説明

スクリュー圧縮機

【課題】潤滑剤が略水平方向で付勢された場合において、潤滑剤の過度の温度上昇やスクリュー圧縮機の効率低下を防止し、且つ、潤滑を要する箇所に対して適切な潤滑を実施できるスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明のスクリュー圧縮機1は、螺旋状を呈する一対のロータ2、3と、一対のロータ2、3を互いに噛み合った状態で回転自在に軸支するケーシング4とを備えるスクリュー圧縮機であって、一対のロータ2、3の少なくとも一方と協働して、ロータ2又は3の軸方向で延びる所定の軸周りで回転する略円板状の円板部6と、円板部6の少なくとも外縁部を浸す潤滑剤Lの貯留部43とを有し、貯留部43は、円板部6に対向する略凹球面状に形成されているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状を呈する一対のロータを用いて気体を圧縮するスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、螺旋状を呈する一対のロータを互いに相反する方向で回転させることにより、気体を圧縮するスクリュー圧縮機が用いられている。
このようなスクリュー圧縮機は、螺旋状を呈する一対のロータと、該ロータの少なくとも一方と協働して回転し略円板状を呈する円板部と、潤滑剤を貯留するための貯留部とを有している。上記円板部としては、タイミングギヤ、増速ギヤ又は上記潤滑剤の攪拌部材等が挙げられる(例えば、特許文献1から3参照)。
【0003】
タイミングギヤは、一対のロータを一定比で相反して同期回転させるためのギヤである。また、増速ギヤは、ロータの回転速度を増加させるためのギヤである。これらのギヤは、複数のギヤが噛合して回転自在に設けられているため、過度の摩耗や騒音等を防止するために潤滑剤等により潤滑する必要がある。そこで、ギヤの少なくとも外縁部を上記貯留部の潤滑剤に浸し、この状態でギヤを回転させることにより、ギヤの歯部を適度に潤滑している。
攪拌部材は、スクリュー圧縮機における所定の摺動部や噛合部を潤滑するために、上記貯留部の潤滑剤を攪拌すると共に、上記摺動部等に潤滑剤を供給するための部材である。
なお、潤滑剤の貯留部は、例えば略直方体状や、略円筒状の部材の両縁部に壁部が各々接続された形状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−233027号公報
【特許文献2】特開平5−10282号公報
【特許文献3】特開平6−346876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、貯留部は略直方体又は略円筒状に形成されており、貯留部の所定の断面形状は略矩形を呈する部分を有している。そのため、スクリュー圧縮機の傾きが変化したことや、スクリュー圧縮機に対して略水平方向での付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑剤が略水平方向で付勢されたときには、潤滑剤は貯留部内を流動し、潤滑剤の鉛直方向に沿う方向での所定の断面形状は大きく変化する。よって、円板部の潤滑剤に浸っている範囲が大きく変動していた。
【0006】
円板部の潤滑剤に浸っている範囲が拡大すれば、円板部の回転抵抗が増加する。そのため、潤滑剤の温度が過度に上昇してしまうことや、スクリュー圧縮機の効率が低下してしまう等の課題があった。一方、円板部の潤滑剤に浸っている範囲が減少すれば、ギヤ(円板部)自体に対する潤滑や、攪拌部材(円板部)による他の摺動部等への潤滑剤の供給が適切に実施されないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、潤滑剤が略水平方向で付勢された場合において、潤滑剤の過度の温度上昇やスクリュー圧縮機の効率低下を防止し、且つ、潤滑を要する箇所に対して適切な潤滑を実施できるスクリュー圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明のスクリュー圧縮機は、螺旋状を呈する一対のロータと、一対のロータを互いに噛み合った状態で回転自在に軸支するケーシングとを備えるスクリュー圧縮機であって、一対のロータの少なくとも一方と協働して、ロータの軸方向で延びる所定の軸周りで回転する略円板状の円板部と、円板部の少なくとも外縁部を浸す潤滑剤の貯留部とを有し、貯留部は、円板部に対向する略凹球面状に形成されているという構成を採用する。
【0009】
このような構成を採用する本発明では、貯留部は円板部に対向する略凹球面状に形成されているため、スクリュー圧縮機の傾きが変化したことや、スクリュー圧縮機に対して略水平方向での付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑剤が略水平方向で付勢されたときには、潤滑剤はその断面形状を略同一の形状に維持しつつ上記凹球面に沿って流動する。よって、円板部が潤滑剤に浸っている範囲の変動が抑制され、円板部の回転抵抗の増加が抑えられる。
【0010】
また、本発明のスクリュー圧縮機は、軸方向及び円板部の径方向に沿う方向での貯留部の断面形状が、円板部における潤滑剤の液面の位置を略中心とした略円弧状に形成され、軸方向と直交する方向での貯留部の断面形状が、円板部の中心位置を略中心とした略円弧状に形成されているという構成を採用する。
【0011】
このような構成を採用する本発明では、スクリュー圧縮機内の潤滑剤が上記軸方向で付勢されたときには、潤滑剤は貯留部の円弧面に沿って流動する。そして、潤滑剤の液面は、円板部における潤滑剤の液面の位置を略中心として傾くため、円板部の潤滑剤に浸っている範囲は略一定となる。
また、本発明では、スクリュー圧縮機内の潤滑剤が上記軸方向に直交する水平面内の方向で付勢されたときには、潤滑剤は貯留部の円弧面に沿って流動する。そして、潤滑剤の液面は、円板部における中心位置を略中心として傾くため、円板部の潤滑剤に浸っている範囲は略一定となる。
【0012】
また、本発明のスクリュー圧縮機は、円板部が、ギヤを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、ギヤが潤滑剤に浸っている範囲の変動が抑制され、ギヤの回転抵抗の増加が抑えられる。
【0013】
また、本発明のスクリュー圧縮機は、円板部が、潤滑剤を攪拌するための攪拌部材を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、攪拌部材が潤滑剤に浸っている範囲の変動が抑制され、攪拌部材の回転抵抗の増加が抑えられる。
【0014】
また、本発明のスクリュー圧縮機は、車載用過給機として用いられるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、スクリュー圧縮機を備える車両が傾斜のある場所を移動することでスクリュー圧縮機が傾いたり、上記車両が加速、減速又は旋回等を行うことでスクリュー圧縮機に対して水平方向での付勢力が加えられる場合にも、円板部が潤滑剤に浸っている範囲の変動が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、スクリュー圧縮機内の潤滑剤が水平方向で付勢されたときにも、潤滑剤の過度の温度上昇やスクリュー圧縮機の効率低下を防止でき、且つ、潤滑を要する箇所に対して適切な潤滑を実施できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スクリュー圧縮機1の構成を示す概略図である。
【図2】潤滑油Lが貯留部43内を流動する様子を示す概略図である。
【図3】スクリュー圧縮機1Aの構成を示す側方からの断面図である。
【図4】潤滑油Lが第2貯留部43A内を流動する様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
〔第一実施形態〕
本実施形態に係るスクリュー圧縮機1の構成を、図1を参照して説明する。図1は、スクリュー圧縮機1の構成を示す概略図であり、(a)は側方からの断面図、(b)は(a)の線視A−A断面図である。なお、図1における矢印Xは前後方向における前方を、矢印Yは左右方向における左方を、矢印Zは鉛直方向における上方を示すものとする。
【0018】
本実施形態に係るスクリュー圧縮機1は、螺旋状を呈する一対のロータ(後述する雄ロータ2及び雌ロータ3)を互いに相反する方向で回転させることにより、その内部に導入された空気(気体)を圧縮する圧縮機である。なお、スクリュー圧縮機1は、不図示の車両等に搭載され、圧縮した空気をエンジン等の内燃機関に供給する過給機として用いられる。
図1に示すように、スクリュー圧縮機1は、雄ロータ(ロータ)2と、雌ロータ(ロータ)3と、ケーシング4と、駆動側タイミングギヤ5と、従動側タイミングギヤ6(円板部、ギヤ)とを備えている。
【0019】
雄ロータ2は、前後方向で延びる雄ロータ軸21の外周面に、雄側凸部22が螺旋状に配置された構成となっている。雄側凸部22の表面は、耐熱性を有し摩擦係数の低い合成樹脂材料等によって形成されている。雄ロータ軸21の前方側には、スクリュー圧縮機1を駆動するための駆動部Eが接続されている。駆動部Eには、エンジン等の内燃機関や電動機、流体の流動により回転する翼車(風車等)が用いられる。
【0020】
雌ロータ3は、前後方向で延びる雌ロータ軸31の外周面に、雌側凸部32が螺旋状に配置された構成となっている。雌側凸部32の表面は、耐熱性を有し摩擦係数の低い合成樹脂材料等によって形成されている。雄ロータ2と雌ロータ3とは、それぞれのロータ軸21及び31が略同一の方向で延在し、かつ、雄側凸部22及び雌側凸部32が互いに噛み合う位置で配置されている。なお、雄ロータ2と雌ロータ3との間には所定の隙間が形成されており、雄側凸部22と雌側凸部32とは互いに接触していない。
【0021】
ケーシング4は、スクリュー圧縮機1の外殻を構成する部材であり、ロータケース41と、ギヤケース42とを有している。
【0022】
ロータケース41は、その内部に雄ロータ2及び雌ロータ3を回転自在に配置するための部材である。ロータケース41は、アルミ系の金属材料を用いて形成され、雄ロータ2及び雌ロータ3を囲む略筒状の枠部と、該枠部の前後方向での両縁部に各々設けられる壁部とを有している。上記枠部の各側面には、外部から空気を導入するための吸入口G1、及び、圧縮された空気を吐出するための吐出口G2がそれぞれ設けられている。上記壁部の各々は、前後方向で貫通する一対の孔部を有しており、該一対の孔部には前方側ベアリングR1又は後方側ベアリングR2を介して雄ロータ軸21の両端部及び雌ロータ軸31の両端部がそれぞれ回転自在に嵌合して軸支されている。ロータケース41の内部空間は、吸入口G1及び吐出口G2を除けば、気体が漏出しない気密構造となっている。なお、前方側ベアリングR1には、アンギュラタイプのベアリングが用いられており、雄ロータ軸21及び雌ロータ軸31のそれぞれに一対のアンギュラベアリングが互いに逆の向きで設置されている。
【0023】
ギヤケース42は、その内部に駆動側タイミングギヤ5及び従動側タイミングギヤ6を配置するための部材である。ギヤケース42は、タイミングギヤ5及び6を共に囲んだ形状を呈し、アルミ系の金属材料を用いて形成され、ロータケース41の前方側縁部に不図示のボルト等を用いて一体的に接続されている。
【0024】
また、ギヤケース42は、潤滑油(潤滑剤)Lを貯留する貯留部43を有している。
潤滑油Lは、タイミングギヤ5及び6、特にそれらの歯部を潤滑するためのものである。潤滑油Lは貯留部43に貯留され、潤滑油Lには従動側タイミングギヤ6の外縁部が浸されている。
貯留部43は、従動側タイミングギヤ6の下方に設けられ、従動側タイミングギヤ6に対向する略凹球面状に形成されている。前後方向に直交する面での貯留部43の断面形状は、従動側タイミングギヤ6の中心位置を略中心とした略円弧状となっている。左右方向に直交する面での貯留部43の断面形状は略円弧状を呈しており、該円弧の中心位置と、従動側タイミングギヤ6の外縁部の位置とは、前後方向に関して略同一位置にあることが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態に係るスクリュー圧縮機1は、いわゆる潤滑油封入式のスクリュー圧縮機であって、スクリュー圧縮機1の組立時にギヤケース42(貯留部43)内に潤滑油Lを封入した後は、外部から潤滑油Lを供給しないタイプのスクリュー圧縮機である。
【0026】
駆動側タイミングギヤ5及び従動側タイミングギヤ6は、互いに協働して雄ロータ2及び雌ロータ3を一定比で相反して同期回転させるためのギヤである。
駆動側タイミングギヤ5及び従動側タイミングギヤ6は、互いに噛合して、雄ロータ軸21の前端部及び雌ロータ軸31の前端部のそれぞれに一体的に接続されている。
【0027】
続いて、本実施形態に係るスクリュー圧縮機1の動作を説明する。
まず、スクリュー圧縮機1が、外部から導入された空気を圧縮する動作について説明する。
駆動部Eの作動により、雄ロータ2が所定の方向で回転する。雄ロータ2及び雌ロータ3にはそれぞれ駆動側タイミングギヤ5及び従動側タイミングギヤ6が設けられ、タイミングギヤ5及び6は互いに噛合しているため、雄ロータ2及び雌ロータ3は一定比で互いに相反する方向で同期回転する。吸入口G1からロータケース41の内部に導入された空気は、ロータ2及び3の間を後方側から前方側に向かって流動すると共にロータ2及び3により圧縮される。圧縮された空気は、吐出口G2から吐出される。
以上で、スクリュー圧縮機1が外部から導入された空気を圧縮する動作が終了する。
【0028】
続いて、潤滑油Lが略水平方向で付勢されたときの潤滑油Lに関する作用を、図2を参照して説明する。
図2は、潤滑油Lが貯留部43内を流動する様子を示す概略図であり、(a)は潤滑油Lが前後方向で付勢されたときの潤滑油Lの変動を示し、(b)は、潤滑油Lが左右方向で付勢されたときの潤滑油Lの変動を示している。
【0029】
まず、スクリュー圧縮機1の傾きが左右方向に直交する面に沿って変化したことや、スクリュー圧縮機1に対して前後方向で付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑油Lが前後方向で付勢されたときの、潤滑油Lに関する作用を説明する。
図2(a)に示すように、スクリュー圧縮機1内の潤滑油Lが前後方向で付勢されたときには、潤滑油Lは貯留部43内を流動し、例えば、潤滑油L1の位置へ移動する。ここで、潤滑油Lは貯留部43の凹球面に沿って流動すると共に、潤滑油L1の断面形状は潤滑油Lの断面形状と略同一である。よって、従動側タイミングギヤ6が潤滑油Lに浸っている範囲の変動が抑制され、従動側タイミングギヤ6の回転抵抗の増加が抑えられる。
【0030】
次に、スクリュー圧縮機1の傾きが前後方向に直交する面に沿って変化したことや、スクリュー圧縮機1に対して左右方向で付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑油Lが左右方向で付勢されたときの、潤滑油Lに関する作用を説明する。
図2(b)に示すように、スクリュー圧縮機1内の潤滑油Lが左右方向で付勢されたときには、潤滑油Lは貯留部43内を流動し、例えば、潤滑油L2の位置へ移動する。ここで、潤滑油Lは貯留部43の凹球面に沿って流動すると共に、潤滑油Lの液面は従動側タイミングギヤ6の中心位置を略中心として傾く。よって、従動側タイミングギヤ6が潤滑油Lに浸っている範囲は略一定となり、従動側タイミングギヤ6の回転抵抗の増加が抑えられる。
【0031】
また、スクリュー圧縮機1は、不図示の車両等に搭載され圧縮した空気をエンジン等の内燃機関に供給する過給機として用いられているが、スクリュー圧縮機1を備える車両が傾斜のある場所を移動することでスクリュー圧縮機1が傾いたり、上記車両が加速、減速又は旋回等を行うことでスクリュー圧縮機1に対して水平方向での付勢力が加えられる場合にも、従動側タイミングギヤ6が潤滑油Lに浸っている範囲の変動が抑制される。
【0032】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、スクリュー圧縮機1内の潤滑油Lが水平方向で付勢されたときにも、潤滑油Lの過度の温度上昇やスクリュー圧縮機1の効率低下を防止でき、且つ、潤滑を要する従動側タイミングギヤ6の歯部に対して適切な潤滑を実施できるという効果がある。
【0033】
〔第二実施形態〕
本実施形態に係るスクリュー圧縮機1Aの構成を、図3を参照して説明する。
図3は、スクリュー圧縮機1Aの構成を示す側方からの断面図である。なお、図3において、第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、スクリュー圧縮機1Aは、第1の実施形態に係るスクリュー圧縮機1と同様に、潤滑油封入式のスクリュー圧縮機である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態におけるギヤケース42は、潤滑油Lを貯留する第2貯留部43Aを有している。潤滑油Lは第2貯留部43Aに貯留され、潤滑油Lには従動側タイミングギヤ6の外縁部が浸されている。
第2貯留部43Aは、従動側タイミングギヤ6の下方に設けられている。前後方向及び従動側タイミングギヤ6の径方向に沿う方向での第2貯留部43Aの断面形状は、従動側タイミングギヤ6における潤滑油Lの液面の位置を略中心とした略円弧状に形成されている。また、第1の実施形態と同様に、前後方向に直交する面での第2貯留部43Aの断面形状は、従動側タイミングギヤ6の中心位置を略中心とした略円弧状に形成されている。
【0035】
本実施形態に係るスクリュー圧縮機1Aの動作は、第1の実施形態に係るスクリュー圧縮機1Aの動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
続いて、潤滑油Lが略水平方向で付勢されたときの潤滑油Lに関する作用を、図4を参照して説明する。
図4は、潤滑油Lが第2貯留部43A内を流動する様子を示す概略図であり、潤滑油Lが前後方向で付勢されたときの潤滑油Lの変動を示している。
【0037】
まず、スクリュー圧縮機1Aの傾きが左右方向に直交する面に沿って変化したことや、スクリュー圧縮機1Aに対して前後方向で付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑油Lが前後方向で付勢されたときの、潤滑油Lに関する作用を説明する。
図4に示すように、スクリュー圧縮機1A内の潤滑油Lが前後方向で付勢されたときには、潤滑油Lは第2貯留部43A内を流動し、例えば、潤滑油L3の位置へ移動する。ここで、潤滑油Lは第2貯留部43Aの凹球面に沿って流動すると共に、潤滑油Lの液面は従動側タイミングギヤ6における潤滑油Lの液面の位置を略中心として傾く。よって、従動側タイミングギヤ6が潤滑油Lに浸っている範囲は略一定となり、従動側タイミングギヤ6の回転抵抗の増加が抑えられる。
【0038】
次に、スクリュー圧縮機1Aの傾きが前後方向に直交する面に沿って変化したことや、スクリュー圧縮機1Aに対して左右方向で付勢力が加えられたことにより、結果として潤滑油Lが左右方向で付勢されたときの潤滑油Lに関する作用であるが、この作用は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、スクリュー圧縮機1A内の潤滑油Lが水平方向で付勢されたときにも、潤滑油Lの過度の温度上昇やスクリュー圧縮機1Aの効率低下を防止でき、且つ、潤滑を要する従動側タイミングギヤ6の歯部に対して適切な潤滑を実施できるという効果がある。
【0040】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、スクリュー圧縮機1及び1Aは車両等に搭載され、圧縮した空気をエンジン等の内燃機関に供給する過給機として用いられているが、本発明はこのような用途に限定されるものではなく、圧縮された気体を必要とする他の装置に用いてもよい。例えば、冷蔵・冷凍装置におけるコンプレッサーとして用いられてもよい。なお、この場合にスクリュー圧縮機1及び1Aが圧縮する気体は、気化した冷媒となる。
【0042】
また、上記実施形態に係るスクリュー圧縮機1及び1Aに、駆動部Eにおける回転速度を増速又は減速させる変速ギヤ(円板部、ギヤ)を設けてもよく、この変速ギヤに対して貯留部43又は第2貯留部43Aに貯留された潤滑油Lによる潤滑を行ってもよい。
また、上記実施形態に係るスクリュー圧縮機1及び1Aに、潤滑油Lを攪拌すると共にスクリュー圧縮機1又は1Aにおける所定の摺動部等に潤滑油Lを供給するための略円板状の攪拌部材(円板部)を設けてもよい。
このような構成によっても、スクリュー圧縮機1又は1A内の潤滑油Lが水平方向で付勢されたときに、潤滑油Lの過度の温度上昇やスクリュー圧縮機1又は1Aの効率低下を防止でき、且つ、潤滑を要する箇所(変速ギヤの歯部や上記摺動部等)に対して適切な潤滑を実施できるという効果がある。
【0043】
また、上記実施形態では、潤滑剤として潤滑油Lが用いられていたが、潤滑剤は油に限定されるものではなく、例えば、シリコン系やフッ素系の潤滑剤を用いてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、スクリュー圧縮機1及び1Aは共に潤滑油封入式のスクリュー圧縮機であったが、これに限定されるものではなく、ケーシング4のいずれかの箇所に潤滑油Lの供給路及び排出路を備え、これらの供給路及び排出路を介して潤滑油Lを循環させる潤滑油循環式のスクリュー圧縮機であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1(1A)…スクリュー圧縮機、2…雄ロータ(ロータ)、3…雌ロータ(ロータ)、4…ケーシング、43…貯留部、43A…第2貯留部、6…従動側タイミングギヤ(円板部、ギヤ)、L…潤滑油(潤滑剤)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状を呈する一対のロータと、前記一対のロータを互いに噛み合った状態で回転自在に軸支するケーシングとを備えるスクリュー圧縮機であって、
前記一対のロータの少なくとも一方と協働して、前記ロータの軸方向で延びる所定の軸周りで回転する略円板状の円板部と、
前記円板部の少なくとも外縁部を浸す潤滑剤の貯留部とを有し、
前記貯留部は、前記円板部に対向する略凹球面状に形成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
前記軸方向及び前記円板部の径方向に沿う方向での前記貯留部の断面形状は、前記円板部における前記潤滑剤の液面の位置を略中心とした略円弧状に形成され、
前記軸方向と直交する方向での前記貯留部の断面形状は、前記円板部の中心位置を略中心とした略円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項3】
前記円板部は、ギヤを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項4】
前記円板部は、前記潤滑剤を攪拌するための攪拌部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項5】
車載用過給機として用いられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスクリュー圧縮機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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