説明

スクリーン

【課題】本発明の目的は、投影される画像が明るく高品位であり、かつ広視野角な反射型反射型スクリーンを安価に提供することにある。
【解決手段】吸収型偏光繊維と、反射型偏光繊維が交差して形成される成形品を含むことを特徴とするスクリーン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタに有用なスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置は、直視型表示装置に比べ比較的容易に小型かつ低コストに大画面表示が実現できるため、需要が増大している。特に、2次元光学スイッチ素子として液晶表示素子を用いた投射装置を有する投射型表示装置は、CRT投射管を用いた投射型表示装置とことなり、ドットマトリックス表示により画面の周辺部までボケの無い高精細な表示が可能であるため、高解像度デジタルテレビの本命として期待されている。
【0003】
これらの画像を投影するスクリーンには大別してプロジェクタ側から観察する反射型スクリーンと、スクリーンを挟んでプロジェクタと反対側から観察する透過型スクリーンが存在する。
透過型スクリーンは通常フレネルレンズシートとレンチキュアレンズシートから構成されている。レンチキュラレンズは直線的な形状のレンズを規則的に配置しているため、画面にモアレ現象が発生しやすい。
【0004】
特許文献1には、透明基材上に球面レンズを敷き詰め、透明樹脂によって固定した構成の透過型スクリーンが開示されている。この構成では、金型を使用しないので製造上大きさの制限が無く、継ぎ目の無い大画面の透過型スクリーンが実現できる。さらに球面レンズ側から入射する光はレンズ効果により収束し、等方的に発散するため、水平、垂直方向ともに広視野角が得られる。しかし、角度によってギラツキが生じやすく、表示品位を低下させる場合があった。
【0005】
ショーウインドウ等に貼り付け、動画または静止画による広告等を映す透明スクリーンも存在する。上記透明スクリーンには通常ホログラム素子が用いられ、観察者に対しホログラム素子と反対側に設けた投射装置から透過光をホログラム素子に投射して映像を決像させ、ホログラム素子によりこの投影光を前方に回折、散乱させることにより観察者に映像を認識させるものである(特許文献2)。
【0006】
しかしホログラム素子は非常に高価であり、また回折、散乱角度に制限があるため、視野角が制限されるといった問題点がある。また、ホログラム素子はプロジェクタとしクリーンおよび観察者の位置を厳密に設定する必要性があるため、設置の自由度が極めて低いといった問題点もある。
【0007】
一方、反射型スクリーンとしてはある特定の偏光のみを選択反射することにより、コントラストを向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献3、4にはコレステリック液晶を用いた円偏光反射型の反射型スクリーンが開示される。これらは特定の円偏光を反射し、それと反対の円偏光を吸収することによりコントラストを向上させている。また、特許文献4では、反射特性を制御することにより、鏡面反射によるギラツキを低減させている。
【0008】
特許文献5では、多層構成により、特定の直線偏光を反射するタイプの反射型スクリーンが開示されている。このスクリーンは表面が鏡面となり、ギラツキの大きな原因となっている。また特許文献6では、上記反射型偏光板と拡散型偏光板を組み合わせることによりギラツキを低減する試みがなされているが、その効果は十分でなく、実用化に至っていない。
【0009】
【特許文献1】特開平2−77736号公報
【特許文献2】特開平11−202417号公報
【特許文献3】特開平5−107660号公報
【特許文献4】特開2005−17751号公報
【特許文献5】特表2002−540445号公報
【特許文献6】WO03/098346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、投影される画像が明るく高コントラストであり、モアレやギラつきが少ないスクリーンを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために偏光板用の高分子材料、形状等を鋭意検討した。その結果、吸収型偏光繊維と反射型偏光繊維を交差させたスクリーンを用いることで、高コントラストである反射型プロジェクタを実現することを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下のとおりのものである。
[1]偏光を有する透写光を受けて映像を映し出すスクリーンであって、該スクリーンが反射型偏光繊維と非偏光繊維が交差して形成された成形品を含むことを特徴とするスクリーン。
[2]前記反射型偏光繊維が、
(a)少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成され、交互層状の断面構造を有する繊維であって、その交互層が5層以上であり、各層の厚さが0.02〜1.0μmの範囲にあり、且つ少なくとも該2種の熱可塑性樹脂は、該繊維の長さ方向に対する断面方向の波長589nmにおける屈折率差が0.01以下である光学干渉機能を有する繊維(A)であることを特徴とする上記1記載のスクリーン。
[3]前記成形品が、(b)前記繊維(A)の長さ方向に対する断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(C)を含有してなり、前記繊維(A)は一方向面状に配置されなることを特徴とする上記2のスクリーン。
[4]前記成形品が、反射型偏光繊維と非偏光繊維を経糸、緯糸のいずれかとした織物を含むことを特徴とした上記1〜3記載のスクリーン。
[5]前記繊維(A)が光学透明樹脂(C)により内包固定化されている上記3または4記載のスクリーン。
[6]前記繊維(A)の少なくとも2種の熱可塑性樹脂の屈折率差が0.02以上であることを特徴とする上記2〜5記載のスクリーン。
[7]前記繊維(A)の平均径が、0.7μm以上100μm以下であることを特徴とする上記2〜6記載のスクリーン。
[8]光学透明樹脂(C)が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記3〜7記載のスクリーン。
[9]光学透明樹脂(C)が、硬化型樹脂であることを特徴とする上記3〜8記載のスクリーン。
[10]さらに金属反射層を有する上記1〜9記載のスクリーン。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反射型偏光繊維である光学干渉機能を有する偏光繊維を単一方向に並べた繊維(A)と、非偏光繊維を交差して面状に並べることで、投影される画像が明るく高品位であり高コントラストであり、モアレやギラつきが少なく、広視野角なプロジェクタスクリーンを安価に提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のスクリーンは、反射型偏光繊維と非偏光繊維とを交差することで、直線偏光の偏光軸方向により反射、透過の光学特性が異なるシート等の成形品を形成し、さらに好ましくは、散乱層、散乱フィルムなどの光学層を付加、積層することで散乱特性をコントロールしてなるスクリーンである。
【0015】
本発明に用いるスクリーンは、反射型偏光繊維と非偏光繊維から形成されており、繊維の偏光特性に対して偏光に対する選択透過、選択反射特性を組み合わせたことを特徴とする。したがって、直線偏光を入射した場合、最も反射が大きくなる偏光方向(反射軸)と最も透過が大きくなる方向(透過軸)をスクリーンの面内に有している。偏光を反射軸に一致させた場合は、光の反射により反射光を強く認識し、反対側を見通すことが難しい状態であり、透過軸と一致させた場合は、光は透過して反対側に抜ける。
【0016】
本発明のスクリーンは、反射型偏光繊維と非偏光繊維を交差したシート状成形品であることを特徴とする。非偏光繊維に関しては偏光に対して透過光を最大にする場合は直交配置が好ましいが、交差軸は直交に限らず、スクリーンの光学特性に合せていかようにも調整可能である。
【0017】
本発明に用いる反射型偏光繊維は、光学干渉機能を有する繊維(A)によりその光学特性を得ることができ、非偏光繊維は光学透明であることが光の透過性を得ることで重要になるが、場合においては色素などを用いて可視光領域の光や、特定波長の光を吸収する繊維としても、フィラーを添加により非偏光繊維に散乱特性を持たせ、スクリーンの光学特性をコントロールすることも可能である。また、これらの偏光繊維の光学特性を最大限に生かすため、表面反射成分を抑えることが良い。その方法の一つとして、本発明のスクリーンは、偏光を有する透写光を受けて映像を映し出すスクリーンであって、該スクリーンが反射型偏光繊維(A)と非偏光繊維が交差して形成され、該繊維(A)と該繊維(B)と光学透明樹脂(C)とから構成される成形品からなり、詳しくは、該繊維(A)と該繊維(B)が該光学透明樹脂(C)により内包固定化する方法が挙げられる。これら、繊維(A)、光学透明樹脂(C)に関して、その具体例を示す。
【0018】
〔光学干渉機能を有する繊維(A)〕
光学干渉機能を有する繊維とは、光学的な反射、干渉効果により可視光領域の波長の色を干渉、発色するものである。光学干渉機能を有する繊維の例としては、特許第3356438号公報、特開平11−124773号公報、特開2005−15962号公報に示されている。光学干渉機能を有する繊維は、2種以上の熱可塑性樹脂成分で構成される交互層状の断面構造を有する繊維であり、その熱可塑性樹脂の屈折率が異なることで、光学的距離である屈折率と各層の厚みとの積による干渉効果を発現するものである。
【0019】
光学干渉効果には、2種の熱可塑性樹脂層の屈折率差、各層の光学的距離(屈折率×各層の厚み)及び積層数が大きく影響する。
【0020】
まず、光学干渉機能を有する繊維に用いる2種の熱可塑性樹脂に関しては、屈折率の高い方の樹脂(高屈折性樹脂ということがある)は、1.49〜1.88の屈折率であり、屈折率の低い方の樹脂(低屈折性樹脂ということがある)は1.35〜1.55の屈折率の範囲にあるものを適宜選定するのが好ましい。特に、2種の熱可塑性樹脂の屈折率差としては、少なくとも0.02以上、好ましくは、0.07以上、もっとも好ましくは、0.15以上である。熱可塑性樹脂の組み合わせについては、屈折率の高い繊維形成性を有する高屈折性樹脂として、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステルやポリカーボネートが好ましい。これらの樹脂の屈折率は、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは、1.58、ポリエチレンナフタレート1.63、ポリブチレンテレフタレート、1.55、ポリカーボネートでは、1.59と高い値を有している。さらにこれらの樹脂を用いて、繊維としたとき、繊維軸方向に高い配向が発生し、大きな複屈折を有することとなる。複屈折として、ポリエチレンナフタレートでは0.22、ポリエチレンナフタレートでは0.153、ポリカーボネートでは0.20などの高い値を有している。一方、低屈折性樹脂として、例えばポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)等のメタクリレート類、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、、ナイロン6(1.53)など脂肪族ポリアミドを挙げることが出来る。これらの樹脂の中で、ポリメチルメタクリレートではほとんど0の複屈折率であり、ナイロン6では0.08等高屈折性樹脂に比して低い値を取る。
【0021】
また、交互層状の断面構造に必要とされる熱可塑性樹脂層の厚みは、0.02〜1.0μmの範囲であることが好ましい。厚みが0.02μm未満の場合や、1.0μmを超える場合には、期待する光学干渉効果を可視光領域で得ることが困難となる。さらに、厚みは、0.05〜0.15μmの範囲であることが好ましい。また、2種の成分における光学距離、すなわち、層の厚みと屈折率の積が等しいとき、さらに高い光学干渉効果を得ることが出来る。特に、1次の反射に等しい2種の光学距離の和の2倍が、特定波長の距離と等しいとき、その特定波長における最大の干渉効果を得ることが出来る。本件では、可視光領域、特に400〜700nmにおいて、均等な干渉効果を得るように調節することが必要であり、モノフィラメントでこの特性をえることは困難であるので、可視光に対して450nm近傍、550nm近傍、650nm近傍に極大を有する光学干渉機能を有する繊維を組み合わせ、可視光領域(400から700nm)でほぼ均等な光学干渉を得るマルチフィラメントを使用した。
【0022】
さらに、交互層状の断面構造が必要な層数としては、5から120層であることが好ましい。層数が5層より少なくなると、干渉効果が小さいばかりでなく、干渉色が見る角度によって大きく変化してしまう。一方、120層を越えると、口金構造が複雑になり、製糸が困難になると共に、層流に流れが発生しやすくなり、層状構造が不均一となってしまう。交互層状の断面構造としては、10から100層以下がより好ましく、さらには10から80層以下がもっとも好ましい。
【0023】
光学干渉機能を有する繊維の断面形状としては、特に問わないが、扁平構造であり、その扁平断面の長軸方向と平行に交互層状の断面構造の長軸が配置されることが好ましい。繊維が、扁平断面形状であり、その長軸方向に平行に交互層状の断面構造の長軸を有すると、扁平長軸方向と繊維の長さ方向で形成する表面に対して垂直方向から観たとき、光干渉性による反射光をもっとも強く観測することが出来る。このとき、扁平断面形状からなる光学干渉機能を有する繊維を加工する際、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力により扁平断面形状の長軸が応力のかかる面に対して平行に揃う自己方位コントロール性を発現させることが可能となる。この時、光の入射光が扁平長軸方向と繊維の長さ方向で形成する表面になるように調整することで、光学干渉機能を最大化することが出来る。この繊維の自己方位コントロール性をファイバーに付与させるためには、扁平率2以上15以下であることが必要である。扁平率が2以下の繊維では、良好な自己方位コントロール性が得られず、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力により繊維の積層体にて、最密充填される形状に集合し、光学干渉機能を発現する繊維の交互層状の断面構造の配向は、ランダム配置となり、十分な光学干渉機能を得ることが出来ない。一方、扁平率が15を越えると過度に薄平な形状となるため、断面形態を保ち難くなり、一部が断面内で折れ曲がる等の欠陥が生じる。光学干渉機能を有する繊維の扁平率としては、2.5以上13以下がより好ましく、3以上10以下がもっとも好ましい。
【0024】
光学干渉繊維における、2種以上の熱可塑性樹脂のそれぞれにおける断面方向の屈折率差に関しては、波長589nmのとき0.01以下が好ましい。2種以上の熱可塑性樹脂のそれぞれにおける断面方向の屈折率差が大きい場合、本発明における繊維を偏光素子として形成した場合、偏光素子の透過軸と光学干渉機能を有する繊維の断面方向は一致することとなるが、交互層状の断面構造の断面方向の屈折率が異なる場合、層間の屈折率差に対する反射光が発生するために透過光量が減少すると共に、偏光素子としての偏光機能を低下させる原因となる。波長589nmにおいて屈折率差を最小とするのは、波長589nmはNaD線に対応するので、NaD線を用いた光源で屈折率を観測することが容易に可能なことと、視感度の強い緑色を呈する波長で屈折率差を最小に調整することで、可視光における偏光特性を良好に保ち、視覚的な色味の影響を最小化させる効果がある。本発明における光学干渉機能を有する繊維において、2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける断面方向の屈折率差としては、波長500〜700nmの範囲にて平均屈折率差が0.01以下であることがより好ましく、もっとも好ましいのは、波長400〜700nmの範囲にて平均屈折率差が0.01以下である。2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける断面方向の屈折率差を調整する方法としては、光学干渉機能を有する繊維を延伸加工することで、特定の延伸倍率とすることで、断面方向の屈折率を合わせることが可能であり、延伸倍率に関しては用いる樹脂の種類により調節が必要となる。光学干渉機能を有する繊維の延伸加工としては、該未延伸繊維を高屈折率樹脂と低屈折率樹脂のガラス転移温度以上であって、結晶温度以下の温度の加熱浴中で、2〜20倍に延伸することが良い。延伸倍率に関しては、延伸倍率が2倍より小さいと光学干渉を有する所定の層の厚みを実現することが困難であり、延伸倍率が20倍を越えると繊維破断や繊維のボイドが発生するために、光の散乱が生じ偏光素子の特性を低下させる原因となる。
【0025】
光学干渉機能を有する繊維径(或いは断面の長軸の長さ)としては、1μm以下50μm以上が好ましい。光学干渉機能を有する繊維径が1μm以下であると、光学干渉機能に必要な交互層状の断面構造をとることが困難になり、繊維径が50μ以上となると繊維加工の樹脂吐出のコントロールが困難になるために、均質な繊維を得ることが難しくなる。より好ましくは、2μm以上40μm以下、さらに好ましくは、3μm以上30μm以下である。
【0026】
光学干渉機能を有する繊維としては、図1―(a)〜(d)に示す形状が代表的な例として挙げられるが、層状構造が2段に分割されているもの、繊維の中で層状構造が2分割、3分割されているものでも、光学干渉機能を有する交互層状構造を有するものであれば良い。図1―(a)は、扁平断面の長軸方向に互いに屈折率の異なる2種類の樹脂が交互に積層された形状を、図1―(b)は、扁平断面形状がドーナツ状に積層された形状、図1―(c)は、交互積層の中間部に前記樹脂、又は他の樹脂による補強部を介在させた形状を、図1−(d)は、外周部に補強部を設けた形状を示す。
【0027】
光学干渉機能を有する繊維は、上記繊維が一方向に面状に配置される。配置は繊維を1層または2層以上の多層に一方向に並べた状態のものがよい。最適となる積層数については、1層でも比較的高い偏光性能を得ることが可能であるが、1層で隙間無く繊維を並べることは非常に難しい技術である。該繊維を用いる場合の積層数としては、2層以上100層以下が好ましく、より好ましくは3層以上100層以下、最も好ましくは5層以上100層以下である。積層する光学干渉機能を有する繊維としては、可視光の波長にて光学干渉機能を均質に得るために、光学干渉効果の最大となる波長が400〜500nmの繊維、500〜600nmの繊維、600〜700nmの繊維を組み合わせて積層しても良く、可視光の光学干渉の効果を得るためであれば、繊維の組み合わせの種類に制限は無いが、あまり種類が多くなると積層数が多くなりすぎて、透過光量が低下するので10種類以下が良い。
【0028】
繊維(A)に関して、RGBの色を補完するために、3色以上の色に対応する繊維(A)を一度に使用してもよく、撚糸として用いても、3色をそれぞれ規則的に逐次並べても構わない。繊維(A)の反射光のギラツキを抑え、視野角を広げるために、撚糸のより数の割合を高めることは効果的であり、光学特性に合せて撚りを調節することが出来る。繊維(A)の撚数としては、あま撚(撚数約500回/m)、中撚(撚数約500〜1000回/m)、強撚(撚数約1000〜2500回/m)、極強撚(撚数約2500回/m以上)があるが、光学特性に合せてそのいずれでも良い。繊維(B)の撚数としては好ましくは0より大きく2500回/m未満、より好ましくは10以上2000回/m以下、さらに好ましくは、100以上1500回/m以下となる。
【0029】
〔非偏光繊維(B)〕
本発明に用いる非偏光繊維は、直線偏光に対して、繊維の長さ方向と断面方向に対する光の反射、吸収特性がほとんど変化しない繊維を表す。
【0030】
該非偏光繊維は、前記繊維(A)に対して基本的に直交方向に、かつ面状に配置される。例えば、繊維(A)と非偏光繊維とは、一方を経糸とし、一方を緯糸として、織物加工した配置形態を有する。このとき用いる非偏光繊維における繊維は、光学透明であるポリマーからなることが好ましい。このとき光学透明という定義としては、該ポリマーを100μmのフィルムとした場合に、波長400〜800nmにおいて光線透過率80%以上が必要であり、より好ましくは85%以上である。かかるポリマーとしては、繊維に加工できればよく、例えば、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0031】
例えば、通常の光学透明な繊維においては、その長さ方向と断面方向の屈折率差が大きくことなる複屈折を有するが、その反射、吸収特性はほとんど変化が無く、非偏光繊維として扱う。複屈折を有する繊維では、直線偏光に対して位相差が影響するため、偏光が崩れるため、界面や背面での光の反射特性に影響を及ぼすので、複屈折は小さい方が好ましく、複屈折差は0.30以下が好ましく、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下である。
【0032】
また、場合においては色素などを用いて可視光領域の光や、特定波長の光を吸収する繊維としても、フィラーを添加により非偏光繊維に散乱特性を持たせ、スクリーンの光学特性をコントロールすることもできる。
【0033】
例えば、非偏光繊維は、必要に応じて染料等での着色を行っても良い。着色を行った非偏光繊維としては、可視光の光を吸収させるためには、黒染料にて着色を行うことが可能であり、スクリーンに必要な光学特性に応じて染料を適宜変化することが可能である。
【0034】
他にも、非偏光繊維として、散乱特性を持たせるためにフィラーなどを有する繊維を用いても良い。非偏光繊維に用いるフィラーとしては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
上記非偏光繊維を構成する繊維の太さとしては、平均粒径が好ましくは0.7μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.8μm以上80μm以下、更に好ましくは1μm以上50μm以下である。繊維の太さが0.7μm未満では繊維の紡糸、延伸加工技術が困難であると共に繊維の大きさに依存した可視領域の波長での表面散乱を受けやすく均一な色表示とすることが難しい。一方、繊維の太さが100μmを超えると繊維が太すぎるために、一方向に並べた際に所望の厚さの偏光板を作成しようとした場合に隙間が生じて、光抜け欠陥となる。
【0036】
非偏光繊維として、繊維の太さは均一である必要はなく、織物を形成できるのもであれば、モノフィラメント、マルチフィラメント等形態は問わず、また、繊維の形状としては、円に限定するものではなく、楕円や三角形、四角形、5角形、6角形、または、それ以上の多角形であっても良い。
【0037】
また一つマルチフィラメントの非偏光繊維の形状が均一である必要はなく、多種形状の繊維の複合体であっても構わないが、単一形状の繊維である方が混合比率等を均質に調整する必要がないので好ましい。非偏光繊維は、基本的に織物として取り扱うので、無限に長い繊維が好ましいが、最低でも1m以上の繊維が必要であり、好ましくは10m以上、より好ましくは100m以上である。
【0038】
〔光学透明樹脂(C)〕
本発明においては、光学干渉機能を有する繊維(A)と非偏光繊維、及び光学透明樹脂(C)から基本的に形成されている。例えば、光学干渉機能を有する繊維(A)とは光学透明樹脂(C)によって包みこまれ固定化された板状などの形態を取る。これは、繊維(A)の光の形状に起因する表面反射の影響を低減し、偏光反射特性の最大化を行う効果と共に、光学透明樹脂(C)は、繊維(A)と非偏光繊維を強固に固定化保持して、スクリーンとしての基材としての重要な役割を担う。
【0039】
そのため、光学透明樹脂(C)は、可視領域に吸収が少ないか又は吸収が実質なく、繊維(A)、非偏光繊維を構成するそれぞれの繊維に対して良好な密着性を示すものが好ましい。また、光学透明樹脂は、スクリーンの基材として機能するため、基材自体に複屈折があると、スクリーンをクロスニコル配置した場合の光りぬけの欠点となりえるので、複屈折の発現性が低い熱可塑性樹脂、熱または光硬化型樹脂などの材料が好ましい。なお本発明における光学透明樹脂とは、可視領域において透明であることが必要不可欠であり、具体的には、波長400nm〜800nmにおいて、光学透明樹脂を厚も50μmのフィルムとした場合、このフィルムで測定した光線透過率が80%以上である必要があり、好ましくは85%以上、もっとも好ましくは90%以上である樹脂をいう。
【0040】
以下に光学透明樹脂(C)の材料のいくつかを例示する。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリル樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンオキシドなどのポリエーテル、ポリビニルアルコールなどのビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、これらを構成するモノマーを2種以上用いた共重合体、さらにはポリ(メチルメタクリレート)、とポリ塩化ビニルの重量比82対18混合物、ポリ(メチルメタクリレート)とポリフェニレンオキシドの重量比65対35混合物、スチレン・無水マレイン酸共重合体とポリカーボネートの重量比77対23混合物などの非複屈折性のポリマーブレンドなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
光学透明樹脂としては、硬化型樹脂もひとつとして挙げられる。これは、例えば繊維(A)、非偏光繊維に該樹脂を塗布後速やかに硬化する点において、加工性に優れた材料として好ましい。硬化型樹脂において、外部励起エネルギーにより架橋反応などを経て硬化することにより得られる架橋型樹脂が代表として挙げられる。これらは、紫外線や電子線等の活性線照射によって硬化する活性線硬化型樹脂と熱により架橋反応を開始する熱架橋型樹脂等であるが、そのいずれでも構わない。
【0042】
活性線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が代表として挙げられる。その例としては紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型メタクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂及び紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂などが挙げられる。特に、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂が良く、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール等の光重合モノマーオリゴマーが好まれる。
【0043】
電子線硬化型樹脂の例としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0044】
熱硬化型樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂が挙げられ、またその混合物でもよい。
【0045】
本発明においては、上記いずれの硬化型樹脂においても、好適にもちいることができるが、繊維(A)の断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂を選択する必要がある。ここで、ほぼ一致するとは、繊維(A)の断面方向の屈折率の値との差が0.10以内であることをいう。このように繊維(A)の断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(C)を用いることにより、透過率の高いスクリーンが得られる。
【0046】
〔織物加工〕
本発明のスクリーンは、好ましくは繊維(A)と非偏光繊維(B)からなる織物により構成することができる。スクリーンとして用いるために、好ましくはおよそ90°の交差角度で高密度に織り込むことが好ましく、織物の隙間がない状態が好ましい。繊維を高密度織物化する技術としては、例えば特開平09−170175号公報、特開2000−008247号公報に開示されるような技術がその例として挙げられるが、織物化する製法はこれらに限定するものではなく、既存の高密度織物に関する技術を用いてもよい。織物に関しては、その繊維間の隙間をなくすために、熱プレスなどによるカレンダー加工を行い、繊維を扁平にする等の2次加工を行っても良い。織物に使用する繊維は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであっても良いが、ハンドリング面の取り扱い性および繊維間の隙間が小さくなるため偏光度がより向上する点において、マルチフィラメントである方が好ましい。得られた織物の幅、長さは特に限定されるものではないが、工業的には、400mm以上4000mm幅以内、長さ1m以上が好ましく、500mm以上3500mm幅以下、長さ10m以上がさらに好ましく、もっとも好ましくは、600mm以上3000mm幅以下、長さ100m以上である。幅が400mm幅未満、長さ1m未満であると、スクリーンに使用できる大画面のメリットが失われ、幅4000mm幅より大きくになるとロールフィルムとして均一に巻き取ることが困難になる。織物における経糸と緯糸であるが、繊維(A)を経糸にした場合は、非偏光繊維を緯糸に、非偏光繊維を経糸とした場合は繊維(A)を緯糸として、どちらが経糸、緯糸になっても構わない。
【0047】
このとき、経糸を繊維(A)とした織物を用いてスクリーンを作成した場合、スクリーンの反射軸は、繊維(A)の長軸方向(長さ方向)になることより、スクリーンをロール状に作成した場合の巻き取り方向に対して垂直方向に調節することが出来る。
【0048】
また、従来公知である2軸織物では、経糸と緯糸を斜めに交差させる「斜め織り」の織機を用いて、織物の長さ方向に対して、繊維(A)をある特定の角度をつけて、シート状に加工することが出来る。2軸織物の斜め織の技術としては、特公昭48−30032号公報、特公昭48−31951号公報、特公昭51−28748号公報、特開昭63−196738号公報に示されている。また、近年、桑村繊維(兵庫県多可郡中町)と織機販売会社「片山商店」(西脇市)などが経糸と緯糸を斜めに交差させる「斜め織り」の専用織機を開発したことが公表されている(神戸新聞2005/2/25記事)。この斜め織り2軸織物では、経糸に上記繊維(A)を用いて、緯糸に非偏光繊維を用いる。緯糸である繊維(A)の交差方向を調節することで、得られる斜め織物シートからなるスクリーンの反射軸の角度を調節することが可能である。
【0049】
本発明に用いるその他の織物として、3軸織物、4軸織物などの多軸繊維織物を利用することもとすることが可能であり、織物の長さ方向に対して、繊維(A)をある特定の角度をつけて、シート状に加工することが出来る。2軸方向を越える多軸繊維織物の作成方法としては、1方向の糸を配列させた状態にしておき、それと異なる方向の糸を同様に配列させた状態でさらに2方向を越える方向で重ねて、接着性の溶液、粉末を付与させるか、糸でステッチして一体化させるか、もしくは1方向の糸にあらかじめ吹付けにより熱接着性を付与させることで多方向の糸と固定することにより製造することが出来る。これらの製法は、いずれも糸を1方向、及び他方向に引き揃える設備と接着時に引き揃えた状態の糸を維持するために各糸を固定する製造設備によって作成することができる(例えば特開昭62−54904号公報、特開昭47−6585号公報参照)。さらに、タテ糸経糸とヨコ糸緯糸の交差角の調整としては、織物の角度調整装置を通過させることで、タテ糸経糸、ヨコ糸緯糸の交差角を容易に調整することが可能である。角度調整を施した織物は、単体の織物として用いても良く、また角度調整をした織物を積層して、溶融圧着させて高次多軸繊維織物として取り扱っても構わない。
なお、織物としては、例えば平織り、綾織り、繻子織り、横縞織り、からみ織り等があるがそのいずれであっても構わない。
【0050】
〔スクリーン〕
本発明のスクリーンの厚みは、通常0.02〜3mmのものを用いることができる。
本発明のスクリーンの製造方法としては、光学透明樹脂(C)として硬化樹脂を用いた一例として繊維(A)と非偏光繊維に前記硬化樹脂を必要に応じ溶媒等を用いて塗布し、硬化、乾燥等を経て製造する方法が挙げられる。生産性の点を考慮すると、塗布後速やかに硬化樹脂層を形成するものが好ましく、汎用的に用いられる材料、加工設備の面を考慮して、紫外線硬化樹脂がより好ましい。
【0051】
本発明のスクリーンは、表面処理をしてもよい。表面処理としては、液晶セルに向かい貼合しない面に、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0052】
また、アンチグレア処理はスクリーンの表面で外光が反射してスクリーン透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光透過光を拡散して視野角などを拡大するための拡散層(視野角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0053】
本発明のスクリーンは、反射型偏光繊維の反射軸方向を液晶プロジェクタの偏光方向と一致させて設置する。そのことにより画像に寄与する直線偏光を効果的に散乱することが可能となり、明るい表示を得ることが出来る。また、画像と関係ない反射軸と直交する光は、吸収型偏光繊維の吸収軸と同一方向になるので、光を吸収することで散乱を抑えることが可能である。したがって、外光を効果的に吸収することが可能となり、表示画像のコントラストを向上させることが可能となる。
【0054】
液晶プロジェクタの偏光方向RGBの3色で揃っていない場合は、その方向を揃える必要がある。プロジェクタの直線偏光を揃える方法としては、例えばカラーリンク社のカラーセレクトフィルム等を用いることができる。
【0055】
本発明のスクリーンは、透明基材に接着剤や粘着剤等を用いて貼付しても良い。透明基材としては、ガラス板やアクリル板が例示できる。
透明基材上のスクリーンの位置は、プロジェクタ側であってもプロジェクタと反対側であっても制限はない。
【0056】
本発明のスクリーンは背面に金属層などの反射層を設けても良い。反射型スクリーンの場合、プロジェクタ側(後方)に後方散乱された画像を観察することになる。しかし、一部の画像イメージは前方散乱されて観測者と反対側に抜けてしまい、画像の明るさが低下する場合がある。それを防ぐため、プロジェクタ側から見て最背面に金属層等からなる反射層を有しても良い。この反射層により、前方散乱したイメージが反射して後方に戻るため、画像の明るさを高めることが出来る。一方、画像と無関係の偏光は、吸収型偏光繊維により吸収されるため、コントラストの低下や、ギラツキの恐れが無い。
【0057】
該反射層に特に制限は無く、アルミ、銀等の金属薄膜、金属箔、金属板等を好ましく例示することが出来る。本発明によれば、直線偏光の偏光軸方向により光学特性の異なる偏光繊維からなるシートを基材として、シート上にフィラーを含む散乱層を形成することにより、表示品位に優れたプロジェクタスクリーンを提供することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
(1)繊維(A)の繊維断面方向の屈折率の測定
偏光顕微鏡を用いて、光源に干渉フィルタ(589nm)を設置して、直線偏光光源となるように調整した。
繊維をスライドガラスにとり、直線偏光が繊維の断面方向と平行になるように設置した。
屈折調整液を用いて、1.500から1.600まで、0.002STEPにて、顕微鏡を覗きながら、屈折調整液を繊維を順次滴下していくことで、繊維の外形が無くなるところを観測した。
(2)厚み測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
(3)プロジェクタスクリーンの評価
スクリーン反対側の視認性は目視にて評価した。項目は、明るさ、コントラスト、ギラツキの3点で、優れている場合を優、使用上問題の無いレベルを良、劣る場合を劣とした。
【0059】
[実施例1]
テレフタル酸を10モル%、スルフォイソフタル酸のナトリウムを1モル%共重合したポリエチレンナフタレート(極限粘度は、0.58;ナフタレンジカルボン酸89モル%、以下、共重合PENという)とナイロン6(極限粘度1.3)とを、交互積層体部の層数が61層で、周りを共重合PENが被覆している構造となるように溶融紡糸し、1000m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維を、ローラー延伸機で、2.0倍に延伸した。得られたファイバーは、12フィラメントからなるマルチファイバーであり、その断面形状は図1−(d)に示すような形態であり、繊維断面方向の長軸長さ60μm、短軸長さ19μm、扁平率3.2、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.09μm、ナイロン層の厚み0.10μmであった。このとき、この光学干渉機能を有する繊維の干渉効果としては、波長640nmを最大の反射特性を有する赤から橙系の干渉色が確認された(光学干渉繊維(赤))。上記同様に、共重合PENとナイロン6からなる光学干渉機能を有する繊維として、緑系色に対する波長530nmの反射特性が最大となる繊維(繊維断面方向の長軸長さ49μm、短軸長さ14μm、扁平率3.5、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.07μm、ナイロン層の厚み0.08μm、光学干渉繊維(緑))、青色に対する波長460nmの反射特性が最大となる繊維(繊維断面方向の長軸長さ45μm、短軸長さ11μm、扁平率4.1、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.06μm、ナイロン層の厚み0.06μm、光学干渉繊維(青))を得た(いずれも12フィラメントからなるマルチフィラメント)。これらいずれの光学干渉機能を有する繊維の波長589nmにおける断面方向の屈折率は、いずれも1.526であった。また、共重合PENの屈折率1.62であり、ナイロン6の屈折率1.53であり、2種の熱可塑性樹脂の屈折率差は0.09である。
【0060】
次に、極限粘度0.85のポリエチレン−2,6−ナフタレートチップを孔数30、孔径0.1mmの円形紡糸孔(L/D=2)を有する紡糸口金からポリマー温度315℃、紡糸速度500m/分で溶融紡糸した。この際、口金直下に30cmの長さの円筒型加熱筒を3段連結して設定した。加熱筒の直下で20℃の冷却風を長さ45cmに亘って3.5m3/hr(normal)吹き付けて糸条の冷却をはかった。次いでオイリングローラーにて油剤を付与した後、引取りローラに導き、巻取り機で巻取った。これにより、ポリエチレン −2,6−ナフタレートの直径6μmの未延伸糸(非偏光繊維(B))を得た。このとき、マルチフィラメントの径は約40μmであった。このポリエステル繊維(B)の屈折率は縦軸方向1.582、短径軸方向1.577であり、複屈折は0.005、平均屈折率は1.58であった。
【0061】
マルチフィラメントである各光学干渉繊維(赤、約90μm、青、約60μm、緑、約70μm、繊維の層として、各約5層ずつ、計約15層)の各ポリエステル繊維(A)を3束の撚糸(撚数700回/m)、ポリエステル繊維(非偏光繊維(B))を用いて経糸が繊維(A)、緯糸を繊維(B)とした平織り加工を行い、繊維織物を作成した。
【0062】
次に、BPEF−A:66重量部、UA:434重量部、希釈溶剤としてトルエン:40重量部、光開始剤として「イルガキュア」184:15重量部、レベリング剤として、SH28PA:0.18重量部を順次加えて均一になるまで攪拌したものを調液した。
BPEF−A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(大阪ガス製)
UA:ウレタンアクリレート(新中村化学製「NKオリゴU−15HA」)
「イルガキュア」184(チバガイギー社製)
SH28PA(東レ・ダウコーニング社製)
【0063】
調液した溶液を上記にて準備した繊維(A)、(B)からなる織物の上に均一に塗布して、繊維織物が該溶液により内包される状態を形成させた。これに強度160wの高圧水銀ランプで積算光量700mJ/cmの紫外線を照射し、該溶液を硬化させて光学透明樹脂によって繊維(A)と繊維(B)からなる織物が内包された、厚みが240μmであるプロジェクタスクリーンを得た。このとき、光学透明樹脂の屈折率は1.526であった。
【0064】
次いで、市販の二色性偏光板と上記プロジェクタスクリーンの反射軸と偏光板の吸収軸が直交するように貼り合せ加工を行った。
こうして得られたプロジェクタスクリーンを図2のように配置し、スクリーンの視認性を評価した。
【0065】
プロジェクタスクリーンの性能としては、下記結果となった。
明るさ 優
コントラスト 優
ギラツキ 優
【0066】
[比較例1]
特許文献6(7ページ、23〜27行)の記載に従い、3MDPRFとDBEFを積層したものをスクリーンとして用いた。この場合、DRPFの透過軸とDBEFの透過軸は同一になるように配置した。
こうして得られたプロジェクタスクリーンを図2のように配置し、スクリーンの視認性を評価した。
【0067】
プロジェクタスクリーンの性能としては、下記結果となった。
明るさ 劣
コントラスト 良
ギラツキ 劣
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスクリーンは、反射型プロジェクタのスクリーンとして好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1(a)〜(d)は本発明における光学干渉機能を有する繊維を表す概念図である。
【図2】スクリーンの性能評価時の配置を表す簡略図である。
【符号の説明】
【0070】
1:プロジェクタスクリーン
2:粘着剤
3:偏光板
4:粘着剤
5:ガラス(支持基材)
6:液晶プロジェクタ
7:観測者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光を有する透写光を受けて映像を映し出すスクリーンであって、該スクリーンが反射型偏光繊維と非偏光繊維が交差して形成された成形品を含むことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記反射型偏光繊維が
(a)少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成され、交互層状の断面構造を有する繊維であって、その交互層が5層以上であり、各層の厚さが0.02〜1.0μmの範囲にあり、且つ少なくとも該2種の熱可塑性樹脂は、該繊維の長さ方向に対する断面方向の波長589nmにおける屈折率差が0.01以下である光学干渉機能を有する繊維(A)であることを特徴とする請求項1記載のスクリーン。
【請求項3】
前記成形品が、(b)前記繊維(A)の長さ方向に対する断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(C)を含有してなり、前記繊維(A)は一方向面状に配置されなることを特徴とする請求項2記載のスクリーン。
【請求項4】
前記成形品が、反射型偏光繊維と非偏光繊維を経糸、緯糸のいずれかとした織物を含むことを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項5】
前記繊維(A)が光学透明樹脂(C)により内包固定化されている請求項3または4記載のスクリーン。
【請求項6】
前記繊維(A)の少なくとも2種の熱可塑性樹脂の屈折率差が0.02以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項7】
前記繊維(A)の平均径が、0.7μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項8】
光学透明樹脂(C)が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項9】
光学透明樹脂(C)が、硬化型樹脂であることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項10】
さらに金属反射層を有する請求項1〜9のいずれかに記載のスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−219074(P2007−219074A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37908(P2006−37908)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】