説明

スズ含有半透明干渉顔料

本発明は、無彩色のマストーンを有する半透明の干渉顔料に関する。この顔料は、基材、ならびに金属スズおよび少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜を有する。本発明はまた、この顔料の製造法、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、金属スズおよび追加として少なくとも1種の金属酸化物を含んだ被膜とを含む、無彩色のマストーンを有する半透明の干渉顔料、ならびにこれらの顔料の製造法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な分野におけるエフェクト顔料使用の重要性が増加している。自動車産業分野、プラスチックの着色、化粧品だけでなく、印刷産業分野においてもエフェクト顔料がますます使用されており、これはエフェクト顔料で着色した製品に特定の光沢または特定の色の効果を付与することを目的としている。一般に、エフェクト顔料は、例えば、金属、SiO2の雲母または合成フレーク、ガラスまたはAl23を含み、例えば金属または金属酸化物の1以上の層で被覆されている基材である。特に、金属酸化物は、析出により基材に付着させることができ、極めて実質上化学的に不活性であるため、層材料として頻繁に使用されている。使用されている一般の金属酸化物は二酸化チタンである。二酸化チタンのルチル変態が、本発明における好ましい変態である。可能である最も高いルチル化率を達成するために、すでに付着させておいた二酸化スズ層上に二酸化チタン層を析出させる。二酸化スズは、析出した二酸化チタン層のルチル変態への結晶化を抑制する。
【0003】
新規の色彩効果を有する新規顔料の開発中、光沢顔料における金属酸化物層の還元も、例えば、ドイツ特許第19953655号、ドイツ特許第19843014号、ドイツ特許第19822046号、ドイツ特許第19618562号、ドイツ特許第19511697号、またはドイツ特許第19511696号に記載されている。これら明細書で使用された還元作用物質は、例えば、アンモニア、炭素、炭化水素、または金属である。該還元作用物質使用の著しく不利な点は、これら還元作用物質、特に炭素を用いて還元される層の汚染であり、その結果実際に所望される色彩効果に好ましくない変化をもたらす。金属を使用する還元も、この方法では、追加成分が被膜に導入され、同様に、顔料の特性に好ましくない変化をもたらす恐れがあるので不利である。さらに、最上層として存在する二酸化チタンの還元は従来技術の全顔料において行われているが、その結果青みがかった色を有する亜酸化チタンの形成をもたらす。これら着色亜酸化物が、低減の主な標的である。
【0004】
特定の還元例では、顔料はドイツ特許第19522267号に記載のスズ含有灰色顔料であり、二酸化スズおよび少なくとも1種の他の金属酸化物、ならびにコロイド状の有機粒子で被覆した基材の熱分解により得られる。そこでの熱分解は、900〜1100℃の温度で酸素を排除して実施される。そこに記載されている顔料は、灰色のマストーンおよび銀色の干渉を示しているが、該顔料は、水平な角度に傾けると、青色の色合い、または黄色から褐色の着色も呈する。得られる青色の色合いは、すでに上記したように、二酸化チタン含有層の還元で形成する恐れがある亜酸化チタンの形成に起因している。しかし、この青色の色合いは、該顔料で着色した物品の銀色の印象を歪めるため、あまり望ましくない。さらに、常にコロイドの混入が完全に行われるとは限らないか、または浸出作用が起こり、即ち、顔料が添加されている対応媒体中にコロイドが拡散することができる。また、この顔料は強い光沢効果を示さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高光沢を有し、いかなる視角からも青色着色を示さず、その結果全体的に無彩色である、灰色のマストーンおよび銀色の干渉を有する新規のエフェクト顔料の需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、基材と、金属スズおよび追加として少なくとも1種の金属酸化物を含んだ被膜とを含む、無彩色のマストーンを有する半透明の干渉顔料に関する。
【0007】
本発明による顔料は、高光沢を示し、灰色であり、視角に関係なく青色の色合いを全く示さない。また、これらは、気品ある外観の干渉、例えば銀色の干渉を示す。さらに、金属スズを含む被膜は、例えばリチウム、ナトリウム、カルシウム、または他の金属など、炭化水素または金属を使用する還元に由来する、炭素または他の不純物が存在しない。その上、ブリーディング作用、すなわち顔料の特定構成物質が顔料表面に、または顔料外へ完全に拡散する作用が起こらない。
【0008】
本発明は同様に、二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜を被覆した基材を、窒素および水素を含む還元性ガス混合物中で反応させて、金属スズを形成することによる、本発明による干渉顔料の調整法に関する。
【0009】
本発明による顔料は、様々な用途に用いることができる。したがって、本発明は同様に、化粧品、表面被膜、インク、プラスチック、フィルムにおける、証券印刷における、公文書および身元証明書でのセキュリティ機能における、レーザーマーキング用における、種子の着色用における、食品の着色用または薬剤被膜における、あるいは顔料組成物および乾燥調合物の製造用における、本発明に従った干渉顔料の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による顔料は、合成または天然の雲母、層状珪酸塩、ガラス、ホウケイ酸塩、SiO2、Al23、TiO2、黒鉛、および/またはBiOClを含有してもよい基材に基づく。
【0011】
本発明の他の一実施形態では、金属酸化物、酸化金属水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および/またはそれらの混合物を含む1以上の層が、本発明による顔料の、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜と基材との間に存在してよい。
【0012】
金属酸化物、酸化金属水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物、またはそれらの混合物の層は、低屈折率(屈折率が<1.8)でも高屈折率(屈折率が>1.8)でもよい。適する金属酸化物および酸化金属水和物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン、特に二酸化チタン、酸化チタン水和物、およびそれらの混合物、例えばチタン鉄鉱または擬板チタン石など、層として適用される全ての金属酸化物または酸化金属水和物である。用いることができる金属亜酸化物は、例えば、亜酸化チタンである。適する金属は、例えば、鉄、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、金、チタン、銅、または合金であり、適する金属フッ化物は、例えば、フッ化マグネシウムである。用いることができる金属窒化物または金属酸窒化物は、例えば、金属類、チタン、ジルコニウム、および/またはタンタルの窒化物または酸窒化物である。金属酸化物、金属、金属フッ化物、および/または酸化金属水和物の層、極めて特に好ましくは金属酸化物および/または酸化金属水和物の層を、基材に付着させるのが好ましい。さらに、高屈折率および低屈折率の金属酸化物、酸化金属水和物、金属、または金属フッ化物層を有する多層構造が存在してもよく、高屈折率および低屈折率の層が交互にあるのが好ましい。
【0013】
特に適する高屈折率の金属は、例えば、TiO2、ZrO2、ZnO、SnO2、および/またはそれらの混合物である。TiO2が特に好ましい。本発明におけるこれらの層厚は、いずれの場合も約3〜300nm、好ましくは20〜200nmである。
【0014】
特に適する低屈折率の金属は、例えば、SiO2、SiO(OH)2、Al23、AlO(OH)、B23、MgF2、および/またはそれらの混合物である。SiO2が特に好ましい。これら金属の個々の層厚は3〜300nmの間であり、20nmを超え、最大200nmまでの厚さが好ましい。
【0015】
一般に、本発明による顔料の半透明性を保持するために、層の材料に応じて、追加層の材料を選択し、その層厚を設定すべきである。
【0016】
用いる基材の形および大きさそれ自体は重要ではない。基材は、不規則な形、球状、または薄片状でよい。球状基材は、例えば、SiO2またはガラスからなり、直径が0.2〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。基材は薄片状が好ましい。 薄片状基材は通常、厚さが0.05〜5μmの間、特に0.1〜4.5μmの間である。干渉顔料の長さまたは幅の大きさは、1〜250μmの間でよいが、2〜200μmの範囲が好ましく、特に2〜100μmの範囲が非常に好ましい。基材の大きさは、特定用途の要求仕様に合わせることができる。
【0017】
上記基材は、外側の光学的活性層として作用し、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜を備えている。金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜の層厚は、1〜300nm、好ましくは1〜100nmである。被膜中の金属スズの比率は、被膜を基準として0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜20重量%、特には0.1〜10重量%である。酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化亜鉛は、少なくとも1種の金属酸化物として適している。被膜中の金属スズが酸化スズとの組合せで存在する場合、これは最も単純な実施形態で本発明に従った製造工程における不完全な還元から生じる。追加の金属酸化物は、酸化スズ以外の酸化物が好ましい。被膜中の金属スズは、追加の金属酸化物としての酸化チタンとの組合せで存在するのが極めて特に好ましい。また、単一または複合の他の金属酸化物、例えば、チタン鉄鉱または擬板チタン石がスズ含有被膜に存在してよい。
【0018】
他の実施形態では、本発明による顔料は、更に有機被膜を備えていてもよい。こうした被膜の例が、例えば、欧州特許第0632109号、米国特許第5759255号、ドイツ特許第4317019号、ドイツ特許第3929423号、ドイツ特許第3235017号、欧州特許第0492223号、欧州特許第0342533号、欧州特許第0268918号、欧州特許第0141174号、欧州特許第0764191号、国際公開98/13426号、または欧州特許第0465805号に示されており、その開示内容を参照により本明細書に組み込む。すでに上記した光学的性質に加えて、例えば、オルガノシラン、または有機チタン酸塩、または有機ジルコン酸塩を含有する有機被膜を含む顔料は、例えば、水分および光などの風化作用に対する安定性がさらに増加し、とりわけ工業用塗料用に、および自動車産業分野で特に関心がもたれる。安定化は、追加の被膜の無機成分により向上させることができる。全般に、追加の安定化被膜の各含有量は、本発明による干渉顔料の光学的性質に著しく作用しないように選択されるべきである。
【0019】
本発明による顔料は、窒素および水素を含む還元性ガス混合物中で、二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜で被覆された基材を反応させて金属スズを形成することにより得ることができる。これは、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜の提供を可能にする。
【0020】
最も単純な実施形態では、1つの二酸化スズ含有被膜だけが存在し、その結果、本発明による工程が実行された後、金属スズおよび酸化スズを含む被膜の形成が生じる。少なくとも1種の他の金属酸化物が、追加として二酸化スズ含有被膜に存在するのが好ましい。
【0021】
しかし、従来技術で記載した還元法は、本発明に従う還元法とは手順が著しく異なる。窒素および水素を含む還元性ガス混合物の使用によって、得られた層の炭素または金属による汚染を根本的に防止する。同時に、亜酸化チタンの形成による青色着色は、本発明による方法の使用では観察されず、これは、従来技術の知識に基づくと、驚くべき状況である。
【0022】
上記顔料製造のための本発明による方法では、二酸化スズおよび所望により追加として少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜で被覆された基材を、窒素および水素を含む還元性ガス混合物中で反応させて金属スズを形成する。この方法で、金属スズを含む被膜には炭素が確実に存在しない。所望により追加として少なくとも1種の他の金属酸化物を有する二酸化スズ含有被膜は、当業者に公知の方法、例えば、スズ塩、または追加として堆積させる金属酸化物に対応する塩を含む対応水溶液からの析出により製造することができる。析出は、水/溶媒の混合物中で行うこともできる。
【0023】
二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜は、二酸化スズおよび少なくとも1種の他の金属酸化物が分離した層の形であるのが好ましく、少なくとも1種の他の金属酸化物の層が二酸化スズの層に付着しているのが特に好ましい。これは、用いられる他の金属酸化物が好ましくは二酸化チタンである場合に特に適用される。この構造を有する、本発明による顔料の前駆体である顔料は知られている。それらは、一般に二酸化スズ層が続く二酸化チタン層のルチル化のために働いているエフェクト顔料である。したがって、本発明による方法でこれら顔料を使用すると、二酸化スズ層が2つの機能を果たす。最初に、その後付着する二酸化チタン層を確実にルチル化し、次に、本発明による方法を使用して、付着した二酸化スズの還元により金属スズを形成する。
【0024】
二酸化チタンの適用に関しては、米国特許第3553001号に記載の方法を用いるのが好ましい。そこでは、無機チタン塩の水溶液を、約50〜100℃、特に70〜80℃まで加熱された、所望によりすでに予備被覆した基材の懸濁液にゆっくり添加し、塩基を同時に定量添加することにより、pHを0.5〜5、特に約1.5〜2.5に、実質的に一定に保持する。TiO2酸化物水和物が望ましい層厚に達すると同時に、チタン塩溶液および塩基の添加を止める。この方法は、滴定法としても知られており、過剰なチタン塩は存在しないが、代わりに、水和TiO2の均一な被覆に必要であって被覆される基材の表面により吸収され得る量だけが時間単位当り常に存在するという特徴を有する。したがって、被覆される表面に堆積されない水和二酸化チタンの粒子は、溶液中に存在しない。
【0025】
この反応に用いられる、窒素および水素を含む還元性ガス混合物は、水素含有量が、2.5〜25体積%、特に4〜10体積%、極めて特に好ましくは5〜8体積%の範囲である。
【0026】
二酸化スズおよび少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜の還元は、500〜1200℃、好ましくは600〜1000℃、特に好ましくは700〜900℃の温度で行われる。焼成持続時間は、15〜240分、好ましくは30〜120分、特に30〜90分である。
【0027】
さらに、本発明によるような方法では、外部層として有機被膜を追加して付着させてもよい。この種類の被覆方法の例は、とりわけ欧州特許第0632109号、米国特許第5759255号、ドイツ特許第4317019号、ドイツ特許第3929423号、ドイツ特許第3235017号、欧州特許第0492223号、欧州特許第0342533号、欧州特許第0268918号、欧州特許第0141174号、欧州特許第0764191号、国際公開第98/13426号、または欧州特許第0465805号に示されている。有機被膜およびそれに関連する利点の例は、本発明による顔料の理論展開下で、すでに上記に記載した。有機被膜の付着工程ステップは、本発明による方法の他のステップの後に直接行われる。本発明で適用する基材は、全体的に、顔料の0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の重量比を有するにすぎない。
【0028】
本発明による干渉顔料は用途が広く、多くの分野で用いることができる。したがって、本発明は同様に、化粧品、表面被膜、インク、プラスチック、フィルムにおいて、証券印刷において、公文書および身元証明書におけるセキュリティ機能において、種子の着色用、食品の着色用または薬剤被膜において、レーザーマーキング用に、ならびに顔料組成物および乾燥製造物の製造用における、本発明による顔料の使用に関する。
【0029】
化粧品の場合、本発明による干渉顔料は、例えば、マニキュア液、着色パウダー、口紅またはアイシャドー、石鹸、練り歯磨き等など、装飾化粧品の製品および配合物に特に適している。本発明による干渉顔料は、配合物中、全種類の化粧品原料および助剤と組み合わせることも当然可能である。これらには、例えば、ベントナイト、ヘクトライト、二酸化ケイ素、Caケイ酸塩、ゼラチン、高分子量の炭水化物などの、例えば、増粘剤およびレオロジー添加剤および/または界面活性助剤等など、とりわけ、一般的に適用特性を決定する油、脂肪、ワックス、皮膜形成剤、防腐剤、および助剤が挙げられる。本発明による干渉顔料を含む配合物は、親油性、親水性、または疎水性の種類に属していてよい。水性および非水性の別々の相を有する異種配合の場合、本発明による粒子は、いずれの場合にも、2つの相のうち1つにしか存在しないか、またあるいは両方の相に分散して存在することができる。
【0030】
水性配合物のpH値は、1〜14、好ましくは2〜11、特に好ましくは5〜8である。配合物中の本発明による干渉顔料の濃度は、いかなる制限も受けない。その濃度は、用途に依存するが、0.001(濯ぎ落とす製品、例えばシャワー用ジェル)〜99%(例えば特定用途の光沢効果のある物品)の間である。さらに本発明による干渉顔料は、化粧品の活性化合物と組み合わせてもよい。適する活性化合物は、例えば、昆虫駆除剤、UV A/BC保護フィルター(例えばOMC、B3、MBC)、老化防止活性化合物、ビタミンおよびその誘導体(例えば、ビタミンA、C、Eなど)、セルフタンニング剤(例えば、とりわけDHA、エリトルロース)、およびさらに例えばビサボロール、LPO、エクトイン、エンブリカ、アラントイン、バイオフラボノイドおよびその誘導体などの化粧品活性化合物である。
【0031】
表面被膜およびインクにおいて干渉顔料を使用する場合、例えば、粉末被膜、自動車塗料、グラビア用印刷インク、オフセット印刷、スクリーンまたはフレキソ印刷、および屋外用途における表面被膜用など、当業者に公知の全応用分野で可能である。本発明における表面被膜およびインクは、例えば、放射線硬化、物理的乾燥、または化学的硬化していてよい。印刷インクまたは液状表面被膜の製造には、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド、ポリビニルブチレート、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、スターチまたはポリビニルアルコール、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物をベースにした多様なバインダー、特に水溶性の種類が適している。該表面被膜は、粉末被膜、あるいは水または溶媒ベースの被膜でよく、被膜構成物質の選択は、当業者の一般知識による。粉末被膜用の一般的な高分子バインダーは、例えば、ポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、アクリレート、またはそれらの混合物である。
【0032】
さらに、本発明による干渉顔料は、例えば農業用シート、赤外反射膜および板、贈答用金属箔、プラスチック容器、および当業者に公知の全用途に関する成形品における、フィルムおよびプラスチックに使用できる。本発明による干渉顔料を混入するのに適するプラスチックは、全ての一般的なプラスチック、例えば熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。用いられる可能な施用およびプラスチックの説明、加工法、ならびに添加剤は、例えば、RD472005に、またはR.Glausch、M.Kieser、R.Maisch、G.Pfaff、J.Weitzel、Perlglanzpigmente[Pearlescent Pigments]、Curt R.Vincentz Verlag、1996、83ff.、に示されており、開示内容を本明細書に組み込む。
【0033】
その上、本発明による干渉顔料は、証券印刷において、ならびに例えば入場券、職員身分証明書、銀行券、小切手および小切手保証カードなどの、例えば偽造防止カードおよび身元証明書、ならびに他の偽造防止文書のセキュリティ関連機能において使用するのにも適している。農業分野において、この干渉顔料を種子および他の出発原料の着色に、さらに食品を着色する食品部門で使用することができる。同様に、本発明による干渉顔料を、例えば、錠剤または糖衣錠など薬剤の被膜を着色するのに用いることができる。
【0034】
例えば、Ullmann、Vol.15、pp.457ff.、Verlag VCHに記載されている公知の全熱可塑性樹脂を、本発明による干渉顔料を使用するレーザーマーキングに使用できる。適するプラスチックは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル−エステル、ポリエーテル−エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアセタート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリロニトリルスチレンアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、あるいはそれらのコポリマーおよび/または混合物である。
【0035】
本発明による干渉顔料は、プラスチック粒を干渉顔料と混合し、次いで熱作用で混合物の付形をすることにより、熱可塑性樹脂に混入する。干渉顔料の混入中、全て当業者には公知である、作業環境下で温度安定な接着剤、有機ポリマー相容性溶媒、安定剤、および/または界面活性剤を、プラスチック粒に添加することができる。通常着色したプラスチック粒は、適する混合装置にプラスチック粒を導入し、任意の添加剤で該粒子を湿潤し、次いで干渉顔料に添加して混合することにより製造される。このようにして得られた混合物は、次いで、押出機または射出成形機内で直接処理することができる。マーキングは、実質的には適当な放射線を使用して行う。
【0036】
マーキング中、通常157〜10600nmの範囲、特に300〜10600nmの範囲の波長を有する高エネルギーの放射線を使用するのが好ましい。本発明では、CO2レーザー(10600nm)、Nd:YAGレーザー(1064または532nm)、または紫外パルスレーザー(エキシマレーザー)を例証として挙げることができる。エキシマレーザーは次の波長を有する。F2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)、355nm(3倍の周波数)または265nm(4倍の周波数)の波長を有する周波数逓倍化Nd:YAGレーザー。特に好ましいのは、Nd:YAGレーザー(1064または532nm)およびCO2レーザーの使用である。用いるレーザーのエネルギー密度は、通常0.3mJ/cm2〜50J/cm2、好ましくは0.3mJ/cm2〜10J/cm2の範囲である。
【0037】
レーザー刻印は、パルスレーザー、好ましくはCO2またはNd:YAGレーザーの波線経路へ試験片を入れることにより行う。さらに、例えばマスク技術を介するエキシマレーザーを使用する刻印が可能である。しかし、使用したレーザー光吸収物質の高吸収領域に波長を有する他の従来型レーザーを使用しても、望ましい結果を達成することができる。得られるマーキングは、使用したレーザーおよびプラスチック系または被膜系の照射時間(パルスレーザーの場合はパルス数)および照射出力により決定する。使用したレーザー出力は特定の用途に依存し、それぞれ別々の実例において当業者により容易に決定することができる。
【0038】
パルスレーザーを使用する場合、パルス周波数は通常1〜30kHzの範囲である。本発明による方法で用いることができる対応レーザーが市販されている。
【0039】
本発明による干渉顔料は、上記全プラスチックのレーザーマーキングに使用することができる。このようにして着色されたプラスチックは、電気、電子、および自動車産業における成形品として使用することができる。レーザー刻印応用のさらに重要な分野は、身分証明書、および動物の個別標識付け用プラスチックマークにある。プラスチック中の干渉顔料の比率は、該用途におけるレーザーマーキングの場合、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に0.1〜3重量%である。本発明による顔料で着色されたプラスチックからなる加熱、通風、および冷却部門におけるケーシング、配管、キーキャップ、装飾ストリップおよび機能部品、またはスイッチ、プラグ、レバー、およびハンドルの標識付けおよび刻印は、接近するのが困難な場所でもレーザー光を用いて行うことができる。該マーキングは、拭き取りおよび引掻き抵抗性があり、後続の滅菌工程中安定であり、マーキング工程中衛生的に清潔な方法で施すことができるという事実により際立っている。
【0040】
上記応用分野において、本発明による干渉顔料は、全ての公知の有機または無機の染料および/または顔料とのブレンドにおける使用にも同様に適している。有機顔料および染料は、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、多環系顔料、カチオン性、アニオン性、または非イオン性の染料である。無機染料および顔料は、例えば、白色顔料、着色顔料、黒色顔料、またはエフェクト顔料である。適するエフェクト顔料の例は、通常、雲母、ガラス、Al23、Fe23、SiO2などをベースに単被覆または多重被覆されたフレークに基づいた金属エフェクト顔料、真珠箔顔料、または干渉顔料である。この顔料の構造および特定性質の例は、例えば、RD471001またはRD472005に示されており、本明細書においてその開示内容を参照により本発明に組み込む。さらに、本発明による顔料とブレンドするのに適するさらなる着色剤は、発光染料および/または顔料、ならびにホログラフィック顔料、またはLCP(液晶高分子)である。本発明による顔料は、任意の割合で市販の顔料および充填剤と混合することができる。
【0041】
挙げることができる充填剤は、例えば、天然および合成雲母、ナイロン粉末、純粋なメラミン樹脂または充填されたメラミン樹脂、タルク、ガラス、カオリン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、BiOCl、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素の酸化物または水酸化物、ならびにこれら物質の物理的または化学的組合せである。充填剤の粒子形状に関する制限はない。粒子形状は、例えば、要求条件に従って、薄片状、球状、または針状であってよい。
【0042】
本発明による干渉顔料は、1以上の本発明による粒子、バインダー、ならびに所望により1以上の添加剤を含む流動性の顔料組成物および乾燥配合物の調整にさらに適している。乾燥配合物は、水および/または溶媒、あるいは溶媒混合物を0〜8重量%、好ましくは2〜8重量%、特に3〜6重量%含む配合物も意味すると解釈される。乾燥配合物は、ペレット、粒、チップ、ソーセージ、またはブリケットの形状が好ましく、0.2〜80mmの粒径を有する。乾燥配合物は、特に、印刷インクの製造、および化粧品調合物に使用される。
【0043】
上記全ての特許出願、特許、および公告の全開示内容を、参考として本出願に提示する。
【0044】
下記実施例は、さらに詳細であるが、限定することなく、本発明を説明することを意図する。
【実施例】
【0045】
実施例1
脱イオン水1.9 l中、10〜60μmの粒径を有する雲母100gを攪拌しながら75℃に加熱する。懸濁液のpHを、5%塩化水素を使用して1.8に調節する。この後、(脱イオン水90ml中、SnCl4・5H2Oを3g、および濃塩酸10mlを含む)四塩化スズ溶液を計量添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。次いで30%四塩化チタン溶液(脱イオン水180gに溶解したTiCl4溶液180g、w=60%)を添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。生成物をろ過、洗浄、乾燥し、窒素および水素(水素の比率:8体積%)を含むガス混合物中850℃で還元して、銀干渉、無彩色の灰色マストーン、および高光沢を有する、金属スズを含む顔料を得る。
実施例2
脱イオン水1.9l中、10〜60μmの粒径を有する雲母100gを攪拌しながら75℃に加熱する。懸濁液のpHを、10%塩化水素を使用して3.0に調節する。次いで30%FeCl3溶液35gを計量投入し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。次いで懸濁液のpHを、5%塩化水素を使用して1.8に調節する。この後、(脱イオン水90ml中、SnCl4・5H2Oを3g、および濃塩酸10mlを含む)四塩化スズ溶液を計量添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。次いで30%四塩化チタン溶液(脱イオン水160gに溶解したTiCl4溶液160g、w=60%)を添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。生成物をろ過、洗浄、乾燥し、窒素および水素(水素の比率:8体積%)を含むガス混合物中850℃で還元して、銀干渉、無彩色の灰色マストーン、および高い隠ぺい力を有する、金属スズを含む光沢顔料を得る。
(ドイツ特許第19843014号による)比較例
脱イオン水2l中、10〜60μmの粒径を有する雲母100gを攪拌しながら75℃に加熱する。懸濁液のpHを、5%塩化水素を使用して1.8に調節する。この後、(脱イオン水90ml中、SnCl4・5H2Oを3g、および濃塩酸10mlを含む)四塩化スズ溶液を計量添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。次いで30%四塩化チタン溶液(脱イオン水180gに溶解したTiCl4溶液180g、w=60%)を添加し、その間pHを32%水酸化ナトリウム溶液の同時滴下により一定に保持する。生成物をろ過、洗浄、乾燥し、空気雰囲気中850℃で焼成する。得られるTiO2顔料100gを、シリコン粉末3gおよびCaCl21gと混合し、続いて窒素雰囲気下800℃で30分焼成して、銀干渉および青色マストーンを有する顔料を得る。
レーザーマーキング
PP粒(PP−HD、DSM製のスタミランPPH10)に、実施例1の顔料0.1重量%を添加することにより、射出成形加工した。続いて、得られた成形品(小板)に、SHT−Nd:YAGレーザーを使用して刻印する。パルス周波数2.5kHzおよび刻印速度300mm/秒で処理すると、この小板は黒色で高コントラストの耐磨耗性刻印を呈した。エネルギー密度を増加すると、該刻印は暗さを増した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含んだ被膜とを含む、無彩色のマストーンを有する半透明の干渉顔料。
【請求項2】
窒素および水素を含む還元性ガス混合物中で、二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜で被覆された基材の反応で、金属スズを形成することにより得ることができる、請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項3】
被膜における金属スズの比率が、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜を基準として0.01〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項4】
追加として存在する前記金属酸化物が酸化チタンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の干渉顔料。
【請求項5】
前記基材が酸化チタン、合成または天然の雲母、層状珪酸塩、ガラス、SiO2、Al23、黒鉛、および/またはBiOClを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の干渉顔料。
【請求項6】
金属酸化物、酸化金属水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および/またはそれらの混合物を含む1以上の層が、金属スズおよび更に少なくとも1種の金属酸化物を含む前記被膜と前記基材との間に更に存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の干渉顔料。
【請求項7】
外部層として追加の有機被膜を更に備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の干渉顔料。
【請求項8】
二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜で被覆された基材を、窒素および水素を含む還元性ガス混合物中で反応させ、金属スズを形成する、請求項1に記載の干渉顔料を製造する方法。
【請求項9】
二酸化スズおよび所望により少なくとも1種の他の金属酸化物を含む被膜が、二酸化スズおよび少なくとも1種の他の金属酸化物の別々の層の形態であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の他の金属酸化物の層が、二酸化スズの層に付着されていることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
他の金属酸化物が二酸化チタンであることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
窒素および水素を含むガス混合物中の水素の比率が2.5〜25体積%であることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
還元が500〜1200℃の温度で行われることを特徴とする、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
外部層として有機被膜を更に付着させることを特徴とする、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
化粧品、表面被膜、インク、プラスチック、フィルムにおける、証券印刷における、公文書および身元証明書でのセキュリティ機能における、種子の着色用における、食品の着色用または薬剤被膜における、レーザーマーキング用における、ならびに顔料組成物および乾燥調合物の製造用における、請求項1に記載の干渉顔料の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の干渉顔料が、有機または無機の染料および/または顔料とのブレンドの形態であることを特徴とする、請求項15に記載の使用。

【公表番号】特表2008−546901(P2008−546901A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519815(P2008−519815)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005565
【国際公開番号】WO2007/000232
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】