説明

スズ又はスズ合金メッキ浴、及び当該メッキ浴を用いたバレルメッキ方法

【課題】 広い電流密度範囲での均一性等の向上と、良好な皮膜外観やハンダ付け性を達成し、バレルメッキに際して、導電性媒体や被メッキ物同士の凝集を防止する。
【解決手段】 (A)第一スズ塩と、第一スズ塩及び銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかよりなる可溶性塩と、(B)酸又はその塩と、(C)ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウムなどを具体例とするジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物とを含有するスズ又はスズ合金メッキ浴である。化合物(C)を含有するため、広い電流密度範囲で皮膜の均一性や平滑性を向上でき、皮膜外観やハンダ付け性に優れ、当該浴をバレルメッキに適用すると、導電性媒体同士の凝集を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスズ又はスズ合金メッキ浴、並びに当該メッキ浴を用いたバレルメッキ方法に関して、広い電流密度範囲でのメッキ皮膜の均一性や平滑性を向上し、良好な皮膜外観やハンダ濡れ性を付与できるとともに、特に、バレルメッキに際して導電性媒体同士の凝集などを円滑に防止できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
スズメッキ、或は、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金、スズ−鉛合金などのスズ合金メッキは、耐食性やハンダ濡れ性が良好であるため、弱電部品やリードフレーム等に代表される電子工業用部品等の工業用メッキとして広く利用されている。但し、最近では、環境保全の高まりから、スズ、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金などの鉛フリーメッキへの要望が増している。
しかしながら、スズメッキやスズ合金メッキでは、皮膜外観が良好でも適用可能な電流密度の範囲が狭かったり、皮膜外観が良好で適用可能な電流密度範囲が広くてもハンダ濡れ性が劣ったり、或は各メッキ作業で電着皮膜の膜厚を均一にできないなど種々の問題があるのが実情である。
【0003】
そこで、皮膜外観やハンダ濡れ性(又はハンダ付け性)の改善を主目的としたスズ又はスズ合金メッキ浴を挙げると、次の通りである。但し、特許文献1〜3は本出願人が開示したものである。
(1)特許文献1
スズ、スズ−鉛合金メッキ浴に2−メルカプトベンゾチアゾール(実施例10)などのベンゾチアゾール化合物を添加することで、広い電流密度範囲において良好なメッキ皮膜を均一な膜厚で得られることが記載される(第2頁左上欄、同頁右下欄)。
【0004】
(2)特許文献2
モノスルフィド結合の一方がベンゾアゾール環、他方がアルキレンスルホン酸(塩)基であるベンゾアゾール系スルホン酸化合物(2−メルカプトベンズイミダゾール−S−メタンスルホン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾール−S−プロパンスルホン酸塩など;段落17)をスズ又はスズ合金メッキ浴に添加することで、広い電流密度範囲にて優れた皮膜外観やハンダ付け性を付与できることが記載される(段落1、5、44)。
【0005】
(3)特許文献3
モノ又はジスルフィド結合の両側或は片側に隣接して特定のアルキレンオキシド基などが単数又は繰り返し分子内に存在する直鎖状脂肪族炭化水素化合物と、特定のベンゾアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾールなど)とを、スズ又はスズ−鉛合金メッキ浴に併用添加することで、酸性からアルカリ性までの広いpH域で、皮膜外観やハンダ濡れ性を向上することが記載される。
【0006】
上記特許文献1では、皮膜外観やハンダ濡れ性(又はハンダ付け性)の改善を電流密度にそれほど拘束されずに実現できるが、同文献1の化合物は水に溶解しにくかったり、メルカプト基が酸化を受け易く、難溶性の化合物になって効果を発揮しなくなる恐れがあり、上記特許文献3も同様である。
また、特許文献2の化合物は分子内にスルホン酸基を導入することで、いわば同文献1の化合物が有する水に対する溶解性の難点を克服しようとするものである。
【0007】
一般に、スズ又はスズ合金浴を用いた電気メッキにはラックメッキ、バレルメッキ、連続高速メッキなどの各種方法があるが、なかでも、バレルメッキは、チップ抵抗器、チップコンデンサ、水晶振動子のキャップなどの小物部品をラック掛けせずにバレルに入れてメッキする点で、メンテナンスが簡単で生産性が高いという利点がある。
【0008】
通常、バレルメッキに際しては、被メッキ物を直径0.2〜1mm程度のスチール、銅、黄銅製などの球形の導電性媒体(通称:ダミー)に混ぜて、通電を改善しながら被メッキ物同士が円滑に混合する状態で電気メッキを行っているが、メッキ時に導電性媒体同士が凝集し、ひいては、これらが重畳的に集まってさらに大きな塊状物にまで成長することが多い。
導電性媒体が凝集して塊状物になると、小物部品の被メッキ物はこの中に取り込まれて給電不足からメッキ不良を起こしたり、或は、被メッキ物と導電性媒体をふるい分ける際に、塊状物がふるいを通過せず、被メッキ物を導電性媒体から選別する工程に時間を要するという問題が発生する。
また、導電性媒体を使用せずに被メッキ物だけでバレルメッキを行う場合にも、被メッキ物同士が凝集する恐れが少なくなく、やはりメッキ不良や生産性の低下を来す恐れがある。
【0009】
本出願人は、先に、特許文献4において、スズメッキ浴にビスマス、インジウム、亜鉛などの特定金属イオンを所定の微量濃度で添加することで、バレルメッキに際して、導電性媒体や被メッキ物同士の凝集を円滑に防止する技術を開示した。
【0010】
【特許文献1】特開平4−28893号公報
【特許文献2】特開平10−25595号公報
【特許文献3】特開2001−254194号公報
【特許文献4】特開2003−201593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献4では、ダミーや被メッキ物同士の凝集を防止する見地から、ビスマス、インジウム等の異種金属をメッキ浴に添加するため、その金属が皮膜に共析して皮膜の機械特性が変わってしまう恐れがある。
また、前記特許文献1の化合物は広い電流密度範囲で良好なメッキ皮膜を均一な膜厚で得ることができるが、バレルメッキに際してダミーや被メッキ物同士の凝集を防止する機能には乏しく、特許文献2の化合物も、良好な水溶性の具備に加えて、広い電流密度範囲で良好な皮膜外観やハンダ付け性を付与できる反面、やはりバレルメッキに際してダミー同士などの凝集を防止する機能は不充分である。
【0012】
本発明は、広い電流密度範囲でのメッキ皮膜の均一性、平滑性などの向上と、皮膜外観やハンダ濡れ性の改善を図るとともに、スズ又はスズ合金メッキ浴をバレルメッキに適用した場合に、ダミー同士の凝集などを防止して、バレルメッキを円滑に実施することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記特許文献1〜2の化合物を参考にして、ベンゾアゾール環を有する化合物をスズ又はスズ合金メッキ浴に添加した場合において、得られるメッキ皮膜の均一性、皮膜外観或はハンダ濡れ性などに及ぼす影響、また、当該メッキ浴をバレルメッキに適用した場合に、ダミーや被メッキ物同士の凝集抑制の可否などを鋭意研究した。
その結果、ジスルフィド結合の両側に、スルホン酸基が結合したベンゾアゾール環を夫々有する、ジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物は、水溶性が高くて酸化による変性もないため、スズ又はスズ合金メッキ浴に添加すると、広い電流密度範囲でメッキ皮膜の均一性、平滑性を向上でき、皮膜外観やハンダ濡れ性を良好にできること、特にこのメッキ浴をバレルメッキに適用すると、ダミー同士などの凝集を円滑に防止できることを見い出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明1は、(A)第一スズ塩と、第一スズ塩及び銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかよりなる可溶性塩と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表されるジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物とを
【化1】

(式(1)中、XはS、N、Oである。;m及びnは0〜2の整数である。但し、mとnが共に0になることはない。;R1及びR2はC1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、カルボキシルである。;a及びbは0〜2の整数である。;AはH、Na、Kである。)
含有することを特徴とするスズ又はスズ合金メッキ浴である。
【0015】
本発明2は、上記本発明1において、さらに、錯化剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、導電性塩、pH調整剤、緩衝剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とするスズ又はスズ合金メッキ浴である。
【0016】
本発明3は、上記本発明1又は2のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いて被メッキ物にバレルメッキを施すことを特徴とするバレルメッキ方法である。
【0017】
本発明4は、上記本発明3において、被メッキ物が、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線、プリント基板、半導体集積回路、モジュールより選ばれた電子部品であることを特徴とするバレルメッキ方法である。
【発明の効果】
【0018】
(1)本発明のメッキ浴を電気メッキに適用する場合、広い電気密度範囲でメッキ皮膜の均一性や平滑性を向上できる。
また、電気、無電解のメッキ方式を問わず、得られたメッキ皮膜は外観やハンダ濡れ性に優れる。
前記特許文献1の化合物では、水に溶解しにくかったり、メルカプト基が酸化を受け易く、難溶性の化合物になって効果を発揮しなくなる恐れがあるが、本発明の化合物ではスルホン酸(塩)基とジスルフィド結合を有するため、このような問題はない。
【0019】
(2)本発明のメッキ浴をバレルメッキに適用すると、ダミーや被メッキ物同士の凝集を円滑に防止し、バレルメッキの生産性を向上できる。
前記特許文献4では、ダミーや被メッキ物同士の凝集防止のためにビスマス、インジウムなどの異種金属をメッキ浴に添加(ドープ)するため、その金属が皮膜に共析して皮膜の機械特性が変わってしまう恐れがあるが、本発明の化合物はベンゾアゾール環を有するジスルフィドジスルホン酸化合物であり、上記文献4のような異種金属の共析はないため、メッキ皮膜の機械的特性に悪影響を及ぼすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、第一に、ジスルフィド結合の両側にベンゾアゾール環を夫々有し、この両側のベンゾアゾール環の少なくともいずれかにスルホン酸基が1個以上結合したジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物を含有するスズメッキ浴、又はスズ−銀合金やスズ−ビスマス合金などの所定のスズ合金メッキ浴であり、第二に、これらのメッキ浴をバレルメッキに適用するメッキ方法である。
但し、第一のメッキ浴は電気メッキ浴、無電解メッキ浴を問わない。
【0021】
上述の通り、本発明のジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物は一般式(1)で表されるが、ベンゾアゾール環の3位に配置する原子Xはイオウ、窒素又は酸素であり、この中ではイオウが好ましい。即ち、Xがイオウ原子の場合にはベンゾアゾール環はベンゾチアゾール環になり、同じく、窒素ではベンズイミダゾール環、酸素ではベンゾオキサゾール環となり、ベンゾチアゾール環が好ましい。
このベンゾアゾール環に結合するスルホン酸(塩)基の個数m、nは夫々0〜2個であるが、mとnが共に0になることはない。つまり、水溶性などの観点から、左右両側のベンゾアゾール環には1個以上のスルホン酸(塩)基の結合が必要であり、一般にスルホン酸(塩)基が多いほど水溶性は増す。スルホン酸(塩)基(=SO3A)の原子Aは水素、ナトリウム又はカリウムであり、スルホン酸(遊離酸)の形態、或はスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩の形態のいずれかである。
また、ジスルフィド結合を間にして左右の各ベンゾアゾール環に結合する置換基Rは、C1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、カルボキシルよりなる群から選択でき、特に、C1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシルが好ましい。当該置換基Rは左右のベンゾアゾール環で同種になっても良いし、異種になっても良い。
この置換基Rの個数a及びbは0〜2個であり、無置換(a=b=0)でも良いし、各ベンゾアゾール環で1〜2個の置換基を有しても差し支えない。
【0022】
本発明のジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物としては、ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸、ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸、ジベンゾチアゾリルジスルフィドモノスルホン酸、ジベンゾオキサゾリルジスルフィドジスルホン酸、ジベンズイミダゾリルジスルフィドジスルホン酸、又はこれらの塩、或はベンゾアゾール環に置換基を有するこれらの酸又はその塩などが挙げられる。
当該化合物のより具体的な例としては、ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム、ジベンゾチアゾリルジスルフィドモノスルホン酸カリウム、ジ(4−メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−クロロベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−メトキシベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−ニトロベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィドトリスルホン酸、ジベンゾオキサゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−メチルベンゾオキサゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジベンズイミダゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム、ジ(6−メトキシベンズイミダゾリル)ジスルフィドジスルホン酸二ナトリウムなどが好ましい。
【0023】
本発明のジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物は単用又は併用でき、その含有量はメッキ浴全体に対して0.01〜10g/Lの少量が適しており、0.1〜3g/Lが好ましい。
含有量が0.01g/Lより少ないと、メッキ皮膜の平滑性や均一性、皮膜外観、ハンダ付け性の向上効果が発揮されず、また、バレルメッキに際して凝集防止効果が低下する。一方、含有量が10g/Lより多いと、電気メッキでは低電流密度部が無光沢メッキになる恐れがある。
【0024】
また、本発明のジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物は、ジベンゾアゾールジスルフィド化合物を濃硫酸又は発煙硫酸の存在下、70℃〜180℃、好ましくは100℃〜140℃にて5時間〜60時間反応させる方式を初めとして、常法により製造することができる。
ちなみに、上記ジベンゾアゾールジスルフィド化合物(例えば、ジベンゾチアゾールジスルフィド化合物)は市販されている。
【0025】
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴において、可溶性第一スズ塩は、基本的に水中でSn2+を発生させる有機酸又は無機酸のスズ塩であり、具体的には、硫酸第一スズ、酢酸第一スズ、ホウフッ化第一スズ、スルファミン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、塩化第一スズ、グルコン酸第一スズ、酒石酸第一スズ、酸化第一スズ、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸第一スズ、スルホコハク酸第一スズなどが挙げられる。
【0026】
本発明の所定のスズ合金メッキ浴において、スズ合金を形成するスズの相手方の金属の可溶性塩について述べれば、例えば、銀の可溶性塩としては、酢酸銀、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、シアン化銀、シアン化銀カリウム、メタンスルホン酸銀、2−ヒドロキシエタンスルホン酸銀、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸銀などが挙げられる。
銅の可溶性塩には、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、ピロリン酸銅、塩化銅、シアン化銅、ホウフッ化銅、スルファミン酸銅、メタンスルホン酸銅、2−ヒドロキシエタンスルホン酸銅、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸銅などがある。
ビスマスの可溶性塩には、硫酸ビスマス、グルコン酸ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、メタンスルホン酸ビスマス、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマスなどがある。
インジウムの可溶性塩には、スルファミン酸インジウム、硫酸インジウム、ホウフッ化インジウム、酸化インジウム、メタンスルホン酸インジウム、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸インジウムなどがある。
亜鉛の可溶性塩には、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ピロリン酸亜鉛、シアン化亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、2−ヒドロキシエタンスルホン酸亜鉛、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸亜鉛などがある。
アンチモンの可溶性塩には、ホウフッ化アンチモン、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム、ピロアンチモン酸カリウム、酒石酸アンチモン、メタンスルホン酸アンチモン、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸アンチモンなどがある。
ニッケルの可溶性塩には、硫酸ニッケル、ギ酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、ホウフッ化ニッケル、酢酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ニッケルなどがある。
鉛の可溶性塩には、酢酸鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、ホウフッ化鉛、スルファミン酸鉛、メタンスルホン酸鉛、エタンスルホン酸鉛、2−ヒドロキシエタンスルホン酸鉛、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸鉛などがある。
【0027】
上記金属の可溶性塩の浴中の総濃度は、一般に金属塩換算で1〜200g/L、好ましくは10〜100g/Lである。
また、スズとその他の金属の混合割合は、所望するスズ合金メッキ皮膜の組成比に応じて適宜調整すれば良い。
【0028】
本発明のスズ合金はスズと、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属との合金であり、具体的には、スズ−銀、スズ−銅、スズ−ビスマス、スズ−インジウム、スズ−亜鉛、スズ−アンチモン、スズ−ニッケル、スズ−鉛の2成分系の合金を初め、スズ−銀−銅、スズ−ビスマス−銅、スズ−亜鉛−ニッケルなどの3成分系以上の合金を包含する。
浴管理の観点からは既述の2成分系のスズ合金が好ましい。
【0029】
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴において、浴ベースは有機酸、無機酸、或はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などである。
上記有機酸としては、有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。この中では、硫酸浴を初め、スズの溶解性、排水処理の容易性などの見地から有機スルホン酸又はその塩の浴が好ましい。
上記酸又はその塩は単用又は併用でき、その含有量は0.1〜10モル/L、好ましくは0.5〜5モル/Lである。
【0030】
上記有機スルホン酸は、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、スルホコハク酸、芳香族スルホン酸などであり、アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜11)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸(イセチオン酸)、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸(2−プロパノールスルホン酸)、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0032】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸などであり、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸などが挙げられる。
上記有機スルホン酸では、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸などが好ましい。
【0033】
本発明は酸性、中性(弱酸性を含む)などの任意のpH領域のスズ又はスズ合金メッキ浴に適用できる。
基本的に、第一スズイオンは酸性では安定であるが、中性付近では白色沈澱が生じ易い。このため、本発明を中性付近のスズメッキ浴に適用する場合には、スズイオンを安定化させる目的で、錯化剤を含有するのが好ましい。
上記錯化剤は、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸などであり、具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、或はこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、或はこれらの塩などである。
また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、或はこれらの塩などのポリアミンやアミノカルボン酸類も錯化剤として有効である。
【0034】
また、本発明のスズ合金メッキ浴では、スズと合金を形成する相手方の銀、銅、ビスマスなどに電極電位が錫より貴な金属が多いため、これらの各種イオンを浴中で安定にしてスズと共析化させる見地から、安定剤を適宜添加するのが良い。
当該安定剤としては、チオ尿素、或はジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、チオセミカルバジドなどのチオ尿素誘導体などのチオアミド類、チオグリコール(HS−CH2CH2OH)、チオグリコール酸(HSCH2COOH)、メルカプトプロピオン酸(CH3CH(SH)COOH)、メルカプトコハク酸などのメルカプタン類、チオジグリコール(HOCH2CH2−S−CH2CH2OH)、チオビス(ドデカエチレングリコール)(H−(OCH2CH2)12−S−(CH2CH2O)12−H)、チオジグリコール酸(HOOCCH2−S−CH2COOH)、ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィド、3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオール、4,7−ジチオ−1,10−デカンジオールなどのスルフィド類、或は、亜硫酸塩等が挙げられる。
さらに、前記錯化剤として列挙したオキシカルボン酸、ポリカルボン酸又はこれらの塩、或はポリアミンやアミノカルボン酸類なども有効である。
【0035】
また、本発明のスズメッキ浴には、上記錯化剤や安定剤の外にも、酸化防止剤、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、導電性塩、防腐剤、消泡剤などの各種添加剤を含有できる。
上記酸化防止剤は浴中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシナフタレンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。例えば、中性浴ではアスコルビン酸又はその塩などが好ましい。
上記界面活性剤は、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善を目的とし、通常のアニオン系、カチオン系、ノニオン系、或は両性などの各種界面活性剤が使用できる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
上記平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N-(3-ヒドロキシブチリデン)-p-スルファニル酸、N-ブチリデンスルファニル酸、N-シンナモイリデンスルファニル酸、2,4-ジアミノ-6-(2'-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-エチル-4-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-ウンデシルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0037】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、上記平滑剤とも多少重複するが、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリリデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0038】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
上記導電性塩としては、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸などのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられるが、上記pH調整剤で共用できる場合もある。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0039】
前述したように、本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴は電気メッキ、無電解メッキを問わずに適用することができる。
電気メッキでは、バレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキなどの各種メッキ方式が採用できる。
電気メッキの条件としては、浴温は0℃以上、好ましくは10〜50℃程度であり、陰極電流密度は0.001〜30A/dm2、好ましくは0.01〜10A/dm2である。
無電解メッキでの浴温は、上記電気メッキと同様に0〜50℃程度が一般的である。
【0040】
本発明3は、上記ジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物を含有させたスズ又はスズ合金メッキ浴を用いて、被メッキ物にバレルメッキを施す方法である。
当該バレルメッキでは、バレルに被メッキ物と導電性媒体を収容し、上記スズメッキ浴にバレルを浸漬して、被メッキ物に電気メッキを行うことを基本とするが、導電性媒体を使用せず、被メッキ物だけをバレルに収容してメッキを行う方法であっても良い。
本発明のメッキ浴を電気メッキのうちの、特にバレルメッキに適用すると、導電性媒体同士の凝集を防止できる利点があり、小物の被メッキ物同士の凝集を防止する点でも有効である。
また、当該バレルメッキにおいては、水平型又は傾斜型回転バレル式、揺動バレル式、或は振動バレル式などの任意のバレルメッキ装置が使用できることはいうまでもない。
バレルメッキでの浴温や陰極電流密度の条件は、上記電気メッキでの一般条件と同程度で良い。
本発明4は、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、コネクタ、リード線、フープ材、プリント基板、半導体集積回路(TABのフィルムキャリア、BGA基板などを含む)、モジュール等の電子部品などを被メッキ物とするバレルメッキ方法であり、特に、被メッキ物としては、チップ抵抗器、チップコンデンサー、水晶振動子のキャップなどの小物部品が好適である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明のジベンゾアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物の合成例、当該化合物を含有する本発明のスズ及びスズ合金メッキ浴の実施例、実施例で得られた各メッキ浴を用いて様々な電流密度でラックメッキを施した場合の電着皮膜の均一性、平滑性の評価試験例、前記実施例で得られた各メッキ浴を用いたハンダ濡れ性の評価試験例、本発明のスズ浴を用いた無電解メッキによるスズ皮膜の外観評価試験例、本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いてバレルメッキを施した場合の凝集抑制評価試験例を順次述べる。
尚、本発明は下記の合成例、実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0042】
先ず、本発明のジベンゾアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物の代表例として、ジベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸塩の合成例を述べる。
《ジベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸塩の合成例》
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けた500mlの4つ口フラスコに30%発煙硫酸94mlを仕込んだ。その後、氷水で冷却し、撹拌下20℃でジベンゾチアゾリルジスルフィド100gを加えた。
次いで、急速に115℃に加熱して24時間反応させた。反応後、80℃に冷却し、水200mlを加えた後、30℃で水酸化ナトリウム145gを水300mlに溶解した水溶液を滴下した。さらに、48%水酸化ナトリウム水を加えてpH9.5にした。そして、一夜放置後、吸引濾過して析出した硫酸ナトリウムを濾別し、ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウムの水溶液1550mlを得た。
【0043】
《スズ及びスズ合金メッキ浴の実施例》
実施例1、10、12はスズメッキ浴の例、実施例2、11、13はスズ−銀合金メッキ浴の例、実施例3はスズ−銅合金メッキ浴の例、実施例4はスズ−ビスマス合金メッキ浴の例、実施例5はスズ−インジウム合金メッキ浴の例、実施例6はスズ−亜鉛合金メッキ浴の例、実施例7はスズ−アンチモン合金メッキ浴の例、実施例8はスズ−鉛合金メッキ浴の例、実施例9はスズ−ニッケル合金メッキ浴の例である。
実施例1〜9は本発明のジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物がベンゾチアゾールジスルフィドスルホン酸化合物である例、同様に実施例10〜11はベンゾオキサゾールジスルフィドスルホン酸化合物の例、実施例12〜13はベンズイミダゾールジスルフィドスルホン酸化合物の例である。
【0044】
(1)実施例1
下記の組成でスズメッキ浴を建浴した。
イセチオン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
硫酸(比重1.84) 100g/L
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO20) 10g/L
カテコール 0.5g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 1g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:30℃
【0045】
(2)実施例2
下記の組成でスズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.8g/L
エタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルチオ尿素 16g/L
ジスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO20) 10g/L
ハイドロキノン 1g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム 0.4g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドモノスルホン酸カリウム 0.8g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0046】
(3)実施例3
下記の組成でスズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Cu2+として) 3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
1−ナフトールポリエトキシレート(EO10) 10g/L
ベンザルアセトン 0.2g/L
ジ(4−メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.8g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0047】
(4)実施例4
下記の組成でスズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 55g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
トリスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO23) 10g/L
ジ(6−クロロベンゾチアゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.8g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0048】
(5)実施例5
下記の組成でスズ−インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 10g/L
スルファミン酸インジウム(In3+として) 10g/L
スルファミン酸 130g/L
アミノカプロン酸 60g/L
グリシン 50g/L
ジメチルアルキルベタイン 5g/L
ハイドロキノン 0.2g/L
ジ(6−メトキシベンゾチアゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 1.2g/L
イオン交換水 残部
pH(アンモニアで調整) 2.0
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0049】
(6)実施例6
下記の組成でスズ−亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
スルホコハク酸第一スズ(Sn2+として) 56.4g/L
メタンスルホン酸亜鉛(Zn2+として) 3.6g/L
スルホコハク酸 100g/L
アスコルビン酸 2g/L
ビスフェノールFポリエトキシレート(EO12) 3g/L
ラウリルアミンポリエトキシレート(EO15) 1g/L
ジ(6−ニトロベンゾチアゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.5g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0050】
(7)実施例7
下記の組成でスズ−アンチモン合金メッキ浴を建浴した。
硫酸第一スズ(Sn2+として) 25g/L
塩化アンチモン(Sb3+として) 0.87g/L
硫酸 100g/L
フッ化アンチモン 5g/L
ゼラチン 0.5g/L
フェノール 5g/L
ジ(6−メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィドトリスルホン酸 0.5g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:45℃
【0051】
(8)実施例8
下記の組成でスズ−鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸鉛(Pb2+として) 4.2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 110g/L
1−ナフトールポリエトキシレート(EO10) 7g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 0.5g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム 0.3g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0052】
(9)実施例9
下記の組成でスズ−ニッケル合金メッキ浴を建浴した。
硫酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.75g/L
グルコン酸ナトリウム 220g/L
チオビス(ドデカエチレングリコール) 20g/L
硫酸ナトリウム 50g/L
ジ(6−クロロベンゾチアゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.3g/L
イオン交換水 残部
pH(水酸化ナトリウムで調整) 4.0
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0053】
(10)実施例10
下記の組成でスズメッキ浴を建浴した。
イセチオン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
硫酸(比重1.84) 100g/L
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO20) 10g/L
カテコール 0.5g/L
ジベンゾオキサゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 1g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:30℃
【0054】
(11)実施例11
下記の組成でスズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.8g/L
エタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルチオ尿素 16g/L
ジスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO20) 10g/L
ハイドロキノン 1g/L
ジ(6−メチルベンゾオキサゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.8g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0055】
(12)実施例12
下記の組成でスズメッキ浴を建浴した。
イセチオン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
硫酸(比重1.84) 100g/L
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO20) 10g/L
カテコール 0.5g/L
ジベンズイミダゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 1g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:30℃
【0056】
(13)実施例13
下記の組成でスズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.8g/L
エタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルチオ尿素 16g/L
ジスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO20) 10g/L
ハイドロキノン 1g/L
ジ(6−メトキシベンズイミダゾリル)ジスルフィド
−ジスルホン酸二ナトリウム 0.8g/L
イオン交換水 残部
[メッキ温度]
浴温:25℃
【0057】
(14)比較例1
前記実施例1のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例1と同様に建浴して、比較例1のスズメッキ浴とした。尚、浴温条件も実施例1と同じである(後述の比較例2〜13でも、浴温条件は相当する実施例と同じである)。
【0058】
(15)比較例2
前記実施例2のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例2と同様に建浴して、比較例2のスズ−銀合金メッキ浴とした。
【0059】
(16)比較例3
前記実施例3のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例3と同様に建浴して、比較例3のスズ−銅合金メッキ浴とした。
【0060】
(17)比較例4
前記実施例4のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例4と同様に建浴して、比較例4のスズ−ビスマス合金メッキ浴とした。
【0061】
(18)比較例5
前記実施例5のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例5と同様に建浴して、比較例5のスズ−インジウム合金メッキ浴とした。
【0062】
(19)比較例6
前記実施例6のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例6と同様に建浴して、比較例6のスズ−亜鉛合金メッキ浴とした。
【0063】
(20)比較例7
前記実施例7のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例7と同様に建浴して、比較例7のスズ−アンチモン合金メッキ浴とした。
【0064】
(21)比較例8
前記実施例8のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例8と同様に建浴して、比較例8のスズ−鉛合金メッキ浴とした。
【0065】
(22)比較例9
前記実施例9のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例9と同様に建浴して、比較例9のスズ−ニッケル合金メッキ浴とした。
【0066】
(23)比較例10
前記実施例10のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾオキサゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例10と同様に建浴して、比較例10のスズメッキ浴とした。
【0067】
(24)比較例11
前記実施例11のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾオキサゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例11と同様に建浴して、比較例11のスズ−銀合金メッキ浴とした。
【0068】
(25)比較例12
前記実施例12のメッキ浴を基本として、本発明のベンズイミダゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例12と同様に建浴して、比較例12のスズメッキ浴とした。
【0069】
(26)比較例13
前記実施例13のメッキ浴を基本として、本発明のベンズイミダゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例13と同様に建浴して、比較例13のスズ−銀合金メッキ浴とした。
【0070】
そこで、実施例1〜13及び比較例1〜13で得られた各スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて、下記の電流密度範囲並びに条件でラックメッキを行い、各電流密度での電着皮膜の均一性及び平滑性の優劣を評価した。
《メッキ皮膜の均一性及び平滑性の評価試験例1》
即ち、上記各メッキ浴をスターラー撹拌しながら、白金被覆チタンを陽極とし、銅板を陰極として、実施例又は比較例で示した所定の浴温にて、電流密度、メッキ時間を種々に変化させながら、ラック方式により電気メッキを施して、各電流密度におけるメッキ皮膜の状態を目視観察した。評価基準は次の通りである。
◎:非常に平滑で均一な外観を示した。
○:皮膜外観に異常がなく、実用レベルの外観を示した。
△:皮膜粒子が粗く、均一性及び平滑性が実用レベルからやや劣る外観を示した。
×:平滑性に劣り、ムラがあり、均一性に欠ける外観を示した。
【0071】
下表はその試験結果である。
No. ハルセルテストの電流密度範囲 実施例 比較例
1 0.5〜5A/dm2 ◎ △
2 1〜5A/dm2 ◎ △
3 1〜5A/dm2 ◎ ×
4 1〜5A/dm2 ◎ ×
5 5〜15A/dm2 ◎ ×
6 2〜10A/dm2 ◎ ×
7 1〜5A/dm2 ○ ×
8 1〜20A/dm2 ◎ △
9 0.1〜3A/dm2 ○ ×
10 0.5〜5A/dm2 ◎ △
11 1〜5A/dm2 ◎ △
12 0.5〜5A/dm2 ◎ △
13 1〜5A/dm2 ◎ △
【0072】
次いで、実施例1〜13及び比較例1〜13で得られた各スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて、所定の銅板にメッキ皮膜を形成し、ハンダ濡れ性の優劣を評価した。
《メッキ皮膜のハンダ濡れ性の評価試験例2》
25mm×25mmの圧延銅板の試験片に実施例及び比較例の各メッキ浴を用いて、各例に示した所定の浴温並びに下表に示す電流密度でスズ又はスズ合金メッキを施した後、フラックス(ロジン25%含有イソプロパノール溶液)中に5秒間浸漬し、次いで250℃に保持した溶融はんだ槽に5秒間浸漬し、イソプロパノールで洗浄した後、その表面のハンダ濡れ性の具合を目視観察した。ハンダ濡れ性の評価基準は次の通りである。
◎:95%以上濡れていた。
○:90%以上濡れていた。
×:濡れが90%未満であった。
【0073】
下表はその試験結果である。
No. 陰極電流密度 実施例 比較例
1 2A/dm2 ◎ ×
2 3A/dm2 ◎ ×
3 3A/dm2 ◎ ×
4 3A/dm2 ◎ ×
5 7.5A/dm2 ◎ ×
6 5A/dm2 ○ ×
7 3A/dm2 ○ ×
8 10A/dm2 ◎ ×
9 0.25A/dm2 ○ ×
10 0.5〜5A/dm2 ◎ ×
11 1〜5A/dm2 ○ ×
12 0.5〜5A/dm2 ◎ ×
13 1〜5A/dm2 ○ ×
【0074】
次いで、下記の通り、実施例14〜15及び比較例14〜15の各無電解スズメッキ浴を建浴して、TABのフィルムキャリアのインナリード上にスズメッキ皮膜を形成し、皮膜外観の析出状態の優劣を評価した。
《スズメッキ皮膜の外観評価試験例3》
先ず、無電解スズメッキ浴を次の通りに建浴した。
[メッキ浴の実施例]
(1)実施例14
下記の組成で無電解スズメッキ浴を建浴した。
3−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.25モル/L
エタンスルホン酸 0.50モル/L
クエン酸 0.50モル/L
チオ尿素 2.00モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
1−ナフトールポリエトキシレート(EO10) 5.0g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 0.4g/L
【0075】
(2)実施例15
下記の組成で無電解スズメッキ浴を建浴した。
3−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.35モル/L
3−ヒドロキシプロパン−1−プロパンスルホン酸 1.00モル/L
リンゴ酸 1.00モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.10モル/L
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 6.0g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム 0.6g/L
【0076】
(3)比較例14
前記実施例14のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例14と同様に建浴して、比較例14の無電解スズメッキ浴とした。
【0077】
(4)比較例15
前記実施例15のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例15と同様に建浴して、比較例15の無電解スズメッキ浴とした。
【0078】
[評価試験例]
次いで、SLP(電解銅箔の一種)でパターン形成したTABのフィルムキャリアを被メッキ物として、このフィルムキャリアのインナリード上に、上記実施例14〜15及び比較例14〜15の各スズメッキ浴を用いて、浴温65℃、メッキ時間5分の条件で無電解メッキを施して、得られたスズ皮膜の析出状態を微視観察し、皮膜外観を評価した。
当該評価基準は次の通りである。
○:異常粒子が認められなかった。
×:異常粒子が発生した。
【0079】
下表はその試験結果である。
スズメッキ皮膜の外観
実施例14 ○
実施例15 ○
比較例14 ×
比較例15 ×
【0080】
次いで、下記の通り、本発明の化合物を含有した実施例16〜18及び比較例16〜18の各スズ又はスズ合金メッキ浴を建浴し、当該各電気メッキ浴を用いてバレルメッキを施して、導電性媒体(ダミーボール)の凝集抑制度合の優劣を評価した。
《バレルメッキにおける凝集抑制評価試験例4》
先ず、スズ又はスズ合金メッキ浴を次の通りに建浴した。
[メッキ浴の実施例]
(1)実施例16
下記の組成でスズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
2−プロパノールスルホン酸銀(Ag+として) 0.1g/L
イセチオン酸(遊離酸として) 200g/L
チオ尿素 3g/L
2−ナフトールポリエトキシレート(EO10) 10g/L
プルロニックTR−720 1g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 0.3g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム 0.2g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドモノスルホン酸カリウム 0.1g/L
イオン交換水 残部
尚、上記プルロニックTR−720は旭電化工業(株)製の市販品である。
【0081】
(2)実施例17
下記の組成でスズメッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 15g/L
イセチオン酸(遊離酸として) 35g/L
グルコン酸カリウム 120g/L
コハク酸 10g/L
オレイルアミンポリエトキシレート(EO15) 2g/L
ラウリルイソキノリニウムメタンスルホネート 0.5g/L
ヒドロキノン 0.3g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドトリスルホン酸三ナトリウム 0.7g/L
イオン交換水 残部
【0082】
(3)実施例18
下記の組成でスズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 10g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 30g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO12) 3g/L
ポリオキシエチレンラウリルアンモニウム(EO15) 3g/L
グルコン酸ナトリウム 100g/L
クエン酸ナトリウム 50g/L
1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドジスルホン酸二ナトリウム 0.4g/L
ジベンゾチアゾリルジスルフィドモノスルホン酸カリウム 0.1g/L
イオン交換水 残部
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.0
【0083】
(4)比較例16
前記実施例16のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例16と同様に建浴して、比較例16のスズ−銀合金メッキ浴とした。
【0084】
(5)比較例17
前記実施例17のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例17と同様に建浴して、比較例17のスズメッキ浴とした。
【0085】
(6)比較例18
前記実施例18のメッキ浴を基本として、本発明のベンゾチアゾールジスルフィドジスルホン酸化合物を添加せず、その他の組成は実施例18と同様に建浴して、比較例18のスズメッキ浴とした。
[評価試験例]
浸漬型水平回転バレルメッキ装置(コンドウ社製; 商品名ミニバレル)を用いて、サイズ500μmのスチールボールを被メッキ物とし、直径約10mmの鋼球を凝集粉砕用ダミーボール及び導電性媒体として、投入容量100mlの被メッキ物と投入量10個の導電性媒体を共にバレルに収容し、当該バレルを実施例16〜18及び比較例16〜18の各スズ又はスズ合金メッキ浴に浸漬して、下記の条件でバレルメッキ処理をした。
浴温:25℃
陰極電流密度:0.4A/dm2
メッキ時間:60分
次いで、メッキ終了後、被メッキ物から凝集粉砕用ダミーボールを取り除き、被メッキ物をメッシュ(0.85mm)の篩(ふるい)を用いて篩い分け操作して、下式で表される被メッキ物の残留率(%)により、各スズ又はスズ合金メッキ浴の凝集防止効果の優劣を評価した。
被メッキ物の残留率(%)=
篩に残った被メッキ物の数(重量)/バレルに収容した被メッキ物の総数(総重量)
【0086】
下表はその試験結果である。
被メッキ物の残留率(%)
実施例16 0.1
実施例17 0.3
実施例18 0.4
比較例16 18.5
比較例17 22.3
比較例18 20.7
【0087】
《各種試験の総合評価》
本発明の化合物を添加しないブランク例である比較例1〜13のメッキ浴を用いて、陰極電流密度範囲を変化させてラックメッキを行った試験例1では、得られた電着皮膜の均一性や平滑性は劣り、或は実用レベルを下廻るのに対して、本発明の化合物を添加した実施例1〜13では、広い電流密度範囲において多くが平滑性や均一性に優れ、それ以外の実施例でも実用レベルを充分に具備していた。
また、ハンダ濡れ性の試験例2においても、比較例1〜13ではいずれの評価も×であったが、実施例1〜13では半分以上の例で◎の評価であり、それ以外の実施例も○の評価であった。
このように、上記実施例1〜13で得られたスズ又はスズ合金の電着皮膜では、平滑性や均一性、ハンダ濡れ性に優れることから、本発明の化合物を添加したメッキ浴を用いて無電解メッキを行ったところ、得られたスズ皮膜の外観は試験例3に見るように、異常粒子は認められず、皮膜外観についても優れていた。尚、本発明の化合物を添加しないブランク例である比較例14〜15では、得られたスズ皮膜に異常粒子が発生した。
従って、メッキ皮膜の広い電流密度範囲における平滑性や均一性、或は、皮膜外観やハンダ濡れ性については、本発明の化合物を添加したスズ又はスズ合金メッキ浴は、添加しないメッキ浴に対して顕著な優位性があり、しかも、電気メッキ又は無電解メッキを問わず、この優位性は確認された。
【0088】
本発明の化合物を添加したスズ又はスズ合金メッキ浴をバレルメッキに適用すると、試験例4に見るように、添加しないブランク例(比較例16〜18)では、いずれも被メッキ物の残留率が高くて、篩い分け作業が容易でないのに対して、添加した実施例16〜18では、いずれも残留率がきわめて低く、バレルメッキを円滑に実施できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一スズ塩と、第一スズ塩及び銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかよりなる可溶性塩と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表されるジベンゾアゾールジスルフィドスルホン酸化合物とを
【化2】

(式(1)中、XはS、N、Oである。;m及びnは0〜2の整数である。但し、mとnが共に0になることはない。;R1及びR2はC1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、カルボキシルである。;a及びbは0〜2の整数である。;AはH、Na、Kである。)
含有することを特徴とするスズ又はスズ合金メッキ浴である。
【請求項2】
さらに、錯化剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、導電性塩、pH調整剤、緩衝剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載のズ又はスズ合金メッキ浴。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いて被メッキ物にバレルメッキを施すことを特徴とするバレルメッキ方法。
【請求項4】
被メッキ物が、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線、プリント基板、半導体集積回路、モジュールより選ばれた電子部品であることを特徴とする請求項3に記載のバレルメッキ方法。

【公開番号】特開2010−265491(P2010−265491A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115600(P2009−115600)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】