説明

スケールの除去方法

【課題】硬質材料表面に付着するスケールを材料表面の腐食・劣化を発生させることなく、効率的に除去する方法を提供する。
【解決手段】難除去性無機系スケール付着硬質材料表面に対し、以下に示す三つの処理ステップを実施する。第1ステップ:スケールが付着している硬質材料表面に対する酸性洗浄剤による洗浄処理の実施。なお、酸性洗浄剤としてメタンスルホン酸とヒドロキシカルボン酸との混合液の使用が特に好ましい。第2ステップ:第1ステップ処理面に対する乾燥処理の実施。第3ステップ:第2ステップ処理面に対するアルカリ性洗浄剤による洗浄処理の実施。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材料表面のスケールの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水道水を使用した装置内部の硬質材料表面には、水道水の硬度成分に由来する炭酸カルシウム等のスケール(石灰スケール)が析出し、蒸気発生のための装置熱伝達性の低下、あるいは水または蒸気配管系詰まり発生原因となることより、それを除去するために定期的に酸性洗浄剤による除去処理が実施されている。また、水道水以外(例えば純水や地下水、海水、アルコール)を使用する場合であっても、添加物や溶質に由来する汚れ、カルシウム等を含むスケールが付着することがある。
【0003】
これらのスケールは、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、あるいはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、スルファミン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、蓚酸、フマル酸の有機酸を主成分とする酸性洗浄剤による洗浄処理にて除去出来ることは、従来から公知である。
【0004】
また、特許文献1(特表平9−508930)には、その改良された酸性洗浄剤として、マレイン酸に非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性等の界面活性剤を混合した組成物が有効であるとの知見も公示されており、酸成分としてマレイン酸にスルファミン酸、メタンスルホン酸、クエン酸、リン酸、塩酸またはそれらの混合物を含む組成物も使用可能であることも言及されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2011−32396)には、ステンレス製茹で麺装置に付着したでんぷん、小麦粉たんぱく質やカルシウム等を含むスケール汚れ、あるいはリン酸塩を含む特別なスケール汚れ除去剤として、メタンスルホン酸と硝酸とリン酸を含み、硝酸含有割合が1〜20重量%である酸性洗浄剤が有効であるとの開示がなされている。また本公開特許において、当該付着スケールを効率的に除去するには、当該スケール付着面を上記酸性洗浄剤を用いて洗浄した後に、アルカリ性洗浄剤にて洗浄する手法が好ましいとの言及もなされている。
【0006】
さらに、特許文献3(特開2008−266562)には、飲料水配管中の固形沈積物(鉄閉塞)を除去する目的に1〜14重量%のスルファミン酸、5〜10重量%のメタンスルホン酸、0.075〜0.15重量%のホスホノブタン−トリカルボン酸、0.3重量%の2−プロパノールと100重量%とするに必要な軟水を含む洗浄剤が有効であると公示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平9−508930
【特許文献2】特開2011−32396
【特許文献3】特開2008−266562
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硬質材料表面に付着するスケールの効率的除去方法に関するものである。
水道水を装置に使用した場合、水道水に含まれる硬度成分が炭酸カルシウムあるいは炭酸マグネシウムを主体とした炭酸塩系スケールとして装置の硬質材料(一般的には、ステンレス板材、クロムメッキ青銅製ヒーター管)に沈着することは、よく散見される現象である。
【0009】
これらの炭酸塩系の無機スケールは、一般的に公知の酸性洗浄剤による洗浄処理によって容易に除去されるものの、実際の使用態様では、使用水特性、加熱条件、使用配管種類の影響、使用過程における添加薬剤条件の影響によって、形成されるスケールは、炭酸塩に加えて水不溶性のケイ酸塩化合物(以下、シリカという)、鉄錆、リン酸塩化合物が混在したものとなる場合も多く、これらの混合無機スケールは、従来から公知の酸性洗浄剤による洗浄処理では容易に除去され難い、いわゆる、難除去性無機スケール化したものの多い状況である。
【0010】
また、水道水以外の液体を装置に使用する場合であっても、その溶質、例えばデンプンやタンパク質、金属イオン、カルシウム等によってスケールが付着することがある。
【0011】
本発明は、処理装置の再使用に不都合な硬質材料表面の部材劣化を生起させず、上記のように難除去性である無機スケールであっても高レベルかつ迅速に除去し得る合理的な除去する方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、以下に示す三つの処理ステップをもって課題が達成される。
第1ステップ:スケールが付着している硬質材料表面に対する酸性洗浄剤による洗浄処理の実施。なお、酸性洗浄剤としてメタンスルホン酸とヒドロキシカルボン酸との混合液の使用が特に好ましい。
第2ステップ:第1ステップ処理面に対する乾燥処理の実施。
第3ステップ:第2ステップ処理面に対するアルカリ性洗浄剤による洗浄処理の実施。
【0013】
本願発明者は、第1ステップとしての酸性洗浄剤による洗浄処理と第3ステップとしてのアルカリ性洗浄剤による洗浄処理の中間に、第2ステップとして当該処理面に対する乾燥処理を加える手法が、効率的課題解決手段として極めて有用であることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0014】
第1ステップで使用される酸性洗浄剤は、一般的に公知の酸性洗浄剤も使用可能であるが、塩酸、硫酸、スルファミン酸等の強酸は、優れたスケール除去効果を発揮する半面、材料腐食を生起させる可能性が大きいことより汎用性に欠ける洗浄剤群であり、その使用は制限される一方、クエン酸有機酸を主体として洗浄剤群は、材料への腐食等の影響が少ないことより、汎用性に優れている。
【0015】
特に本発明の目的に対し優れた特性を発揮する洗浄剤としては、メタンスルホン酸と、グリコール酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、DL−リンゴ酸、グルコン酸等から選ばれた1種または2種以上のヒドロキシカルボン酸とを含む酸性洗浄剤であり、これらヒドロキシカルボン酸の中では、グリコール酸、酒石酸、クエン酸が、目的効果発現に関する速効性、部材劣化影響が少ないことより特に好適に使用出来る。
【0016】
また、上記混合系酸性洗浄剤は、必要に応じて一般的に使用される金属腐食防止剤、洗浄力を補強する為の界面活性剤、キレート剤を混合したものであってもよい。
【0017】
ヒドロキシカルボン酸とメタンスルホン酸との混合物の酸性洗浄剤としての使用は、除去すべきスケールに対する相乗的に高いレベルの除去効果が発揮されること、最終的にはその除去効果レベルの高さと被処理材料の腐食・劣化影響の最少化を両立することが可能となる。
【0018】
ヒドロキシカルボン酸とメタンスルホン酸との混合比率については、重量比で99:1〜1:99の範囲であり、特に70:30〜30:70の範囲が好ましい。
また、上記混合系酸性洗浄剤の発揮特性を最良化するための別の因子は、洗浄液pHを最適化することであり、実処理液の最適なpH範囲は0.3〜2.5、好ましくは0.8〜2.0の範囲である。0.3以下では部材劣化への影響が大きくなること、2.5以上においてはスケール除去効果が低下する傾向があり、好ましくない。
【0019】
上記実処理液のpHは、使用直前に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ剤等を使用して調整する方法も可能であるが、実処理液に稀釈する前の配合原液調製段階で前もってpHを調製しておく方法が、洗浄作業時の煩雑性を回避できることより好ましい。
上記混合系酸性洗浄剤の一般的適用方法は、原液を濃厚な溶液で調製し、実際の使用に際しては目的性能が適切に発揮される最適な濃度に水稀釈して供される場合が多い。
【0020】
第2ステップで実施する乾燥処理は、酸性洗浄剤による洗浄処理後の処理面にスケールが付着・残存している場合に実施する処理であり、付着スケールは、乾燥処理によって次の第3ステップのアルカリ性洗浄剤による洗浄時において容易に剥離し易くするために実施する重要な工程である。
この乾燥処理は、自然乾燥であってもよいし、送風乾燥(室温〜300℃)、加熱乾燥のいずれでもよい。
【0021】
この乾燥処理によって、付着スケールが剥離し易くなる効果とは、酸性洗浄剤による洗浄処理によってスケール内部に空隙部が発生し、スケール自体が乾燥によって収縮し、その収縮力がスケールの材料界面付着点に対するズレ力として作用する、即ち、スケールの材料界面に対する付着力の低下(浮きの発生)を狙って実施するものである。
【0022】
第3ステップで使用するアルカリ性洗浄剤は、アルカリ性を示す洗浄剤であれば使用することができ、特にその組成は限定されるものではない。
洗浄剤の例としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ソーダをベースとしたもの、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含み、更にケイ酸塩、非イオン界面活性剤、キレート剤を含むアルカリ性洗浄剤が好適に使用できる。
【0023】
本願発明を構成するもう一つ主眼点は、第1ステップとしての酸性洗浄剤による洗浄処理、第2ステップとしての乾燥処理、第3ステップとしてのアルカリ性洗浄剤による洗浄処理をこの順序にて組合せて適用することにあり、適用順序を違えると目的効果の発揮は不十分なものとなる。この適用順序が有効である理由は、現時点では必ずしも明確ではないが、酸性洗浄剤処理によるスケール構造のルーズ化、乾燥処理によるスケール構造の収縮、収縮力により付着スケールの材料界面に対する付着力の低減、その低減がアルカリ性洗浄剤処理による付着スケールの材料界面からの剥離効果の有効性を高めるといった付着異物除去に関する好ましい循環系が形成される為ではないかと推察される。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスケールの除去方法は、硬質材料表面に付着したスケールを高レベルかつ迅速に除去することができ、使用水特性や添加物、使用状況の影響によって難除去性となったスケールであっても同様に高レベルかつ迅速に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、酸性洗浄剤のpHとスケール除去度の関係を示す図である。
【図2】図2は、洗浄処理時間に対するスケール除去度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の除去方法について、各ステップごとに説明する。
第1ステップにて実施する酸性洗浄剤による洗浄処理は、スケールが付着している硬質材料表面に対し最適濃度の酸性洗浄剤を最適条件にて接液することで実施される。接液とは、硬質材料表面に対し洗浄剤液を接触した状態で保持することを言い、具体的方法としては、洗浄剤液中に被処理面を有する硬質材料を浸漬する方法、硬質材料表面を有する容器内に洗浄剤液を充填・保持する方法、あるいは硬質材料表面に洗浄剤を吹き付ける、あるいは塗布する等の手法によって実施される。一般的に好ましく実施される手法は、硬質材料表面を有する容器内に洗浄剤液を充填・保持する方法である。洗浄剤の最適濃度は、スケール付着量、接液する条件によって変動するが、一般的適用条件としては、薬剤濃度は有効成分として0.1〜10wt%、好ましくは0.5〜2wt%範囲、液温は10〜100℃、処理時間:10分〜24時間で適用される。また、迅速にスケール除去を達成するには、適用薬剤濃度を高めに設定し、高液温条件にて適用する方法が進められる。
【0027】
実質的な薬剤処理は、装置に対する供給液を薬剤液に置き換え、通常運転処理を実施し、処理終了後は薬剤液を排出し、すすぎ水を注入し、短時間の運転処理を行うことを数回繰り返すことによって、洗浄処理面に洗浄剤が残らないようすすぎ洗いを施すことによって実施される。
【0028】
また、別処理法としては、保温機能を有する薬液タンクを用意し、その中で調製した処理液を循環ポンプにて被処理面(槽内)と薬液タンク間で規定時間循環させる(薬液循環法)方法で処理することができる。
【0029】
第2ステップにて実施する乾燥処理は、自然乾燥あるいは送風による強制乾燥、加熱による強制乾燥のいずれの手法でも実施できる。ここで、本発明にいう乾燥とは、少なくとも被洗浄部を手で触っても液体が手に転移しない程度に液体を減少させることをいう。
【0030】
第3ステップにて実施するアルカリ性洗浄剤による洗浄処理は、基本的には酸性洗浄剤による処理法に準じた手法で適用される。
【実施例】
【0031】
以下に本発明をより具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1〜7及び比較例1〜14)
供試洗浄剤は酸性洗浄剤として、表1に示した配合組成物(A−1〜7)を使用した。
【0033】
【表1】

【0034】
アルカリ性洗浄剤としては、表2に示した配合組成物B−1を使用した。
【0035】
【表2】

【0036】
被洗浄物としては、水道水の長期使用によって下表3に示した構成元素比率のスケール付着が認められたタオルスチーマー(日板工業社製電気式タオル蒸し器)のステンレススチール製缶体内壁(被洗浄物1)より3cm×3cm片を多数切り出し、その中より近似のスケール付着量片を選定し、洗浄試験に供した。
【0037】
【表3】

【0038】
被洗浄物片(以下、試験片という)に対する洗浄処理は、規定洗浄液中に試験片を1時間静置浸漬処理する方法にて実施し、同一試験片に対し、酸性洗浄液あるいはアルカリ性洗浄液による一次洗浄処理を実施し、次いで乾燥処理、次いで酸性洗浄液あるいはアルカリ性洗浄液による二次洗浄処理を実施する方法を基本とした。
試験片数は、各洗浄処理毎に三個とし、洗浄液量は200ml、洗浄液温は60℃±1℃となるよう洗浄液容器を恒温槽内に保管した。
洗浄処理後の試験片は、200mlの新しい清水(水道水)中2分間の浸漬処理を3回繰り返すすすぎ処理を実施し、付着洗浄液を洗い流した。
【0039】
試験片乾燥処理は、D−1あるいはD−2のいずれかの方法にて実施した。D−1として気温約25℃、相対湿度約65%の室内空間中に10時間の自然放置する方法(風乾処理)。D−2として80℃熱風中に30分間放置する方法(強制乾燥処理)である。
【0040】
試験片上付着スケールの除去状態は、下記の手法にて評価した。
各洗浄処理後の試験片上スケール付着状態を肉眼にて観察し、その状態を1(付着スケール除去無し状態(洗浄前状態))〜5(付着スケール完全除去状態)間の数値割付を実施し、三試験片評価値の平均値をもってその洗浄処理条件でのスケール除去度とした。
【0041】
各種処理条件を組合せて実施した洗浄処理試験結果を表4に示した。
表4試験結果表から、実施例1〜7の手法(酸性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理、次いでアルカリ性洗浄剤による二次洗浄処理の実施)は、比較例1〜7の手法(アルカリ性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理、次いで酸性洗浄剤による二次洗浄処理の実施)および比較例8〜13の手法(酸性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理無し、次いでアルカリ性洗浄剤による二次洗浄処理の実施)より優れた付着異物除去効果を発揮することが確認された。
また、メタンスルホン酸とヒドロキシカルボン酸を配合した酸性洗浄剤を使用した実施例2〜5は、メタンスルホン酸単独(実施例1)、あるいはヒドロキシカルボン酸単独配合系酸性洗浄剤(実施例6〜7)より高い付着異物除去効果を発揮することが確認された。
【0042】
【表4】

【0043】
(実施例8〜9及び比較例15〜18 )
被洗浄物2として、表5に示した構成元素組成のスケールが付着したステンレススチール製連続レトルト滅菌装置内容器運搬容器(キャリア)部材より5cm×5cmサイズ片を多数切り出しし、その中より近似のスケール付着量片を選定し、洗浄試験に供した。
【0044】
【表5】

【0045】
供試洗浄剤としては、酸性洗浄剤として表6に示した配合組成物のA−8、A−9を使用し、アルカリ性洗浄剤として表2に示した配合組成物B−2を使用した。
【0046】
【表6】

【0047】
洗浄処理としては、酸性洗浄剤処理として処理液温50±1℃、浸漬時間3時間にて実施し、アルカリ性洗浄剤処理として処理液温50±1℃、処理時間3時間にて実施し、乾燥処理として先に示したD−1(風乾処理)にて実施した。
特性評価方法としては、実施例1〜7、比較例1〜14にて適用した手法にて実施した。
【0048】
特性評価結果としては、表7のような結果となった。
【0049】
【表7】

【0050】
表7試験結果表から、実施例8および9の手法(酸性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理、次いでアルカリ性洗浄剤による二次洗浄処理の実施)による最終的被洗浄物上のスケール除去度は、対応する比較例15〜16および17〜18の手法(アルカリ性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理、次いで酸性洗浄剤による二次洗浄処理。あるいは酸性洗浄剤による一次洗浄処理、次いで乾燥処理無し、次いでアルカリ性洗浄剤による二次洗浄処理する手法)の場合より、明らかに高いレベルとなることが確認された。
また、メタンスルホン酸と酒石酸を配合した酸性洗浄剤を使用した場合のスケール除去度は、メタンスルホン酸単独を酸性洗浄剤として使用する場合より全般的に高いレベルとなることが確認された。
【実施例10】
【0051】
メタンスルホン酸配合酸性洗浄液pHのスケール除去性に及ぼす影響を下記の手法にて評価した。
供試洗浄液として15倍水稀釈液pHが0.62、0.95、1.22、1.41、1.72、1.99、2.30となるように配合NaOH量を変化させたA−9の15倍水稀釈液を用いた。被洗浄物としては、被洗浄物1の3cm×3cm切り出し片を用いた。洗浄試験方法及び特性評価方法としては、洗浄液浸漬処理は処理液温50℃、浸漬時間1時間とし、その他実施法・条件は、実施例1〜7にて実施した手法に準拠した。
評価結果として洗浄液pHとスケール除去度の関係を図1に示した。図1より明らかなように、洗浄液pHが2を超えるとスケール除去度は明らかに低下することが確認された。
【実施例11】
【0052】
本願発明の手法と酸性洗浄剤長時間浸漬処理時のスケール除去特性の評価を下記のように実施した。
供試洗浄液及び乾燥処理の条件としては、酸性洗浄剤処理としてA−3、6倍水稀釈液を用い、アルカリ性洗浄剤処理としてB−1、6倍水稀釈液を用い、乾燥処理として80℃熱風乾燥機中30分間を行った。被洗浄物としては、スケール付着量が14.3g/mである被洗浄物2を用いた。実施洗浄手法としては、酸洗単独法として液温50℃にて浸漬3時間、12時間、24時間の各連続処理を行った。そして本願方法として液温50℃にて浸漬3時間の酸性洗浄剤による洗浄、次いで乾燥処理、次いで液温50℃にて浸漬1時間のアルカリ性洗浄剤による洗浄処理を行った。そして従来法として、液温50℃にて3時間の酸性洗浄剤による洗浄、次いで液温50℃にて浸漬1.5時間および3時間のアルカリ性洗浄剤による洗浄処理を行った。
特性評価法としては、実施例8にて実施した手法に準拠した。評価結果として合計処理時間に対するスケール除去度の関係を図2に示した。図2より明らかなように、本願手法は、酸洗単独法および従来法より短時間の処理にてスケールを完全除去できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールが付着した硬質材料表面に対し、酸性洗浄剤による洗浄処理、次いで乾燥処理、次いでアルカリ性洗浄剤による洗浄処理をこの順序にて逐次実施する洗浄方法。
【請求項2】
前記酸性洗浄剤としてメタンスルホン酸とヒドロキシカルボン酸の混合物を使用する請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
メタンスルホン酸とヒドロキシカルボン酸の混合比が、有効成分重量比として、30:70〜70:30の範囲である酸性洗浄剤を使用する請求項2記載の洗浄方法。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸としてグリコール酸、酒石酸、クエン酸より選ばれた1種又は2種以上を用い、洗浄処理に使用する液のpHが0.8〜2.0の範囲にある酸性洗浄剤を使用する請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−31823(P2013−31823A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178141(P2011−178141)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(594109705)アムテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】