説明

スクリュー圧縮機

【課題】エコノマイザ回路から圧縮室内に噴出させる冷媒量を十分に確保して性能を向上させるとともに、冷媒の圧力脈動による騒音を低減できるようにする。
【解決手段】スクリュー圧縮機(10)は、圧縮途中の圧縮室(23)内に中間圧冷媒を噴出させるエコノマイザ回路(70)を備える。エコノマイザ回路(70)は、冷媒回路(1)の途中から中間圧冷媒を分岐させる分岐通路(71)と、分岐通路(71)の下流側に接続されて中間圧冷媒を滞留させる共鳴空間(72)と、一端が圧縮室(23)内に連通し、他端が共鳴空間(72)内に突出して延びる共鳴通路(73)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒や空気を圧縮する圧縮機として、スクリュー圧縮機が用いられている。例えば、特許文献1には、複数条の螺旋溝が形成されたスクリューロータと、複数のゲートが設けられたゲートロータとを備えたスクリュー圧縮機が記載されている。
【0003】
前記スクリュー圧縮機では、スクリューロータの回転に伴ってゲートロータが回転する。そして、ゲートロータのゲートが、噛み合った螺旋溝の始端(吸入側の端部)から終端(吐出側の端部)へ向かって相対的に移動し、閉じきり状態となった圧縮室の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室内の流体が圧縮される。
【0004】
ここで、圧縮途中の圧縮室内には、エコノマイザポートから中間圧冷媒が噴出される。これにより、スクリュー圧縮機の吐出冷媒の温度を所定温度以下まで低減させて性能の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4140488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エコノマイザポートに連通するエコノマイザ回路(副流路)内を冷媒が流れる際に、冷媒の圧力脈動によってエコノマイザ回路の配管が振動したり、この振動がエコノマイザ回路を介して熱交換器に伝播することで、騒音が発生してしまうことがある。この対策として、エコノマイザ回路の途中に油を注入したりマフラを設けることで、騒音を低減することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このような対策を施すと、冷媒の圧力損失が増大して冷媒の噴出量が低下してしまうことから、十分なエコノマイザ効果を得ることができずに性能が低下してしまうという問題があった。また、マフラを別途設けるとコストが増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エコノマイザ回路から圧縮室内に噴出させる冷媒量を十分に確保して性能を向上させるとともに、冷媒の圧力脈動による騒音を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(16)を有するケーシング(11)と、圧縮途中の該圧縮室(23)内に中間圧冷媒を噴出させるエコノマイザ回路(70)とを備えたスクリュー圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記エコノマイザ回路(70)は、
冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(1)の途中から中間圧冷媒を分岐させる分岐通路(71)と、
前記分岐通路(71)の下流側に接続されて中間圧冷媒を滞留させる共鳴空間(72)と、
一端が前記圧縮室(23)内に連通し、他端が前記共鳴空間(72)内に連通する共鳴通路(73)とを有することを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、エコノマイザ回路(70)は、分岐通路(71)、共鳴空間(72)、及び共鳴通路(73)を有している。分岐通路(71)は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(1)の途中から中間圧冷媒を分岐させる。共鳴空間(72)は、分岐通路(71)の下流側に接続されて中間圧冷媒を滞留させる。共鳴通路(73)は、一端が圧縮室(23)内に連通し、他端が共鳴空間(72)内に連通している。
【0012】
このような構成とすれば、エコノマイザ回路(70)内を流れる冷媒の圧力脈動を、共鳴空間(72)のマフラ効果によって低減することができ、低騒音化を実現することができる。また、別途マフラを設ける必要がないため、コスト削減に有利であるとともに、マフラによって冷媒の圧力損失が増大することがなく、冷媒の噴出量を十分に確保することができる。これにより、十分なエコノマイザ効果を得ることができ、性能の向上を図ることができる。
【0013】
また、共鳴通路(73)内の気柱脈動の共鳴周波数を、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数に合わせるようにすれば、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させる、いわゆる過給効果を得ることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記共鳴通路(73)の他端は、前記共鳴空間(72)内に突出して延びていることを特徴とするものである。
【0015】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記分岐通路(71)の下流端は、前記共鳴空間(72)内に突出して延びていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、共鳴通路(73)の他端が共鳴空間(72)内に突出して延びている。第3の発明では、さらに、分岐通路(71)の下流端が共鳴空間(72)内に突出して延びている。
【0017】
このような構成とすれば、共鳴空間(72)内に突出する分岐通路(71)や共鳴通路(73)の長さを適宜設定することで、最適なマフラ効果を得ることができる。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
音速c[m/s]、共鳴周波数f[Hz]を用いて表される、前記シリンダ部(16)の内周面から前記共鳴通路(73)の他端までの長さL[m]が、
L=c/4f
という条件を満たすように設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、シリンダ部(16)の内周面から共鳴通路(73)の他端までの長さL[m]が上述した条件を満たすように設定される。このような構成とすれば、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【0020】
具体的に、スクリューロータ(40)の回転数が60Hz、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の本数(圧縮室(23)の数)が6本の場合、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数、すなわち共鳴周波数f[Hz]は、f=60×6=360[Hz]となる。ここで、音速c=150[m/s]とすると、シリンダ部(16)の内周面から共鳴通路(73)の他端までの長さL[m]は、L=150/(4×360)=0.104[m]と設定すればよい。
【0021】
これにより、共鳴通路(73)内の気柱脈動の共鳴周波数を、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数に合わせて、気柱脈動において振幅が最大となる腹の部分をシリンダ部(16)の内周面側の開口端に位置付けることで、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【0022】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴通路(73)は、
筒状に形成されて前記シリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、
前記共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、該共鳴管(73a)の管内部で前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って並ぶように前記シリンダ部(16)に形成された複数のエコノマイザポート(73b)とを有することを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明では、共鳴通路(73)は、筒状に形成されてシリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、シリンダ部(16)に形成された複数のエコノマイザポート(73b)とを有している。エコノマイザポート(73b)は、共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、共鳴管(73a)の管内部でスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って並ぶように形成される。
【0024】
このような構成とすれば、エコノマイザポート(73b)が螺旋溝(41)のランド部(41a)で密閉されるので、隣り合う圧縮室(23)同士がエコノマイザポート(73b)を介して連通することがなく、圧縮効率が向上する。
【0025】
第6の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴通路(73)は、
筒状に形成されて前記シリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、
前記共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、該共鳴管(73a)の管内部で前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って延びるように前記シリンダ部(16)に形成された長円状のエコノマイザポート(73b)とを有することを特徴とするものである。
【0026】
第6の発明では、共鳴通路(73)は、筒状に形成されてシリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、シリンダ部(16)に形成されたエコノマイザポート(73b)とを有している。エコノマイザポート(73b)は、共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、共鳴管(73a)の管内部でスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って長円状に延びるように形成される。
【0027】
このような構成とすれば、エコノマイザポート(73b)が螺旋溝(41)のランド部(41a)で密閉されるので、隣り合う圧縮室(23)同士がエコノマイザポート(73b)を介して連通することがなく、圧縮効率が向上する。
【0028】
第7の発明は、第1乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴空間(72)は、前記シリンダ部(16)の外周部を囲むように形成されていることを特徴とするものである。
【0029】
第7の発明では、シリンダ部(16)の外周部を囲むように共鳴空間(72)が形成される。このような構成とすれば、中間圧冷媒を共鳴空間(72)内に流入させることでシリンダ部(16)の周囲を均一な温度に保つことができる。これにより、スクリューロータ(40)とシリンダ部(16)との温度差に起因する熱膨張の違いによってスクリューロータ(40)とシリンダ部(16)とが接触することがなく、スクリューロータ(40)の焼き付きを防止することができる。
【0030】
第8の発明は、第1の発明において、
前記シリンダ部(16)に取り付けられて前記圧縮室(23)内に連通する小径管部(85a)と、該小径管部(85a)よりも大径の筒状に形成されてその一端が該小径管部(85a)に接続され、他端が前記ケーシング(11)外部に開口した大径管部(85b)とを有するエコノマイザスリーブ(85)と、
前記大径管部(85b)の筒内部に嵌合される嵌合管部(86a)と、該嵌合管部(86a)の端部から径方向外方に延びるフランジ部(86b)とを有するエコノマイザフランジ(86)とを備え、
前記共鳴通路(73)は、前記エコノマイザスリーブ(85)の前記小径管部(85a)で構成され、
前記分岐通路(71)は、前記エコノマイザフランジ(86)の前記嵌合管部(86a)で構成され、
前記共鳴空間(72)は、前記エコノマイザスリーブ(85)の前記大径管部(85b)の筒内部と、前記エコノマイザフランジ(86)の前記嵌合管部(86a)とで区画された空間で構成されていることを特徴とするものである。
【0031】
第8の発明では、シリンダ部(16)には、エコノマイザスリーブ(85)が取り付けられる。エコノマイザスリーブ(85)は、小径管部(85a)と、小径管部(85a)よりも大径の筒状に形成されてその一端が小径管部(85a)に接続された大径管部(85b)とを有する。小径管部(85a)は、圧縮室(23)内に連通している。大径管部(85b)の他端は、ケーシング(11)外部に開口している。エコノマイザスリーブ(85)には、エコノマイザフランジ(86)が取り付けられる。エコノマイザフランジ(86)は、嵌合管部(86a)と、フランジ部(86b)とを有する。嵌合管部(86a)は、大径管部(85b)の筒内部に嵌合される。フランジ部(86b)は、嵌合管部(86a)の端部から径方向外方に延びている。共鳴通路(73)は、エコノマイザスリーブ(85)の小径管部(85a)で構成される。分岐通路(71)は、エコノマイザフランジ(86)の嵌合管部(86a)で構成される。共鳴空間(72)は、エコノマイザスリーブ(85)の大径管部(85b)の筒内部と、エコノマイザフランジ(86)の嵌合管部(86a)とで区画された空間で構成される。
【0032】
このような構成とすれば、エコノマイザスリーブ(85)に対してエコノマイザフランジ(86)を進退させることで、共鳴空間(72)内の高さを調整することができる。これにより、共鳴空間(72)内の高さを、エコノマイザ回路(70)を流れる冷媒の圧力脈動がマフラ効果によって低減される最適な高さに調整することができ、低騒音化を実現することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、エコノマイザ回路(70)内を流れる冷媒の圧力脈動を、共鳴空間(72)のマフラ効果によって低減することができ、低騒音化を実現することができる。また、別途マフラを設ける必要がないため、コスト削減に有利であるとともに、マフラによって冷媒の圧力損失が増大することがなく、冷媒の噴出量を十分に確保することができる。これにより、十分なエコノマイザ効果を得ることができ、性能の向上を図ることができる。
【0034】
また、共鳴通路(73)内の気柱脈動の共鳴周波数を、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数に合わせるようにすれば、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。
【図2】スクリュー圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【図3】スクリュー圧縮機の構成を示す横断面図である。
【図4】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図である。
【図5】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す、別の角度から見た斜視図である。
【図6】スクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図7】スクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であって、(a)は吸込行程を示し、(b)は圧縮行程を示し、(c)は吐出行程を示す。
【図8】本実施形態2に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図9】エコノマイザポートの構成を示す平面図である。
【図10】エコノマイザポートの別の構成を示す平面図である。
【図11】本実施形態3に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図12】スクリュー圧縮機の他の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図13】スクリュー圧縮機の他の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0037】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。図1に示すように、冷媒回路(1)は、スクリュー圧縮機(10)、四方切換弁(2)、熱源側熱交換器(3)、利用側熱交換器(4)、熱源側膨張弁(5)、利用側膨張弁(6)、過冷却熱交換器(65)、及びエコノマイザ回路(70)が設けられた閉回路で構成されている。この冷媒回路(1)には、冷媒が充填されている。冷媒回路(1)では、充填された冷媒を循環させることにより蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0038】
前記冷媒回路(1)において、スクリュー圧縮機(10)は、その吐出側が四方切換弁(2)の第1ポートに、その吸入側が四方切換弁(2)の第2ポートにそれぞれ接続されている。熱源側熱交換器(3)の一端は、四方切換弁(2)の第3ポートに接続されている。熱源側熱交換器(3)の他端は、過冷却熱交換器(65)の一端に接続されている。過冷却熱交換器(65)の他端は、利用側膨張弁(6)を介して利用側熱交換器(4)の一端に接続されている。利用側熱交換器(4)の他端は、四方切換弁(2)の第4ポートに接続されている。
【0039】
前記四方切換弁(2)は、第1ポートと第3ポートが連通して第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通して第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図1に点線で示す状態)とに切り換え可能となっている。
【0040】
前記過冷却熱交換器(65)は、高圧側流路(65a)と中間圧側流路(65b)とを有し、高圧側流路(65a)及び中間圧側流路(65b)を流れる冷媒同士が熱交換するように構成されている。
【0041】
前記高圧側流路(65a)の一端は、熱源側膨張弁(5)を介して熱源側熱交換器(3)に接続されている。また、高圧側流路(65a)の他端は、利用側膨張弁(6)を介して利用側熱交換器(4)に接続されている。
【0042】
前記中間圧側流路(65b)は、エコノマイザ回路(70)に接続されている。エコノマイザ回路(70)は、スクリュー圧縮機(10)の圧縮途中の圧縮室(23)内に冷媒を噴出するためのものであり、分岐通路(71)と、後述する共鳴空間(72)及び共鳴通路(73)(図2参照)とを備えている。
【0043】
前記分岐通路(71)の上流端は、熱源側熱交換器(3)と過冷却熱交換器(65)との間の冷媒配管に接続されている。分岐通路(71)の下流端は、スクリュー圧縮機(10)の中間圧位置に開口する中間ポートに接続されている。
【0044】
前記分岐通路(71)の途中には、過冷却用減圧弁(66)と、過冷却熱交換器(65)の中間圧側流路(65b)とが上流側から順に接続されている。過冷却用減圧弁(66)は、開度可変な電子膨張弁により構成されている。
【0045】
図2は、スクリュー圧縮機の要部の構成を示す縦断面図、図3は、横断面図である。図2及び図3に示すように、このスクリュー圧縮機(10)は、密閉型に構成されている。このスクリュー圧縮機(10)では、圧縮機構(20)と、圧縮機構(20)を駆動する電動機(12)とが金属製のケーシング(11)に収容されている。圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機(12)と連結されている。また、ケーシング(11)内には、冷媒回路(1)の熱源側熱交換器(3)又は利用側熱交換器(4)から低圧のガス冷媒が流入されるとともに低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが区画形成されている。
【0046】
前記電動機(12)は、ステータ(13)と、ロータ(14)とを備えている。ステータ(13)は、低圧空間(S1)においてケーシング(11)の内周面に固定されている。ロータ(14)には駆動軸(21)の一端部が連結されていて、駆動軸(21)がロータ(14)とともに回転軸(X)回りに回転するように構成されている。
【0047】
前記圧縮機構(20)は、ケーシング(11)内に形成されたシリンダ部(16)と、シリンダ部(16)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。
【0048】
前記スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、シリンダ部(16)の内径よりも若干小さく設定されており、スクリューロータ(40)の外周面がシリンダ部(16)の内周面と摺接するように構成されている。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の軸方向一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。
【0049】
図4は、スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図、図5は、別の角度から見た斜視図である。図4及び図5に示すように、スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、円柱状のスクリューロータ(40)の軸心周りに対称な形状をしている(すなわち、スクリューロータ(40)の横断面において、螺旋溝(41)のそれぞれは、スクリューロータ(40)の中心に対して点対称な形状をしている)。そして、複数の螺旋溝(41)が所定の軸周りに対称となるときのその軸を螺旋溝(41)の軸心という。スクリューロータ(40)に対して螺旋溝(41)が精度良く形成されているときには、螺旋溝(41)の軸心はスクリューロータ(40)の軸心と一致する。
【0050】
ここで、前記スクリューロータ(40)の軸方向一端側の周縁部にはテーパ面(45)が形成されていて、螺旋溝(41)の一端部はテーパ面(45)に開口している。各螺旋溝(41)は、テーパ面(45)に開口する一端部(図2における左端部)が始端部となり、他端部(図2における右端部)が終端部となっている。一方、螺旋溝(41)の終端部は、スクリューロータ(40)の軸方向他端側においてその側周面に開口している。螺旋溝(41)では、両側の側壁面(42,43)のうち、ゲート(51)の進行方向の前側に位置するものが第1側壁面(42)となり、ゲート(51)の進行方向の後側に位置するものが第2側壁面(43)となっている。
【0051】
また、前記スクリューロータ(40)の他端部には、螺旋溝(41)が形成されている本体部(40a)よりも外径が小さな小径部(46)が形成されている。
【0052】
さらに、前記スクリューロータ(40)には、図1に示すように、駆動軸(21)を挿通させるための挿通孔(47)がスクリューロータ(40)の軸心を通って貫通形成されている。
【0053】
図2に示すように、前記スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。駆動軸(21)の一端部には、電動機(12)のロータ(14)が連結されており、駆動軸(21)の他端部がスクリューロータ(40)の挿通孔(47)に挿通される。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。
【0054】
このように、前記スクリューロータ(40)と電動機(12)のロータ(14)とが駆動軸(21)に連結された状態でケーシング(11)内に収容される。このとき、スクリューロータ(40)は、シリンダ部(16)に回転可能に嵌合しており、その外周面がシリンダ部(16)の内周面と摺接する。
【0055】
図6に示すように、前記シリンダ部(16)の外周部には、共鳴空間(72)が設けられている。この共鳴空間(72)は、分岐通路(71)の下流側に接続されており、分岐通路(71)から流入した中間圧冷媒を滞留させるためのものである。共鳴空間(72)内には、一端が圧縮室(23)内に連通し、他端が共鳴空間(72)内に突出して延びる共鳴通路(73)が設けられている。具体的に、共鳴通路(73)は、筒状に形成されてシリンダ部(16)に埋め込まれて取り付けられた共鳴管(73a)で構成されている。これにより、分岐通路(71)を流通する中間圧冷媒が、共鳴空間(72)及び共鳴通路(73)を通って圧縮途中の圧縮室(23)内に噴出される。
【0056】
ここで、前記シリンダ部(16)の内周面から共鳴通路(73)の他端までの長さL[m](図6に示す例では、共鳴管(73a)の全長と同等)は、音速c[m/s]、共鳴周波数f[Hz]としたときに、下記の(1)式を満たすように設定されている。
【0057】
L=c/4f ・・・(1)
具体的に、前記スクリューロータ(40)の回転数が60Hz、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の本数(圧縮室(23)の数)が6本の場合、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数、すなわち共鳴周波数f[Hz]は、f=60×6=360[Hz]となる。ここで、音速c=150[m/s]とすると、シリンダ部(16)の内周面から共鳴通路(73)の他端までの長さL[m]は、L=150/(4×360)=0.104[m]と設定すればよい。
【0058】
これにより、共鳴通路(73)内の気柱脈動の共鳴周波数を、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数に合わせて、気柱脈動において振幅が最大となる腹の部分をシリンダ部(16)の内周面側の開口端に位置付けることで、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【0059】
また、前記エコノマイザ回路(70)内を流れる冷媒の圧力脈動を、共鳴空間(72)のマフラ効果によって低減することができ、低騒音化を実現することができる。また、別途マフラを設ける必要がないため、コスト削減に有利であるとともに、マフラによって冷媒の圧力損失が増大することがなく、冷媒の噴出量を十分に確保することができる。これにより、十分なエコノマイザ効果を得ることができ、性能の向上を図ることができる。
【0060】
また、前記シリンダ部(16)の外周部を囲むように共鳴空間(72)を設けることで、中間圧冷媒を共鳴空間(72)内に流入させてシリンダ部(16)の周囲を均一な温度に保つことができる。これにより、スクリューロータ(40)とシリンダ部(16)との温度差に起因する熱膨張の違いによってスクリューロータ(40)とシリンダ部(16)とが接触することがなく、スクリューロータ(40)の焼き付きを防止することができる。
【0061】
図2に示すように、前記駆動軸(21)の一端部には、ロータ(14)から突出する第1被支持部(21a)が形成されており、この第1被支持部(21a)がコロ軸受(15)に回転自在に支持されている。一方、駆動軸(21)の他端部にはスクリューロータ(40)から突出する第2被支持部(21b)が形成されており、この第2被支持部(21b)が圧縮機構(20)の高圧側に位置する玉軸受(61)に回転自在に支持されている。
【0062】
前記玉軸受(61)は、ケーシング(11)のシリンダ部(16)に嵌合された軸受ホルダ(60)に設置されている。軸受ホルダ(60)の、スクリューロータ(40)側の端面の周縁部には、スクリューロータ(40)側に突出した環状壁部(62)が設けられている。
【0063】
前記環状壁部(62)は、スクリューロータ(40)がシリンダ部(16)内に配置されたときに、スクリューロータ(40)の小径部(46)が環状壁部(62)の内周側に入り込むように構成されている。このとき、小径部(46)と環状壁部(62)との間には若干の隙間が形成されており、スクリューロータ(40)の小径部(46)と軸受ホルダ(60)の環状壁部(62)とは径方向にも軸方向にも接触していない。つまり、小径部(46)と環状壁部(62)との間には、スクリューロータ(40)の外周面から径方向内方に入り込んだ後、軸方向に屈曲し、その後、さらに径方向内側に屈曲した、すなわち、縦断面がクランク状に屈曲した形状の隙間が形成されている。
【0064】
図4及び図5に示すように、前記ゲートロータ(50)は、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、シリンダ部(16)の外側にスクリューロータ(40)を挟んで対称に配置され、軸心がスクリューロータ(40)の軸心と直交している。各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)がシリンダ部(16)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。
【0065】
前記ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の背面に当接している。
【0066】
図3に示すように、前記ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、シリンダ部(16)に隣接してケーシング(11)内に区画形成されたゲートロータ室(18)に収容されている。図3におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、図3におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(18)内の軸受ハウジング(52)に玉軸受(53)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(18)は、低圧空間(S1)に連通している。
【0067】
前記圧縮機構(20)では、シリンダ部(16)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(50)のゲート(51)とによって囲まれた空間が圧縮室(23)になる(図2参照)。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、吸入側端部において低圧空間(S1)に開放しており、この開放部分が圧縮機構(20)の吸入口(24)になっている。
【0068】
前記スクリュー圧縮機(10)には、容量制御機構としてスライドバルブ(80)が設けられている。このスライドバルブ(80)は、シリンダ部(16)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出したスライドバルブ収納部(17)内に設けられている。スライドバルブ(80)は、内面がシリンダ部(16)の内周面の一部を構成するとともに、シリンダ部(16)の軸心方向にスライド可能に構成されている。
【0069】
図示は省略するが、スライドバルブ(80)には、圧縮室(23)と高圧空間(S2)とを連通させるための吐出口が形成されている。つまり、圧縮室(23)で圧縮された冷媒は、スライドバルブ(80)の吐出口から高圧空間(S2)に吐出される。また、シリンダ部(16)には、圧縮室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのバイパス通路の上流端が開口しており、スライドバルブ(80)はこのバイパス通路の上流端を開閉して、圧縮機構(20)の容量を調整する。
【0070】
図2に示すように、ケーシング(11)には、台座部(11a)が形成されている。この台座部(11a)は、ケーシング(11)の上部から突出するように形成されており、その上面が概ね水平な平坦面となっている。台座部(11a)には、ターミナル組立品(30)が取り付けられている。
【0071】
前記ターミナル組立品(30)は、ターミナル台(31)と、ターミナル(32)とによって構成されている。ターミナル台(31)は、長方形の厚板状に形成され、その長辺がケーシング(11)の軸方向と概ね平行となる姿勢で、台座部(11a)の上面に取り付けられている。ターミナル台(31)の下面は、台座部(11a)の上面と接している。
【0072】
前記ターミナル(32)は、電動機(12)に給電するためのものであり、端子座(33)と6本の端子棒(34)とを備えている。端子座(33)は、絶縁性の樹脂等からなるブロック状の部材であって、ターミナル台(31)の上面及び下面の中央部に設置されている。各端子棒(34)は、金属製の部材であって、その軸方向が概ね鉛直方向となる姿勢で端子座(33)に取り付けられている。
【0073】
−運転動作−
以下、前記スクリュー圧縮機(10)の運転動作について説明する。図2に示すように、スクリュー圧縮機(10)において電動機(12)を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。ここでは、図7において網掛けを付した圧縮室(23)に着目して説明する。
【0074】
図7(a)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(a)の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が吸入口(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。
【0075】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(b)の状態となる。図7(b)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(b)の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
【0076】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(c)の状態となる。図7(c)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、吐出口(図示省略)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮された冷媒ガスが圧縮室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。
【0077】
−エコノマイザ動作−
次に、前記スクリュー圧縮機(10)のエコノマイザ動作について説明する。スクリュー圧縮機(10)の高圧空間(S2)から吐出した高圧冷媒は、図1に示すように、熱源側熱交換器(3)で凝縮した後、その一部がエコノマイザ回路(70)に流入する。
【0078】
前記エコノマイザ回路(70)に流入した高圧冷媒は、分岐通路(71)を流通して過冷却用減圧弁(66)で所定圧力まで減圧されて中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、過冷却熱交換器(65)を通過する際に、高圧冷媒と熱交換されてガス冷媒となる。
【0079】
そして、前記過冷却熱交換器(65)を通過した中間圧冷媒は、分岐通路(71)を流通し、共鳴空間(72)に流入する。共鳴空間(72)内に流入した中間圧冷媒は、共鳴通路(73)を通って圧縮途中の圧縮室(23)内に噴出される。これにより、スクリュー圧縮機(10)の冷媒吐出ガス温度を所定温度以下まで低減することができる。
【0080】
《実施形態2》
図8は、本実施形態2に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。また、図9は、エコノマイザポートの構成を示す平面図である。前記実施形態1との違いは、共鳴通路(73)の構造のみであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0081】
図8及び図9に示すように、前記共鳴通路(73)は、筒状に形成されてシリンダ部(16)に埋め込まれて取り付けられた共鳴管(73a)と、シリンダ部(16)に形成された2つのエコノマイザポート(73b)とを有している。
【0082】
前記エコノマイザポート(73b)は、共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、共鳴管(73a)の管内部でスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って並ぶように形成されている。
【0083】
これにより、分岐通路(71)を流通する中間圧冷媒が共鳴空間(72)に流入した後、共鳴通路(73)の共鳴管(73a)及びエコノマイザポート(73b)を通って圧縮途中の圧縮室(23)内に吸入される。このとき、エコノマイザポート(73b)が螺旋溝(41)のランド部(41a)で密閉されるので、隣り合う圧縮室(23)同士がエコノマイザポート(73b)を介して連通することがなく、圧縮効率が向上する。
【0084】
ここで、前記シリンダ部(16)の内周面から共鳴通路(73)の他端までの長さL[m](図8に示す例では、共鳴管(73a)の全長と、エコノマイザポート(73b)の孔深さとの合計に相当)は、音速c[m/s]、共鳴周波数f[Hz]としたときに、上述した(1)式を満たすように設定される。
【0085】
このようにすれば、共鳴通路(73)内の気柱脈動の共鳴周波数を、圧縮途中の圧縮室(23)内への中間圧冷媒の吸入回数に合わせて、気柱共鳴によって共鳴通路(73)から圧縮室(23)に流入する冷媒量を増加させることができ、冷凍能力や効率を向上させることができる。
【0086】
なお、前記エコノマイザポート(73b)は、図10に示すように、共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、共鳴管(73a)の管内部でスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って長円状に延びるように形成されたものであってもよい。
【0087】
《実施形態3》
図11は、本実施形態3に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。図11に示すように、シリンダ部(16)の外周部には、エコノマイザスリーブ(85)が取り付けられている。エコノマイザスリーブ(85)は、小径管部(85a)と、小径管部(85a)よりも大径の筒状に形成されてその一端が小径管部(85a)に接続された大径管部(85b)とを有する。小径管部(85a)は、その下流側端部がシリンダ部(16)に埋め込まれて取り付けられ、圧縮室(23)内に連通している。小径管部(85a)の下流端部の外周面には、シールリング(87)が取り付けられている。大径管部(85b)の他端は、ケーシング(11)外部に開口している。
【0088】
エコノマイザスリーブ(85)には、エコノマイザフランジ(86)が取り付けられている。エコノマイザフランジ(86)は、大径管部(85b)の筒内部に嵌合される嵌合管部(86a)と、嵌合管部(86a)の端部から径方向外方に延びるフランジ部(86b)とを有する。嵌合管部(86a)の長さは、大径管部(85b)の長さよりも短くなっている。
【0089】
共鳴通路(73)は、エコノマイザスリーブ(85)の小径管部(85a)で構成されている。分岐通路(71)は、エコノマイザフランジ(86)の嵌合管部(86a)で構成されている。共鳴空間(72)は、エコノマイザスリーブ(85)の大径管部(85b)の筒内部と、エコノマイザフランジ(86)の嵌合管部(86a)とで区画された空間で構成されている。
【0090】
ここで、共鳴空間(72)内の高さは、エコノマイザスリーブ(85)に対してエコノマイザフランジ(86)を進退させることで調整可能となっている。これにより、共鳴空間(72)内の高さを、エコノマイザ回路(70)を流れる冷媒の圧力脈動がマフラ効果によって低減される最適な高さに調整することができ、低騒音化を実現することができる。
【0091】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0092】
本実施形態1では、共鳴通路(73)の上流端を共鳴空間(72)内に突出して延ばした形態について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、図12に示すように、共鳴通路(73)の上流端を共鳴空間(72)内に突出させない構成としてもよい。なお、この構成は、前記実施形態3と同等である。
【0093】
また、図13に示すように、共鳴通路(73)の上流端を共鳴空間(72)内に突出して延ばすとともに、分岐通路(71)の下流端も同様に共鳴空間(72)内に突出して延ばすようにした構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、エコノマイザ回路から圧縮室内に噴出させる冷媒量を十分に確保して性能を向上させるとともに、冷媒の圧力脈動による騒音を低減できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0095】
1 冷媒回路
10 スクリュー圧縮機
11 ケーシング
16 シリンダ部
23 圧縮室
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
41a ランド部
70 エコノマイザ回路
71 分岐通路
72 共鳴空間
73 共鳴通路
73a 共鳴管
73b エコノマイザポート
85 エコノマイザスリーブ
85a 小径管部
85b 大径管部
86 エコノマイザフランジ
86a 嵌合管部
86b フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(16)を有するケーシング(11)と、圧縮途中の該圧縮室(23)内に中間圧冷媒を噴出させるエコノマイザ回路(70)とを備えたスクリュー圧縮機であって、
前記エコノマイザ回路(70)は、
冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(1)の途中から中間圧冷媒を分岐させる分岐通路(71)と、
前記分岐通路(71)の下流側に接続されて中間圧冷媒を滞留させる共鳴空間(72)と、
一端が前記圧縮室(23)内に連通し、他端が前記共鳴空間(72)内に連通する共鳴通路(73)とを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
前記共鳴通路(73)の他端は、前記共鳴空間(72)内に突出して延びていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2において、
前記分岐通路(71)の下流端は、前記共鳴空間(72)内に突出して延びていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
音速c[m/s]、共鳴周波数f[Hz]を用いて表される、前記シリンダ部(16)の内周面から前記共鳴通路(73)の他端までの長さL[m]が、
L=c/4f
という条件を満たすように設定されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴通路(73)は、
筒状に形成されて前記シリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、
前記共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、該共鳴管(73a)の管内部で前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って並ぶように前記シリンダ部(16)に形成された複数のエコノマイザポート(73b)とを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1乃至4のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴通路(73)は、
筒状に形成されて前記シリンダ部(16)に取り付けられた共鳴管(73a)と、
前記共鳴管(73a)の管軸方向から見たときに、該共鳴管(73a)の管内部で前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のランド部(41a)に沿って延びるように前記シリンダ部(16)に形成された長円状のエコノマイザポート(73b)とを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記共鳴空間(72)は、前記シリンダ部(16)の外周部を囲むように形成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項1において、
前記シリンダ部(16)に取り付けられて前記圧縮室(23)内に連通する小径管部(85a)と、該小径管部(85a)よりも大径の筒状に形成されてその一端が該小径管部(85a)に接続され、他端が前記ケーシング(11)外部に開口した大径管部(85b)とを有するエコノマイザスリーブ(85)と、
前記大径管部(85b)の筒内部に嵌合される嵌合管部(86a)と、該嵌合管部(86a)の端部から径方向外方に延びるフランジ部(86b)とを有するエコノマイザフランジ(86)とを備え、
前記共鳴通路(73)は、前記エコノマイザスリーブ(85)の前記小径管部(85a)で構成され、
前記分岐通路(71)は、前記エコノマイザフランジ(86)の前記嵌合管部(86a)で構成され、
前記共鳴空間(72)は、前記エコノマイザスリーブ(85)の前記大径管部(85b)の筒内部と、前記エコノマイザフランジ(86)の前記嵌合管部(86a)とで区画された空間で構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−107613(P2012−107613A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238099(P2011−238099)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】