説明

スクリーン印刷版の製造方法

【課題】簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造する。
【解決手段】波長λ1の紫外線によって硬化する感光性材層12がスクリーン紗11の片面又は両面を覆うように形成されているスクリーン版1aの一方の面に、波長λ1の紫外線を透過し、かつ波長λ1と異なる波長λ2の紫外線を遮断するUVカット層13を形成する紫外線遮断層形成工程と、UVカット層13上に、波長λ2の紫外線によって硬化する紫外線硬化インク14bにより構成される所定のパターン14aを形成させるパターン形成工程と、パターン14aの上から波長λ2の紫外線を照射するインク硬化工程と、上記インク硬化工程の後に、パターン14aの上から波長λ1の紫外線を照射する露光工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷法に用いる印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷法とは、孔が形成されているスクリーン紗を利用する方法である。スクリーン紗としては、例えば絹、ナイロン、テトロン等の繊維、ステンレススティールの針金などを用いて紗織りすることにより形成されるものが利用されている。スクリーン印刷法においては、スクリーン紗に形成されている孔のうち、印刷する際にインクを通す部分以外の孔を塞いだものを印刷版(スクリーン印刷版)として用いる。
【0003】
このスクリーン印刷版を製造するための従来の方法としては、スクリーン紗に感光性材を塗布した後、インクジェットによりパターンを形成したフィルムを感光性材層の上に貼り付けて、このフィルムを介して感光性材を露光する方法がある。この場合、露光した後にフィルムを除去し、感光していない感光性材を除去することによって、スクリーン印刷版が製造される。
【0004】
しかし、このような従来の方法では、フィルムを感光性材層の上に貼り付ける際に気泡が混入し、画像がぼけるなどの問題がある。また、フィルムと感光性材層との位置合わせを正確に行なう必要があり、スクリーン印刷版を容易に製造することが困難である。
【0005】
このような問題を防ぐため、パターンを感光性材層上に直接形成させる方法がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、感光性版材の感光材層表面に、遮光性インクを吸収し保持する透光性インク受容層を形成した後、このインク受容層表面に、露光光を遮光する遮光性インクを付着させることによって遮光性インクの画像パターンを形成し、次に感光材層を遮光性インクの画像パターンを介して露光し、その後に感光材層を現像すると共にそれによって感光材層の画像パターンを形成し、この現像工程前又は現像工程時にインク受容層及び遮光性インクを除去する、印刷版の製造方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、ホットメルトインクを用いて印刷スクリーンを形成する方法が記載されている。この方法は、まず、UV不透過ホットメルトインクを、液化するのに十分な温度に加熱した後、UV硬化物質層へ移してUV不透過マスクを提供する。そして、このUV硬化物質層をUV光に曝して、UV不透過マスクで被覆されていない部分を硬化させ、UV硬化物質層におけるUV不透過マスクによる被覆部分とUV不透過マスクとを水洗して除去する。
【0008】
また、特許文献3には、インクを透過する透過部材と、前記透過部材に付着してインクを遮断する遮断部材とを備えるスクリーン印刷版の製造方法が記載されている。この方法は、遮断部材を形成するための流体状の遮断材を前記透過部材の上に吐出する吐出工程を有するものである。そして、特許文献3には、流体状の遮断材の例として、常温下(50℃以下)では固形状態で加熱により溶融し液状状態となる材料(ホットメルト材料)が好適であることが記載されている(特許文献3の段落〔0021〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−091018号公報(2002年3月27日公開)
【特許文献2】特表2001−527598号公報(2001年12月25日公開)
【特許文献3】特開2003−89282号公報(2003年3月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された方法のように、遮光性インクを用いる場合には、遮光性インクとして、後の工程において水洗しやすいように水性のインクを用いることが多い。しかし、水性のインクは広がりやすいため、遮光性インクがインク受容層に充分に吸収されないと、周囲に広がったり滲んだりしてしまうおそれがある。また、遮光性インクをインク受容層に充分に吸収させるためにインク受容層を厚くすると、透明度が低下するため、露光光量を増やさなければならないという別の問題が生じる。
【0011】
また、インク受容層は、露光後に水洗によって容易に剥離されるために、親水性である必要がある。しかし、インク受容層の親水性が高いと、遮光性インクが水性である場合にはインク受容層に浸透しやすくなるため、遮光性インクの滲みを抑えることがさらに困難となる。その結果、印字部の周囲から髭状にインクが滲んで鳥の羽のように見える、いわゆるフェザリングが生じ、画質の低下を招いてしまうという問題が生じる。
【0012】
また、この方法では、インク受容層を形成させる工程は塗工装置などにより行なう必要があるため、スクリーン印刷版を製版する現場において簡単に行なうことができない。
【0013】
また、特許文献2および3に記載された方法では、ホットメルトインクを用いるため、このホットメルトインクを吐出可能な液体状に保つためのインクタンクを備えた大掛かりな加熱装置が必要となり、設備が大型化するという問題がある。
【0014】
このように、従来技術では、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造することが困難である。したがって、近年における、電子機器等の軽薄短小化に伴う高解像度のスクリーン印刷版の必要性に対応することができないという問題がある。
【0015】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造することができるスクリーン印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法は、第1の波長の紫外線によって硬化する感光性材層がスクリーン紗の片面又は両面を覆うように形成されているスクリーン版の一方の面に、当該第1の波長の紫外線を透過し、かつ当該第1の波長と異なる第2の波長の紫外線を遮断する紫外線遮断層を形成する紫外線遮断層形成工程と、上記紫外線遮断層上に、上記第2の波長の紫外線によって硬化する紫外線硬化インクにより構成される所定のパターンを形成させるパターン形成工程と、上記パターンの上から上記第2の波長の紫外線を照射するインク硬化工程と、上記インク硬化工程の後に、上記パターンの上から上記第1の波長の紫外線を照射する露光工程とを有することを特徴とする。
【0017】
上記の構成であれば、インク硬化工程において照射される第2の波長の紫外線は、紫外線遮断層によって遮断されるため、感光性材層に到達する可能性が非常に低い。そのため、インク硬化工程における第2の波長の紫外線の照射により、感光性材層が硬化する可能性を非常に低くすることができる。したがって、除去工程において、パターンの直下に配置される感光性材層を完全に除去することが可能となるため、スクリーン印刷版の解像度を高めることができる。
【0018】
また、紫外線が照射されることにより硬化する紫外線硬化インクを使用するため、従来の方法と比較して、紫外線硬化インクが周囲に広がったり滲んだりすることを抑えることができる。したがって、いわゆるフェザリングの発生を防ぐことができるため、画質を高めることが可能になる。
【0019】
また、従来の方法におけるインク受容層を形成させる工程等が不要であるため、スクリーン印刷版を容易に製造することができる。また、紫外線硬化インクを用いるため、従来の方法におけるホットメルトインクを吐出するための大掛かりな装置などが不要となり、設備が大型化することを防ぐことができる。
【0020】
したがって、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造することができる。
【0021】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記感光性材層が上記スクリーン紗の片面を覆うように形成されており、上記紫外線遮断層形成工程において、上記スクリーン紗における上記感光性材層が形成されている面とは反対側の面に上記紫外線遮断層を形成することが好ましい。
【0022】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記第2の波長は、390nmよりも小さいことが好ましい。
【0023】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記第1の波長は、390nm以上であることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子により構成されていることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子が添加された水溶性樹脂により構成されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子が塗布または含有されている透明基材により構成されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記露光工程の後、感光性材層のうち上記露光工程において硬化しない部分と、上記紫外線遮断層と、上記パターンとを除去する除去工程を行なうことが好ましい。
【0028】
また、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法では、上記除去工程において、上記紫外線遮断層と上記パターンとは、上記スクリーン版から剥離させることによって除去し、上記未硬化部は、上記紫外線遮断層と上記パターンとを除去した後、水により膨潤させた後に水流により除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法は、以上のように第1の波長の紫外線によって硬化する感光性材層がスクリーン紗の片面又は両面を覆うように形成されているスクリーン版の一方の面に、当該第1の波長の紫外線を透過し、かつ当該第1の波長と異なる第2の波長の紫外線を遮断する紫外線遮断層を形成する紫外線遮断層形成工程と、上記紫外線遮断層上に、上記第2の波長の紫外線によって硬化する紫外線硬化インクにより構成される所定のパターンを形成させるパターン形成工程と、上記パターンの上から上記第2の波長の紫外線を照射するインク硬化工程と、上記インク硬化工程の後に、上記パターンの上から上記第1の波長の紫外線を照射する露光工程とを有するため、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1(a)〜(d)は、本発明の一実施形態における製造方法の各工程におけるスクリーン印刷版の断面図を示す。
【図2】図2(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態における製造方法の各工程におけるスクリーン印刷版の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法の一実施形態について、図1(a)〜(d)を参照して詳細に説明する。図1(a)〜(d)は、本発明の一実施形態における製造方法の各工程におけるスクリーン印刷版の断面図を示す。
【0032】
本実施形態に係る製造方法は、感光性材層形成工程、紫外線遮断層形成工程、パターン形成工程、露光工程、および除去工程により構成される。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0033】
(感光性材層形成工程)
感光性材層形成工程は、スクリーン紗11と一体となるように、波長(第1の波長)λ1の紫外線によって硬化する感光性材層12を形成させ、スクリーン版1aを形成させる工程である。スクリーン版1aとは、版枠10、スクリーン紗11および感光性材層12により構成される、スクリーン印刷版を製造するための版である。
【0034】
本実施形態における感光性材層形成工程では、スクリーン紗11の両面を覆うように感光性材層12を形成することによってスクリーン紗11と感光性材層12とを一体に形成する。なお、これに限定されず、本発明における感光性材層形成工程では、スクリーン紗と一体となるように感光性材層を形成すればよく、例えばスクリーン紗の片面のみを覆うように感光性材層を形成してもよい。
【0035】
スクリーン紗11とは、スクリーン印刷に用いるためのスクリーンであり、孔(目)が形成されている。この孔は、印刷する際にインクを通すための孔である。スクリーン紗11を構成する材料としては、例えば、絹、ナイロン、ポリエステル(例えばテトロン(登録商標))等の繊維、ステンレススティール等の針金などが挙げられる。スクリーン紗11は、例えばこれらの材料を織って形成させることができる。
【0036】
版枠10とは、スクリーン紗11を固定するための枠である。版枠10としては、例えば木、金属等を用いることができる。スクリーン紗11は、例えば版枠10に張られ、四方から引っ張って緊張させた状態で固定されたものであってもよい。
【0037】
感光性材層12は、紫外線の照射により硬化する感光性材料により構成されている層である。感光性材層12は、例えば紫外線の照射により硬化する感光性材料をスクリーン紗11の表面に塗布し、その後乾燥させることにより形成させることができる。感光性材層12の膜厚は、4〜30μmであることが好ましい。
【0038】
感光性材層12に用いる感光性材料としては、例えば感光剤と乳剤とを混合した感光性乳剤を用いることができる。感光性乳剤としては、水性用であっても油性用であってもよく、油性用乳剤としては、例えばジアゾ系乳剤、樹脂系乳剤等が挙げられる。
【0039】
感光性材層12を形成させる方法の具体例としては、例えば、スクリーン紗11を洗浄液等により脱脂洗浄した後に、水に溶解した感光剤と乳剤とを混合した350nm〜420nmに感度を有する感光性乳剤をスクリーン紗11に塗布し、その後35〜40℃で乾燥させる方法などが挙げられる。
【0040】
(紫外線遮断層形成工程)
次に、紫外線遮断層形成工程について、図1(a)を参照して説明する。
【0041】
紫外線遮断層形成工程は、感光性材層形成工程により形成されたスクリーン版1aの一方の面上に、UVカット層(紫外線遮断層)13を形成させる工程である。
【0042】
UVカット層13は、波長λ1の紫外線を透過し、かつ波長(第2の波長)λ2の紫外線を遮断する層であり、スクリーン版1aの一方の表面全体を覆うように形成されている。UVカット層13の膜厚は、1〜5μmであることが好ましい。
【0043】
波長λ1は、感光性材層12に含まれる感光性材料を硬化させることができる紫外線の波長であればよい。波長λ2は、λ1と異なる波長であり、かつ後述する紫外線硬化インク14bを硬化させることができる紫外線の波長であればよい。λ1およびλ2は、これらの条件を満たしていれば、任意に選択することができる。なお、波長λ2は390nmより小さいことが好ましく、波長λ1は390nm以上であることが好ましい。
【0044】
例えば、波長λ2が390nmよりも小さく、かつ波長λ1が390nm以上である場合には、UVカット層13は、390nmより小さい波長の紫外線を遮断し、かつ390nm以上の波長の紫外線を透過させるものであってもよい。
【0045】
UVカット層13は、紫外線を遮断するUVカット材料により構成されていることが好ましい。UVカット材料としては、波長λ2の紫外線を遮断し、かつ波長λ1の紫外線を透過させるものであればよく、例えば金属の粒子、UV吸収性を有する樹脂などが挙げられる。
【0046】
UVカット材料として用いる金属の粒子としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン等の粒子、またはこれらの組み合わせが挙げられ、特に微粒子が好ましい。UVカット材料として用いるUV吸収性を有する樹脂としては、例えば紫外線硬化樹脂等が挙げられる。紫外線硬化樹脂としては、例えばアクリル樹脂を主成分とし、ポリマー骨格が紫外線吸収性および光安定性を有する樹脂等が挙げられ、具体的には、「アルファコート」(商品名、アルファ化研株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
UVカット層13は、例えば溶媒に溶解または懸濁し、または樹脂に添加したUVカット材料を、スクリーン版1aの表面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。溶媒としては、メチルエチルケトン、アルコール等を用いることができる。塗布する方法としては、UVカット材料を含む溶液または懸濁液を、スプレーガン等を用いてスプレーする方法等が挙げられる。このようにスプレーする方法により成膜すれば、UVカット層13を容易に形成させることができる。
【0048】
UVカット材料を溶媒に溶解してスクリーン版1aの表面に塗布する方法の具体例としては、例えば、溶媒としてメチルエチルケトンを用い、これに酸化亜鉛の微粒子を50重量%に溶解した溶液を、スプレーガンによって膜厚が4μmとなるように塗布する方法などが挙げられる。また、例えばUVカット材料にバインダーを含む酸化チタンを用いる場合には、この酸化チタンの固形分を溶媒に0.5〜10wt%となるように溶解させた溶液を、スプレーガンによって塗布してもよい。
【0049】
また、UVカット材料を添加するための樹脂としては、水溶性樹脂が好ましく、例えばポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。PVAとしては、例えばHPポリマー(商品名、クラレ製)等が挙げられる。
【0050】
また、UVカット層13は、UVカット材料が塗布されている透明基材、UVカット材料が含有されている透明基材により構成されていてもよい。透明基材としては、紫外線を透過する基材であればよく、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)等のフィルムなどを用いることができる。この場合には、UVカット層13は、スクリーン版1aの一方の面上に貼り付けることによって形成させてもよい。
【0051】
なお、UVカット材料が塗布された透明基材とは、UVカット材料を含む溶液、懸濁液または樹脂等を透明基板に塗布したものであってもよい。
【0052】
(パターン形成工程)
次に、パターン形成工程について、図1(b)を参照して説明する。なお、本実施形態においては、パターン形成工程とインク硬化工程とを並行して行なう場合について説明する。図1(b)は、パターン形成工程とインク硬化工程とを並行して行なっている状態の断面図を示す。
【0053】
パターン形成工程は、UVカット層13上に紫外線硬化インク14bによって所定のパターン14aを形成する工程である。パターン形成工程では、UVカット層13上のパターンを形成したい位置に、インク滴下部21によって紫外線硬化インク14bの液滴を滴下して所定のパターン14aを形成させる。なお、「UVカット層上」とは、UVカット層13のうち、スクリーン版1aと接触している面とは反対側の面上をさす。
【0054】
インク滴下部21とは、インクを滴下する部材である。インク滴下部21としては、特に限定されないが、例えばインクジェット記録ヘッド等を用いることができる。
【0055】
紫外線硬化インク14bは、波長λ2の紫外線が照射されることにより硬化し、かつ波長λ1の紫外線を遮断するインクであればよい。紫外線硬化インク14bとしては、紫外線を吸収するもの、または反射するものを含有するものであればよく、例えばカーボンブラック、酸化チタン等を含有するインクを用いることができる。
【0056】
(インク硬化工程)
インク硬化工程は、パターン形成工程において形成されたパターン14aの上から波長λ2の紫外線を照射する工程である。これにより、パターン14aを構成する紫外線硬化インク14bを硬化させることができる。インク硬化工程では、紫外線照射部22により波長λ2の紫外線を照射する。
【0057】
紫外線照射部22は、少なくとも波長λ2の紫外線を照射するものであり、かつ波長λ1の紫外線を照射しないものである。紫外線照射部22としては、特に限定されないが、例えばUVLED等を用いることができる。例えば、紫外線照射部22は、波長λ2にピークを有する紫外光を照射するものであってもよい。
【0058】
インク硬化工程は、パターン形成工程において紫外線硬化インク14bの液滴を滴下した直後に行なうことが好ましい。例えば、インク滴下部21と紫外線照射部22とが一体となってUVカット層13の表面に沿って移動し、インク滴下部21が紫外線硬化インク14bを滴下した直後に紫外線照射部22が紫外線を照射するという構成であってもよい。
【0059】
(露光工程)
次に、露光工程について、図1(c)を参照して説明する。
【0060】
露光工程は、インク硬化工程の後に、パターン14aの上から波長λ1の紫外線を照射する工程である。これにより、パターン14aが形成されていない位置の感光性材層12を露光し、硬化させることができる。露光工程では、露光部23により、波長λ1の紫外線を照射する。なお、スクリーン版1aにおけるパターン14aが形成された面の全面に対して同時に照射してもよい。
【0061】
露光工程では、波長λ1の紫外線は、UVカット層13によって遮断されないため、パターン14aが形成されていない位置の感光性材層12を露光することができる。また、波長λ1の紫外線は、パターン14aによって遮断されるため、パターン14aが形成されている位置の感光性材層12には到達しない。
【0062】
露光工程の結果、感光性材層12のうちパターン14aが形成されていない位置にある部分は、露光されて硬化する。一方、感光性材層12のうちパターン14aが形成されている位置にある部分は、露光されず硬化しない。このように感光性材層12のうち硬化した部分を硬化部12aと称し、硬化しない部分を未硬化部12bと称する。
【0063】
露光部23としては、波長λ1の紫外線を放射するランプなどを用いることができる。ランプとしては、例えば高圧水銀灯等の高輝度放電ランプ(HIDランプ)、メタルハライドランプ、ハロゲンランプなどが挙げられる。
【0064】
(除去工程)
次に、除去工程を行なう。除去工程とは、露光工程後、感光性材層12のうち露光工程において硬化しなかった部分、すなわち未硬化部12bと、UVカット層13と、パターン14aとを除去する工程である。
【0065】
除去工程では、例えば、露光工程後のスクリーン版1aを水に浸漬し、未硬化部12bを膨潤させた後、水流によって未硬化部12bとUVカット層13とパターン14aとを洗い流すことにより除去してもよい。また、UVカット層13とパターン14aとは、水に浸漬する前にスクリーン版1aから剥離させることによって除去し、未硬化部12bは、UVカット層13とパターン14aとを除去した後、スクリーン版1aを水に浸漬して膨潤させた後に水流により洗い流すことによって除去してもよい。水流によって洗い流した後は、乾燥させることが好ましい。
【0066】
以上の各工程により、図1(d)に示すスクリーン印刷版1bが製造される。
【0067】
本実施形態であれば、紫外線が照射されることにより硬化する紫外線硬化インク14bを使用するため、従来の方法と比較して、紫外線硬化インク14bが周囲に広がったり滲んだりすることを抑えることができる。したがって、いわゆるフェザリングの発生を防ぐことができるため、画質を高めることが可能になる。
【0068】
また、インク硬化工程においては、紫外線照射部22が照射する波長λ2の紫外線を、UVカット層13によって遮断することができ、感光性材層12に到達することを防ぐことができる。
【0069】
ここで、UVカット層13を設けない場合には、インク硬化工程において照射される紫外線の一部が、紫外線硬化インクによって反射または吸収されずに、紫外線硬化インクによるパターンの直下に配置される感光性材層に到達し、硬化させてしまう場合がある。また、インク硬化工程において紫外線硬化インクが硬化する際に発生するイオン等が感光性材層に浸透し、あるいは紫外線硬化インクに含有される重合開始剤等が感光性材層に浸透して重合反応を起こすことによって、感光性材層の一部を硬化させてしまう可能性がある。この場合には、除去工程において、本来除去されるべきパターンの直下に配置される感光性材層を、完全に除去することが困難となるため、解像度が低下してしまう。
【0070】
しかし、本実施形態であれば、UVカット層13を設けているため、インク硬化工程において、パターン14aの直下に配置される感光性材層12が、紫外線硬化インクを硬化させるための紫外線の照射により硬化してしまう可能性は非常に低い。したがって、除去工程において、パターン14aの直下に配置される感光性材層12を完全に除去することが可能となるため、高解像度のスクリーン印刷版1bを製造することができる。
【0071】
また、本実施形態であれば、従来の方法におけるインク受容層を形成させる工程が不要であるため、スクリーン印刷版1bを印刷現場にて作製することが可能になり、スクリーン印刷版1bを容易に製造することができる。また、本実施形態は、紫外線硬化インクを用いるため、従来の方法におけるホットメルトインクを吐出するための大掛かりな装置などが不要となり、設備が大型化することを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態であれば、スクリーン版1aに対して直接パターンを形成するため、作業を容易に行なうことができる。また、リスフィルム等を作製する必要がないため、コストを低減させ、作業時間を短縮させることができる。また、リスフィルム等のスクリーン版1aに対する密着不良による画像のぼけを防止することができる。
【0073】
また、本実施形態であれば、従来の製造方法において行なっていた露光工程および現像工程に用いる設備を継続して使用することができる。
【0074】
したがって、本実施形態であれば、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版1bを製造することができる。
【0075】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係るスクリーン印刷版の製造方法の他の実施形態について、図2(a)〜(d)を参照して説明する。図2(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態における製造方法の各工程におけるスクリーン印刷版の断面図を示す。
【0076】
本実施形態に係る製造方法は、感光性材層形成工程、紫外線遮断層形成工程、パターン形成工程、露光工程、および除去工程により構成される。各工程について、第1実施形態との相違点についてのみ以下に説明し、説明の便宜上、第1実施形態にかかる構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付してその説明を省略する。
【0077】
本実施形態における感光性材層形成工程では、図2(a)に示すように、スクリーン紗11の片面のみを覆うように感光性材層32を形成させ、スクリーン版2aを形成させる。この点以外は第1実施形態の感光性材層形成工程と同様に行なうことができる。感光性材層32としては、第1実施形態における感光性材層12と同様の材料を用いることができる。
【0078】
紫外線遮断層形成工程では、スクリーン版2aにおけるスクリーン紗11上にUVカット層(紫外線遮断層)33を形成させる。すなわち、スクリーン紗11における感光性材層32が形成されている面とは反対側の面上に、UVカット層33を形成させる。UVカット層33としては、第1実施形態におけるUVカット層13として例示したものを用いることができる。
【0079】
パターン形成工程では、図2(b)に示すように、UVカット層33上のパターンを形成したい位置に、インク滴下部21によって紫外線硬化インク34bの液滴を滴下して所定のパターン34aを形成させる。紫外線硬化インク34bとしては、第1実施形態における紫外線硬化インク14bとして例示したものを用いることができる。
【0080】
インク硬化工程、露光工程および除去工程は、第1実施形態における各工程と同様に行なうことができる。これにより、露光工程において、図2(c)に示すように、感光性材層32のうちパターン34aが形成されていない位置にある部分は露光されて硬化する。一方、感光性材層32のうちパターン34aが形成されている位置にある部分は、露光されず硬化しない。このように感光性材層32のうち硬化した部分を硬化部32aと称し、硬化しない部分を未硬化部32bと称する。除去工程では、この未硬化部32bとUVカット層33とパターン34aとを除去する。
【0081】
以上の各工程により、図2(d)に示すスクリーン印刷版2bが製造される。
【0082】
本実施形態であれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができるため、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版2bを製造することができる。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、簡易な設備により高解像度のスクリーン印刷版を製造することができるので、スクリーン印刷法に用いる印刷版の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1a、2a スクリーン版
1b、2b スクリーン印刷版
11 スクリーン紗
12、32 感光性材層
12a 硬化部
12b 未硬化部
13、33 UVカット層(紫外線遮断層)
14a、34a パターン
14b、34b 紫外線硬化インク
λ1 波長(第1の波長)
λ2 波長(第2の波長)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の紫外線によって硬化する感光性材層がスクリーン紗の片面又は両面を覆うように形成されているスクリーン版の一方の面に、当該第1の波長の紫外線を透過し、かつ当該第1の波長と異なる第2の波長の紫外線を遮断する紫外線遮断層を形成する紫外線遮断層形成工程と、
上記紫外線遮断層上に、上記第2の波長の紫外線によって硬化する紫外線硬化インクにより構成される所定のパターンを形成させるパターン形成工程と、
上記パターンの上から上記第2の波長の紫外線を照射するインク硬化工程と、
上記インク硬化工程の後に、上記パターンの上から上記第1の波長の紫外線を照射する露光工程とを有することを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項2】
上記感光性材層が上記スクリーン紗の片面を覆うように形成されており、
上記紫外線遮断層形成工程において、上記スクリーン紗における上記感光性材層が形成されている面とは反対側の面に上記紫外線遮断層を形成することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項3】
上記第2の波長は、390nmよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記第1の波長は、390nm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子が添加された水溶性樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記紫外線遮断層は、酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1つの粒子が塗布または含有されている透明基材により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記露光工程の後、上記感光性材層のうち上記露光工程において硬化しない未硬化部と、上記紫外線遮断層と、上記パターンとを除去する除去工程を行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記除去工程において、上記紫外線遮断層と上記パターンとは、上記スクリーン版から剥離させることによって除去し、上記未硬化部は、上記紫外線遮断層と上記パターンとを除去した後、水により膨潤させた後に水流により除去することを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−118320(P2012−118320A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268329(P2010−268329)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】