説明

スクレ−パ式落雪装置

【目的】 軽量小型で場所を取らず、機構が簡単で取付け、保守を容易にするスクレ−パ式落雪装置1を提供する。
【構成】 電線ケ−ブル2外周部の軸方向に巻回された電線ケ−ブル2上の雪を掻落とすための可動スパイラルロッド4と、可動スパイラルロッド4に一端が着脱自在に係合し電線ケ−ブル2の軸方向に平行に設けられると共に同軸上に多段に重ね合わされて伸縮自在に設けられ可動スパイラルロッド4を往復移動させる伸縮パイプ5と、回転ドラム8と回転ドラム8に一端が巻回され他端が伸縮パイプ5の軸心部を挿通して最小径のパイプに連結された作動用ワイヤ9とを有する伸縮パイプ駆動手段6とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電線ケ−ブルに付着する雪を掻落として電線ケ−ブルを保護するスクレ−パ式落雪装置に係り、特に、軽量小型で場所を取らず、機構が簡単で取付け、保守を容易にするスクレ−パ式落雪装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄塔或いは電柱等に架設された電線ケ−ブルに降雪が付着する時、付着した雪が電線ケ−ブルの周りに回転肥大して筒雪を形成すると、電線ケ−ブルの軸方向に沿って大量の雪が付着することになる。大量の雪が付着した電線ケ−ブルには、雪の重量によって過大な張力が加わることになり、断線、鉄塔或いは電柱の倒壊といった事故が引き起こされることもある。
【0003】このような事故を防止するために、様々の装置が考案されているが、先に本出願人は以下のようなスクレ−パ式落雪装置を提案している。即ち、電線ケ−ブル外周部の軸方向に可動スパイラルロッドを設けて(或いは外周部に一方向に巻回された固定スパイラルロッドと、この固定スパイラルロッドに重ねて軸方向に反対方向に巻回された可動スパイラルロッドとを設けて)、可動スパイラルロッドを軸方向に往復移動させて電線ケ−ブル上の雪を掻落とすようにしたものである。また、本出願人はこれに改良を加えて、降雪の状態を検知して上記可動スパイラルロッドの往復移動の作動、停止を指令する降雪センサを設けた装置、或いは電磁気的作用を利用してスパイラルロッドを発熱させ雪を溶かす装置をも発明している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のようなスクレ−パ式落雪装置にあっては、可動スパイラルロッドを軸方向に往復移動させるためには、図4に例を示したように、駆動源及び駆動伝達機構が必要である。図4R>4の(a)(b)(c)において、2は電線ケーブル、3は固定スパイラルロッド、4は可動スパイラルロッド、20a、20b、20cはそれぞれ駆動伝達機構である。駆動伝達機構は、可動スパイラルロッドを軸に沿って引き寄せるに充分な引っ張り強度と、可動スパイラルロッドを軸に沿って押戻すに充分な剛性とを有し、且つ所定のストロークを有していなければならない。このため、駆動伝達機構は、軸方向にある程度の長さを必要とし、大きく、重いものとなる。
【0005】また、駆動源はモータ等の回転運動を利用するが、駆動源の制御のみに着目すれば、これを前後回転させるよりも一方向回転させ、駆動伝達機構で往復運動に変換させるほうが簡単である。そこで、駆動源には一方向回転を採用したものの、駆動伝達機構が複雑になる欠点が有った。
【0006】また、駆動伝達機構は、自らは電柱等の固定構造物或いは電線ケ−ブルに固定されなければならない。このため上述のように駆動伝達機構が、長く、大きく、重いうえに、複雑且つ精度を要求される機構であるため、取付けや保守が困難になる。
【0007】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、軽量小型で場所を取らず、機構が簡単で取付け、保守を容易にするスクレ−パ式落雪装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、鉄塔或いは電柱等に架設された電線ケ−ブル軸方向に巻回された電線ケーブル上の雪を掻落すための可動スパイラルロッドと、可動スパイラルロッドに一端部が着脱自在に係合し上記電線ケ−ブルの軸方向に平行に設けられると共に同軸上に多段に重ね合わされて伸縮自在に設けられ上記可動スパイラルロッドを往復移動させる伸縮パイプと、回転ドラムと該回転ドラムに一端が巻回され他端が上記伸縮パイプの軸心部を挿通して最小径のパイプに連結された作動用ワイヤとを有する伸縮パイプ駆動手段と、を備えたものである。
【0009】
【作用】上記構成により、回転ドラムが回転されると、これに一端が巻回されたワイヤは、他端が回転ドラムに向かって引き寄せられるか、または押戻されることになる。ワイヤが回転ドラムに向かって引き寄せられる時は、これに連結された最小径のパイプが伸縮パイプを収縮する方向に移動することになり、これにつれて可動スパイラルロッドが軸方向に移動することになる。
【0010】ワイヤが回転ドラムから押戻される時は、伸縮パイプがワイヤの移動する方向規制するので、最小径のパイプが伸縮パイプを伸長する方向に移動することになり、これにつれて可動スパイラルロッドが軸方向に逆に移動することになる。
【0011】作動用ワイヤは、可撓性を有すると共に上記のようにその先端部において移動方向が伸縮パイプの軸方向に規制されるので、伸縮パイプの軸を可動スパイラルロッドの軸に合わせて取付けるだけでよく、軽量小型で場所を取らず、機構が簡単で取付け、保守を容易にすることができる。
【0012】
【実施例】以下本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】図1に示されるように、スクレ−パ式落雪装置1には、電柱等に架設された電線ケ−ブル2の外周部にその軸方向一方向に巻回された固定スパイラルロッド3と、固定スパイラルロッド3に重ねて軸方向に反対方向に巻回された可動スパイラルロッド4が設けられている。可動スパイラルロッド4を往復移動させて電線ケ−ブル上の雪を掻落とす伸縮パイプ5は、電線ケーブルに取付けられた伸縮パイプ駆動手段6のハウジング7の両側に取付けられている。これら伸縮パイプ5のそれぞれの端部には可動スパイラルロッド4が係合されている。
【0014】伸縮パイプ5は、可動スパイラルロッド4に一端部が着脱自在に係合し電線ケ−ブル2の軸方向に平行に設けられると共に同軸上に多段に重ね合わされて伸縮自在に設けられ、他端部が伸縮パイプ駆動手段6のハウジング7に固定されている。本実施例にあっては、可動スパイラルロッド4に係合された伸縮パイプ5の一端部は、最小径のパイプ5aであり、ハウジング7に固定された他端部は、最大径のパイプ5bである。
【0015】伸縮パイプ駆動手段6は、ハウジング7に収められた回転ドラム8と、回転ドラム8に一端が巻回され他端が伸縮パイプ5の軸心部を挿通して最小径のパイプ5aに連結された作動用ワイヤ9とを有する。伸縮パイプ駆動手段6には、ハウジング7上部に伸縮パイプ駆動手段6の駆動電源となる変流器10と、ハウジング7を支持する支持クランプ11とが設けられ、これら変流器10、支持クランプ11は電線ケ−ブル2に取付けられている。また、ハウジング7内には、変流器10を電源とし所定時間毎に回転方向を反転するモータ12と、モータ12の軸に取付けられたウォームギア13とが設けられている。回転ドラム8は、このウォームギア13と噛合され、モータ12の回転で前後回転駆動されるように構成されている。また、作動用ワイヤ9、9は互いに逆の巻回方向に1対設けられ、それぞれがハウジング7の両側に取付けられた伸縮パイプ5、5の軸心部を挿通されて最小径のパイプに連結されている。回転ドラム8の径方向外方には、所定の間隔を隔てて回転ドラム8を囲繞するガイド14が設けられている。
【0016】図示されないが、スクレ−パ式落雪装置1には、降雪を検知して伸縮パイプ駆動手段6を起動する検知手段が備えられている。また、図1の如き伸縮パイプ駆動手段6は、電線ケーブル2に間隔を隔てて複数設けられ、これら複数の伸縮パイプ駆動手段6が協動することも可能である。
【0017】次に実施例の作用を述べる。
【0018】検知手段が降雪を検知すると、変流器10からモータ12に通電され、回転ドラム8が回転する。回転ドラム8の回転により、回転ドラム8に巻回された作動用ワイヤ9は、巻き取られるか或いは繰り出される。巻き取られる作動用ワイヤ9の側では、作動用ワイヤ9に連結された最小径のパイプ5aが、回転ドラム8に向かって移動し、最大径のパイプ5bに重ね合わされる。このようにして、伸縮パイプ5が縮小すると、伸縮パイプ54に係合された可動スパイラルロッド4は、電線ケーブル2に沿ってハウジング7の方へ移動することになる。このため、固定スパイラルロッド3と可動スパイラルロッド4の擦り合せにより、電線ケーブル2或いは固定スパイラルロッド3に付着した雪が落下する。
【0019】繰り出される作動用ワイヤ9の側では、回転ドラム8、ガイド14、伸縮パイプ5の内壁等に規制されているので作動用ワイヤ9が、たわむことなく最小径のパイプ5aを押戻す働きをする。最小径のパイプ5aが押し戻されると、伸縮パイプ5が伸長し、伸縮パイプ54に係合された可動スパイラルロッド4は、電線ケーブル2に沿ってハウジング7から遠ざかるように移動することになる。このときも、固定スパイラルロッド3と可動スパイラルロッド4の擦り合せにより、電線ケーブル2或いは固定スパイラルロッド3に付着した雪が落下する。
【0020】図1に示される伸縮パイプ駆動手段6及び伸縮パイプ5の構造は簡単であり、それ故、大きさも小さく重量も軽い。また、構造が簡単であることから、保守も容易である。即ち、本発明に係るスクレ−パ式落雪装置1にあっては、軽量小型で場所を取らず、機構が簡単で取付け、保守を容易にすることができる。
【0021】次に本発明の他の実施例について説明する。
【0022】図2に示されるように、図1と略同等に構成された伸縮パイプ駆動手段1は、ハウジング7と、支持クランプ11、変流器10とを有し、モータ12、ウォームギア13、回転ドラム8とを有している。図1とは相違して作動用ワイヤ9は、ハウジング7とこれより所定の間隔を隔てて設けられたクランプ15とを連結する連結パイプ16に挿通されて延出され、更にクランプ15にその基端部を固定された伸縮パイプ5に挿通されて延出され、伸縮パイプ5の先端部に連結されている。この実施例にあっては、固定スパイラルロッド3及び可動スパイラルロッド4は、その端部が伸縮パイプ駆動手段6から隔てて位置されている。
【0023】このように、伸縮パイプ駆動手段6がその動作点から離れたところに位置してもよいので、障害物等を避けて設置することができる。
【0024】次に本発明の変形実施例について説明する。
【0025】図3に示されるように、平行に設けられた2本の電線ケーブル2、2が有り、それぞれの電線ケーブル2、2には、固定スパイラルロッド3及び可動スパイラルロッド4が設けられている。それぞれの可動スパイラルロッド4、4の同じ側の端部には、それぞれクランプ15により電線ケーブル2に固定された伸縮パイプ5、5が係合されている。それぞれの伸縮パイプ5に挿通され先端部に連結された作動用ワイヤ9、9は、それぞれ曲げられて同一のハウジング7内に引き込まれている。このハウジング7は、図1と略同様の構成であるが、図1とは相違して支持クランプ11がそれぞれの電線ケーブル2、2に取付けられ、双方の電線ケーブル2、2によりハウジング7が固定され、変流器10は一方の電線ケーブル2に取り付けられている。ハウジング7の内部では、図1と同様に1対の作動用ワイヤ9、9が回転ドラムに互いに逆方向に巻回されていても、同方向に巻回されていても構わないので、図示を省略する。
【0026】図3に示される変形実施例では、1台の伸縮パイプ駆動手段6で2本の電線ケーブルの可動スパイラルロッド4、4を駆動することができる。これは、作動用ワイヤ9が可撓性を有することを利用したものである。
【0027】
【発明の効果】本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0028】(1)作動用ワイヤと伸縮パイプとを組合わせて使用することにより、可動スパイラルロッドの往復駆動の機構が小さくなる。
【0029】(2)伸縮パイプ駆動手段がその動作点から離れたところに位置してもよいので、障害物等を避けて設置することができ、メンテナンスも簡単になる。
【0030】(3)作動用ワイヤに可撓性が有るので、組み立て時の精度が要求されない。
【0031】(4)1台の伸縮パイプ駆動手段で2本以上の電線ケーブルの可動スパイラルロッドを駆動することができ、効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す部分破断側面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す部分破断側面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す平面図である。
【図4】従来例を示す部分破断側面図である。
【符号の説明】
1 スクレ−パ式落雪装置
2 電線ケ−ブル
3 固定スパイラルロッド
4 可動スパイラルロッド
5 伸縮パイプ
6 伸縮パイプ駆動手段
8 回転ドラム
9 作動用ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電線ケ−ブル外周部の軸方向に往復移動可能に巻回された雪掻落し用の可動スパイラルロッドと、可動スパイラルロッドに一端部が着脱自在に係合し上記電線ケ−ブルの軸方向に平行に設けられると共に同軸上に多段に重ね合わされて伸縮自在に設けられその伸縮により上記可動スパイラルロッドを往復移動させる伸縮パイプと、回転ドラムと該回転ドラムに一端が巻回され他端が上記伸縮パイプの軸心部を挿通して最小径のパイプに連結された作動用ワイヤとを有する伸縮パイプ駆動手段と、を備えたスクレ−パ式落雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−219633
【公開日】平成5年(1993)8月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−17701
【出願日】平成4年(1992)2月3日
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)