説明

スクロール圧縮機

【課題】固定スクロールと旋回スクロールを冷却用流体によって冷却するスクロール圧縮機において、固定スクロールと旋回スクロールの両方における冷却用流体の流量を確保する。
【解決手段】冷却用流体が流れる主導入通路(190)と、主導入通路(190)の下流端から二手に分岐する第1と第2の分岐通路(191,192)と、固定スクロール(30)に形成されて第1分岐通路(191)を流出した冷却用流体が流れる固定側通路(40)と、旋回スクロール(50)に形成されて第2分岐通路(192)を流出した冷却用流体が流れる旋回側通路(60)と、第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)を流れる冷却用流体の流量を制御するための流量制御機構(186)とを有する冷却用流体回路(180)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定スクロールと旋回スクロールを流体によって冷却するスクロール圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定スクロールと旋回スクロールとを備え、固定スクロールと旋回スクロールによって形成された圧縮室にガスを吸入して圧縮するスクロール圧縮機が知られている。特許文献1には、固定スクロールと旋回スクロールの内部に冷媒の通路を形成し、この通路へ冷媒を供給することによって固定スクロールと旋回スクロールの冷却を行うスクロール圧縮機が開示されている。このスクロール圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールを冷却することによって、圧縮室内で圧縮される過程におけるガスの温度上昇を抑え、ガスの温度上昇を抑えることによって、スクロール圧縮機でガスを圧縮するのに必要なエネルギを削減している。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示されたスクロール圧縮機では、冷媒タンクから冷媒クーラへ送られて冷却された冷媒が、冷媒ポンプによって固定スクロールと旋回スクロールに供給される。その際、冷媒ポンプから吐出された冷媒は、その一部が固定スクロール内の通路へ供給され、残りが旋回スクロール内の通路へ供給される。つまり、このスクロール圧縮機では、冷却用流体としての冷媒の流通経路において、固定スクロール内の通路と旋回スクロール内の通路とが互いに並列に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−254266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定スクロールと旋回スクロールの冷却を行うスクロール圧縮機において、圧縮室内のガスの温度上昇を確実に抑制するには、固定スクロールと旋回スクロールの両方を充分に冷却する必要があり、そのためには、固定スクロール内の通路と旋回スクロール内の通路の両方における冷却用流体の流量を充分に確保する必要がある。
【0006】
ところが、上記特許文献1に開示されているスクロール圧縮機では、冷却用流体の流通経路において、固定スクロール内の通路と旋回スクロール内の通路とが互いに並列に配置されている。一方、固定スクロール内の通路と旋回スクロール内の通路とは、流路断面形状や長さが同一ではないため、これらの通路の流通抵抗は必ずしも等しくはない。このため、引用文献1に開示されているスクロール圧縮機では、固定スクロール内の通路と旋回スクロール内の通路に対する冷却用流体の分配割合を適切に設定できず、その結果、固定スクロールと旋回スクロールの両方を充分に冷却できなくなるおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定スクロールと旋回スクロールを冷却用流体によって冷却するスクロール圧縮機において、固定スクロールと旋回スクロールの両方における冷却用流体の流量を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)とが設けられた圧縮機構(20)を備え、被圧縮ガスを上記圧縮機構(20)へ吸入して圧縮するスクロール圧縮機を対象とし、冷却用流体が流れる主導入通路(190)と、該主導入通路(190)の下流端から二手に分岐する第1と第2の分岐通路(191,192)と、上記固定スクロール(30)に形成されて該第1分岐通路(191)を流出した冷却用流体が流れる固定側通路(40)と、上記旋回スクロール(50)に形成されて上記第2分岐通路(192)を流出した冷却用流体が流れる旋回側通路(60)と、上記第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)を流れる冷却用流体の流量を制御するための流量制御機構(186)とを有する冷却用流体回路(180)を備えていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、スクロール圧縮機に冷却用流体回路(180)が設けられる。冷却用流体回路(180)では、主導入通路(190)を流れる冷却用流体が、第1分岐通路(191)と第2分岐通路(192)とへ分流する。第1分岐通路(191)を流出した冷却用流体は、固定スクロール(30)に形成された固定側通路(40)へ流入し、固定スクロール(30)の冷却に利用される。第2分岐通路(192)を流出した冷却用流体は、旋回スクロール(50)に形成された旋回側通路(60)へ流入し、旋回スクロール(50)の冷却に利用される。本発明の流量制御機構(186)は、第1分岐通路(191)における冷却用流体の流量と、第2分岐通路(192)における冷却用流体の流量とを制御する。従って、固定側通路(40)の流通抵抗と旋回側通路(60)の流通抵抗とが異なっていても、固定側通路(40)における冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)における冷却用流体の流量とを等しくすることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記流量制御機構(186)は、上記第1分岐通路(191)に設けられる第1流量調節弁(184)と、上記第2分岐通路(192)に設けられる第2流量調節弁(185)とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1流量調節弁(184)の開度を調節することで、第1分岐通路(191)における冷却用流体の流量が調節され、更には固定側通路(40)における冷却用流体の流量が調節される。また、第2流量調節弁(185)の開度を調節することで、第2分岐通路(192)における冷却用流体の流量が調節され、更には旋回側通路(60)における冷却用流体の流量が調節される。従って、これらの流量調節弁(184,185)の開度を個別に調節することで、固定側通路(40)の流通抵抗と旋回側通路(60)の流通抵抗とが異なっていても、固定側通路(40)における冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)における冷却用流体の流量とを等しくすることができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記圧縮機構(20)が収容される中空容器状に形成されて該圧縮機構(20)の潤滑油が溜まり込むケーシング(11)を備え、上記主導入通路(190)には、上記ケーシング(11)内に溜まった潤滑油が導入されると共に該潤滑油を冷却する上流側冷却器(181)が接続されることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、ケーシング(11)内に圧縮機構(20)の潤滑油が溜まり込む。この潤滑油は、冷却用流体として主導入通路(190)を流れ、上流側冷却器(181)において冷却される。主導入通路(190)で冷却された潤滑油は、第1分岐通路(191)と第2分岐通路(192)とに分流する。第1分岐通路(191)に分流した潤滑油は、固定側通路(40)を流れて固定スクロール(30)の冷却に利用される。第2分岐通路(192)に分流した潤滑油は、旋回側通路(60)を流れて旋回スクロール(50)の冷却に利用される。
【0014】
第4の発明は、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)とが設けられた圧縮機構(20)を備え、被圧縮ガスを上記圧縮機構(20)へ吸入して圧縮するスクロール圧縮機を対象とし、冷却用流体を搬送するための第1搬送機構(128a)を含む第1供給通路(193)と、冷却用流体を搬送するための第2搬送機構(128b)を含む第2供給通路(194)と、上記固定スクロール(30)に形成されて該第1供給通路(193)を流出した冷却用流体が流れる固定側通路(40)と、上記旋回スクロール(50)に形成されて上記第2供給通路(194)を流出した冷却用流体が流れる旋回側通路(60)とを有する冷却用流体回路(180)を備えていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、スクロール圧縮機に冷却用流体回路(180)が設けられる。冷却用流体回路(180)では、第1搬送機構(128a)によって搬送される冷却用流体が、第1供給通路(193)を経由して固定側通路(40)へ送られる。また、冷却用流体回路(180)では、第2搬送機構(128b)によって搬送される冷却用流体が、第2供給通路(194)を経由して旋回側通路(60)へ送られる。つまり、本発明では、固定側通路(40)へ冷却用流体を送るための通路と、旋回側通路(60)へ冷却用流体を送るための通路とが異なっており、且つ固定側通路(40)へ冷却用流体を送るための搬送機構と、旋回側通路(60)へ冷却用流体を送るための搬送機構も異なっている。従って、固定側通路(40)の流通抵抗と旋回側通路(60)の流通抵抗とが異なっていても、固定側通路(40)における冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)における冷却用流体の流量とを等しく合わせることができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、上記圧縮機構(20)が収容される中空容器状に形成されて該圧縮機構(20)の潤滑油が溜まり込むケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に収容されて上記旋回スクロール(50)を駆動する駆動軸(100)とを備え、上記第1搬送機構(128a)及び第2搬送機構(128b)は、上記駆動軸(100)に回転駆動されて上記ケーシング(11)内に溜まった潤滑油を搬送する容積型ポンプでそれぞれ構成され、上記第1供給通路(193)には、上記第1搬送機構(128a)で搬送された潤滑油を冷却する第1上流側冷却器(181a)が接続され、上記第2供給通路(194)には、上記第2搬送機構(128b)で搬送された潤滑油を冷却する第2上流側冷却器(181b)が接続されていることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、駆動軸(100)が回転することで旋回スクロール(50)が駆動されると同時に、駆動軸(100)に連結される第1搬送機構(128a)及び第2搬送機構(128b)も回転駆動される。第1搬送機構(128a)が回転駆動されると、ケーシング(11)内に溜まっていた潤滑油は、冷却用流体として第1供給通路(193)を流れ、第1上流側冷却器(181a)において冷却される。第1供給通路(193)で冷却された潤滑油は、固定側通路(40)を流れて固定スクロール(30)の冷却に利用される。また、第2搬送機構(128b)が回転駆動されると、ケーシング(11)内に溜まっていた潤滑油は、冷却用流体として第2供給通路(194)を流れ、第2上流側冷却器(181b)において冷却される。第2供給通路(194)で冷却された潤滑油は、旋回側通路(60)を流れて旋回スクロール(50)の冷却に利用される。
【0018】
本発明では、第1搬送機構(128a)及び第2搬送機構(128b)が容積型ポンプであるため、固定側通路(40)や旋回側通路(60)の流通抵抗に拘わらず、各供給通路(193,194)へ一定の流量の潤滑油を送ることができる。従って、固定側通路(40)における冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)における冷却用流体の流量とを等しくすることができる。
【0019】
第6の発明は、第3又は第5の発明において、上記冷却用流体回路(180)に接続されて上記固定側通路(40)及び上記旋回側通路(60)を通過した冷却用流体を冷却する下流側冷却器(197)を備え、上記冷却用流体回路(180)は、上記下流側冷却器(197)によって冷却された冷却用流体を上記圧縮機構(20)へ吸入される被圧縮ガスへ供給することを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、固定側通路(40)及び旋回側通路(60)を通過した冷却用流体が、下流側冷却器(197)において冷却された後、被圧縮ガスへ供給される。冷却用流体回路(180)から被圧縮ガスへ供給された冷却用流体は、被圧縮ガスと共に圧縮機構(20)へ吸入される。つまり、本発明のスクロール圧縮機では、下流側冷却器(197)において冷却された潤滑油が低圧の被圧縮ガスと共に圧縮機構(20)へ吸い込まれる。下流側冷却器(197)において冷却されてから被圧縮ガスと共に圧縮機構(20)へ吸い込まれた潤滑油は、圧縮機構(20)において圧縮されつつある被圧縮ガスと直接に接触し、この被圧縮ガスから吸熱する。
【0021】
第7の発明は、第6の発明において、上記圧縮機構(20)は、圧縮した被圧縮ガスを上記ケーシング(11)の内部空間へ吐出する一方、該ケーシング(11)には、上記圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスを外部へ導出するための吐出管(13)が設けられており、上記ケーシング(11)の内部空間では、上記圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスが存在する部分に潤滑油が貯留されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、圧縮機構(20)で圧縮された被圧縮ガスが、圧縮機構(20)からケーシング(11)の内部空間へ吐出され、その後に吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ流出してゆく。ケーシング(11)の内部空間では、圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスが存在する部分に潤滑油が貯留されている。ケーシング(11)内に貯留された潤滑油の圧力は、圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスの圧力と実質的に等しくなっている。冷却用流体回路(180)へは、圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスと圧力が実質的に等しい潤滑油が、冷却用流体として流入する。そして、冷却用流体回路(180)を冷却用流体として流れる潤滑油は、固定側通路(40)や旋回側通路(60)を通過し、最終的には圧縮機構(20)へ吸入される低圧の被圧縮ガスへ供給される。つまり、この発明の冷却用流体回路(180)において、その始端は、圧縮機構(20)から吐出された高圧の被圧縮ガスと圧力が実質的に等しいケーシング(11)内の潤滑油に連通し、その終端は、圧縮機構(20)へ吸入される低圧の被圧縮ガスに連通している。従って、この発明の冷却用流体回路(180)では、その始端と終端の圧力差を利用して、冷却用流体を搬送することができる。
【0023】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記旋回スクロール(50)には、平板状に形成された旋回側鏡板部(56)と、該旋回側鏡板部(56)の前面に立設する渦巻き壁状の旋回側ラップ(53)とが設けられ、上記圧縮機構(20)には、上記旋回側鏡板部(56)の背面と摺接するハウジング部材(70)が設けられ、上記旋回側鏡板部(56)の背面には、上記旋回側通路(60)の端部が開口しており、上記ハウジング部材(70)のうち上記旋回側鏡板部(56)の背面と摺接する部分には、上記旋回側鏡板部(56)の背面に開口する上記旋回側通路(60)の端部と常に連通する窪み部(77)と、該窪み部(77)の周囲を囲むように設けられて上記旋回側鏡板部(56)と上記ハウジング部材(70)の隙間をシールするシール部材(80,81)とが設けられ、上記ハウジング部材(70)には、冷却用流体が導入されると共に下流端が上記窪み部(77)に接続する接続用通路(83)が形成されていることを特徴とする。
【0024】
第8の発明において、旋回スクロール(50)に形成された旋回側通路(60)の端部は、旋回側鏡板部(56)の背面に開口する。一方、ハウジング部材(70)では、旋回側鏡板部(56)の背面と摺接する部分に、窪み部(77)が形成される。この窪み部(77)は、旋回側鏡板部(56)の背面に開口する上記旋回側通路(60)の端部と常に連通する。つまり、スクロール圧縮機の運転中には旋回スクロール(50)が移動するが、ハウジング部材(70)の窪み部(77)は、旋回スクロール(50)が移動している間も、旋回側鏡板部(56)の背面に開口する上記旋回側通路(60)の端部と連通し続ける。このため、この発明の冷却用流体回路(180)では、旋回スクロール(50)の位置に拘わらず、ハウジング部材(70)の接続用通路(83)に導入された冷却用流体が、窪み部(77)を介して旋回側通路(60)へ送られる。また、ハウジング部材(70)に設けられたシール部材(80,81)は、旋回側鏡板部(56)とハウジング部材(70)の隙間をシールしており、旋回側通路(60)から窪み部(77)へ流入する冷却用流体、あるいは窪み部(77)から旋回側通路(60)へ流入する冷却用流体の漏洩を抑制する。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明のスクロール圧縮機では、第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)の冷却用流体の流量を制御するために流量制御機構(186)を設けている。このため、第1分岐通路(191)と繋がる固定側通路(40)における冷却用流体の流量と、第2分岐通路(192)と繋がる旋回側通路(60)における冷却用流体の流量とを等しくすることができる。つまり、本発明のスクロール圧縮機では、冷却用流体の流量が固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に偏ることを回避でき、固定側通路(40)と旋回側通路(60)の両方に対して充分な量の冷却用流体を確実に供給することが可能となる。そして、本発明のスクロール圧縮機によれば、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)の両方を確実に冷却することが可能となり、その結果、圧縮機構(20)において圧縮される被圧縮ガスの温度上昇を確実に抑制することが可能となる。
【0026】
特に第2の発明では、第1分岐通路(191)の第1流量調節弁(184)と第2分岐通路(192)の第2流量調節弁(185)とにより、固定側通路(40)及び旋回側通路(60)を流れる冷却用流体の各流量を個別に調節できるようにしている。このため、冷却用流体の流量が固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に偏ることを容易且つ確実に回避できる。
【0027】
また、第3の発明では、ケーシング(11)の内部空間に貯留された潤滑油が、圧縮機構(20)を潤滑するためだけでなく、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却するための冷却用流体としても利用される。つまり、この発明では、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)の冷却を行わない場合でも圧縮機構(20)の動作に必要となる潤滑油を、冷却用流体としても利用している。従って、この発明によれば、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)の冷却を行わない場合には不要な流体(例えば、冷却水)を冷却用流体として用いる場合に比べ、スクロール圧縮機の構成を簡素化できる。
【0028】
第4の発明のスクロール圧縮機では、第1搬送機構(128a)で搬送される冷却用流体を第1供給通路(193)を経由して固定側通路(40)へ送るようにし、第2搬送機構(128b)で搬送される冷却用流体を第2供給通路(194)を経由して旋回側通路(60)へ送るようにしている。このため、本発明のスクロール圧縮機では、冷却用流体の流量が固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に偏ることを回避でき、固定側通路(40)と旋回側通路(60)の両方に対して充分な量の冷却用流体を確実に供給することが可能となる。そして、本発明のスクロール圧縮機によれば、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)の両方を確実に冷却することが可能となり、その結果、圧縮機構(20)において圧縮される被圧縮ガスの温度上昇を確実に抑制することが可能となる。
【0029】
特に第5の発明では、第1搬送機構(128a)及び第2搬送機構(128b)が、駆動軸(100)によって回転駆動される容積型ポンプで構成されている。このため、固定側通路(40)や旋回側通路(60)の流通抵抗の影響を受けずに固定側通路(40)や旋回側通路(60)へ一定の潤滑油を供給することができ、冷却用流体の流量が固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に偏ることを一層確実に回避できる。
【0030】
また、第5の発明においても、ケーシング(11)の内部空間に貯留された潤滑油が、圧縮機構(20)を潤滑するためだけでなく、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却するための冷却用流体としても利用される。従って、スクロール圧縮機の構成を簡素化できる。
【0031】
第6の発明では、冷却用流体回路(180)に下流側冷却器(197)が接続される。そして、冷却用流体として冷却用流体回路(180)を流れる潤滑油は、下流側冷却器(197)において冷却されてから被圧縮ガスと共に圧縮機構(20)へ吸い込まれ、圧縮機構(20)における圧縮途中の被圧縮ガスから吸熱する。従って、本発明によれば、固定側通路(40)や旋回側通路(60)へ冷却用流体としての潤滑油を供給して固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却することだけでなく、下流側冷却器(197)において冷却された潤滑油を被圧縮ガスと共に圧縮機構(20)へ吸い込ませることによっても、圧縮機構(20)において圧縮されつつある被圧縮ガスの温度上昇を抑えることができる。
【0032】
特に第7の発明では、ケーシング(11)内に貯留された潤滑油の圧力が、圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスの圧力と実質的に等しくなっている。このため、本発明の冷却用流体回路(180)では、その始端と終端の圧力差を利用して、冷却用流体としての潤滑油を始端から終端へ向かって流すことができる。従って、この発明によれば、冷却用流体回路(180)において冷却用流体としての潤滑油を流すために必要なエネルギを削減することができる。このため、例えば冷却用流体を搬送するためのポンプ(搬送機構)の動力を低減する、あるいはこの搬送機構を省略した構成とすることができる。
【0033】
第8の発明では、ハウジング部材(70)に窪み部(77)と接続用通路(83)とシール部材(80,81)とを設けることによって、ハウジング部材(70)の接続用通路(83)と旋回スクロール(50)の旋回側通路(60)とを常に連通させている。このため、本発明によれば、運転中においても、接続用通路(83)へ導入された冷却用流体を旋回側通路(60)へ確実に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1の空気調和装置の概略構成を示す冷媒回路図である。
【図2】実施形態1のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】実施形態1のスクロール圧縮機の要部を示す縦断面図である。
【図4】実施形態1の固定スクロールの固定側本体部材を示す横断面図である。
【図5】実施形態1のスクロール圧縮機の油ポンプを示す横断面図である。
【図6】実施形態2のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【図7】その他の実施形態の第1変形例のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【図8】その他の実施形態の第2変形例のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【図9】その他の実施形態の第2変形例の圧縮機構の要部を示す縦断面図である。
【図10】その他の実施形態の第3変形例のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【図11】その他の実施形態の第3変形例の圧縮機構の要部を示す縦断面図である。
【図12】その他の実施形態の第4変形例のスクロール圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、いわゆるセパレート型の空気調和装置(150)である。また、この空気調和装置(150)の冷媒回路(160)には、スクロール圧縮機(171)が接続されている。
【0037】
〈空気調和装置〉
空気調和装置(150)の全体構成について、図1を参照しながら説明する。この空気調和装置(150)は、一台の室外ユニット(151)と、二台の室内ユニット(153a,153b)とを備えている。なお、室内ユニット(153a,153b)の台数は、単なる一例であって、一台でもよく、また三台以上であってもよい。
【0038】
室外ユニット(151)には、室外回路(170)が設けられている。各室内ユニット(153a,153b)には、室内回路(175a,175b)が一つずつ設けられている。空気調和装置(150)では、室外回路(170)と各室内回路(175a,175b)を液側連絡配管(161)及びガス側連絡配管(162)で接続することによって、冷媒回路(160)が形成されている。この冷媒回路(160)において、各室内回路(175a,175b)は、互いに並列に配置されている。
【0039】
室外回路(170)には、スクロール圧縮機(171)と、室外熱交換器(172)と、室外膨張弁(173)と、四方切換弁(174)とが接続されている。また、スクロール圧縮機(171)は、圧縮機本体(10)と、上流側冷却器(181)とを備えている。
【0040】
室外回路(170)において、スクロール圧縮機(171)の圧縮機本体(10)は、その吐出管(13)が四方切換弁(174)の第1のポートに接続され、その吸入管(12)が四方切換弁(174)の第2のポートに接続されている。室外熱交換器(172)は、その一端が四方切換弁(174)の第3のポートに接続され、その他端が室外膨張弁(173)の一端に接続されている。室外膨張弁(173)の他端は、室外回路(170)の液側端に接続されている。四方切換弁(174)の第4のポートは、室外回路(170)のガス側端に接続されている。
【0041】
スクロール圧縮機(171)の詳細な構造は後述する。ここでは、スクロール圧縮機(171)の概要を説明する。スクロール圧縮機(171)の圧縮機本体(10)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。圧縮機本体(10)には、上流側冷却器(181)が接続されている。この上流側冷却器(181)は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であって、ケーシング(11)内に貯留された冷凍機油(即ち、潤滑油)を室外空気と熱交換させることによって冷却する。
【0042】
室外熱交換器(172)は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であって、冷媒回路(160)内を循環する冷媒を室外空気と熱交換させる。室外膨張弁(173)は、いわゆる電子膨張弁である。四方切換弁(174)は、第1のポートが第3のポートに連通し且つ第2のポートが第4のポートに連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートに連通し且つ第2のポートが第3のポートに連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
【0043】
各室内回路(175a,175b)には、室内熱交換器(176a,176b)と室内膨張弁(177a,177b)とが一つずつ接続されている。各室内回路(175a,175b)では、そのガス側端から液側端に向かって順に、室内熱交換器(176a,176b)と室内膨張弁(177a,177b)が直列に配置されている。各室内回路(175a,175b)は、その液側端が液側連絡配管(161)を介して室外回路(170)の液側端に接続され、そのガス側端がガス側連絡配管(162)を介して室外回路(170)のガス側端に接続されている。
【0044】
室内熱交換器(176a,176b)は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であって、冷媒回路(160)内を循環する冷媒を室内空気と熱交換させる。室内膨張弁(177a,177b)は、いわゆる電子膨張弁である。
【0045】
室外ユニット(151)には、室外ファン(152)が設けられている。室外ファン(152)は、室外熱交換器(172)と上流側冷却器(181)の両方へ室外空気を供給するためのものである。つまり、室外ファン(152)を運転すると、室外ユニット(151)へ吸い込まれた室外空気の一部が上流側冷却器(181)を、残りが室外熱交換器(172)をそれぞれ通過する。また、各室内ユニット(153a,153b)には、室内ファン(154a,154b)が一つずつ設けられている。室内ファン(154a,154b)は、室内熱交換器(176a,176b)へ室内空気を供給するためのものである。つまり、室内ファン(154a,154b)を運転すると、室内ユニット(153a,153b)へ吸い込まれた室内空気が室内熱交換器(176a,176b)を通過する。
【0046】
〈スクロール圧縮機〉
スクロール圧縮機(171)の全体構成について、図2を参照しながら説明する。上述したように、スクロール圧縮機(171)は、圧縮機本体(10)と上流側冷却器(181)とを備えている。また、このスクロール圧縮機(171)は、冷却用流体回路(180)を備えている。上流側冷却器(181)は、冷却用流体回路(180)に接続されている。冷却用流体回路(180)の詳細については、後述する。
【0047】
上述したように、圧縮機本体(10)は、いわゆる全密閉型圧縮機であって、ガス冷媒を被圧縮ガスとして吸入して圧縮する。圧縮機本体(10)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部空間には、圧縮機構(20)と、駆動軸(100)と、電動機(110)と、下部軸受部材(115)とが収容されている。ケーシング(11)の内部空間では、その上部に圧縮機構(20)が配置され、圧縮機構(20)の下方に電動機(110)が配置され、電動機(110)の下方に下部軸受部材(115)が配置されている。また、ケーシング(11)の内部空間では、その底部に冷凍機油(即ち、潤滑油)が貯留されている。
【0048】
ケーシング(11)には、吸入管(12)と、吐出管(13)とが設けられている。吸入管(12)は、ケーシング(11)を貫通しており、その一端が圧縮機構(20)に接続されている。一方、吐出管(13)は、ケーシング(11)を貫通しており、その一端がケーシング(11)の内部空間における圧縮機構(20)と電動機(110)の間の部分に開口している。また、ケーシング(11)には、油導出管(14)と第1油導入管(17)と第2油導入管(18)とが設けられている。
【0049】
圧縮機構(20)には、固定スクロール(30)と、旋回スクロール(50)と、ハウジング部材(70)とが設けられている。圧縮機構(20)の詳細な構造については、後述する。
【0050】
電動機(110)は、固定子(111)と、回転子(112)とを備えている。固定子(111)は、ケーシング(11)に固定されている。回転子(112)は、固定子(111)の内側に挿入されている。また、回転子(112)には、駆動軸(100)が挿通されている。
【0051】
駆動軸(100)は、主軸部(101)と、偏心部(102)と、下端軸部(103)と、バランスウェイト(104)とを備えている。偏心部(102)は、主軸部(101)の上端面に突設されており、その中心軸が主軸部(101)の中心軸に対して偏心している。バランスウェイト(104)は、主軸部(101)の上端寄りの部分に配置されている。主軸部(101)は、バランスウェイト(104)よりも上側の部分が圧縮機構(20)のハウジング部材(70)を貫通しており、この部分がハウジング部材(70)によって回転自在に支持されている。下端軸部(103)は、主軸部(101)の下端面に突設されており、その中心軸が主軸部(101)の中心軸と一致している。
【0052】
駆動軸(100)には、軸内通路(105)と、上側分岐通路(106)と、下側分岐通路(107)とが形成されている。軸内通路(105)は、主軸部(101)の中心軸に沿って延びている。また、軸内通路(105)は、その一端が下端軸部(103)の下端面に開口し、その他端が偏心部(102)の上端面に開口している。上側分岐通路(106)は、主軸部(101)のうちハウジング部材(70)を貫通している部分に形成されている。この上側分岐通路(106)は、主軸部(101)の半径方向へ延びる通路であって、その一端が軸内通路(105)に連通し、その他端が主軸部(101)の外周面に開口している。下側分岐通路(107)は、下端軸部(103)に形成されている。この下側分岐通路(107)は、下端軸部(103)の半径方向へ延びる通路であって、その一端が軸内通路(105)に連通し、その他端が下端軸部(103)の外周面に開口している。
【0053】
下部軸受部材(115)は、概ね平板状に形成され、ケーシング(11)に固定されている。下部軸受部材(115)では、その中央部に貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸受メタル(116)が圧入されている。この軸受メタル(116)には、駆動軸(100)の下端軸部(103)が挿入されている。そして、下部軸受部材(115)は、駆動軸(100)の下端軸部(103)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成している。
【0054】
駆動軸(100)の下端軸部(103)には、2つの油ポンプ(127,128)が設けられている。具体的に、下端軸部(103)には、潤滑用ポンプ(127)と冷却用ポンプ(128)とが設けられている。図5に示すように、これらの油ポンプ(127,128)は、容積型ポンプの一種であるトロコイドポンプである。両者の油ポンプ(127,128)では、円筒ハウジング(121)の内側にアウターロータ(124)が回転自在に収容されている。円筒ハウジング(121)の端面には、吸入口(122)と吐出口(123)とが形成されている。この吸入口(122)は、ケーシング(11)内の底部に貯留された冷凍機油に浸っている。アウターロータ(124)の内側には、インナーロータ(125)が収容されている。インナーロータ(125)とアウターロータ(124)の間には、流体室(126)が形成される。インナーロータ(125)の回転軸は、アウターロータ(124)の回転軸に対して偏心している。また、インナーロータ(125)は、駆動軸(100)に直結され、あるいは歯車等を介して駆動軸(100)に連結されており、駆動軸(100)によって回転駆動される。インナーロータ(125)が回転すると、冷凍機油が吸入口(122)を通って流体室(126)へ吸い込まれ、流体室(126)内の冷凍機油が吐出口(123)へと押し出される。
【0055】
潤滑用ポンプ(127)の吐出口(123)は、軸内通路(105)の入口端に接続されている。潤滑用ポンプ(127)が回転駆動されると、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油は、軸内通路(105)へ送られ、駆動軸(100)の軸受や圧縮機構(20)の摺動部分を潤滑するために利用される。
【0056】
〈圧縮機構〉
圧縮機構(20)の詳細な構造について、図3と図4を参照しながら説明する。
【0057】
上述したように、圧縮機構(20)は、固定スクロール(30)と、旋回スクロール(50)と、ハウジング部材(70)とを備えている。また、圧縮機構(20)では、ハウジング部材(70)の上に固定スクロール(30)が載置され、固定スクロール(30)とハウジング部材(70)によって囲まれた空間に旋回スクロール(50)が収容されている。
【0058】
図3に示すように、ハウジング部材(70)は、ハウジング本体部(71)と、中央膨出部(74)とを備え、ケーシング(11)に固定されている。また、ハウジング本体部(71)は、円板部(72)と外側縁部(73)とを備えている。円板部(72)は、肉厚の円板状に形成されている。外側縁部(73)は、肉厚の短い円筒状に形成されており、円板部(72)の外側の縁部から図3における上方へ延びている。ハウジング本体部(71)の外周面(即ち、円板部(72)及び外側縁部(73)の外周面)は、ケーシング(11)の内周面に密着している。一方、中央膨出部(74)は、全体として肉厚の円板状に形成され、円板部(72)の背面(図3における下面)から下方へ向かって膨出している。
【0059】
ハウジング部材(70)では、中央膨出部(74)の中央部に貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸受メタル(82)が圧入されている。この軸受メタル(82)には、駆動軸(100)の主軸部(101)が挿通されている。そして、ハウジング部材(70)は、駆動軸(100)の主軸部(101)を回転自在に支持するジャーナル軸受を構成している。
【0060】
また、ハウジング部材(70)では、ハウジング本体部(71)の円板部(72)に、中央凹部(75)と環状凸部(76)とが形成されている。中央凹部(75)は、円板部(72)の前面(図3における上面)に開口する有底の窪みであって、その軸方向と直交する断面が円形となっている。軸受メタル(82)が挿入された中央膨出部(74)の貫通孔は、この中央凹部(75)の底面に開口している。環状凸部(76)は、中央凹部(75)の外周縁に沿って形成され、円板部(72)の前面(図3における上面)から突出している。環状凸部(76)の突端面(図3における上面)は、平面に形成されていて旋回スクロール(50)と摺接する。
【0061】
環状凸部(76)には、その突端面に開口する環状溝(77)が形成されている。この環状溝(77)は、環状凸部(76)の周方向に延びる円環状の溝であって、旋回スクロール(50)との摺接面に開口する窪み部を構成している。また、環状凸部(76)の突端面では、環状溝(77)の内側と外側のそれぞれに、環状溝(77)と同心の円環状の溝が形成されている。そして、環状溝(77)の内側の溝には内側シールリング(80)が嵌め込まれ、環状溝(77)の外側の溝には外側シールリング(81)が嵌め込まれている。内側シールリング(80)及び外側シールリング(81)は、窪み部である環状溝(77)の周囲を囲むシール部材を構成している。
【0062】
固定スクロール(30)は、固定側本体部材(31)と、固定側背面部材(35)とを備えている。また、固定側本体部材(31)は、固定側平板部(32)と、固定側ラップ(33)と、外周部(34)とを備えている。
【0063】
固定側平板部(32)は、概ね円板状に形成されている。固定側ラップ(33)は、固定側平板部(32)の前面(図3における下面)に立設されている。図4に示すように、固定側ラップ(33)は、固定側平板部(32)の中心付近から外周側へ向かって渦巻き状に延びる壁状に形成されている。外周部(34)は、肉厚の短い円筒状に形成されており、固定側平板部(32)の周縁部分から図3における下方へ延びている。この外周部(34)は、固定側ラップ(33)の外周側を囲っている。
【0064】
固定側本体部材(31)は、固定側ラップ(33)の先端(図3における下端)がハウジング部材(70)側を向く姿勢で、ハウジング部材(70)の上に載置されている。固定側本体部材(31)は、ボルト等によってハウジング部材(70)に固定されている。この状態において、固定スクロール(30)の外周部(34)の突端面(図3における下面)は、ハウジング部材(70)の外側縁部(73)の突端面(図3における上面)に密着する。
【0065】
固定側背面部材(35)は、概ね円板状に形成され、固定側本体部材(31)の上に載置されている。具体的に、固定側背面部材(35)は、固定側本体部材(31)の固定側平板部(32)の上に重ねられており、固定側平板部(32)の背面(図3における上面)を全体に亘って覆っている。また、固定側背面部材(35)は、ボルト等によって固定側本体部材(31)に固定されている。そして、固定スクロール(30)では、固定側本体部材(31)の固定側平板部(32)と固定側背面部材(35)とが、固定側鏡板部(36)を構成している。
【0066】
固定スクロール(30)には、吸入ポート(21)と、吐出ポート(22)とが形成されている。吸入ポート(21)は、固定側本体部材(31)の外周部(34)に形成されており、外周部(34)をその径方向に貫通している。また、吸入ポート(21)には、吸入管(12)の一端が挿入されている。吐出ポート(22)は、固定側鏡板部(36)の中央部に形成されている。そして、この吐出ポート(22)は、固定側背面部材(35)と固定側本体部材(31)の固定側平板部(32)とを、それぞれの厚み方向へ貫通している。
【0067】
また、固定スクロール(30)には、逆止弁(25)が取り付けられている。この逆止弁(25)は、弁体(26)と弁押え(27)とを備えており、固定側背面部材(35)の背面(図3における上面)に設置されている。この逆止弁(25)は、スクロール圧縮機(171)の停止中に吐出ポート(22)を塞ぐためのものである。スクロール圧縮機(171)の運転中において、吐出ポート(22)は常に開口状態に保たれる。
【0068】
旋回スクロール(50)は、旋回側本体部材(51)と、旋回側背面部材(54)とを備えている。また、旋回側本体部材(51)は、旋回側平板部(52)と、旋回側ラップ(53)とを備えている。
【0069】
旋回側平板部(52)は、概ね円板状に形成されている。旋回側ラップ(53)は、旋回側平板部(52)の前面(図3における上面)に立設されている。旋回側ラップ(53)は、旋回側平板部(52)の中心付近から外周側へ向かって渦巻き状に延びる壁状に形成されている。
【0070】
旋回側背面部材(54)は、概ね円板状に形成されており、旋回側平板部(52)の背面(図3における下面)を全体に亘って覆っている。つまり、旋回スクロール(50)では、旋回側背面部材(54)の上に旋回側本体部材(51)が載置されている。また、旋回側背面部材(54)は、ボルト等によって旋回側本体部材(51)に固定されている。そして、旋回スクロール(50)では、旋回側本体部材(51)の旋回側平板部(52)と旋回側背面部材(54)とが、旋回側鏡板部(56)を構成している。
【0071】
旋回側背面部材(54)には、円筒凸部(55)が一体に形成されている。円筒凸部(55)は、円筒状に形成され、旋回側背面部材(54)の背面(図3における下面)に突設されている。この円筒凸部(55)には、軸受メタル(57)が圧入されている。この軸受メタル(57)には、駆動軸(100)の偏心部(102)が、円筒凸部(55)の突端側(図3における下端側)から挿入されている。また、円筒凸部(55)の内側では、駆動軸(100)の偏心部(102)の上端面の上側に上端空間(66)が形成されている。この上端空間(66)は、偏心部(102)の上端面に開口する軸内通路(105)と連通している。
【0072】
旋回スクロール(50)は、その旋回側ラップ(53)が固定スクロール(30)の固定側ラップ(33)と噛み合わされている。そして、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)の間には、固定側鏡板部(36)、固定側ラップ(33)、旋回側鏡板部(56)、及び旋回側ラップ(53)によって囲まれた圧縮室(23)が形成される。
【0073】
また、旋回スクロール(50)は、ハウジング部材(70)の環状凸部(76)の上に載置されており、旋回側背面部材(54)の背面(図3における下面)が環状凸部(76)の突端面(図3における上面)と摺接する。ただし、ハウジング部材(70)の環状凸部(76)と旋回側背面部材(54)とは、物理的に接触してはおらず、両者の間には微小な隙間が形成される。そして、ハウジング部材(70)の環状凸部(76)と旋回側背面部材(54)との隙間は、内側シールリング(80)及び外側シールリング(81)によってシールされる。
【0074】
旋回スクロール(50)とハウジング部材(70)との間には、オルダム継手(89)が設けられる。このオルダム継手(89)は、自転防止機構(88)を構成している。つまり、オルダム継手(89)は、旋回スクロール(50)とハウジング部材(70)の両方に対してスライド自在に係合し、旋回スクロール(50)の自転を規制する。
【0075】
〈冷却用流体回路、固定側通路、旋回側通路〉
上述したように、スクロール圧縮機(171)には、冷却用流体回路(180)が設けられている。この冷却用流体回路(180)では、冷凍機油(即ち、潤滑油)が冷却用流体として流通する。また、固定スクロール(30)には、冷却用流体を流すための固定側通路(40)が形成され、旋回スクロール(50)には、冷却用流体を流すための旋回側通路(60)が形成されている。
【0076】
図3及び図4に示すように、固定スクロール(30)には、ラップ内通路(41)と、鏡板内通路(42)と、本体側連通路(45)と、導入通路(43)と、導出通路(44)とが形成されており、これらが固定側通路(40)を構成している。
【0077】
ラップ内通路(41)及び鏡板内通路(42)は、固定側本体部材(31)に形成されている。ラップ内通路(41)は、固定側平板部(32)の背面に開口する比較的深くて幅の狭い溝状の通路であって、固定側平板部(32)から固定側ラップ(33)に亘って形成されている。このラップ内通路(41)は、固定側ラップ(33)に沿った渦巻き状に形成されている。鏡板内通路(42)は、固定側平板部(32)の背面に開口する比較的浅くて幅の広い溝状の通路であって、固定側平板部(32)のみに形成されている。この鏡板内通路(42)は、ラップ内通路(41)に沿った渦巻き状に形成されている。ラップ内通路(41)及び鏡板内通路(42)は、固定側背面部材(35)によって覆われている。
【0078】
本体側連通路(45)は、固定側本体部材(31)の外周部(34)に形成されている。この本体側連通路(45)は、その一端が固定側本体部材(31)の背面(図3における上面)に開口し、その他端が外周部(34)の外周面に開口している。本体側連通路(45)の他端には、上記第1油導入管(17)が挿入されている。
【0079】
導入通路(43)及び導出通路(44)は、固定側背面部材(35)に形成されている。導入通路(43)は、固定側本体部材(31)の背面に開口する本体側連通路(45)と、ラップ内通路(41)及び鏡板内通路(42)の最外周側の端部とを接続している。導出通路(44)は、その一端がラップ内通路(41)及び鏡板内通路(42)の最内周側の端部に連通し、その他端が固定側背面部材(35)の外周面に開口している。つまり、導出通路(44)は、その他端においてケーシング(11)の内部空間と連通している。
【0080】
図3に示すように、旋回スクロール(50)には、ラップ内通路(61)と、鏡板内通路(62)と、導入通路(63)と、導出通路(64)とが形成されており、これらが旋回側通路(60)を構成している。
【0081】
ラップ内通路(61)及び鏡板内通路(62)は、旋回側本体部材(51)に形成されている。ラップ内通路(61)は、旋回側平板部(52)の背面に開口する比較的深くて幅の狭い溝状の通路であって、旋回側平板部(52)から旋回側ラップ(53)に亘って形成されている。このラップ内通路(61)は、旋回側ラップ(53)に沿った渦巻き状に形成されている。鏡板内通路(62)は、旋回側平板部(52)の背面に開口する比較的浅くて幅の広い溝状の通路であって、旋回側平板部(52)のみに形成されている。この鏡板内通路(62)は、ラップ内通路(61)に沿った渦巻き状に形成されている。ラップ内通路(61)及び鏡板内通路(62)は、旋回側背面部材(54)によって覆われている。
【0082】
導入通路(63)及び導出通路(64)は、旋回側背面部材(54)に形成されている。導入通路(63)は、その一端がラップ内通路(61)及び鏡板内通路(62)の最外周側の端部に連通し、その他端が旋回側背面部材(54)の背面(図3における下面)に開口している。この導入通路(63)の他端は、ハウジング部材(70)の環状溝(77)に連通している。導出通路(64)は、その一端がラップ内通路(61)及び鏡板内通路(62)の最内周側の端部に連通し、その他端が旋回側背面部材(54)の背面(図3における下面)に開口している。この導出通路(64)の他端は、ハウジング部材(70)の中央凹部(75)内の筒状空間(78)と連通している。
【0083】
旋回スクロール(50)に形成された導入通路(63)は、旋回スクロール(50)の位置に拘わらず常に環状溝(77)と連通する。具体的に、旋回側背面部材(54)の背面における導入通路(63)の開口端は、その形状が円形となっている。一方、環状溝(77)の径方向の幅Wは、旋回側背面部材(54)の背面における導入通路(63)の開口端の半径r1と旋回スクロール(50)の公転半径r2の和(r1+r2)の二倍以上となっている(W≧2(r1+r2))。従って、旋回スクロール(50)の公転中においても、導入通路(63)は環状溝(77)と常に連通する。
【0084】
ハウジング部材(70)には、接続用通路(83)と排出通路(85)とが形成されている。接続用通路(83)は、その一端が環状溝(77)の底面に開口し、その他端が外側縁部(73)の外周面に開口している。接続用通路(83)の他端には、上記第2油導入管(18)が挿入されている。排出通路(85)は、その一端がハウジング部材(70)の中央凹部(75)における壁面の下端付近に開口し、その他端がハウジング部材(70)の外側の表面に開口している。つまり、排出通路(85)は、中央凹部(75)内の筒状空間(78)をケーシング(11)の内部空間における圧縮機構(20)の外側に連通させている。
【0085】
上述したように、スクロール圧縮機(171)のケーシング(11)には、油導出管(14)が設けられている(図2を参照)。油導出管(14)は、ケーシング(11)の下部を貫通している。油導出管(14)は、その一端が冷却用ポンプ(128)の吐出口(123)に接続され、その他端が上流側冷却器(181)の入口端に接続されている。上流側冷却器(181)の流出側には、固定側分流路(182)と旋回側分流路(183)とが設けられている。固定側分流路(182)は第1油導入管(17)に接続され、旋回側分流路(183)は第2油導入管(18)と接続されている。固定側分流路(182)には、第1流量調節弁(184)が設けられ、旋回側分流路(183)には、第2流量調節弁(185)が設けられている。これらの流量調節弁(184,185)は、開度が調節自在な電動弁で構成されている。
【0086】
冷却用流体回路(180)では、油導出管(14)から固定側分流路(182)及び旋回側分流路(183)の分岐部に至るまでの通路が、冷却用流体が流れる1本の主導入通路(190)を構成している。また、冷却用流体回路(180)では、固定側分流路(182)から第1油導入管(17)の内部の通路まで第1分岐通路(191)を構成し、旋回側分流路(183)から第2油導入管(18)の内部の通路までが第2分岐通路(192)を構成している。更に、第1流量調節弁(184)及び第2流量調節弁(185)は、第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)を流れる冷却用流体の流量を制御するための流量制御機構(186)を構成している。
【0087】
スクロール圧縮機(171)では、冷却用ポンプ(128)と、主導入通路(190)と、第1分岐通路(191)と、第2分岐通路(192)と、固定側通路(40)と、接続用通路(83)と、環状溝(77)と、旋回側通路(60)と、筒状空間(78)と、排出通路(85)とを含む通路によって、冷却用流体回路(180)が構成されいている。この冷却用流体回路(180)では、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油が、冷却用流体として流通する。そして、冷却用流体回路(180)を冷却用流体として流れる冷凍機油は、上流側冷却器(181)において冷却されてから旋回側通路(60)と固定側通路(40)を順に通過し、旋回スクロール(50)及び固定スクロール(30)から吸熱する。また、冷却用流体回路(180)を流れる冷凍機油の一部は、駆動軸(100)の軸受や圧縮機構(20)の摺動部分を潤滑するためにも利用される。
【0088】
−運転動作−
空気調和装置(150)の運転動作と、そこに設けられたスクロール圧縮機(171)の運転動作について説明する。
【0089】
〈空気調和装置の運転動作〉
空気調和装置(150)は、冷房運転と暖房運転を切り換えて実行する。
【0090】
先ず、空気調和装置(150)の冷房運転について説明する。冷房運転時には、四方切換弁(174)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、室外熱交換器(172)が凝縮器として動作し、室内熱交換器(176a,176b)が蒸発器として動作する。具体的に、スクロール圧縮機(171)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(172)で室外空気へ放熱して凝縮し、その後に各室内回路(175a,175b)へ分配される。各室内回路(175a,175b)へ流入した冷媒は、室内膨張弁(177a,177b)を通過する際に減圧されてから室内熱交換器(176a,176b)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ユニット(153a,153b)は、室内熱交換器(176a,176b)を通過する際に冷却された室内空気を室内へ供給する。各室内熱交換器(176a,176b)において蒸発した冷媒は、室外回路(170)へ戻ってスクロール圧縮機(171)に吸入される。
【0091】
次に、空気調和装置(150)の暖房運転について説明する。暖房運転時には、四方切換弁(174)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、室内熱交換器(176a,176b)が凝縮器として動作し、室外熱交換器(172)が蒸発器として動作する。具体的に、スクロール圧縮機(171)から吐出された冷媒は、各室内回路(175a,175b)へ分配され、室内熱交換器(176a,176b)で室内空気へ放熱して凝縮する。室内ユニット(153a,153b)は、室内熱交換器(176a,176b)を通過する際に加熱された室内空気を室内へ供給する。各室内回路(175a,175b)において凝縮した冷媒は、室外回路(170)へ戻って室外膨張弁(173)を通過する際に減圧され、その後に室外熱交換器(172)で室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(172)において蒸発した冷媒は、スクロール圧縮機(171)に吸入される。
【0092】
〈スクロール圧縮機の運転動作〉
スクロール圧縮機(171)の動作について説明する。
【0093】
電動機(110)に通電すると、駆動軸(100)に係合する旋回スクロール(50)が駆動される。旋回スクロール(50)は、自転運動は行わずに公転運動だけを行う。旋回スクロール(50)が公転すると、固定スクロール(30)との間に形成された圧縮室(23)の容積が変化し、吸入管(12)を通って圧縮機構(20)へ流入した低圧ガス冷媒が圧縮室(23)へ吸い込まれる。圧縮室(23)へ吸い込まれたガス冷媒は、圧縮されて高圧ガス冷媒となり、吐出ポート(22)を通ってケーシング(11)の内部空間へ吐出される。ケーシング(11)内の高圧ガス冷媒は、吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ吐出されてゆく。
【0094】
駆動軸(100)が回転すると、この駆動軸(100)によって潤滑用ポンプ(127)と冷却用ポンプ(128)とが駆動される。潤滑用ポンプ(127)は、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油を吸い込み、吸い込んだ冷凍機油を軸内通路(105)へと押し出す。軸内通路(105)へ押し出された冷凍機油は、その一部が下側分岐通路(107)及び上側分岐通路(106)へ流入し、残りが上端空間(66)へ流入する。
【0095】
下側分岐通路(107)へ流入した冷凍機油は、下部軸受部材(115)に設けられた軸受メタル(116)と駆動軸(100)の隙間へ供給されて潤滑に利用される。上側分岐通路(106)へ流入した冷凍機油は、ハウジング部材(70)に設けられた軸受メタル(82)と駆動軸(100)の隙間へ供給されて潤滑に利用される。また、上端空間(66)へ流入した冷凍機油は、その一部が旋回スクロール(50)に設けられた軸受メタル(57)と偏心部(102)の隙間へ供給されて潤滑に利用される。
【0096】
冷却用ポンプ(128)は、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油を吸い込み、吸い込んだ冷凍機油を油導出管(14)に押し出す。油導出管(14)へ吐出された冷凍機油は、上流側冷却器(181)へ流入して室外空気へ放熱する。つまり、上流側冷却器(181)では、冷凍機油が室外空気によって冷却される。上流側冷却器(181)において冷却された冷凍機油は、固定側分流路(182)と旋回側分流路(183)とに分流する。
【0097】
固定側分流路(182)に流入した冷凍機油は、第1油導入管(17)、本体側連通路(45)、導入通路(43)を順に通過し、その後にラップ内通路(41)と鏡板内通路(42)とに分配される。ラップ内通路(41)と鏡板内通路(42)に流入した冷凍機油は、それぞれの外周側の端部から内周側の端部へ向かって流れ、その間に固定スクロール(30)から吸熱する。その後、冷凍機油は、導出通路(44)へ流入し、導出通路(44)の終端からケーシング(11)の内部空間へ流出してケーシング(11)の底部へと流れ落ちていく。
【0098】
旋回側分流路(183)に流入した冷凍機油は、第2油導入管(18)、接続用通路(83)を順に通過し、環状溝(77)へ流入する。環状溝(77)へ流入した冷凍機油は、導入通路(63)を通過後にラップ内通路(61)と鏡板内通路(62)とに分配される。ラップ内通路(61)と鏡板内通路(62)に流入した冷凍機油は、それぞれの外周側の端部から内周側の端部へ向かって流れ、その間に旋回スクロール(50)から吸熱する。その後、冷凍機油は、導出通路(64)を通って中央凹部(75)内の筒状空間(78)に流入する。筒状空間(78)に流入した冷凍機油は、排出通路(85)流入し、排出通路(85)の終端からケーシング(11)の内部空間へ流出してケーシング(11)の底部へと流れ落ちていく。
【0099】
このように、スクロール圧縮機(171)の冷却用流体回路(180)では、旋回スクロール(50)の旋回側通路(60)と固定スクロール(30)の固定側通路(40)とが、並列に配置されている。ここで、本実施形態では、第1分岐通路(191)に第1流量調節弁(184)が設けられ、第2分岐通路(192)に第2流量調節弁(185)が設けられている。このため、これらの流量調節弁(184,185)の開度を調節することで、固定側通路(40)を流れる冷凍機油の流量と旋回側通路(60)を流れる冷凍機油の流量とを等しく調整できる。即ち、各流量調節弁(184,185)は、固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に冷凍機油が偏流するのを防止するための偏流防止機構として機能する。
【0100】
また、ハウジング部材(70)の環状溝(77)は、環状凸部(76)の全周に亘って形成されている。また、環状溝(77)には、旋回スクロール(50)の旋回側通路(60)を通過した冷凍機油が流入する。この環状溝(77)へ流入する冷凍機油の圧力は、ケーシング(11)の内部空間の圧力(即ち、圧縮機構(20)から吐出された高圧ガス冷媒の圧力)よりも高くなっている。そして、旋回スクロール(50)の旋回側背面部材(54)の背面(図3における下面)のうち内側シールリング(80)と外側シールリング(81)の間の部分には、環状溝(77)へ流入した冷凍機油の圧力が作用する。その結果、旋回スクロール(50)には、旋回スクロール(50)を固定スクロール(30)側へ押し付ける力が作用し、圧縮室(23)の気密性が確保される。つまり、スクロール圧縮機(171)では、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却するために冷却用流体回路(180)を流れる冷凍機油が、旋回スクロール(50)に対して固定スクロール(30)側への押付け力を作用させるためにも利用される。
【0101】
−実施形態1の効果−
本実施形態のスクロール圧縮機(171)では、固定スクロール(30)に形成された固定側通路(40)と、旋回スクロール(50)に形成された旋回側通路(60)とが、冷却用流体回路(180)において互いに並列に配置されている。このため、冷却用流体が流れる通路の流通抵抗を比較的小さくしつつ、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)との双方を冷却できる。一方、このように旋回側通路(60)と固定側通路(40)とを並列に配置すると、固定側通路(40)及び旋回側通路(60)のうち流通抵抗が大きい方の通路を流れる冷却用流体の流量が不足するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、固定側通路(40)に冷却用流体を供給するための第1分岐通路(191)と、旋回側通路(60)に冷却用流体を供給するための第2分岐通路(192)とにそれぞれ流量調節弁(184,185)を設けている。このため、これらの流量調節弁(184,185)の開度を調節することで、固定側通路(40)を冷却用流体として流れる冷凍機油の流量と、旋回側通路(60)を冷却用流体として流れる冷凍機油の流量とを等しくできる。よって、冷却用流体としての冷凍機油の流量が固定側通路(40)と旋回側通路(60)の一方に偏ることは無く、固定側通路(40)と旋回側通路(60)の両方に対して充分な量の冷凍機油を確実に供給することが可能となる。従って、本実施形態のスクロール圧縮機(171)によれば、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)の両方を確実に冷却することが可能となり、その結果、圧縮機構(20)において圧縮されるガス冷媒の温度上昇を確実に抑制することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態のスクロール圧縮機(171)では、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油が、圧縮機構(20)を潤滑するためだけでなく、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却するための冷却用流体としても利用される。つまり、本実施形態では、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)の冷却を行わない場合でも圧縮機構(20)の動作に必要となる冷凍機油を、冷却用流体として利用している。従って、本実施形態によれば、固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)の冷却を行うことに起因するスクロール圧縮機(171)の構成の複雑化を抑制できる。
【0103】
また、上記実施形態の空気調和装置(150)は、スクロール圧縮機(171)と、冷媒を室外空気と熱交換させる室外熱交換器(172)と、冷媒を室内空気と熱交換させる室内熱交換器(176a,176b)とが接続された冷媒回路(160)を備え、スクロール圧縮機(171)がガス冷媒を被圧縮ガスとして吸入して圧縮し、上記冷媒回路(160)で冷凍サイクルが行われる空気調和装置(150)であり、室内熱交換器(176a,176b)と、該室内熱交換器(176a,176b)へ室内空気を供給する室内ファン(154a,154b)とが設置される室内ユニット(153a,153b)と、スクロール圧縮機(171)と、室外熱交換器(172)と、該室外熱交換器(172)へ室外空気を供給する室外ファン(152)とが設置される室外ユニット(151)とを備える一方、スクロール圧縮機(171)に設けられた上流側冷却器(181)は、冷却用流体を室外空気と熱交換させて冷却し、室外ユニット(151)では、上記室外ファン(152)が上記室外熱交換器(172)と上記上流側冷却器(181)の両方へ室外空気を供給する。従って、本実施形態によれば、スクロール圧縮機(171)の上流側冷却器(181)へ室外空気を供給するためのファンを室外ファン(152)とは別に設ける場合に比べ、室外ユニット(151)の構成を簡素化することができる。
【0104】
−実施形態1の変形例−
上記実施形態1では、第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)を流れる冷却用流体の流量を制御するための流量制御機構(186)として、各分岐通路(191,192)にそれぞれ流量調節弁(184,185)を設けている。しかしながら、この流量制御機構として、一方の分岐通路(191,192)に所定の流通抵抗を付与するキャピラリーチューブを用いても良い。具体的には、例えば固定側通路(40)の流通抵抗が旋回側通路(60)の流通抵抗よりも大きい場合、旋回側通路(60)と繋がる第2分岐通路(192)にキャピラリーチューブを設けるようにする。これにより、固定側通路(40)へ供給される冷却用流体の流量が不足してしまうことを防止でき、固定側通路(40)を流れる冷却用流体の流量と旋回側通路(60)を流れる冷却用流体の流量とを等しくすることができる。
【0105】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、冷却用流体回路(180)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール圧縮機(171)について、上記実施形態1のスクロール圧縮機(171)と異なる点を説明する。
【0106】
図6に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機(171)には、駆動軸(100)の下端部に3つの油ポンプ(127,128a,128b)が設けられている。具体的に、駆動軸(100)の下端部には、上から下に向かって順に、潤滑用ポンプ(127)、第1冷却用ポンプ(128a)、及び第2冷却用ポンプ(128b)が連結している。潤滑用ポンプ(127)、第1冷却用ポンプ(128a)、及び第2冷却用ポンプ(128b)は、実施形態1の油ポンプと同様、容積型ポンプの一種であるトロコイドポンプで構成されている。第1冷却用ポンプ(128a)と第2冷却用ポンプ(128b)とでは、一回転あたりに吐出口(123)から流出する流体の体積(いわゆる押しのけ容積)が等しくなっている。
【0107】
本実施形態のケーシング(11)には、第1油導出管(15)と第2油導出管(16)とが設けられている。第1油導出管(15)の一端は、第1冷却用ポンプ(128a)の吐出口(123)に接続されている。第1油導出管(15)の他端は、第1油導入管(17)と繋がっている。第2油導出管(16)の一端は、第2冷却用ポンプ(128b)の吐出口(123)に接続されている。第2油導出管(16)の他端は、第2油導入管(18)と繋がっている。
【0108】
実施形態2のスクロール圧縮機(171)では、第1冷却用ポンプ(128a)、第1油導出管(15)、及び第1油導入管(17)に亘って、冷却用流体を搬送するための第1供給通路(193)が形成されている。また、スクロール圧縮機(171)では、第2冷却用ポンプ(128b)、第2油導出管(16)、及び第2油導入管(18)に亘って、冷却用流体を搬送するための第2供給通路(194)が形成されている。つまり、第1冷却用ポンプ(128a)は、第1供給通路(193)に含まれて冷却用流体を搬送する第1搬送機構を構成している。また、第2冷却用ポンプ(128b)は、第2供給通路(194)に含まれて冷却用流体を搬送する第2搬送機構を構成している。
【0109】
また、実施形態2では、第1供給通路(193)と第2供給通路(194)とにそれぞれ1つずつ上流側冷却器(181a,181b)が設けられている。具体的には、第1供給通路(193)には、第1上流側冷却器(181a)が設けられ、第2供給通路(194)には、第2上流側冷却器(181b)が設けられている。これらの上流側冷却器(181a,181b)は、上記実施形態1の上流側冷却器(181)と同様の構成となっている。なお、実施形態2の室外ユニット(151)では、室外熱交換器(172)と第1上流側冷却器(181a)と第2上流側冷却器(181b)とに対して、室外ファン(152)によって室外空気が供給される。
【0110】
実施形態2において、駆動軸(100)が回転すると、駆動軸(100)によって潤滑用ポンプ(127)と第1冷却用ポンプ(128a)と第2冷却用ポンプ(128b)とが駆動される。潤滑用ポンプ(127)は、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油を吸い込み、吸い込んだ冷凍機油を軸内通路(105)へと押し出す。軸内通路(105)へ押し出された冷凍機油は、その一部が下側分岐通路(107)及び上側分岐通路(106)へ流入し、残りが上端空間(66)へ流入する。これにより、上記実施形態1と同様、駆動軸(100)の軸受けが潤滑される。
【0111】
第1冷却用ポンプ(128a)は、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油を吸い込み、吸い込んだ冷凍機油を第1油導出管(15)に押し出す。第1油導出管(15)へ吐出された冷凍機油は、第1上流側冷却器(181a)へ流入して室外空気へ放熱する。つまり、第1上流側冷却器(181a)では、冷凍機油が室外空気によって冷却される。第1上流側冷却器(181a)において冷却された冷凍機油は、第1油導入管(17)より固定側通路(40)に流入する。
【0112】
固定側通路(40)に流入した冷凍機油は、本体側連通路(45)、導入通路(43)を順に通過し、その後にラップ内通路(41)と鏡板内通路(42)とに分配される。ラップ内通路(41)と鏡板内通路(42)に流入した冷凍機油は、それぞれの外周側の端部から内周側の端部へ向かって流れ、その間に固定スクロール(30)から吸熱する。その後、冷凍機油は、導出通路(44)へ流入し、導出通路(44)の終端からケーシング(11)の内部空間へ流出してケーシング(11)の底部へと流れ落ちていく。
【0113】
第2冷却用ポンプ(128b)は、ケーシング(11)の内部空間に貯留された冷凍機油を吸い込み、吸い込んだ冷凍機油を第2油導出管(16)に押し出す。第2油導出管(16)へ吐出された冷凍機油は、第2上流側冷却器(181b)へ流入して室外空気へ放熱する。つまり、第2上流側冷却器(181b)では、冷凍機油が室外空気によって冷却される。第2上流側冷却器(181b)において冷却された冷凍機油は、第2油導入管(18)より旋回側通路(60)に流入する。
【0114】
旋回側通路(60)に流入した冷凍機油は、接続用通路(83)を通過し、環状溝(77)へ流入する。環状溝(77)へ流入した冷凍機油は、導入通路(63)を通過後にラップ内通路(61)と鏡板内通路(62)とに分配される。ラップ内通路(61)と鏡板内通路(62)に流入した冷凍機油は、それぞれの外周側の端部から内周側の端部へ向かって流れ、その間に旋回スクロール(50)から吸熱する。その後、冷凍機油は、導出通路(64)を通って中央凹部(75)内の筒状空間(78)に流入する。筒状空間(78)に流入した冷凍機油は、排出通路(85)流入し、排出通路(85)の終端からケーシング(11)の内部空間へ流出してケーシング(11)の底部へと流れ落ちていく。
【0115】
以上のように、実施形態2では、固定側通路(40)へ冷凍機油を送るための第1供給通路(193)と、旋回側通路(60)へ冷凍機油を送るための第2供給通路(194)とが、互いに独立した異なる通路となっており、且つ第1供給通路(193)と第2供給通路(194)とには、それぞれ個別に冷却用ポンプ(128a,128b)が設けられている。ここで、第1冷却用ポンプ(128a)と第2冷却用ポンプ(128b)とは、容積型ポンプであるため、固定側通路(40)と旋回側通路(60)の流通抵抗に拘わらず、冷却用流体を一定の流量で搬送することができる。しかも、第1冷却用ポンプ(128a)と第2冷却用ポンプ(128b)とでは、それらの押しのけ容積が等しくなっており、且つ1本の駆動軸(100)によって同じ回転速度で駆動される。このため、固定側通路(40)と旋回側通路(60)との流通抵抗が異なっていたとしても、固定側通路(40)を流れる冷凍機油の流量と、旋回側通路(60)を流れる冷凍機油の流量とを等しくできる。
【0116】
−実施形態2の効果−
本実施形態のスクロール圧縮機(171)では、固定スクロール(30)に形成された固定側通路(40)と、旋回スクロール(50)に形成された旋回側通路(60)とが、冷却用流体回路(180)において互いに並列に配置されている。このため、冷却用流体が流れる通路の流通抵抗を比較的小さくしつつ、固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)との双方を冷却できる。一方、このように旋回側通路(60)と固定側通路(40)とを並列に配置すると、固定側通路(40)及び旋回側通路(60)のうち流通抵抗が大きい方の通路を流れる冷却用流体の流量が不足するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、第1冷却用ポンプ(128a)を含む第1供給通路(193)を固定側通路(40)に接続し、第2冷却用ポンプ(128b)を含む第2供給通路(194)を旋回側通路(60)に接続している。このため、固定側通路(40)に送る冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)に送る冷却用流体の流量とを個別に制御できるため、固定側通路(40)を流れる冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)を流れる冷却用流体の流量とを等しくできる。
【0117】
特に本実施形態では、第1冷却用ポンプ(128a)と第2冷却用ポンプ(128b)とは、押しのけ容積が同じ容積型ポンプで構成され、これらの冷却用ポンプ(128a,128b)が1本の駆動軸(100)に連結されている。このため、駆動軸(100)の回転駆動時において、第1冷却用ポンプ(128a)から吐出される冷凍機油の流量と、第2冷却用ポンプ(128b)から吐出される冷凍機油の流量とを等しくできる。その結果、固定側通路(40)を流れる冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)を流れる冷凍機油の流量とを概ね等しくできる。また、2つの冷却用ポンプ(128a,128b)を駆動するための駆動軸(100)が共用されるため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0118】
−実施形態2の変形例−
上記実施形態2では、2つの冷却用ポンプ(128a,128b)を1つの駆動機構(即ち、駆動軸(100)及び電動機(110))によって回転駆動させている。しかしながら、実施形態2において、2つの冷却用ポンプ(128a,128b)を駆動するための駆動機構を個別に設け、各冷却用ポンプ(128a,128b)によって搬送される冷却用流体の流量を個別に制御する構成としても良い。これにより、固定側通路(40)を流れる冷却用流体の流量と、旋回側通路(60)を流れる冷却用流体の流量とを等しく調整することができる。なお、冷却用ポンプ(128a,128b)を構成する搬送手段は、上記実施形態2のトロコイドポンプに限定されるものではなく、例えば歯車ポンプ等の他のポンプであっても良い。
【0119】
《その他の実施形態》
上述した各実施形態において、以下のような変形例の構成を採用しても良い。
【0120】
−第1変形例−
図7に示すように、第1変形例では、上記各実施形態のスクロール圧縮機(171)の冷却用流体回路(180)において、第1流出管(195)、第2流出管(196)、下流側冷却器(197)、動力回収機(198)、及びインジェクション管(12a)が追加されている。
【0121】
第1流出管(195)は、固定側通路(40)の導出通路(44)の出口端に挿入されている。第2流出管(196)は、ハウジング部材(70)に形成される排出通路(85)の出口端に挿入されている。第1流出管(195)の流出側と第2流出管(196)の流出側とは、1つの通路にまとまって下流側冷却器(197)の入口端に接続されている。下流側冷却器(197)の出口端は、動力回収機(198)の入口端に接続されている。つまり、動力回収機(198)は、下流側冷却器(197)の下流側に配置されている。インジェクション管(12a)は、圧縮機構(20)の吸入管(12)から分岐している。インジェクション管(12a)の入口端は、動力回収機(198)の出口端に接続されている。
【0122】
下流側冷却器(197)は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であって、冷却用流体回路(180)を冷却用流体として流れる冷凍機油を室外空気と熱交換させることによって冷却する。また、本実施形態の室外ユニット(151)では、室外熱交換器(172)と上流側冷却器(181)だけでなく、下流側冷却器(197)に対しても室外ファン(152)によって室外空気が供給される。
【0123】
動力回収機(198)は、例えばロータリ式流体機械等の流体機械によって構成され、冷却用流体回路(180)を流れる冷凍機油によって駆動される。動力回収機(198)は、冷却用流体回路(180)を流れる冷凍機油が持つエネルギを回転動力に変換する、油エネルギ回収機構を構成している。図示しないが、動力回収機(198)には発電機が連結されている。動力回収機(198)で高圧の油が減圧された際に回収された回転動力は、発電機を駆動するために利用される。つまり、冷却用流体回路(180)を流れる冷凍機油のエネルギが、電力に変換される。動力回収機(198)に連結された発電機において発生した電力は、スクロール圧縮機(171)の電動機(110)へ供給され、商用電源から供給された電力と共に圧縮機構(20)を駆動するために利用される。
【0124】
本実施形態の冷却用流体回路(180)において、冷却用流体として流れる冷凍機油は、上流側冷却器(181)において冷却された後に旋回側通路(60)と固定側通路(40)とに分流し、旋回スクロール(50)と固定スクロール(30)から吸熱する。
【0125】
固定側通路(40)を流出して第1流出管(195)を通過した冷凍機油と、排出通路(85)を流出して第2流出管(196)を通過した冷凍機油とは、合流した後に下流側冷却器(197)を流れる。下流側冷却器(197)では、冷凍機油が室外空気に対して放熱する。下流側冷却器(197)から流出した冷凍機油は、動力回収機(198)を駆動する。動力回収機(198)を通過する際に圧力が低下した冷凍機油は、インジェクション管(12a)を通って吸入管(12)内を流れる低圧のガス冷媒へ供給され、このガス冷媒と共に圧縮機構(20)の圧縮室(23)へ吸入される。
【0126】
このように、本実施形態の冷却用流体回路(180)では、下流側冷却器(197)において冷却された冷凍機油が、吸入管(12)を流れる低圧のガス冷媒と共に圧縮機構(20)の圧縮室(23)へ吸入される。ガス冷媒と共に圧縮機構(20)へ吸い込まれた冷凍機油は、圧縮機構(20)において圧縮されつつあるガス冷媒と直接に接触し、このガス冷媒から吸熱する。従って、本実施形態によれば、上流側冷却器(181)において冷却された冷凍機油を固定側通路(40)や旋回側通路(60)へ供給して固定スクロール(30)や旋回スクロール(50)を冷却することだけでなく、下流側冷却器(197)において冷却された冷凍機油をガス冷媒と共に圧縮機構(20)へ吸い込ませることによっても、圧縮機構(20)の圧縮室(23)において圧縮されつつあるガス冷媒の温度上昇を抑えることができる。
【0127】
ここで、本実施形態の冷却用流体回路(180)において、その始端となる冷却用ポンプ(128)の吸入口(122)は、ケーシング(11)内に貯留された冷凍機油(即ち、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒と圧力が実質的に等しい冷凍機油)に浸される一方、その終端となる下流側油導入管(19)は、吸入管(12)(即ち、圧縮機構(20)へ吸入される低圧のガス冷媒が流れる部分)に接続されている。つまり、この冷却用流体回路(180)では、その始端の圧力が圧縮機構(20)から吐出された高圧ガス冷媒の圧力と実質的に等しくなり、その終端の圧力が圧縮機構(20)へ吸入される低圧ガス冷媒の圧力と実質的に等しくなっている。従って、本実施形態の冷却用流体回路(180)では、冷却用流体としての冷凍機油を流すための駆動力として、その始端と終端の圧力差を利用することができ、冷却用ポンプ(128)を駆動するのに必要な動力を削減することができる。
【0128】
−第2変形例−
上述した各実施形態のスクロール圧縮機(171)において、オルダム継手(89)以外の機構を自転防止機構(88)として用いても良い。ここでは、本変形例の自転防止機構(88)について、それを実施形態1のスクロール圧縮機(171)に適用した場合を例に説明する。
【0129】
本変形例の自転防止機構(88)は、少なくとも三つの継手ユニット(90)によって構成されている。図8に示すように、各継手ユニット(90)は、固定側ピン(91)と旋回側ピン(92)と円筒部材(93)とを一つずつ備え、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(56)の周方向において概ね等角度間隔に配置されている。
【0130】
旋回側ピン(92)は、円柱状あるいは円管状に形成され、旋回スクロール(50)に取り付けられている。具体的に、旋回側ピン(92)は、旋回側背面部材(54)の背面(図8における下面)から突出する姿勢で、旋回側背面部材(54)における周縁付近に埋設されている。旋回側ピン(92)の軸方向は、旋回側背面部材(54)の背面と実質的に直交している。
【0131】
固定側ピン(91)は、円柱状あるいは円管状に形成され、ハウジング部材(70)に取り付けられている。具体的に、固定側ピン(91)は、ハウジング部材(70)の円板部(72)の前面(図8における上面)から突出する姿勢で、環状凸部(76)の外側の位置に埋設されている。固定側ピン(91)の軸方向は、円板部(72)の前面と実質的に直交している。
【0132】
円筒部材(93)は、比較的短い円筒状に形成され、ハウジング部材(70)と旋回スクロール(50)の間に挟み込まれている。この円筒部材(93)は、その一端面(図8における下端面)がハウジング部材(70)の円板部(72)の前面と摺接し、その他端面(図8における上端面)が旋回スクロール(50)の旋回側背面部材(54)の背面と摺接する。また、円筒部材(93)には、旋回側ピン(92)のうち旋回スクロール(50)から突出した部分と、固定側ピン(91)のうちハウジング部材(70)から突出した部分とが挿入されている。
【0133】
各継手ユニット(90)において、円筒部材(93)の内周面には、固定側ピン(91)の外周面と、旋回側ピン(92)の外周面とが接している。円筒部材(93)の内周面における固定側ピン(91)との接触箇所と、円筒部材(93)の内周面における旋回側ピン(92)との接触箇所とは、円筒部材(93)の中心軸を挟んで反対側に位置している。そして、スクロール圧縮機(171)の運転中に旋回スクロール(50)が移動しても、円筒部材(93)の内周面が固定側ピン(91)と旋回側ピン(92)の両方の外周面と摺接し続け、その結果、旋回スクロール(50)の自転が規制される。
【0134】
なお、図8に示す圧縮機構(20)において、ハウジング部材(70)に形成された環状凸部(76)の幅は、図3に示す実施形態1の圧縮機構(20)に形成された環状凸部(76)に比べて狭くなっている。そして、図8に示す圧縮機構(20)では、環状凸部(76)の突端面にシールリング(84)が設けられている。このシールリング(84)は、旋回スクロール(50)の旋回側背面部材(54)の背面と環状凸部(76)の突端面との隙間をシールしている。
【0135】
圧縮機構(20)に設けられた継手ユニット(90)の一つは、冷却用流体回路(180)の一部を構成している。図8に示す圧縮機構(20)では、同図の右側に設けられた継手ユニット(90a)が、冷却用流体回路(180)の一部を構成している。
【0136】
図9に示すように、冷却用流体回路(180)を構成する継手ユニット(90a)において、固定側ピン(91a)と旋回側ピン(92a)のそれぞれは、両端が開口した円管状に形成される。固定側ピン(91a)の内部空間は、ハウジング部材(70)に形成された接続用通路(83)に連通している。旋回側ピン(92a)の内部空間は、旋回スクロール(50)に形成された導入通路(63)に連通している。
【0137】
また、この継手ユニット(90a)において、円筒部材(93a)には、二つのシールリング(94,95)が設けられている。具体的に、この円筒部材(93a)の両端面には、その内周縁に沿った円周状の段差部が形成されており、この段差部にシールリング(94,95)が嵌め込まれている。そして、図9における円筒部材(93a)の上端側に配置されたシールリング(94)は、旋回スクロール(50)の旋回側背面部材(54)の背面と摺接し、旋回側背面部材(54)と円筒部材(93a)の隙間をシールする。一方、同図における円筒部材(93a)の下端側に配置されたシールリング(95)は、ハウジング部材(70)の円板部(72)の前面と摺接し、ハウジング部材(70)と円筒部材(93a)の隙間をシールする。
【0138】
この継手ユニット(90a)において、円筒部材(93a)の内側の空間は、固定側ピン(91)を介してハウジング部材(70)の接続用通路(83)に連通し、旋回側ピン(92)を介して旋回スクロール(50)の導入通路(63)に連通する。また、円筒部材(93a)の内側の空間は、円筒部材(93a)に設けられたシールリング(94,95)によって外部からシールされている。そして、冷却用流体回路(180)の接続用通路(83)を流れる冷凍機油は、固定側ピン(91a)を通って円筒部材(93a)の内側の空間へ流入し、その後に旋回側ピン(92a)を通って旋回側通路(60)へ向かって流れてゆく。
【0139】
−第3変形例−
上述した各実施形態のスクロール圧縮機(171)において、オルダム継手(89)以外の機構を自転防止機構(88)としても良い。ここでは、本変形例の自転防止機構(88)について、それを上記実施形態1のスクロール圧縮機(171)に適用した場合を例に説明する。
【0140】
本変形例の自転防止機構(88)は、少なくとも三つの継手ユニット(90)によって構成されている。図10に示すように、各継手ユニット(90)は、ピン部材(96)と突出部(97)とを一つずつ備え、旋回スクロール(50)の旋回側鏡板部(56)の周方向において概ね等角度間隔に配置されている。
【0141】
ピン部材(96)は、円柱状あるいは円管状に形成され、旋回スクロール(50)に取り付けられている。具体的に、ピン部材(96)は、旋回側背面部材(54)の背面(図10における下面)から突出する姿勢で、旋回側背面部材(54)における周縁付近に埋設されている。ピン部材(96)の軸方向は、旋回側背面部材(54)の背面と実質的に直交している。
【0142】
突出部(97)は、ハウジング部材(70)と一体に形成されている。具体的に、突出部(97)は、ハウジング部材(70)の円板部(72)の前面(図10における上面)から突出しており、上端が平面となった短い柱状に形成されている。円板部(72)の前面において、突出部(97)は、旋回スクロール(50)に設けられたピン部材(96)と対面する位置に、各ピン部材(96)に対応して一つずつ配置されている。また、突出部(97)の突端面(図10における上面)は、旋回側背面部材(54)の背面と摺接する。
【0143】
各突出部(97)には、ガイド穴(98)が一つずつ形成されている。このガイド穴(98)は、断面が円形で有底の穴であって、突出部(97)の突端面に開口している。ガイド穴(98)には、対応するピン部材(96)のうち旋回スクロール(50)から突出した部分が挿入されている。
【0144】
本変形例の自転防止機構(88)において、ガイド穴(98)の壁面は、ピン部材(96)の外周面と接する。また、ガイド穴(98)の内径Dgは、ピン部材(96)の外径dpと旋回スクロール(50)の公転半径r2を2倍した値との和(dp+2×r2)と等しくなっている(Dg=dp+2×r2)。そして、スクロール圧縮機(171)の運転中に旋回スクロール(50)が移動しても、ガイド穴(98)の壁面がピン部材(96)の外周面と摺接し続け、その結果、旋回スクロール(50)の自転が規制される。
【0145】
圧縮機構(20)に設けられた継手ユニット(90)の一つは、冷却用流体回路(180)の一部を構成している。図10に示す圧縮機構(20)では、同図の右側に設けられた継手ユニット(90a)が、冷却用流体回路(180)の一部を構成している。
【0146】
図11に示すように、冷却用流体回路(180)を構成する継手ユニット(90a)において、ピン部材(96a)は、両端が開口した円管状に形成される。このピン部材(96a)の内部空間は、旋回スクロール(50)に形成された導入通路(63)に連通している。また、この継手ユニット(90a)では、突出部(97a)に形成されたガイド穴(98a)の底面に、接続用通路(83)が開口している。
【0147】
この継手ユニット(90a)において、突出部(97a)には、シールリング(99)が設けられている。具体的に、この突出部(97a)の突端面には、その内周縁に沿った円周状の溝が形成されており、この溝にシールリング(99)が嵌め込まれている。このシールリング(99)は、旋回スクロール(50)の旋回側背面部材(54)の背面と摺接し、旋回側背面部材(54)と突出部(97a)の隙間をシールする。
【0148】
この継手ユニット(90a)において、ガイド穴(98a)は、ピン部材(96a)を介して旋回スクロール(50)の導入通路(63)に連通すると共に、その底面に開口する接続用通路(83)に連通している。また、ガイド穴(98a)は、突出部(97a)に設けられたシールリング(99)によって外部からシールされている。そして、冷却用流体回路(180)の接続用通路(83)を流れる冷凍機油は、ガイド穴(98a)及びピン部材(96a)を通って旋回スクロール(50)の旋回側通路(60)へ向かって流れてゆく。
【0149】
−第4変形例−
上述した各実施形態のスクロール圧縮機(171)は、圧縮機構(20)から吐出されたガス冷媒によってケーシング(11)の内部空間が満たされる高圧ドーム型に構成されているが、これら各実施形態のスクロール圧縮機(171)は、圧縮機構(20)へ吸入されるガス冷媒によってケーシング(11)の内部空間が満たされる低圧ドーム型に構成されていてもよい。ここでは、本変形例を上記実施形態1のスクロール圧縮機(171)に適用したものについて、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0150】
図12に示すように、本変形例の圧縮機構(20)には、カバー部材(28)が設けられている。このカバー部材(28)は、固定スクロール(30)の固定側背面部材(35)の背面(図12における上面)に、逆止弁(25)を覆うように設けられている。この圧縮機構(20)では、カバー部材(28)と固定側背面部材(35)とによって、吐出ポート(22)に連通する閉空間が形成されている。本変形例の吐出管(13)は、その一端がカバー部材(28)に取り付けられており、カバー部材(28)の内側に形成されて吐出ポート(22)と連通する空間に接続している。この吐出管(13)は、ケーシング(11)を貫通してケーシング(11)の外部へ延びている。
【0151】
また、本変形例の圧縮機構(20)では、吸入ポート(21)がハウジング部材(70)に形成されている。この吸入ポート(21)は、ハウジング本体部(71)をその背面(図12における下面)からその前面(同図における上面)へ向かって貫通している。そして、吸入ポート(21)は、ケーシング(11)の内部空間における圧縮機構(20)と電動機(110)の間の部分を、ハウジング部材(70)と固定スクロール(30)によって囲まれた空間に連通させている。本変形例の吸入管(12)は、ケーシング(11)を貫通しており、その一端がケーシング(11)の内部空間における圧縮機構(20)と電動機(110)の間の部分に開口している。
【0152】
本変形例のスクロール圧縮機(171)において、吸入管(12)を通ってケーシング(11)の内部空間へ流入した低圧のガス冷媒は、吸入ポート(21)を通って圧縮室(23)へ吸入されて圧縮される。圧縮室(23)内で圧縮されたガス冷媒は、吐出ポート(22)を通ってカバー部材(28)の内側の空間へ流入し、その後に吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ流出してゆく。
【0153】
−第5変形例−
上述した各実施形態のスクロール圧縮機(171)では、油ポンプ(127,128,128a,128b)としてトロコイドポンプを用いているが、油ポンプ(127,128,128a,128b)として使用できるポンプはこれに限定されるものではなく、例えば歯車ポンプを油ポンプ(127,128,128a,128b)として用いてもよい。
【0154】
−第6変形例−
上述した各実施形態では、空気調和装置(150)の冷媒回路(160)にスクロール圧縮機(171)を設けているが、スクロール圧縮機(171)の用途はこれに限定されるものではない。上述したスクロール圧縮機(171)は、例えば冷蔵庫内を冷却する冷凍装置の冷媒回路(160)に設けられていてもよいし、冷媒によって水を加熱する給湯機の冷媒回路(160)に設けられていてもよい。また、上述したスクロール圧縮機(171)は、冷媒を圧縮するためだけでなく、例えば空気を圧縮するために用いられてもよい。
【0155】
−第7変形例−
上述した各実施形態のスクロール圧縮機(171)では、冷却用流体として冷凍機油を用いているが、冷却用流体として冷凍機油以外の流体を用いてもよい。例えば、冷媒回路(160)内の冷媒や冷却水などを、冷却用流体として用いてもよい。
【0156】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0157】
以上説明したように、本発明は、固定スクロールと旋回スクロールを流体によって冷却するスクロール圧縮機と、このスクロール圧縮機を備えた空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0158】
11 ケーシング
13 吐出管
20 圧縮機構
30 固定スクロール
40 固定側通路
50 旋回スクロール
53 旋回側ラップ
56 旋回側鏡板部
60 旋回側通路
70 ハウジング部材
77 環状溝(窪み部)
80 内側シールリング(シール部材)
81 外側シールリング(シール部材)
83 接続用通路
128a 第1冷却用ポンプ(第1搬送機構)
128b 第2冷却用ポンプ(第2搬送機構)
171 スクロール圧縮機
180 冷却用流体回路
181 上流側冷却器
181a 第1上流側冷却器
181b 第2上流側冷却器
184 第1流量調節弁
185 第2流量調節弁
186 流量制御機構
190 主導入通路
191 第1分岐通路
192 第2分岐通路
193 第1供給通路
194 第2供給通路
197 下流側冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)とが設けられた圧縮機構(20)を備え、被圧縮ガスを上記圧縮機構(20)へ吸入して圧縮するスクロール圧縮機であって、
冷却用流体が流れる主導入通路(190)と、該主導入通路(190)の下流端から二手に分岐する第1と第2の分岐通路(191,192)と、上記固定スクロール(30)に形成されて該第1分岐通路(191)を流出した冷却用流体が流れる固定側通路(40)と、上記旋回スクロール(50)に形成されて上記第2分岐通路(192)を流出した冷却用流体が流れる旋回側通路(60)と、上記第1分岐通路(191)及び第2分岐通路(192)を流れる冷却用流体の流量を制御するための流量制御機構(186)とを有する冷却用流体回路(180)を備えている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記流量制御機構(186)は、上記第1分岐通路(191)に設けられる第1流量調節弁(184)と、上記第2分岐通路(192)に設けられる第2流量調節弁(185)とを備えている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
請求項2において、
上記圧縮機構(20)が収容される中空容器状に形成されて該圧縮機構(20)の潤滑油が溜まり込むケーシング(11)を備え、
上記主導入通路(190)には、上記ケーシング(11)内に溜まった潤滑油が導入されると共に該潤滑油を冷却する上流側冷却器(181)が接続される
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
固定スクロール(30)と旋回スクロール(50)とが設けられた圧縮機構(20)を備え、被圧縮ガスを上記圧縮機構(20)へ吸入して圧縮するスクロール圧縮機であって、
冷却用流体を搬送するための第1搬送機構(128a)を含む第1供給通路(193)と、冷却用流体を搬送するための第2搬送機構(128b)を含む第2供給通路(194)と、上記固定スクロール(30)に形成されて該第1供給通路(193)を流出した冷却用流体が流れる固定側通路(40)と、上記旋回スクロール(50)に形成されて上記第2供給通路(194)を流出した冷却用流体が流れる旋回側通路(60)とを有する冷却用流体回路(180)を備えている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項4において、
上記圧縮機構(20)が収容される中空容器状に形成されて該圧縮機構(20)の潤滑油が溜まり込むケーシング(11)と、
上記ケーシング(11)内に収容されて上記旋回スクロール(50)を駆動する駆動軸(100)とを備え、
上記第1搬送機構(128a)及び第2搬送機構(128b)は、上記駆動軸(100)に回転駆動されて上記ケーシング(11)内に溜まった潤滑油を搬送する容積型ポンプでそれぞれ構成され、
上記第1供給通路(193)には、上記第1搬送機構(128a)で搬送された潤滑油を冷却する第1上流側冷却器(181a)が接続され、
上記第2供給通路(194)には、上記第2搬送機構(128b)で搬送された潤滑油を冷却する第2上流側冷却器(181b)が接続されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項3又は5において、
上記冷却用流体回路(180)に接続されて上記固定側通路(40)及び上記旋回側通路(60)を通過した冷却用流体を冷却する下流側冷却器(197)を備え、
上記冷却用流体回路(180)は、上記下流側冷却器(197)によって冷却された冷却用流体を上記圧縮機構(20)へ吸入される被圧縮ガスへ供給する
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項7】
請求項6において、
上記圧縮機構(20)は、圧縮した被圧縮ガスを上記ケーシング(11)の内部空間へ吐出する一方、
上記ケーシング(11)には、上記圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスを外部へ導出するための吐出管(13)が設けられており、
上記ケーシング(11)の内部空間では、上記圧縮機構(20)から吐出された被圧縮ガスが存在する部分に潤滑油が貯留されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記旋回スクロール(50)には、平板状に形成された旋回側鏡板部(56)と、該旋回側鏡板部(56)の前面に立設する渦巻き壁状の旋回側ラップ(53)とが設けられ、
上記圧縮機構(20)には、上記旋回側鏡板部(56)の背面と摺接するハウジング部材(70)が設けられ、
上記旋回側鏡板部(56)の背面には、上記旋回側通路(60)の端部が開口しており、
上記ハウジング部材(70)のうち上記旋回側鏡板部(56)の背面と摺接する部分には、上記旋回側鏡板部(56)の背面に開口する上記旋回側通路(60)の端部と常に連通する窪み部(77)と、該窪み部(77)の周囲を囲むように設けられて上記旋回側鏡板部(56)と上記ハウジング部材(70)の隙間をシールするシール部材(80,81)とが設けられ、
上記ハウジング部材(70)には、冷却用流体が導入されると共に下流端が上記窪み部(77)に接続する接続用通路(83)が形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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