説明

スクリーニングシステム

【課題】 短時間で多数組のリガンドとアナライトの組み合わせについて結合情報を取得する。また、取得した結合情報と対応するアナライトとの管理を自動的に行う。
【解決手段】 全反射減衰を利用した測定装置11による測定を行う前に、リガンド固定器10において、測定ユニット12へ、リガンド溶液200を供給し、該リガンド溶液に含まれるリガンドが固定化されるまでの間、測定ユニット12をリガンド固定器10内の載置スペースにて保持する。リガンドの固定処理と測定装置11における測定を並行して行うことができる。また、測定を行う前に、アナライトライブラリー308のアナライト溶液保管部302から指定されたアナライト溶液300を取り出して、測定装置11へ供給し、また測定後に、制御部330は、指定されたアナライト溶液のアナライト情報と、結合情報取得部331により取得された結合情報とを対応させて記憶して、表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全反射減衰を利用した測定装置による測定結果に基づいて、多数組のリガンドとアナライトとの組み合わせにおける結合情報を取得するスクリーニングシステムに関するものであり、より詳細には、リガンド固定器を備えたスクリーニングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、全反射減衰を利用した測定装置による測定結果に基づいて、多数の互いに異なる化合物(アナライト)のそれぞれを含む各化合物溶液(アナライト溶液)と注目する生理活性高分子物質であるタンパク(リガンド)との間の結合情報、例えば、化学的な結合反応の速さ、あるいは化学的な解離反応の速さ等を測定して、上記多数の化合物の中から所定の結合情報を示す医薬品候補となる化合物を探すスクリーニングが行なわれている(特許文献1参照)。なお、これらのスクリーニングを行う際には、全反射減衰を利用した測定装置において使用される測定セルへ、タンパク(リガンド)を固定するリガンド固定処理が不可欠である(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−330560号公報
【特許文献2】特開平6−167443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献2記載のシステムにおいては、測定セルが測定位置に置かれた状態で、該測定セルに対するリガンド固定処理が行われているため、リガンド固定処理を行っている間は、測定を行うことができない。このようなシステムでは、多数組のリガンドとアナライトの組み合わせについて結合情報を取得する場合には、膨大な時間が必要となるという問題があった。また、スクリーニング対象である化合物(アナライト)の数の増大に伴って、取得した結合情報が、どのアナライトに対する結合情報であるかを、人手により正確に管理することが困難になりつつあるという問題もあった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リガンドの固定および結合情報の取得の効率を向上させることにより、短時間で多数組のリガンドとアナライトの組み合わせについて結合情報を取得することのできるスクリーニングシステムを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、取得した結合情報と対応するアナライトとの管理を自動的に行うことが出来るスクリーニングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスクリーニングシステムは、誘電体ブロック、該誘電体ブロックの一面に形成され、リガンドが固定される薄膜層および該薄膜層上にアナライトを保持するアナライト保持機構を有する測定セルと、測定位置に配置された前記測定セルの前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で全反射条件が得られる入射角で光ビームを入射させ、前記界面で全反射した光ビームの全反射減衰の状態を測定する測定部とを有する全反射減衰を利用した測定装置および
該測定装置による測定結果に基づいて前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を取得する結合情報取得手段を備え、
前記測定装置が複数組のリガンドとアナライトとの組み合わせに対する測定を行うものであり、前記結合情報取得手段が、前記リガンドとアナライトとの組み合わせ毎に、結合情報を取得するものであるスクリーニングシステムにおいて、
前記測定装置による測定を行う前に、前記測定位置とは異なる固定化位置に配置された前記測定セルの薄膜層上へ、リガンドを供給し、該リガンドが前記薄膜層上に固定化されるまでの間、前記測定セルの薄膜層を保持するリガンド固定手段と、
複数種類のアナライトを保管するアナライト保管部および前記各アナライトのアナライト情報を前記各アナライトの保管位置と対応させて記憶するアナライトデータベースとを有するアナライトライブラリーと、
前記測定装置による測定を行う前に、指定されたアナライトを前記アナライト保管部から取り出し、前記測定装置へ供給するアナライト供給手段と、
前記指定されたアナライトのアナライト情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出された、前記指定されたアナライトのアナライト情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて表示する表示手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
なお、測定セルは誘電体ブロック、薄膜層およびアナライト保持機構が一体化されているものであってもよいし、それぞれが別体の部品として構成されているものであってもよい。あるいは、誘電体ブロックのみ別体として構成され、薄膜層とアナライト保持機構が一体化されているものや、誘電体ブロックと薄膜層とが一体化され、アナライト保持機構のみが別体として構成されるものであってもよい。なお、リガンドを固定する際には、薄膜層と一体化されている部分が固定化位置に配置されればよい。
【0007】
なお、ここで「リガンド」とは、前記薄膜層に固定される化合物であり、より詳細には生理活性高分子物質であることが望ましい。また、「アナライト」とは、リガンドと結合する可能性を有する化合物である。
【0008】
なお、化合物とは2種以上の元素から構成されている分子をいう。本発明では主に分子量50以上、100万以下の化合物を対象とするが、分子量がそれ以下およびそれ以上の化合物にも適用し得る。また、生理活性高分子物質とは日本工業規格(JIS)K3611中に「天然高分子」(記号11001〜11025)として記載されている各物質、生物学データ大百科事典(朝倉書店)中の「1.生体物質概論」に記載されている糖,アミノ酸、ヌクレオチド、脂質、ヘム、キノン、タンパク質、RNA,DNA、リン脂質、多糖、バイオサイエンス辞典(朝倉書店)中の「II.生物物質と代謝」に記載されているタンパク質、アミノ酸、核酸、脂質、糖質、酵素のうちのいずれか1つ以上を含むものを意味する。
【0009】
また、「結合情報」とは、結合の状態を反映する情報を意味し、例えば全反射減衰角の経時変化量をグラフ化したセンサーグラムや、結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxの各値等である。また結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxのそれぞれの値について、予め定められた所定範囲の値が求められたか否かの判定結果等であってもよい。なお、結合速度定数kaとは、結合反応の速さを示す値であり、解離速度定数kdとは、解離反応の速さを示す値である。また、解離定数KDとは、上記の解離速度定数kdを結合速度定数kaで除した値である。すなわち、解離定数KDは、解離定数KD=解離速度定数kd/結合速度定数kaの式で示される値である。さらに、最大結合量Rmaxとは、前記試料と生理活性高分子物質との間において化学的な結合反応が飽和したときの、上記試料と生理活性高分子物質との間の化学的な結合量を示すものである。
【0010】
さらに、「リガンド情報」とは、リガンド名、あるいは固定化温度あるいは固定化時間などの固定化プロトコール等である。また「アナライト情報」とは、アナライト名、分子量、バッファ濃度あるいは事前の測定による結合情報等である。
【0011】
前記結合情報取得手段は、前記測定装置による測定結果および前記アナライト情報とに基づいて、前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を取得するものであってもよい。
【0012】
前記アナライトデータベースは、前記結合情報取得手段で取得された前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を、前記アナライトのアナライト情報と対応させて記憶するものであってもよい。
【0013】
前記アナライト供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、
前記指定されたアナライトを、前記アナライト保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するアナライト分注手段とを備えるものであれば、
前記記憶手段は、前記溶液収容プレートのIDおよび前記溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたアナライトのアナライト情報とを対応させて記憶するものであってもよい。
【0014】
本システムが、複数種類のリガンドを保管するリガンド保管部および前記各リガンドのリガンド情報を、前記各リガンドの保管位置と対応させて記憶するリガンドデータベースとを有するリガンドライブラリーと、
指定されたリガンドを前記リガンド保管部から取り出し、前記リガンド固定手段へ供給するリガンド供給手段とを有するものであれば、
前記記憶手段は、前記指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶するものであり、
前記表示手段は、前記記憶手段から読み出された、前記指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて表示するものであってもよい。
【0015】
前記リガンド供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、
前記指定されたリガンドを、前記リガンド保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するリガンド分注手段とを有するものであれば、
前記記憶手段が、前記溶液収容プレートのIDおよび溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたリガンドのリガンド情報とを対応させて記憶するものであってもよい。
【0016】
なお、「2次元状に配置された」とは、縦方向にも横方向にも2つ以上並ぶように配置されたことを意味するものである。
【0017】
なお、全反射減衰を利用した測定とは、金属表面で光ビームを全反射させて表面プラズモンを発生させたときにこの全反射した光ビーム中に光強度の急激な減衰(全反射減衰)を生じさせる特定の反射角度、すなわち全反射減衰角が上記金属表面近傍の誘電率に応じて変化することを利用して行われる測定を意味するものである。全反射減衰を利用した測定としては表面プラズモン測定装置が知られている。また、上記全反射減衰を利用して測定を行う装置の他の一例として、漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は、プリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生する光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものであり、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)」の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるスクリーニングシステムでは、全反射減衰を利用した測定装置による測定を行う前に、測定位置とは異なる固定化位置に配置された前記測定セルの薄膜層上へ、リガンドを供給し、該リガンドが前記薄膜層上に固定化されるまでの間、前記測定セルの薄膜層を保持して、薄膜層へリガンドを固定することにより、リガンドの固定処理と測定を並行して行うことができるので、リガンドの固定および結合情報の取得の効率が向上し、短時間で多数組のリガンドとアナライトの組み合わせについて結合情報を取得することができ、さらに、測定を行う前にアナライトを保管するアナライト保管部および前記各アナライトのアナライト情報を前記各アナライトの保管位置と対応させて記憶するアナライトデータベースとを有するアナライトライブラリーのアナライト保管部から指定されたアナライトを取り出して、前記測定装置へ供給し、また測定後に、指定されたアナライトのアナライト情報と、結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶して、表示することにより、取得した結合情報と、該結合情報と対応するアナライトとの管理を、自動的に行うことが出来る。
【0019】
前記結合情報取得手段が、前記測定装置による測定結果および前記アナライト情報とに基づいて、前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を取得するものであれば、より正確な結合情報を取得することができる。
【0020】
前記アナライトデータベースが、前記結合情報取得手段で取得された前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を、前記アナライトのアナライト情報と対応させて記憶するものであれば、例えば予め何らかの条件を用いて、スクリーニングするアナライトの数を絞ってスクリーニングを行うフォーカスドスクリーニングを行う際の候補選択条件の一つとして、結合情報を用いることができ、アナライトのヒット率を向上させることができる。
【0021】
また、アナライト供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、前記指定されたアナライトを、前記アナライト保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するアナライト分注手段とを有するものであり、記憶手段が、前記溶液収容プレートのIDおよび前記溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたアナライトのアナライト情報とを対応させて記憶するものであれば、指定されたアナライトの種類を誤ることを防止でき、スクリーニングの信頼度を向上させることができる。
【0022】
さらに、本システムが、複数種類のリガンドを保管するリガンド保管部および前記各リガンドのリガンド情報を、前記各リガンドの保管位置と対応させて記憶するリガンドデータベースとを有するリガンドライブラリーと、指定されたリガンドを前記リガンド保管部から取り出し、前記リガンド固定手段へ供給するリガンド供給手段とを有し、記憶手段が、前記指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶するものであり、前記表示手段が、指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて表示するものであれば、取得した結合情報と、該結合情報と対応するリガンドとの管理を、自動的に行うことが出来る。
【0023】
前記リガンド供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、前記指定されたリガンドを、前記リガンド保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するリガンド分注手段とを有するものであり、前記記憶手段が、前記溶液収容プレートのIDおよび溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたリガンドのリガンド情報とを対応させて記憶するものであれば、指定されたリガンドの種類を誤ることを防止でき、スクリーニングの信頼度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態であるスクリーニングシステムの概略構成図である。本スクリーニングシステムは、リガンドとアナライトとの結合状態を反映する全反射減衰の状態を測定する測定装置11と、多種類のリガンド溶液200が保管されているリガンド保管部202と、該リガンド保管部202へ保存されている各リガンド溶液200のリガンド情報204を記憶するリガンドデータベース206とからなるリガンドライブラリー208と、複数の溶液収容部210が形成され、バーコード212が付けられている複数枚の溶液収容プレート214と、リガンド溶液200を、リガンド溶液保管部202から溶液収容プレート214の溶液収容部210へ分注するリガンド分注器220と、溶液収容プレート214の溶液収容部210に収容されているリガンド溶液200中のリガンドを、測定ユニット12に設けられた測定セル17のセンサ面13aへ固定するリガンド固定器10と、多種類のアナライト溶液300が保管されているアナライト溶液保管部302と、該アナライト溶液保管部302に保管されている各アナライト溶液300のアナライト情報304を記憶するアナライトデータベース306からなるアナライトライブラリー308と、複数の溶液収容部310が形成され、バーコード312が付けられている複数枚の溶液収容プレート314と、アナライト溶液300を、アナライト溶液保管部302から溶液収容プレート314の溶液収容部310へ分注するアナライト分注器320と、測定装置11、リガンドライブラリー208、リガンド分注器220、リガンド固定器10、アナライトライブラリー308、アナライト分注器320と接続され、測定装置11から出力される測定結果に基づいてリガンドとアナライトとの結合情報を取得し、また各部位の動作を制御する制御部330と、該制御部330と接続されている表示部340とを備えている。
【0025】
本スクリーニングシステムは、アナライトライブラリー308に保管された多数のアナライト溶液の中から、リガンドと結合するアナライトを含むアナライト溶液をスクリーニングするものである。リガンドとアナライトが結合するか否かは、リガンドとアナライトとの結合状態を反映する全反射減衰の状態を測定し、該測定結果に基づいて結合情報を取得し、該結合情報に基いて判定する。リガンドとアナライトとの全反射減衰の状態を測定するには、まず、リガンドが固定された多数の測定セル17を準備し、個々の測定セル17へ異なる種類のアナライト溶液を添加し、測定セル17毎に光ビームを照射して、全反射した光ビームにおける全反射減衰の状態を測定する。
【0026】
説明を簡単にするために、最初に1つの測定セル17におけるリガンドの固定方法および全反射減衰の状態の測定方法について説明を行い、その後で本発明のスクリーニングシステムの構成および動作について説明する。
【0027】
まず、測定セル17について説明する。測定セル17は、図2に示すように、一方の面が表面プラズモンが発生するセンサ面13aとなる金属膜13と、このセンサ面13aの裏面の光入射面13bと接合されるプリズム14と、前記センサ面13aと対向して配置され、リガンド溶液やアナライト溶液が送液される流路16とを備えている。
【0028】
金属膜13としては、例えば、金が使用され、その膜厚は、例えば、500オングストロームである。この膜厚は、金属膜の素材、照射される光の発光波長等に応じて適宜選択される。プリズム14は、その上面に前記金属膜13が形成される透明な誘電体であり、光入射面13bに向けて、全反射条件を満たすように照射された光を集光する。流路16は、略U字形に屈曲された送液管であり、液体を注入する注入口16aと、それを排出する排出口16bとを持っている。流路16の管径は、例えば、約1mm程度であり、注入口16aと排出口16bの間隔は、例えば、約10mm程度である。
【0029】
また、流路16の底部は、開放されており、この開放部位はセンサ面13aによって覆われて密閉される。これら流路16とセンサ面13aによって測定セル17が構成される。なお、後述するように、測定ユニット12は、こうした測定セル17を複数個備えている。
【0030】
以下リガンドの固定方法について説明する。リガンドは、この測定セル17のセンサ面13aに固定される。まず、測定ユニット12すなわち測定セル17を後述するリガンド固定器10にセットして行われる。リガンド固定器10には、1対のピペット19a,19bからなるピペット対19が設けられている。ピペット対19は、各ピペット19a,19bが、注入口16aと排出口16bのそれぞれに挿入される。各ピペット19a,19bは、それぞれが流路16への液体の注入と、流路16からの吸い出しを行う機能を備えており、一方が注入動作を行っているときには、他方が吸い出し動作を行うというように、互いに連動する。このピペット対19を用いて、注入口16aから、リガンドを溶媒に溶かしたリガンド溶液200が注入される。
【0031】
センサ面13aのほぼ中央部には、リガンドと結合するリンカー膜22が形成されている。このリンカー膜22は、測定ユニット12の製造段階において予め形成される。リンカー膜22は、リガンドを固定するための固定基となるので、固定するリガンドの種類に応じて適宜選択される。
【0032】
リガンド溶液200を注入するリガンド固定化処理を行う前に、前処理として、まず、リンカー膜22に対して、固定用バッファ液を送液してリンカー膜22を湿らせた後、リンカー膜22へリガンドが結合しやすくするために、リンカー膜22の活性化処理が施される。例えば、アミンカップリング法では、リンカー膜22として例えばカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。この活性化処理の後、固定用バッファによって流路16が洗浄される。
【0033】
固定用バッファや、リガンド溶液200の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。
【0034】
これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンドとして生体物質を使用する場合には、pH値を中性付近に調整した生理的食塩水が使用される場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、リンカー膜22は、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、このリンカー膜22と結合しやすいようにタンパク質を陽(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝液(PBS:phosphatic−buffered,saline)等が使用される場合もある。
【0035】
こうした活性化処理及び洗浄が行われた後、測定セル17へリガンド溶液200が注入されてリガンド固定化処理が行われる。リガンド溶液200が流路16へ注入されると、溶液中で拡散しているリガンド21aが徐々にリンカー膜22へ近づいて、結合する。こうしてセンサ面13aにリガンド21aが固定される。固定化には、通常、約1時間程度かかり、この間、測定ユニット12は、温度を含む環境条件が所定の条件に設定された状態で、保管される。なお、固定化が進行している間、流路16内のリガンド溶液200を静置しておいてもよいが、流路16内のリガンド溶液200を攪拌して流動させることが好ましい。こうすることで、リガンドとリンカー膜22との結合が促進され、リガンドの固定量を増加させることができる。
【0036】
センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了すると、前記流路16からリガンド溶液21が排出される。リガンド溶液200は、ピペット19bによって吸い出されて排出される。固定化が完了したセンサ面13aは、流路16へ洗浄液が注入されて洗浄処理が行われる。この洗浄後、必要に応じて、ブロッキング液を流路16へ注入して、リンカー膜22のうち、リガンドが結合しなかった反応基を失活させるブロッキング処理が行われる。ブロッキング液としては、例えば、エタノールアミン−ヒドロクロライドが使用される。このブロッキング処理の後、再び流路16が洗浄される。流路16内の洗浄処理が完了した後、測定ユニット12は測定装置11へ搬送される。
【0037】
次に全反射減衰の状態の測定方法について、図3を参照して説明する。全反射減衰の状態の測定は、測定ユニット12を測定装置11にセットして行われる。測定装置11にも、リガンド固定器10のピペット対19と同様のピペット対26が設けられている。このピペット対26によって、注入口16aから、流路16へ各種の液が注入される。まず、流路16へ測定用バッファが注入される。
【0038】
この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液300を注入し、その後、再び測定用バッファが注入される。なお、最初に測定用バッファを注入する前に、いったん流路16の洗浄を行ってもよい。全反射減衰の状態の測定は、基準となる信号レベルを検出するために、最初の測定用バッファを注入した直後から開始され、アナライト溶液300の注入後、再び測定用バッファが注入され、所定時間が経過するまでの間、行われる。これにより、基準レベルの検出、アナライトとリガンドとの結合状態、測定用バッファ注入による結合したアナライトとリガンドとの解離状態までを反映する全反射減衰の状態を測定することができる。
【0039】
また、図示しないが、リンカー膜22上には、リガンドが固定されアナライトとリガンドとの反応が生じる反応領域(act)と、リガンドが固定されず、前記反応領域の信号測定に際しての参照信号を得るためのリファレンス領域(ref)とが形成される。このリファレンス領域は、上述したリンカー膜22を製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー膜22に対して表面処理を施して、リンカー膜22の半分程度の領域について、リガンドと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー膜22の半分が反応領域となり、残りの半分がリファレンス領域となる。
【0040】
これら各領域のact信号とref信号は、基準レベルの検出から結合反応を経て脱離に至るまで、同時に計測される。結合情報の取得は、こうして得られたact信号とref信号の差や比を求めて行われる。制御部330では、例えば、act信号とref信号との差分データを求め、この差分データを測定データとし、これに基づいて結合情報を取得する。こうすることで、各測定ユニットや各測定セルの個体差や、装置の機械的な変動や、液体の温度変化等、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な信号が得られる。
【0041】
測定用バッファや、アナライト溶液300の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。なお、このDMSOは、全反射減衰の状態に大きく影響する。上述したとおり測定用バッファは基準レベルの検出に用いられるので、アナライトの溶媒中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を持つ測定用バッファを使用することが好ましい。
【0042】
また、図3に示すように、測定部31は、照明部32と検出部33からなる。上述したとおり、リガンドとアナライトの反応状況は、全反射減衰角の変化として顕れるので、照明部32は、全反射条件を満足する様々な入射角の光を光入射面13bに対して照射する。照明部32は、例えば、光源34と、集光レンズ、拡散板、偏光板を含む光学系36とからなり、配置位置及び設置角度は、照明光の入射角が、上記全反射条件を満足するように調整される。
【0043】
光源34としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)等の発光素子が使用される。こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から1つの測定セルに向けて光が照射される。なお、複数の測定セルを同時に測定するような場合には、単一光源からの光を分光して複数の測定セルに照射してもよいし、各測定セルに対して発光素子が1つずつ割り当てられるように複数の発光素子を並べて使用してもよい。拡散板は、光源34からの光を拡散して、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうち、表面プラズモンを生じさせるp偏光のみを通過させる。なお、LDを使用する場合等、光源が発する光線自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過することにより、偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きが揃えられる。こうして拡散及び偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム14に照射される。これにより、光強度にバラツキが無く、様々な入射角を持つ光線を光入射面13bに入射させることができる。
【0044】
検出部33は、光入射面13bで反射する光をリガンド保管部202受光して、その光強度を検出する。光入射面13bには、様々な角度で光線が入射するので、光入射面13bでは、それらの光線が、それぞれの入射角に応じて様々な反射角で反射する。アナライトとリガンドの反応状況に応じて共鳴角が変化すると、光強度が減衰する全反射減衰角も変化する。検出器33は、例えば、CCDエリアセンサが使用され、この全反射減衰角の変化を、受光面内における反射光の減衰位置の推移として捉える。検出器33は、こうして得た、全反射減衰角の測定データを、制御部330へ出力する。制御部330では、測定装置11で得た測定データに基いて、リガンドとアナライトとの結合情報を取得して、表示部340へ表示させる。なお、制御部330における動作の詳細は後述する。
【0045】
また、測定部31の構成が明確になるように、便宜的に、図上、光入射面13bへの入射光線及びそこで反射する反射光線の向きが、流路16内の液体の流れ方向と平行になるように、照明部32及び検出器33を配置した形態で示しているが、本実施形態では、入射光線及び反射光線の向きが、前記流れ方向と直交する方向に照射されるように、照明部32及び検出器33が配置される。もちろん、測定部31をこの図3に示しているように配置して、測定してもよい。
【0046】
次に本スクリーニングシステムの構成および動作について説明する。上述したように、本スクリーニングシステムは、測定装置11と、リガンドライブラリー208と、多数のリガンド溶液収容部210が形成されているリガンド溶液収容プレート214と、リガンドライブラリー208に保管されたリガンド溶液200を溶液収容プレート214へ分注するリガンド分注器220と、溶液収容プレート214に収容されているリガンド溶液200中のリガンドを、測定ユニット12に設けられた測定セル17のセンサ面13aへ固定するリガンド固定器10と、アナライトライブラリー308と、複数の溶液収容部310が形成されている溶液収容プレート314と、アナライトライブラリー308に保管されたアナライト溶液を溶液収容プレート314へ分注するアナライト分注器320と、測定装置11、リガンドライブラリー208、リガンド分注器220、リガンド固定器10、アナライトライブラリー308、アナライト分注器320と接続される制御部330と、表示部340とを備えている。
【0047】
リガンドライブラリー208は、リガンドとしてのタンパクを含むリガンド溶液200が多数保管されているリガンド保管部202と、該へ保存されている各リガンド溶液200の保管番地と関連付けて、該リガンドのリガンド情報204を記憶するリガンドデータベース206とを備えている。リガンド情報としては、タンパク名および固定化を行う際の設定温度や、固定化時間などの固定化プロトコールが記憶されている。
【0048】
アナライトライブラリー308は、アナライトとしての化合物を含むアナライト溶液300が多数保管されているアナライト保管部302と、該アナライト保管部202へ保存されている各アナライト溶液300の保管番地と関連付けて、該アナライトのアナライト情報304を記憶するアナライトデータベース306とを備えている。アナライト情報としては、化合物名、分子量、バッファ濃度およびタンパクとの結合情報が記憶されている。なお、バッファ濃度とは、例えばアナライトを溶かす溶媒として、生理的食塩水+DMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)溶液を使用した場合のDMSO濃度である。また、タンパクとの結合情報は、過去にスクリーニング用のアナライトとして使用された際のタンパクとの結合情報であり、詳細は後述する。
【0049】
溶液収容プレート214は、行6個、列8で合計48個の溶液収容部210が形成されたプレートであり、その側面にはバーコード212が付けられている。また、溶液収容プレート314も、同様に、行6個、列8個で合計48個の溶液収容部310が形成されたプレートであり、その側面にはバーコード312が付けられている。
【0050】
リガンド分注器220は、制御部340からの制御により、リガンド保管部202の指定された保管番地に保管されているリガンド溶液200を、溶液収容プレート214の指定された行列位置に形成されている溶液収容部210へ注入するものである。また、溶液収容プレート214の側面に付けられているバーコード212に記載されているバーコード情報を読み取るバーコード読み取り機能を備えている。
【0051】
アナライト分注器220は、制御部340からの制御により、アナライト保管部302の指定された保管番地に保管されているアナライト溶液300を、溶液収容プレート314の指定された行列位置に形成されている溶液収容部310へ注入するものである。また、溶液収容プレート314の側面に付けられているバーコード312に記載されているバーコード情報を読み取るバーコード読み取り機能を備えている。
【0052】
測定ユニット12は、3つの測定セル17が一体形成されたものである。図4は、測定ユニット12の分解斜視図である。測定ユニット12は、流路16が形成される流路部材41と、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、流路部材41を、その底面をプリズム14の上面と接合させた状態で、保持する保持部材42と、保持部材42の上方に配置される蓋部材43とからなる。
【0053】
流路部材41には、例えば、3つの流路16が形成されている。流路部材41は、長尺状をしており、3つの流路16は、その長手方向に沿って配列されている。この流路16は、その底面に接合される金属膜13とともに測定セル17を構成する。そのため、流路部材41は、金属膜13との密着性を高めるために、弾性部材、例えば、ゴムやPDMS(ポリジメチルシロキサン)で形成されている。これにより、流路部材41の底面をプリズム14の上面に圧接すると、流路部材41が弾性変形して金属膜13との接合面の隙間が埋められて、各流路13の開放された底部がプリズム14の上面によって水密に覆われる。なお、本例では、流路16の数を3つの例で説明したが、もちろん、流路16の数は、3つに限らず、1つまたは2つであってもよいし、4つ以上でもよい。
【0054】
プリズム14には、その上面に、蒸着によって金属膜13が形成される。この金属膜13は、流路部材41に形成された複数の流路16と対向するように短冊状に形成される。さらに、この金属膜13の上面(センサ面13a)には、各流路16に対応する部位に、リンカー膜22が形成される。また、プリズム14の長手方向の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれ、その底面とプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。こうして、流路部材41、金属膜13及びプリズム14が一体化される。
【0055】
また、プリズム14の短辺方向の両端部には、突部14bが設けられている。後述するように、測定ユニット12は、ホルダ52(図5参照)に収納された状態で、固定が行われる。突部14bは、ホルダ52と係合することにより、測定ユニット12をホルダ内の所定の収納位置に位置決めするためのものである。
【0056】
保持部材42の上部には、各流路16の注入口16a及び排出口16bに対応する位置に、ピペット(19a,19b,26a,26b)の先端が進入する受け入れ口42bが形成されている。受け入れ口42bは、ピペットから吐出される液体が各注入口16aへ導かれるように、漏斗形状をしている。保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合すると、受け入れ口42bの下面は、注入口16a及び排出口16bと接合して、受け入れ口42bと流路16とが連結される。
【0057】
また、これら各受け入れ口42bの両脇には、円筒形のボス42cが設けられている。これらのボス42cは、蓋部材43に形成された穴43aと嵌合して、蓋部材43を位置決めするためのものである。蓋部材43は、受け入れ口42b及びボス43aに対応する位置に穴が開けられた両面テープ44によって、保持部材42の上面に貼り付けられる。
【0058】
蓋部材43は、流路16に通じる受け入れ口42bを覆うことで、流路16内の液体の蒸発を防止する。蓋部材43は、弾性部材、例えば、ゴムやプラスチックで形成されており、各受け入れ口42bに対応する位置に、十字形のスリット43bが形成されている。蓋部材43は、流路16内の液体の蒸発を防止するためのものであるから、受け入れ口42bを覆う必要があるが、完全に覆ってしまっては、ピペットを受け入れ口42bに挿入することができない。そこで、スリット43bを形成することで、ピペットの挿入を可能とするとともに、ピペットを挿入していない状態では、受け入れ口42bが塞がれるようにしている。スリット43bは、ピペットが押し込まれると、スリット43bの周辺が弾性変形(図2参照)して、スリット43bの口が大きく開いて、ピペットを受け入れる。そして、ピペットを抜くと、弾性力によってスリット43bが初期状態に復帰して、受け入れ口42bを塞ぐ。
【0059】
リガンド固定器10は、図5に示すように、筐体のベースとなる筐体ベース50に、複数の測定ユニット12を載置する固定化位置としての載置スペース51が確保されている。測定ユニット12は、この載置スペース51で載置された状態で固定工程のすべての処理が施される。したがって、この載置スペース51は、測定ユニット12に対して固定工程を実行する固定ステージとなる。
【0060】
測定ユニット12は、ホルダ52に収納された状態でリガンド固定器10にセットされる。ホルダ52は、測定ユニット12を複数個(例えば、8個)収納できるようになっている。ホルダ52には、測定ユニット12の突部14bと嵌合して、測定ユニット12を位置決めする嵌合部が設けられている。また、ホルダ52の底部は、測定ユニット12の両端部を支持する支持部を除いて、開口になっている。後述するように、測定工程において、測定ユニット12をホルダ52から取り出す場合には、この開口から押し上げ部材(図示しない)が挿入されて測定ユニット12が押し上げられる。また、各ホルダ52には、バーコード57が付けられている。
【0061】
載置スペース51には、ホルダ52を、例えば、10個並べて配置することができるようになっており、その数に応じた台座53が設けられている。各台座53上には、ホルダ52を位置決めする位置決め用のボスが設けられている。
【0062】
リガンド固定器10には、ヘッド本体にピペット対19を3組連装したピペットヘッド54が設けられている。このピペットヘッド54が、載置スペース51に設けられているベルトコンベア(図示しない)上の測定ユニット12にアクセスして、液体の注入や排出を行う。ピペットヘッド54には、ピペット対19が3組設けられているので、1つの測定ユニット12に含まれる3つの測定セル17に対して同時に液体を注入(及び排出)することができる。リガンド固定器10には、図示しないコントローラが設けられており、このコントローラによって、各ピペット対19の吸い込みや吐き出しの動作に関して、そのタイミング、吸い込み量及び吐き出し量等が、ピペットヘッド54ごとにそれぞれ制御される。
【0063】
筐体ベース50には、このピペットヘッド54をX、Y、Zの3方向に移動させるヘッド移動機構56が設けられている。ヘッド移動機構56は、例えば、搬送ベルト、プーリ、キャリッジ、モータ等から構成される周知の移動機構であり、ピペットヘッド54を上下させる昇降機構と、この昇降機構ごとピペットヘッド54をY方向へ移動自在に保持するガイドレール58を含むY方向移動機構と、前記ガイドレール58を両端で保持し、ガイドレール58毎、ピペットヘッド54をX方向へ移動させるX方向移動機構とからなる。ヘッド移動機構56は、コントローラによって制御されており、コントローラは、このヘッド移動機構56を駆動して、ピペットヘッド54の上下左右の位置を制御する。
【0064】
筐体ベース50上には、リガンド溶液200を収容する溶液プレート214および流路16へ注入する種々の液体(洗浄液、固定用バッファ、活性化液、ブロッキング液等)を収容する複数の液保管部61が設けられている。液保管部の数は、使用する液体の種類に応じて決定される。各液保管部61には、挿入口が6個並べて設けられている。この挿入口の数及び配列ピッチは、ピペットヘッド54のピペットの数と配列ピッチに応じて決められる。ピペットヘッド54は、測定セル17へ液体を注入する場合には、各液体保管部61へアクセスして、所望の液体を吸い込み、その後、載置スペース51へ移動して、測定ユニット12へ注入する。
【0065】
また、筐体ベース50上には、交換用ピペット62を保管するピペット保管部63が設けられている。交換用ピペット62は、ピペット19a,19bと交換可能である。ピペット19a,19bは、液体と直接接触するので、ピペット19a,19bを介して異種の液体の混液が生じないように、使用する液体ごとに交換される。ピペットヘッド54には各ピペット19a,19bのピックアップとリリースを行う機構が設けられており、ピペットの交換が自動的に行われるようになっている。ピペットを交換する際には、ピペットヘッド54は、まず、使用済みのピペット19a,19bを廃却部(図示しない)でリリースし、この後、ピペット保管部63にアクセスして未使用の交換用ピペット62をピックアップする。
【0066】
また、ウエルプレート64は、複数のウエル状の升がマトリックスに配列されたウエルプレートであり、ピペットで吸い上げた液体を一時的に保管する際あるいは、複数種類の液体を混合して混合液を調整する際に用いられる。
【0067】
固定を開始する際には、リガンド固定器10の筐体はカバー(図示しない)によって覆われて、載置スペース51を含むリガンド固定器10の内部は、外部から遮蔽される。リガンド固定器10内の温度は、温度調節器(図示しない)によって調節が可能になっている。測定セル17にリガンドを注入後、センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了するまでの間、測定ユニット12は、載置スペース51上で所定時間保管される。この保管中には、必要に応じて流路16内のリガンド溶液200が攪拌される。この間の固定化の進行度合いは、測定ユニット12の環境条件(温度)によって左右される。そのため、温度調節器によってリガンド固定器10の内部温度が所定の温度に保たれる。設定される温度や保管時間等は、リガンド21aの種類等に応じて適宜決められる。
【0068】
固定が完了すると、測定セル17に対して、バッファ(洗浄液)が注入される。バッファは、測定セル17をリガンド溶液で満たしたままの状態で、バッファを吸い込んだピペット19aをスリット43bへ挿入して、測定セル17へ注入される。バッファが注入口16aから流路16へ吐き出されると、流路16に注入済みのリガンド溶液が排出口16bに向けて押し出されて、排出される。そして、ピペット19aの注入動作に連動して吸い込み動作を行うピペット19bによって、排出されるバッファが吸い込まれる。これにより、測定セル17内の液の置換(入れ替え)が行われる。
【0069】
図6に示すように、各台座53内には、その上に載置される各ホルダ52に収容された測定ユニット12の保管温度を調節する温度調節部67が設けられており、各温度調節部67は、それぞれ温度調節ブロックを構成する。各温度調節部67は、例えば、電熱線からなる発熱体であり、ホルダ52に熱エネルギーを与えて、保管温度を上昇させる。温度制御部68は、各温度調節部67が発生する熱エネルギーを個別に制御する。これにより、保管温度が各ホルダ52単位で個別に調節される。各ホルダ52は、例えば、それぞれ異なる固定化条件の下、平行して固定化を進行させることができる。また、温度制御部68は、各温度調節部67の駆動時間を制御することにより、ホルダ52毎に加熱時間を制御してもよい。図示しないが、隣接する台座53間に、断熱材を使用した間仕切りを設けて、この間仕切りによって載置スペース51を区画することにより、各台座53単位の個室を形成し、各個室間で互いに温度が干渉しないようにすることが好ましい。
【0070】
なお、この例では、温度調節部67として発熱体を使用し、目標温度よりも低い状態の測定ユニット12の温度を上昇させる例で説明したが、この逆に、目標温度よりも高い状態の測定ユニット12の温度を下降させたい場合には、温度調節部67として冷却体を使用してもよい。もちろん、温度調節部67として、発熱体と冷却体の両方を使用し、温度の上昇及び下降の両方の調節をできるようにしてもよい。冷却体としては、例えば、水路となるパイプが使用される。これを各台座53内に配置し、パイプに冷却水を循環させることで冷却を行うことができる。また、発熱体と冷却体の両方になり得るものとしては、例えば、ペルチェ素子(Peltier Device)がある。ペルチェ素子とは、周知のように、薄い金属に2種類の半導体を接合し、これに電流を流した場合に、一方の半導体から他方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した素子であり、可動部が無く、騒音を発生しないことから、コンピューターのCPU等の冷却に用いられている。電流を流す方向を変えることで、発熱と冷却が切り替えられる。
【0071】
また、各ホルダ52には、8個の測定ユニット12が収容されているので、図5に示すように、各ホルダ52に対してそれぞれ異なる温度条件A〜Fを与えるとともに、各ホルダ52内の複数の測定ユニット12に対して、異なる濃度条件a〜fを与えることもできる。こうすれば、温度条件と濃度条件が異なる複数種類の測定ユニット12を短時間で作成することができる。
【0072】
測定装置11は、図7に示すように、3つの測定セル17が一体的に形成されている測定ユニット12と、各測定セル17毎に設けられた光源34および検出器33とを備える表面プラズモンセンサ部1と、測定ユニット12を収容したホルダ52が保管されている恒温部2と、多種類のアナライト溶液300を収容した溶液収容プレート314および測定ユニット12の測定セル17へ注入する種々の液体(洗浄液、バッファ液等)を収容する複数の液保管部61とが保管されている恒温部3と、不図示のピペット対および該ピペット対を保持するピペットヘッドとを備えている。各検出器33の出力は制御部330へ出力される。
【0073】
制御部330は、測定装置11の光検出器33から出力される全反射減衰の状態に基づいてリガンドとアナライトとの結合情報を取得する結合情報取得部331と、各種の情報を記憶する記憶部332とを備え、また不図示の入力手段から入力されたタンパク名および化合物名等に基づいて、リガンドの固定化および測定セル17へのアナライト溶液の供給動作等を制御するものである。また記憶部332には、測定に使用したリガンド溶液200のリガンド情報204、測定に用いたアナライト溶液300のアナライト情報304および結合情報がそれぞれ関連付けて記憶される。
【0074】
結合情報取得部331は、まず検出器33の測定結果に基づいて、測定毎に全反射減衰角を求め、時間の経過とともに変化する全反射減衰角の変化量を算出する。測定終了後に、単位時間(例えば、0.5秒)毎の全反射減衰角の変化量に基づいて、結合情報として、結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxの各値を求める。また結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxのそれぞれの値について、予め定められた所定範囲の値が求められたか否かの判定結果も結合情報として算出する。
【0075】
なお、これらの結合情報は、タンパク名および化合物名と対応させて表示部340へ出力される。
【0076】
以下、上記構成によるスクリーニングシステムの動作について説明する。使用者は、まず、不図示の入力部を介して、制御部330へ、スクリーニングを行う際にリガンドとして使用するタンパク名およびアナライトとして使用する化合物名を入力する。なお、リガンドライブラリー208へリガンド情報としてタンパクIDが記憶されている場合であれば、タンパク名の変わりのタンパクIDを入力することもできる。同様にアナライトライブラリー308へアナライト情報としてアナライトIDが記憶されている場合であれば、化合物名の変わりに化合物IDを入力することができる。
【0077】
本実施の形態では、使用する全ての測定セル17へ同一の所定のタンパク(リガンド)を固定し、測定セル17毎に異なる化合物溶液(アナライト溶液)を添加して測定を行うことにより、所定のタンパク(リガンド)と結合する化合物(アナライト)を探す例を用いて説明を行う。なお、各測定セル17へ異なるタンパク(リガンド)を固定して、各測定セル17へ同一の化合物溶液(アナライト溶液)を供給するなど、リガンドとアナライト溶液の組み合わせは任意に設定することができる。また、リガンドとして化合部を用い、アナライトとしてタンパクを用いることもできる。
【0078】
制御部330は、リガンド分注器220を制御して、入力されたタンパク名に該当するリガンド溶液200をリガンド保管部202から溶液収容プレート214の溶液収容部210へ分注する。なお、スクリーニングを行うアナライト溶液300の数にあわせて、溶液収容部210へリガンド溶液200を分注する。すなわち、アナライト溶液300を1000種類スクリーニングする場合であれば、1000個の溶液収容部210へリガンド溶液200を分注する。なお、同時に、リガンドデータベース206に記憶されている、使用するリガンド溶液200と対応するリガンド情報204を読み出して、記憶部332へ記憶する。
【0079】
次にリガンド固定器10を用いて、測定ユニット12の測定セル17へリガンドを固定する。まず、測定ユニット12がホルダ52収容された状態で、リガンド固定器10の載置スペース51に載置される。また、リガンド溶液200が準備されている溶液収容プレート214も載置スペース51に載置される。まず、各測定セル17に固定用バッファ液を注入して、センサ面13aを湿化させる。次に、活性化液を注入してセンサ面13aを活性化させる。洗浄後、各溶液収容部210から測定セル17にリガンド溶液200を注入して、固定化を開始させる。この状態で、測定ユニット12を載置スペース51上で所定時間保管する。この間に、リガンド溶液中のリガンド21aと、リンカー膜22との結合が行われて、固定化が進行する。
【0080】
制御部330は、記憶部332へ記憶したリガンド情報の中から固定化が進行する際の設定温度および固定化時間(固定化プロトコール)を読み出し、温度調節部67(台座53)によりホルダ52の温度を設定温度へ温調する。なお、複数種類のリガンドを固定する場合等には、温度調節部67(台座53)毎に異なる温度を設定することもできる。
【0081】
また、各測定ユニット12に対してそれぞれ異なる濃度条件を与える場合には、ピペット対19によって、ウエルプレート64上で濃度が異なる複数種類のリガンド溶液を調整し、調整済みの複数種類のリガンド溶液を、異なる複数の測定ユニット12へそれぞれ注入する。
【0082】
制御部330は、不図示のタイマにより時間経過を検出し、固定化時間が経過した時点で、固定化終了を指示する。各測定ユニット12は、洗浄後にブロッキング処理が施される。
【0083】
上記実施形態では、リガンド情報である固定化プロトコールとして、固定化温度および固定化時間が記憶されているが、固定化プロトコールとしては、これらの他に、リガンド濃度や、添加剤や溶媒の種類等があり、各測定ユニット、あるいは各ホルダ毎にこれらの条件を変えて固定を行ってもよい。また、1個の測定ユニット内における複数の測定セルについては、各測定セルに対してそれぞれに異なる固定化条件を与えてもよい。
【0084】
固定化が終了した測定ユニット12は、ホルダ単位で、測定装置11の恒温室2へ移される。
【0085】
一方、この間にアナライト溶液も準備されている。制御部330は、アナライト分注器320を制御して、入力された化合物名に該当するアナライト溶液300をアナライト保管部302から溶液収容プレート314の溶液収容部310へ分注する。なお、同時に、アナライトデータベース306に記憶されている、使用するアナライト溶液300と対応するアナライト情報304を読み出して、記憶部332へ記憶する。なおアナライト分注器320は溶液収容プレート314についているバーコード312からバーコード情報を読み出して、制御部330へ出力する。制御部330では、アナライト情報と対応させて、そのアナライト溶液が収容された溶液収容プレート314のバーコード情報および収容された溶液収容部310の配置である行番号および列番号を記憶する。このあと溶液収容プレート312は、測定装置11の恒温室3へ移される。
【0086】
測定装置11では、測定に先立ち、恒温室2からユニット保持部4上の測定位置へ向けて測定ユニット12が移動される。測定ユニット12がユニット保持部4上に載置された後、プリズム14に形成された垂直凸部14bが不図示の固定機構により挟持されてユニット保持部4上の測定位置に固定される。その後、図3に示すようなピペット26aによりアナライト溶液300を溶液収容プレート314の溶液収容部310から吸引し、その後、流路16の入口である穴43aに液供給用のピペット26aを挿入し、出口である穴43aに液吸入用のピペット26bを挿入し、液供給用ピペット26aからアナライト溶液300を流路16へ供給した後、測定を開始する。なお、一つの測定ユニット12の測定が終了した場合には、その測定ユニット12を測定位置からホルダ52内へ移動させ、次の測定ユニット12を測定位置へ移動させて測定を繰り返す。
【0087】
検出器33から全反射減衰の状態を反映する測定結果が出力されると、結合情報取得部331では、まず検出器33の測定結果に基づいて、測定毎に全反射減衰角を求め、時間の経過とともに変化する全反射減衰角の変化量を算出する。測定終了後に、単位時間(例えばあ0.5秒)毎の全反射減衰角の変化量、すなわちセンサーグラムに基づいて、結合情報として、結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxの各値を求める。なお、この際には、記憶部332へ記憶されているアナライト情報、例えばアナライトの分子量等を用いることにより、より正確にこれらの結合情報を取得することができる。また結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、および最大結合量Rmaxのそれぞれの値について、予め定められた所定範囲の値が求められたか否かの判定結果も結合情報として算出する。
【0088】
なお、これらの結合情報は、リガンド名およびアナライト名と対応させて表示部340へ出力される。表示部340では、これらの情報を表示する。
【0089】
図8は、表示部340に表示された上記結合情報を示すものである。図8中に示す、6行×8列のマトリクス状に配置された合計48個の各サムネイルG(m,n)は、溶液収容プレート314における各アナライト溶液300の溶液収容プレート314内における収容位置F(m,n)に対応して表示されたものである。
【0090】
すなわち、表示部340には、収容位置F(m,n)に対応付けられた各アナライト情報と、収容位置F(m,n)に収容されたアナライト溶液300に対応する結合情報のそれぞれが、上記試料収容位置F(m,n)に対応して、表示部340上に表示される。上記各収容位置F(m,n)に対応させて表示部340上に表示させた結合情報のそれぞれが上記各サムネイルG(m,n)である。
【0091】
最大結合量Rmaxについて予め定められた所定範囲の値が求められたものはサムネイルGを太枠Q1で囲って表示し、所定範囲の値が求められなかったものは表示を変化させないようにする。また、解離速度定数kdについて予め定められた所定範囲の値が求められたものは色付きの背景色Q2を有するサムネイルGで示し、所定範囲の値が求められなかったものは表示を変化させないようにする。その他、結合速度定数ka、解離定数KD、バルク補正についても同様の手法、例えば、色違い、点滅の有無、ハッチングの有無、枠太さの違い等の手法で表示を変えることにより結合情報をより容易に把握することができる。
【0092】
さらに、図8に示すように、サムネイルG(m,n)のうちの1つ、例えば、サムネイルG(3,3)を、クリックするとこのサムネイルG(3,3)の拡大画像Gが表示され、この拡大画像には、以下の項目が表示される。(1)測定に用いられたリガンド名およびアナライト名(図中K1で示す)。(2)kinetics値(図中K2で示す)。なお、結合速度定数ka、解離速度定数kd、解離定数KD、およびアナライトの最大結合量Rmaxの4つの値をまとめてkinetics値と言う。(3)センサーグラムの表示(図中K3で示す)。
【0093】
センサーグラムは、横軸に時間、縦軸に角度を示す座標上に、時間の経過に伴う全反射減衰角の角度変化を示したものである。実測信号に基づく結合解離曲線αと推定したKinetics値に基づく結合解離曲線βを重ねて描いたものである。実測信号に基づく結合解離曲線αを実線、推定したkinetics値に基づく結合解離曲線βを破線で示す。なお、上記座標の横軸は測定に要した時間に応じて最大値が自動的に定められ、縦軸の角度を示すスケールはユーザが設定することができる。
【0094】
また、制御部330は、取得した結合情報をアナライトライブラリー308の各アナライトデータベース304へ記憶させる。これらの結合情報がアナライトデータベース304に記憶される場合には、予め何らかの条件を用いて、スクリーニングするアナライトの数を絞ってスクリーニングを行うフォーカスドスクリーニングを行う際の候補選択条件の一つとして、結合情報を用いることができ、アナライトのヒット率を向上させることができる。
【0095】
以上の説明により明らかなように、本発明によるスクリーニングシステムでは、全反射減衰を利用した測定装置11による測定を行う前に、リガンド固定器10において、測定セル17の薄膜層13a上へ、リガンド溶液200を供給し、該リガンド溶液に含まれるリガンドが薄膜層13a上に固定化されるまでの間、測定セル17を載置スペースにて保持して、薄膜層13aへリガンドを固定するので、リガンド固定器10におけるリガンドの固定処理と測定装置11における測定とを並行して行うことができ、リガンドの固定および結合情報の取得の効率が向上し、短時間で多数組のリガンドとアナライトの組み合わせについて結合情報を取得することができる。また、測定を行う前に、アナライトライブラリー308のアナライト溶液保管部302から指定されたアナライト溶液300を取り出して、測定装置11へ供給し、また測定後に、指定されたアナライト溶液のアナライト情報と、結合情報取得部331により取得された結合情報とを対応させて記憶して、表示することにより、取得した結合情報と、該結合情報と対応するアナライトとの管理を自動的に行うことが出来る。
【0096】
結合情報取得部331は、測定装置11による測定結果および分子量等のアナライト情報とに基づいて、リガンドとアナライトとの結合情報を取得するので、より正確な結合情報を取得することができる。
【0097】
また、アナライト分注機320が、指定されたアナライト溶液300をアナライト保管部302から取り出し、バーコード312が付けられた溶液収容プレート314の溶液収容部310へ供給するものであり、記憶部332が、溶液収容プレート314のバーコード情報および溶液収容部310の溶液収容プレート314内での配置と、指定されたアナライトのアナライト情報とを対応させて記憶しているので、指定されたアナライト溶液の種類を誤ることを防止でき、スクリーニングの信頼度を向上させることができる。
【0098】
さらに、固定化を行う際に、リガンドライブラリー208のリガンド保管部202から、指定されたリガンド溶液200を取り出し、リガンド固定器10へ供給し、記憶部332が、指定されたリガンド溶液200のリガンド情報204と、結合情報取得部331により取得された結合情報とを対応させて記憶し、また指定されたリガンド溶液200のリガンド情報204と、結合情報取得部331により取得された結合情報とを対応させて表示するので、取得した結合情報と、該結合情報と対応するリガンドとの管理を自動的に行うことが出来る。
【0099】
リガンド保管部202から取り出したリガンド溶液200を、バーコード212が付けられている溶液収容プレート214の溶液収容部210へ供給し、記憶部332が、溶液収容プレート214のバーコード情報および溶液収容部210の溶液収容プレート214内での配置と、指定されたリガンド溶液200のリガンド情報204とを対応させて記憶しているので、指定されたリガンド溶液の種類を誤ることを防止でき、スクリーニングの信頼度をさらに向上させることができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、リガンド情報はリガンドデータベース206へ、アナライト情報はアナライトデータベース306に各々記録する構成としたが、本スクリーニングに関連した総合情報も合わせて、1つの総合データベースに記録するようにしてもよく、例えば記憶部332をこのような総合データベースとすることもできる。
【0101】
なお、上記例では、全反射減衰を利用した測定装置として表面プラズモンセンサを示し、複数の測定セルを備えた測定ユニットを用いた例で説明したが、測定ユニットの構成及び形態はこれに限らず、例えば、1つの測定セルを備えた測定ユニットでもよいし、あるいは、2次元状に多数の測定セルが配置された測定ユニットであってもよい。
【0102】
また、測定ユニットとして、金属膜、流路、プリズムを一体化させた例で説明したが、
これに限定されるものではなく、プリズムあるいは流路が別体として構成されるものであってもよい。例えば、ガラス基板上にセンサ面を持つ金属膜を形成した測定チップと、プリズム、流路とを組み合わせることもできる。
【0103】
また、リガンド固定器10の測定ユニットの載置スペースを、複数の台座が配列された載置スペースとして説明したが、例えば、仕切板や天板等によって空間的に区画され、各測定ユニットを収容可能な複数の載置室から構成してもよい。こうすれば、載置室ごとに湿度を変更することも可能になる。
【0104】
さらに、上記実施形態では、リガンド固定器を、測定装置とは別々の筐体で構成した例で説明したが、測定装置の筐体内にリガンド固定器を組み込んでそれらを一体化してもよい。
【0105】
なお、本実施形態では、全反射減衰を利用した測定装置として、センサ面上に表面プラズモンを発生させて、そのときの反射光の減衰を検出する表面プラズモンセンサを使用したが、全反射減衰を利用した測定装置は、表面プラズモンセンサに限らず、全反射減衰を利用した他のセンサを用いることもできる。全反射減衰を利用する測定装置としては、表面プラズモンセンサの他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を通過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において弾性表面波(surface acoustic wave,SAW)が生じると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。弾性表面波が生じる入射角は、表面プラズモンの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応が測定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明によるスクリーニングシステムの概略構成図である。
【図2】リガンド固定方法の説明図である。
【図3】表面プラズモン測定方法の説明図である。
【図4】測定ユニットの構成図である。
【図5】リガンド固定器の構成図である。
【図6】温度調節部の構成を示すブロック図である。
【図7】測定装置の構成図である。
【図8】表示画面の説明図である。
【符号の説明】
【0107】
10 リガンド固定器
11 測定装置
12 測定ユニット
17 測定セル
31 測定部
51 載置スペース
200 リガンド溶液
202 リガンド溶液保管部
204 リガンド情報
206 リガンドデータベース
208 リガンドライブラリー
220 リガンド分注器
210,310 溶液収容部
212,312 バーコード
214,314 溶液収容プレート
300 アナライト溶液
302 アナライト溶液保管部
304 アナライト情報
306 アナライトデータベース
308 アナライトライブラリー
320 アナライト分注器
330 制御部
331 結合情報取得部
332 記憶部
340 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体ブロック、該誘電体ブロックの一面に形成され、リガンドが固定される薄膜層および該薄膜層上にアナライトを保持するアナライト保持機構を有する測定セルと、測定位置に配置された前記測定セルの前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で全反射条件が得られる入射角で光ビームを入射させ、前記界面で全反射した光ビームの全反射減衰の状態を測定する測定部とを有する全反射減衰を利用した測定装置および
該測定装置による測定結果に基づいて前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を取得する結合情報取得手段を備え、
前記測定装置が複数組のリガンドとアナライトとの組み合わせに対する測定を行うものであり、前記結合情報取得手段が、前記リガンドとアナライトとの組み合わせ毎に、結合情報を取得するものであるスクリーニングシステムにおいて、
前記測定装置による測定を行う前に、前記測定位置とは異なる固定化位置に配置された前記測定セルの薄膜層上へ、リガンドを供給し、該リガンドが前記薄膜層上に固定化されるまでの間、前記測定セルの薄膜層を保持するリガンド固定手段と、
複数種類のアナライトを保管するアナライト保管部および前記各アナライトのアナライト情報を前記各アナライトの保管位置と対応させて記憶するアナライトデータベースとを有するアナライトライブラリーと、
前記測定装置による測定を行う前に、指定されたアナライトを前記アナライト保管部から取り出し、前記測定装置へ供給するアナライト供給手段と、
前記指定されたアナライトのアナライト情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出された、前記指定されたアナライトのアナライト情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて表示する表示手段とを備えたことを特徴とするスクリーニングシステム。
【請求項2】
前記結合情報取得手段が、前記測定装置による測定結果および前記アナライト情報とに基づいて、前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を取得するものであることを特徴とする請求項1記載のスクリーニングシステム。
【請求項3】
前記アナライトデータベースが、前記結合情報取得手段で取得された前記リガンドと前記アナライトとの結合情報を、前記アナライトのアナライト情報と対応させて記憶するものであることを特徴とする請求項1または2記載のスクリーニングシステム。
【請求項4】
前記アナライト供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、
前記指定されたアナライトを、前記アナライト保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するアナライト分注手段とを有するものであり、
前記記憶手段が、前記溶液収容プレートのIDおよび前記溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたアナライトのアナライト情報とを対応させて記憶するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のスクリーニングシステム。
【請求項5】
複数種類のリガンドを保管するリガンド保管部および前記各リガンドのリガンド情報を、前記各リガンドの保管位置と対応させて記憶するリガンドデータベースとを有するリガンドライブラリーと、
指定されたリガンドを前記リガンド保管部から取り出し、前記リガンド固定手段へ供給するリガンド供給手段とを有し、
前記記憶手段が、前記指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて記憶するものであり、
前記表示手段が、前記記憶手段から読み出された、前記指定されたリガンドのリガンド情報と、前記結合情報取得手段により取得された結合情報とを対応させて表示するものであることを特徴と請求項1から4いずれか1項記載のスクリーニングシステム。
【請求項6】
前記リガンド供給手段が、複数の溶液収容部が2次元状に配置されておりIDを有する複数枚の溶液収容プレートと、
前記指定されたリガンドを、前記リガンド保管部から取り出して、前記溶液収容プレートの前記溶液収容部へ供給するリガンド分注手段とを有するものであり、
前記記憶手段が、前記溶液収容プレートのIDおよび溶液収容部の前記溶液収容プレート内での配置と、前記指定されたリガンドのリガンド情報とを対応させて記憶するものであることを特徴とする請求項5記載のスクリーニングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−105913(P2006−105913A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296437(P2004−296437)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】