説明

スクリーン及びその連結構造

【課題】スクリーンの連結に溶接作業を不要とし、スクリーンの連結施工費用を大幅に抑えることができ、さらにスクリーン有効長の損失を抑えることができるスクリーン及びその連結構造を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の棒状部材が互いに所定間隔を有して略円筒状をなすように円周方向に配列される棒状部材配列部と、前記棒状部材配列部の径方向外側にワイヤー部材が前記棒状部材の長手方向に所定間隔有するように巻回されて前記棒状部材に固定される円環状部とを備えたスクリーンにおいて、少なくとも一方の前記棒状部材配列部の長手方向端部には、棒状部材配列部の軸心を中心とするネジ溝構成部が棒状部材配列部の径方向内側に形成されていることを特徴とするスクリーン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸用及び各種プラントや装置等のインターナルエレメントとして使用されるスクリーン及びその連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば地下水を採取するために、ステンレススチール等で形成されたパイプ状のスクリーンが地層に埋め込まれる。このスクリーンは、ロッドと呼ばれる複数の棒状部材が等間隔に円周方向に配置され、これらの棒状部材の外周面にワイヤーを棒状部材の長手方向に一定のピッチで螺旋状に巻回されてロッドとワイヤーとの交点部分を電気抵抗溶接することにより一体化し、全体としてパイプ状となるように形成されている。すなわち、スクリーンの円周面にはワイヤー間で形成される間隙が円周方向及び長手方向に存在しており、この間隙により流体がスクリーンの管内に流入したり、あるいはスクリーンの管内の流体が外部に流出することが可能になっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
したがって、例えば地下水を採取する場合には、地表から掘削機等によりスクリーンを入れるための孔を形成しておき、スクリーンの円周面に形成された間隙が地下水の存在する地層位置に位置するようにスクリーンを前記孔内に設置し、地下水がスクリーンの内径側に流入することによって採取される。
【0004】
通常、地下水は地層深くに存在しているため、スクリーンは1本ずつ連結しながら前記孔に挿入される。この連結は、例えば、図5(a)に示すように、一方のスクリーン101の軸方向端部に雌ネジ部が設けられた連結片部201を溶接したものと、他方のスクリーン102の軸方向端部に雄ネジ部が設けられた連結片部202を溶接したものとをそれぞれ用意し、図5(b)に示すように、連結片部201の雌ネジ部と連結片部202の雄ネジ部とを螺合させることによって両スクリーンは連結される。ここで、図6に示すように、スクリーン101は上述のようにロッド101aとワイヤー101bとで構成されるが、このスクリーン101に対する連結片部201の溶接は、スクリーン101のロッド101aの長手方向端部と連結片部201の軸方向端部とを内径側から溶接される。すなわち、外径側から溶接を行うと、連結片部201とワイヤー101bとを溶接することになるが、ワイヤー101bはロッド101aとの交点のみで溶接されているため、これら交点の溶接部分のみで前記連結片部201を接続保持することになる。このような接続では、その強度は連結片部201を連結する強度として十分でないことから、連結片部201は複数のロッド101aと内径側の溶接個所300で溶接される。また、スクリーン101の口径と連結片部201の軸方向長さの関係で、ロッド101aと連結片部201との内径側から溶接が困難である場合には、まず短尺のリング部材210をスクリーン101と内径側から溶接個所300で溶接しておき、さらに前記リング部材210と連結片部201とを外径側から溶接個所301で溶接することによって連結される(図7)。また、図示していないがスクリーン102に対するリング部材と連結片部202との溶接についても同様である。
【0005】
そして、連結片部201、202が溶接されたスクリーン101及びスクリーン102は、前記連結片部201の雄ネジ部と連結片部202の雌ネジ部とを螺合させることによって連結される。
【特許文献1】特開平6−272285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようにスクリーン101,102の連結に連結片部201,202を溶接する作業は、スクリーンの内径側からの溶接になるとともに各ロッド101aと連結片部201,202とを溶接する必要があるため、非常に煩わしく多くの作業時間を必要とするものであった。また、連結には、雌ネジ部を有する連結片部201と雄ネジ部を有する連結片部202のように異なる連結片部が別々に必要であり、さらに必要に応じてリング部材210を別途用意する必要があることからも、連結部における部品コスト及び作業コストが増加してしまいスクリーンの連結施工費用が増加せざるを得なかった。
【0007】
また、従来の連結方法では、連結片部201、202に形成した雄ネジ部又は雌ネジ部は、スクリーン101及び102の間に位置するため、連結部分が必然的にスクリーン長手方向に長くなる。この連結部分が長くなると、スクリーンの円周面に形成された間隙の割合がスクリーンの長さに対して小さくなる。すなわち、スクリーン有効長が小さくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スクリーンの連結に溶接作業を不要とし、スクリーンの連結施工費用を大幅に抑えることができ、さらにスクリーン有効長の損失を抑えることができるスクリーン及びその連結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係るスクリーンは、複数の棒状部材が互いに所定間隔を有して略円筒状をなすように円周方向に配列される棒状部材配列部と、前記棒状部材配列部の径方向外側に、ワイヤー部材が前記棒状部材の長手方向に所定間隔有するように巻回されて前記棒状部材に固定される円環状部と、を備えたスクリーンにおいて、少なくとも一方の前記棒状部材配列部の長手方向端部には、棒状部材配列部の軸心を中心とするネジ溝構成部が、棒状部材配列部の径方向内側に形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記スクリーンによれば、スクリーンの端部に棒状部材配列部の軸心を中心とするネジ溝構成部が設けられているため、このネジ溝構成部を利用してスクリーンを連結することができる。すなわち、各棒状部材の径方向内側に設けられた溝は、棒状部材配列部を形成した際に全体として略雌ネジ状の一連の間欠的な螺旋溝(ネジ溝)を形成する。したがって、このように形成されたネジ溝構成部に、雄ネジ部を有する連結部材等を螺合させることによってスクリーンを連結することができるため、溶接等の煩わしい作業を無くすことができる。
【0011】
また、前記課題を解決するために、本発明に係るスクリーンの連結構造は、前記本発明のスクリーンと、前記スクリーンを連結する連結部材と、で構成されるスクリーンの連結構造において、前記連結部材の両端に雄ネジ部が設けられ、前記連結部材の一方端の雄ネジ部と第1のスクリーンのネジ溝構成部が螺合し、前記連結部材の他方端の雄ネジ部と第2のスクリーンのネジ溝構成部が螺合することにより構成されることを特徴としている。
【0012】
上記スクリーンの連結構造によれば、スクリーンを連結部材に螺合させるだけでスクリーンを連結させることができる。したがって、従来必要であった溶接による連結作業は不要となり、スクリーンの連結施工費用を削減できる。また、連結部材に形成される雄ネジ部はスクリーン端部の内径側に位置するため、連結部分はスクリーン長さに対して必要以上に長くならず、連結部分自体を小さく形成することができる。したがってスクリーン有効長の損失を抑えつつスクリーンを連結することができる。
【0013】
また、前記連結部材は金属製あるいは樹脂製のいずれでも使用可能であるが、連結部材の両端に連結するスクリーン等がそれぞれ異種金属で製作されている場合には、特に連結部材を樹脂製にすることで電位差腐食を防止できる点で好ましい。例えば、通常、スクリーンと、地下水のある部分以外の地層に埋め込む管状のケーシングとは異種金属で製作されているため、これらを連結する場合には、樹脂製の連結部材を使用することによって容易に異種金属接合による電位差腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスクリーン及びその連結構造によれば、溶接作業を伴うことなくスクリーンを容易に連結することができる。また、連結部分をスクリーンの長さ方向に小さくできるため、スクリーン有効長が損なわれるのを抑制しつつスクリーンを連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明のスクリーン10を井戸用として適用した一例を示すものであって、当該スクリーン10が他のスクリーン10又はケーシング30と連結されて地層内に埋め込まれた状態を示す概略側面図であり、図2は本発明のスクリーン10の斜視図である。
【0017】
図1に示すように、スクリーン10は、他のスクリーン10又はケーシング30と連結部材20を介して連結された状態で地層g内に配設されている。ここで、wは、地層g内に地下水が存在している地層を示しており以下、地下水層wと称す。
【0018】
前記スクリーン10は、図2に示すように、長手方向に延びる複数の金属製のロッド11で構成される棒状部材配列部12と、金属製のワイヤー部材13で構成される円環状部15で構成されている。なお、本実施形態では、前記ロッド11及びワイヤー部材13を金属製としているが、これに限定されるわけではない。
【0019】
前記棒状部材配列部12は、複数のロッド11が互いにほぼ等間隔でほぼ円形に配列され、全体として略円筒状をなすように構成されている。
【0020】
このロッド11は、図2、図3に示すように、直線状に延びる棒状部材である。なお、図2に示す実施形態では一例として断面形状が三角形である場合について示しているが、円形、駒形、角形等あらゆる形状が使用可能であり三角形に限定されるわけではない。
【0021】
また、前記ロッド11は、前記棒状部材配列部12の径方向内側面を形成する内面11c(図3参照)に、ロッド11の長手方向に対して横切るように形成されるとともに、長手方向に所定ピッチで複数配置される溝11bを備えている。これらの溝11bは、前記棒状部材配列部12を形成した際に、その径方向内側に全体として一連の間欠的な螺旋溝を形成するようになっている。すなわち、各ロッド11が棒状部材配列部12を形成すると、棒状部材配列部12の軸心をほぼ中心とする雌ネジ相当のネジ溝構成部12aを構成するようになっている。
【0022】
前記円環状部15は、ワイヤー部材13を巻回されて構成されている。すなわち、図2、図3に示すように前記棒状部材配列部12の径方向外側面を形成するロッド11の外面に当接するように、前記ワイヤー部材13が棒状部材配列部12の円周方向に所定ピッチで巻回されている。そして、隣り合うワイヤー部材13同士が所定の間隙14bを有する状態で、前記ロッド11の外面と前記ワイヤー部材13とが当接する交点11aを電気抵抗溶接により溶接され、この間隙14bを通じて流体の流入・流出が可能になっている。具体的には、例えば図1に示すように前記間隙14bが地下水層wに位置すると地下水層wから地下水が間隙14bを通じて流入するようになっている。すなわち、この間隙14bが設けられている範囲がスクリーン有効長となる。
【0023】
また、前記連結部材20は、図4に示すように、例えばステンレス鋼等の金属によって形成される中空状または中実状の円筒形状部材であり、その軸方向中央に胴部21を備えるとともに、その両端部には第1雄ネジ部22a及び第2雄ネジ部22bを備えている。したがって、例えば連結部材20の第1雄ネジ部22aをスクリーン10の長手方向端部に挿入しつつ、ネジが締結する方向に回転させれば、第1雄ネジ部22aのネジ山が間欠的に設けられたスクリーン10端部のネジ溝構成部12aに順次螺合していくことにより最終的にスクリーン10と連結部材20とが連結されるようになっている。
【0024】
また、前記ケーシング30は、鉄製又は樹脂製のパイプ状部材であり、地下水層w以外の個所に配置される。そしてケーシング30の長手方向端部には、上記連結部材20の雄ネジ部22a、22bと螺合するネジ溝を備えている。
【0025】
このように構成されたスクリーン10と連結部材20とを連結する場合には、図4(a)に示すように、連結部材20の端部に連結すべきスクリーン10を配置し、一方のスクリーン10のネジ溝構成部12a(不図示)に連結部材20の第1雄ネジ部22aを螺合させて固定する(図4(b))。次に他方のスクリーン10のネジ溝構成部12a(不図示)に連結部材20の第2雄ネジ部22bを螺合させて固定することによって行われる(図4(c))。
【0026】
また、前記スクリーン10と前記ケーシング30との連結においても、連結部材20と上記と同様にして、ケーシング30に設けたネジ溝に連結部材20の雄ネジ部22a、22bが螺合することによって連結することができる。
【0027】
したがって、本発明のスクリーン及びその連結構造では、従来必要であった各ロッド11と連結部材との溶接による作業を行うことなくスクリーン10同士、あるいはスクリーン10とケーシング30等とを連結することができるため、溶接作業が不要となると共に連結施工費用を削減することができる。
【0028】
さらに、本発明では溶接作業を伴わないため、スクリーン10に設けた間隙14bに熱の影響を与えることなく連結することができる。すなわち、従来では溶接作業を伴うため、溶接個所付近の間隙14bが溶接の熱による影響を受け、熱膨張等によりその精度に影響する場合もあったが、本発明のスクリーン及びその連結構造では熱が不要となるため、間隙14bの精度を保ったまま連結することができる。
【0029】
また、スクリーン10の内径側に連結部材20と連結するネジ溝構成部を設けたため、スクリーン長手方向の連結部分の短尺化を図ることができ、スクリーン有効長の損失を抑制できる。
【0030】
さらに、従来では2種類の連結片部を用意する必要があったが、本発明の連結構造においては1種類の連結部材20によってスクリーン10を連結することができる。したがって、連結するための部品コストを抑えることができる。
【0031】
また、本発明のスクリーン10は、上記実施形態に示すような井戸用に限らず、プラント等で使用されるインターナルエレメントとしても適用可能であり、この場合において、従来ではスクリーンと他の相手部材との連結部分にスクリーン又は連結片部にフランジを設けてボルト等で締結する場合もあったが、本発明の連結構造においては、スクリーン10とほぼ同径の連結部材20で連結できるため、連結部分の省スペース化が可能でありフランジを設ける等の不要なコストを削減することができる。
【0032】
また、上記実施形態では連結部材20を金属製である場合について説明したが、スクリーン10とケーシング30とが異種材料で形成されこれらを連結する場合、あるいは異種材料で形成したスクリーン10同士を連結する場合には、連結部材20を樹脂製としてもよい。この場合、異種金属同士の接合による電位差腐食が防止され、腐食の進行を抑制することができる。また、連結部材20の材料は、これらに限定されるものではなく、硬質ゴムやセラミックス等、ネジ加工可能なあらゆる材料が使用可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、スクリーン10を金属製のロッド11及びワイヤー部材13で形成する場合について説明したが、これらを樹脂製のロッド11及びワイヤー部材13で形成してもよい。この場合には、腐食環境に強いスクリーン10とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のスクリーンが地層内に埋め込まれた状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明のスクリーンの斜視図である。
【図3】本発明のスクリーンの端部における断面図である。
【図4】スクリーンと連結部材とを連結する様態を示す図であり、(a)は連結前の状態を示す図であり、(b)は一方のスクリーンを連結した状態を示す図であり、(c)は連結完了後の状態を示す図である。
【図5】従来のスクリーンの連結の様態を示す図であり、(a)は連結前の状態を示す図であり、(b)は連結の途中段階を示す図である。
【図6】従来のスクリーンの連結片部の接続状態を示す断面図である。
【図7】従来のスクリーンの連結片部の他の接続状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 スクリーン
11 ロッド(棒状部材)
11b 溝
12 棒状部材配列部
12a ネジ溝構成部
13 ワイヤー部材
14b 間隙
15 円環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒状部材が互いに所定間隔を有して略円筒状をなすように円周方向に配列される棒状部材配列部と、
前記棒状部材配列部の径方向外側に、ワイヤー部材が前記棒状部材の長手方向に所定間隔有するように巻回されて前記棒状部材に固定される円環状部と、
を備えたスクリーンにおいて、
少なくとも一方の前記棒状部材配列部の長手方向端部には、棒状部材配列部の軸心を中心とするネジ溝構成部が、棒状部材配列部の径方向内側に形成されていることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記請求項1に係るスクリーンと前記スクリーンを連結する連結部材とで構成されるスクリーンの連結構造において、
前記連結部材の両端に雄ネジ部が設けられ、前記連結部材の一方端の雄ネジ部と第1のスクリーンのネジ溝構成部が螺合し、前記連結部材の他方端の雄ネジ部と第2のスクリーンのネジ溝構成部が螺合することにより構成されることを特徴とするスクリーンの連結構造。
【請求項3】
前記連結部材は、樹脂製であることを特徴とする請求項2に記載のスクリーンの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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