説明

スクリーン

【課題】表示画像の輝度を高めることができるスクリーンを提供すること。
【解決手段】所定の出射位置から斜方入射される光に応じた画像を表示するスクリーン1Aであって、入射される光を反射させるレンズ要素3が複数形成された反射面21を有するスクリーン本体2と、反射面21に対して光の入射側に配置される第1層(基板6)と、スクリーン本体2と第1層との間に介装される第2層(空気層AL)と、を有し、第1層は、第2層より屈折率が高く、第1層は、入射された前記光が透過する領域の少なくとも一部に、出射位置から離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなるように形成された角度変更部63を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示するスクリーンに関し、特に、プロジェクター等の画像投射装置から斜方入射される投射光に応じた画像を表示するスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等の画像投射装置から投射された画像を表示するスクリーンが知られている。このようなスクリーンとして、プロジェクターとの距離が短い場合でも、当該プロジェクターから入射された光を正面側の観察位置に反射できるスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のスクリーンでは、入射面に凹状のレンズ要素が複数配列されており、当該各レンズ要素の表面には、光反射層が形成されている。これら光反射層に入射された光のうち、一部の光は、前述の観察位置に反射され、当該観察位置にて画像として視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−96883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の特許文献1に記載のようなスクリーンに投射光が斜方入射される場合、スクリーンの入射面の法線と、当該入射面に入射される投射光の光路との角度が比較的小さいと、各レンズ要素に入射される光線の幅が広い。このように光線の幅が広いと、前述の各レンズ要素の広範囲に、密度が低い光が入射されることとなる。このような場合、前述の光反射層において、入射された光を観察位置に有効に反射させる有効反射領域に入射される光量が少ないため、表示画像の輝度がそれほど高くないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、表示画像の輝度を高めることができるスクリーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明のスクリーンは、所定の出射位置から斜方入射される光に応じた画像を表示するスクリーンであって、入射される前記光を反射させるレンズ要素が複数形成された反射面を有するスクリーン本体と、前記反射面に対して前記光の入射側に配置される第1層と、前記スクリーン本体と前記第1層との間に介装される第2層と、を有し、前記第1層は、前記第2層より屈折率が高く、前記第1層は、入射された前記光が透過する領域の少なくとも一部に、前記出射位置から離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなるように形成された角度変更部を有することを特徴とする。
【0007】
なお、反射面に形成されるレンズ要素は、凹曲面を有するレンズ要素を例示できる。また、以下の説明で反射面の法線という場合、当該反射面の各レンズ要素により形成される凹凸を平均化した仮想平面の法線を示す。
【0008】
本発明によれば、所定の出射位置から出射された光は、第1層に入射されて内部を透過した後、当該第1層より屈折率の低い第2層を介してスクリーン本体に入射される。この第1層において当該光が透過する領域内には、角度変更部が形成されている。この角度変更部は、出射位置から離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなるように形成されているので、出射位置側の面とスクリーン本体側の面とは、一方に対して他方が傾斜した傾斜面となる。このような角度変更部を透過する光には、出射位置側の面と、スクリーン本体側の面とで屈折が生じるが、当該傾斜面により、スクリーン本体に向かう光の進行方向は、当該光の到達位置が出射位置からより離れた位置となるように変更される。このため、第1層及び第2層が無い場合に比べて、スクリーン本体の反射面に入射される光の入射角(前述の仮想平面の法線と反射面に入射される光の光路との交差角)を大きくすることができる。このような構成により、反射面に入射される光線の幅を、第1層及び第2層が無い場合に比べて小さくすることができ、光の密度を高めることができる。従って、レンズ要素において、所定の位置(例えば、観察位置)に光を反射させる有効反射領域に入射される光の光量を多くすることができるので、スクリーンに表示される画像の輝度を向上できる。
【0009】
本発明では、前記角度変更部は、前記出射位置側の面である平面状の第1面と、前記スクリーン本体側の面である平面状の第2面と、前記第1面及び前記第2面における前記出射位置から離れた端部間を接続する方向に延出する第3面とを有し、前記第1層は、前記角度変更部が1つの単位形状として複数形成された構成を有し、それぞれの前記角度変更部の第1面は、前記第1層において前記出射位置側の面を構成し、それぞれの前記角度変更部の第2面は、前記第1層において前記スクリーン本体側の面を構成することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、第1層における所定の出射位置側の面と、スクリーン本体側の面との少なくともいずれかの断面形状は、鋸歯状となる。このため、第1層が1つの角度変更部により構成されている場合(第1層における所定の出射位置側の面とスクリーン本体側の面とが1つの角度変更部の第1面及び第2面により構成される場合)に比べ、第1層の厚さ寸法(第1層に入射された光が進行する方向の寸法)を小さくすることができる。従って、スクリーンの厚さ寸法が不要に大きくなることを抑制できる。
【0011】
本発明では、それぞれの前記角度変更部は、前記第1層における正面と、当該第1層における背面と、これら正面又は背面の延長面とのいずれかの面上に設定された第1基準点を中心とする同心真円状に形成され、前記第1基準点からの放射方向に沿って配列されていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、第1基準点を通り、かつ、反射面の法線に沿う方向に前述の光の出射位置が設定されている場合に、当該出射位置から出射された光は、当該光が入射される角度変更部における円弧の接線に対して垂直に入射される。このような構成によれば、それぞれの角度変更部を介してスクリーン本体のレンズ要素に入射される光の入射角を最も大きくすることができる。従って、有効反射領域に入射される光の光量を確実に増加させることができ、表示画像の輝度を一層向上できる。
【0013】
本発明では、それぞれの前記レンズ要素は、前記反射面及び当該反射面の延長面のいずれかの面上に設定された第2基準点を中心とする略円弧状の基準線に沿って配列されていることが好ましい。
【0014】
なお、第1基準点及び第2基準点の位置は、スクリーンを正面視した場合(光の出射位置側から観察した場合)に一致していてもよく、異なっていてもよい。また、基準線の軌跡は、真円又は楕円の一部を構成する円弧状でもよく、当該円弧に直線及び曲線を付加した円弧状でもよい。
本発明によれば、互いに平行な直線状の基準線に沿ってレンズ要素が複数配列されたスクリーン本体が用いられる場合に比べ、各レンズ要素において入射された光を所定の位置(例えば、表示画像の観察位置)に反射可能な有効反射領域に、光を入射させやすくすることができる。従って、表示画像の輝度を向上できる。
【0015】
本発明では、前記角度変更部の配列周期と、前記レンズ要素の配列周期とは異なり、前記レンズ要素における前記第2基準点からの放射方向の寸法は、当該レンズ要素に対応する前記角度変更部における前記第1基準点からの放射方向の寸法の整数倍でないことが好ましい。
【0016】
ここで、角度変更部からスクリーン本体に向けて出射される光のうち、第3面から出射される光は、レンズ要素における前述の有効反射領域に入射しづらい。換言すると、当該第3面から出射される光は、認識される画像を形成する光となりづらい。このため、第1基準点の位置と第2基準点の位置とが、スクリーンを正面視した際に一致する状態で、角度変更部の配列周期とレンズ要素の配列周期とが一致し、かつ、レンズ要素における第2基準点からの放射方向の寸法が、当該角度変更部における第1基準点からの放射方向の寸法の整数倍である場合には、各レンズ要素において第3面から出射された光の入射位置が固定されてしまうため、表示画像に輝度むらが生じてしまう。
【0017】
これに対し、本発明では、角度変更部の配列周期と、レンズ要素の配列周期とが異なり、更に、レンズ要素における第2基準点からの放射方向の寸法が、角度変更部における第1基準点からの放射方向の寸法の整数倍でない。これによれば、第1基準点の位置と第2基準点の位置とが、スクリーンを正面視した際に一致する状態でも、各レンズ要素において、第3面から出射された光の入射位置をばらつかせることができるので、スクリーン全体で反射される光を均一化できる。従って、表示画像に輝度むらが生じることを抑制できる。
【0018】
本発明では、前記第1層における前記出射位置側の面と前記スクリーン本体側の面との少なくともいずれかは、反射防止層を有することが好ましい。
このような反射防止層としては、表面反射を軽減して透過率を向上させるフィルム又は膜を例示できる。
本発明によれば、当該各面の少なくともいずれかに反射防止層が形成されているので、第1層に入射される光の光量を増加させることができる。従って、表示画像の輝度を一層向上できる。
【0019】
本発明では、前記第1層における前記出射位置側の面は、平面であることが好ましい。
ここで、プロジェクター及びスクリーンは、プレゼンテーション等で利用されることが多いが、当該プレゼンテーションの場では、表示画像を指し棒等で指したり、或いは、当該画像に文字等を記入する場合がある。この際、スクリーンの表面に凹凸があると、このような操作を行いづらい。
【0020】
これに対し、本発明では、第1層における所定の出射位置側の面が平面であるので、当該操作を行いやすくすることができる。従って、スクリーンの汎用性を向上できる。なお、このような効果は、基板に沿って移動する電子ペンの軌跡を取得して、当該軌跡に応じた線を、表示画像中に描画するインタラクティブホワイトボードシステムにおいて、より好適に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクリーンの使用態様を示す側面図。
【図2】前記実施形態におけるスクリーン本体を示す正面図。
【図3】前記実施形態におけるレンズ要素を示す斜視図。
【図4】前記実施形態におけるレンズ要素を示す斜視図。
【図5】前記実施形態におけるスクリーンを示す断面図。
【図6】前記実施形態における基板を示す正面図。
【図7】前記実施形態におけるスクリーンの下端近傍に位置する角度変更部を示す断面図。
【図8】前記実施形態におけるスクリーンの中央近傍に位置する角度変更部を示す断面図。
【図9】前記実施形態におけるスクリーンの上端近傍に位置する角度変更部を示す断面図。
【図10】前記実施形態におけるスクリーン本体に投射光を直接入射させた場合の光路を説明する図。
【図11】本発明の第2実施形態に係るスクリーンを示す断面図。
【図12】本発明の第3実施形態に係るスクリーンを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔スクリーンの機能〕
図1は、本実施形態に係るスクリーン1Aの使用態様を示す側面図である。
なお、以下の説明では、説明の便宜上、スクリーン1Aにおいて、プロジェクター9が設置される側を正面側、当該正面側の反対側を背面側として記載する。また、スクリーン1Aを正面視した際の右方向をX方向とし、鉛直方向(自重が掛かる方向)をY方向とし、更に、スクリーン1Aの正面の法線に沿って当該スクリーン1Aから離間する方向をZ方向とする。
【0023】
本実施形態に係るスクリーン1Aは、図1に示すように、当該スクリーン1Aの正面側下方に位置するプロジェクター9(詳しくは、投射光学装置の位置である出射位置PP)から斜方入射される投射光PLを正面側に反射して、当該投射光により形成される画像を表示する反射型スクリーンである。このスクリーン1Aに入射された投射光PLは、当該正面の中心における法線方向(すなわちZ方向)に設定された観察位置VPに向けて反射される。これにより、観察位置VPに位置する観察者VRは、表示された画像を観察できる。
【0024】
ここで、スクリーン1Aに画像を形成する投射光PLを投射するプロジェクター9の構成について説明する。
プロジェクター9は、詳しい図示を省略するが、光源装置、色分離光学装置、光変調装置、色合成光学装置及び投射光学装置を有し、投射光PLの中心軸がスクリーン1Aの中心点CPを通るように配置される。このプロジェクター9では、色分離光学装置により、光源装置から出射された光束が赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色光に分離され、3つの液晶パネルを有する光変調装置により、各色光が画像情報に応じてそれぞれ変調される。そして、色合成光学装置により、変調された各色光が合成され、投射光学装置により、合成された光(画像光)が投射される。
【0025】
このようなプロジェクター9は、上記構成の他、光変調装置により変調された光(画像光を含む)を円偏光に変換する位相差板(λ/4板)を有する。このため、投射光学装置が投射する光は、円偏光により形成された光である。これは、スクリーン1Aの後述する基板6を投射光が透過する際に、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色光間の明るさに差が出て色味が変化してしまうことを抑えるためである。なお、各色光を形成する円偏光の回転方向は、一致していることが好ましい。
【0026】
〔スクリーンの概略構成〕
スクリーン1Aは、スクリーン本体2と、当該スクリーン本体2の正面側に位置する透光性の基板6と、当該スクリーン本体2及び基板6の間に介装される空気層ALと、を有する。これらのうち、基板6は、本発明の第1層に相当し、また、空気層ALは、本発明の第2層に相当する。
【0027】
〔スクリーン本体の構成〕
図2は、スクリーン本体2を示す正面図である。なお、図2においては、基準線SL1のうち代表的な基準線SL1を図示しており、実際にはより細かい間隔で当該基準線SL1は設定されている。また、図2においては、図示された基準線SL1の符号も一部省略する。
スクリーン本体2は、基板6及び空気層ALを透過して入射される投射光PLを反射させる。このスクリーン本体2により反射された投射光PLは、再び空気層AL及び基板6を透過し、観察位置VPに向けて出射される。このスクリーン本体2は、図2に示すように、正面側から見て横長の略長方形状に形成されており、当該スクリーン本体2の正面21は、基板6及び空気層ALを介して投射光PLが入射される入射面であり、また、当該投射光PLを反射させる反射面でもある。すなわち、正面21は、本発明の反射面に相当する。
【0028】
このような正面21には、当該正面21の延長面22上に予め設定された基準点SP1を中心とした所定範囲内の領域23(図2における斜線部分)と、当該領域23外の領域24とが設定され、これら各領域23,24には、後述するレンズ要素3(図3及び図4参照)が配列されている。なお、基準点SP1は、本発明の第2基準点に相当し、本実施形態では、中心点CPを通る鉛直線である中心線CL上に設定されており、スクリーン1Aを正面視した際には、出射位置PPと一致する位置に設定されている。
【0029】
領域23内には、それぞれ基準点SP1を中心とする同心円(円及び楕円を含む)の一部を構成する円弧状の仮想の基準線SL1に沿って、第1凹部4(図3参照)からなるレンズ要素3Aが配置される。また、領域24内には、当該基準線SL1に沿って、第1凹部4と、当該第1凹部4に対して基準点SP1寄りの位置に隣接して形成される第2凹部5(図4参照)とにより構成されるレンズ要素3Bが配置される。これら基準線SL1は、本発明の基準線に相当する。
【0030】
これら領域23,24に設定される基準線SL1の間隔は、基準点SP1から離れるに従って大きくなるように設定されており、これにより、基準点SP1から離れるに従って、レンズ要素3A,3Bの中心間距離は大きくなる。また、レンズ要素3A,3Bの基準点SP1からの放射方向(図3及び図4におけるA方向)の寸法も、当該基準点SP1から離れるに従って大きくなるように設定されている。更に、基準線SL1に沿う方向のレンズ要素3A,3Bの間隔は、基準点SP1からの放射方向と中心線CLとのなす角が、45度の時に最も大きく、当該角度が45度から0度に向かうに従って、及び、当該角度が45度から90度に向かうに従って小さくなるように設定されている。
このような配列パターンに応じて、基準点SP1に近い基準線SL1は、図2に示したように、長径がY方向に沿う縦長楕円の一部を構成する円弧状となり、当該基準点SP1から離れるに従って、基準線SLの軌跡は、長径がX方向に沿う横長楕円の一部を構成する円弧状に変化する。このため、基準点SP1から所定寸法離れた基準線SL1の軌跡は、真円の一部を構成する円弧状となる。
以下、正面21及び延長面22に沿って基準点SP1から放射状に延出する方向(放射方向)をA方向と記載及び図示する。
【0031】
〔レンズ要素の構成〕
図3は、レンズ要素3Aを示す斜視図である。
第1凹部4により構成されるレンズ要素3Aは、前述の基準線SL1に沿って配列され、これにより、領域23には、当該基準線SL1に沿う複数のレンズ要素3Aにより構成されるレンズ列が複数形成される。
このようなレンズ要素3Aは、図3に示すように、投射光PLが入射される所定の曲率の凹曲面をそれぞれ有し、当該凹曲面には、入射された光を反射させる反射層41が形成されている。この反射層41が形成される領域内には、入射される投射光PLを反射させて前述の観察位置VPに導く有効反射領域ARが含まれる。このような反射層41は、高反射性を有する白色塗料をスプレー等で塗布するか、或いは、アルミや銀を斜方から蒸着する等して形成される。
【0032】
図4は、レンズ要素3Bを示す斜視図である。
第1凹部4及び第2凹部5により構成されるレンズ要素3Bは、前述の基準線SL1に沿って配列され、これにより、領域24には、当該基準線SL1に沿う複数のレンズ要素3Bにより構成されるレンズ列が複数形成される。
これらのうち、第2凹部5は、図4に示すように、第1凹部4に対して基準点SP1寄りの位置に当該第1凹部4に隣接して形成されている。これら第2凹部5は、第2凹部5と、当該第2凹部5に対して基準点SP1側とは反対側に隣接する第1凹部4との間の稜線を低くして、反射層41(詳しくは有効反射領域AR)に投射光PLを入射させる機能を有する。
【0033】
〔基板の構成〕
図5は、スクリーン1Aの縦断面(上下方向の断面)を示す図である。なお、図5は、前述のA方向及びB方向と、Z方向とに沿う平面におけるスクリーン1Aの中央近傍の断面を模式的に示す図であり、当該図5においては、各レンズ要素3を半円状に省略して図示する。また、あるレンズ要素3に入射される投射光PLのうち、有効反射領域ARに入射される投射光PLの範囲を点線の矢印により示す。
基板6は、前述のように、透光性を有する樹脂(例えば透明塩化ビニル樹脂)又はガラス等により、スクリーン本体2の縦横(Y方向及びX方向)の寸法と略同寸法に形成され、スクリーン本体2の正面側に所定の厚さ寸法の空気層ALを介して配置される。この基板6は、図5に示すように、プロジェクター9から入射された投射光PLをスクリーン本体2の反射面である正面21に導く際に、当該正面21に入射される投射光PLの入射角(正面21の法線と投射光PLの光路との角度)を基板6が設けられていない場合に比べて大きくして、当該投射光PLを正面21に入射させる機能を有する。換言すると、基板6は、スクリーン本体2の有効反射領域ARに入射される光の密度を高める機能を有する。なお、正面21には、凹曲面状のレンズ要素3が複数形成されているので、正面21の法線という場合には、当該正面21の凹凸を平均化した仮想平面の法線を意味する。
【0034】
基板6は、プロジェクター9からの投射光PLが直接入射される平面状の正面61と、当該正面61から入射された投射光PLが内部を透過した後にスクリーン本体2に向けて出射される断面視鋸歯状の背面62とを有する。
これらのうち、背面62は、正面21にて反射された光が入射される入射面でもあり、また、正面61は、背面62から入射された投射光PLが出射される出射面でもある。なお、正面61は、本実施形態では、正面21(詳しくは、前述の仮想平面)と略平行となるように配置される。
これら正面61及び背面62の表面には、反射防止層が形成されている。このため、正面61では、プロジェクター9からの投射光PLの正面61での散乱が抑制され、背面62では、スクリーン本体2から入射される光が好適に基板6内部に導かれる。
【0035】
〔角度変更部の構成〕
図6は、角度変更部63の基準線SL2を示す図である。なお、図6では、基準線SL2を実線で示し、前述の基準線SL1を点線で示すが、これら基準線SL1,SL2のうち代表的な基準線SL1,SL2を図示しており、実際にはより細かい間隔で当該基準線SL1,SL2は設定されている。また、図6においては、図示された基準線SL1,SL2の符号も一部省略する。
このような基板6において投射光PLが入射される領域には、1つの単位形状である角度変更部63が複数形成されている。具体的に、それぞれの角度変更部63は、図6に示すように、正面61の延長面61A上に設定された基準点SP2を中心とする同心真円の一部を構成する複数の基準線SL2沿って形成されている。なお、この基準点SP2は、本発明の第1基準点に相当する。
【0036】
すなわち、角度変更部63において後述する第3面633が当該基準線SL2に沿うように、それぞれの角度変更部63は、同心真円状に形成されている。また、詳しくは後述するが、角度変更部63の周期とレンズ要素3の周期とは異なっている。そして、これら角度変更部63がB方向に沿って隣接して配列されている。なお、B方向は、正面61及び延長面61Aに沿って基準点SP2からの放射方向である。
このような基準点SP2の位置は、本実施形態では、スクリーン1Aを正面視した際に基準点SP1及び出射位置PPと一致する位置に設定されているが、異なっていてもよい。なお、当該スクリーン1Aの正面視で、出射位置PPと重なる位置であることが、詳しくは後述するが、基板6の機能として好ましい。
【0037】
それぞれの角度変更部63は、図5に示すように、断面視略直角台形状(互いに平行な二辺と、当該二辺を接続する一辺とが直交する台形状)に形成され、前述の出射位置PPから離れるに従って厚さ寸法(Z方向の寸法)が大きくなる。すなわち、各角度変更部63は、B方向に向かうに従って厚さ寸法が大きくなる。
このような角度変更部63は、断面視略直角台形状において前記一辺を構成する第1面631と、当該一辺の対辺を構成する第2面632と、当該第1面631及び第2面632における基準点SP2から離れた端部間を接続する方向に延出する第3面633とを有する。なお、第1面631及び第2面632における基準点SP2寄りの端部間を接続する方向に延出する面については、各角度変更部63が互いに一体的に基板6に形成されているため、当該基板6における基準点SP2側の端面(下端面)以外では観察されない。
【0038】
第1面631は、平面状に形成されており、正面61をそれぞれ構成する。
第3面633は、基板6においては、B方向に互いに隣接する各角度変更部63の第2面632の端部間を接続する。
第2面632は、平面状に形成されており、第3面633とともに鋸歯状の背面62を構成する。この第2面632は、角度変更部63の内部(基板6の内部)を透過した投射光PLをスクリーン本体2に向けて出射するとともに、当該スクリーン本体2にて反射された投射光PLが入射される面である。
このような第2面632は、B方向に向かうに従って第1面631から離間する方向に傾斜している。換言すると、第2面632は、B方向に向かうに従ってスクリーン本体2に近接する方向に傾斜している。
【0039】
図7〜9は、スクリーン1Aにおける基準点SP2に近い角度変更部63、中央近傍の角度変更部63、及び、基準点SP2から遠い角度変更部63のBZ平面での断面をそれぞれ示す図である。なお、図7〜9においては、プロジェクター9から入射される投射光PLの光路を点線で示し、前述の有効反射領域ARにて反射された投射光PLが基板6を介して観察位置VPに向かう光路を一点鎖線で示している。
この第2面632の傾斜角θ1(第1面631と平行な面に対する交差角θ1)は、図7〜9に示すように、角度変更部63の形成位置に応じて設定されている。すなわち、角度変更部63の形成位置がB方向に向かうに従って、当該傾斜角θ1は小さくなるように設定される。
【0040】
具体的に、図7及び図8に示すように、基板6の中央近傍に形成された角度変更部63の第2面632の傾斜角θ1は、当該角度変更部63に対して基準点SP2に近い位置(出射位置PP寄りの位置)に形成された角度変更部63の第2面632の傾斜角θ1より小さい。また、図8及び図9に示すように、中央近傍に形成された角度変更部63に対して基準点SP2から遠い位置(出射位置PPから遠い位置)に形成された角度変更部63の第2面632の傾斜角θ1は、当該中央近傍に形成された角度変更部63の第2面の傾斜角θ1より小さい。
なお、本実施形態では、基板6の中央近傍に形成された角度変更部63(図8で示した角度変更部63)における第2面632の傾斜角θ1は、略5度に設定されている。また、基準点SP2に近い位置の角度変更部63(図7で示した角度変更部63)における第2面632の傾斜角θ1は、略22度に設定され、基準点SP2から遠い位置の角度変更部63(図9で示した角度変更部63)における第2面632の傾斜角θ1は、略3度に設定されている。しかしながら、これら傾斜角θ1は適宜設定してよい。
【0041】
このような傾斜角θ1の設定は、プロジェクター9からの投射光PLの入射角が、当該プロジェクター9から離れるに従って大きくなることに起因している。
すなわち、図7に示すように、基準点SP2に近い位置に形成された角度変更部63(出射位置PPに近い角度変更部63)には、図8で示した中央近傍の角度変更部63よりも小さな入射角θ2で投射光PL(PL1)が入射される。このため、第2面632にて屈折させて、当該入射角θ2より正面21に対する投射光PL1の入射角を大きくするために、第2面632の傾斜角θ1を、基板6の中央近傍の角度変更部63における第2面632の傾斜角θ1より大きく設定している。
なお、当該角度変更部63を介して正面21に入射され、前述の有効反射領域ARで反射されて第2面632に入射された投射光PL(PL2)は、図7における一点鎖線で示すように、第1面631から前述の観察位置VPに向けて上向きに出射される。
【0042】
一方、図9に示すように、基準点SP2から遠い位置に形成された角度変更部63(出射位置PPから遠い角度変更部63)には、中央近傍の角度変更部63よりも大きな入射角θ2で投射光PL1が入射される。このため、第2面632にて屈折させて、当該入射角θ2より正面21に対する投射光PL1の入射角を大きくするために、第2面632の傾斜角θ1を、基板6の中央近傍の角度変更部63における第2面632の傾斜角θ1より小さく設定している。
なお、当該角度変更部63を介して正面21に入射され、前述の有効反射領域ARで反射されて第2面632に入射された投射光PL2は、図9における一点鎖線で示すように、第1面631から観察位置VPに向けて下向きに出射される。
また、正面21に入射され、前述の有効反射領域ARで反射されて、基板6における中央近傍の角度変更部63に入射された投射光PL2は、図8における一点鎖線で示すように、第1面631から観察位置VPに向けて略水平に出射される。
【0043】
〔基板の作用〕
図10は、スクリーン本体2にプロジェクター9からの投射光PLを直接入射させた場合の当該投射光PLの光路を説明する図である。なお、図10では、図5と同様にスクリーン本体2における中央近傍のレンズ要素3に入射される投射光PLの光路を示している。
スクリーン本体2の正面21における中央近傍に、プロジェクター9からの投射光PLを直接入射させる場合、図10に示すように、当該投射光PLは入射角θAで正面21に入射される。この入射角θAは、基板6の同位置に入射される投射光PLの入射角、すなわち、図5及び図8において示した入射角θ2と同じ角度である。
【0044】
これに対し、基板6に入射された投射光PLは、図5に示したように、プロジェクター9から基板6までの間の空気層と当該基板6との界面(第1面631)、及び、基板6と空気層ALとの界面(第2面632)において屈折が生じる。一方、正面21に投射光PLを出射する第2面632は、B方向先端側に向かうに従って厚さ寸法が大きくなるように、第1面631、及び、正面21の凹凸を平均化した前述の仮想平面に対して傾斜している。このため、第2面632から出射される投射光PLの光路は、基板6が無い場合に比べてより上向き(図5における上向きであり、当該投射光PLの到達位置が出射位置PPからより離れる方向)に変更され、ひいては、正面21に対する当該投射光PLの入射角θ3は、入射角θ2に比べて大きくなる。このような角度変化は、それぞれの角度変更部63で生じる。
【0045】
この入射角θ3で入射される投射光PLは、入射角θ2で入射される場合に比べて狭い範囲で個々のレンズ要素3の面(凹曲面)に入射される。すなわち、各第1面631に広い範囲で入射された光束は、各第2面632及び各第3面633により構成される背面62から狭い範囲で出射される。この正面61に入射される投射光PLの光量と、背面62から出射される投射光PLの光量とは、各界面での光の損失を除けば略同じであるので、基板6に入射された投射光PLの密度を高めて、当該投射光PLを個々のレンズ要素3の面に入射させることができる。
また、正面21に対して大きな入射角θ3で投射光PLが入射されることにより、当該投射光PLは、各レンズ要素3におけるA方向側の領域に入射されやすくなる。この投射光PLの入射領域内には、前述の有効反射領域ARが含まれている。このため、当該有効反射領域ARに入射される投射光PLの光量を、基板6が設けられていない場合に比べて増加させることができ、これにより、スクリーン1Aに表示される画像の輝度を高めることができる。
【0046】
〔角度変更部の周期〕
前述のように、それぞれの角度変更部63は、基準線SL2に沿って略同心真円状に形成され、これらがB方向に沿って配列されている。
また、本実施形態では、当該B方向における各角度変更部63の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とは異なる。更に、それぞれの角度変更部63におけるB方向の寸法は、当該角度変更部63から出射された光が入射されるレンズ要素3におけるA方向の寸法と一致しないように設定されている。詳述すると、レンズ要素3におけるA方向の寸法と、当該レンズ要素3に向けて光を出射する角度変更部63におけるB方向の寸法の整数倍とは一致しないように設定されている。
【0047】
このような構成は、以下の理由による。
角度変更部63の第1面631に入射された光のうち、内部を透過して第2面632に到達した光は、前述のように、正面21に対する光の入射角が、第1面631に対する光の入射角より大きくなって当該第2面632から出射される。
一方、内部を透過して第3面633に到達した光は、当該第3面633で第2面632側に全反射されてしまうか、或いは、当該第3面633にて屈折されて出射される。これらの光は、前述の有効反射領域ARに入射しづらい。
【0048】
このため、スクリーン1Aを正面視した際に、基準点SP1の位置と基準点SP2の位置とが一致する場合で、B方向における各角度変更部63の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とが一致し、更に、レンズ要素3におけるA方向の寸法と、当該レンズ要素3に向けて光を出射する角度変更部63におけるB方向の寸法の整数倍とが一致してしまうと、レンズ要素3において第3面633を介して投射光PLが入射される位置が、各レンズ要素3で固定されてしまうこととなる。このような位置が、有効反射領域AR内に含まれてしまうと、観察位置VPに反射される投射光PLの光量が減少してしまうため、表示画像の輝度が低下する他、当該表示画像に輝度むらが生じやすくなる。
【0049】
これに対し、本実施形態では、B方向における各角度変更部63の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とを異ならせ、更にレンズ要素3のA方向の寸法と、対応する角度変更部63のB方向の寸法の整数倍とが一致しないように設定されている。
これにより、スクリーン1Aを正面視した際に、基準点SP1の位置と基準点SP2の位置とが一致する場合でも、A方向に配列されたレンズ要素3において、第3面633を介して光が入射される位置を、各レンズ要素3でばらつかせることができる。従って、第3面633に投射光PLが入射されることによる表示画像の輝度低下を抑制できる他、当該表示画像に輝度むらが生じることを抑制できる。
【0050】
〔プロジェクターからの投射光〕
プロジェクター9から投射される投射光PLは、前述のように、円偏光により構成されている。これは以下の理由による。
投射光PLが上記各色光により構成され、当該各色光のうちのいずれかの色光がS偏光であり他の色光がP偏光である場合には、基板6の下側左右両端の角度変更部63(第2面632の傾斜角が大きく、かつ、水平に近い角度で投射光PLが入射される角度変更部63)に当該投射光PLが入射されると、当該角度変更部63を透過する際の光の損失がS偏光とP偏光とで異なる。このため、スクリーン1Aに表示される画像に色むらが生じてしまう。
【0051】
一方、各色光の偏光方向が同一であれば、同じ位置の角度変更部63に入射された光はそれぞれ同様に減衰することとなるので、色むらの発生は抑制される。しかしながら、このような場合、スクリーン1Aに対する光の入射位置に応じて、当該光の反射効率が異なるため、表示画像全体において輝度むらが生じてしまう。
これに対し、投射光PLが円偏光である場合には、このような光のロスが生じにくいため、表示画像に前述の色むら及び輝度むらの発生が抑制される。
【0052】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1Aによれば、以下の効果がある。
すなわち、スクリーン本体2の正面側には、空気層ALを介して基板6が配置され、当該基板6には、出射位置PP(スクリーン1Aを正面視した際に基準点SP2と重なる位置)から離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなる角度変更部63が複数形成されている。そして、当該角度変更部63におけるスクリーン本体2側の第2面632は、出射位置PP側の第1面631に対して傾斜している。これによれば、基板6及び空気層ALが無い場合に比べて、スクリーン本体2の正面21に入射される投射光PL(PL1)の入射角を大きくすることができ、ひいては、当該投射光PL1の密度を高めることができる。従って、レンズ要素3の有効反射領域ARに入射される光の光量を多くすることができるので、表示画像の輝度を向上できる。
【0053】
それぞれの角度変更部63は、断面視略直角台形状を有し、B方向に沿って配列されているため、背面62の断面形状は鋸歯状となる。このため、基板6が1つの角度変更部63により構成されている場合に比べて、基板6の厚さ寸法を小さくすることができる。従って、スクリーン1Aの厚さ寸法が不要に大きくなることを抑制できる。
【0054】
それぞれの角度変更部63は、基準点SP2を中心とする略同心真円の一部を構成する円弧状の基準線SL2に応じて形成されるので、角度変更部63は、それぞれ略同心真円状に形成される。そして、これら角度変更部63は、当該基準点SP2からの放射方向であるB方向に沿って配列されている。このため、出射位置PPから出射された光は、当該光が入射される角度変更部63における円弧の接線に対して垂直に入射される。これによれば、レンズ要素3が形成された正面21に入射される光の前述の入射角を最も大きくすることができる。従って、有効反射領域ARに入射される光の光量を確実に増加させることができ、表示画像の輝度を一層向上できる。
【0055】
また、各レンズ要素3は、基準点SP1を中心とする円弧状の複数の基準線SL1に沿って配列されている。これによれば、互いに平行な直線状の基準線に沿ってレンズ要素が複数配列されたスクリーン本体が用いられる場合に比べ、各レンズ要素3の有効反射領域ARに、光を入射させやすくすることができる。従って、表示画像の輝度を向上できる。
【0056】
B方向における各角度変更部63の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とは異なり、更に、レンズ要素3におけるA方向の寸法は、対応する角度変更部63におけるB方向の寸法の整数倍と一致しない。これによれば、スクリーン1Aを正面視した際に基準点SP1の位置と基準点SP2の位置とが一致する場合でも、各レンズ要素3において、第3面633からの光が入射される位置をばらつかせることができるので、スクリーン1A全体で反射される光を均一化できる。従って、前述の輝度むらの発生を抑制できる。
【0057】
正面61及び背面62には反射防止層が形成されているので、当該各面61,62に入射される光の光量を増加させることができる。従って、表示画像の輝度を一層向上できる。この他、外光が正面61にて観察位置に向けて反射されることが抑制されるので、表示画像のコントラストを向上できる。
第1面631により構成される正面61は平面状であるので、当該正面61を指し棒で指し示したり、当該正面61に文字等を記入しやすくすることができる。従って、スクリーン1Aの汎用性を向上できる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るスクリーンは、前述のスクリーン1Aと同様の構成を有する。ここで、当該スクリーン1Aの角度変更部63は、第2面632が正面21に対して傾斜していた。これに対し、本実施形態に係るスクリーンでは、角度変更部における第1面が正面21に対して傾斜する。この点で、本実施形態に係るスクリーンと、スクリーン1Aとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図11は、本実施形態に係るスクリーン1Bを示す断面図である。詳述すると、図11は、スクリーン1Bの中央近傍におけるA方向及びB方向とZ方向とに沿う断面図である。なお、図11においては、レンズ要素3の形状を半円形状として省略して記載する。
本実施形態に係るスクリーン1Bは、図11に示すように、基板6に代えて基板7を有する他は、前述のスクリーン1Aと同様の構成を有する。
基板7は、本発明の第1層に相当し、スクリーン本体2の正面21との間に、本発明の第2層に相当する空気層ALを介して配置される。この基板7は、基板6と同様の構成を有し、当該基板6の正面61と背面62とを反転させた形状を有する。
【0060】
具体的に、基板7は、正面71及び背面72を有する他、当該正面71の延長面上に設定された基準点SP2(図示省略)を中心とする略同心真円の一部を構成する基準線SL2に沿って形成された複数の角度変更部73を有する。これら角度変更部73は、基準点SP2からの放射方向であるB方向に沿って配列され、当該B方向及びZ方向に沿う断面が略直角台形状である。なお、本実施形態では、基準点SP2は、スクリーン1Bを正面視した場合に、基準点SP1の位置及び出射位置PPの位置と一致する。
【0061】
そして、角度変更部73における背面側の面であり、かつ、直角台形において平行な二辺に直交する一辺を構成する第2面732は、正面21と平行な平面である背面72を構成する。
また、角度変更部73における正面側の面であり、かつ、直角台形において当該一辺の対辺を構成する第1面731は、第2面732と平行な面に対して傾斜角θ1で傾斜した平面である。このため、角度変更部73は、出射位置PPから離れるに従って厚さ寸法が大きくなるよう形成されている。
【0062】
更に、第1面731及び第2面732において基準点SP2及び出射位置PPから遠い側の端部間を接続する方向に延出する第3面733は、基板7の正面側において、B方向に隣接する角度変更部73の各第1面731を接続する。そして、第3面733及び第1面731により、B方向及びZ方向に沿う断面形状が鋸歯状である正面71が構成される。
【0063】
なお、図示を省略するが、基板7においても基板6と同様に、第1面731の傾斜角θ1は、当該第1面731を有する角度変更部73の形成位置に応じて設定され、当該傾斜角θ1は、出射位置PPから離れるに従って小さくなるように設定される。
また、B方向における各角度変更部73の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とは異なっており、更に、レンズ要素3におけるA方向の寸法と、対応する角度変更部73におけるB方向の寸法の整数倍とは一致しないように設定されている。
更に、正面71及び背面72の表面には、前述の反射防止層が形成されている。
このような基板7を有するスクリーン1Bによれば、前述のスクリーン1Aと同様の効果を奏することができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係るスクリーンは、前述のスクリーン1A,1Bと同様の構成を有する。ここで、スクリーン1Aでは背面62が断面視鋸歯状に形成され、スクリーン1Bでは正面71が断面視鋸歯状に形成されていた。これに対し、本実施形態に係るスクリーンでは、基板の正面及び背面がそれぞれ断面視鋸歯状に形成されている。この点で、本実施形態に係るスクリーンと、当該スクリーン1A,1Bとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図12は、本実施形態に係るスクリーン1Cを示す断面図である。詳述すると、図12は、スクリーン1Cの中央近傍におけるA方向及びB方向とZ方向とに沿う断面図である。なお、図12においては、レンズ要素3の形状を半円形状として省略して記載する。
本実施形態に係るスクリーン1Cは、図12に示すように、基板6に代えて基板8を有する他は、前述のスクリーン1Aと同様の構成を有する。
基板8は、本発明の第1層に相当し、スクリーン本体2の正面21に対する出射位置PP側(光の入射側)に、本発明の第2層に相当する空気層ALを介して配置される。この基板8は、当該基板8の背面82の延長面上に設定された基準点SP2を中心とする略同心真円の一部を構成する円弧状の複数の基準線SL2に沿って形成された断面視略台形状の複数の角度変更部83を有する。
【0066】
これら角度変更部83は、B方向に沿って配列されており、各角度変更部83は、出射位置PPから離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなるように形成されている。なお、本実施形態においても、基準点SP2は、スクリーン1Cを正面視した際に基準点SP1の位置及び出射位置PPの位置と一致する。
これら各角度変更部83における正面側の第1面831及び第3面833は、基板8の正面81を構成し、また、各角度変更部83における背面側の第2面832及び第3面833は、基板8の背面82を構成する。このため、正面81及び背面82は、B方向及びZ方向に沿う平面での断面が、それぞれ鋸歯状となっている。
【0067】
このような角度変更部83における第1面831及び第2面832の正面21(より詳しくは、正面21の凹凸を平均化した仮想平面)に対する傾斜角は適宜設定されるが、当該角度変更部83の形成位置が基準点SP2から離れるに従って当該傾斜角が小さくなる点については、前述の基板6,7と同様である。
また、B方向における各角度変更部83の配列周期と、A方向における各レンズ要素3の配列周期とは異なり、また、レンズ要素3におけるA方向の寸法と、対応する角度変更部83におけるB方向の寸法の整数倍とが一致しないように設定されている。
更に、正面81及び背面82の表面には、前述の反射防止層が形成されている。
このような基板8を有するスクリーン1Cによれば、前述のスクリーン1Aと同様の効果を奏することができる。
【0068】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態で示した角度変更部の第1面及び第2面の傾斜角θ1は、プロジェクター9の設置位置等に基づいて、適宜変更可能である。
【0069】
前記各実施形態では、基板6〜8とスクリーン本体2との間には、第2層としての空気層ALが介装されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、基板6〜8とスクリーン本体2との間に、第1層としての基板6〜8よりも屈折率の低い物質を充填してもよい。例えば、当該物質として接着剤を用い、基板6〜8とスクリーン本体2とを接合してもよい。
【0070】
前記各実施形態では、レンズ要素3におけるA方向の寸法が、対応する角度変更部63,73,83におけるB方向の寸法の整数倍と一致しないように形成するとしたが、例えば、当該角度変更部におけるB方向の寸法をランダムに設定してもよい。すなわち、各レンズ要素において、角度変更部の第3面から出射された光が入射される位置をばらつかせることができれば、B方向におけるレンズ要素3及び角度変更部の各寸法は、適宜設定可能である。
【0071】
前記各実施形態では、3つの液晶パネルを有する光変調装置を備えたプロジェクターを例示したが、本発明はこれに限らない。すなわち、2つ以下、あるいは、4つ以上の液晶パネルを有する光変調装置を備えたプロジェクターも利用可能である。更に、入射光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置であれば、他の構成の光変調装置を採用してもよい。例えば、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調装置を用いたプロジェクターを利用することもできる。
【0072】
前記各実施形態では、レンズ要素3は、正面21の延長面22上に設定された基準点SP1を中心とする円弧状に配列されているとしたが、本発明はこれに限らず、正面21上に基準点SPが設定されていてもよい。また、レンズ要素3及び角度変更部63,73,83は、円弧状の基準線SL1及び基準線SL2に沿って配列及び形成されていなくてもよく、例えば、互いに平行な複数の直線状の基準線に沿ってこれらが配列及び形成されていてもよい。
【0073】
前記各実施形態では、基板6〜8の正面61,71,81及び背面62,72,82には、反射防止層が形成されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、正面及び背面のいずれかに反射防止層が形成されていてもよく、更には、反射防止層が形成されていなくてもよい。
【0074】
前記各実施形態では、第1基準点としての基準点SP2、第2基準点としての基準点SP1、及び、出射位置PPは、スクリーン1A〜1Cを正面視した際に、それぞれ一致するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、基準点SP1,SP2及び出射位置PPは、それぞれ一致しなくてもよく、出射位置PPと、基準点SP1,SP2のいずれかとが一致してもよい。なお、スクリーンを正面視した際に角度変更部の基準点と出射位置とが一致することにより、当該角度変更部により、スクリーン本体の正面に対する投射光の入射角を最大にできる。この場合、レンズ要素の基準点と光の出射位置とは一致しなくてもよい。
【0075】
前記実施形態では、角度変更部63,73,83の基準点SP2は、正面61の延長面61A、正面71の延長面、及び、背面82の延長面上に設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、基板の厚さ方向の中央を通り、かつ、当該基板の正面又は背面の凹凸を平均化した仮想平面に沿う他の仮想平面を定義し、当該他の仮想平面上に、角度変更部の基準点を設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、画像が投射される反射型のスクリーンに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1A〜1C…スクリーン、2…スクリーン本体、3(3A,3B)…レンズ要素、6〜8…基板(第1層)、21…正面(反射面)、63,73,83…角度変更部、631,731,831…第1面、632,732,832…第2面、633,733,833…第3面、AL…空気層(第2層)、PP…出射位置、SL1…基準線、SP1…基準点(第2基準点)、SP2…基準点(第1基準点)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の出射位置から斜方入射される光に応じた画像を表示するスクリーンであって、
入射される前記光を反射させるレンズ要素が複数形成された反射面を有するスクリーン本体と、
前記反射面に対して前記光の入射側に配置される第1層と、
前記スクリーン本体と前記第1層との間に介装される第2層と、を有し、
前記第1層は、前記第2層より屈折率が高く、
前記第1層は、入射された前記光が透過する領域の少なくとも一部に、前記出射位置から離れるに従って厚さ寸法が連続的に大きくなるように形成された角度変更部を有する
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記角度変更部は、
前記出射位置側の面である平面状の第1面と、
前記スクリーン本体側の面である平面状の第2面と、
前記第1面及び前記第2面における前記出射位置から離れた端部間を接続する方向に延出する第3面とを有し、
前記第1層は、前記角度変更部が1つの単位形状として複数形成された構成を有し、
それぞれの前記角度変更部の第1面は、前記第1層において前記出射位置側の面を構成し、
それぞれの前記角度変更部の第2面は、前記第1層において前記スクリーン本体側の面を構成する
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリーンにおいて、
それぞれの前記角度変更部は、前記第1層における正面と、当該第1層における背面と、これら正面又は背面の延長面とのいずれかの面上に設定された第1基準点を中心とする同心真円状に形成され、前記第1基準点からの放射方向に沿って配列されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項4】
請求項3に記載のスクリーンにおいて、
それぞれの前記レンズ要素は、前記反射面及び当該反射面の延長面のいずれかの面上に設定された第2基準点を中心とする略円弧状の基準線に沿って配列されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項5】
請求項4に記載のスクリーンにおいて、
前記角度変更部の配列周期と、前記レンズ要素の配列周期とは異なり、
前記レンズ要素における前記第2基準点からの放射方向の寸法は、当該レンズ要素に対応する前記角度変更部における前記第1基準点からの放射方向の寸法の整数倍でない
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記第1層における前記出射位置側の面と前記スクリーン本体側の面との少なくともいずれかは、反射防止層を有する
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記第1層における前記出射位置側の面は、平面である
ことを特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−11666(P2013−11666A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143026(P2011−143026)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】