説明

スクリーン印刷機

【課題】マスクのテンションの低下に伴うマスクの交換作業の頻度を少なくして基板の生産性の低下を防止することができるスクリーン印刷機を提供することを目的とする。
【解決手段】基板2上の電極3の配置に応じたパターン開口15aを有する矩形の金属板から成るマスク15及び基板2を接触させた状態のマスク15上を摺動し、マスク15上でペーストPtを掻き寄せて基板2にペーストPtを転写させるスキージ44を備えたスクリーン印刷機1において、マスク15の四辺のそれぞれに連結された4つの連結部材30を4つの連結部材駆動シリンダ35によって相対移動させてマスク15にテンションを付与することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク上でスキージを摺動させて基板に半田等のペーストを印刷するスクリーン印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上の電極に半田等のペーストを印刷するスクリーン印刷機は、基板の電極の配置に応じたパターン開口を有するマスクをパターン開口と電極とが合致するようにして基板に接触させた後、マスク上でスキージを摺動させてペーストを掻き寄せることにより、マスクのパターン開口を介して電極にペーストを転写させるようになっている。マスクは、パターン開口が形成された金属板の周辺部に樹脂(例えばポリエステル)製のシート状部材を取り付け、このシート状部材を矩形枠状のマスク枠によって支持した構成となっている。
【0003】
このようなスクリーン印刷機では、基板上の電極にペーストを転写させた後、基板をマスクの下面から離間させて版離れを行うことにより電極にペーストを残留させるのであるが、スクリーン印刷の実行回数が増大してくると、パターン開口からマスクの下面に回り込んだペーストの粘性によって版離れ時にマスクが下方に引っ張られてマスクのテンション(樹脂製のシート状部材の張り具合)が低下してくる。このマスクのテンションの低下の程度が大きくなると、版離れのときに基板とマスクが離間するタイミングが遅れて良好な品質での印刷ができなくなってしまうことから、従来はマスクのテンションの低下の状況を種々の方法によって検知し、必要に応じてマスクの下面からペーストの残り滓を除去するマスククリーニングを行って版離れがスムーズに行われるようにしていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスクリーン印刷機では、マスクの下面のクリーニングを行っても一旦低下したマスクのテンションが元に戻ることはないことから、マスクのテンションが予め定めた限度以下になったときにはマスク全体を新品のものと交換せざるを得なかった。このため、マスクのテンションが限度以下になる度にオペレータはマスクの交換作業を行う必要があり、その間、スクリーン印刷機の稼動停止を余儀なくされて基板の生産性の低下を招くおそれがあるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、マスクのテンションの低下に伴うマスクの交換作業の頻度を少なくして基板の生産性の低下を防止することができるスクリーン印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のスクリーン印刷機は、基板上の電極の配置に応じたパターン開口を有する矩形の金属板から成るマスクと、基板を接触させた状態のマスク上を摺動し、マスク上でペーストを掻き寄せて基板に転写させるスキージとを備えたスクリーン印刷機であって、マスクの四辺のそれぞれに連結された4つの連結部材と、4つの連結部材のうち対向するもの同士が互いに離間する方向に相対移動するように4つの連結部材を駆動してマスクにテンションを付与する連結部材駆動部とを備えた。
【0008】
請求項2に記載のスクリーン印刷機は、請求項1に記載のスクリーン印刷機であって、各連結部材とマスクは、各連結部材に設けられた連結用突起をマスクの四辺のそれぞれに設けられた連結用孔部に嵌入させて連結される。
【0009】
請求項3に記載のスクリーン印刷機は、請求項1又は2に記載のスクリーン印刷機であって、マスクのテンションを計測するテンション計測手段と、テンション計測手段により計測されたマスクのテンションの値に基づいて連結部材駆動部の作動制御を行う連結部材駆動部制御手段とを備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、矩形の金属板から成るマスクの四辺のそれぞれに連結された4つの連結部材を連結部材駆動部によって相対移動させてマスクにテンションを付与することができるようになっており、マスクのテンションが予め定めた限度以下になった場合であっても、マスクの交換を行うことなく、マスクにテンションを付加することでテンションの回復を図ることができる。このためマスクのテンションの低下に伴うマスクの交換作業の頻度を少なくでき、基板生産性の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機の要部の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機の要部の側面図
【図3】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が備えるマスクホルダとマスクの斜視図
【図4】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が備えるマスクホルダとマスクの平面図
【図5】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が実行するスクリーン印刷作業の流れを示すフローチャート
【図6】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が実行するスクリーン印刷作業の手順を示す図
【図7】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が実行するスクリーン印刷作業の手順を示す図
【図8】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が実行するスクリーン印刷作業の手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2において、スクリーン印刷機1は、基板2上に設けられた多数の電極3のそれぞれに半田等のペーストPtをスクリーン印刷するスクリーン印刷作業を実行するものであり、基台10上に設けられた基板搬入コンベア11、基板保持ユニット12及び基板搬出コンベア13、基板保持ユニット12の上方に基台10に対して固定して設けられたマスクホルダ14、マスクホルダ14によって水平姿勢に保持された矩形の金属板から成るマスク15、マスク15の上方に設けられたスキージヘッド16、マスク15の下方領域を移動自在に設けられたカメラユニット17、マスク15の上方領域を移動自在に設けられた撓み計測器18及びスクリーン印刷機1の各部の作動制御を行う制御装置19を備えている。
【0013】
基板搬入コンベア11はスクリーン印刷機1の外部から投入された基板2を搬入し(図1中に示す矢印R1)、基板保持ユニット12に受け渡す。基板搬出コンベア13は基板保持ユニット12から受け取った基板2をスクリーン印刷機1の外部に搬出する(図1中に示す矢印R2)。すなわち基板2は基板搬入コンベア11、基板保持ユニット12、基板搬出コンベア13の順で搬送され、この基板2の移動方向を以下、X軸方向(前後方向)とする。また、このX軸方向と直交する水平面内方向をY軸方向(左右方向)とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0014】
基板保持ユニット12は、XYZロボットから成るユニット移動機構12Aによって水平面内(XY面内)の方向への移動(回転も含む)及びZ軸方向への移動が自在なユニットベース21、ユニットベース21に取り付けられた一対のコンベア22、ユニットベース21に設けられた下受け部昇降シリンダ23によって昇降され、コンベア22によって所定の作業位置(図1に示す位置)に搬送及び位置決めされた基板2の両端がコンベア22から上方に離間するように基板2を下方から持ち上げ支持する下受け部24及びY軸方向に開閉自在に設けられ、下受け部24により持ち上げ支持された基板2の両側部をY軸方向から挟んで(クランプして)保持する一対のクランプ部材25を備えている。
【0015】
図3及び図4において、マスク15の中央領域には基板2上の電極3の配置に対応した多数のパターン開口15aが設けられており、四辺のそれぞれには厚さ方向に貫通した複数の連結用孔部15bが設けられている。各連結用孔部15bは、近傍の辺と平行な方向に延びた長孔となっている。
【0016】
図3及び図4において、マスクホルダ14は、マスク15の四辺のそれぞれに連結される4つの連結部材30を備えて成る。これら4つの連結部材30は、Y軸方向に延びてマスク15のX軸方向に対向する両辺(マスク15の縦辺)それぞれに連結される2つの左右辺連結部材31と、X軸方向に延びてマスク15のY軸方向に対向する両辺(マスク15の横辺)それぞれに連結される2つの前後辺連結部材32から成る。2つの左右辺連結部材31は、これら2つの左右辺連結部材31と直交する方向(X軸方向)に延びた一対のX軸方向移動ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動自在であり、2つの前後辺連結部材32は、これら2つの前後辺連結部材32と直交する方向(Y軸方向)に延びた一対のY軸方向移動ガイドレール34に沿ってY軸方向に移動自在である。
【0017】
図3及び図4において、4つの連結部材30(2つの左右辺連結部材31および2つの前後辺連結部材32)それぞれの上面には、マスク15の四辺に沿って設けられた各連結用孔部15bよりも連結用孔部15bの延びる方向(マスク15の辺に沿った方向)の寸法が小さい連結用突起30aが設けられている。マスク15の四辺に設けられた各連結用孔部15bにマスクホルダ14の各連結用突起30aが嵌入(遊嵌)するようにマスク15をマスクホルダ14に取り付けることによってマスク15とマスクホルダ14が連結され(図3(a)→図3(b))、これによりマスク15はマスクホルダ14によって保持された状態となる。
【0018】
図3及び図4において、マスクホルダ14を構成する2つのY軸方向移動ガイドレール34と2つのX軸方向移動ガイドレール33にはそれぞれ連結部材駆動シリンダ35が設けられている。これら4つの連結部材駆動シリンダ35のうちY軸方向移動ガイドレール34に取り付けられた2つはX軸方向に延びたピストンロッドを左右辺連結部材31に連結させており、ピストンロッドを進退させることで一対の左右辺連結部材31をX軸方向移動ガイドレール33に沿って(すなわちX軸方向に)互いに反対方向に移動させる。一方、4つの連結部材駆動シリンダ35のうちX軸方向移動ガイドレール33に取り付けられた他の2つの連結部材駆動シリンダ35はY軸方向に延びたピストンロッドを前後辺連結部材32に連結させており、ピストンロッドを進退させることで一対の前後辺連結部材32をY軸方向移動ガイドレール34に沿って(すなわちY軸方向に)互いに反対方向に移動させる。このため、マスク15の四辺に4つの連結部材30を連結させた状態で4つの連結部材駆動シリンダ35を同時に作動させ、4つの連結部材30を対向するもの同士が互いに離間する方向に移動させてマスク15全体を水平面内方向に引っ張ることにより、マスク15にテンションを付与することができる(図4中に示す矢印P)。
【0019】
図1及び図2において、スキージヘッド16は、マスクホルダ14に保持されたマスク15の上方領域をY軸方向に移動自在に設けられたプレート状のベース部材41、ベース部材41に取り付けられてピストンロッド42aをベース部材41の下方に突出させた2つのスキージ昇降シリンダ42、各スキージ昇降シリンダ42のピストンロッド42aの下端に取り付けられてX軸方向に延びたスキージ保持具43及び各スキージ保持具43に上端部が保持されて斜め下方に延びた薄板部材から成る2つのスキージ44を備えている。
【0020】
スクリーン印刷機1の操作を行うオペレータ(図示せず)は通常、2つのスキージ44が対向する方向(Y軸方向)の一方側に位置しており、ここではオペレータが位置する側をスクリーン印刷機1の前方、その反対側をスクリーン印刷機1の後方とする。
【0021】
図1及び図2において、カメラユニット17は撮像視野を下方に向けた下方撮像カメラ17aと撮像視野を上方に向けた上方撮像カメラ17bを備えて成る。カメラユニット17は、図示しないアクチュエータ等から成るカメラユニット移動機構17Mによってマスク15の下方領域を水平面内方向に移動される。
【0022】
撓み計測器18は、図示しないアクチュエータ等から成る撓み計測器移動機構18M(図2)によって、マスクホルダ14に保持されたマスク15の中心部の上方の位置(計測位置)と、計測位置から水平方向に退避した退避位置との間を往復する。撓み計測器18は、上記計測位置に位置した状態から下方に向けてレーザ光を照射し、マスク15の中心部において反射したレーザ光の反射光を受光することによって撓み計測器18の位置(高さ)を基準とした下方距離を求め、これによりマスク15の中心部の高さ計測を行う。
【0023】
基板保持ユニット12のコンベア22による基板2の搬送及び作業位置への位置決め動作、作業位置に位置した基板2に対する下受け部24による下受け動作及び一対のクランプ部材25によるクランプ動作は、制御装置19が下受け部昇降シリンダ23を含むアクチュエータ等から成る基板保持機構12B(図2)の作動制御を行うことによってなされ、基板2を保持した基板保持ユニット12の水平面内方向及び上下方向の移動動作は制御装置19がユニット移動機構12Aの作動制御を行うことによってなされる。また、基板搬入コンベア11による基板2の搬入動作及び基板搬出コンベア13による基板2の搬出動作も制御装置19によってなされる。
【0024】
図1において、スキージヘッド16(ベース部材41)のY軸方向への往復移動動作は制御装置19が図示しないアクチュエータ等から成るスキージヘッド移動機構16M(図2)の作動制御を行うことによってなされ、各スキージ44のベース部材41に対する昇降動作は、制御装置19がそのスキージ44に対応するスキージ昇降シリンダ42の作動制御を行ってスキージ保持具43を上下させることによってなされる。
【0025】
図2において、カメラユニット17の水平面内での移動動作は、制御装置19がカメラユニット移動機構17Mの作動制御を行うことによってなされる。下方撮像カメラ17aによる撮像動作の制御と上方撮像カメラ17bによる撮像動作の制御はそれぞれ制御装置19によってなされ、下方撮像カメラ17aの撮像動作によって得られた画像データと上方撮像カメラ17bの撮像動作によって得られた画像データはそれぞれ制御装置19に送信されて制御装置19の画像認識部19aにおいて画像認識処理される。
【0026】
図2において、撓み計測器18の水平面内での移動動作は、制御装置19が前述の撓み計測器移動機構18Mの作動制御を行うことによってなされる。また、撓み計測器18によるマスク15の中心部の高さ計測も制御装置19によってなされる。
【0027】
このような構成のスクリーン印刷機1がスクリーン印刷作業を行う場合には、制御装置19は先ず、上流工程側の他の装置から基板2が送られてきたことを検知したところで基板搬入コンベア11と基板保持ユニット12のコンベア22を作動させ、スクリーン印刷機1内に基板2を搬入したうえで(図5に示すステップST1)、基板保持機構12Bの作動制御を行って基板2を保持する(図5に示すステップST2。図6(a))。基板2の保持は、具体的には、下受け部昇降シリンダ23で下受け部24を押し上げて基板2をコンベア22から浮いた状態に持ち上げる一方(図6(a)中に示す矢印A1)、一対のクランプ部材25を閉じる方向に駆動して基板2の両端を挟み込む(図6(a)中に示す矢印B1)ことによって行う。
【0028】
制御装置19は基板2を保持したら、カメラユニット移動機構17Mの作動制御を行い、下方撮像カメラ17aを基板2に設けられた基板側マーク2m(図1)の直上に位置させて下方撮像カメラ17aに基板側マーク2mの撮像を行わせる一方、上方撮像カメラ17bをマスク15に設けられたマスク側マーク15m(図1、図3及び図4)の直下に位置させて上方撮像カメラ17bにマスク側マーク15mの撮像を行わせる。そして、得られた基板側マーク2mの画像データから基板2の位置を把握するとともに、得られたマスク側マーク15mの画像データからマスク15の位置を把握し、基板保持ユニット12を水平面内方向に移動させ、基板側マーク2mとマスク側マーク15mとが上下に対向するようにして、マスク15に対する基板2の水平面内方向の位置合わせを行う(図5に示すステップST3)。
【0029】
制御装置19は、マスク15に対する基板2の位置合わせが終わったら、ユニット移動機構12Aの作動制御を行って基板保持ユニット12を基台10に対して上昇させ(図6(b)中に示す矢印C1)、基板2を保持した一対のクランプ部材25がマスク15の下面に相対的に下方から押し当てられるようにすることにより、一対のクランプ部材25及び基板2それぞれの上面をマスク15の下面に接触させる(図5に示すステップST4。図6(b))。これにより基板2上の電極3とマスク15のパターン開口15aとが合致した状態となる。
【0030】
制御装置19は基板2をマスク15に接触させたら、制御装置19に繋がるディスプレイ装置DP(図2)に、オペレータにペーストPtの供給を促すメッセージを表示する(図5に示すステップST5)。この表示に対してオペレータは、現時点でマスク15上に残っているペーストPtを目視し、そのペーストPtの量に基づいてペーストPtの供給(補充)を行うべきかどうかの判断を行う。そして、ペーストPtの供給を行うべきと判断したときには、別途用意したペースト供給シリンジ(図示せず)により、マスク15上にペーストPtの供給を行う。そしてオペレータは、ペーストPtの供給が終わり、或いはペーストPtの供給が不要と判断したときにはマスク15上へのペーストPtの供給を行うことなく、制御装置19に繋がる動作再開ボタンBT(図2)の操作を行う。
【0031】
制御装置19は、ディスプレイ装置DPにペーストPtの供給を促すメッセージを表示した後、動作再開ボタンBTの操作がなされたか否かの判断を一定時間おきに行い(図5に示すステップST6)、動作再開ボタンBTからの信号出力に基づいて、オペレータによって動作再開ボタンBTの操作がなされたことを検知したときには、スキージ44によるスキージングを行ってマスク15上のペーストPtを基板2に転写させる(図5に示すステップST7)。
【0032】
このスキージングは、具体的には、スキージヘッド16から2つのスキージ44のうちの一方を下降させ、マスク15の上面に当接させた状態を維持したままベース部材41をY軸方向に移動させることによって行う(図7(a)中に示す矢印D)。これによりマスク15上でスキージ44が摺動し、マスク15上のペーストPtはスキージ44によって掻き寄せられてマスク15のパターン開口15a内に押し込まれ、基板2の電極3上に転写される。なお、制御装置19は、スキージヘッド16を前方から後方に移動させてスキージングを行うときには後側のスキージ44をマスク15上に当接させ、スキージヘッド16を後方から前方に移動させてスキージングを行うときには前側のスキージ44をマスク15上に当接させるようにする。
【0033】
制御装置19は、スキージングを行って基板2にペーストPtを転写させたら、ユニット移動機構12Aを作動させて基板保持ユニット12を下降させ(図7(b)及び図8(a)中に示す矢印C2)、マスク15から基板2及び一対のクランプ部材25を離間させて版離れを行う(図5に示すステップST8。図8(a))。これにより基板2の電極3上にペーストPtが残留し、基板2にペーストPtが印刷された状態となる。
【0034】
なお、この版離れのとき、マスク15はパターン開口15aからマスク15の下面に回り込んで基板2との間に入り込んだペーストPtの粘性によって下方に引っ張られて一時的に下方に撓んだ状態となった後(図7(b))、マスク15の弾性によってもとの形状に復帰する(図8(a))。このときマスク15のテンションが低下しているときほどマスク15がもとの形状に復帰するのが遅れ、スムーズな版離れがなされずに印刷品質が低下することになる。
【0035】
制御装置19は版離れが終わったら、基板保持ユニット12による基板2の保持を解除する(図5に示すステップST9。図8(b))。この基板2の保持の解除は、具体的には、制御装置19が基板保持機構12Bを作動させて一対のクランプ部材25を開かせたうえで(図8(b)中に示す矢印B2)、下受け部24を下降させ(図8(b)中に示す矢印A2)、基板2の両端を一対のコンベア22上に降ろすことによって行う。
【0036】
制御装置19は基板2の保持を解除したら、ユニット移動機構12Aを作動させて基板保持ユニット12を水平面内で移動させ、コンベア22の向きを整えたうえでコンベア22及び基板搬出コンベア13を作動させ、基板2をスクリーン印刷機1の外部に搬出する(図5に示すステップST10)。
【0037】
制御装置19は基板2を搬出したら、他にスクリーン印刷を施す基板2があるかどうかの判断を行う(図5に示すステップST11)。その結果、他にスクリーン印刷を施す基板2があった場合にはステップST1に戻って新たな基板2の搬入を行い、他にスクリーン印刷を施す基板2がなかった場合には一連のスクリーン印刷作業を終了する。
【0038】
スクリーン印刷機1の制御装置19はスクリーン印刷作業を上記手順によって行うが、撓み計測器18を用いたマスク15の中心部の下方撓みの計測と必要に応じた4つの連結部材駆動シリンダ35の作動とを適宜行うことによって、マスク15のテンションが低下することによる印刷品質の低下を防止するようにしている。
【0039】
具体的には、制御装置19は印刷枚数カウンタ19b(図2)によって、上記ステップST1〜ステップST10のスクリーン印刷作業を実行した回数からスクリーン印刷を施した基板2の枚数をカウントしており、スクリーン印刷を施した基板2の枚数が予め定めた基準の枚数に達したことを検知したときには、その次に行われるスクリーン印刷作業の版離れ工程(ステップST8)において、撓み計測器18を退避位置から計測位置に移動させてマスク15の中心部の下方撓みδ(図6(b))の計測を行う。この撓みδはマスク15の張り具合、すなわちマスク15のテンションが大きいときは小さく、マスク15のテンションが小さいときは大きくなるものであって、撓み計測器18はマスク15の撓みδからマスク15のテンションを計測するテンション計測手段となっている。
【0040】
この撓み計測器18によるマスク15の中心部の下方撓みδの計測では、先ず、版離れを行う直前の下方に撓んでいない状態のマスク15の中心部の高さを測定し(この値は常に同じであるので計測は最初だけでよい)、次に、版離れを行っている間、下方に撓んでいる状態のマスク15の中心部の下方距離を測定する。そして、得られたマスク15の中心部の下方距離の最大値(この下方距離の最大値は、マスク15が基板2から離れる直前に計測される)との差分を算出し、得られた差分の値をマスク15の中心部の下方撓みδとする。
【0041】
制御装置19は、上記のようにしてマスク15の中心部の下方撓みδを計測したら、得られた下方撓みδを予め定めた閾値と比較する。そして、その結果、計測したマスク15の中心部の下方撓みδが閾値以上となっていると判断したときには、4つの連結部材駆動シリンダ35を作動させてマスク15にテンションを付与する。
【0042】
このように、本実施の形態において、制御装置19は、テンション計測手段である撓み計測器18により計測されたマスク15のテンションの値に基づいて連結部材駆動部である連結部材駆動シリンダ35の作動制御を行う連結部材駆動部制御手段となっている。
【0043】
なお、このとき制御装置19が各連結部材駆動シリンダ35を駆動する駆動力は、マスク15のテンションが正常状態になる(下方たわみδが閾値を下回るようになる)値として下方撓みδの値ごとに予め定められており、テーブルの形式で上記閾値とともに制御装置19の記憶部19c(図2)に記憶されている。
【0044】
このようなスクリーン印刷機1が備えるマスク15のテンション調整機能により、スクリーン印刷作業を繰り返し実行することによってマスク15のテンションが低下していた場合であっても、オペレータがマスク15の交換作業を行うことなく、マスク15のテンションを回復させることができる。なお、制御装置19は、計測したマスク15の中心部の下方撓みδが閾値以上となっていなかった場合には、その次に行われる版離れ工程(ステップST8)においてもマスク15の中心部の下方撓みδの計測を行い、改めて閾値との比較を行うようにする。
【0045】
このように、本実施の形態におけるスクリーン印刷機1は、矩形の金属板から成るマスク15の四辺のそれぞれに連結された4つの連結部材30を連結部材駆動部(4つの連結部材駆動シリンダ35)によって相対移動させてマスク15にテンションを付与することができるようになっており、マスク15のテンションが予め定めた限度以下(ここではマスク15の中心部の下方撓みδが閾値以上)になった場合であっても、マスク15の交換を行うことなく、マスク15にテンションを付加することでテンションの回復を図ることができる。このためマスク15のテンション低下に伴うマスク15の交換作業の頻度を少なくでき、基板生産性の低下を防ぐことができる。
【0046】
なお、上述の実施の形態において、4つの連結部材30のうち対向するもの同士が互いに離間する方向に相対移動するように4つの連結部材30を駆動してマスク15にテンションを付与する連結部材駆動部としてシリンダ(連結部材駆動シリンダ35)を示したが、これは必ずしもシリンダでなくてもよい。
【0047】
また、前述の実施の形態では、マスク15の四辺と4つの連結部材30とを連結させる手段は、マスク15の四辺に設けられた連結用孔部15bと各連結部材30に設けられて連結用孔部15bに嵌入する連結用突起30aから成っていたが、これは一例であり、マスク15の四辺と4つの連結部材30とは他の手段によって連結されるのであってもよい。しかし、上述したように、各連結部材30に設けられた連結用突起30aをマスク15の四辺に設けられた連結用孔部15bに嵌入させることで連結部材30とマスク15との連結を行うことができるようになっているのであれば、連結部材30とマスク15との連結を極めて簡易な構成で行うことができるので、スクリーン印刷機1のコストの低廉化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
マスクのテンションの低下に伴うマスクの交換作業の頻度を少なくして基板の生産性の低下を防止することができるスクリーン印刷機を提供する。
【符号の説明】
【0049】
1 スクリーン印刷機
2 基板
3 電極
15 マスク
15a パターン開口
15b 連結用孔部
18 撓み計測器(テンション計測手段)
19 制御装置(連結部材駆動部制御手段)
30 連結部材
30a 連結用突起
35 連結部材駆動シリンダ(連結部材駆動部)
44 スキージ
Pt ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の電極の配置に応じたパターン開口を有する矩形の金属板から成るマスクと、基板を接触させた状態のマスク上を摺動し、マスク上でペーストを掻き寄せて基板に転写させるスキージとを備えたスクリーン印刷機であって、
マスクの四辺のそれぞれに連結された4つの連結部材と、
4つの連結部材のうち対向するもの同士が互いに離間する方向に相対移動するように4つの連結部材を駆動してマスクにテンションを付与する連結部材駆動部とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
各連結部材とマスクは、各連結部材に設けられた連結用突起をマスクの四辺のそれぞれに設けられた連結用孔部に嵌入させて連結されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
マスクのテンションを計測するテンション計測手段と、テンション計測手段により計測されたマスクのテンションの値に基づいて連結部材駆動部の作動制御を行う連結部材駆動部制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリーン印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111847(P2013−111847A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259953(P2011−259953)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】