル化部142において、DC差分値をDC係数値に逆変換(逆補正)するのがエントロピー復号部141であれば、デスクランブル処理部105は入力されるDC係数値から再度DC差分値を一時的に算出してデスクランブル処理を行う。
【0044】
また、DC差分値を特徴量として使用せず、DC係数値を使用する場合も考えられる。以下に、スクランブル処理及びデスクランブル処理に使われる特徴量や予測関数について、その実装例をスクランブル処理装置の構成要素に対応させて説明する。
図4において、スクランブル変換器122は、画像及びスライスのサイズや、各ブロックのDC係数値とAC係数値の符号長、そのブロックの位置情報、DC係数値を特徴量とする。また、DC係数値をソートしたリストとして管理する。
予測器126は、スクランブル変換器122から、被交換対象ブロックの近隣ブロックのDC係数値を参照し、被交換対象ブロックのDC係数値を予測する。
続いて、候補抽出器123は、未処理ブロックのDC係数値がソートされたリストから、近似値をもつブロックを交換候補ブロックとして、所定数k個を抽出する。
乱数発生器124は、乱数Rを発生させる。
さらに、スクランブル変換器122は、乱数値Rに基づいて、交換候補ブロックから交換対象ブロックを選択し、被交換対象ブロックと符号を交換する。
遷移処理器125は、交換されて遷移していくブロックの位置情報とブロックの特徴量を対応付けて、その遷移履歴を管理する。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、スクランブル処理部103の前にエントロピー符号化部112がないので、符号長が未確定ではあるものの、画像の撹乱という点においては実施の形態1と同様の効果がある。
【0046】
実施の形態3.
この実施の形態3では、スクランブル処理及びデスクランブル処理に入出力される画像が、未圧縮形式で与えられる場合について説明する。
図18は、実施の形態3に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。図2に対して、スクランブル処理部103を符号化処理部102の前に配置する。また、復号処理部106をデスクランブル処理部105の前に配置する。
図19は、図18と異なるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。図19は、図18と比較して、符号化処理部102と復号処理部106がスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置から独立しているという構成上の相違点があるが、スクランブル処理部103とデスクランブル処理部105の動作説明上の差異はないため、図18、19を併せて説明する。
【0047】
実施の形態3のスクランブル処理装置101及びデスクランブル処理装置104においては、符号化前の画像をブロックに分解してスクランブル処理を直接適用してから符号化処理を行うことになる。よって、可逆性を保持するために、符号化処理では可逆符号化方式を適用するものとする。可逆符号化方式としては、国際標準符号化のJPEG符号化の拡張モード、JPEG−LS、JPEG2000などが知られているが、国際標準符号化方式に限らず、非標準の可逆符号化方式を適用することもできる。
以下に、スクランブル処理及びデスクランブル処理に使われる特徴量や予測関数について、その実装例をスクランブル処理装置の構成要素に対応させて説明する。
図4において、スクランブル変換器122は、画像及びスライスのサイズや、ブロックのサイズ、各ブロックの位置情報、ブロック平均値(平均画素レベル)を特徴量とする。また、ブロック平均値をソートしたリストとして管理する。
予測器126は、スクランブル変換器122から、被交換対象ブロックの近隣ブロックのブロック平均値を参照し、被交換対象ブロックのブロック平均値を予測する。
続いて、候補抽出器123は、未処理ブロックのブロック平均値がソートされたリストから、近似値をもつブロックを交換候補ブロックとして、所定数k個を抽出する。
乱数発生器124は、乱数Rを発生させる。
更に、スクランブル変換器122は、乱数値Rに基づいて、交換候補ブロックから交換対象ブロックを選択し、被交換対象ブロックと符号を交換する。
遷移処理器125は、交換されて遷移していくブロックの位置情報と特徴量を対応付けて、その遷移履歴を管理する。
【0048】
以上のように、この実施の形態3によれば、画像を直接ブロックに分割して構成する点で、DC成分及びAC成分の各符号についてブロックを交換する実施の形態1、2とは異なるが、画像の撹乱という点においては実施の形態1と同様の効果がある。
【0049】
実施の形態4.
実施の形態1〜3は、図4、5に示した構成においては、スクランブルを画像の特定領域に適用する場合に、スクランブル処理部103及びデスクランブル処理部105に、暗号鍵とともにスクランブル適用領域の情報を外部から入力するものとして説明した。
実施の形態4では、スクランブル適用領域情報をスクランブル画像に付加することにより、外部からの入力を不要とする場合について説明する。
【0050】
図20は、実施の形態4に係る、スクランブル処理装置内部のスクランブル処理部の内部構成図である。スクランブル処理部103は、図4に対して、新たに適用領域情報埋め込み器127を備える。適用領域情報埋め込み器127は、バッファメモリ121の出力に対して、スクランブル変換器122から得たスクランブル適用領域情報を埋め込む。
図21は、実施の形態4に係る、デスクランブル処理装置内部のデスクランブル処理部の内部構成図である。デスクランブル処理部105は、図5に対して、新たに適用領域情報検出器137を備える。適用領域情報検出器137は、バッファメモリ131の入力に対して、スクランブル適用領域情報を検出してデスクランブル変換器132に設定する。
【0051】
スクランブル適用領域の情報は、例えば、画像の一部にヘッダやフッタなどとして付加してもよいし、またコメント領域を使用しても、専用の情報領域を設けても構わない。この時に、スクランブル適用領域の情報には、スクランブル変換器122及びデスクランブル変換器132を介して、適用領域情報埋め込み器127及び適用領域情報検出器137に暗号鍵を共有設定して暗号化を適用してもよい。この暗号鍵は、他の暗号鍵と同様に管理し、共有されればよい。
【0052】
また、スクランブル適用領域の情報は、電子透かしを利用するため、スクランブル変換器122及びデスクランブル変換器132を介して、適用領域情報埋め込み器127及び適用領域情報検出器137に暗号鍵を共有設定し、適用領域情報埋め込み器127が埋め込み、適用領域情報検出器137が検出する構成でも構わない。この時に、適用領域情報として検出された電子透かしは、画像から解除されても、解除されなくても構わない。
【0053】
ここで、図20において、適用領域情報埋め込み器127をバッファメモリ121の後に配置したが、スクランブル処理部103が入出力の画像形式を変更しないため、前後逆に配置しても構わない。図21においては、スクランブル適用領域の情報を先に検出する必要があるため、バッファメモリ131の前に適用領域情報検出器137を配置する必要がある。
【0054】
以上のように、この実施の形態4によれば、スクランブル適用領域情報をスクランブル画像に付加することにより、外部からの入力を不要とする効果がある。
【0055】
以上の実施の形態に示されるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置は、応用形態の一例を示したもので、同一構成でJPEG以外の他の符号化方式を適用した応用形態についても実現可能である。
また、JPEG符号化を例に、モデル化部111のDCT変換器113、逆モデル化部142の逆DCT変換器145でDCT変換について構成を説明したが、JPEG2000符号化に適用されるようなウェーブレット変換等の他の変換を適用しても構わない。
更に、スクランブルの対象データは、画像だけではなく、音声などにも適用することが可能である。
【0056】
実施の形態5.
実施の形態1では、スクランブル処理およびデスクランブル処理において、被交換対象ブロックの特徴量が予測値に基づいて抽出された交換候補の中に存在した場合であっても、図10で説明したように交換候補中に特徴量の重複がある場合には、誤ったデスクランブル処理が発生する可能性がある。
実施の形態5では、このような特徴量の重複を予め見極めて、逆変換との一意性がある場合のみ、ブロックの特徴量の交換を行うスクランブル処理を説明する。
【0057】
図22は、実施の形態5における、図4のスクランブル処理部での処理フローを示すフローチャートである。図22の処理フローは、図7の処理フローにおいて、ステップST108の乱数発生とステップST109のブロックの相互交換の間に、逆変換との一意性があるかどうかを判断するステップST113を追加したものである。ステップST113では、順変換と逆変換との一意性がある場合のみ、ブロックの相互交換を行うようにする。一意性がない場合には、被交換対象ブロックの特徴量が予測値に基づいて抽出された交換候補の中に存在しなかった場合と同様に、相互交換は行わないこととする。
【0058】
また、デスクランブル処理においても、スクランブル処理によって一意性を判断した過程を推定することで、相互交換を行ったかどうかを判断することができる。デスクランブル処理部105のデスクランブル処理フローは、上記スクランブル処理部103における図22のスクランブル処理フローと同一の処理フローで説明できる。デスクランブル処理では、図22のステップST113において、逆変換と順変換との一意性があるかどうか判断する。
【0059】
以上のように、この実施の形態5によれば、誤った逆変換が発生する可能性がある場合には、交換を行わないようにすることにより、ブロックの特徴量の交換の一意性を保証できる効果がある。
【0060】
この発明の実施の形態1〜5に示されるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置は、画像の構成単位であるブロックに分解し、交換する対象がブロックの画像片か符号かという相違に関わらず、ブロックの特徴量により、限定された類似の交換候補中から交換対象を選択する。また、交換候補の抽出範囲や数を設定することによりスクランブルの適用効果を制御することができるものである。
先ず、実施の形態1では、符号化処理部102が符号を生成した後で、通信上の制御信号を除いて、符号長を変化させずに、圧縮形式の画像に対してスクランブル処理を適用する。
次に、第2の実施の形態では、符号化処理部102でエントロピー符号化を適用する前のモデル化した段階である、一時的な中間形式の画像に対してスクランブル処理を適用する。
また、第3の実施の形態では、未圧縮形式の画像の段階でブロックの交換を行って、スクランブルを適用した後に符号化を適用している。
以上のように、この発明のスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置では、スクランブル処理部103またはデスクランブル処理部105の入出力画像の画像形式が圧縮形式、中間形式、未圧縮形式に関わらず、スクランブル処理を適用することが可能であり、上記3つの画像形式以外に対しても適用を制限されるものではない。
また、実施の形態1〜3では、スクランブル適用領域情報を必要であれば外部から入力することによりスクランブルを適用し、解除を実現したが、実施の形態4では、画像内部の付加領域や電子透かしを用いて埋め込むことにより、スクランブル適用領域情報の外部からの入力を不要とする。
更に、実施の形態5では、誤った逆変換が発生する可能性がある場合には交換を行わないようにすることにより、ブロック特徴量の交換の一意性が保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明に係るスクランブル処理の概略を示すフローチャートである。
【図2】この発明の実施の形態1に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。
【図3】図2と異なるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。
【図4】図2、3中のスクランブル処理部の内部構成図である。
【図5】図2、3中のデスクランブル処理部の内部構成図である。
【図6】実施の形態1において、画像に対して指定されたスクランブル適用領域を示す図である。
【図7】図4中のスクランブル処理部での処理フローを示すフローチャートである。
【図8】図6で示したスライスのスクランブル適用領域を構成するブロックの特徴量を示す図である。
【図9】図8におけるスクランブル処理過程(A)及びデスクランブル処理過程(B)を示す図である。
【図10】実施の形態1において、ソートされた特徴量のリストから抽出した交換候補中に特徴量の重複がある場合を示す図である。
【図11】図10中の特徴量の重複分を縮退した様子を示す図である。
【図12】図2、3中の符号化処理部の内部構成図である。
【図13】図2、3中の復号処理部の内部構成図である。
【図14】JPEG符号化を実行する場合の、図12の符号化処理部のより詳細な内部構成図である。
【図15】JPEG符号化を実行する場合の、図13の復号処理部のより詳細な内部構成図である。
【図16】図8のスクランブル適用領域に対応した同領域を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態2に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。
【図18】この発明の実施の形態3に係るスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。
【図19】図18と異なるスクランブル処理装置及びデスクランブル処理装置の構成図である。
【図20】この発明の実施の形態4に係る、スクランブル処理装置内部のスクランブル処理部の内部構成図である。
【図21】この発明の実施の形態4に係る、デスクランブル処理装置内部のデスクランブル処理部の内部構成図である。
【図22】実施の形態5における、図4のスクランブル処理部での処理フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
101 スクランブル処理装置、102 符号化処理部、103 スクランブル処理部、104 デスクランブル処理装置、105 デスクランブル処理部、106 復号処理部、111 モデル化部、112 エントロピー符号化部、113 DCT変換器、114 量子化器、115 符号器、121 バッファメモリ、122 スクランブル変換器、123 候補抽出器、124 乱数発生器、125 遷移処理器、126 予測器、127 適用領域情報埋め込み器、131 バッファメモリ、132 デスクランブル変換器、133 候補抽出器、134 乱数発生器、135 遷移処理器、136 予測器、137 適用領域情報検出器、141 エントロピー復号部、142 逆モデル化部、143 復号器、144 逆量子化器、145 逆DCT変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像における被交換対象ブロックと交換対象ブロックを交換してスクランブル処理された画像を出力するスクランブル処理装置において、
前記被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して前記被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測器と、
前記予測された特徴量に基づいて前記被交換対象ブロック以外のブロックから前記交換対象ブロックとなる交換候補を抽出する候補抽出器と、
前記被交換対象ブロックと前記交換候補の特徴量を解析することにより前記交換候補内から前記交換対象ブロックを選択して前記被交換対象ブロックと相互に交換するスクランブル変換器とを備えることを特徴とするスクランブル処理装置。
【請求項2】
前記入力画像及び前記スクランブル処理された出力画像は、符号化された圧縮形式で与えられることを特徴とする請求項1記載のスクランブル処理装置。
【請求項3】
前記圧縮形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、直流成分及び連続するブロックの直流成分の差分値を含むことを特徴とする請求項2記載のスクランブル処理装置。
【請求項4】
前記入力画像及び前記スクランブル処理された出力画像は、符号化前の一時的な中間形式で与えられることを特徴とする請求項1記載のスクランブル処理装置。
【請求項5】
前記一時的な中間形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、直流成分を含むことを特徴とする請求項4記載のスクランブル処理装置。
【請求項6】
前記入力画像及び前記スクランブル処理された出力画像は、符号化されていない未圧縮形式で与えられることを特徴とする請求項1記載のスクランブル処理装置。
【請求項7】
前記未圧縮形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、ブロック平均値を含むことを特徴とする請求項6記載のスクランブル処理装置。
【請求項8】
前記スクランブル変換器から得られるスクランブル適用領域情報を前記出力画像に埋め込む適用領域情報埋め込み器を備えることを特徴とする請求項1記載のスクランブル処理装置。
【請求項9】
前記適用領域情報埋め込み器は、前記スクランブル適用領域情報を前記出力画像に電子透かしによって埋め込むことを特徴とする請求項8記載のスクランブル処理装置。
【請求項10】
前記スクランブル変換器は、ブロックの特徴量の順変換と逆変換との一意性を予め判定し、一意性がある場合のみ、前記被交換対象ブロックと前記交換対象ブロックとの相互交換を行うことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載のスクランブル処理装置。
【請求項11】
スクランブル処理された画像における被交換対象ブロックと交換対象ブロックを交換してデスクランブル処理された画像を出力するデスクランブル処理装置において、
前記被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して前記被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測器と、
前記予測された特徴量に基づいて前記被交換対象ブロック以外のブロックから前記交換対象ブロックとなる交換候補を抽出する候補抽出器と、
前記被交換対象ブロックと前記交換候補の特徴量を解析することにより前記交換候補内から前記交換対象ブロックを選択して前記被交換対象ブロックと相互に交換するデスクランブル変換器とを備えることを特徴とするデスクランブル処理装置。
【請求項12】
前記スクランブル処理された入力画像及び前記デスクランブル処理された出力画像は、符号化された圧縮形式で与えられることを特徴とする請求項11記載のデスクランブル処理装置。
【請求項13】
前記圧縮形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、直流成分及び連続するブロックの直流成分の差分値を含むことを特徴とする請求項12記載のデスクランブル処理装置。
【請求項14】
前記スクランブル処理された入力画像及び前記デスクランブル処理された出力画像は、復号後の一時的な中間形式で与えられることを特徴とする請求項11記載のデスクランブル処理装置。
【請求項15】
前記一時的な中間形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、直流成分を含むことを特徴とする請求項14記載のデスクランブル処理装置。
【請求項16】
前記スクランブル処理された入力画像及び前記デスクランブル処理された出力画像は、符号化されていない未圧縮形式で与えられることを特徴とする請求項11記載のデスクランブル処理装置。
【請求項17】
前記未圧縮形式の入力画像におけるブロックのもつ特徴量は、ブロック平均値を含むことを特徴とする請求項16記載のデスクランブル処理装置。
【請求項18】
前記入力画像からスクランブル適用領域情報を検出して前記デスクランブル変換器に設定する適用領域情報検出器を備えることを特徴とする請求項11記載のデスクランブル処理装置。
【請求項19】
前記適用領域情報検出器は、前記入力画像からスクランブル適用領域情報を電子透かしによって検出することを特徴とする請求項18記載のデスクランブル処理装置。
【請求項20】
前記デスクランブル変換器は、ブロックの特徴量の逆変換と順変換との一意性を予め判定し、一意性がある場合のみ、前記被交換対象ブロックと前記交換対象ブロックとの相互交換を行うことを特徴とする請求項11から請求項19のうちのいずれか1項記載のデスクランブル処理装置。
【請求項21】
入力された画像における被交換対象ブロックと交換対象ブロックを交換してスクランブル処理された画像を出力するスクランブル処理方法において、
前記被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して前記被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測ステップと、
前記予測された特徴量に基づいて前記被交換対象ブロック以外のブロックから前記交換対象ブロックとなる交換候補を抽出する候補抽出ステップと、
前記被交換対象ブロックと前記交換候補の特徴量を解析することにより前記交換候補内から前記交換対象ブロックを選択して前記被交換対象ブロックと相互に交換するスクランブル変換ステップとを備えることを特徴とするスクランブル処理方法。
【請求項22】
スクランブル処理された画像における被交換対象ブロックと交換対象ブロックを交換してデスクランブル処理された画像を出力するデスクランブル処理方法において、
前記被交換対象ブロックの近隣ブロックの特徴量を参照して前記被交換対象ブロックの特徴量を予測する予測ステップと、
前記予測された特徴量に基づいて前記被交換対象ブロック以外のブロックから前記交換対象ブロックとなる交換候補を抽出する候補抽出ステップと、
前記被交換対象ブロックと前記交換候補の特徴量を解析することにより前記交換候補内から前記交換対象ブロックを選択して前記被交換対象ブロックと相互に交換するデスクランブル変換ステップとを備えることを特徴とするデスクランブル処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−184659(P2007−184659A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86754(P2005−86754)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る記載事項(平成16年度、独立行政法人情報通信研究機構、「大容量グローバルネットワーク利用超高精細コンテンツ分散流通技術の研究開発」委託契約、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】