説明

スズめっき液、そのスズめっき液を用いたスズめっき方法及びスズめっき液調整方法

【課題】長期保管してもスラッジの生成を起こしにくく溶液寿命が飛躍的に長いスズめっき液の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題を達成するため、電解法でスズめっきを行うためのスズめっき液であって、スズイオン供給源であるスズ塩をスズ換算で5g/L〜30g/L含有し、このスズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含むことを特徴とするもの等を採用する。そして、このスズめっき液の調整方法は、中性からアルカリ性の溶液中にメタンスルホン酸スズを添加し、スズキレート錯体を形成させる点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、スズめっき液、そのスズめっき液を用いためっき方法及びそのスズめっき液を用いてスズめっき層を形成したチップ部品に関する。特に、従来のスズめっき液に見られたスラッジの発生しないスズめっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スズめっき液は、電子部品材料の分野で端子めっき、酸化腐食防止めっきとして広く使用されてきた。近年は、鉛フリー半田に対する要求から、半田の代替えとして使用されることも行われている。
【0003】
スズめっき液を使用する技術分野の中でも、チップ部品である積層セラミックコンデンサの分野では、当該積層セラミックコンデンサの外部電極の表面にスズめっき層を形成することが一般化している。当該積層セラミックコンデンサの外部電極のスズめっき層は、半田濡れ性に優れ、半田リフロー等の表面実装プロセスを経て、プリント配線板に表面実装する際に有用なものとして機能する。
【0004】
ところが、当業者間の周知の事実として、従来からスズめっき液には酸化スズの沈殿(以上及び以下において、単に「スラッジ」と称する。)が発生し、長期安定性に欠けるという欠点が存在した。従って、スズめっき液は、建浴後に直ちに使用する必要があった。しかも、長期保存性に欠けるスズめっき液は、めっき操業の途中に於いても刻々と、その組成変動を起こし、めっき液性状が変化しているため、得られるめっき被膜の品質を安定化させることが困難で、めっき液としての品質保証が極めて困難であった。最も短命なスズめっき液は、建浴直後にスラッジの発生が認められ、スズめっき液が白濁するという現象が発生していた。
【0005】
従来から、特許文献1に開示されているような組成を持つスズめっき液が存在するが、めっき液としての溶液寿命が短く、浴管理が困難で管理コストが増大する欠点があった。また、特許文献2で用いられているようなスズめっき液も存在する。そして、これらの特許文献に開示の製造方法を基に実験的に調整したスズめっき液は、室温レベルの環境下で、平均的に24時間が経過すると、ほぼ確実にスラッジの発生が認められる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−245694号公報
【特許文献2】特開平2−170996号公報
【特許文献3】特開2001−110666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したスズめっき層には、共通した欠点として、そのスズめっき層に対する半田濡れ性が劣るため半田の弾き現象(Dewetting)が一般的に見られる。また、スラッジの発生した状態でのスズめっき液を使用していると、スズめっき層の均一な被膜形成が困難となる。更に、スラッジの発生したスズめっき液をめっき装置で使用し続けると、各種配管の目詰まりを生じ、装置のメンテナンスが煩雑化する。
【0008】
従来から、当業者間において、スズめっき液のスラッジの発生を無くすため種々の方法が検討されてきた。その結果、上記特許文献3に開示のような、多量にアンモニア成分を用いるような手法以外では、有効な解決手法を見いだせず、スズめっき液の持つ特徴として認識し、半ば諦められてきた問題でもあった。
【0009】
そして、多量にアンモニア成分を用いたスズめっき液の欠点は、そのアンモニアにより生ずる臭気が問題であり、作業環境を直接悪化させると同時に、めっき槽近傍にある銅製品、銅製部品の腐食を促進する等の不具合があり、めっき槽のミスト換気を強化するための設備投資を要する等して、積極的使用が困難なものであった。
【0010】
これらのことから、建浴後の溶液寿命が長く、長期保存性に優れ、長期間のめっき操業の中で品質変化のないスズめっき液を市場に供給出来れば、社会に受ける技術的恩恵は計り知れないものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に述べるスズめっき液に想到した。
【0012】
スズめっき液: 本件発明に係るスズめっき液は、電解法でスズめっきを行うためのスズめっき液であって、スズイオン供給源であるスズ塩をスズ換算で5g/L〜30g/L含有し、このスズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含み、スラッジが7日以上発生しないことを特徴とするものである。
【0013】
そして、本件発明に係るスズめっき液に用いる前記スズ塩は、水に対して可溶性の第1スズ塩から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0014】
本件発明に係るスズめっき液において、前記キレート剤は、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を30g/L〜300g/L濃度となるよう含むことが好ましい。
【0015】
本件発明に係るスズめっき液において、前記pH調整剤は、アルカリ性pH調整剤であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水から選ばれる1種又は2種以上を5g/L〜140g/L濃度となるように含ませることが好ましい。
【0016】
本件発明に係るスズめっき液において、前記pH調整剤は、酸性pH調整剤であって、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、イセチオン酸から選ばれる1種又は2種以上を10g/L〜300g/L含ませることが好ましい。
【0017】
本件発明に係るスズめっき液において、酸化防止剤を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。
【0018】
本件発明に係るスズめっき液のpHを酸性側に微調整するためのpH調整剤であって、必要に応じてメタンスルホン酸、硫酸の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とすることが好ましい。
【0019】
本件発明に係るスズめっき液のpHをアルカリ性側に微調整するためのpH調整剤であって、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とすることが好ましい。
【0020】
本件発明に係るスズめっき液において、導電塩の添加を必要とする場合は、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上を1g/L〜150g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。
【0021】
本件発明に係るスズめっき液において、光沢剤としてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。
【0022】
スズめっき方法: 本件発明に係るスズめっき液を用いたスズめっき方法として、浴温10℃〜40℃の条件で電解することが好ましい。
【0023】
スズめっき液の調整方法: 本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、以下のA)及びB)の手順により調整されることを特徴としたスズめっき液調整方法を採用する事が好ましい。
【0024】
A)水とpH調整剤とキレート剤とを混合し、pH値が6〜12の予備混合溶液とする。
B)前記予備調整液にスズ塩を、添加してスズ含有量を5g/L〜30g/L濃度となるよう添加し十分に攪拌し、スズキレート錯体を形成させスズめっき液とする。
【0025】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法において、上記方法で調整したスズめっき液に酸化防止剤を添加する工程を付加することが好ましい。
【0026】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法において、上記方法で調整したスズめっき液に、更に導電塩を添加する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【0027】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、上記方法で調整したスズめっき液に、光沢剤を添加する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【0028】
チップ部品: 以上に述べた本件発明に係るスズめっき液は、電子部品の中でもスズめっきの多用される積層セラミックコンデンサ等のチップ部品のスズめっき層の形成に好適である。
【発明の効果】
【0029】
本件発明に係るスズめっき液は、アンモニア成分を多量に含まなくとも、スズ酸化物の沈殿が起きにくく、建浴後の溶液寿命が長くなり、めっき液としての管理も容易となる。しかも、このスズめっき液は、中性領域として使用出来るため、電子部品におけるセラミック、電極等への損傷を与えない。
【0030】
そして、本件発明に係るスズめっき液を用いてのスズめっきは、30℃を超える浴温での使用が可能であり、適度な液蒸発があるため、廃液量の顕著な増加を引き起こさないため廃液処理の負荷が軽減出来る。
【0031】
また、本件発明に係るスズめっき液の調整方法は、特殊な装置及び手法を必要とするものではなく、pH調整剤とキレート剤とを混合し、ここに導電塩としてのメタンスルホン酸を添加し混合攪拌し、中性〜アルカリ性の予備混合溶液を予め調製し、ここにメタンスルホン酸スズを添加することで、中性〜アルカリ性領域でスズキレート錯体を効率よく形成するため、酸化スズの沈殿の起こらない溶液寿命の長いスズめっき液を得ることが出来る。
【0032】
更に、本件発明に係るスズめっき液及びスズめっき方法を用いることで、長時間のめっき操業の中で、積層セラミックコンデンサ等のチップ部品の表面へ膜厚均一性に優れ、且つ安定した品質のスズめっき層の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本件発明に係る実施の形態に関して、スズめっき液、スズめっき方法、スズめっき液の調整方法、チップ部品の順に説明する。
【0034】
スズめっき液の実施形態: 本件発明に係るスズめっき液は、上述のようにスズイオン供給源であるスズ塩をスズ換算で5g/L〜30g/L含有し、このスズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含み、スラッジが7日以上発生しないことを特徴とするものである。従来の市場に供給されているスズめっき液の内、多量のアンモニアを使用したスズめっき液以外は、建浴後5日以内にはスラッジが発生し、スズめっき浴の性状を変化させ、スラッジの発生した状態でスズめっきを継続すると、スズめっき層としての品質劣化を引き起こす。従って、短期間でのスズめっき液の更新作業が求められ、コストの上昇、スズめっきの安定操業の観点から大きな問題となる。これに対し、本件発明に係るスズめっき液は、以下のスズめっき液の調整方法の中で詳説するが、スズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含むことで、中性領域〜アルカリ性領域(pH6〜pH12)の領域でキレート化を行うことで、スズイオンの殆どをスズ錯体キレートとして含有したものとなる。従って、スズめっき液中で、スズがスズ錯体キレートとして安定であるため、以下に述べる構成成分のいかなる組み合わせを行っても、従来のスズめっき液では達成出来なかった、10℃〜40℃の温度領域でもスラッジが7日以上発生しない。後述する実施例では、最も溶液安定性に優れ、40℃の温度で365日経過しても、スラッジ発生のないスズめっき液を開示している。
【0035】
ここで用いるスズめっき液のスズイオン供給源であるスズ塩とは、水に対して可溶性の第1スズ塩である(以下、単に「スズ塩」と称する。)。そして、当該スズ塩の中でも、メタンスルホン酸スズ、硫酸スズ、スルファミン酸スズ、ピロリン酸スズから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。そして、本件発明に係るスズめっき液中のスズ塩の含有量は、スズ換算で5g/L〜30g/L含有させることが好ましい。スズ塩含有量がスズ換算で5g/L未満の場合には、電流効率が下がりめっき速度が工業的に要求される生産性を満足しなくなると同時にスズめっき層の平滑性、膜厚均一性が損なわれる。一方、スズ塩の含有量がスズ換算で30g/Lを超える場合には、めっき液中のスズ量が多くなり、スズの電着速度が速すぎてめっき層の膜厚制御が困難となると共に、スズの酸化物の沈殿生成を回避出来なくなる。そして、本件発明に係るスズめっき液中のスズ塩の含有量は、スズ換算で10g/L〜20g/L含有させることがより好ましい。工業生産的に見て、スズめっきを行う際のめっき条件に一定のレベルでの変動が有るのが通常であり、めっき条件の管理し得ない不可避的変動を考えると、より安定した品質のスズめっき層を形成出来るからである。
【0036】
次に、前記キレート剤は、スズめっき液中でスズ塩から供給されたスズイオンをキレート錯体として安定化させるものである。本件発明に言うキレート剤は、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を30g/L〜300g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。ここに記載したキレート剤が、スズイオン供給源であるスズ塩から溶液中に電離したスズイオンと効率よくキレート錯体を形成するからである。中でも、グルコン酸ナトリウム又はクエン酸を用いることで、最も安定したスズキレート錯体を形成し、酸化スズの沈殿防止効果が最も顕著で、溶液寿命の最も長いスズめっき液を得ることが出来る。ここで、スズめっき液中のキレート剤の濃度は、本来、キレート剤の種類、めっき液中のスズ量に応じて定められるものである。しかしながら、上述のいずれのキレート錯体を用いても、キレート剤濃度は、100g/L〜200g/Lの範囲に適正量が存在するため、一般化した標記を採用している。そして、2種以上のキレート剤を併用する場合には、2種以上のキレート剤のトータル濃度が100g/L〜200g/L濃度の範囲となればよい。キレート剤濃度が100g/L未満の場合には、上記めっき液中のスズ量を前提として、めっき液中のスズイオンの全てとのキレート錯体形成が困難となり、遊離したスズイオンが存在するため、酸化スズ沈殿の生成を防止出来ない。一方、キレート剤濃度が200g/Lを超えるものとしても、上記めっき液中のスズイオンとのキレート錯体の形成には過剰な量となり、資源の無駄遣いとなる。
【0037】
そして、前記pH調整剤とは、スズめっき液中でスズ塩から供給されたスズイオンとキレート剤とが反応してスズキレート錯体を形成するのに適するよう、溶液を中性からアルカリ性の領域になるように用い、一旦生成したスズキレート錯体の安定化を図るためと、最終的に本件発明に係るスズめっき液がスズめっきを行うのに適したpHとする為に用いる二つの意味合いを含んだものである。そこで、説明の都合上、前者を単なる「pH調整剤」と称し、後者を「微調整用pH調整剤」と称する。この「pH調整剤」と「微調整用pH調整剤」とは、同時に添加するものではない。そして、pH調整剤には、アルカリ性pH調整剤と酸性pH調整剤とがある。これらのpH調整剤の使用方法等に関しては、後述の調整方法の中で詳述する。ここでは、pH調整剤の種類及び機能に関してのみ述べる。
【0038】
本件発明に言うアルカリ性pH調整剤とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水から選ばれる1種又は2種以上を用いる。これらをアルカリ性pH調整剤として選択したのはスズめっきを行う際のめっき液性状に影響を与えず、良好なスズめっき層の形成が出来るからである。これらのアルカリ性pH調整剤は、キレート剤とスズイオンとのキレート化が容易となるよう、キレート剤の開環を促進するものであり、より具体的にはアルカリ性pH調整剤を5g/L〜140g/L濃度となるように含ませる。アルカリ性pH調整剤を5g/L未満の場合には、キレート剤の開環を促進出来ない。一方、アルカリ性pH調整剤を140g/Lを超える量添加しても、キレート剤の開環効率は向上せず、上記スズ塩量の範囲を考慮すると過剰添加となる。そして、より好ましくは、アルカリ性pH調整剤を30g/L〜70g/L濃度となるように含ませる。この範囲において、事後的に添加するスズ塩との安定したスズイオンのキレート化が可能で、以下の述べる酸性pH調整剤によるpH調整も容易となる。
【0039】
そして、アルカリ性pH調整剤と併用する酸性pH調整剤は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、イセチオン酸から選ばれる1種又は2種以上を10g/L〜300g/L含ませる。これらを酸性pH調整剤として選択したのはスズめっきを行う際のめっき液性状に影響を与えず、良好なスズめっき層の形成が出来るからである。そして、この酸性pH調整剤は、アルカリ性pH調整剤で一旦アルカリ領域にした調整途中のめっき液のpH値を6〜12の範囲として、中性領域から弱アルカリ領域でスズキレートを生成し、安定化させるために用いるものである。酸性pH調整剤を300g/L以上添加し、調整途中のめっき液のpH6未満となると、スズイオンキレートを安定化させることが出来ず、最終的なスズめっき液に早期にスラッジ発生が認められる。一方、酸性pH調整剤を10g/L未満の添加量とすると、調整途中のめっき液のpH12以上の強アルカリ領域となり、事後的なスズめっき液の微調整が困難で、セラミックとの浸食の容易なスズめっき液となる。
【0040】
次に、微調整用pH調整剤には、本件発明に係るスズめっき液のpHを酸性側に微調整するためのpH調整剤(以下、「微調整用酸性pH調整剤」と称する。)と、本件発明に係るスズめっき液のpHをアルカリ性側に微調整するためのpH調整剤(以下、「微調整用アルカリ性pH調整剤」と称する。)とがある。これらの微調整用pH調整剤は、必要に応じて添加するものであり、スズめっき液としての最終的なpH調整に用いるものである。従って、添加のタイミングとしては、スズキレートを生成し、安定化した後のいずれかの段階で用いるものである。
【0041】
そして、微調整用酸性pH調整剤としては、メタンスルホン酸、硫酸の1種又は2種を添加し、めっき液pH値を4〜10の範囲、より好ましくはpH値が6〜8の範囲とすることが好ましい。また、微調整用アルカリ性pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は2種を添加し、めっき液pH値を4〜10の範囲、より好ましくはpH値が6〜8の範囲とすることが好ましい。スズめっき液のpH値が4未満の強酸性領域になると、スズめっきを施す積層セラミックコンデンサ等のチップ部品に使用されたセラミック部分を侵食する可能性が高くなる。そして、スズめっき液のpH値が10を超える強アルカリ性領域になると、やはりセラミック部分を浸食する場合もある。そして、同時に生成したスズキレート錯体の安定性が損なわれ、スズの固定化が出来ずスズイオンとなり、酸化スズの沈殿生成が起こるためスズめっき液としての溶液寿命が短命化するのである。従って、より好ましくとして明記した範囲は、スズめっき液によるセラミック浸食を確実に防止して、スズめっき液の長寿命化を確実にするため中性領域に近づけたものである。
【0042】
そして、本件発明に係るスズめっき液に酸化防止剤を含ませることが、スズめっき液としての長寿命化を図る観点から好ましい。大気とめっき液との接触による自然酸化を防止して、スズ酸化物の沈殿発生を効率良く防止するためである。ここで酸化防止剤を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。そして、酸化防止剤の中でも、カテコール、ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、フェニレンジアミンから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。酸化防止剤濃度が0.1g/L未満の場合には十分な酸化防止効果が得られない。そして、酸化防止剤濃度を30g/Lを超えて添加しても、それ以上に酸化防止効果を得ることが出来ず、スズめっき液の長寿命化は期待出来ない。しかも、酸化防止剤を過剰に加えることで、スズめっき液としての品質変化が起こるため好ましくない。従って、より好ましくは、上記酸化防止剤の濃度は、1g/L〜10g/L濃度の範囲として用いる。確実な酸化防止効果を得ることが可能で、酸化防止剤の過剰添加によるスズめっき液としての品質変化を確実に防止出来るからである。
【0043】
本件発明に係るスズめっき液において、以上に述べてきた組成でも導電塩の添加を特に行うことなく電解することが可能である。しかしながら、スズめっき液を電解する際の通電状態を更に安定化させ、スズ析出の電流効率を高くし、生産性を高める必要のある場合には、導電塩を追加添加することが好ましい。導電塩の添加を必要とする場合は、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上を1g/L〜150g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。ここで、導電塩として硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムを用いたのは、これらが最もスズめっき液の品質変化が小さく、スズめっき層への不純物残留もないからである。この導電塩の添加量が1g/L未満の場合には、電解を行ったときの通電安定性を向上させる効果は得られない。そして、この導電塩の添加量が150g/Lを超えるものとしても、電解時の通電安定性はそれ以上に向上しないため、資源の無駄遣いとなる。
【0044】
更に、本件発明に係るスズめっき液において、光沢剤としてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含ませることも好ましい。この光沢剤は、スズめっき液を電解して得られるスズめっき層を平滑にし、膜厚均一性の向上に寄与するものである。
【0045】
ここで言う光沢剤をより具体的に言えば、ノニオン(非イオン)界面活性剤とは、水中でイオン化しない親水基を持っている界面活性剤であるため、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、他の全ての界面活性剤との併用が可能なものである。ノニオン界面活性剤はその構造により、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型及びその他に分類されるが、本件発明に係るスズめっき液には、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、アミン、アルキレンジアミン、脂肪酸アミド、スルホンアミド、多価アルコール、グルコキシドのポリオキシアルキレン付加物のいずれか1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0046】
そして、カチオン(陽イオン)界面活性剤とは、水中で疎水基のついている部分が陽イオンに電離する性質の界面活性剤であり、そのため一般的に負に帯電している固体表面に強く吸着する性質を備える。本件発明に係るスズめっき液において用いることの出来るカチオン(陽イオン)界面活性剤を具体的に言えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチル−エチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルアンモニウムベタイン、ステアリルジメチルアンモニウムベタイン、ジメチル−ベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルビリジニウム塩、ラウリルビリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ラウリルイミダゾリニウム塩、オレイルイミダゾリニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートのいずれか1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0047】
更に、両性界面活性剤とは、水に溶けたとき、アルカリ性領域では陰イオン界面活性剤の性質を、酸性領域では陽イオン界面活性剤の性質を示す界面活性剤である。本件発明に係るスズめっき液において用いることの出来る両性界面活性剤を具体的に言えば、アルキルカルボキシベタイン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルイミダゾリン型から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0048】
上記光沢剤としての界面活性剤の中でも、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのいずれかを用いることが最も好ましい。これらの界面活性剤は、スズめっき液中での安定性に優れスズめっき液としての溶液寿命の向上効果が高く、しかも形成するめっき被膜の膜厚均一性を得る効果も高いからである。
【0049】
そして、スズめっき液に光沢剤として上記界面活性剤を含ませる場合の濃度が0.1g/L未満の場合には、スズめっき層を平滑にし、膜厚均一性の向上させる効果を得ることが出来ない。一方、光沢剤濃度が30g/Lを超えるものとしても、スズめっき層の平滑化効果及び膜厚均一性向上の効果とも、それ以上に向上しない。
【0050】
スズめっき方法の実施形態: 本件発明に係るスズめっき液を用いたスズめっき方法は、浴温10℃〜40℃の条件で電解することが好ましい。このめっき方法で特徴的なことは、浴温10℃〜40℃の範囲でのめっき操業が可能な点にある。浴温が10℃未満の場合には、内蔵歪みが高く、粗いスズめっき結晶が析出し、平滑で膜厚均一性に優れたスズめっき層を得にくくなる。一方、浴温が40℃を超えるものとした場合には、めっき液水分の蒸発気散が顕著になり、スズめっき液の組成変動が激しく、溶液寿命も短くなる。
【0051】
従来のスズめっき液は、めっき液としての溶液安定性に欠け、溶液寿命が短いため、室温程度の浴温でめっき操業を行わざるを得なかった。これに対して、本件発明に係るスズめっき液を用いることで、浴温が30℃を超える高温域でのスズめっき操業が可能となる。この浴温が30℃〜40℃でのめっき操業を行うことにより、スズめっき液としての品質を劣化させることのない範囲で、適度なめっき液水分の蒸発気散が起こり、めっき廃液量を減少させ、廃水処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0052】
そして、このときの電流密度は、0.05A/dm〜0.5A/dmの範囲を採用することが好ましい。当該電流密度が0.05A/dm未満の場合には、スズの析出速度が当然に遅く、工業的生産性を満足しない。これに対し、0.5A/dmを超える電流密度を採用すると、スズめっき被膜の平滑性が損なわれる。
【0053】
スズめっき液の調整方法の実施形態: 本件発明に係るスズめっき液の調整方法は、以下のA及びBの手順により調整されることを特徴としたものである。このスズめっき液調整方法は、キレート剤を含んだ中性からアルカリ性領域の水溶液中にスズ塩を添加し、スズキレート錯体を形成させる点に特徴を有する。
【0054】
A)の工程では、水とpH調整剤とキレート剤とを混合し、pH値が6〜12の予備混合溶液とする。ここで言う「pH調整剤」、「キレート剤」の種類及び含有量に関しては、上述したので重複した記載を避けるために、ここでの説明は省略する。従って、調整手順に関して主に説明する。
【0055】
即ち、イオン交換水、純水等の純度の所定量の水に、pH調整剤とキレート剤とを投入し、十分に攪拌し混合する。このときのpH調整剤とキレート剤との投入順序に関して特に厳密な制限はない。しかし、水酸化ナトリウム粒を用いるときには、溶解に一定に時間のかかる水酸化ナトリウム粒を先に溶解させ、その後キレート剤を添加するのが一般的である。ここで言うpH調整剤は、上述のようにアルカリ性pH調整剤と酸性pH調整剤とがある。従って、これらの添加順序等に関して特に制限はないが、アルカリ性pH調整剤、酸性pH調整剤の順で添加する事が好ましい。アルカリ性pH調整剤は、キレート剤とスズイオンとのキレート化が容易となるよう、キレート剤の開環を促進するものである。従って、キレート剤の開環を行った後に、酸性pH調整剤で一旦アルカリ領域にした調整途中のめっき液のpH値を6〜12の範囲として、中性領域から弱アルカリ領域でスズキレートを生成し、安定化させることが好ましいからである。
【0056】
B)の工程では、前記予備調整液にスズ塩を、添加してスズ含有量を5g/L〜30g/L濃度となるよう添加し十分に攪拌し、スズキレート錯体を形成させスズめっき液とする。このとき前記予備混合溶液に、スズ換算で10g/L〜30g/L濃度となるように、スズ塩を添加して、十分に攪拌混合することにより、基本的構成をもつ本件発明に係るスズめっき液の調整が完了する。以上に述べてきた、スズめっき液の調整工程は、室温で行うことを前提としている。その後、以下のような工程を付加的に設けることも望ましい。
【0057】
以上のようにして調整したスズめっき液に、酸化防止剤を添加する工程を付加することも好ましい。酸化防止剤に関しては上述のとおりであり、スズめっき液中での酸化防止剤濃度が0.1g/L〜30g/L濃度となるよう添加する。添加の手法に関しては特に限定はない。
【0058】
また、上述の工程により得られたスズめっき液のpH値が適正な範囲から逸脱する場合には、上述の微調整用酸性pH調整剤を用いて、めっき液pH値を4〜10の範囲、より好ましくはpH値が6〜8の範囲とするpH微調整工程を設けることが好ましい。ここで言う微調整用酸性pH調整剤には、上述の微調整用アルカリ性pH調整剤と微調整用酸性pH調整剤とが含まれる。
【0059】
本件発明に係るスズめっき液において、スズめっき液を電解する際の通電状態を更に安定化させ、スズ析出の電流効率を高くし、生産性を高める必要のある場合には、事後的に導電塩を追加添加する工程を設けることが好ましい。このときの導電塩には、上述の硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上を1g/L〜150g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。
【0060】
更に、本件発明に係るスズめっき液において、スズめっき液を電解して得られるスズめっき層を平滑にし、膜厚均一性の向上を図るため、事後的な光沢剤の添加工程を設けることも好ましい。ここで言う光沢剤は、上述のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含ませることが好ましい。
【0061】
チップ部品の実施形態: 以上に述べた本件発明に係るスズめっき液は、電子部品の中でもスズめっきの多用されるチップ型積層セラミックコンデンサ、チップ型セラミックコイル、チップ型セラミックサーミスタ、インダクタ、バリスタ、抵抗器等のチップ部品のスズめっき層の形成に好適である。
【実施例1】
【0062】
この実施例では、以下のI工程〜V工程を経て、スズめっき液を調整した。
【0063】
I工程: イオン交換水に、キレート剤としてのグルコン酸ナトリウムを添加し、アルカリ性pH調整剤としての粒状の水酸化ナトリウムを溶解させた。そして、更に、酸性pH調整剤として70wt%濃度のメタンスルホン酸を添加し、pH12の予備混合液を得た。
【0064】
II工程: 前記予備混合溶液に、メタンスルホン酸スズを添加し、キレート化反応を行わせスズキレート錯体を形成させ、基本的組成を持つスズめっき液とした。
【0065】
III工程: この工程では、最終的なスズめっき液pHが4.0となるように、微調整用pH調整剤の内、微調整用アルカリ性pH調整剤として水酸化ナトリウムを添加した。
【0066】
IV工程: 当該スズめっき液に、酸化防止剤としてのアスコルビン酸を添加して、混合攪拌した。
【0067】
V工程: その後、光沢剤としてラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを添加して混合攪拌した。その結果、以下に示す組成のスズめっき液を得た。
【0068】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン: 1g/L
pH : 4.0
【0069】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。なお、上記スズめっき液は、水酸化ナトリウムを添加してpH値を10としても、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0070】
(スズめっき層の観察)
上記スズめっき液を用いて、2012サイズ(2mm×1.2mm)の積層セラミックコンデンサにおける銅製外部電極の表面に2μm厚さのニッケル層を設け、そのニッケル層の表面に、電流密度0.1A/dm、浴温30℃の条件で電解して、5μm厚さのスズめっき層を形成し、試験用サンプルとした。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図1である。比較例と対比すると明らかであるが、異常析出が見られず、均一な表面被覆が出来ている。
【0071】
(半田濡れ性評価)
積層セラミックコンデンサの外部電極等の表面に形成したスズめっき層の場合、これらチップ部品が、プリント配線基板等に表面実装されることを考えるに、半田濡れ性が非常に重要となる。ここでは、上記試験用サンプルにフラックスとして20%ロジン−イソプロパノール溶液を塗布し、タルチンケスター株式会社製のSWET−2100(半田槽温度215℃、6/4半田)を用いて、ソルダペースト平衡法(急加熱モード)での試験を行った。ここでは、上記試験用サンプルに、プレッシャークッカー試験(2atm、105℃、100%RH、4時間)を行い、その前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0072】
以上の実施例1は、後述する比較例1と対比する。従って、比較例1と当該実施例1のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表1に纏めて示している。
【実施例2】
【0073】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0074】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 31g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 68g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 6.0
【0075】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。なお、上記スズめっき液は、硫酸又は水酸化ナトリウムを添加してpH値を4〜10の範囲で変動させてみても、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0076】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、極めて良好な均一表面を備えていた。この観察像に関しては、実施例1と同様であるため、掲載を省略する。
【0077】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0078】
以上の実施例2は、後述する比較例2と対比する。従って、比較例2と当該実施例2のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表2に纏めて示している。
【実施例3】
【0079】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0080】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 35g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 68g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 8.0
【0081】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0082】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、極めて良好な均一表面を備えていた。この観察像に関しては、実施例1と同様であるため、掲載を省略する。
【0083】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0084】
以上の実施例3は、後述する比較例3と対比する。従って、比較例3と当該実施例3のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表3に纏めて示している。
【実施例4】
【0085】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、キレート剤としてグルコン酸ナトリウムに代えて、クエン酸を用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるクエン酸、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH6.0の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤として水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、スズめっき液を調整した。
【0086】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 31g/L
クエン酸 : 150g/L
メタンスルホン酸 : 68g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 6.0
【0087】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0088】
(スズめっき層の外観)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行った。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図2である。比較例と対比すると明らかであるが、異常析出が見られず、均一な表面被覆が出来ている。
【0089】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0090】
以上の実施例4は、後述する比較例4と対比する。従って、比較例4と当該実施例4のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表4に纏めて示している。
【実施例5】
【0091】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、スズめっき液を調整した。
【0092】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル : 1g/L
pH : 4.0
【0093】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0094】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、極めて良好な均一表面を備えていた。この観察像に関しては、実施例1と同様であるため、掲載を省略する。
【0095】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0096】
以上の実施例5は、後述する比較例5と対比する。従って、比較例5と当該実施例5のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表5に纏めて示している。
【実施例6】
【0097】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、スズ塩であるメタンスルホン酸スズに代えて硫酸スズを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここに、スズ塩である硫酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、スズめっき液を調整した。
【0098】
(スズめっき液組成)
硫酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル: 1g/L
pH : 4.0
【0099】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0100】
(スズめっき層の外観)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行った。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図3である。比較例と対比すると明らかであるが、異常析出が見られず、均一な表面被覆が出来ている。
【0101】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0102】
以上の実施例6は、後述する比較例6と対比する。従って、比較例6と当該実施例6のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表6に纏めて示している。
【実施例7】
【0103】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、酸化防止剤であるアスコルビン酸に代えてカテコールを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここに、スズ塩である硫酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるカテコール、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、スズめっき液を調整した。
【0104】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
カテコール : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル: 1g/L
pH : 4.0
【0105】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0106】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、極めて良好な均一表面を備えていた。この観察像に関しては、実施例1と同様であるため、掲載を省略する。
【0107】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0108】
以上の実施例7は、後述する比較例7と対比する。従って、比較例7と当該実施例7のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表7に纏めて示している。
【実施例8】
【0109】
この実施例では、実施例1と同様のI工程〜V工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、酸化防止剤であるアスコルビン酸を添加すると同時に導電塩である硫酸ナトリウムを添加した点である。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH12の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸及び導電塩である硫酸ナトリウム、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、スズめっき液を調整した。
【0110】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 31g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 68g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
硫酸ナトリウム : 70g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 6.0
【0111】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、365日経過後においてもスラッジの発生はなかった。また、液温を40℃としても、同様の条件でのスラッジ発生はなかった。
【0112】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、極めて良好な均一表面を備えていた。この観察像に関しては、実施例1と同様であるため、掲載を省略する。
【0113】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれもゼロクロスタイム2秒以下で良好な半田濡れを示した。
【0114】
以上の実施例8は、後述する比較例8と対比する。従って、比較例8と当該実施例8のスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性等の対比が可能なように、表8に纏めて示している。
【比較例】
【0115】
[比較例1]
この比較例1は、実施例1のスズめっき液調整順序を変更して、以下のi)工程〜工程v)を経て、スズめっき液を調整した。
【0116】
i)工程: イオン交換水に、キレート剤としてのグルコン酸ナトリウムを添加し、酸性pH調整剤として70wt%濃度のメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とした。
【0117】
ii)工程: 上記予備混合液に、前記予備混合溶液に、メタンスルホン酸スズを添加し、十分に混合した。
【0118】
iii)工程: メタンスルホン酸スズを添加した予備混合液に、アルカリ性pH調整剤としての粒状の水酸化ナトリウムを溶解させ、基本的構成のスズめっき液とした。
【0119】
iv)工程: 当該スズめっき液に、酸化防止剤としてのアスコルビン酸を添加して、混合攪拌した。
【0120】
v)工程: その後、光沢剤としてラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを添加して混合攪拌した。その結果、以下に示す組成のスズめっき液を得た。
【0121】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン: 1g/L
pH : 4.0
【0122】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後2日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0123】
(スズめっき層の外観)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行った。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図4である。実施例1と対比すると明らかであるが、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かる。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0124】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0125】
以上の比較例1と実施例1とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表1に同時掲載した。
【0126】
【表1】

【0127】
[比較例2]
この比較例2は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0128】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 46g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 6.0
【0129】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後1日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0130】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、比較例1の場合と同様に、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かった。この観察像に関しては、比較例1と同様であるため、掲載を省略する。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0131】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0132】
以上の比較例2と実施例2とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表2に同時掲載した。
【0133】
【表2】

【0134】
[比較例3]
この比較例3は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0135】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 50g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 8.0
【0136】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴時に既にスラッジの発生が見られた。
【0137】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、比較例1の場合と同様に、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かった。この観察像に関しては、比較例1と同様であるため、掲載を省略する。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0138】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0139】
以上の比較例3と実施例3とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表3に同時掲載した。
【0140】
【表3】

【0141】
[比較例4]
この比較例4は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、キレート剤としてグルコン酸ナトリウムに代えて、クエン酸を用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるクエン酸、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0142】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 46g/L
クエン酸 : 150g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 1g/L
pH : 6.0
【0143】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴時に既にスラッジの発生が見られた。
【0144】
(スズめっき層の外観)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行った。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図5である。実施例4と対比すると明らかであるが、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かる。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0145】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0146】
以上の比較例4と実施例4とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表4に同時掲載した。
【0147】
【表4】

【0148】
[比較例5]
この比較例5は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるクエン酸、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0149】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル : 1g/L
pH : 4.0
【0150】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後2日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0151】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、比較例1の場合と同様に、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かった。この観察像に関しては、比較例1と同様であるため、掲載を省略する。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0152】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0153】
以上の比較例5と実施例5とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表5に同時掲載した。
【0154】
【表5】

【0155】
[比較例6]
この比較例6は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、スズ塩であるメタンスルホン酸スズに代えて硫酸スズを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩である硫酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0156】
(スズめっき液組成)
硫酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル: 1g/L
pH : 4.0
【0157】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後2日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0158】
(スズめっき層の外観)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行った。そして、このスズめっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その観察像を示したのが図6である。実施例6と対比すると明らかであるが、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かる。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0159】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0160】
以上の比較例6と実施例6とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表6に同時掲載した。
【0161】
【表6】

【0162】
[比較例7]
この比較例7は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、酸化防止剤であるアスコルビン酸に代えてカテコールを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるカテコール、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0163】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 14g/L
水酸化ナトリウム : 42g/L
グルコン酸ナトリウム : 120g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
カテコール : 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルエーテル: 1g/L
pH : 4.0
【0164】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後2日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0165】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、比較例1の場合と同様に、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かった。この観察像に関しては、比較例1と同様であるため、掲載を省略する。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0166】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0167】
以上の比較例7と実施例7とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表7に同時掲載した。
【0168】
【表7】

【0169】
[比較例8]
この比較例8は、比較例1と同様のi工程〜v工程を経て、以下の組成のスズめっき液を調整した。異なるのは、酸化防止剤であるアスコルビン酸を添加すると同時に導電塩である硫酸ナトリウムを添加した点である。即ち、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順で混合しpH1以下の強酸性の予備混合液とし、ここに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズ、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸及び導電塩である硫酸ナトリウム、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加して、以下の組成のスズめっき液を調整した。
【0170】
(スズめっき液組成)
メタンスルホン酸スズ(スズ換算) : 20g/L
水酸化ナトリウム : 46g/L
グルコン酸ナトリウム : 150g/L
メタンスルホン酸 : 135g/L
アスコルビン酸 : 3g/L
硫酸ナトリウム : 70g/L
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン: 1g/L
pH : 6.0
【0171】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後1日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0172】
(スズめっき層の観察)
実施例1と同様にしてSEMを用いた表面状態の観察を行ったが、比較例1の場合と同様に、スズめっき表面に異常析出が見られ、均一な表面被覆の形成が出来ていないことが分かった。この観察像に関しては、比較例1と同様であるため、掲載を省略する。なお、ここで観察したスズめっき層は、スラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したものである。
【0173】
(半田濡れ性評価)
実施例1と同様にして、プレッシャークッカー試験前後での特性評価を行ったが、いずれも良好な半田濡れ性を示すにはゼロクロスタイム3秒以上を要した。
【0174】
以上の比較例8と実施例8とを対比するため、それぞれのスズめっき液調整手順とスラッジ発生の有無、半田濡れ性の対比が容易となるよう、表8に同時掲載した。
【0175】
【表8】

【0176】
[比較例9]
この比較例9は、上述の比較例1〜比較例8とは、全く異なる以下の組成であって、考え得る組成のスズめっき液を調整した。ここでは、以下の成分の混合順序は特に問題にせず、溶媒としての水に各成分を所定濃度となるように溶解させ、アンモニア水でpHの調整を行った。
【0177】
(スズめっき液基本組成)
硫酸第1スズ(スズ換算) : 25g/L
クエン酸水素2アンモニウム : 95g/L
アルキルアミン型界面活性剤 : 0.1g/L
硫酸アンモニウム : 13g/L
pH(アンモニア水で調整) : 7.0
【0178】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後1日経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0179】
[比較例10]
この比較例10は、上述の比較例1〜比較例8とは、全く異なる以下の組成であって、考え得る組成のスズめっき液を調整した。ここでは、以下の成分の混合順序は特に問題にせず、溶媒としての水に各成分を所定濃度となるように溶解させ、水酸化ナトリウムでpHの調整を行った。
【0180】
(スズめっき液基本組成)
スルファミン酸第1スズ(スズ換算) : 50g/L
リンゴ酸 : 450g/L
アルキルアミン型界面活性剤 : 0.1g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) : 6.0
【0181】
(スズめっき液の長期保存性評価)
上記スズめっき液を、室温且つ大気雰囲気中で保管した。その結果、建浴後5時間経過後においてスラッジの発生が見られた。
【0182】
<実施例と比較例との対比>
実施例1と比較例1との対比: 表1から明らかなように、実施例1と比較例1とのスズめっき液を、単純に組成及びpHから見れば同一である。異なるのは、その構成成分の混合手順である。即ち、実施例1は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを12として、そこに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加している。
【0183】
これに対し、比較例1は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズを加えている。従来のスズめっき液の製造方法は、このように酸性領域に於いてスズ塩を添加する方法が採用されてきた。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加している。
【0184】
このように実施例1と比較例1とでは、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、構成成分量は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例1の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例1の場合には、僅か2日経過後にスラッジの発生が確認された。また、実施例1の場合、水酸化ナトリウムを用いて、溶液pHを10に上げても、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。
【0185】
そして、実施例1のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、析出粒子が平面的に敷き詰められたような状態に見え極めて良好な表面が得られている(以上及び以下において、これを単に「均一表面」と称している。)。これに対して、比較例1のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面は、析出粒子が平面的に敷き詰められ且つその上に更に堆積したような析出粒子が認められ均一な表面とは言えなくなる(以上及び以下において、このような状態を「異常析出」と称している。)。
【0186】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例1のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例1のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0187】
実施例2と比較例2との対比: この実施例2と比較例2との関係も、基本的に実施例1と比較例1との関係と同じである。根本的には、その構成成分の混合手順が異なる。しかし、この実施例2と比較例2とでは、そこに含ませる酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の添加量を異なるものとしているため、最終的なスズめっき液のpHが6.0となるようにアルカリ性pH調整剤の添加量も変えている。
【0188】
即ち、実施例2のスズめっき液の構成成分は、実施例1と同様で且つ混合順序も同様である。そして、比較例2のスズめっき液の構成成分は、比較例1と同様で且つ混合順序も同様である。但し、実施例2と実施例1と、比較例2と比較例1とは、それぞれ構成成分量が表2のように異なっている。
【0189】
このように実施例2と比較例2とでは、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例2の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例2の場合には、僅か1日経過後にスラッジの発生が確認された。また、実施例2の場合、水酸化ナトリウムを用いて、溶液pHを4〜10の間で任意に変化させても、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。
【0190】
そして、実施例2のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例2のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0191】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例2のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例2のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0192】
実施例3と比較例3との対比: この実施例3と比較例3との関係も、基本的に実施例1と比較例1との関係と同じである。根本的には、その構成成分の混合手順が異なる。しかし、この実施例3と比較例3とでは、そこに含ませる酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の添加量を異なるものとしているため、最終的なスズめっき液のpHが8.0となるようにアルカリ性pH調整剤の添加量も変えている。
【0193】
即ち、実施例3のスズめっき液の構成成分は、実施例1と同様で且つ混合順序も同様である。そして、比較例3のスズめっき液の構成成分は、比較例1と同様で且つ混合順序も同様である。但し、実施例3と実施例1と、比較例3と比較例1とは、それぞれ構成成分量が表3のように異なっている。
【0194】
このように実施例3と比較例3とでは、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例3の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例3の場合には、建浴時に既にスラッジの発生が確認された。
【0195】
そして、実施例3のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例3のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0196】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例3のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例3のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0197】
実施例4と比較例4との対比: この実施例4では、実施例1のキレート剤としてグルコン酸ナトリウムに代えて、クエン酸を用いた。即ち、実施例4は、イオン交換水に、キレート剤であるクエン酸、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを6.0として、そこに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、微調整用アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを6.0とした。
【0198】
これに対し、比較例4は、イオン交換水に、キレート剤であるクエン酸、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズを加えている。従来のスズめっき液の製造方法は、このように酸性領域に於いてスズ塩を添加する方法が採用されてきた。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを6.0とした。但し、この実施例4と比較例4とでは、そこに含ませる酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の添加量を異なるものとしているため、最終的なスズめっき液のpHが6.0となるようにアルカリ性pH調整剤の添加量も変えている。
【0199】
この実施例4と比較例4でも、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例4の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例4の場合には、建浴時に既にスラッジの発生が確認された。
【0200】
そして、実施例4のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例4のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0201】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例4のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例4のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0202】
実施例5と比較例5との対比: この実施例5では、実施例1の光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、実施例5は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを12として、そこに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤である光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0203】
これに対し、比較例5は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズを加えている。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0204】
この実施例5と比較例5でも、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例5の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例5の場合には、建浴から僅か2日経過後にスラッジの発生が確認された。
【0205】
そして、実施例5のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例5のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0206】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例5のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例5のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0207】
実施例6と比較例6との対比: この実施例6では、実施例1のスズ塩であるメタンスルホン酸スズに代えて硫酸スズを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、実施例6は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを12として、そこに、スズ塩である硫酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤である光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0208】
これに対し、比較例6は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩である硫酸スズを加えている。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0209】
この実施例6と比較例6でも、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例6の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例6の場合には、建浴から僅か2日経過後にスラッジの発生が確認された。
【0210】
そして、実施例6のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例6のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0211】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例6のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例6のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0212】
実施例7と比較例7との対比: この実施例7では、実施例1の酸化防止剤であるアスコルビン酸に代えてカテコールを用い、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。即ち、実施例7は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを12として、そこに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、酸化防止剤であるカテコール、光沢剤である光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0213】
これに対し、比較例7は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズを加えている。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるカテコール、光沢剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを4.0とした。
【0214】
この実施例7と比較例7でも、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例7の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例7の場合には、建浴から僅か2日経過後にスラッジの発生が確認された。
【0215】
そして、実施例7のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例7のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0216】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例7のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例7のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0217】
実施例8と比較例8との対比: 実施例8は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを12として、そこに、スズ塩であるメタンスルホン酸スズを加え、スズキレート錯体を確実に生成する手法を採用している。そして、その後、酸化防止剤であるアスコルビン酸及び導電塩である硫酸ナトリウムを同時に添加し、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを6.0とした。
【0218】
これに対し、比較例8は、イオン交換水に、キレート剤であるグルコン酸ナトリウム、酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の順に加え溶液pHを1以下の強酸性溶液として、ここにスズ塩であるメタンスルホン酸スズを加えている。従来のスズめっき液の製造方法は、このように酸性領域に於いてスズ塩を添加する方法が採用されてきた。そして、その後、スズめっき液のpHを中性領域に近づけるため、アルカリ性pH調整剤である水酸化ナトリウム、酸化防止剤であるアスコルビン酸及び導電塩である硫酸ナトリウムを同時に添加し、光沢剤であるラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの順に添加し、最終的なスズめっき液のpHを6.0とした。但し、この実施例8と比較例8とでは、そこに含ませる酸性pH調整剤であるメタンスルホン酸の添加量を異なるものとしているため、最終的なスズめっき液のpHが6.0となるようにアルカリ性pH調整剤の添加量も変えている。
【0219】
この実施例8と比較例8でも、単に構成成分の混合順序が異なるだけであるが、その溶液性状は全く異なるものとなる。従って、実施例1の場合と同様に、構成成分は同じでも、スズめっき液として中に含まれるスズ成分の存在の仕方が全く異なるものであると言える。この裏付けとなるのが、以下の内容である。実施例8の場合、室温〜40℃の大気雰囲気中で保管しても、365日経過後においてもスラッジの発生は全く見られない。これに対し、比較例8の場合には、建浴から僅か2日経過後にスラッジの発生が確認された。
【0220】
そして、実施例8のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、めっき試験を行った試験用サンプルのスズめっき層をSEMで観察しても、極めて良好な均一表面が得られている。これに対して、比較例8のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、スズめっき層の表面に異常析出が見られ、明らかな不良状態になることが確認出来た。
【0221】
更に、半田濡れ性に関しても、実施例8のスズめっき液の場合、365日経過後に於いても、良好な半田濡れ性を備えるスズめっき層の形成が可能である。これに対して、比較例8のスズめっき液の場合、スラッジの発生が認められると、半田濡れ性が劣化する。
【0222】
そして、比較例9及び比較例10に関しての所見を述べる。この比較例9及び比較例10は、直接対比すべき実施例は無いが、考え得るスズメッキ液組成として掲載し、そのスラッジの発生するまでの溶液寿命を、上記各実施例と対比するためのものである。比較例9のスズめっき液は、上述のように建浴後1日経過後においてスラッジの発生が見られる。また、比較例10のスズめっき液は建浴後5時間経過後においてスラッジの発生が見られている。更に、スラッジの発生の確認できた以降の比較例9及び比較例10のスズメッキ液では、均一性のあるスズメッキ被膜の形成は出来ないことも確認した。即ち、上述の本件発明に係るスズメッキ液と対比すると、比較例9及び比較例10のスズメッキ液の溶液寿命が極めて短いことが容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本件発明に係るスズめっき液は、1年の期間が経過してもスラッジが発生せず、従来のスズめっき液と比較すると飛躍的に建浴後の溶液寿命が長く、めっき液管理が容易なため経済性に優れたものである。そして、本件発明に係るスズめっき液は、10℃〜40℃の範囲でのめっき操業が可能であり、適度な液蒸発があるため、廃液量の顕著な増加を引き起こさないため廃液処理の負荷も軽減でき、トータル的なコスト削減を可能とする。
【0224】
また、本件発明に係るスズめっき液の調整方法は、一定の調整手順を採用するだけで、特殊な装置及び手法を必要とするものではなく、既存の設備を有効に活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】建浴から365日経過後の本件発明に係るスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。
【図2】建浴から365日経過後の本件発明に係るスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。
【図3】建浴から365日経過後の本件発明に係るスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。
【図4】建浴から2日経過後にスラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。
【図5】建浴時の段階でスラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。
【図6】建浴から2日経過後にスラッジの発生したスズめっき液を用いて形成したスズめっき層のSEM観察像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解法でスズめっきを行うためのスズめっき液であって、
スズイオン供給源であるスズ塩をスズ換算で5g/L〜30g/L含有し、このスズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含み、スラッジが7日以上発生しないことを特徴とするスズめっき液。
【請求項2】
前記スズ塩は、水に対して可溶性の第1スズ塩から選ばれる1種又は2種以上を用いる請求項1に記載のスズめっき液。
【請求項3】
前記キレート剤は、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を30g/L〜300g/L濃度となるよう含む請求項1又は請求項2に記載のスズめっき液。
【請求項4】
前記pH調整剤は、アルカリ性pH調整剤であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水から選ばれる1種又は2種以上を5g/L〜140g/L濃度となるように含ませた請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項5】
前記pH調整剤は、酸性pH調整剤であって、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、イセチオン酸から選ばれる1種又は2種以上を10g/L〜300g/L含ませた請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項6】
酸化防止剤を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載のスズめっき液のpHを酸性側に微調整するためのpH調整剤であって、必要に応じてメタンスルホン酸、硫酸の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とした請求項1〜請求項7のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項8】
請求項1〜請求項7に記載のスズめっき液のpHをアルカリ側に微調整するためのpH調整剤であって、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とした請求項1〜請求項7のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項9】
必要に応じて添加する導電塩であって、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上を1g/L〜150g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項8のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項10】
光沢剤としてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項9のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項11】
本件発明に係るスズめっき液を用いたスズめっき方法であって、浴温10℃〜40℃の条件で電解することを特徴とするスズめっき方法。
【請求項12】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、以下のA)及びB)の手順により調整されることを特徴としたスズめっき液調整方法。
A)水とpH調整剤とキレート剤とを混合し、pH値が6〜12の予備混合溶液とする。
B)前記予備調整液にスズ塩を、添加してスズ含有量を5g/L〜30g/L濃度となるよう添加し十分に攪拌し、スズキレート錯体を形成させスズめっき液とする。
【請求項13】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、請求項12に記載のスズめっき液に酸化防止剤を添加する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【請求項14】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、請求項12に記載のスズめっき液のpH値を微調整する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【請求項15】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、請求項12に記載の方法で得られたスズめっき液に、導電塩を添加する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【請求項16】
本件発明に係るスズめっき液の調整方法であって、請求項12のいずれかに記載の方法で得られたスズめっき液に、光沢剤を添加する工程を付加したスズめっき液調整方法。
【請求項17】
本件発明に係るスズめっき液を用いてスズめっき層を形成したチップ部品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解法でスズめっきを行うためのスズめっき液であって、
スズイオン供給源であるスズ塩をスズ換算で5g/L〜30g/L含有し、このスズイオンをキレート化し安定化させるキレート剤及びpH調整剤を含み、スラッジが7日以上発生しないことを特徴とするスズめっき液。
【請求項2】
前記スズ塩は、水に対して可溶性の第1スズ塩から選ばれる1種又は2種以上を用いる請求項1に記載のスズめっき液。
【請求項3】
前記キレート剤は、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を30g/L〜300g/L濃度となるよう含む請求項1又は請求項2に記載のスズめっき液。
【請求項4】
前記pH調整剤は、アルカリ性pH調整剤であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水から選ばれる1種又は2種以上を5g/L〜140g/L濃度となるように含ませた請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項5】
前記pH調整剤は、酸性pH調整剤であって、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、イセチオン酸から選ばれる1種又は2種以上を10g/L〜300g/L含ませた請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項6】
酸化防止剤を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項7】
Hを酸性側に微調整するためのpH調整剤であって、メタンスルホン酸、硫酸の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とした請求項1〜請求項のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項8】
Hをアルカリ側に微調整するためのpH調整剤であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は2種を添加し、pH4〜pH10の範囲とした請求項1〜請求項7のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項9】
電塩であって、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上を1g/L〜150g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項8のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項10】
光沢剤としてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を0.1g/L〜30g/L濃度となるよう含む請求項1〜請求項9のいずれかに記載のスズめっき液。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載のスズめっき液を用いたスズめっき方法であって、浴温10℃〜40℃の条件で電解することを特徴とするスズめっき方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載のスズめっき液の調整方法であって、以下のA)及びB)の手順により調整されることを特徴としたスズめっき液調整方法。
A)水とpH調整剤とキレート剤とを混合し、pH値が6〜12の予備調整液とする。
B)前記予備調整液にスズ塩を、添加してスズ含有量を5g/L〜30g/L濃度となるよう添加し十分に攪拌し、スズキレート錯体を形成させスズめっき液とする。
【請求項13】
前記スズメッキ液に酸化防止剤を添加する工程を付加した請求項12に記載のスズめっき液調整方法。
【請求項14】
前記スズメッキ液にpH値を微調整する工程を付加した請求項12に記載のスズめっき液調整方法。
【請求項15】
前記スズメッキ液に導電塩を添加する工程を付加した請求項12に記載のスズめっき液調整方法。
【請求項16】
前記スズメッキ液に光沢剤を添加する工程を付加した請求項12に記載のスズめっき液調整方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載のスズめっき液を用いてスズめっき層を形成したチップ部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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