説明

スクリュー圧縮機

【課題】比較的簡単な構成で、冷媒に含まれる異物を確実に除去することができるスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】スクリューロータ(40)と軸受ホルダ(60)との継ぎ目(76)には、冷媒に含まれる油を軸受ホルダ(60)の玉軸受(61)に供給するための潤滑路(75)が形成されている。そして、この潤滑路(75)内には、油に含まれる異物を捕集するための磁石(73)が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒や空気を圧縮する圧縮機として、スクリュー圧縮機が用いられている。例えば、特許文献1には、スクリューロータ及びゲートロータからなる圧縮機構と、これを駆動するための電動機とが1つのケーシングに収容されたスクリュー圧縮機が開示されている。
【0003】
前記スクリュー圧縮機では、スクリューロータは、概ね円柱状に形成されており、その外周部に複数条の螺旋溝が刻まれている。ゲートロータは、概ね平板状に形成されており、スクリューロータの側方に配置されている。このゲートロータには、複数の長方形板状のゲートが放射状に設けられている。ゲートロータは、その回転軸がスクリューロータの回転軸と直交する姿勢で設置され、ゲートがスクリューロータの螺旋溝と噛み合わされる。
【0004】
前記スクリュー圧縮機では、スクリューロータとゲートロータがケーシングに収容されており、スクリューロータの螺旋溝と、ゲートロータのゲートと、ケーシングの内壁面とによって圧縮室が形成される。スクリューロータを電動機で回転駆動すると、スクリューロータの回転に伴ってゲートロータが回転する。そして、ゲートロータのゲートが、噛み合った螺旋溝の始端(吸入側の端部)から終端(吐出側の端部)へ向かって相対的に移動し、閉じきり状態となった圧縮室の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室内の流体が圧縮される。
【0005】
前記スクリューロータは、その駆動軸が軸受ホルダにより回転自在に支持されている。この軸受ホルダの軸受は、ケーシング内に吸入された冷媒に含まれる油によって潤滑される。ここで、冷媒に含まれる鉄粉等の異物が軸受ホルダの軸受に対して供給されないように、スクリュー圧縮機の吸入側には、異物を捕集するための吸入側フィルタが設けられている。
【0006】
また、特許文献2には、圧縮機内に遠心式油分離器を設け、この遠心式油分離器により冷媒に含まれる異物を遠心分離させることで、フィルタの目詰まりを抑制するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−42081号公報
【特許文献2】特開2007−321688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスクリュー圧縮機では、吸入側フィルタのメッシュ幅が比較的大きく設定されているため、冷媒から異物を確実に除去することが困難であった。これは、メッシュ幅が小さすぎると、ケーシング内に吸入されるガス冷媒の圧力損失が増大してしまうからである。そのため、吸入側フィルタで捕集しきれなかった異物が軸受ホルダの軸受に対して供給されてしまい、軸受の寿命や性能等に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2の発明のように、遠心式油分離器を用いて冷媒に含まれる異物を遠心分離させるようにした場合には、ケーシング内に遠心式油分離器を別途設ける必要があり、装置が大型化したりコストが増大してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、冷媒に含まれる異物を確実に除去することができるスクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は、スクリューロータで圧縮された冷媒に含まれる油を軸受ホルダの軸受部に向かって流通させる潤滑路内に、油に含まれる異物を捕集するための磁石を配設するようにした。
【0012】
具体的に、本発明は、ケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に配設されて冷媒を圧縮するための圧縮機構(20)を構成するスクリューロータ(40)と、該圧縮機構(20)の吐出側に配設されて該スクリューロータ(40)の駆動軸(21)を回転自在に支持する軸受ホルダ(60)とを備えたスクリュー圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0013】
すなわち、第1の発明は、前記スクリューロータ(40)と前記軸受ホルダ(60)との継ぎ目(76)には、該スクリューロータ(40)で圧縮された冷媒に含まれる油を該軸受ホルダ(60)の軸受部(61)に向かって流通させる潤滑路(75)が形成され、
前記潤滑路(75)内には、油に含まれる異物を捕集するための磁石(73)が配設されていることを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明では、スクリューロータ(40)と軸受ホルダ(60)との継ぎ目(76)には、潤滑路(75)が形成される。スクリューロータ(40)で圧縮された冷媒に含まれる油は、潤滑路(75)を介して軸受ホルダ(60)の軸受部(61)に向かって流通される。この潤滑路(75)内には磁石(73)が配設されており、油に含まれる異物が捕集される。
【0015】
このような構成とすれば、潤滑路(75)内に配設した磁石(73)によって、潤滑路(75)内を流通する冷媒に含まれる鉄粉等の異物を捕集することができる。これにより、異物が除去された冷媒を軸受ホルダ(60)の軸受部(61)に供給して、冷媒に含まれる油によって軸受部(61)を潤滑することができるから、軸受部(61)の寿命や性能等を確保することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
前記磁石(73)は、リング状に形成される一方、その内周側において前記軸受ホルダ(60)との間に段差が形成されるように、前記潤滑路(75)における該軸受ホルダ(60)側に当接して配設されていることを特徴とするものである。
【0017】
第2の発明では、磁石(73)はリング状に形成される。この磁石(73)は、潤滑路(75)における軸受ホルダ(60)側に当接して配設される。これにより、磁石(73)の内周側において軸受ホルダ(60)との間に段差が形成される。
【0018】
このような構成とすれば、軸受ホルダ(60)の軸受部(61)の周辺がリング状の磁石(73)で囲まれることとなり、冷媒が潤滑路(75)内を軸受部(61)に向かって流通する際に、冷媒に含まれる異物を磁石(73)で効率的に捕集することができる。
【0019】
また、磁石(73)の内周側において軸受ホルダ(60)との間に段差を形成するようにしたから、潤滑路(75)の上流側から下流側(すなわち、磁石(73)の外周側から内周側)に向かって流通する冷媒が、磁石(73)を通過した後に減速されることとなる。これにより、冷媒に含まれる異物を磁石(73)の内周面に確実に付着させて捕集することができる。
【0020】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記磁石(73)は、前記潤滑路(75)内における前記スクリューロータ(40)の外周縁部近傍に配設されていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、潤滑路(75)内におけるスクリューロータ(40)の外周縁部近傍に磁石(73)が配設される。このような構成とすれば、潤滑路(75)内において、スクリューロータ(40)の背面側に付着した油に含まれる異物が、スクリューロータ(40)の回転動作により油から遠心分離されてスクリューロータ(40)の外周縁部近傍に向かうため、その位置に配設されている磁石(73)によって異物を効率的に捕集することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、潤滑路(75)内に配設した磁石(73)によって、潤滑路(75)内を流通する冷媒に含まれる鉄粉等の異物を捕集することができる。これにより、異物が除去された冷媒を軸受ホルダ(60)の軸受部(61)に供給して、冷媒に含まれる油によって軸受部(61)を潤滑することができるから、軸受部(61)の寿命や性能等を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスクリュー圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【図3】スクリュー圧縮機の構成を示す横断面図である。
【図4】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図である。
【図5】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す、別の角度から見た斜視図である。
【図6】スクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図7】スクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であって、(a)は吸込行程を示し、(b)は圧縮行程を示し、(c)は吐出行程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。図1に示すように、冷媒回路(1)は、スクリュー圧縮機(10)、四方切換弁(2)、熱源側熱交換器(3)、利用側熱交換器(4)、熱源側膨張弁(5)、及び利用側膨張弁(6)が設けられた閉回路で構成されている。この冷媒回路(1)には、冷媒が充填されている。冷媒回路(1)では、充填された冷媒を循環させることにより蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0026】
前記冷媒回路(1)において、スクリュー圧縮機(10)は、その吐出側が四方切換弁(2)の第1ポートに、その吸入側が四方切換弁(2)の第2ポートにそれぞれ接続されている。熱源側熱交換器(3)の一端は、四方切換弁(2)の第3ポートに接続されている。熱源側熱交換器(3)の他端は、利用側膨張弁(6)を介して利用側熱交換器(4)の一端に接続されている。利用側熱交換器(4)の他端は、四方切換弁(2)の第4ポートに接続されている。
【0027】
前記四方切換弁(2)は、第1ポートと第3ポートが連通して第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通して第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図1に点線で示す状態)とに切り換え可能となっている。
【0028】
図2は、スクリュー圧縮機の構成を示す縦断面図、図3は、横断面図である。図2及び図3に示すように、このスクリュー圧縮機(10)は、密閉型に構成されている。このスクリュー圧縮機(10)では、圧縮機構(20)と、圧縮機構(20)を駆動する電動機(12)とが金属製のケーシング(11)に収容されている。圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機(12)と連結されている。
【0029】
また、前記ケーシング(11)内には、冷媒回路(1)の熱源側熱交換器(3)又は利用側熱交換器(4)から低圧のガス冷媒が流入されるとともに低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが区画部材(29)によって区画形成されている。
【0030】
前記ケーシング(11)の低圧空間(S1)側には、吸入口(11a)が開口している。この吸入口(11a)には、吸入側フィルタ(19)が取り付けられており、冷媒回路(1)の熱源側熱交換器(3)又は利用側熱交換器(4)から吸入されたガス冷媒に含まれる比較的大きな異物を捕集する。
【0031】
前記電動機(12)は、ステータ(13)と、ロータ(14)とを備えている。ステータ(13)は、低圧空間(S1)においてケーシング(11)の内周面に固定されている。ロータ(14)には駆動軸(21)の一端部が連結されていて、駆動軸(21)がロータ(14)とともに回転軸(X)回りに回転するように構成されている。
【0032】
前記圧縮機構(20)は、ケーシング(11)内に形成された円筒壁(16)と、円筒壁(16)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。
【0033】
前記スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、円筒壁(16)の内径よりも若干小さく設定されており、スクリューロータ(40)の外周面が円筒壁(16)の内周面と摺接するように構成されている。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の軸方向一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。
【0034】
図4は、スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図、図5は、別の角度から見た斜視図である。図4及び図5に示すように、スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、円柱状のスクリューロータ(40)の軸心周りに対称な形状をしている(すなわち、スクリューロータ(40)の横断面において、螺旋溝(41)のそれぞれは、スクリューロータ(40)の中心に対して点対称な形状をしている)。そして、複数の螺旋溝(41)が所定の軸周りに対称となるときのその軸を螺旋溝(41)の軸心という。スクリューロータ(40)に対して螺旋溝(41)が精度良く形成されているときには、螺旋溝(41)の軸心はスクリューロータ(40)の軸心と一致する。
【0035】
ここで、前記スクリューロータ(40)の軸方向一端側の周縁部にはテーパ面(45)が形成されていて、螺旋溝(41)の一端部はテーパ面(45)に開口している。各螺旋溝(41)は、テーパ面(45)に開口する一端部(図2における左端部)が始端部となり、他端部(図2における右端部)が終端部となっている。一方、螺旋溝(41)の終端部は、スクリューロータ(40)の軸方向他端側においてその側周面に開口している。螺旋溝(41)では、両側の側壁面(42,43)のうち、ゲート(51)の進行方向の前側に位置するものが第1側壁面(42)となり、ゲート(51)の進行方向の後側に位置するものが第2側壁面(43)となっている。
【0036】
また、前記スクリューロータ(40)の他端部には、螺旋溝(41)が形成されている本体部(40a)よりも外径が小さな小径部(46)が形成されている。
【0037】
さらに、前記スクリューロータ(40)には、図1に示すように、駆動軸(21)を挿通させるための挿通孔(47)がスクリューロータ(40)の軸心を通って貫通形成されている。この挿通孔(47)が孔を構成する。
【0038】
図2に示すように、前記スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。駆動軸(21)の一端部には、電動機(12)のロータ(14)が連結されており、駆動軸(21)の他端部がスクリューロータ(40)の挿通孔(47)に挿通される。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。また、駆動軸(21)には、その軸方向に貫通する貫通孔(21c)が形成されている。
【0039】
このように、前記スクリューロータ(40)と電動機(12)のロータ(14)とが駆動軸(21)に連結された状態でケーシング(11)内に収容される。このとき、スクリューロータ(40)は、円筒壁(16)に回転可能に嵌合しており、その外周面が円筒壁(16)の内周面と摺接する。
【0040】
ここで、前記駆動軸(21)の一端部にはロータ(14)から突出する第1被支持部(21a)が形成されており、この第1被支持部(21a)がコロ軸受(66)に回転自在に支持されている。コロ軸受(66)は、コロ軸受ホルダ(65)に設置されている。コロ軸受ホルダ(65)のロータ(14)側は開口しており、後述する駆動軸(21)の貫通孔(21c)を介してコロ軸受ホルダ(65)内に供給された冷媒が、コロ軸受(66)を通過した後でコロ軸受ホルダ(65)の開口部から電動機(12)のモータコイルに向かって供給されるようになっている。
【0041】
一方、前記駆動軸(21)の他端部にはスクリューロータ(40)から突出する第2被支持部(21b)が形成されており、この第2被支持部(21b)が圧縮機構(20)の高圧側に位置する軸受部としての玉軸受(61)に回転自在に支持されている。
【0042】
図6は、スクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。図6に示すように、玉軸受(61)は、ケーシング(11)の円筒壁(16)に嵌合された軸受ホルダ(60)に設置されている。軸受ホルダ(60)の、スクリューロータ(40)側の端面の周縁部には、スクリューロータ(40)側に突出した環状壁部(62)が設けられている。
【0043】
前記環状壁部(62)は、スクリューロータ(40)が円筒壁(16)内に配置されたときに、スクリューロータ(40)の小径部(46)が環状壁部(62)の内周側に入り込むように構成されている。このとき、小径部(46)と環状壁部(62)との継ぎ目(76)には若干の隙間が形成されており、スクリューロータ(40)の小径部(46)と軸受ホルダ(60)の環状壁部(62)とは径方向にも軸方向にも接触していない。つまり、小径部(46)と環状壁部(62)との間には、スクリューロータ(40)の外周面から径方向内方に入り込んだ後、軸方向に屈曲し、その後、さらに径方向内側に屈曲した、すなわち、縦断面がクランク状に屈曲した形状の潤滑路(75)が形成されている。
【0044】
前記潤滑路(75)は、スクリューロータ(40)で圧縮された冷媒に含まれる油を軸受ホルダ(60)の玉軸受(61)に向かって流通させるための流路である。この潤滑路(75)内には、冷媒に含まれる鉄粉等の異物を捕集するための磁石(73)が配設されている。この磁石(73)はリング状に形成されており、スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と略同心となるように、潤滑路(75)における軸受ホルダ(60)側に当接して配設されている。具体的に、軸受ホルダ(60)における環状壁部(62)よりも径方向内方の位置には、周方向に延びる周溝が形成されており、この周溝にリング状の磁石(73)が嵌め込まれている。ここで、軸受ホルダ(60)の周溝の深さは、磁石(73)の厚みよりも小さく設定されており、磁石(73)を周溝内に嵌め込んだときに、磁石(73)の内周側において軸受ホルダ(60)との間に段差が形成されている。
【0045】
このような構成とすれば、潤滑路(75)の上流側から下流側(すなわち、磁石(73)の外周側から内周側)に向かって流通する冷媒を、磁石(73)を通過した後に減速させることができる。これにより、冷媒に含まれる異物を磁石(73)の内周面に確実に付着させて捕集することができる。
【0046】
また、前記磁石(73)は、そのリング部分が潤滑路(75)内におけるスクリューロータ(40)の外周縁部近傍に配設されるように、その外径が設定されている。このような構成とすれば、潤滑路(75)内において、スクリューロータ(40)の背面側に付着した油に含まれる異物が、スクリューロータ(40)の回転動作により油から遠心分離されてスクリューロータ(40)の外周縁部近傍に向かうため、その位置に配設されている磁石(73)によって異物を効率的に捕集することができる。
【0047】
前記玉軸受(61)を通過した冷媒は、駆動軸(21)の他端部から貫通孔(21c)を通って一端部から吐出され、コロ軸受(66)を潤滑する。コロ軸受(66)を潤滑した後の冷媒は、コロ軸受ホルダ(65)の開口部から電動機(12)のモータコイルに向かって供給され、モータコイルを潤滑する。
【0048】
このように、異物が除去された冷媒を軸受ホルダ(60)の玉軸受(61)やコロ軸受ホルダ(65)のコロ軸受(66)に供給して、冷媒に含まれる油によって玉軸受(61)やコロ軸受(66)を潤滑することができるから、玉軸受(61)やコロ軸受(66)の寿命や性能等を確保することができる。
【0049】
図4及び図5に示すように、前記ゲートロータ(50)は、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、円筒壁(16)の外側にスクリューロータ(40)を挟んで対称に配置され、軸心がスクリューロータ(40)の軸心と直交している。各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)が円筒壁(16)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。
【0050】
前記ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の背面に当接している。
【0051】
図3に示すように、前記ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、円筒壁(16)に隣接してケーシング(11)内に区画形成されたゲートロータ室(18)に収容されている。図3におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、図3におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(18)内の軸受ハウジング(52)に玉軸受(53)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(18)は、低圧空間(S1)に連通している。
【0052】
前記圧縮機構(20)では、円筒壁(16)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(50)のゲート(51)とによって囲まれた空間が圧縮室(23)になる(図2参照)。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、吸入側端部において低圧空間(S1)に開放しており、この開放部分が圧縮機構(20)の吸入口(24)になっている。
【0053】
前記スクリュー圧縮機(10)には、容量制御機構としてスライドバルブ(88)が設けられている。このスライドバルブ(88)は、円筒壁(16)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出したスライドバルブ収納部(17)内に設けられている。スライドバルブ(88)は、内面が円筒壁(16)の内周面の一部を構成するとともに、円筒壁(16)の軸心方向にスライド可能に構成されている。
【0054】
前記スクリュー圧縮機(10)には、スライドバルブ(88)を円筒壁(16)の軸心方向にスライド駆動させるためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。このスライドバルブ駆動機構(80)は、区画部材(29)の右側壁面に形成されたシリンダ(81)と、シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、アーム(84)とスライドバルブ(88)とを連結する連結ロッド(85)と、一端がピストンロッド(83)に連結された駆動バー(86)と、駆動バー(86)の他端に連結された駆動機構(87)とを備えている。
【0055】
前記駆動機構(87)は、ピストンロッド(83)の軸方向と直交する方向に延びるシャフト(87a)周りに回動するように構成されている。具体的に、シャフト(87a)には図示しないベーンモータが連結しており、このベーンモータの回転角度を変化させることで、スライドバルブ(88)の位置を調整するように構成されている。
【0056】
また、図示は省略するが、スライドバルブ(88)には、圧縮室(23)と高圧空間(S2)とを連通させるための吐出口が形成されている。つまり、圧縮室(23)で圧縮された冷媒は、スライドバルブ(88)の吐出口から高圧空間(S2)に吐出される。また、円筒壁(16)には、圧縮室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのバイパス通路の上流端が開口しており、スライドバルブ(88)はこのバイパス通路の上流端を開閉して、圧縮機構(20)の容量を調整する。
【0057】
前記ケーシング(11)の高圧空間(S2)は、中空の円筒状に形成された高圧側ケース(27)で構成されている。この高圧側ケース(27)の底部には、油溜まり(28)が設けられている。この油溜まり(28)に貯留された油は、スクリューロータ(40)等の駆動部品の潤滑に用いられる。
【0058】
そして、低圧空間(S1)と高圧空間(S2)とを区画する区画部材(29)内には、油供給路(29a)が形成されている。この油供給路(29a)には、油溜まり(28)に貯留された油に含まれる異物を捕集するオイルフィルタ(25)が取り付けられている。このオイルフィルタ(25)で異物が捕集された後の油は、油供給路(29a)を介してスクリューロータ(40)等の駆動部品に対して供給されるようになっている。
【0059】
前記高圧側ケース(27)の上部には、吐出口(27a)が形成されている。また、高圧側ケース(27)内における油溜まり(28)の上方位置で且つスライドバルブ(88)の吐出口と高圧側ケース(27)の吐出口(27a)との間には、デミスタ(26)が配置されている。
【0060】
前記デミスタ(26)は、ガス冷媒から油を分離するものである。具体的に、スライドバルブ(88)の吐出口から吐出された冷媒は、デミスタ(26)を通過する際に、冷媒に含まれる油がデミスタ(26)に捕捉される。デミスタ(26)に捕捉された油は、高圧側ケース(27)内の油溜まり(28)に回収される。一方、油が分離された後のガス冷媒は、吐出口(27a)を介してケーシング(11)外部に吐出される。
【0061】
図2に示すように、ケーシング(11)には、台座部(11b)が形成されている。この台座部(11b)は、ケーシング(11)の上部から突出するように形成されており、その上面が概ね水平な平坦面となっている。台座部(11b)には、ターミナル組立品(30)が取り付けられている。
【0062】
前記ターミナル組立品(30)は、ターミナル台(31)と、ターミナル(32)とによって構成されている。ターミナル台(31)は、長方形の厚板状に形成され、その長辺がケーシング(11)の軸方向と概ね平行となる姿勢で、台座部(11b)の上面に取り付けられている。ターミナル台(31)の下面は、台座部(11b)の上面と接している。
【0063】
前記ターミナル(32)は、電動機(12)に給電するためのものであり、端子座(33)と6本の端子棒(34)とを備えている。端子座(33)は、絶縁性の樹脂等からなるブロック状の部材であって、ターミナル台(31)の上面及び下面の中央部に設置されている。各端子棒(34)は、金属製の部材であって、その軸方向が概ね鉛直方向となる姿勢で端子座(33)に取り付けられている。
【0064】
−運転動作−
以下、前記スクリュー圧縮機(10)の運転動作について説明する。図2に示すように、スクリュー圧縮機(10)において電動機(12)を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。ここでは、図7において網掛けを付した圧縮室(23)に着目して説明する。
【0065】
図7(a)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(a)の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が吸入口(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。
【0066】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(b)の状態となる。図7(b)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(b)の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
【0067】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(c)の状態となる。図7(c)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、吐出口(図示省略)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮されたガス冷媒が圧縮室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。
【0068】
前記圧縮室(23)から押し出されたガス冷媒の一部は、スクリューロータ(40)と軸受ホルダ(60)との隙間に形成された潤滑路(75)を流通して玉軸受(61)に向かう。このとき、冷媒に含まれる鉄粉等の異物は、リング状の磁石(73)表面に付着して捕集される。特に、磁石(73)の内周側において軸受ホルダ(60)との間には段差が形成されているから、冷媒は、磁石(73)を通過した後に減速され、冷媒に含まれる異物が磁石(73)の内周面に付着するようになる。
【0069】
また、このガス冷媒には油が含まれているので、ガス冷媒が玉軸受(61)を通過する際に玉軸受(61)が潤滑される。そして、玉軸受(61)を通過したガス冷媒は、駆動軸(21)の他端部から貫通孔(21c)を通って一端部から吐出され、コロ軸受(66)が潤滑される。コロ軸受(66)を潤滑した後のガス冷媒は、コロ軸受ホルダ(65)の開口部から電動機(12)のモータコイルに向かって供給され、モータコイルが潤滑される。
【0070】
以上のように、本実施形態に係るスクリュー圧縮機(10)によれば、潤滑路(75)内に配設した磁石(73)によって、潤滑路(75)内を流通する冷媒に含まれる鉄粉等の異物を捕集することができる。これにより、異物が除去された冷媒を軸受ホルダ(60)の玉軸受(61)やコロ軸受ホルダ(65)のコロ軸受(66)に供給して、冷媒に含まれる油によって玉軸受(61)やコロ軸受(66)を潤滑することができるから、玉軸受(61)やコロ軸受(66)の寿命や性能等を確保することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、リング状の磁石(73)を、軸受ホルダ(60)の玉軸受(61)の周辺を囲うように配置した構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、軸受ホルダ(60)の周方向に間隔をあけて複数の磁石(73)を配設するようにしても良い。この場合には、磁石(73)によって潤滑路(75)が狭くなることが抑制されるため、冷媒をスムーズに流通させる上で有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、冷媒に含まれる異物を確実に除去することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0073】
1 スクリュー圧縮機
11 ケーシング
20 圧縮機構
21 駆動軸
40 スクリューロータ
60 軸受ホルダ
61 玉軸受(軸受部)
73 磁石
75 潤滑路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に配設されて冷媒を圧縮するための圧縮機構(20)を構成するスクリューロータ(40)と、該圧縮機構(20)の吐出側に配設されて該スクリューロータ(40)の駆動軸(21)を回転自在に支持する軸受ホルダ(60)とを備えたスクリュー圧縮機であって、
前記スクリューロータ(40)と前記軸受ホルダ(60)との継ぎ目(76)には、該スクリューロータ(40)で圧縮された冷媒に含まれる油を該軸受ホルダ(60)の軸受部(61)に向かって流通させる潤滑路(75)が形成され、
前記潤滑路(75)内には、油に含まれる異物を捕集するための磁石(73)が配設されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁石(73)は、リング状に形成される一方、その内周側において前記軸受ホルダ(60)との間に段差が形成されるように、前記潤滑路(75)における該軸受ホルダ(60)側に当接して配設されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記磁石(73)は、前記潤滑路(75)内における前記スクリューロータ(40)の外周縁部近傍に配設されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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