説明

スクリーン

【課題】画質劣化が生じることなく、投射レンズの歪曲収差による投影画像の歪みを補正できるスクリーンを提供する。
【解決手段】スクリーン1は、投射レンズを介して拡大投射された画像光が投影される。このスクリーン1は、画像光が投影され投影画像を表示する矩形状の投影表示領域Ar1と、投影表示領域Ar1の外側に設けられ、投射レンズの歪曲収差による投影画像Fgの歪みを擬似的に補正する歪み補正領域Ar2とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ等から拡大投射された画像光が投影される種々のスクリーンが提案されている。
ここで、プロジェクタは、光源から射出された光束を画像情報(画像信号)に応じて液晶パネル等の光変調装置にて変調して、投射レンズにて画像光をスクリーンに拡大投射するものである。このため、スクリーンに表示される投影画像は、投射レンズの収差(例えば、歪曲収差)により、所望の形状(矩形状)から歪んだ形状の画像になり易いものである。
そして、投影画像の歪みを補正する技術としては、前記画像情報に対して画像処理を施し、画像処理を施した画像情報に応じて光変調装置を駆動制御する技術が多用される(例えば、特許文献1参照)。すなわち、走査線内の画素数を所定走査線単位で変化させる、あるいは時間軸を変化させるような画像処理(デジタル処理)によって、予め光変調装置に前記所望の形状とは異なる形状の画像(画像光)を形成させ、前記画像光が投射レンズを介してスクリーンに投影された際に、投影画像を歪みのない前記所望の形状とする。
【0003】
【特許文献1】特開平4−42679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように前記画像情報に対して画像処理を施した場合には、前記画像情報から欠落する画素または前記画像情報に追加される画素が出てくるため、投影画像に画質劣化が生じてしまう、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、画質劣化が生じることなく、投射レンズの歪曲収差による投影画像の歪みを補正できるスクリーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスクリーンは、投射レンズを介して拡大投射された画像光が投影されるスクリーンであって、画像光が投影され投影画像を表示する矩形状の投影表示領域と、前記投影表示領域の外側に設けられ、前記投射レンズの歪曲収差による前記投影画像の歪みを擬似的に補正する歪み補正領域とを有していることを特徴とする。
ここで、歪み補正領域としては、該領域に模様を形成することにより投影表示領域に表示された投影画像の歪みを擬似的に補正するものとしてもよいし、該領域自体の形状により投影表示領域に表示された投影画像の歪みを擬似的に補正するものとしてもよい。
【0007】
本発明では、スクリーンは、矩形状の投影表示領域の外側に歪み補正領域が設けられている。このことにより、投射レンズの歪曲収差によって投影表示領域に表示された投影画像に歪みが生じている場合であっても、歪み補正領域により投影画像を観賞する観賞者に視覚的な錯覚を起こさせ、投影画像の外縁部分の湾曲形状が略直線形状となった歪みのない投影画像として観賞者に認識させることができる。
したがって、観賞者の視覚的な錯覚により投影画像の歪みを擬似的に補正できるので、画像処理を施して歪みを補正する必要がなく、画像処理を施した場合に生じる画質劣化が生じることがない。
【0008】
本発明のスクリーンでは、前記投影画像は、前記投射レンズの歪曲収差により糸巻き型に歪み、前記歪み補正領域には、前記投影表示領域の各外縁部の略中心位置から放射状に伸びる複数の線状部が形成されていることが好ましい。
本発明では、歪み補正領域には、複数の線状部が形成されている。例えば、歪み補正領域の上方側部分において、各線状部は、左右方向の略中心位置で互いに近接した「密」の状態となり、左右方向の略中心位置から左右方向に離れるにしたがって互いに離間した「粗」の状態となるように、上方側に拡がるように形成されている。このため、歪み補正領域に形成された複数の線状部により観賞者に視覚的な錯覚を起こさせ、投影画像における下方側へと湾曲した上端縁の略中心位置が上方側に擬似的に位置付けられ該上端縁が略直線形状となっているように観賞者に認識させることができる。投影画像における下端縁、左端縁、右端縁についても同様である。
【0009】
本発明のスクリーンでは、前記投影画像は、前記投射レンズの歪曲収差により糸巻き型に歪み、前記歪み補正領域は、その外縁部が糸巻き型に歪んだ前記投影画像の各端縁の湾曲方向と逆方向に湾曲していることが好ましい。
本発明では、歪み補正領域は、その外縁部が外側に湾曲している。このため、歪み補正領域の外縁部と投影画像の各端縁とが近接した状態となるように設定することで、歪み補正領域における外縁部により観賞者に視覚的な錯覚を起こさせ、投影画像における糸巻き型に歪んだ各端縁が該端縁と歪み補正領域における外縁部との略中心位置に位置付けられ各端縁が略直線形状となっているように観賞者に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スクリーン1を前面側から見た図である。具体的に、図1(A)は、スクリーン1に画像光が投影されていない状態を示す図である。図1(B)は、スクリーン1に画像光が投影され、投影画像Fgが表示された状態を示す図である。
スクリーン1は、例えば、プロジェクタ等から拡大投射された画像光が投影される。本実施形態では、スクリーン1は、入射した画像光を反射して投影画像Fgを表示する反射型スクリーンとして構成されている。
ここで、具体的な図示は省略するが、プロジェクタは、光源装置と、光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する液晶パネル等の光変調装置と、光変調装置にて変調された光束をスクリーン1に向けて拡大投射する投射レンズ等を含むものである。そして、本実施形態では、投射レンズの歪曲収差により、投影画像Fgは、図1(B)に示すように、糸巻き型に歪んでいるものとする。
【0011】
このスクリーン1は、図1に示すように、平面視矩形状に形成されたものであり、投影表示領域Ar1と、歪み補正領域Ar2とを有する。
投影表示領域Ar1は、図1に示すように、スクリーン1の中央部分に位置する矩形状の領域であり、画像光が投影され、投影画像Fgを表示する。
歪み補正領域Ar2は、図1に示すように、投影表示領域Ar1の外側に位置する矩形枠状の領域であり、前記投射レンズの歪曲収差による投影画像Fgの歪みを擬似的に補正する。
【0012】
この歪み補正領域Ar2には、図1に示すように、投影表示領域Ar1の各外縁部の各中心位置P1〜P4から放射状に伸びる複数の線状部Lが描画されている。
例えば、歪み補正領域Ar2の上方側部分において、各線状部Lは、図1に示すように、左右方向の略中心位置が互いに近接した「密」の状態となり、左右方向の略中心位置から左右方向に離れるにしたがって互いに離間した「粗」の状態となるように、上方側に拡がるように描画されている。なお、歪み補正領域Ar2の下方側部分、左側部分、および右側部分も略同様である。
【0013】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、スクリーン1は、矩形状の投影表示領域Ar1の外側に歪み補正領域Ar2が設けられている。また、歪み補正領域Ar2には、複数の線状部Lが描画されている。このことにより、プロジェクタを構成する投射レンズの歪曲収差によって投影表示領域Ar1に表示された投影画像Fgに歪みが生じている場合であっても、歪み補正領域Ar2に描画された複数の線状部Lにより投影画像Fgを観賞する観賞者に視覚的な錯覚を起こさせ、例えば、投影画像Fgにおける下方側へと湾曲した上端縁の略中心位置が上方側に擬似的に位置付けられ該上端縁が略直線形状となっているように観賞者に認識させることができる。また、投影画像Fgにおける下端縁、左端縁、右端縁についても同様に略直線形状となっているように観賞者に認識させることができる。このため、歪みのない矩形状の投影画像Fgとして観賞者に認識させることができる。
したがって、観賞者の視覚的な錯覚により投影画像Fgの歪みを擬似的に補正できるので、画像処理を施して歪みを補正する必要がなく、画像処理を施した場合に生じる画質劣化が生じることがない。
【0014】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造および同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図2は、第2実施形態におけるスクリーン10を前面側から見た図である。具体的に、図2(A)は、スクリーン10に画像光が投影されていない状態を示す図である。図2(B)は、スクリーン10に画像光が投影され、投影画像Fgが表示された状態を示す図である。
本実施形態では、図2に示すように、前記第1実施形態に対して、線状部Lを描画することなく、歪み補正領域Ar20の形状を変更することで、前記投射レンズの歪曲収差による投影画像Fgの歪みを擬似的に補正する。その他の構成は、前記第1実施形態と同様のものである。
【0015】
具体的に、歪み補正領域Ar20は、図2に示すように、その外縁部が糸巻き型に歪んだ投影画像Fgの湾曲方向と逆方向に湾曲した形状を有する。すなわち、本実施形態では、スクリーン10全体の形状を、前記第1実施形態では矩形形状としていたのに対して、樽型の形状に設定している。
【0016】
前記第2実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、歪み補正領域Ar20は、その外縁部が外側に湾曲している。このため、図2(B)に示すように、歪み補正領域Ar20の外縁部と投影画像Fgの各端縁とが近接した状態となるように設定することで、歪み補正領域Ar20における外縁部により観賞者に視覚的な錯覚を起こさせ、投影画像Fgにおける糸巻き型に歪んだ各端縁が該端縁と歪み補正領域Ar20における外縁部との略中心位置に位置付けられ各端縁が略直線形状となっているように観賞者に認識させることができる。このため、前記第1実施形態と同様に、歪みのない矩形状の投影画像Fgとして観賞者に認識させることができ、画質劣化も生じることがない。
また、本実施形態では、スクリーン10の外形形状を樽型に形成するだけで、上述した効果を享受でき、前記第1実施形態と比較して、スクリーン10の製造を容易に実施できる。
【0017】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記第1実施形態では、複数の線状部Lは、直線状に形成されていたが、これに限らず、曲線状に形成しても構わない。また、複数の線状部Lは、歪み補正領域Ar2に描画されたものとしていたが、これに限らず、棒状の部材を歪み補正領域Ar2に接着等により固定した構成としても構わない。
【0018】
前記第1実施形態において、歪み補正領域Ar2の外縁部を前記第2実施形態で説明した歪み補正領域Ar20のように湾曲させた形状としても構わない。
前記第1実施形態において、複数の線状部Lは、投影表示領域Ar1の各外縁部の各中心位置P1〜P4の近傍から放射状に伸びるように形成されていればよく、例えば、投影表示領域Ar1内から放射状に伸びるように形成されていても構わない。
【0019】
前記各実施形態では、糸巻き型に歪んだ投影画像Fgを擬似的に補正する構成を説明したが、歪み補正領域に前記第1実施形態とは異なる模様の複数の線状部を設けたり、歪み補正領域を前記第2実施形態とは異なる形状にすることで、樽型に歪んだ投影画像Fgを擬似的に補正することも可能である。
前記各実施形態では、スクリーン1,10は、反射型スクリーンで構成されていたが、これに限らず、入射した画像光を透過して投影画像Fgを表示する透過型スクリーンとして構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のスクリーンは、画質劣化が生じることなく、投射レンズの歪曲収差による投影画像の歪みを補正できるため、プロジェクタ等から拡大投射された画像光が投影されるスクリーンとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態におけるスクリーンを前面側から見た図。
【図2】第2実施形態におけるスクリーンを前面側から見た図。
【符号の説明】
【0022】
1,10・・・スクリーン、Ar1・・・投影表示領域、Ar2,Ar20・・・歪み補正領域、Fg・・・投影画像、L・・・線状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射レンズを介して拡大投射された画像光が投影されるスクリーンであって、
画像光が投影され投影画像を表示する矩形状の投影表示領域と、
前記投影表示領域の外側に設けられ、前記投射レンズの歪曲収差による前記投影画像の歪みを擬似的に補正する歪み補正領域とを有している
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記投影画像は、前記投射レンズの歪曲収差により糸巻き型に歪み、
前記歪み補正領域には、前記投影表示領域の各外縁部の略中心位置から放射状に伸びる複数の線状部が形成されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスクリーンにおいて、
前記投影画像は、前記投射レンズの歪曲収差により糸巻き型に歪み、
前記歪み補正領域は、その外縁部が糸巻き型に歪んだ前記投影画像の各端縁の湾曲方向と逆方向に湾曲している
ことを特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−69497(P2009−69497A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238089(P2007−238089)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】