説明

スケール装置

【課題】使用環境の温度変化の影響を抑え、位置決め対象の正確な位置制御が可能なスケール装置を提供する。
【解決手段】一方向に目盛りが配列されたスケール11と、スケール11を取付けるベース部14と、スケール11の目盛りを読み取る読取ヘッド12と、を備えるスケール装置10であり、スケール11は、目盛りが付された方向である目盛り方向の一端においてベース部14に固定される固定部15と、反対側の端部において直動ガイド13を介してベース部14に取付けられるガイド取付け部18とでベース部14に取付けられており、直動ガイド13が動く方向と目盛り方向とが同一であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置の口金位置制御など、主に直動装置の精密制御に利用されるスケール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、基板上にレジスト液や薬液などの塗布液を均一に塗布する塗布装置により形成されている。
【0003】
塗布装置の概略図を図6に示す。塗布装置1は、基板Wを搬送する搬送部2と、基板に塗布液を塗布する塗布部3を有している。塗布部3は、搬送部2による基板Wの搬送方向と垂直な方向に伸びたスリットを有する口金を備え、基板Wを所定速度で搬送しながらこのスリットから塗布液を吐出し、基板W上に塗布膜を形成する。
【0004】
この塗布膜の厚みを均一にするためには、スリットから吐出する塗布液の量を均一にするとともに、口金の高さをたとえばミクロン単位で精度良く制御し、口金と基板Wとの距離を均一に保つ必要がある。
【0005】
この口金の高さを精度良く制御するための手段として、たとえば、下記特許文献1に示すような、直動装置にスケールを組込み、スケールから得られる位置情報をもとに位置決め対象の位置制御を行う手法が塗布装置の塗布部の構成に従来より用いられている。たとえば、図7(a)に示すように、口金91を搭載するビーム92が昇降して口金91の高さを制御する塗布部90において、直動ガイド95を介してビーム92を支持する支持部96にスケール93が取付けられ、ビーム92に読取ヘッド94が取付けられている。ここで、読取ヘッド94がスケール93の目盛りを読み取り、その値をもとに読取ヘッド94の位置を制御することで、ビーム92および口金91の高さの制御を行い、口金91と基板Wとの距離を一定に保っている。また、スケール93は、スケール93の両端部の近傍の固定部97および固定部98にて、ボルト固定によりベース部96に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−138475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載された直動装置では、周囲温度に変化があると、正確に位置制御ができなくなるおそれがあるいう問題があった。
【0008】
たとえば、図7(a)に示す塗布部90の支持部96が熱膨張し、図7(b)の状態になったとすると、支持部96の膨張に応じて、図7(a)で示していた固定部97および固定部98の位置も変化し、固定部97’および固定部98’が示す位置へ変位する。このとき、固定部97と固定部98との間の距離にくらべ、固定部97’と固定部98’との間の距離は長くなるため、スケール93は引き伸ばされ、スケール93の目盛り間隔も広がってしまう。
【0009】
ここで、たとえばスケール93のAという座標の目盛りを読取ヘッド94が読み取った位置において口金91が基板Wに塗布液の塗布動作を行う、というように制御していた場合、図7(a)の場合と図7(b)の場合とで、スケール93が座標Aを示す位置は異なってしまう。すなわち、口金91の位置を正確に制御することができなくなり、口金91と基板Wとの距離を均一に保って均一な膜厚で塗布することが困難になっていた。
【0010】
なお、この問題を防ぐ一つの方法として、支持部96を低熱膨張材で構成させることが挙げられるのだが、一般に支持部96を構成させる材料として用いられるSUSなどと比較して低熱膨張材は非常にコストが高く、また、支持部96は口金91を支持する部材であり、大きな形状を有するため、低熱膨張材におきかえることは塗布装置の製作コストの大幅増につながる。そのため、可能な限り予算を抑えて塗布装置を製作する場合、この方法を採用するのは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のスケール装置は、一方向に目盛りが配列されたスケールと、前記スケールを取付けるベース部と、前記スケールの目盛りを読み取る読取ヘッドと、を備えるスケール装置であり、前記スケールは、目盛りが付された方向である目盛り方向の一端において前記ベース部に固定される固定部と、反対側の端部において直動ガイドを介して前記ベース部に取付けられるガイド取付け部とで前記ベース部に取付けられており、前記直動ガイドが動く方向と前記目盛り方向とが同一であることを特徴としている。
【0012】
上記スケール装置によれば、スケールが目盛り方向の一端においてベース部に固定される固定部と、反対側の端部において直動ガイドを介してベース部に取付けられるガイド取付け部とでベース部に取付けられており、直動ガイドが動く方向と目盛り方向とが同一であることより、ベース部が熱膨張もしくは収縮しても、それに応じて直動ガイドが動作することで、目盛り方向にスケールが伸縮することを防ぐことができるため、スケールの座標精度を保ち、読取ヘッドをともなった精度の良い位置制御が可能である。
【0013】
また、前記ベース部の片端が搭載部材に固定されている場合、前記目盛り方向に関して、前記固定部は、前記ガイド取付け部よりも前記搭載部材に近いと良い。
【0014】
このようにベース部の片端が搭載部材に固定されている場合、ベース部が搭載部材に固定されている箇所がベース部の膨張の起点となる。そこで、目盛り方向に関して、固定部は、ガイド取付け部よりも搭載部材に近いことにより、ベース部の膨張の起点と固定部との距離を近くすることができるため、ベース部の熱膨張もしくは収縮による固定部の位置の変動を小さくし、スケールの位置が変動することを抑えることが可能である。
【0015】
また、その他の形態として、一方向に目盛りが配列されたスケールと、前記スケールを取付けるブラケットと、前記ブラケットを取付けるベース部と、前記スケールの目盛りを読み取る読取ヘッドと、を備えるスケール装置であり、前記ブラケットは、前記スケールに目盛りが付された方向である目盛り方向の一端において前記ベース部に固定される第1の固定部と、反対側の端部において第1の直動ガイドを介して前記ベース部に取付けられる第1のガイド取付け部とで前記ベース部に取付けられており、前記スケールは、前記目盛り方向の一端において前記ブラケットに固定される第2の固定部で前記ブラケットに取付けられ、反対側の端部において第2の直動ガイドを介して前記ブラケットもしくは前記ベース部に取付けられる第2のガイド取付け部で前記ブラケットもしくは前記ベース部に取付けられており、前記第1の直動ガイドおよび前記第2の直動ガイドが動く方向と前記目盛り方向とが同一であり、前記目盛り方向に関して、前記第1の固定部と前記第1のガイド取付け部との位置関係と、前記第2の固定部と前記第2のガイド取付け部との位置関係が反対であることを特徴とすることもできる。
【0016】
このように、第1の直動ガイドおよび第2の直動ガイドが動く方向と目盛り方向とが同一であることにより、ベース部の熱膨張もしくは収縮によってブラケットおよびスケールが伸縮させられることを防ぐことができる。さらに、目盛り方向に関して、第1の固定部と第1のガイド取付け部との位置関係と、第2の固定部と第2のガイド取付け部との位置関係が反対であることにより、ベース部およびブラケットと、スケールとで熱膨張もしくは収縮により変位する方向が反対となり、各々の膨張もしくは収縮による影響が相殺されるため、ベース部、ブラケット、およびスケールの伸縮から生じるスケールの座標誤差を小さくすることができ、読取ヘッドをともなった精度の良い位置制御が可能である。
【0017】
また、前記ベース部の片端が搭載部材に固定されている場合、前記目盛り方向に関して、前記第1の固定部は、前記第1のガイド取付け部よりも前記搭載部材に近いようにすると良い。
【0018】
このように、目盛り方向に関して、第1の固定部は、第1のガイド取付け部よりも搭載部材に近いことにより、ベース部の膨張の起点と第1の固定部との距離を近くすることができるため、ベース部の熱膨張もしくは収縮による第1の固定部の位置の変動を小さくし、スケールの位置が変動することを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスケール装置によれば、使用環境の温度変化の影響を抑え、位置決め対象の正確な位置制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態におけるスケール装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるスケール装置を用いた一例の概略図である。
【図3】他の実施形態におけるスケール装置の概略図である。
【図4】他の実施形態におけるスケール装置を用いた一例の概略図である。
【図5】他の実施形態におけるスケール装置の概略図である。
【図6】塗布装置の概略図である。
【図7】従来のスケール装置を用いた一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。なお、以降の説明では、先述した図6の塗布装置において基板Wが搬送される方向をX軸方向、水平面上でX軸方向と直交する方向をY軸方向とし、これらと直交する方向をZ軸方向とし、説明を進める。
【0022】
本発明の一実施形態におけるスケール装置を図1に示す。図1(a)のスケール装置10は、スケール11、読取ヘッド12、直動ガイド13、およびベース部14を有しており、読取ヘッド12がスケール11から読み取った座標情報をもとに、読取ヘッド12とともに移動可能に組み付けられたユニットの位置制御を行う。
【0023】
スケール11は、一方向に目盛りが配列された平板であり、本実施形態ではリニアスケールを用いている。スケール11は、光電式のリニアスケールなどのように目盛りが刻まれて配列されているものでも、電磁誘導式のリニアスケールのようにコイルが、もしくは磁気式のリニアスケールのようにN極およびS極が、目盛りの代わり配列されているものなどでも良い。なお、以降の説明では、目盛りまたはそれに代わるものが配列されている方向を目盛り方向と呼ぶ。
【0024】
読取ヘッド12は、スケール11から座標を読み取る検出器であり、上述のスケール11の種類に対応したものが設けられている。また、読取ヘッド12は、目盛り方向に移動可能な、図示しない直動機構に取付けられており、その移動範囲内の各位置においてスケール11から座標を読み取ることが可能である。
【0025】
直動ガイド13は、レール16とレール16に取付けられたスライダ17から構成されているユニットであり、スライダ17がレール16に沿って少ない摺動抵抗で往復動する。
【0026】
ベース部14は、スケール11を取付ける部材であり、スケール11を取付けるための平面を有している。また、直動ガイド13も、このベース部14に取付けられており、スライダ17が目盛り方向に動作するような向きでレール16がベース部14に固定されている。また、ベース部14の外形は、スケール装置10の用途によって様々であり、鉛直方向に物体を直動させる機構の支柱であったり、水平方向に物体を直動させる機構の底板であったりしても良い。
【0027】
スケール11は、片方の端部では、固定部15においてボルトなどによりベース部14に固定されている。また、反対側の端部では、ガイド取付け部18において直動ガイド13のスライダ17に取付けられている。すなわち、スケール11はその片端において直動ガイド13を介してベース部14に取付けられる形態をとっている。ここで、スケール11が歪むことなく取付けられるよう、ベース部14は直動ガイド13を収容する段差を有し、ベース部14の固定部15を有する面とスライダ17のスケール11を取付ける面とが面一となっている。
【0028】
以上の構成をとることにより、ベース部14が周囲温度の変化などにより膨張もしくは収縮した場合でも、スケール11は、少なくとも目盛り方向にはこの膨張、収縮の影響を受けなくすることが可能である。
【0029】
具体的には、ベース部14が膨張して図1(a)の状態から図1(b)の状態になり、それにあわせて直動ガイド13のレール16の位置が変化したとしても、スライダ17がレール16上を変位することで、スライダ17の位置はベース部14の膨張に影響されない。したがって、ベース部14が膨張もしくは収縮しても、それにともなって目盛り方向にスケール11が伸縮することを防ぐことができる。さらに、スケール11の熱膨張が無視できる場合、スケール11の長さおよび目盛り間隔は変動しない。
【0030】
ここで、スケール11の厚さが薄い場合、このスケール11を直接ベース部14およびスライダ17に取付けると、スケール11が曲がるおそれがある。その場合は、図示しないブロックを中間に設け、スケール11をこのブロックに固定して補強した後、このブロックをベース部14およびスライダ17に取付けても良い。このとき、ブロックを低熱膨張材で形成することにより、このブロック自身が温度変化で膨張もしくは収縮してスケール11を伸縮させることを防ぐことができる。
【0031】
図2は、本実施形態のスケール装置10を用いた一例である。スケール装置10は、塗布装置の塗布部3において口金を昇降させる機構の位置制御に用いられている。
【0032】
図2(a)に示した塗布部3は、先述のスケール装置10および口金昇降部4を有しており、口金昇降部4は口金21、ビーム22、モータ23、ボールねじ24、直動ガイド25および支持部26を有している。
【0033】
口金21は、下向きに開口してY軸方向にのびたスリットを有し、口金21の下方を搬送部2によりX軸方向に搬送される基板Wに帯状に塗布液を塗布する。
【0034】
ビーム22は、口金21を支持し、自身が移動することで口金21が移動することを可能とする、Y軸方向にのびた梁である。ビーム22には直動ガイド25のスライダが取付けられており、直動ガイド25を介して支持部26に接続されている。ここで、直動ガイド25のレールは、口金21およびビーム22が移動するべき方向に沿って支持部26に配置、固定されており、今回の例では、Z軸方向に配置されている。
【0035】
ビーム22のY軸方向の両端部にはボールねじ24が取付けられており、また、各ボールねじ24にはモータ23が取付けられており、外部制御によって各モータ23が動作することにより各ボールねじ24が回転し、ビーム22および口金21が直動ガイド25のレールの向きに沿ってZ軸方向に移動する。
【0036】
支持部26は、ビーム22のY軸方向の両端部に設けられ、前述の通り直動ガイド25を介してビーム22と接続し、また、モータ23およびボールねじ24を支持することにより、ビーム22および口金21を支持している。また、支持部26は、端部28において搭載部材である定盤27に搭載、固定されている。この支持部26は、安価で剛性を確保できるSUSで形成されることが多い。
【0037】
ここで、スケール装置10は目盛り方向を口金21が変位する方向、すなわちZ軸方向にとり、塗布部3に組み込まれている。
【0038】
ベース部14は、口金昇降部4の支持部26の一部であり、目盛り方向がZ軸方向となるようにスケール11が固定部15において固定され、また、スライダの移動方向がZ軸方向となるように直動ガイド13が取付けられている。
【0039】
読取ヘッド12は、口金昇降部4のビーム22に取付けられ、ビーム22および口金21とともにZ軸方向に移動可能である。
【0040】
以上の構成をとることにより、ベース部14すなわち支持部26が周囲温度の変化などにより膨張し、図2(a)から図2(b)の状態となった場合でも、先述の通り、スケール11は、少なくとも目盛り方向にはこの膨張の影響を受けなくすることができ、スケール11の座標精度を保ち、読取ヘッド12をともなった精度の良い位置制御が可能である。また、ベース部14およびスケール11が収縮する場合でも同様である。
【0041】
なお、図2(b)では、説明を簡略にするため、ベース部14の膨張はZ軸方向のみのものを示している。
【0042】
一方、この場合、ベース部14は定盤27への搭載部である端部28を起点として、上方向に膨張するため、固定部15の位置は変動する。すなわち、図2(a)の状態では端部28と固定部15までの距離がdであったものに対し、ベース部14が膨張して固定部15は図2(b)に示すように固定部15’の位置へ変位し、端部28との距離がd’になったとすると、これらの差の(d’−d)だけスケール11の取付け位置が上昇する。ここで、たとえばスケール11のAという座標の目盛りを読取ヘッド12が読み取った位置において口金21が基板Wに塗布液の塗布動作を行う、というように制御していた場合、図2(a)の場合と図2(b)の場合とで、スケール11が座標Aを示す位置は(d’−d)だけ異なり、本実施形態のスケール装置10によりベース部14の膨張で目盛り方向にスケール11が伸長することを防ぐことができても、わずかながら、この差は生じることとなる。
【0043】
この差を極小にするために、固定部15を端部28に近づけて距離d自身を短くし、距離dと距離d’との差を小さくすると良い。少なくとも、固定部15が直動ガイド13よりも目盛り方向に関して端部28に近い配置になるようスケール11を取付けることにより、固定部15が直動ガイド13よりも端部28に遠い配置でスケール11を取付けた場合に比べて距離dを短くすることができる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態を図3に示す。
図3(a)のスケール装置30は、スケール31、読取ヘッド32、ブラケット33、直動ガイド34、直動ガイド35、およびベース部36を有している。
【0045】
スケール31は、先述のスケール11と同様に光電式、電磁誘導式、もしくは磁気式などのリニアスケールであり、これらリニアスケールの、目盛りまたはそれに代わるものが配列されている方向を目盛り方向と呼ぶ。
【0046】
読取ヘッド32は、スケール31から座標を読み取る検出器であり、上述のスケール31の種類に対応したものが設けられている。また、読取ヘッド32は、目盛り方向に移動可能な、図示しない直動機構に取付けられており、その移動範囲内の各位置においてスケール31から座標を読み取ることが可能である。
【0047】
ブラケット33は、スケール31を取付ける部材であり、スケール31を取付けるための平面を有している。また、直動ガイド34も、このブラケット33に取付けられており、直動ガイド34のスライダが目盛り方向に動作するような向きで直動ガイド34のレールがブラケット33に固定されている。また、スケール31は、片方の端部では固定部37においてボルトなどにより固定され、反対側の端部ではガイド取付け部38において直動ガイド34のスライダに取付けられている。ここで、スケール31が歪むことなく取付けられるよう、ブラケット33は直動ガイド34を収容する段差を有し、ブラケット33の固定部37を有する面と直動ガイド34のスライダのスケール31を取付ける面とが面一となっている。
【0048】
ベース部36は、上記のブラケット33を取付ける部材であり、ブラケット33を取付けるための平面を有している。また、直動ガイド35も、このベース部36に取付けられており、直動ガイド35のスライダが目盛り方向に動作するような向きで直動ガイド35のレールがベース部36に固定されている。また、ブラケット33は、片方の端部では固定部39においてボルトなどにより固定され、反対側の端部では、ガイド取付け部40において直動ガイド35のスライダに取付けられている。すなわち、ブラケット33はその片端において直動ガイド35を介してベース部36に接続されている形態をとっている。ここで、ベース部36は直動ガイド35を収容する段差を有し、ベース部36の固定部39を有する面と直動ガイド35のスライダのブラケット33を取付ける面とが面一となっている。
【0049】
ここで、目盛り方向に関して、固定部37とガイド取付け部38との位置関係と、固定部39とガイド取付け部40との位置関係とは反対になっている。すなわち、図3(a)においてブラケット33が左側の端部に固定部39を有してベース部36に固定され、右側の端部にガイド取付け部40を有して直動ガイド35に取付けられているならば、スケール31は右側の端部において固定部37を有してブラケット33に固定され、左側の端部にガイド取付け部38を有して直動ガイド35に取付けられている。
【0050】
以上の構成をとることにより、図3(a)のベース部36が周囲温度の変化などにより膨張し、図3(b)の状態になった場合でも、ブラケット33およびスケール31は、少なくとも目盛り方向にはこの膨張の影響を受けなくすることが可能である。さらに、スケール31の熱膨張も考慮した場合に、ガイド取付け部40よりも固定部39に近い方の端部41を起点とすれば、ベース部36の膨張によって固定部39が変位する方向およびブラケット33が固定部39を起点として膨張することによって固定部37が変位する方向と、スケール31が固定部37を起点として膨張することによってスケール31の目盛りが変位する方向とが反対となり、各々の変位が相殺される。そのため、スケール31、ブラケット33、およびベース部36の膨張から生じるスケールの座標誤差を小さくすることができる。また、スケール31、ブラケット33、およびベース部36が収縮する場合でも同様である。
【0051】
また、ブラケット33は低熱膨張材で形成すると良い。スケール31は既製品を使用するため、また、ベース部36は形状が大きく、装置製作コストが大幅に増加するため、これらを低熱膨張材におきかえることは困難であるが、少なくともブラケット33を低熱膨張材で形成することにより、ブラケット33の熱膨張の影響でスケール31の位置が変化することを抑えることができる。
【0052】
この実施形態のスケール装置30を用いた一例を図4に示す。
【0053】
図4(a)に示した塗布部3は、先述のスケール装置30および口金昇降部4を有しており、口金昇降部4の構成は、図2と同様である。
【0054】
スケール装置30は目盛り方向を口金21が変位する方向、すなわちZ軸方向にとり、塗布部3に組み込まれている。
【0055】
ベース部36は、口金昇降部4の支持部26の一部であり、端部41において搭載部材である定盤27に搭載、固定されている。また、目盛り方向がZ軸方向となるようにスケール31がブラケット33に固定部37において固定され、このブラケット33がベース部36に固定部39において固定されている。また、直動ガイド34および直動ガイド35はスライダの移動方向がともにZ軸方向となるように取付けられており、固定部39はガイド取付け部40よりも目盛り方向に関して端部41の近傍、すなわち下方に配置され、固定部37はガイド取付け部38よりも上方に配置されている。
【0056】
読取ヘッド32は、口金昇降部4のビーム22に取付けられ、ビーム22および口金21とともにZ軸方向に移動可能である。
【0057】
以上の構成をとることにより、スケール31、ブラケット33、およびベース部36が周囲温度の変化などにより膨張して図4(a)から図4(b)の状態となり、図4(a)の固定部37および固定部39が図4(b)の固定部37’および固定部39’のように変位した場合でも、先述の通り、スケール31の目盛りが変位する方向は両固定部が変位する方向と反対となるため、それぞれの膨張の影響を相殺することができる。そのため、スケール31の座標誤差を小さくし、読取ヘッド12をともなった精度の良い位置制御が可能である。また、ベース部14およびスケール11が収縮する場合でも同様である。
【0058】
なお、図4(b)でも、説明を簡略にするため、ベース部36の膨張はZ軸方向のみのものを示している。
【0059】
ここで、スケール31の所定の座標においてさらに位置決め精度を高くするためには、その座標においてスケール31、ブラケット33、およびベース部36の熱膨張の影響が少なくなるように固定部37および固定部39の位置を設定し、スケール装置30を形成すれば良い。この一例として、図4においてスケール31のAという座標を読取ヘッド32が読み取った位置において口金21が基板Wに塗布液の塗布動作を行う、というように制御する場合で説明する。このとき、座標Aの位置精度が特に重要であるとする。
【0060】
スケール31の熱膨張率がα、ブラケット33の熱膨張率がα、ベース部36の熱膨張率がαであったとし、図4(a)の状態から周囲温度がΔtだけ変化して、図4(b)の状態になったとする。このとき、図4(a)において搭載面28から固定部39までの目盛り方向の距離がdであったとすると、これは搭載面28を起点とし、ベース部36の熱膨張によって変化するため、図4(a)の状態から図4(b)の状態になったときのこの距離の変化量Δdは、以下の式(1)の通りとなり、固定部39は搭載面28より上方にあるため、上方向に変位する。
Δd=α×Δt×d ……(1)
また、図4(a)において固定部39から固定部37までの目盛り方向の距離がdであったとすると、これは固定部39を起点とし、ブラケット33の熱膨張によって変化するため、図4(a)の状態から図4(b)の状態になったときのこの距離の変化量Δdは、以下の式(2)の通りとなり、固定部37は固定部39より上方にあるため、これも上方向に変位する。
Δd=α×Δt×d ……(2)
また、図4(a)において固定部37から座標Aの目盛りまでの目盛り方向の距離がdであったとすると、これは固定部37を起点とし、スケール31の熱膨張によって変化するため、図4(a)の状態から図4(b)の状態になったときのこの距離の変化量Δdは、以下の式(3)の通りとなり、スケール31の目盛りは固定部37より下方にあるため、これは下方向に変位する。
Δd=α×Δt×d ……(3)
これらより、図4(a)の状態から図4(b)の状態になったときの座標Aの目盛りの目盛り方向の位置の変化量Δdは、変位の方向を考慮して式(1)から式(3)を合わせた以下の式(4)の通りとなる。
Δd=(α×d+α×d−α×d)×Δt ……(4)
したがって、(α×d+α×d−α×d)の値が小さくなるようにd、d、およびdの距離を設定し、スケール装置30の構成に反映させることにより、座標Aの目盛りの位置精度を高めることが可能である。
【0061】
また、スケール装置30の構成について、図3では、直動ガイド34はスケール31とブラケット33との間に設け、スケール31がブラケット33およびベース部36の熱膨張の影響を受けないようにしているが、図5に示すように直動ガイド34をスケール31とベース部36との間に設けても良い。このような配置であっても、スケール31がブラケット33およびベース部36の熱膨張の影響を受けないという効果を得ることができるためである。
【0062】
以上説明したスケール装置により、使用環境の温度変化の影響を抑え、位置決め対象の正確な位置制御が可能である。
【0063】
また、上述の説明では、スケールが取付けられているベース部は、口金やビームを支持する支持部の一部としていたが、必ずしも支持部の一部である必要は無く、この支持部と独立して設けても構わない。
【0064】
また、本発明のスケール装置は、上述のような塗布装置の口金位置制御だけでなく、たとえばXYステージなど、スケールを用いて精密位置決めを行う全ての直動機構に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 塗布装置
2 搬送部
3 塗布部
4 口金昇降部
10 スケール装置
11 スケール
12 読取ヘッド
13 直動ガイド
14 ベース部
15 固定部
15’ 固定部
16 レール
17 スライダ
18 ガイド取付け部
21 口金
22 ビーム
23 モータ
24 ボールねじ
25 直動ガイド
26 支持部
27 定盤
28 端部
30 スケール装置
31 スケール
32 読取ヘッド
33 ブラケット
34 直動ガイド
35 直動ガイド
36 ベース部
37 固定部
37’ 固定部
38 ガイド取付け部
39 固定部
39’ 固定部
40 ガイド取付け部
41 端部
90 塗布部
91 口金
92 ビーム
93 スケール
94 読取ユニット
95 直動ガイド
96 支持部
97 固定部
97’ 固定部
98 固定部
98’ 固定部
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に目盛りが配列されたスケールと、
前記スケールを取付けるベース部と、
前記スケールの目盛りを読み取る読取ヘッドと、
を備えるスケール装置であり、
前記スケールは、目盛りが付された方向である目盛り方向の一端において前記ベース部に固定される固定部と、反対側の端部において直動ガイドを介して前記ベース部に取付けられるガイド取付け部とで前記ベース部に取付けられており、前記直動ガイドが動く方向と前記目盛り方向とが同一であることを特徴とする、スケール装置。
【請求項2】
前記ベース部の片端が搭載部材に固定されている場合、前記目盛り方向に関して、前記固定部は、前記ガイド取付け部よりも前記搭載部材に近いことを特徴とする、請求項1に記載のスケール装置。
【請求項3】
一方向に目盛りが配列されたスケールと、
前記スケールを取付けるブラケットと、
前記ブラケットを取付けるベース部と、
前記スケールの目盛りを読み取る読取ヘッドと、
を備えるスケール装置であり、
前記ブラケットは、前記スケールに目盛りが付された方向である目盛り方向の一端において前記ベース部に固定される第1の固定部と、反対側の端部において第1の直動ガイドを介して前記ベース部に取付けられる第1のガイド取付け部とで前記ベース部に取付けられており、
前記スケールは、前記目盛り方向の一端において前記ブラケットに固定される第2の固定部で前記ブラケットに取付けられ、反対側の端部において第2の直動ガイドを介して前記ブラケットもしくは前記ベース部に取付けられる第2のガイド取付け部で前記ブラケットもしくは前記ベース部に取付けられており、
前記第1の直動ガイドおよび前記第2の直動ガイドが動く方向と前記目盛り方向とが同一であり、
前記目盛り方向に関して、前記第1の固定部と前記第1のガイド取付け部との位置関係と、前記第2の固定部と前記第2のガイド取付け部との位置関係が反対であることを特徴とする、スケール装置。
【請求項4】
前記ベース部の片端が搭載部材に固定されている場合、前記目盛り方向に関して、前記第1の固定部は、前記第1のガイド取付け部よりも前記搭載部材に近いことを特徴とする、請求項3に記載のスケール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68508(P2013−68508A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207121(P2011−207121)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】