説明

スケール析出促進装置

【課題】イオン交換樹脂を用いることなく水道水や井戸水の被処理水の硬度を下げると共に、長時間使用しても析出したスケールによって目詰まりを起こさない、スケール析出促進装置を提供すること。
【解決手段】処理水を貯める貯留塔と、貯留塔の上部に設置され被処理水と処理ガスとを混合し貯留塔内に噴霧する噴霧ノズルと、貯留塔から処理水を排水する排水管と、貯留塔内の空間を噴霧ノズルから排水管に向かって複数の空間に仕切る複数枚のスケール析出板とを備え、スケール析出板は複数の開口部を設け、開口部の大きさは噴霧ノズルから排水管に向かって順次小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中の硬度成分をスケールとして析出させて除外するためのスケール析出促進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯器またはヒートポンプを運転するとき、給湯器またはヒートポンプに通水する水道水や井戸水は加熱されて高温になる。このとき、通水する水道水や井戸水の硬度が高い場合、水中の硬度成分を主成分とするスケールという固形物が析出してしまい、その一部は水が通る配管内に固着するという現象が起こる。このスケールの析出が多くなると、熱効率の低下を招いたり配管のつまりを発生させたりするので、水中の硬度成分を予め除去する必要がある。
【0003】
被処理水である水道水や井戸水の硬度成分を除去する方法として、被処理水を噴霧ノズルによって噴霧し、溶存する炭酸ガスを空気中に放散する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−178387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されている方法では、処理装置の配管内部や噴霧ノズルの開口部などにもスケールが析出し、目詰まりを起こすという問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、イオン交換樹脂を用いることなく被処理水の硬度を下げると共に、析出したスケールによって目詰まりを起こさないスケール析出促進装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るスケール析出促進装置は、処理水を貯める貯留塔と、貯留塔の上部に設置され被処理水と処理ガスとを混合し貯留塔内に噴霧する噴霧ノズルと、貯留塔から処理水を排水する排水管と、貯留塔内の空間を噴霧ノズルから排水管に向かって複数の空間に仕切る複数枚のスケール析出板とを備え、スケール析出板は複数の開口部を設け、開口部の大きさは噴霧ノズルから排水管に向かって順次小さくなるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、処理水を貯める貯留塔と、貯留塔の上部に設置され被処理水と処理ガスとを混合し貯留塔内に噴霧する噴霧ノズルと、貯留塔から処理水を排水する排水管と、貯留塔内の空間を噴霧ノズルから排水管に向かって複数の空間に仕切る複数枚のスケール析出板とを備え、スケール析出板は複数の開口部を設け、開口部の大きさは噴霧ノズルから排水管に向かって順次小さくなるので、スケールの析出による目詰まりなどの不具合を起こすことなく被処理水の硬度を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるスケール析出促進装置の断面図である。二流体ノズル1には、水道水や井戸水などの被処理水を送り込む水供給管2と二酸化炭素を除外した空気や窒素ガスなどの二酸化炭素濃度が低い処理ガスを送り込むガス配管3が取り付けられている。二流体ノズル1は、被処理水と処理ガスを混合し、貯留塔4の内側の壁面に噴射するように貯留塔4に取り付けられており、貯留塔4の内側の壁面に噴射された液滴6は、処理水7として貯留塔4の下部に蓄積される。また、貯留塔4の下部に蓄積された処理水7は、排水管5を通じて給湯器やヒートポンプに供給される。
【0010】
次に、実施の形態1によるスケール析出促進装置の動作を説明する。二流体ノズル1において被処理水と二酸化炭素濃度が低い処理ガスが激しく混合されることにより、被処理水中の炭酸ガスが脱気され、被処理水中の硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが炭酸塩や硫酸塩などの塩として析出しやすい状態の微少液滴となる。この状態の液滴6を貯留塔4の内側の壁面に衝突させる。貯留塔4は、スケールの核が生成・付着するようなガラスなど材質で構成されており、液滴6が貯留塔4の壁面に衝突することにより、被処理水の硬度成分が壁面に付着し、除外される。このとき、二流体ノズル1は、開口部が十分に大きいこと、圧力を加えて大量のガスを送り込むために開口部壁面での被処理水の滞留が少ないことから、スケールの析出による目詰まりを抑制するという効果もある。
【0011】
なお、実施の形態1では二流体ノズルを用いたが、これに代えて水エゼクタを用いても同じ効果を得ることができる。使用する水エゼクタの種類は、処理水量、噴霧される液滴の噴霧量、平均粒子径によって、任意に選ぶとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は、任意に設定してもよい。
【0012】
また、図1に示した本発明の実施の形態1では、二流体ノズル1から噴射された液滴6を貯留塔4の内側の壁面に衝突させるような構成であったが、別途、貯留塔4の内部に液滴6を衝突させるための壁面を設置しても同じ効果が得られる。
【実施例1】
【0013】
図1に示したスケール析出促進装置によって、被処理水として全硬度270mgCaCO/Lの水道水を用いて、処理ガスとして二酸化炭素を含まない窒素ガスを用いて、スケール析出を行った。被処理水の水温は、約40〜100℃に設定した。また、被処理水の流量を約0.5L/分、処理ガスの流量を約57L/分として二流体ノズル1に供給し、二流体ノズル1から噴霧される液滴6の平均粒子径は400μm以下になるようにした。その結果。水道水中の全硬度は、270mgCaCO/Lから180mgCaCO/Lまで減少した。すなわち、図1に示したスケール析出促進装置によって約33%の硬度成分除外ができたことになる。また、処理ガスとして二酸化炭素を含んだ通常の空気を用いた場合と比べて、窒素ガスを用いた方が硬度成分除外の効果が高いことが確認された。
【0014】
この処理を行うとき、二流体ノズル1から噴霧される液滴の平均粒子径を400μm以下になるように被処理水及び処理ガスの流量を調整すると、被処理水と処理ガスがよく混合されて本発明の効果が高くなる。例えば、被処理水の流量を約0.5L/分、処理ガスの流量を約57L/分として二流体ノズルに供給するとよい。この例では、8時間程度で約240Lのタンクを満水にできるため、お風呂などに使うお湯を昼間に貯めておくことができる。なお、ここで示した供給量は、使用する二流体ノズルの種類や該ノズルから噴霧される液滴の噴霧量や平均粒子径によって任意に調整するとよい。また、設置するノズルを複数個にしてもよい。この場合、処理時間を短縮できたり、処理水量を増やしたりすることができる。また、ノズルの設置角度は任意に設置してよい。
【0015】
被処理水や処理ガスの供給方法は、加圧ポンプなどによって供給してもよい。また、処理ガスとして窒素ガスを供給する方法は、ガスボンベから供給してもよいし、窒素ガス発生装置などを用いて供給してもよい。また、二酸化炭素を除外した空気を供給する場合の方法としては、ゼオライト、活性炭、アルミナなどの吸着剤に触れさせて二酸化炭素を吸着除外させて供給する方法、多孔質の高分子やセラミックなどの膜に通して二酸化炭素を除外して供給する方法、リチウムシリケートや酸化亜鉛に二酸化炭素を吸収させ除外して供給する方法、アミンや炭酸カリウム水溶液などのアルカリ性の溶液に二酸化炭素を吸収させ除外して供給する方法や窒素80%、酸素20%の混合ガスボンベから供給する方法などがある。これらの方法によって、二酸化炭素を除外した空気として供給してもよい。
また、液滴を衝突させるガラスは、その組成について特に制約はなくてよい。
【0016】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2によるスケール析出促進装置の断面図である。図2を実施の形態1によるスケール析出促進装置の断面図である図1と比べると、貯留塔4の内部を真空にするための真空ポンプ8が設置されている以外は同じである。実施の形態2では、二流体ノズル1において被処理水と二酸化炭素濃度が低い処理ガスが激しく混合されることにより被処理水中の炭酸ガスが脱気され、さらに、ここで発生した炭酸ガスが真空ポンプ8によって貯留塔4の外に排気される。これにより、炭酸ガスの処理水への再溶解を防ぐことができ、スケールの析出を促すことになる。
【0017】
なお、実施の形態2では二流体ノズルを用いたが、これに代えて水エゼクタを用いても同じ効果を得ることができる。使用する水エゼクタの種類は、処理水量、噴霧される液滴の噴霧量、平均粒子径によって、任意に選ぶとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は、任意に設定してもよい。
【0018】
実施の形態1と同様に、使用する二流体ノズルの種類、該ノズルへの被処理水および処理ガスの供給量は、任意に調整するとよい。設置するノズルの個数、設置角度、被処理水および処理ガスの供給方法も、任意に調整するとよい。
【0019】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3によるスケール析出促進装置の断面図である。図3を実施の形態2によるスケール析出促進装置の断面図である図2と比べると、ノズル1から噴射される液滴6が鉛直方向に飛ぶようにノズル1が貯留塔4の上部に設置されていること、および、貯留塔4の内部にスケール析出板9a,9b,9cが設置されていること以外は、同じである。スケール析出板9a,9b,9cは、スケールの核が生成・付着するようなガラスなど材質で構成されており、貯留塔4の内部の空間を仕切るように設置されている。図4は、本発明の実施の形態3によるスケール析出促進装置における、スケール析出板9a,9b,9cの上面図である。スケール析出板9a,9b,9cには複数個の穴が開けられており、スケール析出板9aの穴が最も大きく、スケール析出板9bの穴はスケール析出板9aの穴より小さく数が多い。スケール析出板9cの穴は、スケール析出板9bと比べてさらに穴が小さく数が多い。
【0020】
次に、本発明の実施の形態3によるスケール析出促進装置の動作について、説明する。二流体ノズル1において被処理水と二酸化炭素濃度が低い処理ガスが激しく混合されることにより、被処理水中の炭酸ガスが脱気され、被処理水中の硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが炭酸塩や硫酸塩などの塩として析出しやすい状態の微少液滴となる。この状態の液滴6をスケール析出板9aに噴射する。スケール析出板9aはスケールの核が生成・付着するようなガラスなど材質で構成されており、液滴6がスケール析出板9aの板面に衝突することにより、被処理水の硬度成分がスケール析出板9aに付着し、除外される。液滴6の一部は、スケール析出板9aの穴を通って、スケール析出板9bの板面に衝突する。これにより、スケール析出板9aと同様に、スケール析出板9bにおいても被処理水の硬度成分がスケール析出板9bに付着し、除外される。さらに、液滴6の一部は、スケール析出板9bの穴を通って、スケール析出板9cの板面に衝突する。これにより、スケール析出板9a、9bと同様に、スケール析出板9cにおいても被処理水の硬度成分がスケール析出板9cに付着し、除外される。
【0021】
このように、穴の開いた複数枚のスケール析出板に液滴6を衝突させることにより、より多くの硬度成分の除外が可能となる。また、液滴6が最初に衝突するスケール析出板9aは、3枚のスケール析出板の中で最もスケールの付着量が多くなるが、最も大きな穴を開けているので、スケールによって穴がふさがれる危険性が小さい。また、最も下部のスケール析出板9cは小さな穴を開けているので、より多くの液滴と衝突することが可能である。また、液滴6を貯留塔4の壁面ではなく、スケール析出板9a,9b,9cに噴射する構成にしたため、スケールが大量に付着したときにはスケール析出板9a,9b,9cのみを交換すれば引き続き使用可能となる。
【0022】
なお、実施の形態3では二流体ノズルを用いたが、これに代えて水エゼクタを用いても同じ効果を得ることができる。使用する水エゼクタの種類は、処理水量、噴霧される液滴の噴霧量、平均粒子径によって、任意に選ぶとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は、任意に設定してもよい。
【0023】
設置するガラス板の枚数、穴の形状・大きさ・個数は、任意に設計してよい。実施の形態1と同様に、使用する二流体ノズルの種類、該ノズルへの被処理水および処理ガスの供給量は、任意に調整するとよい。設置するノズルの個数、設置角度、被処理水および処理ガスの供給方法も、任意に調整するとよい。
【0024】
実施の形態4.
図5は、本発明の実施の形態4によるスケール析出促進装置の断面図である。図5を実施の形態3によるスケール析出促進装置の断面図である図3と比べると、被処理水を貯留塔4に供給する被処理水供給管10が設置されていること、および、貯留塔4の下部に蓄積された処理水7を二流体ノズル1に送り込むための配管11とポンプ12が設置されていること以外は、同じである。実施の形態4では、貯留塔4の下部に蓄積された処理水7をポンプ12によって吸い上げ、配管11を通して二流体ノズル1に供給する。これにより、被処理水を複数回にわたって二流体ノズル1から噴射することができるため、炭酸ガスの脱気量をより多くすることができる。その結果、スケール析出の効果を、より大きくすることができる。
【0025】
なお、実施の形態4では二流体ノズルを用いたが、これに代えて水エゼクタを用いても同じ効果を得ることができる。使用する水エゼクタの種類は、処理水量、噴霧される液滴の噴霧量、平均粒子径によって、任意に選ぶとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は、任意に設定してもよい。
【0026】
実施の形態3と同様に、設置するガラス板の枚数、穴の形状・大きさ・個数は、任意に設計してよい。実施の形態1と同様に、使用する二流体ノズルの種類、該ノズルへの被処理水および処理ガスの供給量は、任意に調整するとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は任意に設定してもよい。
【0027】
実施の形態5.
図6は、本発明の実施の形態5によるスケール析出促進装置の断面図である。図6を実施の形態4によるスケール析出促進装置の断面図である図5と比べると、貯留塔4の内部の気体を二流体ノズル1に送り込むための配管13と気体用ポンプ14、および、二酸化炭素吸着剤15が設置されていること以外は、同じである。実施の形態5では、貯留塔4の内部の気体を気体用ポンプ14によって吸い出し、二酸化炭素吸着剤15を通すことにより気体中の二酸化炭素濃度を低下させ、配管13を通して二流体ノズル1に供給する。これにより、外部から窒素ガスを供給する必要が無いため、省エネ、省スペースで設置・運転できる効果がある。
【0028】
なお、実施の形態5では二流体ノズルを用いたが、これに代えて水エゼクタを用いても同じ効果を得ることができる。使用する水エゼクタの種類は、処理水量、噴霧される液滴の噴霧量、平均粒子径によって、任意に選ぶとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は、任意に設定してもよい。
【0029】
実施の形態3と同様に、設置するガラス板の枚数、穴の形状・大きさ・個数は、任意に設計してよい。実施の形態1と同様に、使用する二流体ノズルの種類、該ノズルへの被処理水および処理ガスの供給量は、任意に調整するとよい。また、設置する水エゼクタの個数や設置角度は任意に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1によるスケール析出促進装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2によるスケール析出促進装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3によるスケール析出促進装置の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3によるスケール析出板の上面図である。
【図5】本発明の実施の形態4によるスケール析出促進装置の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5によるスケール析出促進装置の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 二流体ノズル
2 水供給管
3 ガス配管
4 貯留塔
5 排水管
6 液滴
7 処理水
8 真空ポンプ
9a スケール析出板
9b スケール析出板
9c スケール析出板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水を貯める貯留塔と、
前記貯留塔の上部に設置され被処理水と処理ガスとを混合し前記貯留塔内に噴霧する噴霧ノズルと、
前記貯留塔から前記処理水を排水する排水管と、
前記貯留塔内の空間を前記噴霧ノズルから前記排水管に向かって複数の空間に仕切る複数枚のスケール析出板とを備え、
前記スケール析出板は複数の開口部を設け、
前記開口部の大きさは前記噴霧ノズルから前記排水管に向かって順次小さくなることを特徴とするスケール析出促進装置。
【請求項2】
貯留塔の内部を負圧にする真空ポンプを備えたことを特徴とする請求項1に記載のスケール析出促進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−120993(P2012−120993A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274836(P2010−274836)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】