スクリーン及び投射システム
【課題】画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができるスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムを提供すること。
【解決手段】スクリーン10では、光制御層3において、光の拡散制御を行う制御方向D1に関して、反射光の拡散分布を定める第1の角度領域ωがスクリーン10上の位置によって異なるものとなっている。これにより、スクリーン10の表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン10上の位置に応じて上端UE側ほど下方側に傾け、下端BE側ほど上方側に傾けるように調整することで、例えば拡散される角度範囲の大きさは30°のまま変えることなく、画像光の拡散射出される方向を想定される観察者の位置に応じたものとし、画像の明るさを維持しつつ投影画像を観察させることができ、かつ、観察距離Lを短くするように調整できる。
【解決手段】スクリーン10では、光制御層3において、光の拡散制御を行う制御方向D1に関して、反射光の拡散分布を定める第1の角度領域ωがスクリーン10上の位置によって異なるものとなっている。これにより、スクリーン10の表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン10上の位置に応じて上端UE側ほど下方側に傾け、下端BE側ほど上方側に傾けるように調整することで、例えば拡散される角度範囲の大きさは30°のまま変えることなく、画像光の拡散射出される方向を想定される観察者の位置に応じたものとし、画像の明るさを維持しつつ投影画像を観察させることができ、かつ、観察距離Lを短くするように調整できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンとして、所定範囲内の角度領域から入射した光を散乱又は拡散透過させ、かつ、所定範囲外の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御機能を有する特殊な構造の高分子膜からなる光制御層を備えるものが知られている(特許文献1参照)。なお、反射型のスクリーンについての技術ではないが、光の拡散を制御可能な光制御板として、散乱すべき光の入射角度を連続的に変化させるもの及びその製造方法が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
例えば、上記特許文献1のような光制御層を用いて、プロジェクター等からスクリーンに入射した入射光を制御するにあたって、入射時には光制御層を直進透過させ、当該入射光を所望の角度で反射させ、反射後の射出時には光制御層を拡散透過させて所定の角度範囲に拡散分布を有するように制御することで、光を拡散させつつもより明るい画像を映し出すことができる。さらに、光制御層の拡散角度と反射層の角度を制御することにより、スクリーンに対して所定の角度で入射するプロジェクターからの光を観察者のいる方向に向かわせ、かつ、プロジェクターからの光とは異なる角度で入射する外光を観察者のいない方向に向かわせることができ、スクリーンに表示される画像のコントラストを高めることができる。しかしながら、明るくコントラストの高い画像を観察できる領域は、スクリーンに対する角度だけでなく、スクリーンからの距離(観察距離)の影響も受けて定まる。上記特許文献1のようなスクリーンの場合、スクリーンで反射された画像光の拡散範囲を制限することになるので、例えば観察者がスクリーンに近づいて、スクリーンのうち中央側から射出される画像光の拡散範囲内であるが周辺側から射出される画像光の拡散範囲外である位置に達すると、スクリーン中央側の画像に比べて、周辺側の画像が急激に暗くなったり、見えなくなったりすることになる。また、そのような位置は、スクリーンを反射した外光の到達範囲にも入りうるため、画像の視認性が格段に悪くなることがある。このため、光制御層において画像光の拡散範囲を広げることも考えられるが、拡散範囲を広げるほど、光制御層を多くの層を積層した構造とする必要があるため、スクリーンが厚く、かつ、重くなってしまう。なお、上記のような光制御層を用いず、一般的なマット特性のスクリーンを用いれば拡散領域が広がってスクリーンにある程度近づいても上記のようなことは生じにくくなるが、画像光を広い範囲で拡散させるため、観察者にとっては暗い画像となる。
【0004】
また、上記特許文献2は、上記のように散乱すべき光の入射角度を変化させるような光制御板の技術については開示があるが、この光制御板を、プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンに適用することについての開示や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69836号公報
【特許文献2】特開平2−51101号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができるスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)基板と、(b1)基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、(b2)複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する(b)光反射層と、(c)光反射層の表面側に形成され、基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向を含むとともに基板の主面に垂直な機能断面において、光反射層に入射する光を通過させるとともに、光反射層で反射された反射光を拡散させる光制御層と、を備えるスクリーンであって、(d)光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて、反射光の拡散分布を異なるものとしている。
【0008】
上記スクリーンでは、光制御層において、光の拡散制御を行う所定の制御方向に関して、反射光の拡散分布が基板の主面上の位置によって異なるものとなっている。これにより、反射光を拡散させることでスクリーン表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン上の位置に応じて調整できるので、例えば拡散される角度範囲の大きさは変えることなくその方向を想定される観察者の位置に応じたものとすることで、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、光制御層が、所定の制御方向に対応する機能断面において他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性を示し、基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる。この場合、光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させて、効率的に光の透過及び拡散の制御をすることができる。
【0010】
本発明の別の側面では、光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて第1の角度領域を連続的に変化させている。この場合、拡散範囲の変化を滑らかにして拡散の度合の境目ができることを抑制できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて複数に分割される部分領域で構成され、各部分領域内では同一で部分領域間では互いに異なる第1の角度領域を有し、段階的に変化させている。この場合、複数の部分領域を個別に作製することで、構造を簡略化することができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、光制御層は、所定の制御方向に対応する機能断面において第1の角度領域の中心となる拡散中心軸が射出方向の先側で狭まる方向に向くように第1の角度領域を変化させている。この場合、特定の方向にいる観察者に対して画像光を集中させることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、光制御層は、拡散中心軸が一点で交差するように第1の角度領域を変化させている。この場合、より特定された狭い範囲にいる観察者に対して画像光を集中させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、所定の制御方向が、入射する光の中心光束である基準光の光路方向を基板の主面に正射影した基準方向に対して平行である。この場合、光制御層の制御方向を、例えばプロジェクター等の画像投射装置からの投射光に対応させることができ、投射光を効率的に利用して表示を行うことができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、所定の制御方向が、基板の長手方向に対して垂直な方向である。この場合、例えば横長のスクリーンに対して縦方向を所定の制御方向として下方投射や上方投射による画像投射を行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る投射システムは、(a)上記いずれかのスクリーンと、(b)投影画像となる入射光をスクリーン上に向けて所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、を備える。この投射システムは、上記いずれかのスクリーンに画像投射装置からの投射光を投射することにより、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るスクリーン及び投射システムを示す図である。
【図2】スクリーンの構造を説明するための側断面図である。
【図3】スクリーンの光制御層について説明するための図である。
【図4】スクリーンの光反射層について説明するための図である。
【図5】スクリーンの動作の概要について説明するための図である。
【図6】スクリーンによる投射光の拡散について説明するための一部拡大図である。
【図7】(A)は、光制御層の動作について説明するための図であり、(B)は、比較例の図である。
【図8】(A)は、スクリーンの動作についての一実施例を示す図であり、(B)は、比較例のスクリーンの動作についての一実施例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係るスクリーンを説明するための図である。
【図10】第3実施形態に係るスクリーンを説明するための図である。
【図11】第4実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るスクリーン及びスクリーンを含む投射システムについて説明する。
【0019】
〔A.投射システムの構造〕
図1に示すように、本実施形態の投射システム100は、スクリーン10と、プロジェクター50とを備える。
【0020】
プロジェクター50は、室内の天井に天吊り支持された状態でスクリーン10に近接して設置されている。つまり、プロジェクター50による投射は、上側からの近接投射すなわち−Y方向に偏った−Z方向への極端な斜め投射となっている。
【0021】
スクリーン10は、図1から図4に示すように、図中水平方向すなわちX方向を長手方向とし、垂直方向すなわちY方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その正面側すなわち略+Z側に設置されたプロジェクター50からの入射光PLを、折り返すことによって正面側すなわち略+Z側に反射光として射出させる反射型スクリーンである。より具体的には、プロジェクター50から斜め下方に射出される入射光PLが、スクリーン10のXY面に平行な主面1aに向けて投射され、主面1a上に設けたフレネル形状を有する微細構造によって、正面側に反射されることで、略+Z側にいる観察者EYに投影画像が提供される。なお、図1等に示すように、近接投射であることから、入射光PLの入射角ξは、ある程度の角度範囲をもった状態となっている。また、図中において、主面1aの法線方向(Z方向)については、法線ZXにより示すものとし、入射光PLの入射角ξは、法線ZXに対する角度で規定される。
【0022】
図3及び図4に示すように、プロジェクター50からの投射光であるスクリーン10への入射光PLは、プロジェクター50の投射点SSからスクリーン10の主面1aの中央を通ってY方向に延びスクリーン10を対称に2分する中心線である中心軸LXを基準としてX方向について対称な状態で投射されている。見方を変えると、入射光PLの投射点SSは、プロジェクター50のレンズから主面1aに対して下した垂線が中心軸LXと交差する位置にあり、入射光PLは、スクリーン10の中心軸LX上のスクリーン中心点Oを基本として、スクリーン10に投影される範囲に応じた特定の角度範囲で入射するものとなっている。なお、スクリーン中心点Oは、主面1a上の点であり、Y方向に延びる中心軸LXとX方向に延びる軸MXとの交点である。つまり、基板1の中心部分である。
【0023】
ここで、図1に示すように、角度範囲をもって入射する入射光PLのうち、スクリーン中心点Oに向かう成分を基準光PLcとする、この基準光PLcの光路方向を、基準入射方向SIとし、さらに、基準入射方向SIを基板1の主面1aに正射影した方向を、入射光PLのスクリーン10における入射方向の基準となる基準方向SDとする。この場合、基準方向SDは、入射光PLの光源の基準となる点である投射点SSに対応し、また、主面1aに平行であり、特に、中心軸LXに平行な方向すなわちY方向となっている。また、プロジェクター50による投射は上方からの近接投射であるため、プロジェクター50からスクリーン10の各点に入射する入射光PLの入射角ξの大きさは、スクリーン10の上方側すなわちプロジェクター50の光源側に近づくほど小さくなる。
【0024】
〔B.スクリーンの構造〕
以下、図2等を参照して、スクリーン10の構造の詳細について説明する。まず、図2〜図4に示すように、スクリーン10は、横長の長方形状の外観を構成するシート状の基板1を備える。さらに、図2に示すように、スクリーン10は、基板1の表面側に形成される光反射層2と、光反射層2の表面側に形成される光制御層3と、光制御層3の表面側を覆う保護層20とを備える。
【0025】
基板1は、+Z側の面としてスクリーン10の基準面となる主面1aを有する。この主面1aは、XY面に平行で、スクリーン10への入射光PLの入射や反射の基準となる表示平面となっている。なお、基板1は、例えば光吸収性の樹脂材料で作製されており、可撓性を有する。
【0026】
光反射層2は、基板1の主面1a上に形成される複数のプリズム部分2aと、複数のプリズム部分2aの表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部PPと、入射した光を吸収するための光吸収部ASと、これらを保護するとともに光反射層2の表面2cを形成する平準化層2bとを有する。光反射層2の表面2cは、XY面に平行な表示平面としての主面1aに平行な面となっている。
【0027】
複数のプリズム部分2aは、図4等に示すように、同心円弧状に隙間なく配列されたフレネル形状を形成している。ここで、図2に示すように、当該同心円弧状の中心CFは、主面1aを周囲に延長した平面H1上にあり、入射光PLの投射点SSに対応して、スクリーン10の中心線である中心軸LX上に設定されている。つまり、投射点SSから表示平面である主面1aに対して垂直に下ろした線L1と平面H1との交点を交点SXとすると、中心CFと交点SXとは、ともに中心軸LX上に配置されている。
【0028】
また、光反射層2のうち、例えば図5に示すスクリーン10の中央部分についての断面において、隙間なく配列された各プリズム部分2aの表面部分は、主面1aよりも上方すなわち+Y方向に傾いている面である第1傾斜面S1と、主面1aよりも下方すなわち−Y方向に向けて傾いた面である第2傾斜面S2とで形成されている。各プリズム部分2aが連続することで、各傾斜面S1,S2が交互に連なった状態となっている。これにより、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10の中央部分での配列方向であるY方向について上端から下端までの全体として、断面鋸歯状となっている。さらに、プリズム部分2aは、中心CFを基準として同心円弧状に配列されているため、中心CFを通る他の断面についても同様の形状を有している。つまり、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10全体に亘って断面鋸歯状となっている。両傾斜面S1,S2のうち第1傾斜面S1上にアルミ蒸着等によって反射膜が設けられることで、光反射部PPが形成されている。なお、第2傾斜面S2である光吸収部ASは、入射する不要光を基板1側に通過させる。光吸収部ASを通過した不要光は、基板1で吸収される。これにより、スクリーン10は、コントラスト低下を抑制することができる。光吸収部ASは、例えば黒色塗料の塗布等で形成されるものとでき、この場合、光吸収部AS自体によって入射する不要光を吸収することができる。このほか、例えば各プリズム部分2a及び基板1を光透過性樹脂とし、基板1の裏面側に黒色塗料を塗布するものとしてもよい。
【0029】
光制御層3は、平準化層2bの表面2c上に形成されている。光制御層3は、特殊な高分子膜と透明プラスチック材料とを複合化することで構成され、内部に当該高分子膜と透明プラスチック材料とによる回折格子状の特異的な規則構造を有する。この構造により、光制御層3は、基板1の主面1aに平行な方向のうち所定の方向を含むとともに基板の主面に垂直な断面において光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという光学特性を有する(詳細については、特許文献1参照)。ここでは、上記のように光制御層3において光制御の基準となる所定の方向を制御方向と呼ぶこととする。本実施形態の場合、図示のように、制御方向D1は、基準方向SDに平行すなわちY方向に沿っているものとする。光制御層3は、光学特性として以上のような入射角選択性を有することにより、制御方向D1における入射角が規定の範囲内の角度で入射する光を拡散透過させ、かつ、制御方向D1における入射角が規定の範囲外の角度で入射する光を直進透過させるものとなっている。さらに、光制御層3において、光を拡散透過させるか直進透過させるかの境界となる角度の大きさすなわち拡散させる範囲の幅については一定である(例えば30°)ものとするが、その向きすなわち一定の角度範囲の設定を法線ZXの方向を0°として仰角と俯角とに何度ずつとするかについては、制御方向D1に関する位置によって連続的に変化するものとなっている。具体的には、例えばスクリーン10の中央においては、制御方向D1すなわちY方向に関して、当該角度範囲の設定が均等になっている、つまり、法線ZXの方向を0°として仰角15°かつ俯角15°となっている。これに対して、スクリーン10の+Y側(上端側)においては、当該角度範囲の設定が仰角0°かつ俯角30°となっており、−Y側(下端側)においては、当該角度範囲の設定が仰角30°かつ俯角0°となっており、その中間では当該角度範囲が連続的に変化していくものとなっている。なお、このような構造を有する光制御層3の作製の詳細については、特許文献2に記載があるが、光制御層3を構成する規則構造を形成させるための光の照射において、その照射方向を変化させることで所望の構造が作製できる。また、光制御層3において、表側すなわち+Z側の表面3bは、表示平面である主面1aに平行な面となっている。
【0030】
保護層20は、光制御層3の表面3b上すなわち+Z側に形成され、スクリーン10の主要部をなす光反射層2及び光制御層3を保護している。なお、保護層20が不要で省略される場合には、表面3bが、スクリーン10の最表面となる。
【0031】
〔C.スクリーンによる入射光に対する動作〕
以下、図5を用いてスクリーン10による入射光PLに対する動作の概要について説明する。図5は、中心軸LXに沿った断面でありスクリーン10の反射拡散の機能を示す機能断面DSを示している。つまり、この機能断面DSは、YZ面に平行な面であり、制御方向D1を含む面となっており、かつ、スクリーン10の主面1aに対して垂直な面である。この場合、光制御層3は、制御方向D1に対応する機能断面DSにおいて、他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性すなわち上記のようなドラスティックな変化を示すものとなる。
【0032】
まず、スクリーン10の中心軸LX上の位置において、法線ZXに対して+Y側から特定の入射角ξで入射する入射光PLは、保護層20を通過し、さらに光制御層3においても、規定の範囲外の角度で入射する光として拡散されることなく直進透過する。次に、入射光PLは、光反射層2の反射面PSに入射する。ここで、反射面PSは、主面1aに対して、微小な傾斜角度αだけ+Y側を向くように傾いている。これにより、入射光PLは、Y方向についての入射角が変えられた反射光RLとなって光制御層3に向けて折り返される。この反射光RLは、往路の入射光PLとは入射角が異なる状態で光制御層3に入射する。ここで、反射面PSの傾斜角度αは、例えば図2に示す+Y側の領域P1と中央側の領域P2と−Y側の領域P3とで異なる値となっている、すなわち、傾斜角度αは、入射光PLの入射角のみならず光制御層3の構造にも対応して、Y方向すなわち制御方向D1に沿って変化している。これにより、反射光RLは、所望の範囲内の角度で入射する光として光制御層3を拡散透過する。つまり、図5に示すように、反射光RLは、適度に拡散された状態の投影画像光FLとなってスクリーン10から+Z側に射出される。
【0033】
以下、図6等により、スクリーン10のうち光制御層3を中心に上記動作についてより詳しく説明する。ここで、図6は、スクリーン10のうち中央部分において制御方向D1に沿った断面の一部分を拡大した図である。
【0034】
まず、光制御層3は、第1の角度領域ωvから入射した光を規定の範囲内の角度で入射する光として拡散透過させ、かつ、これ以外の範囲である第2の角度領域ηから入射した光を直進透過させる性質を有する膜で構成されている。つまり、第1の角度領域ωvは、光を拡散させる角度範囲を示している。ここでは、第1の角度領域ωvは、法線ZXの方向を基準の入射角0°として、制御方向D1に関して例えば約30°の角度範囲に亘っており、法線ZXを挟んで法線ZXから上方側である仰角すなわち+Y側についての角度ωHの領域と、法線ZXから下方側である俯角すなわち−Y側についての角度ωLの領域とで構成されているものとする。つまり、角度ωHの大きさが上方側についての拡散透過させる範囲である臨界角度を示し、角度ωLの大きさが下方側についての拡散透過させる範囲である臨界角度を示すものとなっている。なお、図6は、スクリーン10のうち中央部分であり、法線ZXの方向を基準となる入射角0°として角度ωH側を正の角度、角度ωL側を負の角度とし、その絶対値すなわち角度ωHと角度ωLとの大きさは等しい又はほぼ等しいものとなっている。つまり、角度ωH,ωLの大きさは、ともに約15°となっている。なお、詳しくは後述するが、スクリーン10の周辺に向かって角度ωHと角度ωLとは、その合計である第1の角度領域ωvの大きさを約30°に保ちつつ変化している。
【0035】
以上のような光制御層3において、入射角ξの入射光PLが直進透過するか拡散透過するかについては、臨界角度ωH,ωLに対して大きいか否かによって定まる。ここでは、図示のように、入射角ξは、第1の角度領域ωvのうち臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとなっているように調整されているものとする。つまり、入射角ξは、角度εの分だけ第1の角度領域ωvより外側となっており、第2の角度領域ηの内側の領域に含まれる角度となっている。これにより、入射時における入射光PLは、光制御層3において拡散されることなく直進透過して、光反射層2に向かうものとなる。この場合、入射光PLは、光制御層3の通過後においても拡散していないので、屈折により角度の変化はあっても、角度分布の広がりを持つことなく光反射層2に入射するので、入射光PLの反射面PSでの反射角度は、設計通りの比較的正確なものとなる。光制御層3を経た入射光PLは、光反射層2の反射面PSにおいて、反射面PSにより方向を変えられて光制御層3側に折り返される。この際、反射面PSが表示平面に対して傾斜角度αだけ傾いている。傾斜角度αが適宜調整されていることにより、入射光PLを折り返した成分である反射光RLは、法線ZXに対して+Z方向を基準として時計回りの方向に微小な角度γだけ傾いた状態となって光制御層3に入射する。この角度γは、傾斜角度αの調整によって臨界角度ωHよりマージン角度Δωの分だけ小さいものになっている。つまり、反射光RLの光制御層3への入射角度である角度γが、マージン角度Δωの分だけ第1の角度領域ωvの範囲内の角度となっていることで、反射光RLは、光制御層3の通過時において確実に拡散透過して正面側に射出される。以上のような動作がスクリーン10上に入射するすべての入射光PLに対してなされることで、例えば図5に示すように、投影画像光FLが、適度に拡散された状態で射出される。なお、以上では、図6に示すスクリーン10のうち中央部分について説明しているが、中央部分よりも+Y側や−Y側の周辺部分においても傾斜角度αが適宜調整されていることにより、反射光RLの光制御層3への入射角度である角度γがマージン角度Δωの分だけ第1の角度領域ωvの範囲内の角度となるようにできる。
【0036】
ここで、マージン角度Δωの値の最小値は、5°以上とすることが望ましい。つまり、反射光RLの光制御層3への入射角度が、第1の角度領域ωvの上限より5°以上の差を有し、第1の角度領域ωvに対して十分なマージンがあることで、光制御層3への外部からの通過時において、確実に拡散されるものとなる。なお、以上は一例であり、マージン角度Δωとして十分な値は、これに限らず、光制御層3として用いる材料・構造等によって適宜定めることができる。なお、入射時の入射角ξについては、第1の角度領域ωvの臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとしているが、角度εについても、例えば5°以上とすることで、十分なマージンがとれ、確実に直進透過するものとなる。
【0037】
〔D.光制御層の制御方向に関する反射光の拡散分布の変化〕
以上のように、本スクリーン10では、入射光PLを反射して反射光RLとし、この反射光RLを適度に拡散させて投影画像光FLとなって射出することで画像が認識される。このため、反射光RLの拡散分布を決定することすなわち第1の角度領域ωvによって定まる光を拡散させる角度範囲を決定することで、スクリーン10における観察可能な範囲が定まる。
【0038】
特に、本実施形態では、図7(A)に一例を示すように、制御方向D1すなわちY方向に関してスクリーン10の位置に応じて第1の角度領域ωvの向きを変化させている。つまり、図6を用いて説明したように、第1の角度領域ωvの大きさは保ちつつ仰角の臨界角度ωHと俯角の臨界角度ωLとの割合を変化させている。これによって、スクリーン10における観察可能な範囲がより広くなっている。より具体的に説明すると、図7(A)に示すように、まず、光制御層3において、第1の角度領域ωvは、スクリーン10の位置を問わず、拡散の大きさ或いは範囲は、30°となっている。また、スクリーン10の中央側である中心Oでは、第1の角度領域ωvの内訳が、仰角の領域である臨界角度ωHについても、俯角の領域である臨界角度ωLについても15°であり、等しく分配されている。これに対して、スクリーン10のうち上端UE側すなわち+Y側では、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωLと等しくなるように傾いている。一方、スクリーン10のうち下端BE側すなわち−Y側では、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωHと等しくなるように傾いている。さらに、光制御層3のうち上記した中心O及び上端UE、下端BEの中間位置では、第1の角度領域ωvの傾き度合は、制御方向D1に沿って連続的に変化している。すなわち、中心Oから上端UE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に増加し、かつ、臨界角度ωHが減少している。逆に、中心Oから下端BE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に減少し、かつ、臨界角度ωHが増加している。なお、この際、図2等に示す光反射層2において、複数の反射面PSの傾斜角度αは、上記のような光制御層3の内部構造に応じてそれぞれ調整されている。つまり、図7(A)において角度γが適宜調整されている。以上のような構造を有することによって、スクリーン10は、上方側の画像についてより下方側に拡散させ、下方側の画像についてより上方側に拡散させることで、スクリーン映像が均一に認識できる範囲を広げている。逆に言うと、均一に認識できない領域を減らしている。
【0039】
例えば、図7(B)に示す第1の角度領域ωvの向きが変化することなく一定である比較例の場合では、図7(A)に示す場合と比べると、スクリーン10の周辺側である上端UE側或いは下端BE側から射出される画像光を観察できない領域が広くなる。具体的には、図7(A)と図7(B)とについて、例えば上端UE側から下方へ向かう拡散限界を示す臨界角度ωLの下端側を延長した下方臨界線LLを比較すると、第1の角度領域ωvが下方に向いている図7(A)の方が、第1の角度領域ωvの変化がない図7(B)よりも下方に向けて大きな角度となっている。また、下端BE側から上方へ向かう拡散限界を示す臨界角度ωHの上端側を延長した下方臨界線HLを比較すると、第1の角度領域ωvが上方に向いている図7(A)の方が、第1の角度領域ωvの変化がない図7(B)よりも上方に向けて大きな角度となっている。この場合、下方臨界線LLより+Y側の領域が上端UEを見ることのできる限界領域を示し、上方臨界線HLより−Y側の領域が下端BEを見ることのできる限界領域を示すものとなるため、各臨界線LL,HLを結んだ点を交点XXとすると、この交点XXからスクリーン10までの観察距離Lがスクリーン10の全体を観察可能な限界点を示すものとなる。この場合、上記のことから、図7(A)と図7(B)とを比較すると、図7(A)の方が観察距離Lをより短くすることができるものであることが分かる。すなわち、観察可能な範囲をスクリーン10側により近づけることができる。
【0040】
なお、近接の下方投射の場合においては、例えば図2等に示すように、+Y側すなわち投射点SSに近い側ほど入射角ξの値が小さくなり、光制御層3を直進透過させにくくなるが、これに対して、本実施形態のスクリーン10では、投射点SSに近い側ほど、第1の角度領域ωvを−Y側に偏った側に向けるものとなっているため、スクリーン10のどこにおいても十分な値の角度ε(図6参照)を確保でき、入射光を確実に直進透過させることができる。
【実施例1】
【0041】
以下、図8(A)等を用いて本実施形態の一実施例について説明する。ここで、図8(A)は、図7(A)に対応する実施例である。なお、図8(B)は、図7(B)の比較例に対応する実施例である。図8(A)では、図示のように、中心点Oが地上から垂直方向(Y方向)に1.4mとなる位置にスクリーン10を配置している。また、プロジェクター50からの入射光PLの入射角度は、法線ZXを基準すなわち角度0°として、上端UE側において26.3°、下端BE側において65.4°となっている。なお、既述のように、光制御層3について、第1の角度領域ωvの大きさを30°とし、上端UE側において臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であり、下端BE側において臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°である。なお、中心点Oから上端UE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に増加するように連続的に変化しており、中心点Oから下端BE側に向かって、臨界角度ωHが徐々に増加するように連続的に変化しているものとする。この場合、スクリーン10から交点XXまでの観察距離Lは、1.4mとなる。一方、図8(B)の実施例では、スクリーン10の構造が図7(B)の比較例のものとなっていることを除いて、図8(A)と同様に設計されており、この場合、観察距離Lは、5.23mとなる。
【0042】
また、図8(A)の実施例では、傾斜角度α(図2等参照)を適宜調整することで、角度γの値が、法線ZXを基準として上端UE側において−5°、下端BE側において25°となっている。つまり、マージン角Δω(図6参照)の値を最小限の5°としている。これにより、不要光である外光OLの分離性を高めたものとなっている。具体的には、例えば図示のように、地上から垂直方向(Y方向)に2.4mで、水平方向(Z方向)にスクリーン10から3.0mの位置に外光OLの光源である天井照明CEがあるものとすると、外光OLの入射角度は、上端UE側において14.5°となり、下端BE側において34°となる。これに対して、上記のように角度γが設定されている(すなわち図2等に示す傾斜角度αが調整されている)ことで、外光OLの反射角度は、上端UE側において6.3°、下端BE側において53°となる。この場合、上端UE側に入射した外光OLの反射成分は観察者PE側に向かわない。また、観察者PE側に比較的向きやすい下端BE側に入射した外光OLの反射成分でついても観察者PEに届きにくいものとなっている。具体的には、図示のように、例えば地上から1.4mにある中心点Oの高さを観察者PEの基準の高さ位置とすると、観察者PEは、外光OLの反射成分を受けることなくスクリーン10から0.7mの距離まで近づくことができるものとなる。これに対して、図8(B)に示す例の場合、第1の角度領域ωvが一定であるので、角度γも位置に関係なく常に一定となる。なお、図8(B)に示す場合では、上端UE側であるか下端BE側であるかを問わず、常に臨界角度ωLが20°で、臨界角度ωHが10°であり、マージン角を5°として角度γが5°に設定されている。この場合、図8(A)の実施例と同様の天井照明CEがあると、観察者PEは、スクリーン10から1.64mの距離以内に近づくと、下端BE側に入射した外光OLの反射成分を受けることになる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、不要光である外光OLの反射光が観察者PEの眼に直接飛び込んでしまうという現象が発生する領域を狭めるよう調整することができる。
【0044】
上記の投射システム100のように部屋の天井側といった上方から斜方投射を可能とするタイプのものは、人や物がスクリーン10側にある程度近づいても、これらが画像投影の際の投射光を遮らないものとなるので、例えばプレゼンテーションや教室での授業において、プレゼンター等の話者がスクリーン10側に近づいた位置に立って説明をするといった使用態様に適したものとなる。しかしながら、外光OLが直接的に反射するすなわち正反射すると、その成分が話者の眼に飛び込んでしまうと、上記のような使用態様ができなくなる。これに対して本実施形態では、上記のような外光の制御についても可能とすることで、例えば投射システム100を用いてプレゼンテーションを行うといった場合に、外光OLの正反射を気にすることなくプレゼンターがスクリーン10側に近づくことが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン10では、光制御層3において、光の拡散制御を行う制御方向D1に関して、反射光RLの拡散分布を定める第1の角度領域ωがスクリーン10上の位置によって異なるものとなっている。これにより、スクリーン10の表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン10上の位置に応じて上端UE側ほど下方側に傾け、下端BE側ほど上方側に傾けるように調整することで、例えば拡散される角度範囲の大きさは30°のまま変えることなく、画像光の拡散射出される方向を想定される観察者の位置に応じたものとし、画像の明るさを維持しつつ投影画像を観察させることができ、かつ、観察距離Lを短くするように調整できる。
【0046】
また、図2等では、中心CFと交点SXとは、中心軸LX上において離間した状態のものを示している。この距離は、図1のようにプロジェクター50を設置する環境等に対応するためのマージンに相当し、ある程度の範囲を許容している。ただし、当該距離が0すなわち中心CFと交点SXとを一致させることができれば、そのような配置としてもよい。この場合、入射光PLの入射角ξとスクリーン10の各光反射層2の傾斜角度αとの関係が最適化され、入射光PLをより確実に観察者EYのいる正面側すなわち略+Z側へ折り返すことができる。
【0047】
また、光反射層2において、円弧状に沿って配列される複数のプリズム部分2aの曲率半径を必要により適宜調整して、複数の光反射部PPの各反射面PSの傾きのスクリーン10内における分布を調整してもよい。一般に、フレネルプリズム反射面の収差の影響は、スクリーンの周辺側ほど受けやすい。このため、スクリーン10においても、周辺側において角度γの角度のズレが生じやすいが、曲率半径を調整することで、このズレを補正することができる。
【0048】
なお、詳しい説明を省略するが、プロジェクター50を室内の床側に設置して下方からの近接投射とする場合にも、同様の投射システム100を構成することが可能である。
【0049】
また、光反射部PPの表面は、光を反射する反射面PSとなっている。第1傾斜面S1の主面1aに対する傾斜角度αは、光反射部PPの傾きすなわち反射面PSの傾きを決定する。つまり、同心円弧状に配列される各プリズム部分2aにおいて、傾斜角度αは、入射光PLの入射角ξの差に応じて異なるものとなっており、円弧状に形成される1つのプリズム部分2aの反射面PSに入射する入射光PLは、略同一の入射角ξを有する。傾斜角度αは、光制御層3の構造のみならず、この入射角ξにも応じて設定されているので、当該プリズム部分2aに入射する入射光PLは、スクリーン10の中央側だけでなく周辺側で入射するものについても±X方向についていずれにも極端に傾くことなく確実に略+Z側に折り返される。以上のことは、全てのプリズム部分2aについて同様である。つまり、すべての入射光PLは、各プリズム部分2aの反射面PSによって確実に略+Z側に折り返されるものにできる。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、図9により、第2実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システム200は、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、全体の詳細な説明については省略する。また、第1実施形態の同符号のものについては、特に説明をする場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
【0051】
図9に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン110において、光制御層103は、光を拡散させる角度範囲を示す第1の角度領域ωvを、より狭い範囲に限っている。つまり、第1実施形態の例示では、拡散範囲をある程度確保するため、第1の角度領域ωvの大きさの一例を約30°としていたが、本実施形態では、これよりも狭いものとすることができる。さらに、図示のように、制御方向D1に関して各位置に応じて異なった傾きを有する第1の角度領域ωvにおいて、第1の角度領域ωvの中心となる拡散中心軸ωcが、射出方向である+Z方向に進むにつれてすなわち射出方向の先側で狭まる方向に向いており、全ての拡散中心軸ωcが、観察者PEの眼EYの位置の一点で交差するものとなっている。図示の場合、眼EYがスクリーン110の中心Oから法線方向すなわち+Z方向に延長した線上であって、スクリーン110から距離LKの位置にあるものと想定し、これに合わせて光制御層103の第1の角度領域ωvの大きさや拡散中心軸ωcの方向を設定している。具体的には、Y方向について、中央である位置Mでは、中心軸ωcが法線ZXに沿っているのに対して、+Y側である位置H及び−Y側である位置Lでは、中心軸ωcが法線ZXから同じ傾斜角βの大きさで位置Hでは下向きに傾いており、位置Lでは上向きに傾いている。つまり、観察者PEの眼EYの位置に合わせて調整することができるものとなっている。この場合、想定した観察者PEの眼EYの特定位置に絞って画像光を射出させることができる。
【0052】
本実施形態の場合、第1の角度領域ωvの拡散範囲をより狭くすることで、対象となる観察者PEにのみ画像を提供し、対象となる観察者PE以外に画像を見せないようにすることができる。また、この場合、拡散範囲を狭くすることで、明るい画像を提供しやすくなる、または、光源が比較的小さくても十分な明るさを得ることができる。
【0053】
〔第3実施形態〕
以下、図10により、第3実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システム300は、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、全体の詳細な説明については省略する。また、第1実施形態の同符号のものについては、特に説明をする場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
【0054】
図10に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン210において、光制御層203は、制御方向D1に関して、スクリーン10の位置に応じて+Y側と中央側と−Y側とで3つに分割される部分領域10H,10M,10Lで構成されている。各部分領域10H,10M,10L内では、それぞれ第1の角度領域ωvが変化することなく一定の向きに揃っているが、部分領域10H,10M,10L間では、第1の角度領域ωvの向きが互いに異なるものとなっている。具体的には、まず、中央側に位置する部分領域10Mでは、第1の角度領域ωvの内訳が、仰角の領域である臨界角度ωHについても、俯角の領域である臨界角度ωLについても15°であり、等しく分配されている。これに対して、+Y側に位置する部分領域10Hでは、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωLと等しくなるように傾いている。一方、−Y側に位置する部分領域10Lでは、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωHと等しくなるように傾いている。
【0055】
本実施形態の場合、光制御層203が複数の部分領域10H,10M,10Lを有することで、第1の角度領域ωvを段階的に変化させることができ、これにより、画像の明るさを維持しつつ観察できる観察距離Lを近づけることができる。
【0056】
なお、上記では一例として、光制御層203は、3つに分割された部分領域で構成されるものとしているが、分割する数は、これに限らず、例えばもっと多くの部分領域で構成するものとしてもよい。また、上記のような縦方向すなわちY方向についての分割に限らず、横方向すなわち+X方向について分割してもよい。
【0057】
〔第4実施形態〕
以下、図11により、第4実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンの構造についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0058】
図11に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン310は、光反射層2と光制御層3との間に、光制御層3と同一の構造である第2の光制御層4をさらに有するものとなっている。ただし、第2の光制御層4は、主面1aの法線方向に対するX方向の傾きについて入射角選択性を示すすなわちX方向を制御方向とする点で光制御層3と異なる。これにより、スクリーン210は、X方向すなわち横方向についてより広く光を拡散させることが可能となっている。
【0059】
第2の光制御層4については、このほか、入射角選択性を示すことなくすなわち入射角によらずX方向について拡散させる特性を有する光拡散性の層を用いるものとしてもよい。
【0060】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
上記では、光制御層3は、拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという入射角選択性を有するものとしているが、光制御層3は、入射角選択性を示すことなくすなわち入射角によらずX方向について拡散させる特性を有する光拡散性の層を用いるものとしてもよい。光制御層3として、例えば反射光RLの射出方向を基準として正規分布に従って光を拡散させるような性質を有するものを用いるものとしてもよい。この場合、入射角選択性を有する場合に比べて、拡散透過の変化がなだらかなものとなる。
【0062】
また、上記では、例えば図9の拡散中心軸ωcで示されるように、画像光が、全体として+Z方向に進むにしたがってスクリーン10の中心Oから延びる法線ZXに集まるように射出されているが、これとは逆に、法線ZXから離れて周辺に広がっていくように第1の角度領域ωを調整することもできる。また、スクリーン10の中心Oから延びる法線ZX以外の方向や位置に集まるように第1の角度領域ωを調整することもできる。例えば、スクリーンが上方に位置し、観察者が見上げるようにしてスクリーンを観察する場合には、第1の角度領域ωが全体として下方に偏って変化するものであってもよい。
【0063】
また、上記では、光反射層2において、複数のプリズム部分2aは、同心円弧状に隙間なく配列されフレネル形状を有するものとしているが、入射光PLを確実に正面側に折り返すものであれば、複数のプリズム部分2aの配列や形状は、これに限らず、例えば同心円弧を変形した楕円状の曲線に沿って平行に配列されるものであってもよい。また、各プリズム部分2aも輪帯状のもの以外でもよく、例えば複数のブロック状のプリズムを同心円弧状の曲線に沿って並べることで、1つのプリズム部分としての機能を持たせる構成としてもよい。
【0064】
また、上記では、複数のプリズム部分2aは、例えばフレネル形状といった同心円弧状としているが、これは、投射システム100が近接投射であり、X方向について中央側と周辺側とで入射角が大きく異なるためになされるものである。従って、投射システム100が近接でない投射の場合には、各プリズム部分2aの形状を直線状(バー状)とすることもできる。
【0065】
また、上記では、入射光PLを正面側あるいは略正面側に観察者がいることを想定しているため、折り返すべき方向についても正面側あるいは略正面側としているが、観察者が正面側以外の位置にいる場合には、これに応じて入射光PLを折り返す方向を適宜変更できる。
【0066】
また、上記では、図11に示す第4実施形態のスクリーン310において、光反射層2と光制御層3との間に第2の光制御層4を設ける構成としているが、光制御層3と第2の光制御層4とを入れ替えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,110,210,310…スクリーン、 1…基板、 1a…主面、 2…光反射層、 2a…プリズム部分、 2b…平準化層、 3,103,203…光制御層、 4…第2の光制御層 20…保護層、 PP…光反射部、 PS…反射面、 AS…光吸収部、 50…プロジェクター、 100…投射システム、 PL…入射光、 D1…制御方向、 SD…基準方向、 ξ…入射角、 α…傾斜角度、 β…傾斜角、 ω…第1の角度領域、 η…第2の角度領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンとして、所定範囲内の角度領域から入射した光を散乱又は拡散透過させ、かつ、所定範囲外の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御機能を有する特殊な構造の高分子膜からなる光制御層を備えるものが知られている(特許文献1参照)。なお、反射型のスクリーンについての技術ではないが、光の拡散を制御可能な光制御板として、散乱すべき光の入射角度を連続的に変化させるもの及びその製造方法が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
例えば、上記特許文献1のような光制御層を用いて、プロジェクター等からスクリーンに入射した入射光を制御するにあたって、入射時には光制御層を直進透過させ、当該入射光を所望の角度で反射させ、反射後の射出時には光制御層を拡散透過させて所定の角度範囲に拡散分布を有するように制御することで、光を拡散させつつもより明るい画像を映し出すことができる。さらに、光制御層の拡散角度と反射層の角度を制御することにより、スクリーンに対して所定の角度で入射するプロジェクターからの光を観察者のいる方向に向かわせ、かつ、プロジェクターからの光とは異なる角度で入射する外光を観察者のいない方向に向かわせることができ、スクリーンに表示される画像のコントラストを高めることができる。しかしながら、明るくコントラストの高い画像を観察できる領域は、スクリーンに対する角度だけでなく、スクリーンからの距離(観察距離)の影響も受けて定まる。上記特許文献1のようなスクリーンの場合、スクリーンで反射された画像光の拡散範囲を制限することになるので、例えば観察者がスクリーンに近づいて、スクリーンのうち中央側から射出される画像光の拡散範囲内であるが周辺側から射出される画像光の拡散範囲外である位置に達すると、スクリーン中央側の画像に比べて、周辺側の画像が急激に暗くなったり、見えなくなったりすることになる。また、そのような位置は、スクリーンを反射した外光の到達範囲にも入りうるため、画像の視認性が格段に悪くなることがある。このため、光制御層において画像光の拡散範囲を広げることも考えられるが、拡散範囲を広げるほど、光制御層を多くの層を積層した構造とする必要があるため、スクリーンが厚く、かつ、重くなってしまう。なお、上記のような光制御層を用いず、一般的なマット特性のスクリーンを用いれば拡散領域が広がってスクリーンにある程度近づいても上記のようなことは生じにくくなるが、画像光を広い範囲で拡散させるため、観察者にとっては暗い画像となる。
【0004】
また、上記特許文献2は、上記のように散乱すべき光の入射角度を変化させるような光制御板の技術については開示があるが、この光制御板を、プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンに適用することについての開示や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69836号公報
【特許文献2】特開平2−51101号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができるスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)基板と、(b1)基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、(b2)複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する(b)光反射層と、(c)光反射層の表面側に形成され、基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向を含むとともに基板の主面に垂直な機能断面において、光反射層に入射する光を通過させるとともに、光反射層で反射された反射光を拡散させる光制御層と、を備えるスクリーンであって、(d)光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて、反射光の拡散分布を異なるものとしている。
【0008】
上記スクリーンでは、光制御層において、光の拡散制御を行う所定の制御方向に関して、反射光の拡散分布が基板の主面上の位置によって異なるものとなっている。これにより、反射光を拡散させることでスクリーン表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン上の位置に応じて調整できるので、例えば拡散される角度範囲の大きさは変えることなくその方向を想定される観察者の位置に応じたものとすることで、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、光制御層が、所定の制御方向に対応する機能断面において他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性を示し、基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる。この場合、光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させて、効率的に光の透過及び拡散の制御をすることができる。
【0010】
本発明の別の側面では、光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて第1の角度領域を連続的に変化させている。この場合、拡散範囲の変化を滑らかにして拡散の度合の境目ができることを抑制できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、光制御層が、基板の主面上の所定の制御方向に関する位置に応じて複数に分割される部分領域で構成され、各部分領域内では同一で部分領域間では互いに異なる第1の角度領域を有し、段階的に変化させている。この場合、複数の部分領域を個別に作製することで、構造を簡略化することができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、光制御層は、所定の制御方向に対応する機能断面において第1の角度領域の中心となる拡散中心軸が射出方向の先側で狭まる方向に向くように第1の角度領域を変化させている。この場合、特定の方向にいる観察者に対して画像光を集中させることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、光制御層は、拡散中心軸が一点で交差するように第1の角度領域を変化させている。この場合、より特定された狭い範囲にいる観察者に対して画像光を集中させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、所定の制御方向が、入射する光の中心光束である基準光の光路方向を基板の主面に正射影した基準方向に対して平行である。この場合、光制御層の制御方向を、例えばプロジェクター等の画像投射装置からの投射光に対応させることができ、投射光を効率的に利用して表示を行うことができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、所定の制御方向が、基板の長手方向に対して垂直な方向である。この場合、例えば横長のスクリーンに対して縦方向を所定の制御方向として下方投射や上方投射による画像投射を行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る投射システムは、(a)上記いずれかのスクリーンと、(b)投影画像となる入射光をスクリーン上に向けて所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、を備える。この投射システムは、上記いずれかのスクリーンに画像投射装置からの投射光を投射することにより、画像の明るさを維持しつつ観察距離を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るスクリーン及び投射システムを示す図である。
【図2】スクリーンの構造を説明するための側断面図である。
【図3】スクリーンの光制御層について説明するための図である。
【図4】スクリーンの光反射層について説明するための図である。
【図5】スクリーンの動作の概要について説明するための図である。
【図6】スクリーンによる投射光の拡散について説明するための一部拡大図である。
【図7】(A)は、光制御層の動作について説明するための図であり、(B)は、比較例の図である。
【図8】(A)は、スクリーンの動作についての一実施例を示す図であり、(B)は、比較例のスクリーンの動作についての一実施例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係るスクリーンを説明するための図である。
【図10】第3実施形態に係るスクリーンを説明するための図である。
【図11】第4実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るスクリーン及びスクリーンを含む投射システムについて説明する。
【0019】
〔A.投射システムの構造〕
図1に示すように、本実施形態の投射システム100は、スクリーン10と、プロジェクター50とを備える。
【0020】
プロジェクター50は、室内の天井に天吊り支持された状態でスクリーン10に近接して設置されている。つまり、プロジェクター50による投射は、上側からの近接投射すなわち−Y方向に偏った−Z方向への極端な斜め投射となっている。
【0021】
スクリーン10は、図1から図4に示すように、図中水平方向すなわちX方向を長手方向とし、垂直方向すなわちY方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その正面側すなわち略+Z側に設置されたプロジェクター50からの入射光PLを、折り返すことによって正面側すなわち略+Z側に反射光として射出させる反射型スクリーンである。より具体的には、プロジェクター50から斜め下方に射出される入射光PLが、スクリーン10のXY面に平行な主面1aに向けて投射され、主面1a上に設けたフレネル形状を有する微細構造によって、正面側に反射されることで、略+Z側にいる観察者EYに投影画像が提供される。なお、図1等に示すように、近接投射であることから、入射光PLの入射角ξは、ある程度の角度範囲をもった状態となっている。また、図中において、主面1aの法線方向(Z方向)については、法線ZXにより示すものとし、入射光PLの入射角ξは、法線ZXに対する角度で規定される。
【0022】
図3及び図4に示すように、プロジェクター50からの投射光であるスクリーン10への入射光PLは、プロジェクター50の投射点SSからスクリーン10の主面1aの中央を通ってY方向に延びスクリーン10を対称に2分する中心線である中心軸LXを基準としてX方向について対称な状態で投射されている。見方を変えると、入射光PLの投射点SSは、プロジェクター50のレンズから主面1aに対して下した垂線が中心軸LXと交差する位置にあり、入射光PLは、スクリーン10の中心軸LX上のスクリーン中心点Oを基本として、スクリーン10に投影される範囲に応じた特定の角度範囲で入射するものとなっている。なお、スクリーン中心点Oは、主面1a上の点であり、Y方向に延びる中心軸LXとX方向に延びる軸MXとの交点である。つまり、基板1の中心部分である。
【0023】
ここで、図1に示すように、角度範囲をもって入射する入射光PLのうち、スクリーン中心点Oに向かう成分を基準光PLcとする、この基準光PLcの光路方向を、基準入射方向SIとし、さらに、基準入射方向SIを基板1の主面1aに正射影した方向を、入射光PLのスクリーン10における入射方向の基準となる基準方向SDとする。この場合、基準方向SDは、入射光PLの光源の基準となる点である投射点SSに対応し、また、主面1aに平行であり、特に、中心軸LXに平行な方向すなわちY方向となっている。また、プロジェクター50による投射は上方からの近接投射であるため、プロジェクター50からスクリーン10の各点に入射する入射光PLの入射角ξの大きさは、スクリーン10の上方側すなわちプロジェクター50の光源側に近づくほど小さくなる。
【0024】
〔B.スクリーンの構造〕
以下、図2等を参照して、スクリーン10の構造の詳細について説明する。まず、図2〜図4に示すように、スクリーン10は、横長の長方形状の外観を構成するシート状の基板1を備える。さらに、図2に示すように、スクリーン10は、基板1の表面側に形成される光反射層2と、光反射層2の表面側に形成される光制御層3と、光制御層3の表面側を覆う保護層20とを備える。
【0025】
基板1は、+Z側の面としてスクリーン10の基準面となる主面1aを有する。この主面1aは、XY面に平行で、スクリーン10への入射光PLの入射や反射の基準となる表示平面となっている。なお、基板1は、例えば光吸収性の樹脂材料で作製されており、可撓性を有する。
【0026】
光反射層2は、基板1の主面1a上に形成される複数のプリズム部分2aと、複数のプリズム部分2aの表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部PPと、入射した光を吸収するための光吸収部ASと、これらを保護するとともに光反射層2の表面2cを形成する平準化層2bとを有する。光反射層2の表面2cは、XY面に平行な表示平面としての主面1aに平行な面となっている。
【0027】
複数のプリズム部分2aは、図4等に示すように、同心円弧状に隙間なく配列されたフレネル形状を形成している。ここで、図2に示すように、当該同心円弧状の中心CFは、主面1aを周囲に延長した平面H1上にあり、入射光PLの投射点SSに対応して、スクリーン10の中心線である中心軸LX上に設定されている。つまり、投射点SSから表示平面である主面1aに対して垂直に下ろした線L1と平面H1との交点を交点SXとすると、中心CFと交点SXとは、ともに中心軸LX上に配置されている。
【0028】
また、光反射層2のうち、例えば図5に示すスクリーン10の中央部分についての断面において、隙間なく配列された各プリズム部分2aの表面部分は、主面1aよりも上方すなわち+Y方向に傾いている面である第1傾斜面S1と、主面1aよりも下方すなわち−Y方向に向けて傾いた面である第2傾斜面S2とで形成されている。各プリズム部分2aが連続することで、各傾斜面S1,S2が交互に連なった状態となっている。これにより、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10の中央部分での配列方向であるY方向について上端から下端までの全体として、断面鋸歯状となっている。さらに、プリズム部分2aは、中心CFを基準として同心円弧状に配列されているため、中心CFを通る他の断面についても同様の形状を有している。つまり、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10全体に亘って断面鋸歯状となっている。両傾斜面S1,S2のうち第1傾斜面S1上にアルミ蒸着等によって反射膜が設けられることで、光反射部PPが形成されている。なお、第2傾斜面S2である光吸収部ASは、入射する不要光を基板1側に通過させる。光吸収部ASを通過した不要光は、基板1で吸収される。これにより、スクリーン10は、コントラスト低下を抑制することができる。光吸収部ASは、例えば黒色塗料の塗布等で形成されるものとでき、この場合、光吸収部AS自体によって入射する不要光を吸収することができる。このほか、例えば各プリズム部分2a及び基板1を光透過性樹脂とし、基板1の裏面側に黒色塗料を塗布するものとしてもよい。
【0029】
光制御層3は、平準化層2bの表面2c上に形成されている。光制御層3は、特殊な高分子膜と透明プラスチック材料とを複合化することで構成され、内部に当該高分子膜と透明プラスチック材料とによる回折格子状の特異的な規則構造を有する。この構造により、光制御層3は、基板1の主面1aに平行な方向のうち所定の方向を含むとともに基板の主面に垂直な断面において光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという光学特性を有する(詳細については、特許文献1参照)。ここでは、上記のように光制御層3において光制御の基準となる所定の方向を制御方向と呼ぶこととする。本実施形態の場合、図示のように、制御方向D1は、基準方向SDに平行すなわちY方向に沿っているものとする。光制御層3は、光学特性として以上のような入射角選択性を有することにより、制御方向D1における入射角が規定の範囲内の角度で入射する光を拡散透過させ、かつ、制御方向D1における入射角が規定の範囲外の角度で入射する光を直進透過させるものとなっている。さらに、光制御層3において、光を拡散透過させるか直進透過させるかの境界となる角度の大きさすなわち拡散させる範囲の幅については一定である(例えば30°)ものとするが、その向きすなわち一定の角度範囲の設定を法線ZXの方向を0°として仰角と俯角とに何度ずつとするかについては、制御方向D1に関する位置によって連続的に変化するものとなっている。具体的には、例えばスクリーン10の中央においては、制御方向D1すなわちY方向に関して、当該角度範囲の設定が均等になっている、つまり、法線ZXの方向を0°として仰角15°かつ俯角15°となっている。これに対して、スクリーン10の+Y側(上端側)においては、当該角度範囲の設定が仰角0°かつ俯角30°となっており、−Y側(下端側)においては、当該角度範囲の設定が仰角30°かつ俯角0°となっており、その中間では当該角度範囲が連続的に変化していくものとなっている。なお、このような構造を有する光制御層3の作製の詳細については、特許文献2に記載があるが、光制御層3を構成する規則構造を形成させるための光の照射において、その照射方向を変化させることで所望の構造が作製できる。また、光制御層3において、表側すなわち+Z側の表面3bは、表示平面である主面1aに平行な面となっている。
【0030】
保護層20は、光制御層3の表面3b上すなわち+Z側に形成され、スクリーン10の主要部をなす光反射層2及び光制御層3を保護している。なお、保護層20が不要で省略される場合には、表面3bが、スクリーン10の最表面となる。
【0031】
〔C.スクリーンによる入射光に対する動作〕
以下、図5を用いてスクリーン10による入射光PLに対する動作の概要について説明する。図5は、中心軸LXに沿った断面でありスクリーン10の反射拡散の機能を示す機能断面DSを示している。つまり、この機能断面DSは、YZ面に平行な面であり、制御方向D1を含む面となっており、かつ、スクリーン10の主面1aに対して垂直な面である。この場合、光制御層3は、制御方向D1に対応する機能断面DSにおいて、他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性すなわち上記のようなドラスティックな変化を示すものとなる。
【0032】
まず、スクリーン10の中心軸LX上の位置において、法線ZXに対して+Y側から特定の入射角ξで入射する入射光PLは、保護層20を通過し、さらに光制御層3においても、規定の範囲外の角度で入射する光として拡散されることなく直進透過する。次に、入射光PLは、光反射層2の反射面PSに入射する。ここで、反射面PSは、主面1aに対して、微小な傾斜角度αだけ+Y側を向くように傾いている。これにより、入射光PLは、Y方向についての入射角が変えられた反射光RLとなって光制御層3に向けて折り返される。この反射光RLは、往路の入射光PLとは入射角が異なる状態で光制御層3に入射する。ここで、反射面PSの傾斜角度αは、例えば図2に示す+Y側の領域P1と中央側の領域P2と−Y側の領域P3とで異なる値となっている、すなわち、傾斜角度αは、入射光PLの入射角のみならず光制御層3の構造にも対応して、Y方向すなわち制御方向D1に沿って変化している。これにより、反射光RLは、所望の範囲内の角度で入射する光として光制御層3を拡散透過する。つまり、図5に示すように、反射光RLは、適度に拡散された状態の投影画像光FLとなってスクリーン10から+Z側に射出される。
【0033】
以下、図6等により、スクリーン10のうち光制御層3を中心に上記動作についてより詳しく説明する。ここで、図6は、スクリーン10のうち中央部分において制御方向D1に沿った断面の一部分を拡大した図である。
【0034】
まず、光制御層3は、第1の角度領域ωvから入射した光を規定の範囲内の角度で入射する光として拡散透過させ、かつ、これ以外の範囲である第2の角度領域ηから入射した光を直進透過させる性質を有する膜で構成されている。つまり、第1の角度領域ωvは、光を拡散させる角度範囲を示している。ここでは、第1の角度領域ωvは、法線ZXの方向を基準の入射角0°として、制御方向D1に関して例えば約30°の角度範囲に亘っており、法線ZXを挟んで法線ZXから上方側である仰角すなわち+Y側についての角度ωHの領域と、法線ZXから下方側である俯角すなわち−Y側についての角度ωLの領域とで構成されているものとする。つまり、角度ωHの大きさが上方側についての拡散透過させる範囲である臨界角度を示し、角度ωLの大きさが下方側についての拡散透過させる範囲である臨界角度を示すものとなっている。なお、図6は、スクリーン10のうち中央部分であり、法線ZXの方向を基準となる入射角0°として角度ωH側を正の角度、角度ωL側を負の角度とし、その絶対値すなわち角度ωHと角度ωLとの大きさは等しい又はほぼ等しいものとなっている。つまり、角度ωH,ωLの大きさは、ともに約15°となっている。なお、詳しくは後述するが、スクリーン10の周辺に向かって角度ωHと角度ωLとは、その合計である第1の角度領域ωvの大きさを約30°に保ちつつ変化している。
【0035】
以上のような光制御層3において、入射角ξの入射光PLが直進透過するか拡散透過するかについては、臨界角度ωH,ωLに対して大きいか否かによって定まる。ここでは、図示のように、入射角ξは、第1の角度領域ωvのうち臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとなっているように調整されているものとする。つまり、入射角ξは、角度εの分だけ第1の角度領域ωvより外側となっており、第2の角度領域ηの内側の領域に含まれる角度となっている。これにより、入射時における入射光PLは、光制御層3において拡散されることなく直進透過して、光反射層2に向かうものとなる。この場合、入射光PLは、光制御層3の通過後においても拡散していないので、屈折により角度の変化はあっても、角度分布の広がりを持つことなく光反射層2に入射するので、入射光PLの反射面PSでの反射角度は、設計通りの比較的正確なものとなる。光制御層3を経た入射光PLは、光反射層2の反射面PSにおいて、反射面PSにより方向を変えられて光制御層3側に折り返される。この際、反射面PSが表示平面に対して傾斜角度αだけ傾いている。傾斜角度αが適宜調整されていることにより、入射光PLを折り返した成分である反射光RLは、法線ZXに対して+Z方向を基準として時計回りの方向に微小な角度γだけ傾いた状態となって光制御層3に入射する。この角度γは、傾斜角度αの調整によって臨界角度ωHよりマージン角度Δωの分だけ小さいものになっている。つまり、反射光RLの光制御層3への入射角度である角度γが、マージン角度Δωの分だけ第1の角度領域ωvの範囲内の角度となっていることで、反射光RLは、光制御層3の通過時において確実に拡散透過して正面側に射出される。以上のような動作がスクリーン10上に入射するすべての入射光PLに対してなされることで、例えば図5に示すように、投影画像光FLが、適度に拡散された状態で射出される。なお、以上では、図6に示すスクリーン10のうち中央部分について説明しているが、中央部分よりも+Y側や−Y側の周辺部分においても傾斜角度αが適宜調整されていることにより、反射光RLの光制御層3への入射角度である角度γがマージン角度Δωの分だけ第1の角度領域ωvの範囲内の角度となるようにできる。
【0036】
ここで、マージン角度Δωの値の最小値は、5°以上とすることが望ましい。つまり、反射光RLの光制御層3への入射角度が、第1の角度領域ωvの上限より5°以上の差を有し、第1の角度領域ωvに対して十分なマージンがあることで、光制御層3への外部からの通過時において、確実に拡散されるものとなる。なお、以上は一例であり、マージン角度Δωとして十分な値は、これに限らず、光制御層3として用いる材料・構造等によって適宜定めることができる。なお、入射時の入射角ξについては、第1の角度領域ωvの臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとしているが、角度εについても、例えば5°以上とすることで、十分なマージンがとれ、確実に直進透過するものとなる。
【0037】
〔D.光制御層の制御方向に関する反射光の拡散分布の変化〕
以上のように、本スクリーン10では、入射光PLを反射して反射光RLとし、この反射光RLを適度に拡散させて投影画像光FLとなって射出することで画像が認識される。このため、反射光RLの拡散分布を決定することすなわち第1の角度領域ωvによって定まる光を拡散させる角度範囲を決定することで、スクリーン10における観察可能な範囲が定まる。
【0038】
特に、本実施形態では、図7(A)に一例を示すように、制御方向D1すなわちY方向に関してスクリーン10の位置に応じて第1の角度領域ωvの向きを変化させている。つまり、図6を用いて説明したように、第1の角度領域ωvの大きさは保ちつつ仰角の臨界角度ωHと俯角の臨界角度ωLとの割合を変化させている。これによって、スクリーン10における観察可能な範囲がより広くなっている。より具体的に説明すると、図7(A)に示すように、まず、光制御層3において、第1の角度領域ωvは、スクリーン10の位置を問わず、拡散の大きさ或いは範囲は、30°となっている。また、スクリーン10の中央側である中心Oでは、第1の角度領域ωvの内訳が、仰角の領域である臨界角度ωHについても、俯角の領域である臨界角度ωLについても15°であり、等しく分配されている。これに対して、スクリーン10のうち上端UE側すなわち+Y側では、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωLと等しくなるように傾いている。一方、スクリーン10のうち下端BE側すなわち−Y側では、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωHと等しくなるように傾いている。さらに、光制御層3のうち上記した中心O及び上端UE、下端BEの中間位置では、第1の角度領域ωvの傾き度合は、制御方向D1に沿って連続的に変化している。すなわち、中心Oから上端UE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に増加し、かつ、臨界角度ωHが減少している。逆に、中心Oから下端BE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に減少し、かつ、臨界角度ωHが増加している。なお、この際、図2等に示す光反射層2において、複数の反射面PSの傾斜角度αは、上記のような光制御層3の内部構造に応じてそれぞれ調整されている。つまり、図7(A)において角度γが適宜調整されている。以上のような構造を有することによって、スクリーン10は、上方側の画像についてより下方側に拡散させ、下方側の画像についてより上方側に拡散させることで、スクリーン映像が均一に認識できる範囲を広げている。逆に言うと、均一に認識できない領域を減らしている。
【0039】
例えば、図7(B)に示す第1の角度領域ωvの向きが変化することなく一定である比較例の場合では、図7(A)に示す場合と比べると、スクリーン10の周辺側である上端UE側或いは下端BE側から射出される画像光を観察できない領域が広くなる。具体的には、図7(A)と図7(B)とについて、例えば上端UE側から下方へ向かう拡散限界を示す臨界角度ωLの下端側を延長した下方臨界線LLを比較すると、第1の角度領域ωvが下方に向いている図7(A)の方が、第1の角度領域ωvの変化がない図7(B)よりも下方に向けて大きな角度となっている。また、下端BE側から上方へ向かう拡散限界を示す臨界角度ωHの上端側を延長した下方臨界線HLを比較すると、第1の角度領域ωvが上方に向いている図7(A)の方が、第1の角度領域ωvの変化がない図7(B)よりも上方に向けて大きな角度となっている。この場合、下方臨界線LLより+Y側の領域が上端UEを見ることのできる限界領域を示し、上方臨界線HLより−Y側の領域が下端BEを見ることのできる限界領域を示すものとなるため、各臨界線LL,HLを結んだ点を交点XXとすると、この交点XXからスクリーン10までの観察距離Lがスクリーン10の全体を観察可能な限界点を示すものとなる。この場合、上記のことから、図7(A)と図7(B)とを比較すると、図7(A)の方が観察距離Lをより短くすることができるものであることが分かる。すなわち、観察可能な範囲をスクリーン10側により近づけることができる。
【0040】
なお、近接の下方投射の場合においては、例えば図2等に示すように、+Y側すなわち投射点SSに近い側ほど入射角ξの値が小さくなり、光制御層3を直進透過させにくくなるが、これに対して、本実施形態のスクリーン10では、投射点SSに近い側ほど、第1の角度領域ωvを−Y側に偏った側に向けるものとなっているため、スクリーン10のどこにおいても十分な値の角度ε(図6参照)を確保でき、入射光を確実に直進透過させることができる。
【実施例1】
【0041】
以下、図8(A)等を用いて本実施形態の一実施例について説明する。ここで、図8(A)は、図7(A)に対応する実施例である。なお、図8(B)は、図7(B)の比較例に対応する実施例である。図8(A)では、図示のように、中心点Oが地上から垂直方向(Y方向)に1.4mとなる位置にスクリーン10を配置している。また、プロジェクター50からの入射光PLの入射角度は、法線ZXを基準すなわち角度0°として、上端UE側において26.3°、下端BE側において65.4°となっている。なお、既述のように、光制御層3について、第1の角度領域ωvの大きさを30°とし、上端UE側において臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であり、下端BE側において臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°である。なお、中心点Oから上端UE側に向かって、臨界角度ωLが徐々に増加するように連続的に変化しており、中心点Oから下端BE側に向かって、臨界角度ωHが徐々に増加するように連続的に変化しているものとする。この場合、スクリーン10から交点XXまでの観察距離Lは、1.4mとなる。一方、図8(B)の実施例では、スクリーン10の構造が図7(B)の比較例のものとなっていることを除いて、図8(A)と同様に設計されており、この場合、観察距離Lは、5.23mとなる。
【0042】
また、図8(A)の実施例では、傾斜角度α(図2等参照)を適宜調整することで、角度γの値が、法線ZXを基準として上端UE側において−5°、下端BE側において25°となっている。つまり、マージン角Δω(図6参照)の値を最小限の5°としている。これにより、不要光である外光OLの分離性を高めたものとなっている。具体的には、例えば図示のように、地上から垂直方向(Y方向)に2.4mで、水平方向(Z方向)にスクリーン10から3.0mの位置に外光OLの光源である天井照明CEがあるものとすると、外光OLの入射角度は、上端UE側において14.5°となり、下端BE側において34°となる。これに対して、上記のように角度γが設定されている(すなわち図2等に示す傾斜角度αが調整されている)ことで、外光OLの反射角度は、上端UE側において6.3°、下端BE側において53°となる。この場合、上端UE側に入射した外光OLの反射成分は観察者PE側に向かわない。また、観察者PE側に比較的向きやすい下端BE側に入射した外光OLの反射成分でついても観察者PEに届きにくいものとなっている。具体的には、図示のように、例えば地上から1.4mにある中心点Oの高さを観察者PEの基準の高さ位置とすると、観察者PEは、外光OLの反射成分を受けることなくスクリーン10から0.7mの距離まで近づくことができるものとなる。これに対して、図8(B)に示す例の場合、第1の角度領域ωvが一定であるので、角度γも位置に関係なく常に一定となる。なお、図8(B)に示す場合では、上端UE側であるか下端BE側であるかを問わず、常に臨界角度ωLが20°で、臨界角度ωHが10°であり、マージン角を5°として角度γが5°に設定されている。この場合、図8(A)の実施例と同様の天井照明CEがあると、観察者PEは、スクリーン10から1.64mの距離以内に近づくと、下端BE側に入射した外光OLの反射成分を受けることになる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、不要光である外光OLの反射光が観察者PEの眼に直接飛び込んでしまうという現象が発生する領域を狭めるよう調整することができる。
【0044】
上記の投射システム100のように部屋の天井側といった上方から斜方投射を可能とするタイプのものは、人や物がスクリーン10側にある程度近づいても、これらが画像投影の際の投射光を遮らないものとなるので、例えばプレゼンテーションや教室での授業において、プレゼンター等の話者がスクリーン10側に近づいた位置に立って説明をするといった使用態様に適したものとなる。しかしながら、外光OLが直接的に反射するすなわち正反射すると、その成分が話者の眼に飛び込んでしまうと、上記のような使用態様ができなくなる。これに対して本実施形態では、上記のような外光の制御についても可能とすることで、例えば投射システム100を用いてプレゼンテーションを行うといった場合に、外光OLの正反射を気にすることなくプレゼンターがスクリーン10側に近づくことが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン10では、光制御層3において、光の拡散制御を行う制御方向D1に関して、反射光RLの拡散分布を定める第1の角度領域ωがスクリーン10上の位置によって異なるものとなっている。これにより、スクリーン10の表面から射出される画像光の拡散分布をスクリーン10上の位置に応じて上端UE側ほど下方側に傾け、下端BE側ほど上方側に傾けるように調整することで、例えば拡散される角度範囲の大きさは30°のまま変えることなく、画像光の拡散射出される方向を想定される観察者の位置に応じたものとし、画像の明るさを維持しつつ投影画像を観察させることができ、かつ、観察距離Lを短くするように調整できる。
【0046】
また、図2等では、中心CFと交点SXとは、中心軸LX上において離間した状態のものを示している。この距離は、図1のようにプロジェクター50を設置する環境等に対応するためのマージンに相当し、ある程度の範囲を許容している。ただし、当該距離が0すなわち中心CFと交点SXとを一致させることができれば、そのような配置としてもよい。この場合、入射光PLの入射角ξとスクリーン10の各光反射層2の傾斜角度αとの関係が最適化され、入射光PLをより確実に観察者EYのいる正面側すなわち略+Z側へ折り返すことができる。
【0047】
また、光反射層2において、円弧状に沿って配列される複数のプリズム部分2aの曲率半径を必要により適宜調整して、複数の光反射部PPの各反射面PSの傾きのスクリーン10内における分布を調整してもよい。一般に、フレネルプリズム反射面の収差の影響は、スクリーンの周辺側ほど受けやすい。このため、スクリーン10においても、周辺側において角度γの角度のズレが生じやすいが、曲率半径を調整することで、このズレを補正することができる。
【0048】
なお、詳しい説明を省略するが、プロジェクター50を室内の床側に設置して下方からの近接投射とする場合にも、同様の投射システム100を構成することが可能である。
【0049】
また、光反射部PPの表面は、光を反射する反射面PSとなっている。第1傾斜面S1の主面1aに対する傾斜角度αは、光反射部PPの傾きすなわち反射面PSの傾きを決定する。つまり、同心円弧状に配列される各プリズム部分2aにおいて、傾斜角度αは、入射光PLの入射角ξの差に応じて異なるものとなっており、円弧状に形成される1つのプリズム部分2aの反射面PSに入射する入射光PLは、略同一の入射角ξを有する。傾斜角度αは、光制御層3の構造のみならず、この入射角ξにも応じて設定されているので、当該プリズム部分2aに入射する入射光PLは、スクリーン10の中央側だけでなく周辺側で入射するものについても±X方向についていずれにも極端に傾くことなく確実に略+Z側に折り返される。以上のことは、全てのプリズム部分2aについて同様である。つまり、すべての入射光PLは、各プリズム部分2aの反射面PSによって確実に略+Z側に折り返されるものにできる。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、図9により、第2実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システム200は、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、全体の詳細な説明については省略する。また、第1実施形態の同符号のものについては、特に説明をする場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
【0051】
図9に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン110において、光制御層103は、光を拡散させる角度範囲を示す第1の角度領域ωvを、より狭い範囲に限っている。つまり、第1実施形態の例示では、拡散範囲をある程度確保するため、第1の角度領域ωvの大きさの一例を約30°としていたが、本実施形態では、これよりも狭いものとすることができる。さらに、図示のように、制御方向D1に関して各位置に応じて異なった傾きを有する第1の角度領域ωvにおいて、第1の角度領域ωvの中心となる拡散中心軸ωcが、射出方向である+Z方向に進むにつれてすなわち射出方向の先側で狭まる方向に向いており、全ての拡散中心軸ωcが、観察者PEの眼EYの位置の一点で交差するものとなっている。図示の場合、眼EYがスクリーン110の中心Oから法線方向すなわち+Z方向に延長した線上であって、スクリーン110から距離LKの位置にあるものと想定し、これに合わせて光制御層103の第1の角度領域ωvの大きさや拡散中心軸ωcの方向を設定している。具体的には、Y方向について、中央である位置Mでは、中心軸ωcが法線ZXに沿っているのに対して、+Y側である位置H及び−Y側である位置Lでは、中心軸ωcが法線ZXから同じ傾斜角βの大きさで位置Hでは下向きに傾いており、位置Lでは上向きに傾いている。つまり、観察者PEの眼EYの位置に合わせて調整することができるものとなっている。この場合、想定した観察者PEの眼EYの特定位置に絞って画像光を射出させることができる。
【0052】
本実施形態の場合、第1の角度領域ωvの拡散範囲をより狭くすることで、対象となる観察者PEにのみ画像を提供し、対象となる観察者PE以外に画像を見せないようにすることができる。また、この場合、拡散範囲を狭くすることで、明るい画像を提供しやすくなる、または、光源が比較的小さくても十分な明るさを得ることができる。
【0053】
〔第3実施形態〕
以下、図10により、第3実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システム300は、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、全体の詳細な説明については省略する。また、第1実施形態の同符号のものについては、特に説明をする場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
【0054】
図10に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン210において、光制御層203は、制御方向D1に関して、スクリーン10の位置に応じて+Y側と中央側と−Y側とで3つに分割される部分領域10H,10M,10Lで構成されている。各部分領域10H,10M,10L内では、それぞれ第1の角度領域ωvが変化することなく一定の向きに揃っているが、部分領域10H,10M,10L間では、第1の角度領域ωvの向きが互いに異なるものとなっている。具体的には、まず、中央側に位置する部分領域10Mでは、第1の角度領域ωvの内訳が、仰角の領域である臨界角度ωHについても、俯角の領域である臨界角度ωLについても15°であり、等しく分配されている。これに対して、+Y側に位置する部分領域10Hでは、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが30°であり、臨界角度ωHが0°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωLと等しくなるように傾いている。一方、−Y側に位置する部分領域10Lでは、第1の角度領域ωvの内訳が、臨界角度ωLが0°であり、臨界角度ωHが30°であるものとなっている。つまり、第1の角度領域ωvが、臨界角度ωHと等しくなるように傾いている。
【0055】
本実施形態の場合、光制御層203が複数の部分領域10H,10M,10Lを有することで、第1の角度領域ωvを段階的に変化させることができ、これにより、画像の明るさを維持しつつ観察できる観察距離Lを近づけることができる。
【0056】
なお、上記では一例として、光制御層203は、3つに分割された部分領域で構成されるものとしているが、分割する数は、これに限らず、例えばもっと多くの部分領域で構成するものとしてもよい。また、上記のような縦方向すなわちY方向についての分割に限らず、横方向すなわち+X方向について分割してもよい。
【0057】
〔第4実施形態〕
以下、図11により、第4実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンの構造についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0058】
図11に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン310は、光反射層2と光制御層3との間に、光制御層3と同一の構造である第2の光制御層4をさらに有するものとなっている。ただし、第2の光制御層4は、主面1aの法線方向に対するX方向の傾きについて入射角選択性を示すすなわちX方向を制御方向とする点で光制御層3と異なる。これにより、スクリーン210は、X方向すなわち横方向についてより広く光を拡散させることが可能となっている。
【0059】
第2の光制御層4については、このほか、入射角選択性を示すことなくすなわち入射角によらずX方向について拡散させる特性を有する光拡散性の層を用いるものとしてもよい。
【0060】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
上記では、光制御層3は、拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという入射角選択性を有するものとしているが、光制御層3は、入射角選択性を示すことなくすなわち入射角によらずX方向について拡散させる特性を有する光拡散性の層を用いるものとしてもよい。光制御層3として、例えば反射光RLの射出方向を基準として正規分布に従って光を拡散させるような性質を有するものを用いるものとしてもよい。この場合、入射角選択性を有する場合に比べて、拡散透過の変化がなだらかなものとなる。
【0062】
また、上記では、例えば図9の拡散中心軸ωcで示されるように、画像光が、全体として+Z方向に進むにしたがってスクリーン10の中心Oから延びる法線ZXに集まるように射出されているが、これとは逆に、法線ZXから離れて周辺に広がっていくように第1の角度領域ωを調整することもできる。また、スクリーン10の中心Oから延びる法線ZX以外の方向や位置に集まるように第1の角度領域ωを調整することもできる。例えば、スクリーンが上方に位置し、観察者が見上げるようにしてスクリーンを観察する場合には、第1の角度領域ωが全体として下方に偏って変化するものであってもよい。
【0063】
また、上記では、光反射層2において、複数のプリズム部分2aは、同心円弧状に隙間なく配列されフレネル形状を有するものとしているが、入射光PLを確実に正面側に折り返すものであれば、複数のプリズム部分2aの配列や形状は、これに限らず、例えば同心円弧を変形した楕円状の曲線に沿って平行に配列されるものであってもよい。また、各プリズム部分2aも輪帯状のもの以外でもよく、例えば複数のブロック状のプリズムを同心円弧状の曲線に沿って並べることで、1つのプリズム部分としての機能を持たせる構成としてもよい。
【0064】
また、上記では、複数のプリズム部分2aは、例えばフレネル形状といった同心円弧状としているが、これは、投射システム100が近接投射であり、X方向について中央側と周辺側とで入射角が大きく異なるためになされるものである。従って、投射システム100が近接でない投射の場合には、各プリズム部分2aの形状を直線状(バー状)とすることもできる。
【0065】
また、上記では、入射光PLを正面側あるいは略正面側に観察者がいることを想定しているため、折り返すべき方向についても正面側あるいは略正面側としているが、観察者が正面側以外の位置にいる場合には、これに応じて入射光PLを折り返す方向を適宜変更できる。
【0066】
また、上記では、図11に示す第4実施形態のスクリーン310において、光反射層2と光制御層3との間に第2の光制御層4を設ける構成としているが、光制御層3と第2の光制御層4とを入れ替えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,110,210,310…スクリーン、 1…基板、 1a…主面、 2…光反射層、 2a…プリズム部分、 2b…平準化層、 3,103,203…光制御層、 4…第2の光制御層 20…保護層、 PP…光反射部、 PS…反射面、 AS…光吸収部、 50…プロジェクター、 100…投射システム、 PL…入射光、 D1…制御方向、 SD…基準方向、 ξ…入射角、 α…傾斜角度、 β…傾斜角、 ω…第1の角度領域、 η…第2の角度領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、前記複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する光反射層と、
前記光反射層の表面側に形成され、前記基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向を含むとともに前記基板の主面に垂直な機能断面において、前記光反射層に入射する光を通過させるとともに、前記光反射層で反射された反射光を拡散させる光制御層と、
を備えるスクリーンであって、
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて、前記反射光の拡散分布を異なるものとしている、スクリーン。
【請求項2】
前記光制御層は、前記所定の制御方向に対応する前記機能断面において他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性を示し、前記基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる、請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて前記第1の角度領域を連続的に変化させている、請求項2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて複数に分割される部分領域で構成され、各部分領域内では同一で部分領域間では互いに異なる前記第1の角度領域を有し、段階的に変化させている、請求項2に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記光制御層は、前記所定の制御方向に対応する前記機能断面において前記第1の角度領域の中心となる拡散中心軸が射出方向の先側で狭まる方向に向くように前記第1の角度領域を変化させている、請求項2から4までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記光制御層は、前記拡散中心軸が一点で交差するように前記第1の角度領域を変化させている、請求項5に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記光制御層において、前記所定の制御方向は、入射する光の中心光束である基準光の光路方向を前記基板の主面に正射影した基準方向に対して平行である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記光制御層において、前記所定の制御方向は、前記基板の長手方向に対して垂直な方向である、請求項1から7までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のスクリーンと、
投影画像となる入射光を前記スクリーン上に向けて所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、
を備える投射システム。
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、前記複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する光反射層と、
前記光反射層の表面側に形成され、前記基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向を含むとともに前記基板の主面に垂直な機能断面において、前記光反射層に入射する光を通過させるとともに、前記光反射層で反射された反射光を拡散させる光制御層と、
を備えるスクリーンであって、
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて、前記反射光の拡散分布を異なるものとしている、スクリーン。
【請求項2】
前記光制御層は、前記所定の制御方向に対応する前記機能断面において他の方向に対応する別の断面よりも大きい角度で拡散する拡散特性を示し、前記基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる、請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて前記第1の角度領域を連続的に変化させている、請求項2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記光制御層は、前記基板の主面上の前記所定の制御方向に関する位置に応じて複数に分割される部分領域で構成され、各部分領域内では同一で部分領域間では互いに異なる前記第1の角度領域を有し、段階的に変化させている、請求項2に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記光制御層は、前記所定の制御方向に対応する前記機能断面において前記第1の角度領域の中心となる拡散中心軸が射出方向の先側で狭まる方向に向くように前記第1の角度領域を変化させている、請求項2から4までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記光制御層は、前記拡散中心軸が一点で交差するように前記第1の角度領域を変化させている、請求項5に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記光制御層において、前記所定の制御方向は、入射する光の中心光束である基準光の光路方向を前記基板の主面に正射影した基準方向に対して平行である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記光制御層において、前記所定の制御方向は、前記基板の長手方向に対して垂直な方向である、請求項1から7までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のスクリーンと、
投影画像となる入射光を前記スクリーン上に向けて所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、
を備える投射システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88543(P2013−88543A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227653(P2011−227653)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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