説明

スケール防止剤およびスケール防止方法

【課題】紙パルプ製造工程の水系におけるスケールの生成を効率良く防止するスケール防止剤およびスケール防止方法を提供する。
【解決手段】(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを含有し、その重量比が(1):(2)=9:1〜3:7であることを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止剤、及び(1):(2)=9:1〜3:7の重量比で水系に添加することを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙パルプ製造工程の水系におけるスケール防止剤およびスケール防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙パルプ製造工程においては、水の節約、省エネルギーを目的として、水の高度な循環再使用が一般的になっている。そのような工程において、水系に溶解している無機物質は、蓄積、濃縮され、高濃度化する。無機物質が高濃度に溶け込んでいる水に、pH、温度等の変動が加えられることによって、無機化合物の微細結晶が析出する。析出した微細結晶が成長し、また核となって集塊化・巨大化して生成するスケールは、水系を構成する配管を閉塞させたり、器具や装置の壁面等に付着し、円滑な運転を妨げたりする可能性がある。なお、ここで紙パルプ製造工程としては、例えば、蒸解工程、晒工程、古紙パルプ製造工程および抄紙工程、またはそれらに付随する水洗工程が挙げられる。これらの工程に含まれる、器具、装置としては、例えば、蒸解釜、ヒーター、熱交換器、移送ポンプ、晒タワー、ソーキングタワー、パルパー、シックナー(濃縮機)、フィルター、セクター、スクリーン、ワイヤーなどが挙げられる。
【0003】
そこで、スケールの生成を抑制する方法として、例えば、特許文献1では、水系にホスホン酸及び/又はホスホン酸塩と低分子水溶性ポリマーとを含有させることにより、該水系のカルシウムスケールの生成を抑制する方法が提案されており、その実施例では炭酸カルシウムの析出を防止できることが開示されている。一方、本出願人は、(1)エチレン性不飽和カルボン酸及びその無水物、水溶性塩から選ばれる1種以上を構成単位として含む水溶性重合体と、(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上を、(1):(2)=1:9〜6:4(重量比)で添加することを特徴とする古紙脱墨パルプ製造工程における炭酸カルシウムスケール及び炭酸カルシウム主体とした珪酸塩複合スケールを効率良く抑制する方法を提案しており、その実施例では、炭酸カルシウムの析出を防止する方法ではなく、析出した炭酸カルシウム結晶を微細な状態に保つことで、フィルター、スクリーン、ワイヤーなどのスケールによる閉塞を防止できることを開示している(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、炭酸カルシウムの完全な析出抑制は難しく、ごく少量の炭酸カルシウム結晶が析出しただけでも、それを中心核として、さらなる結晶析出を助長し大きな結晶を形成しスケールを生成することがある。また、析出した炭酸カルシウム結晶を微細な状態に保つ方法においても、微細な炭酸カルシウム結晶を含む工程水を循環・再使用するうちに、次第に微細な炭酸カルシウム結晶が配管や器具や装置の壁面等に付着して集塊化し、また微細結晶同士が互いに付着して大きな結晶を形成し、スケールを生成することがある。
【0005】
このように生成したスケールは、網や孔を有する器具の場合は、その網や孔を目詰まらせ、また、配管や、器具および装置の壁面に付着した場合には、配管内の水やパルプなどの流れを妨げたり、器具や装置の円滑な運転を妨げたりすることになるため、更に効果的なスケール防止方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−53389号公報
【特許文献2】特開2002−146689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙パルプ製造工程の水系におけるスケールの生成を効率良く防止するスケール防止剤およびスケール防止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、紙パルプ製造工程の水系におけるスケール障害を防止するため、たとえ微細結晶が析出しても、その結晶の付着を防止することにより、その結果として微細結晶の集塊化・巨大化によるスケールの生成を防止する手段について鋭意検討した結果、ポリイタコン酸とホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを特定の比率で含有するスケール防止剤、及びポリイタコン酸とホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを特定の比率で対象水系に添加するスケール防止方法の適用によって、析出した微細な結晶の付着を防止できることが判明し、その結果として微細結晶の集塊化・巨大化によるスケールの生成を防止できるため、本目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを含有し、その重量比が(1):(2)=9:1〜3:7であることを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止剤である。
【0010】
請求項2の発明は、前記の(1)ポリイタコン酸が、分子量500以上5000未満である請求項1記載のスケール防止剤である。
【0011】
請求項3の発明は、前記の(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩が、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びこれらの水溶性塩から選ばれる1種以上である請求項1又は2のいずれか1項に記載の紙パルプ製造工程のスケール防止剤である。
【0012】
請求項4の発明は、(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを(1):(2)=9:1〜3:7の重量比で水系に添加することを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止方法である。
【0013】
請求項5の発明は、前記の(1)ポリイタコン酸が、分子量500以上5000未満である請求項4記載の紙パルプ製造工程のスケール防止方法である。
【0014】
請求項6の発明は、前記の(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩が、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びこれらの水溶性塩から選ばれる1種以上である請求項4又は5のいずれか1項に記載の紙パルプ製造工程のスケール防止方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスケール防止剤およびスケール防止方法を紙パルプ製造工程の水系に適用することにより、該水系における微細な結晶の付着を防止でき、その結果として微細結晶の集塊化・巨大化によるスケールの生成を防止できるため、スケール障害を効果的に防ぐことができ、紙パルプ製造工程の円滑な稼動を可能性にする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の対象となる水系は、紙パルプ製造工程における水系である。紙パルプ製造工程としては、例えば、蒸解工程、晒工程、古紙パルプ製造工程および抄紙工程、またはそれらに付随する水洗工程が挙げられる。これらの工程を構成する配管、器具および装置は、例えば、蒸解釜、ヒーター、熱交換器、移送ポンプ、晒タワー、ソーキングタワー、パルパー、シックナー、フィルター、セクター、スクリーン、ワイヤーなどが挙げられる。近年の古紙配合率の上昇により、スケール発生傾向が高まっているため、特に古紙脱墨工程においては、本発明の効果を発揮しやすい。
【0017】
本発明が対象とするスケールには、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどのカルシウム化合物のスケール、あるいは、カルシウム化合物を主な成分とする複合したスケールが挙げられる。
【0018】
本発明で使用されるポリイタコン酸は、大津隆行、竹本喜一共著の「ビニル重合実験法」(共立出版)(1960)の137〜175頁や特許第3884090号などに記載の通常の重合性エチレン性化合物のラジカル重合方法に準じて製造できる。例えば、イタコン酸を10〜40重量%含む水溶液を50〜80℃に加温し、ラジカル重合開始剤を全イタコン酸重量に対して0.05〜0.5重量%添加して重合させる方法が挙げられる。イタコン酸の代わりにイタコン酸のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩やカリウム塩を用いても良い。ラジカル重合開始剤としては、一般にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾビス化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、クメンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルヒドロパーオキサイド等の過酸化物が使用される。また、必要に応じて連鎖移動剤として、チオグリコール酸およびそのエステル類、β−メルカプトプロピオン酸およびそのエステル類等を添加して、分子量を調整しても良い。得られた重合体の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。尚、通常の重合反応では数%程度の未反応のモノマーが残留することが一般的であり、上記のラジカル重合反応によって得られる本発明で用いるポリイタコン酸も例外ではない。該ポリイタコン酸においてはイタコン酸である未反応のモノマーは、本発明の効果を阻害することも促進することも無いので、該ポリイタコン酸の有効成分は、残留未反応モノマー分だけ少なく見積もって扱えばよい。
【0019】
本発明で使用されるポリイタコン酸の平均分子量は、特に限定は無いが、500以上5000未満の範囲である場合に優れた効果を示し、好ましくは、1000以上4000以下の範囲である。さらに好ましくは、1000以上3000以下の範囲である。分子量が500未満では、モノマーとしてのイタコン酸の性質に近くなり、分子量5000以上では分子鎖の絡まりが生じて、スケール防止効果が十分でなくなる場合がある。
【0020】
本発明で使用されるホスホン酸類及びその水溶性塩としては、ホスホン基を有する有機ホスホン酸およびその水溶性塩が挙げられ、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DETPMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(HMDTMP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、およびこれらの水溶性塩が挙げられ、その水溶性塩はナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩である。これらのうち、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。また、通常、これらの化合物は水溶液の形態で市販されている。
【0021】
本発明のスケール防止剤は(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを含有し、その重量比が(1):(2)=9:1〜3:7であることを特徴とし、また、本発明のスケール防止方法は(1):(2)=9:1〜3:7の重量比で対象水系に添加することを特徴としている。(1)成分と(2)成分はそれぞれ単独で使用してもそれなりのスケール抑制効果が認められるが、(1)成分と(2)成分の併用によって、特に微細な結晶の付着を防止する相乗的な効果が発現される。その効果を得るための好ましい重量比は(1):(2)=9:1〜3:7であり、特に好ましくは(1):(2)=6:4〜4:6である。
【0022】
本発明のスケール防止剤は、(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを混合することによって調製できる。(1)成分と(2)成分は通常、水溶液の形態で供給され、(1)成分と(2)成分の水溶液を常温で均一に混合するが、取扱い上の必要に応じて水を加えることもできる。(1)成分と(2)成分、あるいは(1)成分と(2)成分と水の混合順序は特に制限がなく、どのような順序であっても良い。
【0023】
本発明のスケール防止方法では、(1)成分と(2)成分を一液としたスケール防止剤を対象水系に添加しても良く、また、(1)成分と(2)成分を別個に対象水系に添加しても良く、別個添加の場合の(1)成分と(2)成分の添加順序には特に制限はない。スケール防止剤、あるいは、(1)成分、(2)成分の添加にあたっては、取扱い上の必要に応じて水で希釈して用いても良い。
【0024】
本発明の(1)成分と(2)成分の添加量は、スケールの発生程度、装置の運転状況などによって異なり一律に決められないが、通常、(1)成分と(2)成分の合計量として、対象水系の工程水量に対し0.1〜200mg/L、好ましくは1〜100mg/Lである。
【0025】
(1)成分と(2)成分の添加場所は、特に限定されるものではないが、スケールが生じている箇所や工程に直接添加してもよく、あるいはその場所より上流部の工程水及び/又はパルプスラリーに添加しても良い。添加は、ポンプで連続添加あるいは間欠添加する。
【0026】
本発明の適用に際して、他の重合物、界面活性剤、キレート剤、歩留まり剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、防食剤、消泡剤等を同時に添加されることがあるが、本発明の効果を妨げない限りにおいて、これらの添加に制約を与えるものではない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
[重合体1の製造]
500mLの4つ口セパラブルフラスコに、イタコン酸60g、水270gを加え、撹拌下、冷却しながら20%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えて、pHを7とした。フラスコ内に窒素ガスを通気しながら、溶液を60℃に加温、維持しながら、撹拌下、過硫酸ナトリウム0.5gを投入し、反応を開始させた。3時間反応を継続した後、80℃に加温して、さらに2時間維持し、冷却してポリイタコン酸(重合体1)の水溶液を得た。高速液体クロマトグラフィーにより、残存単量体濃度を測定した結果、未反応の単量体は0.1%重量%未満であり、反応率は実質100%であることを確認した。また、ゲル浸透クロマトグラフィーの結果、平均分子量は12,000であった。
【0029】
[重合体2〜10の製造]
分子量を調整するために適量の連鎖移動剤を加えた以外は、重合体1と同様の製造方法により重合体2〜10の水溶液を得た。
【0030】
[重合体11の製造]
500mLの5つ口フラスコにアクリル酸22g(0.30モル)、水300gを加え、攪拌下、冷却しながら20%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、pHを7に調整した。フラスコ内に窒素ガスを通気しつつ、溶液を50℃に加温、維持しながら、攪拌下、過硫酸アンモニウム0.5gを投入し、反応を開始させた。6時間反応を続けた後、70℃に加温してさらに2時間維持し、冷却してポリアクリル酸(重合体11)の水溶液を得た。イオンクロマトグラフィーにより残存単量体濃度を測定した結果、未反応の単量体は0.1重量%未満で反応率は実質100%であることを確認した。また、ゲル浸透クロマトグラフィーの結果、平均分子量は12,000であった。
【0031】
[重合体12〜16の製造]
適量の連鎖移動剤を加え、及び/又は、モノマーの組成を代えた以外は重合体11と同様の製造方法により重合体12〜16の水溶液を得た。
【0032】
重合体1〜16の組成を表1に示した。
【表1】

【0033】
[実施例に用いたホスホン酸類]
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
PBTC:2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸
ATMP:アミノトリメチレンホスホン酸
HMDTMP:ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸
DETPMP:ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸
【0034】
[スケール防止剤−1の調製]
上記の方法で製造した重合体8(ポリイタコン酸)の11.5重量%水溶液を84gと、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)の60重量%水溶液を16gとを混合して、スケール防止剤−1を調製した。ポリイタコン酸:HEDP=1:1の配合である。
【0035】
[付着防止試験方法]
1Lビーカーに、300mg/L炭酸ナトリウム水溶液を800mL入れ、50℃に加温した後、表2に示した薬剤、すなわち重合体とホスホン酸類の組合せ、又はスケール防止剤を、重合体とホスホン酸類の有効成分の合計として1mg添加して撹拌混合し、5cm角に切断した60メッシュの金網を入れた。撹拌を継続した状態で、0.28%塩化カルシウム水溶液を1mL/分の速さで滴下していき、微細な炭酸カルシウム結晶を析出させた。200分間で塩化カルシウム水溶液を200mL投入した時点で滴下を中止し、更にそのまま40分撹拌を継続した。その後、金網を取り出し、乾燥させ、付着した炭酸カルシウムスケールの重量を測定し、スケール付着防止率を次式より算出した。
スケール付着防止率(%)={(A−B)/A}×100
A:薬剤無添加時の付着量(mg)
B:薬剤添加時の付着量(mg)
このスケール付着防止率は、添加した薬剤による、微細な炭酸カルシウム結晶の金網への付着を防止する効果を表している。スケール付着防止率の結果を表2に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例1〜10と比較例1〜6の結果から、ポリイタコン酸とHEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸)を併用した本発明のスケール防止方法では効果的なスケール付着防止が可能であることが判った。また、実施例17〜20の結果から、ポリイタコン酸にHEDP以外のホスホン酸類を併用した場合でも本発明の優れたスケール付着防止効果が得られることが判った。一方、実施例7、実施例11〜15の結果と、比較例7〜12の結果を比較すると、ポリイタコン酸とホスホン酸類の重量比が(1):(2)=9:1〜3:7である場合に相乗的なスケール付着防止効果が得られ、それ以外の比率、あるいは単独使用、もしくはホスホン酸類以外のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)の併用の場合のスケール付着防止効果は低いことが判った。また、実施例8と実施例16の結果から、ポリイタコン酸とホスホン酸類を別個に添加した場合と、予め両者を混合したスケール防止剤として添加した場合ではスケール付着防止効果に差がないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、紙パルプ製造工程の水系におけるスケール付着防止に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを含有し、その重量比が(1):(2)=9:1〜3:7であることを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止剤。
【請求項2】
前記の(1)ポリイタコン酸が、分子量500以上5000未満である請求項1記載の紙パルプ製造工程のスケール防止剤。
【請求項3】
前記の(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩が、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びこれらの水溶性塩から選ばれる1種以上である請求項1又は2のいずれか1項に記載の紙パルプ製造工程のスケール防止剤。
【請求項4】
(1)ポリイタコン酸と(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩の1種以上とを(1):(2)=9:1〜3:7の重量比で水系に添加することを特徴とする紙パルプ製造工程のスケール防止方法。
【請求項5】
前記の(1)ポリイタコン酸が、分子量500以上5000未満である請求項4記載の紙パルプ製造工程のスケール防止方法。
【請求項6】
前記の(2)ホスホン酸類及びその水溶性塩が、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びこれらの水溶性塩から選ばれる1種以上である請求項4又は5のいずれか1項に記載の紙パルプ製造工程のスケール防止方法。