説明

スクロール式圧縮機

【目的】本発明は、必要最低限の僅かな加工で、コストに悪影響を与えずに、圧縮空間に対する充分で適正な給油量を確保するとともに、圧縮空間からのガスの漏れを防止して信頼性の向上を図ったスクロール式圧縮機を提供する。
【構成】旋回スクロール翼9の鏡板部13背面側に補助給油凹部30a,30bを設け、旋回スクロール翼の旋回運動にともないスラストリング10の内周側に露出して、密閉ケース1内底部に形成される油溜り部19の潤滑油を収容する。さらに、旋回スクロール翼が旋回運動すると、補助給油凹部はスラストリングの摺接端面によって閉成されてから、この外周側に露出して補助給油凹部に収容していた潤滑油を周囲に放散し、固定スクロール翼8と旋回スクロール翼との周端部から、これらの圧縮空間である圧縮室Sに間欠的に給油する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば空気調和機の冷凍サイクルを構成する圧縮機として用いられるスクロール式圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、空気調和機の冷凍サイクルを構成する圧縮機においては、通常のロータリ式圧縮機と比較して、運動騒音が極めて低く、かつ吸込弁や吐出弁など不要で部品点数が少なくてすみ、しかも圧縮性能のよいスクロール式圧縮機が多用される傾向にある。
【0003】このスクロール式圧縮機は、たとえば図6に示すように構成される。すなわち、図中1は密閉ケースであり、この密閉ケース1内に支持フレーム2が設けられ、回転軸3を回転自在に枢支している。上記回転軸3の下部には後述するスクロール圧縮機構部4が設けられ、上部にはステータ5とロータ6とからなる電動機部7が設けられる。
【0004】上記スクロール圧縮機構部4は、上記支持フレーム2に取付け固定される固定スクロール翼8および上記回転軸3下端の偏心部3aに枢支される旋回スクロール翼9と、この旋回スクロール翼9のスラスト方向の荷重を受けるスラストリング10と、オルダム機構11から構成される。
【0005】上記固定スクロール翼8および旋回スクロール翼9はともに、鏡板部12,13と、この鏡板部12,13に一体的に設けられる渦巻状の翼部14,15とから構成される。これら翼部14,15相互は噛合されるとともに、上記鏡板部12,13相互とで囲繞される圧縮空間である圧縮室Sが形成される。
【0006】上記密閉ケース1側部には、図示しない蒸発器と連通する吸込管16が貫通していて、この開口端は上記固定スクロール翼8の側部を貫通し、上記圧縮室Sの外周側に対向している。
【0007】上記旋回スクロ−ル翼9の中央部から上記回転軸3の軸心に沿って高圧吐出路17が設けられる。この高圧吐出路17は、回転軸3の上端面に開口していて、密閉ケース1内部を介して、密閉ケース1上端部に接続される吐出管18と連通する。この吐出管18は、図示しない凝縮器と連通する。
【0008】一方、上記密閉ケース1の内底部には潤滑油を集溜する油溜り部19が形成されていて、上記固定スクロール翼8および回転軸3に設けられる給油路20に連通する。この給油路20は、上記スラストリング10やオルダム機構11の旋回スクロール翼鏡板部13との摺接面を介して、旋回スクロール翼鏡板部13の外周端から固定スクロール翼鏡板部12の摺接面に連通する。
【0009】上記給油路20の中途部である回転軸偏心部3aには給油機構21が設けられていて、回転軸3の回転にともなって油溜り部19の潤滑油を強制的に給油路20に沿って導くようになっている。
【0010】しかして、このようにして構成されるスクロール式圧縮機において、電動機部7に通電してスクロール圧縮機構部4を駆動し、吸込管16から被圧縮ガスである低圧の冷媒ガスを導入し、固定スクロール翼8と旋回スクロール翼9との圧縮空間である圧縮室Sの外周側に吸込まれる。
【0011】上記圧縮室Sに吸込まれた冷媒ガスは、旋回スクロール翼9の旋回運動にともなって圧縮される。所定圧まで上昇したところで、高圧吐出路17に吐出され、さらに回転軸3の上端開口から密閉ケース1内に放出されて充満する。この高圧の冷媒ガスは、吐出管18を介して外部の凝縮器に導かれる。
【0012】上記給油機構21は、回転軸3の回転にともなって油溜り部19の潤滑油を強制的に給油路20に導入し、さらに圧縮機構部4の各摺動部分に給油する。上記電動機部7は、負荷に応じた最適な運転周波数に制御され、最適な条件での空気調和をなす。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記給油機構21が油溜り部19の潤滑油を、固定スクロール翼8と旋回スクロール翼9との圧縮空間である上記圧縮室Sまで導くには、スラストリング10と旋回スクロール翼鏡板部13との摺接面の潤滑油を、旋回スクロール翼9の旋回運動にともなう遠心力で周囲に放散させる。
【0014】さらに、オルダム機構11と旋回スクロール翼鏡板部13との摺接面を介して、この鏡板部13周端に導き、固定スクロール鏡板部12との摺接面を介して上記圧縮室Sに給油することになる。したがって、上記構成では給油機構21の圧縮室S側への給油効率が悪く、油不足による焼き付け事故の発生の恐れがある。そこで、このような不具合を阻止するための手段が採用されている。
【0015】たとえば、上記固定スクロール翼8の鏡板部12に縦孔を貫通して設け、油溜り部19の潤滑油と圧縮室Sを直接連通する。潤滑油は油溜り部19から直接圧縮室Sに導かれるから、圧縮室Sの各摺接面へ充分な給油量を確保できる。
【0016】ここで問題になるのが、上記縦孔の直径である。すなわち、この直径が僅かでも大き過ぎる(たとえば、φ1〜2mm程度であっても)と、圧縮室Sで圧縮途中の冷媒ガスが容易に油溜り部19に漏れてしまうとともに、過剰な量の潤滑油が給油されてしまい、圧縮効率の低下をきたす。
【0017】圧縮途中のガスの漏れ防止と、適正な給油量の保持のために、極めて小さな直径(φ0.3mm程度)の縦孔とすれば効果があるが、こんどは潤滑油に含まれる塵埃等が詰まり易くなり、縦孔を設けた意味がなくなる。
【0018】なお、縦孔自体ある程度大きな直径として、ここにキャピラリチューブを接続することにより、ガス漏れ防止と給油量規制を図ることが可能であるが、その反面、部品数が多くなってコストに悪影響を与える。
【0019】本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、必要最低限の僅かな加工で、新たな部品は不要とし、コストに悪影響を与えずに、圧縮空間に対する適正な給油量を確保し、しかも給油にともなう圧縮空間からのガス漏れを確実に防止して信頼性の向上を図ったスクロール式圧縮機を提供しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段および作用】上記目的を満足するため第1の発明は、密閉ケースの内底部に潤滑油の油溜り部を形成し、この密閉ケース内に、鏡板部およびこの鏡板部に一体に突設される渦巻状の翼部とからなる固定スクロール翼を固定し、この固定スクロール翼の翼部と噛合する渦巻状の翼部およびこの翼部と一体に設けられこれらで圧縮空間を形成する鏡板部からなる旋回スクロール翼を旋回運動自在に備え、この旋回スクロール翼の鏡板部背面側にスラストリングを摺接自在に設けて旋回スクロール翼のスラスト方向の荷重を受け、上記旋回スクロール翼の鏡板部背面側に旋回スクロール翼の旋回運動にともないスラストリングの内周側に露出し、スラストリングの摺接端面によって閉成され、スラストリングの外周側に露出する補助給油凹部を設けたことを特徴とするスクロール式圧縮機である。
【0021】したがって、上記旋回スクロール翼の旋回運動にともない、上記補助給油凹部がスラストリングの内周側に露出して上記油溜り部の潤滑油を収容し、さらにスラストリングの摺接端面によって閉成されてからスラストリングの外周側に露出して収容していた潤滑油を周囲に放散し、固定スクロール翼と旋回スクロール翼との周端部を介して圧縮空間に給油する。この圧縮空間からガス漏れが生じることがなく、しかも過剰にならない程度で、充分な量の給油をなす。
【0022】また、第2の発明は、密閉ケースの内底部に潤滑油の油溜り部を形成し、この密閉ケース内に、鏡板部およびこの鏡板部に一体に突設される渦巻状の翼部とからなる固定スクロール翼を固定し、この固定スクロール翼の翼部と噛合する渦巻状の翼部およびこの翼部と一体に設けられこれらで圧縮空間を形成する鏡板部からなる旋回スクロール翼を旋回運動自在に備え、上記旋回スクロール翼の鏡板部を貫通する補助給油孔を設けて圧縮空間に連通し、上記補助給油孔は旋回スクロール翼の旋回運動にともないスラストリングの摺接端面によって開閉されることを特徴とするスクロール式圧縮機である。
【0023】したがって、旋回スクロール翼の旋回運動にともない、上記補助給油孔がスラストリングの摺接端面によって開閉され、この開放時に上記油溜り部の潤滑油を直接上記固定スクロール翼と旋回スクロール翼との圧縮空間に注入案内する。潤滑油は、圧縮空間に間欠的に注入され、この圧縮空間からガス漏れが生じることがなく、しかも過剰にならない程度で、充分な量の給油量をなす。
【0024】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面にもとづいて説明するに、後述する構造を除いて、スクロール式圧縮機の主要構造は、先に図6において説明したものをそのまま適用できるので、新たな説明は省略する。
【0025】図1に示すように、上記旋回スクロール翼9の鏡板部13背面側には、スラストリング10が摺接することは変わりがない。このスラストリング10の内周側と回転軸偏心部3a周面および旋回スクロール翼ボス部13a周面との空間部に、給油機構21の作動にともなって導かれる高圧の潤滑油を一旦溜める。高圧の潤滑油は、旋回スクロール翼9のスラスト方向の荷重を受ける。換言すれば、上記スラストリング10は、その内径寸法を設定することによって、旋回スクロール翼9にかかる高圧の面積を規制する。
【0026】図1および図2に示すように、旋回スクロール翼9の鏡板部13背面側の所定位置には、新たに、複数の補助給油凹部30a,30bが設けられる。上記補助給油凹部30a,30bは、ここでは上記オルダム機構11が掛合するオルダム溝11a,11bの近傍位置に、一対設けられる。
【0027】上記補助給油凹部30a,30bをさらに説明すれば、旋回スクロール翼9が旋回運動をしたとき、この旋回位置に応じて、スラストリング10の内周側に露出したり、この摺接端面で閉成されたり、あるいはスラストリング10の外周側に露出する位置および直径が設定される。
【0028】これら補助給油凹部30a,30bがスラストリング10の内,外周側に露出するのは、必ずしも全面に亘たる必要がなく、求められる給油量に応じて少なくともその一部が露出すればよい。
【0029】ただし、スラストリング10の摺接端面で閉成される際は、全面が閉成されなければならない。すなわち、補助給油凹部30a,30bがスラストリング10の内周側と外周側とに同時に露出する状態は避ける。
【0030】また、上記補助給油凹部30a,30bは、たとえばドリル加工のみで設けることができ、極めて容易な作業ですむ。その直径寸法、深さ、および数などは、求める給油効率から最適値を設定できる。
【0031】しかして、回転軸3の回転にともなって圧縮作用がなされるとともに、上記給油機構21が作動して油溜り部19の潤滑油を強制的に給油路20に導き、さらに各摺動部に給油する。
【0032】上記スクロール圧縮機構部4の構造上、給油路20において、潤滑油はスラストリング10の内周面と回転軸偏心部3a周面および旋回スクロール翼ボス部13a周面との空間部に一旦溜まる。
【0033】ここに溜まった潤滑油は、給油機構21の作動圧を受けて高圧化しているので、旋回スクロール翼鏡板部13背面とスラストリング10摺接端面との間に容易に浸透し、互いの円滑な摺動を保証する。
【0034】上記摺接面から出た潤滑油は、鏡板部13の外周側に拡散し、その一部はオルダム機構11を介して、あるいは直接、鏡板部13の外周端を介して固定スクロール翼鏡板部12との摺接面に導かれる。
【0035】また、上記旋回スクロール翼9の旋回運動にともなって、この鏡板部13背面側に設けられる補助給油凹部30a,30bがスラストリング10の内周側から露出した際に、この内周側に溜まっている潤滑油が導かれる。
【0036】さらに旋回スクロール翼9が旋回運動をなすと、補助給油凹部30a,30bは潤滑油を収容したままスラストリング10の摺接端面によって閉成され、ついで、この外周側から露出する。このとき、収容されていた潤滑油が遠心力を受けて周囲に放散する。
【0037】具体的には、図3に示すような変化をなす。ここで、図における上部側の補助給油凹部30aを、第1の凹部と呼び、下部側の補助給油凹部30bを、第2の凹部と呼ぶ。
【0038】はじめ、図における左上の状態では、第1の凹部30aの少なくとも一部がスラストリング10の内周側に露出しているところから、ここに溜まっている高圧の潤滑油が導入される。また、第2の凹部30bの少なくとも一部はスラストリング10の外周側に露出しているところから、ここに収容していた潤滑油を周囲に放散する。
【0039】以下、図の大矢印に沿って説明すると、旋回スクロール翼9がさらに90°旋回すると、第1の凹部30aは潤滑油を収容した状態でスラストリング10の摺接端面で閉成され、第2の凹部30bは空のまま同摺接端面で閉成される。
【0040】さらに旋回スクロール翼9が90°旋回すると、第1の凹部30aの少なくとも一部はスラストリング10の外周側に露出し、ここに収容していた潤滑油を周囲に放散する。第2の凹部30bの少なくとも一部はスラストリング10の内周側に露出して潤滑油を導入する。
【0041】さらに旋回スクロール翼9が90°旋回すると、第1の凹部30aは空のままスラストリング10の摺接端面で閉成され、第2の凹部30bは潤滑油を収容した状態で同摺接端面で閉成される。ここから旋回スクロール翼9が90°旋回すると、最初に説明した状態に戻り、以下、上述の作用を繰り返す。
【0042】結局、第1の凹部30aと第2の凹部30bとが交互に潤滑油を収容し、かつそれぞれ間欠的に周囲に放散する。これら凹部30a,30bは、上記旋回スクロール翼9が360°旋回運動をする間に、上記作用をそれぞれ1回づつ行うこととなる。
【0043】そして、再び図1に示すように、放散された潤滑油の一部はオルダム機構11を介して、あるいは直接、旋回スクロール翼鏡板部13の周端部に導かれ、固定スクロール翼鏡板部12との摺接面から、圧縮室Sの摺接部へと導かれる。
【0044】上記補助給油凹部30a,30bの位置、直径寸法、数等を適宜設定することにより、圧縮室Sには過剰にならない程度の、最適な量の潤滑油を給油でき、良好な潤滑性を保証する。しかも、圧縮室Sから圧縮途中のガスが漏れることもなく、圧縮効率を損なわない。
【0045】図4に示すような構造であってもよい。これは、上記旋回スクロール翼9の鏡板部13を貫通して上記圧縮室Sに連通する複数の補助給油孔40a,40bを設けてなる。これら補助給油孔40a,40bは、オルダム溝11a,11bの近傍位置に、一対設けられる。
【0046】そして、旋回スクロール翼9が旋回運動をしたとき、この位置に応じて、スラストリング10の内周側に露出したり、この摺接端面で閉成される位置を設定する。
【0047】上記補助給油孔40a,40bは、たとえばドリル加工で設けることができ、極めて容易な作業ですむ。少なくとも潤滑油に含まれる塵埃等で詰まることのない程度の直径寸法および数など、求める給油効率から最適値を設定できる。
【0048】しかして、スラストリング10内周面と回転軸偏心部3a周面および旋回スクロール翼ボス部13a周面との空間部に溜まった潤滑油は、旋回スクロール翼鏡板部13とスラストリング10摺接端面との間に容易に浸透する。および、スラストリング10の内周側に上記補助給油孔40a,40bが露出した際に、潤滑油が導かれる。
【0049】上記補助給油孔40a,40bを導かれた潤滑油は、上記固定スクロール翼8と旋回スクロール翼9との圧縮空間である圧縮室Sに直接注入案内され、この摺接部を潤滑する。注入時において、圧縮室Sからガス漏れが生じることがなく、しかも過剰にならない程度で、充分な量を確保できる。
【0050】具体的には、図5に示すような変化をなす。ここでは、図における上部側の補助給油孔40aを、第1の孔部と呼び、下部側の補助給油孔40bを、第2の孔部と呼ぶ。
【0051】はじめ、図における左上の状態では、第1の孔部40aはスラストリング10の内周側に露出しているところから、ここに溜まっている高圧の潤滑油が導入され、上記圧縮室Sに注入案内される。第2の孔部40bはスラストリング10の摺接端面によって閉成されているところから、潤滑油の導通がない。
【0052】以下、図の大矢印に沿って説明すると、旋回スクロール翼9が90°旋回した次の状態で、第1の孔部40aはスラストリング10の摺接端面で閉成され、圧縮室Sへの潤滑油注入は既に終了している。第2の孔部40bは引き続いて同摺接端面で閉成される。
【0053】さらに旋回スクロール翼9が90°旋回すると、第1の孔部40aは引き続いてスラストリング10の摺接端面で閉成され、第2の孔部40bはスラストリング10の内周側に露出して、圧縮室Sに潤滑油が注入案内される。
【0054】さらに旋回スクロール翼9が90°旋回すると、第1の孔部40aおよび第2の孔部40bは、ともにスラストリング10の摺接端面で閉成され、第2の孔部40bからの潤滑油注入は既に終了している。ここから旋回スクロール翼が90°旋回すると、最初に説明した状態に戻り、以下、上述の作用を繰り返す。
【0055】結局、第1の孔部40aと第2の孔部40bとが交互に潤滑油を圧縮室Sに注入案内する。これら孔部40a,40bは、上記旋回スクロール翼9が360°旋回運動をする間に、上記作用をそれぞれ1回づつなす。
【0056】そして、再び図4に示すように、潤滑油が各補助給油孔40a,40bから間欠的に圧縮室Sに注入案内されることにより、この摺接部に対する充分な給油量を確保する。そして、補助給油孔40a,40bが開放するのは極く瞬間的であり、しかも潤滑油に含まれる塵埃等が詰まらない程度の直径寸法の小孔とするところから、圧縮室Sからのガス漏れがない。
【0057】なお、上記圧縮機は必ずしも冷凍サイクルを構成する機器に備えられるものに限定されず、他の被圧縮ガスを圧縮する場合にも用いることができ、かつ本発明の要旨を越えない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、旋回スクロール翼の鏡板部背面側に補助給油凹部を設け、旋回スクロール翼の旋回運動にともないスラストリングの内周側に露出させて潤滑油を収容し、スラストリングの摺接端面によって閉成し、スラストリングの外周側に露出させて周端側に放散するようにしたから、もしくは、旋回スクロール翼の鏡板部を貫通して圧縮空間に連通する補助給油孔を設け、旋回スクロール翼の旋回運動にともないスラストリングの摺接端面によって開閉し、開放時に潤滑油を圧縮空間に注入案内するようにしたから、必要最低限の僅かな加工で、新たな部品は不要としてコストに悪影響を与えずに、充分で適正な量の潤滑油を各スクロール翼の圧縮空間に給油でき、この摺接部における油切れ事故等を確実に阻止できる。しかも、給油にともなう圧縮空間からのガスの漏れを防止して、信頼性の向上を図れるなどの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す、スクロール式圧縮機要部の縦断面図。
【図2】(A)は、旋回スクロール翼の平面図。
(B)は、旋回スクロール翼の縦断面図。
【図3】補助給油凹部の作用を順に説明する図。
【図4】本発明の他の実施例を示す、スクロール式圧縮機要部の縦断面図。
【図5】補助給油孔の作用を順に説明する図。
【図6】従来例の、スクロール式圧縮機の縦断面図。
【符号の説明】
19…油溜り部、1…密閉ケース、12…鏡板部、14…翼部、8…固定スクロール翼、15…翼部、13…鏡板部、9…旋回スクロール翼、S…圧縮空間(圧縮室)、10…スラストリング、30a,30b…補助給油凹部、40a,40b…補助給油孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】内底部に潤滑油の油溜り部が形成された密閉ケースと、この密閉ケース内に固定され鏡板部およびこの鏡板部に一体に突設される渦巻状の翼部とからなる固定スクロール翼と、この固定スクロール翼の翼部と噛合する渦巻状の翼部およびこの翼部と一体に設けられこれらで圧縮空間を形成する鏡板部からなり旋回運動自在な旋回スクロール翼と、この旋回スクロール翼の鏡板部背面側に摺接自在に設けられ旋回スクロール翼のスラスト方向の荷重を受けるスラストリングとを具備したスクロール式圧縮機において、上記旋回スクロール翼の鏡板部背面側に設けられ旋回スクロール翼の旋回運動にともない上記スラストリングの内周側に露出して上記油溜り部の潤滑油を収容し、さらにスラストリングの摺接端面によって閉成されてからスラストリングの外周側に露出され収容していた潤滑油を周囲に放散し、上記固定スクロール翼と旋回スクロール翼との周端部を介してこれらの圧縮空間に給油する補助給油凹部を具備したことを特徴とするスクロール式圧縮機。
【請求項2】内底部に潤滑油の油溜り部が形成された密閉ケースと、この密閉ケース内に固定され鏡板部およびこの鏡板部に一体に突設される渦巻状の翼部とからなる固定スクロール翼と、この固定スクロール翼の翼部と噛合する渦巻状の翼部およびこの翼部と一体に設けられこれらで圧縮空間を形成する鏡板部からなり旋回運動自在な旋回スクロール翼と、この旋回スクロール翼の鏡板部背面側に摺接自在に設けられ旋回スクロール翼のスラスト方向の荷重を受けるスラストリングとを具備したスクロール式圧縮機において、上記旋回スクロール翼の鏡板部を貫通して設けられ旋回スクロール翼の旋回運動にともない上記スラストリングの摺接端面によって開閉され、その開放時に上記油溜り部の潤滑油を直接上記固定スクロール翼と旋回スクロール翼との圧縮空間に注入案内する補助給油孔を具備したことを特徴とするスクロール式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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