説明

スクリュー及びスクリュードライバー

【課題】溝部を破損することなく、強い締め付け力で締め付け固定することができる、スクリュー及びスクリュードライバーを提供する。
【解決手段】このスクリュー10は、頭部20と、該頭部20裏面から突出し、外周にネジ部31が形成されたネジ軸部30とを備え、頭部20の表面には、スクリュードライバー50の先端部52が挿入される溝部21が形成されている。また、溝部21の、スクリュードライバー50の締め付け回転方向に位置する内側面25は、ネジ軸部30の軸方向とほぼ平行な面とされており、同溝部21の、スクリュードライバー50の締め付け回転方向とは反対側に位置する内側面27は、溝部21の底部から頂部に向けて、開口部が次第に広がるように傾斜したテーパ面をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被取付部材に取付部材を締め付け固定する際に用いられるスクリュー、及び該スクリューを締め付けるためのスクリュードライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
被取付部材に取付部材を固定する際には、スクリューが広く用いられている。従来のこの種のスクリューとして、下記特許文献1には、ネジ軸部と、該ネジ軸部の一端に設けられたドリル刃部と、前記ネジ軸部の他端に設けた頭部とから構成されるスクリュー(ドリルねじ)が開示されている。前記頭部には、ドライバーの先端部が挿入される十字状の溝部が所定深さで形成されており、更に、この溝部の対向する両側面が、溝部の底部から頂部に向けて、その溝幅が次第に広がるように傾斜したテーパ面をなし、ドライバー先端部を挿入しやすくなっている。
【0003】
ところで、スクリューは、人体の骨どうしを接合させる場合にも用いられる。一例として、脳動脈瘤等の治療時において、頭蓋骨の所定箇所を切断して、この切断部分(骨弁)を取り外して開口し、この開口した部分から適宜治療を施した後、前記骨弁を開口部に戻し、骨弁及び開口部周縁にプレートを載置し、このプレートをスクリューによりネジ止めすることにより、骨弁を固定することが行われている。このような骨接合用のスクリューは、施術中にドライバー先端部から脱落して、体内に入ってしまったりすることを防止するために、ドライバー先端部に嵌合させて保持させるようにしている。このスクリューとしては、例えば頭部のドライバー先端部が挿入される溝部の対向する両側面を、互いに平行となるように形成したスクリューが用いられており、ドライバー先端部を挿入したときに、溝部の開口縁部にドライバー先端部の両側面が圧入されて嵌合するようにしている。
【0004】
また、スクリューを締め付けるために用いられるスクリュードライバーとしては、スクリューの溝部に挿入できる形状、例えば+又は−形状の先端部を有するものが使用されており、溝部に入る突出部分は、その両側面が先端に向かうほどテーパ状に薄くなった形状をなしている。
【0005】
また、下記特許文献2には、骨接合用のスクリューを締め付けるためのドライバーとして、ハンドルと、該ハンドルから突出すると共にねじ回し工具を有する軸とを備え、前記軸の両端には、剛性の高い一対の剛軸部が設けられていて、これら一対の剛軸部の間に柔軟な可撓性軸部をなしたものが開示されている。
【特許文献1】特開2004−232842号公報
【特許文献2】特開2005−152621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたような従来のスクリューを用い、従来のドライバーを用いて締め付けを行う場合、スクリューの溝部の両側面がテーパ面をなし、ドライバーの溝部に入る突出部分の両側面もテーパ状をなしているため、ドライバーを締め付け方向に回転させたときに、ドライバーの先端部がスクリューの溝内で滑って外れやすいという問題点があった。また、ドライバーの先端部をスクリューの溝部に挿入したとき、ドライバーの先端部にスクリューを嵌合保持させにくく、スクリューが落下する可能性があった。
【0007】
一方、頭蓋骨の骨弁を固定するために用いられているスクリューでは、ドライバー先端部が挿入される溝部の対向する両側面を互いに平行となるように形成して、ドライバー先端部を挿入したときに、溝部の開口縁部にドライバー先端部の両側面が圧入されて嵌合するようにしているが、ドライバーを締め付け方向に回転させたときに、ドライバーの側面が溝部の開口縁部に圧接されて応力が開口縁部に集中するので、スクリューの溝部の両側部分が破損しやすいという問題があった。また、スクリューの溝部の両側面が互いに平行になっているため、溝部の開口幅が比較的狭くなる傾向があり、ドライバー先端部を溝部に挿入しにくいという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ドライバー先端部を溝部に挿入しやすく、強い回転締め付け力で締め付けても、スクリューの頭部の溝部を破損することがないスクリュー及びスクリュードライバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、頭部と、該頭部の裏面中央から突出し、外周にネジ部が形成されたネジ軸部とを備え、前記頭部の表面には、スクリュードライバーの先端部が挿入される溝部が形成されたスクリューであって、前記溝部の、前記スクリュードライバーの締め付け回転方向に位置する内側面は、前記ネジ軸部の軸方向とほぼ平行な面とされており、前記溝部の、前記スクリュードライバーの締め付け回転方向とは反対側に位置する内側面は、前記溝部の底部から頂部に向けて、開口部が次第に広がるように傾斜したテーパ面をなしていることを特徴とするスクリューを提供するものである。
【0010】
上記発明によれば、頭部に形成された溝部に、スクリュードライバー(以下、単に「ドライバー」という)の先端部を挿入して回転させると、ドライバー先端部の締め付け回転方向側の一側部が、スクリューの溝部の、軸方向と平行な内側面に係合すると共に、ドライバー先端部の締め付け回転方向とは反対側の他側部が、スクリューの溝部のテーパ面に係合する。
【0011】
このため、ドライバーの先端部がスクリューの溝部の底部側で内側面に当接し、ドライバーの押圧力が、スクリューの溝部の内側面の底部側に付与され、溝部が破壊されにくくなる。また、スクリューの溝部の、ドライバーの締め付け回転方向に位置する内側面に、ドライバーの押圧力がほぼ垂直に作用するので、ドライバーによる回転力を効果的に伝達することができる。このため、強い締め付け力でスクリューを締め付けることができると共に、スクリューの溝部の破壊を防止することができる。
【0012】
また、スクリューの溝部の、ドライバーの締め付け回転方向とは反対側に位置する内側面がテーパ面をなし、溝部が底部から頂部に向けて幅広に形成されているので、溝部内にドライバー先端部を挿入しやすくなり、スクリューの締め付け固定作業の作業性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記溝部の中央には、該溝部の頂部での開口部における溝幅よりも長い直径のガイド穴が形成されているスクリューを提供するものである。
【0014】
上記発明によれば、溝部中央に、該溝部の頂部での開口部における溝幅よりも長い直径のガイド穴が形成されているので、ドライバーの先端部を溝部に差し込むときに最初にガイド穴に挿入し、その状態で溝部に適合するように少し回転させるだけで、溝部に挿入することができるので、ドライバーを挿入しやすくなる。
【0015】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明のスクリューに用いられるスクリュードライバーであって、所定長さで伸びる軸部を有すると共に、この軸部の先端部が前記スクリューの頭部に形成された溝部に挿入できる形状をなしており、更に前記軸部の先端部の、締め付け回転方向の側面が、前記軸部の軸方向とほぼ平行な面をなしていることを特徴とするスクリュードライバーを提供するものである。
【0016】
上記発明によれば、軸部の先端部の、ドライバーの締め付け方向の側面が、軸部の軸方向とほぼ平行な面をなしているので、スクリューの溝部に挿入して締め付けるときに、締め付け方向に位置するスクリューの内側面に対して、ドライバーの締め付け方向の側面がほぼ垂直方向から当接し、スクリューの溝部の開口縁部に偏って当たることがない。このため、ドライバーによる締め付け回転時におけるスクリューの溝部の破損を防止して、強い締め付け力でスクリューを締め付け固定することができる。
【0017】
本発明の第4は、前記第3の発明において、前記スクリュードライバーの先端部の厚さは、前記スクリューの頭部に形成された溝部の底部における溝幅に対して、ほぼ同等か、それよりも厚くなるように形成されているスクリュードライバーを提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、ドライバー先端部の厚さが、スクリュー底部での溝幅に対して、ほぼ同等か又はそれよりも厚くなるように形成されているので、ドライバー先端部をスクリューの溝部内に挿入すると、ドライバーの挿入部分の一側が、溝部の軸方向と平行な内側面に当接し、ドライバーの挿入部分の他側の角部が、テーパ面に当接して、ドライバーの先端部が前記溝部に係合するので、ドライバーの先端部にスクリューをしっかりと保持させることができる。このため、手指等でスクリューを保持することなく、ドライバーの先端部にスクリューを仮固着させた状態で締め付け作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスクリューによれば、ドライバーの先端部がスクリューの溝部の底部側で内側面に当接し、ドライバーの押圧力が、スクリューの溝部の内側面の底部側に付与され、溝部が破壊されにくくなる。また、スクリューの溝部の、ドライバーの締め付け回転方向に位置する内側面に、ドライバーの押圧力がほぼ垂直に作用するので、ドライバーによる回転力を効果的に伝達される。したがって、強い締め付け力でスクリューを締め付けることができると共に、スクリューの溝部の破壊を防止することができる。
【0020】
一方、もう一つの本発明であるスクリュードライバーによれば、軸部の先端部の、ドライバーの締め付け方向の側面が、軸部の軸方向とほぼ平行な面をなしているので、スクリューの溝部に挿入して締め付けるときに、締め付け方向に位置するスクリューの内側面に対して、ドライバーの締め付け方向の側面がほぼ垂直方向から当接し、スクリューの溝部のエッジ部に偏って当たることがない。このため、ドライバーによる締め付け回転時におけるスクリューの溝部の破損を防止して、強い締め付け力でスクリューを締め付け固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明のスクリュー及びスクリュードライバーの一実施形態について説明する。
【0022】
まず、本発明のスクリュー10について図1及び図2を参照して説明すると、このスクリュー10は、略円形状の頭部20と、この頭部20の裏面中央から突出して、外周にネジ部31が形成されたネジ軸部30とを備えている。前記ネジ軸部30は、固定される被取付部材に対して取付孔を形成すると共に、該取付孔に雌ネジを造成する機能を有する、いわゆるタッピングねじをなしていて、スクリュー10を回転させることにより被取付部材にスクリューが締め付け固定されるようになっている。具体的には図2(a),(c)に示すように、ネジ軸部30は、軸先端に向かって次第に縮径して、先端中央がドリル状に尖った形状をなし、更にその外周には螺旋状に所定ピッチで形成され、切れ刃となるように尖った端面形状をなしたネジ部31が形成されている。なお、この実施形態においては、ネジ軸部30外周のネジ部31をいわゆるタッピングネジとしたが、被取付部材に予め雌ネジを螺刻しておき、これに螺合するメートルねじ等としてもよく、或いは、被取付部材側にナットを配置しておき、これに螺合するボルトとしてもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
前記頭部20の表面は、その外周縁から中心部に向かって次第に高くなるように、丸みを帯びて突出した形状をなしている。また、頭部20の表面には、後述するスクリュードライバー50(以下、「ドライバー50」という)の先端部52に設けた挿入突起53が挿入される、溝部21が所定深さで形成されている。より具体的には、頭部20の表面には、頭部20の中心部を通ると共に、半径方向外方に向かって所定幅で伸びる挿入溝23が、周方向に均等な間隔を設けて4個形成されていて(すなわち、90°間隔で形成されている)、これらの挿入溝23によって、スクリュー10の軸方向に見たときに略十字状をなした溝部21が設けられている(図2(b)参照)。
【0024】
また、各挿入溝23の底部は、ドライバー50の先端部52に形成された挿入突起53の形状に適合して、その外周から中心に向かって徐々に深さが深くなる形状をなしている。すなわち、図2(a),(c)に示すように、頭部20の対向した位置に形成された挿入溝23,23の底部は、円弧状に窪んだ形状をなし、ドライバー50先端の挿入突起53を、溝部21の奥深くまでしっかりと挿入できるようになっている(図4参照)。
【0025】
上記の溝部21内には、図1に示すように、ドライバー50先端の挿入突起53が挿入されて、同図1及び図2(b)の矢印Aに示す方向(時計回り)にスクリュー10を回転させることにより、タッピングネジ状のネジ軸部30が目的とする被取付部材に締め付け固定されるようになっている。そして、本発明の特徴とするところは、図1及び図2(a)〜(c)に示されるように、溝部21を構成する各挿入溝23の、ドライバー50の締め付け回転方向(矢印A方向)に位置する第1内側面25が、ネジ軸部30の軸方向とほぼ平行な面とされており、一方、溝部21を構成する各挿入溝23の、ドライバー50の締め付け回転方向と反対側に位置する内側面、すなわち、前記第1内側面25に対向して配置された第2内側面27は、前記溝部21の底部から頂部に向けて、その開口部が次第に広がるように傾斜したテーパ面をなしていることにある。この第2内側面27は、前記ネジ軸部30の軸心C(図2(a)参照)に対して1〜10°の角度θで傾斜していることが好ましい。角度θが1°よりも小さいと、溝部21にドライバー50先端の挿入突起53が挿入しにくくなり、θが10°よりも大きいと、ドライバー50の先端部52にスクリュー10を保持させにくくなる。
【0026】
また、図2(b)に示すように、頭部20の表面に形成された溝部21の底部中央には、該溝部21の頂部での開口部における溝幅W1よりも長い直径D(D>W1)で形成されたガイド穴29が、所定深さで形成されている(図2(a),(c)参照)。この実施形態の場合、ガイド穴29は、頭部20上方からドリル等の機械加工によって、所定深さで形成され、隣り合った挿入溝23,23間の角部21aが、円弧状にカットされた形状をなしている。
【0027】
なお、上記溝部21は、この実施形態の場合、4つの挿入溝23からなる略十字形状(いわゆるプラス形状)に形成されているが、一文字状の溝部21(いわゆるマイナス形状)等としてもよく、特に限定されるものではない。
【0028】
以上説明したスクリュー10は、公知の金属材料や非金属材料で形成されるが、この実施形態の場合、特に骨接合用のスクリューとして用いられるため(後述する)、生体適合性を有するTiや、Ti−Al−V系、Ti−Al−Nb−Ta系、Ti−Zr−Nb−Ta系、Ti−Mo−Zr−Al系等のTi基系の合金や、ステンレス、Co系合金、ラクタイド、グリコライド、カプロラクトン等からなる、いわゆる生分解性ポリマーや、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂などを用いることができる。なお、本発明のスクリューとしては骨接合用に限らず、例えば、自動車用部品を車体に固定させるために用いてもよく、その用途は特に限定されるものではない。
【0029】
上記構造からなる本発明のスクリュー10は、溝部21に挿入可能な形状の先端部を有するドライバーであれば、どのようなものでも用いることができるが、好ましくは本発明のスクリュードライバーが用いられる。
【0030】
次に、本発明のスクリュードライバーの一実施形態を、図1及び図4を参照して説明すると、このドライバー50は、図示しない把持部と、該把持部から所定長さで伸びる円柱状の軸部51とを備えており、該軸部51の先端部52が、前記スクリュー10の頭部20に設けた溝部21に挿入できる形状をなしている。すなわち、図1に示すように、先端部52には、周方向に均等な間隔を設けて4片の突状片54が突設しており、これら4片の突状片54によって、軸方向に見たときに略十字形状をなす挿入突起53が設けられている。
【0031】
図1に示すように、前記挿入突起53の、対向する位置にある一対の突状片54,54の先端面は、その中央が最も高くなるように円弧状に突出しており、同挿入突起53の対向する位置にあるもう一対の突状片54,54の先端面も同様な円弧状をなしていて、スクリュー10の溝部21の奥深くまでしっかりと挿入されるようになっている(図4参照)。また、各突状片54のドライバー50の締め付け回転方向(矢印A方向)に位置する第1外側面55は、軸部51の軸方向とほぼ平行な面をなし、一方、各突状片54のドライバー50の締め付け回転方向とは反対側に位置する第2外側面57も、軸部51の軸方向とほぼ平行な面をなしており、各突状片54は一定幅で突設されている(図1参照)。また、このときの各突状片54の厚さTは、図4に示すように、スクリュー10の溝部21を構成する各挿入溝23の底部における溝幅W2に対して厚くなるように形成されている(T>W2)。なお、各突状片54の厚さTは、溝部21の各挿入溝23の底部での溝幅W2に対してほぼ同等としてもよい。
【0032】
次に、上述したスクリュー10、及び該スクリュー10を締め付けるためのドライバー50の使用方法について説明する。
【0033】
スクリュー10の用途は、特に限定されず、例えば自動車用部品を車体に固定させるため等に用いることもできるが、特に人体における骨どうしを接合させる場合に好ましく適用することができる。
【0034】
すなわち、脳内において、動脈が局部的に拡張する脳動脈瘤が発症することがあるが、そのような場合に開頭手術が行われることがある。図3を参照して説明すると、この開頭手術は、頭皮を切り開いた後、頭蓋骨1の所定箇所を切断して、この切断した部分(「骨弁3」という)を取り外して、頭蓋骨1の所定箇所を開口する。そして、この開口した開頭部5から、脳動脈瘤と正常な血管との境界部分を、チタン等で形成されたクリップで挟み込んで、脳動脈瘤に血液が流れ込まないように処置した後、骨弁3を開頭部5に嵌め込む。その後、四角枠状をなすと共に、各角部にネジ挿通孔7aが形成された骨弁保持用プレート7を、骨弁3及び開頭部5周縁上に載置して、スクリュー10を、各ネジ挿通孔7aを通して骨弁3及び頭蓋骨1に締め付け固定することにより、骨弁保持用プレート7を介して骨弁3が元の位置に固定され、次いで頭皮を縫い合わせて手術が終了する。
【0035】
本発明のスクリュー及びスクリュードライバーは、上記の開頭手術において、骨弁保持用プレート7を、骨弁3及び頭蓋骨1に締め付け固定するために好適に用いることができるようになっている。
【0036】
スクリュー10は、上記のような脳動脈瘤の治療用途の場合、図5に示すようなケース8に収納されていて、必要に応じて取り出されるようになっていることが好ましい。すなわち、図5に示すように、ケース8に収納されたスクリュー10の上方から、ドライバー50の先端部52を下降させて、挿入突起53をスクリュー10の溝部21の開口部から挿入していく。
【0037】
このとき、スクリュー10の溝部21の中央には、該溝部21の開口部における溝幅W1よりも長い直径Dのガイド穴29が形成されているので、ドライバー50の先端部52を溝部21に差し込むときに、最初にガイド穴29に挿入し、その状態で溝部21に適合するように少し回転させるだけで、溝部21に挿入することができるので、ドライバー50を挿入しやすくすることができる。すなわち、上記のガイド穴29を形成したことにより、ドライバー50の挿入突起53の各外側面55,57を、溝部21の各内側面25,27に対して正確に平行となるように整合させる必要がなく、図2(b)中の想像線で示すように、同挿入突起53の角度がややずれた状態でも溝部21にスムーズに差し込むことができ、挿入作業が容易となる。
【0038】
また、このスクリュー10においては、溝部21を構成する各挿入溝23の、ドライバー50の締め付け回転方向とは反対側に位置する第2内側面27がテーパ面をなし、溝部21が底部から頂部に向けて幅広に形成されているので、溝部21内にドライバー50先端の挿入突起53を挿入しやすく、スクリュー10の締め付け固定作業の作業性を向上させることができる。
【0039】
そして、上記のように、スクリュー10の溝部21の開口部から、挿入突起53が差し込まれたドライバー50を更に押し込むことにより、図4に示すように、挿入突起53の第2外側面57側の角部が、溝部21のテーパ状の第2内側面27に突き当たると共に、同挿入突起53の第1外側面55が、溝部21の第1内側面25に当接する。このように、溝部21内にドライバー50の先端部52を挿入することにより、挿入突起53の両外側面55,57が、溝部21の両内側面25,27に当接して係合するので、ドライバー50の先端部52にスクリュー10を保持させることができる。このため、手指等でスクリュー10を保持することなく、締め付け作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0040】
また、このとき、ドライバー50の挿入突起53の各突状片54の厚さTを、スクリュー10の溝部21の底部における溝幅W2よりも厚くなるように形成されているので、ドライバー50の先端部52を、スクリュー10の溝部21内に挿入したときに、同ドライバー50の挿入突起53が溝部21の底部近くで係合させることができ、ドライバー50先端にスクリュー10を深く嵌り込ませて、スクリュー10をしっかりと保持させることができる。
【0041】
上記のように、ドライバー50先端にスクリュー10を保持させたら、ドライバー50を持上げることにより、図5に示すように、ケース8から目的とするスクリュー10を一つずつ取り出すことができる。このように取り出したスクリュー10を、前述したように、骨弁保持用プレート7の各ネジ挿通孔7aに整合させて、ドライバー50によって矢印A方向(図1参照)に回転させていく。
【0042】
この状態では、ドライバー50の挿入突起53の締め付け回転方向側の第1外側面55が、スクリュー10の溝部21の、軸方向と平行な第1内側面25に係合すると共に、ドライバー50の挿入突起53の締め付け回転方向とは反対側の第2外側面57が、スクリュー10の溝部21のテーパ状をなした第2内側面27に係合する(図4参照)。
【0043】
すなわち、ドライバー50先端の挿入突起53が、スクリュー10の溝部21の底部側で、両内側面25,27に当接するようになっていて、ドライバー50のスクリュー10を押し付ける方向に作用する押圧力が、スクリュー10の溝部21の底部側に付与される結果となり、溝部21の開口部近傍のエッジ部28(図1参照)に局部的にスクリュー10先端が当接することに起因する、溝部21の破壊を防止することができる。また、ドライバー50を回転させると、スクリュー10の溝部21の、ドライバー50の締め付け回転方向に位置する第1内側面25に、ドライバー50の回転による押圧力がほぼ垂直に作用するので、ドライバー50の回転力を効果的に伝達することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明のスクリュー10においては、溝部21の、ドライバー50の締め付け方向に位置する第1内側面25をネジ軸部30の軸方向とほぼ平行に形成し、締め付け方向とは反対方向に位置する第2内側面27をテーパ面となるように形成したことにより、強い締め付け力でスクリュー10を締め付けることができると共に、スクリュー10の溝部21の破壊を防止することができる。
【0045】
そして、タッピングネジ状に形成された各スクリュー10は、骨弁3や頭蓋骨1の開頭部5の外周縁に螺着して、骨弁保持用プレート7が締め付け固定され、この骨弁保持用プレート7を介して、骨弁3を元の開頭部5に嵌り込んだ状態で固定することができる(図3参照)。
【0046】
一方、本発明であるドライバー50においては、軸部51の先端部52の、ドライバー50の締め付け方向の第1外側面55が、軸部51の軸方向とほぼ平行な面をなしているので、スクリュー10の溝部21に挿入して締め付けるときに、締め付け方向に位置するスクリュー10の第1内側面25に対して、ドライバー50の締め付け方向の第1外側面55がほぼ垂直方向から当接して、スクリュー10の溝部21のエッジ部28に偏って当たることが防止される。その結果、ドライバー50による締め付け回転時におけるスクリュー10の溝部21の破損を防止して、強い締め付け力でスクリュー10を締め付け固定することができる。
【0047】
なお、本発明のドライバー50の各突状片54は、少なくとも、ドライバー50の締め付け回転方向(矢印A方向)に位置する第1外側面55が、軸部51の軸方向とほぼ平行な面をなしていればよく、ドライバー50の締め付け回転方向とは反対側に位置する第2外側面57は、軸部51の軸方向に対して傾斜したテーパ面であってもよい。
【実施例】
【0048】
各種スクリューの溝部の破壊強度を試験した。
【0049】
(実施例)
実施例として、図1〜5に示すスクリューを作製した。すなわち、溝部の、ドライバー締め付け方向に位置する内側面をネジ軸部の軸方向とほぼ平行に形成し、締め付け方向とは反対方向に位置する内側面をテーパ面に形成した。
【0050】
(比較例)
比較例として、溝部21の、ドライバーの締め付け方向及びそれとは反対方向の両内側面を、共にネジ軸部の軸方向とほぼ平行に形成した以外は、上記実施例と同一形状としたスクリューを作製した。
【0051】
(試験方法)
ドライバーとしては、所定のトルクで回転可能とされた電動ドライバーを用い、同ドライバーの軸部の先端部は、ドライバー締め付け方向及びそれとは反対方向の両側面を、軸部の軸方向とほぼ平行としたものを使用した。このドライバーを上記実施例及び比較例のスクリューにそれぞれ挿入して、所定のトルクで合成樹脂板に締め付け固定していき、各スクリューの溝部がどの程度のトルクで破損したかを測定した。その結果を図6に示す。
【0052】
図6に示すように、実施例のスクリューの破壊トルクの方が、比較例のスクリューの破壊トルクよりも大きく、実施例のスクリューの溝部が破損しにくいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のスクリュー及びスクリュードライバーの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同スクリューを示しており、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図3】本発明のスクリュー及びスクリュードライバーの第1の使用方法を示す斜視図である。
【図4】同スクリュー及びスクリュードライバーの使用状態を示す説明図である。
【図5】本発明のスクリュー及びスクリュードライバーの第2の使用方法を示す斜視図である。
【図6】実施例及び比較例のスクリューの破壊特性を示す図表である。
【符号の説明】
【0054】
10 スクリュー
20 頭部
21 溝部
25 第1内側面(ネジ軸部の軸方向とほぼ平行な面)
27 第2内側面(テーパ面)
29 ガイド穴
30 ネジ軸部
31 ネジ部
50 スクリュードライバー
51 軸部
52 先端部
55 第1外側面
57 第2外側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、該頭部の裏面中央から突出し、外周にネジ部が形成されたネジ軸部とを備え、
前記頭部の表面には、スクリュードライバーの先端部が挿入される溝部が形成されたスクリューであって、
前記溝部の、前記スクリュードライバーの締め付け回転方向に位置する内側面は、前記ネジ軸部の軸方向とほぼ平行な面とされており、
前記溝部の、前記スクリュードライバーの締め付け回転方向とは反対側に位置する内側面は、前記溝部の底部から頂部に向けて、開口部が次第に広がるように傾斜したテーパ面をなしていることを特徴とするスクリュー。
【請求項2】
前記溝部の中央には、該溝部の頂部での開口部における溝幅よりも長い直径のガイド穴が形成されている請求項1記載のスクリュー。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載のスクリューに用いられるスクリュードライバーであって、
所定長さで伸びる軸部を有すると共に、この軸部の先端部が前記スクリューの頭部に形成された溝部に挿入できる形状をなしており、
更に前記軸部の先端部の、締め付け回転方向の側面が、前記軸部の軸方向とほぼ平行な面をなしていることを特徴とするスクリュードライバー。
【請求項4】
前記スクリュードライバーの先端部の厚さは、前記スクリューの頭部に形成された溝部の底部における溝幅に対して、ほぼ同等か、それよりも厚くなるように形成されている請求項3記載のスクリュードライバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8112(P2009−8112A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167408(P2007−167408)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(599140507)株式会社パイオラックスメディカルデバイス (37)
【Fターム(参考)】