説明

スタウロスポリン誘導体の新規医薬的使用

【課題】スタウロスポリン誘導体の新規な使用方法を提供することが本願発明の課題である。
【解決手段】アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の治癒的、軽減的または予防的処置におけるスタウロスポリン誘導体の使用;および上記の疾患または状態の1個を有する温血動物にスタウロスポリン誘導体化合物の治療的有効量を投与するものである、温血動物を処置する方法を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離形または薬学的に許容される塩形のスタウロスポリン誘導体(以後:“スタウロスポリン誘導体”)の、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の治癒的、軽減的または予防的処置用医薬組成物の製造における使用;および治療的有効量のスタウロスポリン誘導体の化合物を上記疾患または状態を有する温血動物に投与することを含む、温血動物、好ましくはヒトを処置する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、具体的に、式
【化1】

(ここで、(II)は、化合物(I)の部分水素化誘導体である)
【0003】
【化2】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−またはジ−置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−モノ−またはN,N−ジ−置換アミノスルホニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、0(0を含む)から4(4を含む)の数字であり;
n'およびm'は、互いに独立して、0(0を含む)から4(4を含む)の数字であり;
、R、RおよびR10は、互いに独立して、水素、−O、30個までの炭素原子を有するアシル、いずれの場合も29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、いずれの場合も20個までの炭素原子を有しかついずれの場合も9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環式もしくはヘテロ環式−脂肪族ラジカル、30個までの炭素原子を有するアシルであり、ここでRは存在しなくてもよく;
またはRが30個までの炭素原子を有するアシルであるとき、Rはアシルではなく;
が存在しないとき、pは0であるか、またはRおよびRの両方が存在し、かついずれの場合も上記ラジカルの1個であるとき、pは1であり;
は水素、いずれの場合も29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、またはいずれの場合も20個までの炭素原子を有しかついずれの場合も9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環式もしくはヘテロ環式−脂肪族ラジカル、または30個までの炭素原子を有するアシルであり;
【0004】
、RおよびRはアシルまたは−(低級アルキル)−アシル、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−またはジ−置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ,カルボニル、カルボニルジオキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−モノ−またはN,N−ジ−置換アミノスルホニルであり;
Xは2個の水素原子;1個の水素原子およびヒドロキシ;O;または水素および低級アルコキシを意味し;
Zは水素または低級アルキルを意味し;
そして波線により特徴付けられる2個の結合は環Aでは存在せず4個の水素原子で置換され、そして環Bの2個の波線は、各々の平行した結合と共に、二重結合を意味するか;
または波線により特徴付けられる2個の結合は環Bでは存在せず4個の水素原子で置換され、そして環Aの2個の波線は、各々の平行した結合と共に、二重結合を意味するか;
または環Aおよび環Bの両方の全4個の波線が存在せず、合計8個の水素原子で置換されている。〕
のスタウロスポリン誘導体、または少なくとも1個の塩形成基が存在するときそれらの塩の、FIP1L1−PDGFRα−誘発骨髄増殖性疾患の処置用医薬組成物の製造のための、使用に関する。
【0005】
前記および後記で使用する一般的用語および定義は、好ましくは下記の意味を有する:
接頭語“低級”は、関連するラジカルが、好ましくは最大7個(7個を含む)の炭素原子、とりわけ最大4個(4個を含む)の炭素原子を有することを示す。
【0006】
低級アルキルは、とりわけメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチル、およびまたペンチル、ヘキシル、またはヘプチルである。
【0007】
非置換または置換アルキルは、好ましくは、非置換であるかまたは、とりわけハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、C−C14アリール、例えばフェニルもしくはナフチル、ヒドロキシ、エーテル化ヒドロキシ、例えば低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシもしくはフェニルオキシ、エステル化ヒドロキシ、例えば低級アルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシ、アミノ、モノ−またはジ置換アミノ、例えば低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)−アミノ、シアノ、メルカプト、置換メルカプト、例えば低級アルキルチオ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、例えば低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ置換カルバモイル、例えばN−低級アルキルカルバモイルまたはN,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、置換スルホ、例えば低級アルカンスルホニルまたは低級アルコキシスルホニル、アミノ−スルホニルまたはN−モノ−またはN,N−ジ置換アミノスルホニル、例えばN−低級アルキルアミノ−スルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルで置換されている、C−C20アルキル、とりわけ低級アルキル、典型的にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチルである。
【0008】
ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、とりわけフッ素または塩素である。
エーテル化ヒドロキシは、とりわけ低級アルコキシ、C−C14アリールオキシ、例えばフェニルオキシ、またはC−C14アリール−低級アルコキシ、例えばベンジルオキシである。
【0009】
エステル化ヒドロキシは、好ましくは低級アルカノイルオキシまたはC−C14アリールカルボニルオキシ、例えばベンゾイルオキシである。
モノ−またはジ置換アミノは、とりわけ低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイル、またはC−C12アリールカルボニルでモノ置換またはジ置換されたアミノである。
【0010】
置換メルカプトは、とりわけ低級アルキルチオ、C−C14アリールチオ、C−C14アリール−低級アルキルチオ、低級アルカノイルチオ、またはC−C14アリール−低級アルカノイルチオである。
エステル化カルボキシは、とりわけ低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシ−カルボニルまたはC−C14アリールオキシカルボニルである。
【0011】
N−モノ−またはN,N−ジ置換カルバモイルは、とりわけ低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルでN−モノ置換またはN,N−ジ置換されたカルバモイルである。
置換スルホニルは、とりわけC−C14アリールスルホニル、例えばトルエンスルホニル、C−C14アリール−低級アルカンスルホニルまたは低級アルカンスルホニルである。
【0012】
N−モノ−またはN,N−ジ置換アミノスルホニルは、とりわけ低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルでN−モノ置換またはN,N−ジ置換されたアミノスルホニルである。
【0013】
−C14アリールは、非置換であるか、または、とりわけハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、フェニルもしくはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノ−スルホニルで置換されている、環系に6個から14個の炭素原子を有するアリールラジカル、例えばフェニル、ナフチル、フルオレニルまたはインデニルである。
【0014】
指数nおよびmは、いずれの場合も、好ましくは1、2またはとりわけ0である。一般に、nおよびmがいずれの場合も0(ゼロ)である式(I)の化合物がとりわけ好ましい。
【0015】
非環式置換基で置換されており、好ましくは最大18個、とりわけ最大12個、および概して7個を超えない炭素原子を有する、29個までの炭素原子を有する脂肪族炭水化物ラジカルR、R、RまたはR10は、飽和または不飽和であり、とりわけ非置換であるか、または非環式置換基で置換されている、直鎖または分枝低級アルキル、低級アルケニル、低級アルカジエニル、または低級アルキニルラジカルである。低級アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、およびまたn−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは、例えば、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリルおよび2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは、例えば、1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは、例えば、プロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和ラジカルにおいて、二重結合はとりわけ遊離結合価に対してα位より高次の位置に位置する。置換基は、とりわけRの置換基として下記で定義のアシルラジカル、好ましくは遊離またはエステル化カルボキシ、例えばカルボキシまたは低級アルコキシカルボニル、シアノまたはジ−低級アルキル−アミノである。
【0016】
いずれの場合も29個までの炭素原子を有する炭素環式または炭素環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、とりわけ、非置換形または下記でRの置換基と記載したラジカルで置換されたいずれかで存在する、芳香族性、脂環式、脂環式−脂肪族、または芳香族性−脂肪族ラジカルである。芳香族性ラジカル(アリールラジカル)RまたはRは最もとりわけ、非置換形または下記でRの置換基と記載したラジカルで置換されたいずれかで存在する、フェニル、またナフチル、例えば1−または2−ナフチル、ビフェニリル、例えばとりわけ4−ビフェニリル、およびまたアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個またはそれ以上の飽和環を有するそれらの芳香族性アナログである。好ましい芳香族性−脂肪族ラジカルは、アリール−低級アルキル−およびアリール−低級アルケニルラジカル、例えば末端フェニルラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級−アルケニル、例えばベンジル、フェネチル、1−、2−、または3−フェニル−プロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチルおよびシンナミル、およびまた1−または2−ナフチル−メチルなどである。非環式ラジカル、例えば低級アルキルを担持するアリールラジカルで、o−、m−およびp−トリルならびに様々な位置のメチルラジカルを有するキシリルラジカルを特記できる。
【0017】
29個までの炭素原子を有する脂環式ラジカルR、R、RまたはR10は、とりわけ置換または好ましくは非置換モノ−、ビ−、または多環式シクロアルキル−、環状−アルケニル−、または環状アルカジエニルラジカルである。好ましいのは、最大14個まで、とりわけ12個までの、環−炭素原子を有し、かつ置換基として1個またはそれ以上、例えば2個の脂肪族炭化水素ラジカル、例えば上記のもの、とりわけ低級アルキルラジカル、または他の脂環式ラジカルも担持できる3−から8−、好ましくは5−から7−、および最もとりわけ6−員環のラジカルである。好ましい置換基は、Rに関して下記の非環式置換基である。
【0018】
29個までの炭素原子を有する脂環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、非環式ラジカル、とりわけ最大7個、好ましくは最大4個の炭素原子を有するもの、例えばとりわけメチル、エチルおよびビニルが、1個またはそれ以上の上記で定義の脂環式ラジカルを担持するものである、ラジカルである。特記するのは、シクロアルキル−低級−アルキル−ラジカル、ならびに、環および/または鎖中に不飽和を有するが、非芳香族性である、および鎖の末端炭素原子に環を担持するそれらのアナログである。好ましい置換基は、Rに関して下記の非環式置換基である。
【0019】
各々20個までの炭素原子を有しかつ各々9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環式ラジカルR、R、RまたはR10は、芳香族性特性のとりわけ単環式だけでなく、また二環式または多環式、アザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ環式ラジカル、ならびに、部分的にまたは最もとりわけ完全に飽和されたこのタイプの対応するヘテロ環式ラジカルであり、これらのラジカルは−必要であれば−さらなる非環式、炭素環式、またはヘテロ環式ラジカルを担持することが可能でありおよび/または官能基、好ましくは脂肪族炭化水素ラジカルの置換基としてあげたものでモノ−、ジ−、またはポリ置換されることが可能である。最もとりわけそれらは窒素、酸素、または硫黄原子を有する、非置換または置換単環式ラジカル、例えば2−アジリジニル、およびとりわけこのタイプの芳香族性ラジカル、例えばピリル、例えば2−ピリルまたは3−ピリル、ピリジル、例えば2−、3−、または4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリルであり;酸素、硫黄、または窒素原子を有する類似の二環式ラジカルは、例えば、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、またはベンゾ−チエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニルであり;数個のヘテロ原子を有する好ましい単環式および二環式ラジカルは、例えば、イミダゾリル、典型的に2−または4−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、またはチアゾリル、典型的に2−チアゾリルおよびベンゾイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、またはキナゾリル、典型的に2−キナゾリニルである。適当な部分、とりわけ、完全飽和の類似のラジカル、例えば、2−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジニル、2−、3−もしくは4−ピペリジル、およびまた2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルおよびN−モノ−またはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルラジカルも考慮される。これらのラジカルはまた1個またはそれ以上の非環式、炭素環式、またはヘテロ環式ラジカル、とりわけ上記のものを担持し得る。ヘテロ環式ラジカルRまたはRの遊離結合価は、それらの炭素原子の1個から出なければならない。ヘテロシクリルは、非置換であるか、または1個またはそれ以上、好ましくは1個または2個のRに関して下記の置換基で置換されていてよい。
【0020】
ヘテロ環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、1個、2個またはそれ以上のヘテロ環式ラジカル、例えば、前段落に記載のモノを担持する、とりわけ最大7個、好ましくは最大4個の炭素原子を有する、とりわけ低級アルキルラジカル、例えば上記のものであり、該ヘテロ環は、脂肪族鎖にその窒素−原子の1個を介して結合していてもよい。好ましいヘテロ環式−脂肪族ラジカルRは、例えば、イミダゾール−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、ピペラジン−1−イルメチル、2−(モルホリン−4−イル)エチルおよびまたピリド−3−イルメチルである。ヘテロシクリルは、非置換であるか、または1個またはそれ以上、好ましくは1個または2個のRに関して下記の置換基で置換されていてよい。
【0021】
各々20個までの炭素原子を有しかつ各々10個までのヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、1個、2個またはそれ以上の炭素原子の代わりに、同一または異なるヘテロ原子、例えばとりわけ酸素、硫黄および窒素を含む、脂肪族ラジカルである。とりわけ好ましいヘテロ脂肪族ラジカルRの配置は、1個またはそれ以上の炭素原子が、好ましくは直鎖アルキル中、酸素原子で、好ましくは互いに数個の(とりわけ2個の)炭素原子により離れて置換され、必要であれば複数反復基(O−CH−CH−)(式中、q=1から7である)である、オキサ−アルキルラジカルの形をとる。
【0022】
、R、RまたはR10としてとりわけ好ましいのは、アシル以外に、低級アルキル、特にメチルまたはエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、とりわけメトキシカルボニルメチルまたは2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル;カルボキシ−低級アルキル、とりわけカルボキシメチルまたは2−カルボキシ−エチル;またはシアノ−低級アルキル、とりわけ2−シアノエチルである。
【0023】
30個までの炭素原子を有するアシルラジカルR、R、R、R、R、R、またはR10は、必要であれば、機能的に修飾されたカルボン酸、有機スルホン酸、または必要であればエステル化されている、リン酸、例えばピロ−またはオルトリン酸由来である。
【0024】
Acと命名し、必要であれば機能的に修飾したカルボン酸由来であるアシルは、とりわけ部分式Y−C(=W)−(式中、Wは酸素、硫黄、またはイミノであり、そしてYは水素である)、29個までの炭素原子を有するヒドロカルビルR、ヒドロカルビルオキシR−O−、アミノ基または置換アミノ基の1個、とりわけ式RHN−またはRN−(式中、Rラジカルは、互いに同一または異なっていてよい)の1個である。
【0025】
ヒドロカルビル(炭化水素ラジカル)Rは、各々29個までの炭素原子、とりわけ18個まで、および好ましくは12個までの炭素原子を有する、非環式(脂肪族)、炭素環式もしくは炭素環式−非環式炭化水素ラジカルであり、飽和または不飽和であり、非置換または置換されている。1個、2個またはそれ以上の炭素原子の代わりに、同一または異なるヘテロ原子、例えばとりわけ酸素、硫黄および窒素を、非環式および/または環部分に含んでいてよい;後者の場合、ヘテロ環式ラジカル(ヘテロシクリルラジカル)またはヘテロ環式−非環式ラジカルとして記載される。
【0026】
不飽和ラジカルは、1個またはそれ以上、とりわけ連続したおよび/または孤立した、多重結合(二重または三重結合)を含むものである。環式ラジカルはまた、連続した二重結合を有する芳香族性および非芳香族性ラジカル、例えば少なくとも1個の6−員炭素環式または5−から8−員ヘテロ環式環が、非累積的二重結合の最大数を含むものを含む。少なくとも1個の環が6−員芳香族環(すなわちベンゼン環)として存在する炭素環式ラジカルは、アリールラジカルと定義する。
【0027】
非環式非置換炭化水素ラジカルRは、とりわけ直鎖または分枝低級アルキル−、低級アルケニル−、低級アルカジエニル−、または低級アルキニルラジカルである。低級アルキルRは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、およびまたn−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは、例えば、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリルおよび2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは、例えば、1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは、例えば、プロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和ラジカルにおいて、二重結合はとりわけ遊離結合価に対してα位より高次の位置に位置する。
【0028】
炭素環式炭化水素ラジカルRは、とりわけ単−、二−、または多環式シクロアルキル−、環状アルケニル−、または環状アルカジエニルラジカル、または対応するアリールラジカルである。好ましいのは、最大14個、とりわけ12個の環−炭素原子を有し、かつ、1個またはそれ以上、例えば2個の非環式ラジカル、例えば上記のもの、とりわけ低級アルキルラジカル、または他の炭素環式ラジカルも担持できる、3−から8−、好ましくは5−から7−、および最もとりわけ6−員環のラジカルである。炭素環式−非環式ラジカルは、非環式ラジカル、とりわけ最大7個、好ましくは最大4個の炭素原子、例えばとりわけメチル、エチルおよびビニルが、1個またはそれ以上の炭素環式、必要であれば上記で定義の芳香族性ラジカルを担持するものである。シクロアルキル−低級−およびアリール−低級アルキル−ラジカル、ならびに環および/または鎖中が不飽和である、および鎖の末端炭素原子で環を担持するそれらのアナログを特記する。
【0029】
シクロアルキルRは、最もとりわけ3個から10個まで(10個を含む)の炭素原子を有し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル、ならびにビシクロ[2,2,2]オクチル、2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチルおよびアダマンチルであり、これらはまた1個、2個またはそれ以上の例えば低級、アルキルラジカル、とりわけメチルラジカルで置換されていてよく;環状アルケニルは、例えばすでに記載した1−、2−、または3−位に二重結合を担持する単環式シクロアルキルラジカルの1個である。シクロアルキル−低級アルキルまたは−低級アルケニルは、上記のシクロアルキルラジカルの1個で置換されている、例えば−メチル、−1−または−2−エチル、−1−または−2−ビニル、−1−、−2−、または−3−プロピルまたは−アリルであり、直鎖の末端で置換されているものが好ましい。
【0030】
アリールラジカルRは、最もとりわけフェニル、またナフチル、例えば1−または2−ナフチル、ビフェニリル、例えばとりわけ4−ビフェニリル、およびまたアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個またはそれ以上の飽和環を有するそれらの芳香族性アナログである。好ましいアリール−低級アルキルおよび−低級アルケニルラジカルは、例えば、末端フェニルラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級−アルケニル、例えばベンジル、フェネチル、1−、2−、または3−フェニル−プロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチルおよびシンナミル、およびまた1−または2−ナフチル−メチルなどである。アリールは非置換であるか、または置換されていてよい。
【0031】
ヘテロ環式−非環式ラジカルを含むヘテロ環式ラジカルは、芳香族性特性のとりわけ単環式だけでなく、また二−または多環式、アザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ環式ラジカル、ならびに、部分的にまたは最もとりわけ完全に飽和されたこのタイプの対応するヘテロ環式ラジカル;必要であれば、例えば上記の炭素環式またはアリールラジカルの場合のように、これらのラジカルはさらに非環式、炭素環式、またはヘテロ環式ラジカルを担持してよくおよび/または官能基でモノ−、ジ−または多置換されていてよい。ヘテロ環式−非環式ラジカルの非環式部分は、例えば対応する炭素環式−非環式ラジカルで示した意味を有する。最もとりわけそれらは非置換であるかまたは置換された、窒素、酸素、または硫黄原子を有する単環式ラジカル、例えば2−アジリジニル、およびとりわけこのタイプの芳香族性ラジカル、例えばピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−、または4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリルであり;酸素、硫黄、または窒素原子を有する類似の二環式ラジカルは、例えば、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、またはベンゾ−チエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニルであり;数個のヘテロ原子を有する好ましい単環式および二環式ラジカルは、例えば、イミダゾリル、典型的に2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、またはチアゾリル、典型的に2−チアゾリルおよびベンゾイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、またはキナゾリル、典型的に2−キナゾリニルである。適当な部分、とりわけ、完全飽和の類似のラジカル、例えば、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジル、2−、3−、または4−ピペリジル、およびまた2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルおよびN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルラジカルも考慮される。これらのラジカルはまた1個またはそれ以上の非環式、炭素環式、またはヘテロ環式ラジカル、とりわけ上記のものを担持し得る。ヘテロ環式−非環式ラジカルは、とりわけ最大7個、好ましくは最大4個の炭素原子を有する非環式ラジカル、例えば上記のものに由来し、かつ、1個、2個またはそれ以上のヘテロ環式ラジカル、例えば上記のものを担持でき、該環はまたその窒素−原子の1個により、脂肪族鎖に結合することが可能である。
【0032】
すでに記載のように、ヒドロカルビル(ヘテロシクリルを含む)は、1個、2個またはそれ以上の同一または異なる置換基(官能基)で置換されていてよい;1個またはそれ以上の下記の置換基を考慮し得る:低級アルキル;遊離、エーテル化およびエステル化ヒドロキシル基;カルボキシ基およびエステル化カルボキシ基;メルカプト−および低級アルキルチオ−および、必要であれば、置換フェニルチオ基;ハロゲン原子、典型的に塩素およびフッ素だけでなく、また臭素およびヨウ素;ハロゲン−低級アルキル基;ホルミル(すなわちアルデヒド)の形で存在するオキソ基およびケト基、また対応するアセタールまたはケタール;アジド基;ニトロ基;シアノ基;1級、2級および好ましくは3級アミノ基、慣用の保護基で保護されたアミノ−低級アルキル、モノ−もしくはジ置換アミノ−低級−アルキル、1級もしくは2級アミノ基(とりわけ低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−ブトキシカルボニル)低級アルキレンジオキシ、およびまた遊離または機能的に修飾されたスルホ基、典型的に遊離形または塩として存在するスルファモイルもしくはスルホ基。該ヒドロカルビルラジカルはまたカルバモイル、ウレイド、またはグアニジノ基(それらは遊離形であるか1個または2個の置換基を担持する)、およびシアノ基を担持できる。上記での“基”なる用語の使用は、また個々の基を包含すると取る。
【0033】
ハロゲン−低級アルキルは、好ましくは1個から3個のハロゲン原子を含む;好ましいのはトリフルオロメチルまたはクロロメチルである。
【0034】
置換基としてヒドロカルビルに存在するエーテル化ヒドロキシル基は、例えば、低級アルコキシ基、典型的にメトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、イソプロポキシ−、ブトキシ−、およびtert−ブトキシ基であり、これは、とりわけ(i)ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは好ましくは4から12環原子を有することができ、不飽和、または部分的または完全に飽和であり、単または二環式であり、かつ窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのハロゲン原子を含んでいてよく、そして最もとりわけピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−または4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的に1−または2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的に2−チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンズ−オキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的に2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである)で;およびまた(ii)ハロゲン原子で(例えば2,2,2−トリクロロエトキシ、2−クロロエトキシ、または2−ヨードエトキシラジカルのようにとりわけ2位をモノ−、ジ−、または多置換置換されている)、または(iii)ヒドロキシで、または(iv)低級アルコキシラジカル(各々好ましくは2−メトキシエトキシラジカルのようにとりわけ2位をモノ置換されている)で置換されている。このようなエーテル化ヒドロキシル基はまた非置換または置換フェノキシラジカルおよびフェニル−低級アルコキシラジカル、例えばとりわけベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキシおよびトリフェニルメトキシ(トリチルオキシ)、ならびにヘテロシクリルオキシラジカル(ここで、ヘテロシクリルは、好ましくは4から12環原子を有し、不飽和、または部分的もしくは完全に飽和であり、単または二環式であり、そして窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有してよく、そして最もとりわけピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−または4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的に1−または2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的に2−チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンズ−オキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的に2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである);例えばとりわけ2−または4−テトラヒドロピラニルオキシでもある。
【0035】
この文脈でのエーテル化ヒドロキシル基は、シリル化ヒドロキシル基、典型的に例えばトリ−低級アルキルシリルオキシ、典型的にトリメチルシリルオキシおよびジメチル−tert−ブチルシリルオキシ、またはフェニルジ−低級アルキルシリルオキシおよび低級アルキル−ジフェニルシリルオキシを含むと取る。
【0036】
置換基としてヒドロカルビルに存在するエステル化ヒドロキシル基は、例えば、低級−アルカノイルオキシである。
【0037】
置換基としてヒドロカルビルに存在するカルボキシル基は、水素原子が、上記で特徴付けしたヒドロカルビルラジカル、好ましくは低級アルキル−またはフェニル−低級アルキルラジカルで置換されているものである;エステル化カルボキシル基の例は、低級アルコキシカルボニルまたはフェニル−低級アルコキシカルボニル(必要であればフェニル部分を置換されている)、とりわけメトキシ、エトキシ、tert−ブトキシおよびベンジルオキシカルボニル基、ならびにラクトン化(lactonised)カルボキシル基である。
【0038】
ヒドロカルビルの置換基としての1級アミノ基−NHはまた慣用の保護基で保護された形で存在してもよい。2級アミノ基は、2個の水素原子の一方の代わりに、ヒドロカルビルラジカル、好ましくは非置換のもの、典型的に上記のもの、とりわけ低級アルキルを担持し、そしてまた保護された形で存在してもよい。
【0039】
置換基としてヒドロカルビルに存在する3級アミノ基は、2個の異なる、または、好ましくは、同一のヒドロカルビルラジカル(ヘテロ環式ラジカルを含む)、例えば、上記で特徴付けした非置換ヒドロカルビルラジカル、とりわけ低級アルキルを担持する。
【0040】
好ましいアミノ基は、式R11(R12)N−〔式中、R11およびR12は互いに独立していずれの場合も水素、非置換非環式C−C−ヒドロカルビル(例えばとりわけC−CアルキルまたはC−Cアルケニル)または単環式アリール、アラルキル、またはアラルケニルであり、必要であれば、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロで置換されており、そして最大10個の炭素原子であり、ここで、該炭素含有ラジカルは、炭素−炭素結合を介してまたは酸素原子、硫黄原子、または必要であればヒドロカルビルで置換されている窒素原子を介して連結している〕のものである。このような場合、それらは窒素−含有ヘテロ環式環を、アミノ基の窒素原子と一体となって形成する。下記は、とりわけ好ましいジ置換アミノ基の例である:ジ−低級アルキルアミノ、典型的にジメチルアミノまたはジエチル−アミノ、ピロリジノ、イミダゾール−1−イル、ピペリジノ、ピペラジノ、4−低級アルキルピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノおよびピペラジノまたは4−メチルピペラジノ、ならびに必要であれば、とりわけフェニル部分を、例えば低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロで置換されているジフェニルアミノおよびジベンジルアミノ;保護された基、とりわけ低級アルコキシ−カルボニル−アミノ、典型的にtert−ブトキシカルボニルアミノ、フェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ、典型的に4−メトキシ−ベンジルオキシ−カルボニルアミノおよび9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ。
【0041】
アミノ−低級アルキルは、最もとりわけ低級アルキル鎖の1位をアミノで置換されており、とりわけアミノメチルである。
【0042】
モノ−またはジ置換アミノ−低級アルキルは、1個または2個のラジカルで置換されているアミノ−低級アルキル置換であり、ここで、アミノ−低級アルキルは、最もとりわけ低級アルキル鎖の1位をアミノで置換されており、とりわけアミノ−メチルである;ここのアミノ置換基は、好ましくは(2個の置換基が各アミノ基に互いに独立して存在するとき)、低級アルキル、例えばとりわけメチル、エチルまたはn−プロピル、ヒドロキシ−低級アルキル、典型的に2−ヒドロキシエチル、C−Cシクロアルキル、とりわけシクロヘキシル、アミノ−低級アルキル、典型的に3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル、N−モノ−またはN,N−ジ(低級−アルキル)−アミノ−低級アルキル、典型的に3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)−アミノからなる群からである。
【0043】
ジ置換アミノ−低級アルキルはまた、低級アルキルに窒素原子(好ましくは1位で)を介して結合した、0個から2個、とりわけ0個または1個の他の酸素、窒素および硫黄から選択されるヘテロ−原子を有する5または6−員、飽和または不飽和ヘテロシクリルであり、これは非置換であるか、またはとりわけ低級アルキル、典型的にメチル、およびまたオキソからなる群からの1個または2個のラジカルで置換されている。ここで好ましいのは、ピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的に4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)だけでなく、またはチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、またはS,S−ジオキソチオモルホリノである。
低級アルキレンジオキシはとりわけメチレンジオキシである。
【0044】
1個または2個の置換基を担持するカルバモイル基は、とりわけ窒素で1個または2個のラジカルで置換されているアミノ−カルボニル(カルバモイル)である;ここでアミノ置換基は、好ましくは(2個の置換基が各アミノ基に互いに独立して存在するとき)、低級アルキル、例えばとりわけメチル、エチルまたはn−プロピル、ヒドロキシ−低級アルキル、典型的に2−ヒドロキシエチル、C−Cシクロアルキル、とりわけシクロヘキシル、アミノ−低級アルキル、典型的に3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル、N−モノ−またはN,N−ジ(低級−アルキル)−アミノ−低級アルキル、典型的に3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)−アミノであり;アミノカルバモイル中のジ置換アミノはまた、結合している窒素原子、および酸素、窒素および硫黄から選択される0個から2個、とりわけ0個または1個の他のヘテロ原子を有する、5または6−員、飽和または不飽和ヘテロシクリルであり、これは非置換であるか、またはとりわけ低級アルキル、典型的にメチル、およびまたオキソからなる群からの1個または2個のラジカルで置換されている。ここで好ましいのはピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的に4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)だけでなく、またはチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、またはS,S−ジオキソチオモルホリノである。
【0045】
Acと命名した、有機スルホン酸由来のアシルは、とりわけ部分式R−SO−(式中、Rは、一般的かつ具体的な意味で上記に定義したヒドロカルビルであり、後者がまたここで一般に好ましい)を有するものである。とりわけ好ましいのは、低級アルキルフェニルスルホニル、とりわけ4−トルエンスルホニルである。
【0046】
Acと命名し、必要であればエステル化された、リン酸由来のアシルは、とりわけ部分式RO(RO)P(=O)−(式中、ラジカルRは、互いに独立して、一般的かつ具体的な意味で上記に定義した通りである)を有するものである。
【0047】
前記および後記の置換基における縮小データが好ましいと考えられる。
【0048】
本発明の好ましい化合物は、例えば、Rが下記の好ましい意味を有する:低級アルキル、とりわけメチルまたはエチル、アミノ−低級アルキル(ここで、アミノ基は非保護であるか、または慣用のアミノ保護基で − とりわけ低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−低級アルコキシ−カルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルで − 置換されている)、例えばアミノメチル、R,S−、R−または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシ−カルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的に2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、シアノ−低級アルキル、典型的に2−シアノエチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的に4−(テトラヒドロピラニル)−オキシメチル、モルホリノ−低級アルキル、典型的に2−(モルホリノ)エチル、フェニル、低級アルキルフェニル、典型的に4−メチルフェニル、低級アルコキシフェニル、典型的に4−メトキシフェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、低級アルコキシ−カルボニルフェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニルまたは4−メトキシフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的に4−クロロメチルフェニル、ピロリジノフェニル、典型的に4−ピロリジノ−フェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的に4−(イミダゾール−イル−1−イル)フェニル、ピペラジノフェニル、典型的に4−ピペラジノフェニル、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル、モルホリノフェニル、典型的に4−モルホリノフェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的に4−ピロリジノメチルフェニル、イミダゾール−1−イル−低級アルキルフェニル、典型的に4−(イミダゾリル−1−イル−メチル)フェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的に4−ピペラジノメチル−フェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−モルホリノメチルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキル−ピペラジノ)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル。
【0049】
好ましいアシルラジカルAcは、部分式R−CO−(式中、Rは、ヒドロカルビルラジカルRの一般的なおよび好ましい意味の1個を有する)により特徴付けられる、カルボン酸のアシルラジカルである。ここで、とりわけ好ましいラジカルRは、低級−アルキル、とりわけメチルまたはエチル、アミノ−低級アルキル(ここで、アミノ基は、非保護であるか、または慣用的なアミノ保護基、とりわけ低級アルコキシ−カルボニル、典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルで置換されている)、例えばアミノメチル、R,S−、R−、または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノ−メチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的に2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル、フェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル]オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニル、ハロゲン−低級−アルキルフェニル、典型的に4−クロロメチルフェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的に4−(イミダゾリル−1−イル)−フェニル、ピロリジノ−低級−アルキルフェニル、典型的に4−ピロリジノメチル−フェニル、ピペラジノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−ピペラジノメチルフェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル、典型的に4−(4−メチル−ピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−モルホリノメチル−フェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキルピペラジノ)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニルである。
【0050】
さらに好ましいアシルAcは、炭酸のモノエステル由来であり、部分式R−O−CO−により特徴付けられる。低級アルキルラジカル、とりわけtert−ブチルが、これらの誘導体でとりわけ好ましいヒドロカルビル−ラジカルRである。
【0051】
他の好ましいアシルAcは、炭酸(またはチオ炭酸)のアミド由来であり、式RHN−C(=W)−またはRN−C(=W)−(式中、ラジカルRは、互いに独立して、上記で定義の通りであり、そしてWは硫黄およびとりわけ酸素である)により特徴付けられる。特に、Acが式RHN−C(=W)−(式中、Wは酸素であり、そしてRは、下記の好ましい意味の1個を有する:モルホリノ−低級アルキル、典型的に2−モルホリノエチル、フェニル、低級アルコキシフェニル、典型的に4−メトキシ−フェニルまたは4−エトキシ−フェニル、カルボキシ−フェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、または低級アルコキシ−カルボニル−フェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニルである)のラジカルが好ましい。
【0052】
好ましい部分式R−SO−(式中、Rは、一般的かつ具体的な意味で上記に定義したヒドロカルビルである)のアシルAcは、低級アルキルフェニル−スルホニル、典型的に4−トルエンスルホニルである。
【0053】
pが0であるとき、Rを結合する窒素原子は、非荷電である。pが1であるならば、Rはまた存在すべきであり、かつRおよびRを結合する窒素原子(4級窒素)は、正に荷電する。
【0054】
各々29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、または各々20個までの炭素原子を有し、かつ各々9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環式もしくはヘテロ環式−脂肪族ラジカル、または各々30個までの炭素原子を有するアシルに関する定義は、好ましくは対応するラジカルRおよびRに関して行った定義と適合する。とりわけ好ましいRは、低級−アルキル、とりわけメチル、または最もとりわけ水素である。
Zはとりわけ低級アルキル、最もとりわけメチルまたは水素である。
【0055】
波線により特徴付けられる2個の結合が環Aに存在しないならば、二重結合が、式I中で1、2、3および4の番号により特徴付けられる炭素原子の間に存在せず(テトラ−水素化誘導体)、一重結合のみであり、一方環Bは芳香族性(式Iにおいて8および9として特徴付けられる炭素原子の間ならびに10および11として特徴付けられるものの間の二重結合)である。波線により特徴付けられる2個の結合が環Bに存在しないならば、二重結合が、式I中で8、9、10および11の番号により特徴付けられる炭素原子の間に存在せず(テトラ−水素化誘導体)、一重結合のみであり、一方環Aは芳香族性(式Iにおいて1および2として特徴付けられる炭素原子の間ならびに3および4として特徴付けられるものの間の二重結合)である。合計4個の波線が、環AおよびBで存在せず、かつ合計8個の水素原子で置換されているならば、二重結合が、式I中の番号1、2、3、4、8、9、10および11の炭素原子の間で存在せず(オクタ−水素化誘導体)、一重結合のみである。
【0056】
その性質から、本発明の化合物はまた、それらが塩形成基を含む限り、薬学的に、すなわち生理学的に、許容される塩の形でも存在し得る。単離および精製目的で、薬学的に許容されない塩もまた使用できる。治療的使用のために、薬学的に許容される塩のみが使用され、これらの塩が好ましい。
【0057】
したがって、遊離酸基、例えば遊離スルホ、ホスホリルまたはカルボキシル基を有する式(I)の化合物は、塩形成塩基性要素と共に、塩として、好ましくは生理学的に許容される塩として存在し得る。これらは主に金属またはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは適当な有機アミン、とりわけ3級モノ−アミンならびにヘテロ環式塩基、例えばトリエチルアミン、トリ−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミン、N−エチル−ピペリジンもしくはN,N'−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩である。
【0058】
塩基性特性を有する本発明の化合物は、付加塩として、とりわけ無機および有機酸との酸付加塩としてだけでなく、また4級塩としても存在できる。したがって、例えば、塩基性基、例えばアミノ基を置換基として有する化合物は、通常の酸と酸付加塩を形成できる。適当な酸は、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸および臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸または過塩素酸、または脂肪族、脂環式、芳香族性またはヘテロ環式カルボン酸もしくはスルホン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、シュウ酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンジスルホン酸、ハロ−ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸またはスルファニル酸、およびまたメチオニン、トリプトファン、リシンまたはアルギニン、ならびにアスコルビン酸である。
【0059】
遊離形の(とりわけ式Iの)化合物と、中間体として、例えば、新規化合物の精製または同定において使用できるそれらの塩を含むそれらの塩の形、ならびにそれらの溶媒和物の密接な関係の観点から、前記および後記で遊離化合物に関する言及は、適当であり、好都合なとき、その対応する塩ならびにその溶媒和物も言及すると理解されるべきである。
【0060】
式(A)、(B)、(C)、(D)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物、とりわけRが水素であるものは、価値のある薬理学的特性を有する。
【0061】
前記および後記のラジカルまたは化合物のグループを前記および後記で記載する場合、一般的な定義は、適当であり好都合なとき、前記および後記のより具体的な定義で置き換え得る。
【0062】
好ましいのは、
およびRが互いに独立して低級アルキル、ハロゲンで置換されている低級アルキル、C−C14アリール、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキル−カルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノ−スルホニル、N−低級−アルキルアミノ−スルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニル;ハロゲン;低級−アルコキシ;C−C14アリールオキシ;C−C14アリール−低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;C−C14アリールカルボニルオキシ;低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイルまたはC−C12−アリール−カルボニルでモノ置換またはジ置換されているアミノ;シアノ;ニトロ;メルカプト;低級アルキルチオ;C−C14アリールチオ;C−C14アリール−低級アルキルチオ;低級アルカノイルチオ;C−C14アリール−低級アルカノイルチオ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシ−カルボニル;C−C14アリールオキシカルボニル;カルバモイル;低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルでN−モノ−またはN,N−ジ置換されているカルバモイル;スルホ;C−C14アリール−スルホニル;C−C14アリール−低級アルカンスルホニル;低級−アルカンスルホニル;または低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルでN−モノ−またはN,N−ジ置換されているアミノスルホニル〔ここで、C−C14アリールは、6個から12個の炭素原子を環系に有し、非置換であるか、またはハロゲン、フェニルまたはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級−アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)−アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキル−カルバモイル、N,N−ジ−低級アルキル−カルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級−アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキル−アミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノ−スルホニルで置換されているアリールラジカルである〕であり;
nおよびmが互いに独立して0または1または2、好ましくは0であり;
【0063】
、R、R、R10が互いに独立して水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルカジエニル(これらは各々非置換であるか、または低級アルキルから独立して選択される置換基で、モノ置換または多置換、好ましくはモノ置換またはジ置換されている);ヒドロキシ;低級アルコキシ〔これは非置換であるか、または(i)4から12環原子を有するヘテロシクリル(これは、不飽和であるか、完全に飽和であるか、または部分的に飽和であってよく、単環式または二環式であり、窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有してよく、そして最もとりわけピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−または4−ピリジル、または広い意味ではまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、ベンゾ−チエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的に1−または2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的に2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的に2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである)で、(ii)ハロゲンで、(iii)ヒドロキシでまたは(iv)低級アルコキシでモノ−、ジ−、またはトリ置換されている〕;フェノキシ;フェニル−低級アルコキシ;ヘテロシクリルオキシ(ここで、ヘテロシクリルはピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−または4−ピリジル、または広い意味ではまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾ−フラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、ベンゾ−チエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニルである);イミダゾリル、典型的に1−または2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的に2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的に2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロ−ピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル、例えばとりわけ2−または4−テトラ−ヒドロピラニルオキシ;低級アルカノイルオキシ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル;フェニル−低級アルコキシカルボニル;メルカプト;低級アルキルチオ;フェニルチオ;ハロゲン;ハロゲン−低級アルキル;オキソ(アシルとなるため、1位を除く);
【0064】
アジド;ニトロ;シアノ;アミノ;モノ−低級アルキルアミノ;ジ−低級アルキルアミノ;ピロリジノ;イミダゾール−1−イル;ピペリジノ;ピペラジノ;4−低級アルキルピペラジノ;モルホリノ;チオモルホリノ;非置換であるか、またはフェニル部分を低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロで置換されているジフェニルアミノまたはジ−ベンジルアミノ;低級アルコキシカルボニルアミノ;非置換であるか、またはフェニル部分を低級−アルキルまたは低級アルコキシで置換されているフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ;フルオレニルメトキシ−カルボニル−アミノ;アミノ−低級アルキル;モノ置換またはジ置換アミノ−低級−アルキル(ここで、アミノ置換基は低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級−アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ(−低級−アルキル)アミノ−低級アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノから選択される);ピロリジノ−低級アルキル;ピペリジノ−低級アルキル;ピペラジノ−低級アルキル;4−低級アルキルピペラジノ−低級アルキル;イミダゾール−1−イル−低級アルキル;モルホリノ−低級アルキル;チオモルホリノ−低級アルキル;S−オキソ−チオモルホリノ−低級アルキル;S,S−ジオキソチオモルホリノ−低級アルキル;低級アルキレンジオキシ;スルファモイル;スルホ;カルバモイル;ウレイド;グアニジノ;シアノ;窒素上を1個または2個のラジカルで置換されているアミノカルボニル(カルバモイル)およびアミノカルボニルオキシ(ここで、アミノ置換基は、互いに独立して低級アルキル、ヒドロキシ−低級−アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ(−低級アルキル)アミノ−低級−アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)−アミノからなる群から選択される);ピロリジノカルボニル;ピペリジノカルボニル;ピペラジノ−カルボニル;4−低級アルキルピペラジノカルボニル;イミダゾリノカルボニル;モルホリノカルボニル;チオモルホリノカルボニル;S−オキソ−チオモルホリノカルボニル;およびS,S−ジオキソチオモルホリノ;
【0065】
非置換であるか、または低級アルキル、低級−アルケニルまたは低級アルカジエニルの置換基として上記のラジカルでモノ置換またはジ置換されているフェニル、ナフチル、末端フェニル−ラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級−アルケニル;
【0066】
またはヘテロシクリル−低級アルキル(ここで、ヘテロシクリルは、ピロリル、例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−または4−ピリジル、または広い意味ではまたチエニル、例えば2−または3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的に2−または3−インドリル、キノリル、典型的に2−または4−キノリル、イソキノリル、典型的に3−または5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的に2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的に3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的に2−または3−ベンゾチエニルである);イミダゾリル、典型的に1−または2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的に2−または4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的に2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的に3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的に2−チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、典型的に2−ベンズイミダゾリル、ベンズ−オキサゾリル、典型的に2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的に2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル(いずれの場合も、非置換であるか、または低級アルキル、低級アルケニル、または低級アルカジエニルの置換基として上記のラジカルでモノ置換またはジ置換されている);
【0067】
または部分式Y−C(=W)−〔式中、Wは酸素であり、そしてYは水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここで、ラジカルRは同一または異なってよい)である〕のアシル、
または
部分式R−SO−のアシルであり、
そのため、Rは式(II)の化合物で存在しなくてもよいか;
【0068】
または
は式(II)の化合物では存在せず、式(I)の化合物では水素またはCHであり、そして
は、部分式Y−C(=W)−〔式中、Wは酸素であり、そしてYは水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここで、ラジカルRは同一または異なってよい)である〕のアシルであるか、
または
部分式R−SO−のアシルであり、
【0069】
ここで、該ラジカル中のRは下記の意味を有する:置換または非置換低級アルキル、とりわけメチルまたはエチル、アミノ−低級アルキルヒドロキシ−低級アルキル(ここで、アミノ基は非保護であるか、または慣用のアミノ保護基で − とりわけ低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル − で置換されている)、例えばアミノメチル、R,S−、R−または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的に2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、シアノ−低級アルキル、典型的に2−シアノエチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル、モルホリノ−低級アルキル、典型的に2−(モルホリノ)エチル、フェニル、低級アルキルフェニル、典型的に4−メチルフェニル、低級アルコキシフェニル、典型的に4−メトキシフェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニルまたは4−メトキシフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的に4−クロロメチルフェニル、ピロリジノ−フェニル、典型的に4−ピロリジノ−フェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的に4−(イミダゾール−イル−1−イル)フェニル、ピペラジノフェニル、典型的に4−ピペラジノフェニル、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル、モルホリノフェニル、典型的に4−モルホリノフェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的に4−ピロリジノメチルフェニル、イミダゾール−1−イル−低級アルキルフェニル、典型的に4−(イミダゾリル−1−イルメチル)フェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的に4−ピペラジノメチル−フェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−モルホリノメチルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキルピペラジノ)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル、
【0070】
が存在しないとき、pが0であるか、またはRおよびRの両方が存在し、かついずれの場合も上記ラジカルの1個であるとき、pが1であり(式(II)の化合物に関して);
が水素または低級アルキル、とりわけ水素であり、
Xが2個の水素原子、O、または1個の水素原子およびヒドロキシを意味するか;または1個の水素原子および低級アルコキシを意味し;
Zが水素またはとりわけ低級アルキル、最もとりわけメチルであり;
式(II)の化合物に関して、波線により特徴付けられる2個の結合は好ましくは環Aでいずれも存在せず、4個の水素原子で置換されており、そして環Bの2個の各々の波線はそれぞれの平行した結合と一体となって二重結合を意味するか;
または波線により特徴付けられる2個の結合は環Bでいずれも存在せず、4個の水素原子で置換されており、そして環Aの2個の各々の波線はそれぞれの平行した結合と一体となって二重結合を意味するか;
または環Aおよび環Bの両方の全4個の波線が存在せず、合計8個の水素原子で置換されている;
ものである、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するときそれらの塩が好ましい。
【0071】
特に好ましいのは、
mおよびnが各々0であり;
およびRが互いに独立して
水素、
非置換であるかまたは、互いに独立してカルボキシから選択されるラジカルでモノ−またはジ−置換、とりわけモノ置換されている低級アルキル;低級アルコキシカルボニル;およびシアノであるか;
または
が水素または−CHであり、そして
が上記で定義の通り、または好ましくはRが、
部分式R−CO(式中、Rは低級アルキルである)のアシル;アミノ−低級アルキル(ここで、アミノ基は非保護形であるか、または低級アルコキシカルボニルで保護されている);テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル;カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル;ピロリジノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノ−低級アルキルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニルであるか;
または部分式R−O−CO−(式中、Rは低級アルキルである)のアシルであるか;
または部分式RHN−C(=W)−(式中、Wは酸素であり、そしてRは下記の意味を有する:モルホリノ−低級アルキル、フェニル、低級アルコキシフェニル、カルボキシ−フェニル、または低級アルコキシ−カルボニル−フェニル)のアシルであるか;
またはRが低級アルキルフェニルスルホニル、典型的に4−トルエンスルホニルであり;
好ましいR基のさらなる具体例は、好ましい式(II)の化合物について下記であり、
は水素または低級アルキル、とりわけ水素であり、
Xが2個の水素原子またはOを意味し;
Zがメチルまたは水素である;
ものである式(I)の化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するときそれらの塩である。
【0072】
特に好ましいのは、
mおよびnが各々0であり;
およびRが互いに独立して
水素、
非置換であるかまたは、互いに独立してカルボキシから選択されるラジカルでモノ−またはジ−置換、とりわけモノ置換されている低級アルキル;低級アルコキシカルボニル;およびシアノであり;それによりRは存在しなくてもよく;
または
が存在せず、そして
が部分式R−CO〔式中、Rは低級−アルキル、とりわけメチルまたはエチルである)のアシル;アミノ−低級アルキル(ここで、アミノ基は非保護形であるか、または低級アルコキシ−カルボニル、典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルで置換されており、例えばアミノメチル、R,S−、R−、または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノ−メチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルである〕のアシル;テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル;カルボキシフェニル、典型的に4−カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的に4−メトキシ−または4−エトキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的に4−クロロメチルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル、典型的に4−(イミダゾリル−1−イル)−フェニル;ピロリジノ−低級−アルキルフェニル、典型的に4−ピロリジノメチル−フェニル;ピペラジノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−ピペラジノメチルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキル−フェニル、典型的に4−モルホリノメチル−フェニル;ピペラジノカルボニルフェニル、典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)−フェニル、典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニルであるか;
または部分式R−O−CO−(式中、Rは低級アルキルである)のアシルであるか;
または部分式RHN−C(=W)−(式中、Wは酸素であり、そしてRは下記の好ましい意味を有する:モルホリノ−低級アルキル、典型的に2−モルホリノエチル、フェニル、低級アルコキシフェニル、典型的に4−メトキシ−フェニルまたは4−エトキシ−フェニル、カルボキシ−フェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、または低級アルコキシ−カルボニル−フェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニル)のアシルであるか;
または低級アルキルフェニルスルホニル、典型的に4−トルエンスルホニルであり;
【0073】
が存在しないとき、pは0であるか、またはRおよびRの両方が存在し、かついずれの場合も上記ラジカルの1個であるとき、pは1であり;
が水素または低級アルキル、とりわけ水素であり、
Xが2個の水素原子またはOを意味し;
Zがメチルまたは水素であり;
そして波線により特徴付けられる2個の結合は、好ましくは環Aでは存在せず、4個の水素原子で置換されており、そして環Bの2個の波線は、各々の平行した結合と共に、二重結合を意味するか;
または波線により特徴付けられる2個の結合は環Bでは存在せず4個の水素原子で置換され、そして環Aの2個の波線は、各々の平行した結合と共に、二重結合を意味するか;
または環Aおよび環Bの両方の全4個の波線が存在せず、合計8個の水素原子で置換されている;
ものである、式(II)の化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するときそれらの塩。
【0074】
最もとりわけ好ましい式(II)の化合物は;
8,9,10,11−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−クロロメチルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピロリジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(モルホリン−4−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トリフルオロアセチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(2−イミダゾール−1−イル−エトキシ)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−メトキシカルボニルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−カルボキシメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイルメチルエステル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルピペラジニルカルボニルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(2−シアノエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−ベンゾイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N,N−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリニウムアイオダイド;
N−BOC−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−(tert−ブトキシカルボニル)プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−カルボキシプロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−イミダゾール−1−イル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[(テトラヒドロ−2h−ピラン−4−イルオキシ)アセチル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリンヒドロクロライド;
N−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−(4−カルボキシフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−フェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[2−(1−モルホリノ)エチル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[4−メトキシフェニル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−7−オキソ−スタウロスポリン;
1,2,3,4,8,9,10,11−オクタヒドロスタウロスポリン;
または、少なくとも1個の塩形成基が存在するとき、それらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0075】
最もとりわけ好ましいのは、1,2,3,4−テトラヒドロ−スタウロスポリンと命名した式Iの化合物、または(特に薬学的に許容される)その塩である(ここで、式Iのmおよびnは0であり、Rが水素であり、Rが、塩が存在しない(p=0)とき、存在せず、または塩形成基が存在するとき(p=1)水素であり、Rが水素であり、波線により示される2個の結合は環Aでは存在せず、4個の水素原子で置換されており、そして環Bに存在する2個の波線で示される結合はいずれの場合も平行結合と一体となって二重結合であり、Xが2個の水素原子を意味し、そしてZがメチルである)。
【0076】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=O;R、R2、=H;Q=−(CH)−O−CH(CH)OH−(CH)
B)X=O;R、R2、=H;Q=−(CH)−O−CH(CHN(CH))−(CH)
C)X=2個の水素原子;R、R2、=H;Q=
【化3】

である式Aの化合物である。
【0077】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(スタウロスポリン)
B)X=(R)または(S)異性体形の1個の水素および1個のヒドロキシ原子;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(UCN−01およびUCN−02)
C)X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=ベンゾイル;Z=CH(CGP41251またはPKC412またはミドスタウリン)
D)X=O;R、R、R=H;R=CH;R=エチルオキシカルボニル;Z=CH(NA382;CAS=143086−33−3)
E)X=1個の水素および1個のヒドロキシ原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRは−(CH)OH;−CHCH(OH)CHOH;−CO(CH)CONa;−(CH)COH;−COCHN(CH)
【化4】

から選択される
F)X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−メチル−2−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−プロピオニル;N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−L−ラクトイル];N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される
G)X=O;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される
H)X=1個の水素および1個ヒドロキシ原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される
(略語“CAS”は、CHEMICAL ABSTRACTS登録番号を意味する)
である式(I)の化合物の化合物である。
【0078】
最も好ましい式(I)の化合物、例えばミドスタウリン[国際一般名]は、1988年12月21日公開の欧州特許0296110、ならびに1992年3月3日公開のUS特許5,093,330、および日本特許2708047でカバーされ、具体的に記載されている。他の好ましい化合物は、両方とも1995年12月7日に公開されたWO95/32974およびWO95/32976でカバーされ、記載されている。これらの文献に記載されたすべての化合物を、引用により本明細書に包含させる。
【0079】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(2−メチルK252a)
B)X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(K−252a)
C)X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=CH(KT−5720)
である式(III)の化合物である。
【0080】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=O;R、R、R=H;R=CH−NMe;R=CH;m'=n'=2
B)X=O;R、R、R=H;R=CH−NH;R=CH;m'=2;n'=1(Ro−31−8425;CAS=151342−35−7)
である式(IV)の化合物である。
【0081】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH)−NH;(Ro−31−7549;CAS=138516−31)
B)X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH)−S−(C=NH)−NH;(Ro−31−8220;CAS=125314−64−9))
C)X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−CH
である式(V)の化合物である。
【0082】
最もとりわけ好ましいのは;
A)X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;メチルまたは(C−C10)アルキル、アリールメチル、CCH−選択されるR
である、式(VI)の化合物である。
【0083】
スタウロスポリン誘導体およびそれらの製造法は、多くの先行文献に具縦期に記載され、当業者に既知である。
【0084】
式(A)、(B)、(C)、(D)の化合物およびそれらの製造法は、例えば、1995年6月14日に公開の欧州特許0657458、1994年11月17日に公開の欧州特許0624586、1992年2月12日に公開の欧州特許0470490、1989年8月16日公開の欧州特許0328026、1990年8月29日公開の欧州特許0384349ならびにBarry M. Trost*およびWeiping Tang Org. Lett., 3(21), 3409-3411のような多くの文献に記載されている。
【0085】
式(I)の化合物およびそれらの製造法は、1988年12月21日公開の欧州特許0296110、および1992年3月3日公開のUS特許5,093,330、および日本特許2708047に具体的に記載されている。Rにテトラヒドロピラン−4−イル)−ラクトイル置換を有する式(I)の化合物は、1994年11月17日公開の欧州特許0624590に記載されている。他の化合物は、1993年12月29日公開の欧州特許0575955、1987年9月23日公開の欧州特許0238011(UCN−O1)、1998年7月3日にWO99/02532として公開された国際特許出願EP98/04141に記載されている。
【0086】
式(II)の化合物およびそれらの製造法は、1988年12月21日公開の欧州特許0296110、および1992年3月3日に公開のUS特許5,093,330、および日本特許2708047に具体的に記載されている。
【0087】
式(III)の化合物およびそれらの製造法は、1992年7月24日出願のUS特許出願US920102を優先権主張する特許出願に具体的に記載されている。(すなわち1997年4月16日公開の欧州特許0768312、2000年5月24日公開の1002534、1995年5月10日公開の0651754)。
【0088】
式(IV)の化合物およびそれらの製造法は、各々1993年5月10日および1994年2月21日出願の英国特許出願GB9309602およびGB9403249を優先権主張する特許出願に具体的に記載されている。(すなわち1994年11月17日公開の欧州特許0624586、2000年5月24日公開の1002534、1995年5月10日公開の0651754)。
【0089】
式(V)の化合物およびそれらの製造法は、各々1988年2月10日、1988年11月25日、1989年2月23日および1989年12月13日出願の英国特許出願GB8803048、GB8827565、GB8904161およびGB8928210を優先権主張する特許出願に具体的に記載されている。(すなわち1989年8月16日公開の欧州特許0328026、および1990年8月29日公開の0384349)。
【0090】
式(VI)の化合物およびそれらの製造法は、1991年10月10日出願のUS特許出願07/777,395(Con)を優先権主張する特許出願に具体的に記載されている。(すなわち1993年4月15日公開の国際特許出願WO93/07153)。
【0091】
特定のスタウロスポリン誘導体化合物に関して特許出願または科学文献の引用が成されているいずれの場合も、最終産物、医薬製剤および特許請求の範囲の対象をこれらの文献の引用により本発明に包含する。
【0092】
コード番号、一般名または商品名により同定している活性成分の構造は、標準概論“The Merck Index”またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容を、引用して本明細書に包含する。
【0093】
本発明の好ましいスタウロスポリン誘導体は、式(VII):
【化5】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミド、またはその塩である(以後:“式(VII)の化合物またはミドスタウリン”)。
【0094】
式(VII)の化合物は、ミドスタウリン[国際一般名]またはPKC412として既知である。
【0095】
ミドスタウリンは、天然に存在するアルカロイドであるスタウロスポリンの誘導体であり、1988年12月21日公開の欧州特許0296110、および1992年3月3日公開のUS特許5,093,330、および日本特許2708047に具体的に記載されている。
【0096】
本発明により、驚くべきことにミドスタウリンが治療的特性を有し、それにより特にアレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の治療に有用となることが判明した。特に驚くことは、ミドスタウリンが、イマチニブまたは薬学的に許容されるその塩に対する耐性を発現している前記の疾患および状態の予防または処置にも有効であることである。
【0097】
スタウロスポリン誘導体、例えばミドスタウリンは、元々、タンパク質キナーゼC(PKC)の阻害剤として同定された(Meyer T, Regenass U, Fabbro D, et al:Int J Cancer 43:851-856, 1989)。
【0098】
したがって、本発明は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の処置用医薬の製造のための、スタウロスポリン誘導体の使用に関する。さらに、本発明は、イマチニブもしくは薬学的に許容されるその塩に耐性のアレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の処置用医薬の製造のための、スタウロスポリン誘導体の使用に関する。
【0099】
別の態様において、本発明は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症(これらの状態および疾患はすべてまたイマチニブまたは薬学的に許容されるその塩に耐性を有する)を処置する方法であり、このような処置を必要とする哺乳動物に、治療的有効量のスタウロスポリン誘導体、薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
好ましくは、本発明はアレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症を有する哺乳動物、とりわけヒトを処置する方法であり、このような処置を必要とする哺乳動物に、治療的有効量の式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたは薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0101】
本発明はまた治療的有効量の式(VII)の化合物を、哺乳動物対象に1週間から6週間の期間に関して週に7回から4回または該期間中の日数の約100%から約50%投与し、続いて、薬剤を投与しない1週間から3週間の期間があり、そしてこのサイクルを1サイクルから数サイクル繰り返す、方法にも関する。
【0102】
別の態様において、本発明は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の処置に、より特にイマチニブに耐性のアレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の処置に使用するための医薬組成物の製造のための、スタウロスポリン誘導体の使用に関する。
【0103】
インビボで、スタウロスポリン誘導体、とりわけ式(I)または(II)の化合物の活性は、例えば、0.1から10または1から5mg/体重kg/日の範囲の投与量で、動物に1日あたり1回から3回までの経口投与により証明できる。
【0104】
アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症は、ある場合、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブで処置できるが、頻繁に再発が起こり、そして、スタウロスポリン誘導体および特にミドスタウリンがこれらの場合にまだ活性であることが驚くべきことに判明した。
【0105】
前記の疾患および状態の処置に用いるべきスタウロスポリン誘導体の厳密な用量は、宿主、処置する状態の性質および重症度、投与の形態を含む数個の因子に依存する。しかしながら、一般に、スタウロスポリン誘導体を非経腸で、例えば、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、または直腸、または経腸、例えば、経口、好ましくは静脈内または、好ましくは経口、静脈内で、0.1から10mg/体重kg、好ましくは1から5mg/体重kgの1日量で投与したとき、十分な結果が得られる。ヒト臨床試験において、225mg/日の総量が、最大耐量(MTD)である可能性が最もあった。好ましい静脈内1日投与量は、0.1から10mg/体重kgまたは、ほとんどの大型霊長類に対して、200−300mgの1日量である。典型的な静脈投与は、3から5mg/kgを1週間に3回から5回である。
【0106】
最も好ましくは、スタウロスポリン誘導体、とりわけミドスタウリンは経口で、約250mg/日まで、特に225mg/日の用量のマイクロエマルジョン、軟ゲルまたは固溶体で、1日1回、2回または3回までの投与により投与する。
【0107】
通常、最初は少用量を投与し、処置下の宿主の最適用量が決定されるまで漸増する。投与量の上限は、副作用により決定されるものであり、処置している宿主に関する試験により決定できる。
【0108】
スタウロスポリン誘導体は、1個またはそれ以上の薬学的に許容される担体および、所望により、1個またはそれ以上の他の慣用の医薬アジュバントと組み合わせてよく、そして経腸、例えば経口で、錠剤、カプセル、カプレットなどの形で、または非経腸的に、例えば、腹腔内または静脈内に、滅菌注射可能溶液または懸濁液の形で投与する。経腸および非経腸組成物は、慣用の手段で製造し得る。
【0109】
本発明の輸液は好ましくは滅菌である。これは、例えば滅菌濾過膜を通した濾過により、容易に達成できる。液体形の任意の組成物の無菌製剤、バイアルの無菌充填および/または無菌条件下の適当な希釈剤と本発明の組成物の混合は当業者に既知である。
【0110】
スタウロスポリン誘導体は、前記の疾患および状態を処置するために有効な活性物質の一定量を含む経腸および非経腸医薬組成物に製剤でき、このような組成物は単位投与形であり、このような組成物は薬学的に許容される担体を含む。
【0111】
スタウロスポリン誘導体は単独で、またはこれらの病理への使用するために少なくとも1個の他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用できる。これらの活性化合物は、同じ医薬製剤中に組み合わせることができるか、または、組み合わせパートナーが個々に投与でき、または組み合わせパートナーの区別される量と組み合わせた異なる固定された組み合わせの使用により、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与できる点で、“複数部分のキット”である。複数部分のキットのパーツは、次いで、例えば、同時にまたは時間的に交互に、すなわち、複数部分のキットの任意のパーツに関して異なる時点で、かつ同じまたは異なる時間間隔で投与できる。スタウロスポリン誘導体と組み合わせた使用を言及できる化合物の非限定的例は、細胞毒性化学療法剤、例えばシトシンアラビノシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、VP−16、またはイマチニブなどである。さらに、スタウロスポリン誘導体は、明白な相乗効果がもたらされることが期待されて、他のシグナル伝達または他の癌遺伝子標的剤と組み合わせ得る。
【0112】
有用な組成物の例は、欧州特許0296110、0657164、0296110、0733372、0711556、0711557に記載されている。
【0113】
好ましい組成物は、1995年6月14日公開の欧州特許0657164に記載されている。記載の医薬組成物は、式(I)の化合物、例えばミドスタウリンを、飽和ポリアルキレングリコールグリセライド(ここで、該グリコールグリセライドは1個またはそれ以上のC8−C18飽和脂肪酸のグリセリルおよびポリエチレングリコールエステルの混合物である)中に含む、溶液または分散を含む。
【0114】
このような組成物の2種の製造法を以下に記載する。
【0115】
組成物A:
Gelucire 44/14(82部)を60℃に加熱することにより融解する。粉末ミドスタウリン(18部)を該融解材料に添加する。得られた混合物を均質化し、得られた分散を異なるサイズの硬ゼラチンカプセルに挿入し、あるものが25mg量および別のものが75mg量のミドスタウリンを含むようにする。得られたカプセルは、経口投与に適している。
【0116】
組成物B:
Gelucire 44/14(86部)を60℃に加熱することにより融解する。粉末ミドスタウリン(14部)を該融解材料に添加する。混合物を均質化し、得られた分散を異なるサイズの硬ゼラチンカプセルに挿入し、あるものが25mg量および別のものが75mg量のミドスタウリンを含むようにする。得られたカプセルは、経口投与に適している。
【0117】
Gattefosseから市販されているGelucire 44/14;は、C8−C18飽和脂肪酸とグリセロールおよび約1500の分子量のポリエチレングリコールのエステルの混合物であり、脂肪酸成分の組成の明細は、重量で4−10%カプリル酸、3−9%カプリン酸、40−50%ラウリン酸、14−24%ミリスチン酸、4−14%パルミチン酸および5−15%ステアリン酸である。
【0118】
Gelucire製剤の好ましい例は:
Gelucire (44/14):47g
ミドスタウリン:60mLねじ切りフラスコに入れられた3.0g
から成る。
【0119】
軟ゲルの好ましい例は、下記のマイクロエマルジョンを含むであろう:
Cornoilグリセライド 85.0mg
Polyethylenglykol 400 128.25mg
Cremophor RH 40 213.75mg
ミドスタウリン 25.0mg
DLアルファトコフェロール 0.5mg
無水エタノール 33.9mg
合計 486.4mg
しかしながら、これは説明のみのための目的であることは明らかに理解されるべきである。
【0120】
好ましい態様において、本発明は、式(VII)の化合物の1日有効量が100から300mg、好ましくは125mgから250mg、最も好ましくは220から230mg、好ましくは225mgである、本明細書に記載の使用または方法に関する。
【0121】
最も好ましくは式(VII)の化合物は、1日1回、2回または3回、合計量1日あたり100から300mgを投与する。
【0122】
非常に好ましい態様において、式(VII)の化合物を1日3回、合計量1日あたり220から230mg、好ましくは1日あたり225mg、および好ましくは投与あたり70から80mg、好ましくは75mgを投与する。
【0123】
さらに別の態様において、本発明は、包装材、および該包装材中に包含された式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたは薬学的に許容されるその塩を含み、該包装材が、該式(VII)の化合物もしくは該薬学的に許容される塩を、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症に罹患している哺乳動物に、前記の疾患または状態を阻害するための特定の投与レジメンにしたがい、50から500mg、好ましくは100から300mg、好ましくは125mgから250mg、より好ましくは220から230mg、最も好ましくは225mgの量を投与すべきであることを示す指示ラベルを含む、製品に関する。
【0124】
好ましくは、本発明はまた過好酸球症候群またはイマチニブに耐性の過好酸球症候群を処置するために、式(VII)の化合物を1日3回、合計量1日あたり220から230mg、好ましくは225mg、および好ましくは投与あたりの用量70から80mg、最も好ましくは75mg投与する、製品にも関する。好ましい態様は、25mgの式(VII)の化合物を含む軟ゲルカプセルを含む、製品である。
【0125】
本発明はさらに前記の疾患および状態を処置するための、前記のスタウロスポリン誘導体とイマチニブの組み合わせに関する。このような組み合わせの投与は、同時に、例えば、固定された、組み合わせ医薬組成物もしくは製剤の形で、または連続してまたは時間的に交互に行い得る。スタウロスポリン誘導体の本明細書に記載の投与形での、ならびにイマチニブの米国ではGLEEVEC(登録商標)/欧州ではGLIVEC(登録商標)としてのその市販の形での、かつ、これらの投与形で認識されている投与量での投与が、現在好ましい。
【0126】
アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の上記組み合わせでの処置は、いわゆる一次処置、すなわちいかなる化学療法なども以前に受けていない新たに診断された疾患の処置であってよく、またはいわゆる二次処置、すなわち疾患の重症度または段階ならびに患者の全体的状態などに依存して、イマチニブまたはスタウロスポリン誘導体で以前に処置を受けた後の疾患の処置であってもよい。
【0127】
本明細書で使用する“アレルギー性鼻炎”なる用語は、鼻粘膜のすべてのアレルギー反応を意味する。このようなアレルギー反応は、例えば、四季を通じて起こる、例えば春季結膜炎、または季節的に起こる、例えば、枯草熱であってよい。
【0128】
本明細書で使用する“アレルギー性皮膚炎”は、とりわけアトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を意味し、また、例えば、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、蕁麻疹およびアクネも含む。本明細書で定義のアトピー性皮膚炎は、掻痒に対する皮膚閾値が低い遺伝的素因の個体に見られる慢性炎症性皮膚疾患である。これは主に極度の痒みにより特徴付けられ、それによりひっかいたりこすったりし、それが次に湿疹の典型的な病巣をもたらす。本明細書で定義のアレルギー性接触性皮膚炎は、以前のそれへの暴露によりアレルゲンに対する過敏症を獲得している対象の皮膚に炎症反応をもたらす種々の物質に対するアレルギー性感作が原因の皮膚炎の形である。
【0129】
本明細書で使用する“薬物アレルギーまたは食物アレルギー”なる用語は、薬物または摂取した抗原、例えば、イチゴ、ミルクまたは卵などにより産生される、アレルギー反応に関する。
【0130】
“気管支肺アスペルギルス症”は、肺へのアスペルギルスの感染に関する。
【0131】
本明細書で使用する“肥満細胞症”なる用語は、全身性肥満細胞症、例えば肥満細胞腫、およびまたイヌ肥満細胞腫瘍(canine mast cell neoplasm)に関する。肥満細胞症は、処置選択が限定され、一般に予後が悪い骨髄増殖性疾患である。肥満細胞症の病因は、受容体チロシンキナーゼKITの構成的活性化に関与している。肥満細胞症患者の大部分で、KITの誤制御されたチロシンキナーゼ活性は、該タンパク質のコドン816の変異(D816V)のためであり、これはまたインビトロおよびインビボで、イマチニブまたはメシル酸イマチニブ(後者は米国でGleevec(登録商標)または他の場所でGlivec(登録商標)として市販)への耐性を与える。
【0132】
肥満細胞は、本明細書に記載のアレルギー性疾患における一次エフェクター細胞として重要な役割を演じる。肥満細胞の抗原−特異的IgE−介在脱顆粒は、続いて化学メディエーターおよび多数のサイトカインの放出、ならびにロイコトリエン合成をもたらす。よりさらに、肥満細胞は多発性硬化症の病因に関与する。
【0133】
肥満細胞腫瘍はヒトおよび動物の両方で起きる。イヌにおいて、肥満細胞腫瘍は肥満細胞腫と呼ばれ、該疾患は一般的でありイヌ腫瘍の7%−21%を示す。通常一過性または無痛性であるヒト肥満細胞症と、予期されない行動をし、しばしば攻撃的であり転移性であるイヌ肥満細胞腫瘍を区別すべきである。例えば、ヒト孤立性肥満細胞腫はたいてい転移性ではない;対照的に、Hottendorf & Nielsen (1969)が938匹のイヌの腫瘍を報告した46文献から概算して、イヌ肥満細胞腫の50%が悪性形態で行動する。
【0134】
ペット集団における癌は自然発生疾患である。ペットの飼い主は、その動物の生活の質を延長することが動機となり、しばしば、国を超えて、個人的に推薦された動物病院かつ獣医師が指導した病院での、獣腫瘍学者の特殊なケアおよび処置を探す。獣医癌患者の治療モダリティーはヒトと類似し、手術、化学療法、放射線療法および生物療法を含む。米国で、約4200万匹のイヌおよび約2000万匹のネコがいると推定される。癌発生率の大まかな推定を使用して、毎年おおよそ400万匹のイヌが新たに癌と診断され、ネコもほぼ同数である。
【0135】
イヌにおける皮膚肥満細胞腫は一般的な問題である。ほとんどの肥満細胞腫瘍は良性であり、単純な切除で治癒する;しかしながら、再発するか離れた場所に転移したとき、治療選択は限られる。再発病巣のための治療選択は、外照射療法を含み得る。離れた場所への転移または転移性疾患のためには、Lomustine(登録商標)およびビンブラスチン含有処置化学療法プロトコールが幾分有効であることが証明されている。肥満細胞腫瘍の転移部位は、皮膚、所属リンパ節、脾臓、肝臓および骨髄を含む。
【0136】
肥満細胞症の病因におけるKIT受容体の関与は、KITの構造的活性化をもたらすいくつかの変異が、多くの肥満細胞系で検出されているとの観察から示唆される。例えば、ホスホトランスフェラーゼドメインにおけるAsp816のValへの置換および受容体自己活性化をもたらすヒトc−KITにおける点変異が、長期ヒト肥満細胞白血病系(HMC−1)および2種の齧歯類肥満細胞系の対応するコドンで起こる。さらに、この活性化変異が、ヒト肥満細胞症のいくつかの症例でインサイチュで同定されている。2つの他の活性化変異、すなわち、ヒトHMC−1肥満細胞系でVal560Gly置換が、およびFMA3と呼ばれる齧歯類肥満細胞系で7アミノ酸欠失(Thr573−His579)が、KITの細胞内膜近傍領域で発見されている。
【0137】
スタウロスポリン誘導体またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩が、本明細書に記載の疾患の少なくとも1個の有効な予防、または好ましくは処置をもたらすことが、確立された試験モデルで、および特に本明細書に記載のこのような試験モデルで示すことができる。関連分野の当業者は、前記および後記で示された治療的適応症および優れた効果を確認するための、関連試験モデルを選択することが十分に可能である。薬理学的活性は、例えば、臨床試験または本質的に後記の試験法で証明できる。
【実施例】
【0138】
実施例1
この実施例は、スタウロスポリン誘導体の、Kinoshita T, Sawai N, et al in Blood 1999, 94, 496-508に記載の培養系を使用してCD34臍帯血細胞から産生した培養ヒト肥満細胞増殖のSCF−依存性発育に対するインビトロ効果を証明する。単離細胞の90%以上が、フローサイトメトリー分析でCD34−陽性である。
【0139】
試薬および抗体
スタウロスポリン誘導体を、DMSOに10−2Mの濃度で可溶化し、−80℃で貯蔵する。全−transレチノイン酸(Sigma)を、エタノールに10−2Mの濃度で溶解し、そして遮光バイアル中、−80℃で貯蔵する。トリプターゼに対する精製mAb(MAB1222)は、Chemicon International Inc., CAから購入できる。フローサイトメトリー分析に関して、CD34(8G12, FITC)およびCD11b(Leu15, PE)に対するmAbをBecton Dickinson Immunocytometry Systems(Mountain View, CA)から購入し、そしてCD41に対するmAb(SZ22, FITC)をImmunotech S.A. (Marseilles, France)から購入する。グリコホリンに対するmAb(GPA, JC159, FITC)は、Dako(Glostrup, Denmark)から得ることができる。ウェスタンブロッティングおよび免疫沈降に関して、c−kit(NU-c-kit)およびホスホチロシン(4G10)に対するmAbは、各々NichireiおよびUpstate Biotechnology, Inc(Lake Placid, NY)から購入できる。
【0140】
懸濁培養
無血清液体培養を、24−ウェル培養プレート(#3047;Becton Dickinson)で行う。2万のCD34細胞を、1%BSA、300μg/mL完全鉄飽和ヒトトランスフェリン(約98%純粋、Sigma)、16μg/mL大豆レシチン(Sigma)、9.6μg/mLコレステロール(ナカライ化学株式会社、日本)および20ng/mLのSCF、10ng/mLのGM−CSF、2U/mLのEPO、10ng/mLのTPO、種々の濃度のスタウロスポリン誘導体単独または組み合わせを添加された、2mLのα−培地を含む各ウェルで培養する。スタウロスポリン誘導体の、肥満細胞のSCF−依存性発育に対する効果を試験するために、CD34臍帯血細胞由来の20ng/mLのSCFと増殖させた10週培養細胞を、標的細胞として使用する。5〜10×10 10週培養細胞を、2週間、スタウロスポリン誘導体を含まないか種々の濃度で含む、20ng/mLのSCF含有24−ウェル培養プレート中インキュベートする。プレートを、37℃で5%CO、5%O、および90%Nでフラッシュした(flushed with)加湿雰囲気中、インキュベートする。培養を4週間続けたとき、培養培地の半分を2週間毎に、上記因子を含む培地で置換する。生存細胞の数を、血球計を使用したトリパンブルー排除試験で測定する。
【0141】
クローンの細胞培養
肥満細胞コロニーアッセイを、35mm Lux懸濁培養皿(#171099;Nunc, IL)で行う。培養は、10ng/mLのSCF、α−培地、0.9%メチルセルロース(信越化学、日本)、1%BSA、300μg/mLの完全鉄飽和ヒトトランスフェリン、16μg/mLの大豆レシチン、9.6μg/mLのコレステロールおよび100ng/mLのSCFと共に、ならびに10−6Mのスタウロスポリン誘導体存在下または非存在下で増殖させた、10週培養細胞(4,000細胞/mL)を含む。皿を37℃で、5%CO、5%O、および90%Nでフラッシュした加湿雰囲気中、培養する。4週間後、30またはそれ以上の細胞から成る凝集物を肥満細胞コロニーと見なし、そして10から29細胞から成るものを肥満細胞クラスターと見なす。30の独立したコロニーおよびクラスターを持ち上げ、抗トリプターゼmAbまたはマウスIgG1で、アルカリホスファターゼ−抗アルカリホスファターゼ(APAAP)技術を使用して染色する。構成細胞のほとんどすべてがトリプターゼに陽性である。
【0142】
細胞化学的および免疫学的染色
培養細胞を、スライドガラス上にCytospin IIを使用して広げる。ペルオキシダーゼ(POX)との細胞化学的反応を、慣用法により行う。トリプターゼに対するmAbとの反応を、F. Ma, K. Koike, et al. in Br. J. Haematol. 1998, 100, 427-35に記載の通り、APAAP法(Dako APAAP Kit System, Dako Corp., CA)を使用して検出する。
【0143】
免疫沈降およびウェスタンブロッティング
免疫沈降およびウェスタンブロッティングを、T. Kamijo, K. Koike, et al. in Leuk. Res. 1997, 21, 1097-106に記載の通り行う。
【0144】
フローサイトメトリー分析
培養細胞の表面マーカーの分析のために、Kinoshita T, Sawai N, et al in Blood 1999, 94, 496-508に記載の通り、1−2×10細胞をプラスティックチューブに回収し、適切に希釈されたFITC−またはPE−mAbとインキュベートする。細胞を2回洗浄し、その後、それらの表面マーカーをFACScanフローサイトメーターで分析する。生存細胞を、それらの前方光散乱特性および側面散乱特性にしたがい通過させる。陽性細胞の割合を、FITC−またはPE−接合マウスアイソタイプ−適合Igで染色された細胞の比較により決定する。
【0145】
細胞アポトーシスの検出
細胞アポトーシスの分析は、N. Sawai, K. Koike, et al in Stem Cells. 1999, 17, 45-53に記載の方法により、ヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)を使用したフローサイトメトリー分析をにより行う。アポトーシスに付された、壊死のまたは既に死んだ細胞を減少させるために、パーコール勾配遠心分離を使用できる。10週培養細胞をα−培地中の27%パーコール(Sigma)およびPBS中の54%パーコール上に重層する。遠心分離後、細胞を2種の異なる濃度のパーコール溶液の中間面から回収し、PBSで洗浄し、1mLのOrtho PermeaFixTMで40分、室温で処置する。細胞を次いでDNase−フリーRNase(Sigma)で、15分、37℃でインキュベートし、PIで15分染色する。2×10細胞のDNA含量をフローサイトメーターで追跡する。SCFまたはSCFとスタウロスポリン誘導体に暴露した10週培養細胞(2×10)を、10分、氷上で、100μL低張性融解緩衝液[10mM Tris (pH7.5)、10mM EDTA、pH8.0、0.5%Triton X−100]中で融解する。10分、14,000gで遠心分離後、上清を新しい試験管に移し、0.2mg/mL RNase(Sigma)および0.2mg/mL プロテイナーゼK(Sigma)で処理する。DNAを120μL イソプロパノールおよび20μL 5M NaClで、一晩、−20℃で沈殿させる。14,000gで遠心分離後、ペレットを乾燥させ、20μL Tris−EDTAに溶解し、次いでサンプルを、2%アガロース中でのゲル電気泳動および臭化エチジウム染色により分析する。
【0146】
ヒスタミン、トリプターゼおよびサイトカインレベルのアッセイ
培養細胞の0.5%Nonidet P-40での処理により得た細胞融解物および上清中のヒスタミン濃度を、ヒスタミン放射免疫アッセイ(RIA)キット(Immunotech)で、Kinoshita T, Sawai N, et al in Blood 1999, 94, 496-508に記載のように測定する。
【0147】
統計学的分析
すべての実験は、少なくとも3回行う。2つの別々の群の間の差の有意性を決定するために、対応のないt検定を、またはデータが正規分布していないときマン−ホイットニーU検定を使用できる。
【0148】
実施例2:方法
試薬:Novartis Pharma;Basel, Switzerland:これらの実験で使用するためのPKC412またはミドスタウリン。阻害剤の新鮮10mM貯蔵溶液を、各実験前に1mL DMSO(ジメチル−スルホキシド)に化合物を溶解することにより製造する。
【0149】
抗体:ポリクローナルウサギ抗KIT抗体(c-kit Ab-1)を、1:500の希釈で使用する(c-kit Ab-1;Oncogene, Cambridge, MA)。抗ホスホチロシン抗体(PY20)を1:1000の希釈で使用する(PY20 Transduction Laboratories;Lexington, KY)。ペルオキシダーゼ接合ヤギ抗マウス抗体を1:5000で、およびヤギ抗ウサギ抗体を1:10,000の希釈で使用する(Pierce;Rockford, IL)。
【0150】
細胞系:BRおよびC2イヌ肥満細胞腫細胞系を、Dr. George Caughey(University of California at San Francisco, San Francisco, CA)から得る。両方の細胞系を、2%ウシ胎仔、1mM L−グルタミン、12.5mM HEPES(pH7.5)、0.25mg/mL ヒスチジン、1%ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1%フンギゾンを添加したDMEM中に維持する。BRおよびC2細胞はイヌ肥満細胞腫瘍由来であり、最初は免疫不全マウス中の初期継代後、長期培養で確率した(DeVinney R et al., Am J Respir CellMol Biol 1990;3(5):413-420;Lazarus SC et al., Am J Physiol 1986;251(6 Pt 1):C935-C944)。BR細胞系はアミノ酸575(膜近傍ドメイン)で、ロイシンのプロリン置換をもたらす、点変異(T1752C)を有する。C2細胞系は、KIT膜近傍領域の内部直列重複(ITD)を有する。このITDの翻訳は、エキソン11の3'末端のアミノ酸残基の再重複をもたらす(London C et al., Exp Hematol 1999;27(4):689-697;Ma Yet al., J Invest Dermatol 1999;112(2):165-170)。
【0151】
増殖アッセイ:細胞を96ウェルプレートに通常の培養培地および種々の濃度のSALT I中、40,000細胞/ウェルの濃度で播種する。増殖を、48−72時間目に、XTT−ベースのアッセイを使用して測定する(Roche Molecular Biochemicals;Indianapolis, IN)(HeinrichMC et al., Blood 2000;96(3):925-932)。
【0152】
タンパク質融解物:BRおよびC2細胞を2回PBSで洗浄し、次いでOptimem(Gibco-BRL)中、37℃で約18時間静止(quiesced)させる。細胞を次いで90分、種々の濃度のPKC412の存在下インキュベートする。このインキュベーション後、細胞をペレット化し、100−250μlのタンパク質融解緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、1%NP−40、0.25%デオキシコレート、阻害剤アプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチン、PMSF、およびオルトバナジン酸ナトリウム[Sigma]の添加と共に)を使用して融解する。ウェスタン免疫ブロット分析を、先に記載の通り行う(HoatlinMEet al., Blood 1998;91(4):1418-1425;HeinrichMC et al., Blood 2000;96(3):925-932)。
【0153】
実施例3:化合物Iは、イヌ肥満細胞腫瘍に関連する構造的に活性化されたKITキナーゼを阻害する。
イヌKITの変異形のキナーゼ活性の阻害に対する化合物Iの効果を試験するために、我々は、2種の異なる構造的に活性化されたKITアイソフォームを発現する2種の細胞系(BRおよびC2)を使用する。これらの細胞系におけるKIT変異は、両方とも膜近傍ドメインに位置し、ヒト消化管間質腫瘍(GIST)で見られる変異と相同である(Lux ML et al., Am J Pathol 2000;156(3):791-795;Rubin BP et al., Cancer Res 2001;61(22):8118-8121)。BRまたはC2細胞から調製した融解物を抗P−Tyr抗体で探索し、KIT受容体活性化を自己リン酸化の測定により評価する。先に報告されているように、これらの細胞におけるKIT自己リン酸化は、SLF非存在下で観察される(Ma Yet al., J Invest Dermatol 1999;112(2):165-170;Ma Y et al., Journal of Investigative Dermatology 2000;114(2):392-394)。KIT自己リン酸化のPKC412による阻害は用量依存的であり、10および1.0μM用量を使用して完全な阻害が観察される。ほとんど完全な阻害が、0.1μMの用量を使用して観察される。c−kitの限られた自己リン酸化が、PKC412の0.001−0.01μM用量を使用して観察される。したがって、PKC412はこれらの細胞中の変異したc−kit受容体の自己リン酸化を阻害するだけでなく、野生型c−kit受容体(IC50 100−200nM)に対するよりもこの変異した受容体に対するより強力な阻害剤である。PKC412がKITタンパク質の発現を調節するかを測定するために、膜を取り(stripped)、抗c−kit抗体と再プローブした。PKC412処理細胞でc−kitタンパク質の発現の変化はなかった。したがって、PKC412は、変異体イヌKITポリペプチドの自己リン酸化を、KITタンパク質の発現の下方制御よりもむしろKITキナーゼ活性の阻害により減少させる。
【0154】
実施例4:化合物Iは、イヌ肥満細胞腫瘍の細胞系の増殖を阻害する。
変異体c−kit受容体のキナーゼ活性を阻害する生物学的効果を試験するために、BRまたはC2細胞を、48−72時間、種々の濃度のPKC412の存在下で培養する。阻害剤濃度が0.1−10μMのとき、増殖は、媒体のみで処理した細胞と比較して、90−95%減少する。増殖の部分的阻害が0.001−0.01μM用量のPKC412で見られる。したがって、PKC412は、BRおよびC2細胞の増殖を、受容体自己リン酸化の阻害で見られるとの同じ用量応答範囲で阻害する。阻害剤処理細胞の形態学的観察は、アポトーシスと一致する変化を明らかにする。
【0155】
実施例5:測定可能な皮膚肥満細胞腫の飼いイヌの前向き症例集積検討の例。
試験患者は、測定可能でありかつ組織学的に確認された肥満細胞腫瘍を有する飼いイヌである。症例は、測定可能領域が生検に適しているものに限る。
【0156】
有資格基準は:
−組織学的に確認された測定可能な皮膚肥満細胞腫
−症例は、治療前および治療中、2mm Keyesパンチでの連続的生検を必要とするであろう
−組織学的等級(II−中程度またはIII−低分化)
−一般状態0またはI(変形Karnofsky−表1)
−飼い主へのインフォームド・コンセント
である。
【0157】
(a)除外基準は:
−同時の細胞毒性化学療法
−プレドニゾンおよび非ステロイド抗炎症剤は、試験の30日以内には開始されてはならない;プレドニゾンまたは非ステロイド抗炎症剤が30日を超えて投与されている場合、試験は継続される
−血清胆汁酸試験(肝臓機能)異常者
である。
【0158】
【表1】

【0159】
全症例の処置前評価は、身体測定、全血球数、軟膜、血清生化学、尿検査、血清胆汁酸(空腹時および餌後)、所属リンパ節サイズの文書化、腹部放射線写真、および腹部超音波を含む。処置レジメンはミドスタウリン25mg/kg PO QD×60日である。
【0160】
処置を、疾患進行が顕著でない限り、60日続ける。部分応答または完全な応答を経験した症例に関しては、さらに60日の継続治療を考慮してよい。十分に治療を完了した症例は、試験に繰り返し参加する資格がある。
【0161】
【表2】

最初の臨床病期分類は身体測定、CBC、軟膜、血清生化学、肝臓機能試験(血清胆汁酸)、尿検査、腹部放射線写真、および腹部超音波を含む。単独および繰り返し臨床病期の再評価は、身体測定および腫瘍量の測定からなる。
腫瘍量は0日目、7日目、14日目、28日目、そして続いて14日毎に測定する。処置応答は、測定可能な皮膚病巣(複数もある)および、病期分類で確認される(CR、PR、SD、PD−下記定義)他の病巣に対して定義する。
最初に参加した5症例からの血漿の採取を、ミドスタウリンの最初の投与後0時間、0.5時間、1時間、2時間、5時間、8時間、12時間、16時間、24時間に行う。
確定した測定可能な病巣(複数もある)からの切開生検を、全症例から0日目および28日目に採取する。さらなる生検サンプルを、部分応答(PR)時および完全な客観的応答(CR)の後に採取する。
【0162】
スタウロスポリン誘導体の効果を、測定可能な皮膚肥満細胞腫に対して、臨床評価項目を使用して評価する。生物学的評価項目は、皮膚腫瘍から採取した連続生検サンプルおよび処置過程を通して入手可能な血液サンプルから選択し得る。
【0163】
臨床評価項目は、測定可能な腫瘍の応答率、測定可能な腫瘍に対する客観的応答、および測定可能な腫瘍の進行までの時間を含む。すべての有害事象を記録する。
【0164】
下記定義のような“客観的腫瘍応答”は、スタウロスポリン誘導体での処置下に観察され、処置レジメンの効果の指標である。
【0165】
特に、スタウロスポリン誘導体での処置に対する完全応答および部分応答を観察し得る。よりさらに、処置動物のより多くが安定疾患状態を示し、一方処置した動物の少数が進行疾患状態を示すことを観察し得る。また、非処置動物と比較して、処置を受けた動物の少数が疾患の再発を示すことを観察し得る。進行までの時間、再発の期間、および生存は、スタウロスポリン誘導体で処置された動物で増加し得る。
【0166】
“完全応答(CR)”は、癌および癌に関連するすべての徴候のすべての臨床上の証拠の消失と定義する。
【0167】
“部分応答(PR)”は、すべての病巣のサイズの増加または任意の新規病巣の出現を伴わない、代表的病巣の生成物の合計の50%またはそれ以上の減少として定義する。
【0168】
“安定疾患状態(SD)”は、応答なしかもしくは部分的応答で定義したより少ない応答または任意の新規病巣の出現または臨床徴候の悪化なしの疾患の進行と定義される。
【0169】
“進行疾患状態(PD)”は、任意の測定可能な病巣の少なくとも50%のサイズの明白な増加または新規病巣の出現と定義する。
【0170】
“再発(R)”は、完全応答をしたイヌにおける新規病巣の出現または旧病巣の再出現として定義される;部分応答のみをしたイヌにおいて、再発は、最大応答時に得られた測定値と比較して、代表的病巣の生成物の合計の少なくとも50%の増加と定義する。
【0171】
“進行までの時間(TTP)”は、プロトコールの0日目から報告する。TTPは、治療開始から(0日目から)再発(R)までの日数として定義する。
【0172】
“再発の期間”は、客観的応答(PRまたはCR)から再発までの日数として定義する。
【0173】
“生存”は、スタウロスポリン誘導体での処置開始日から死亡までの日数として定義する。死亡原因は、記載すべきであり、疾患進行、毒性その他を含み得る。
【0174】
実施例6
48歳女性が、発熱、紫斑、脾腫、下痢ならびに輸血依存性貧血および血小板減少を示した。最初の白血球細胞数は20,000/mmであり、骨髄未成熟および形成異常ならびに8%芽細胞を伴った。骨髄生検は、5−10%芽細胞、3血球系形成異常および30−50%肥満細胞を示した。末梢血の試験は、D816V KIT変異および野生型FLT−3のヘテロ接合性を確認した。彼女は混合骨髄異形成/骨髄増殖性症候群が合併した全身性肥満細胞症と診断された。来院2ヶ月後、彼女の疾患は進行し、30−40%循環肥満細胞となった。彼女を赤血球および血小板輸血、抗ヒスタミン遮断、およびクロモリンナトリウムでサポートした。彼女は進行性肝機能障害、重篤な腹水症および門脈血栓症を発症した。PKC412での処置を、100mg、1日2回、経口(28日サイクル)の用量で開始した。治療開始時、血清ヒスタミンレベルは6910−7336ng/dL(正常<100ng/dL)および血清トリプターゼは>200μg/L(正常<10.9μg/L)の範囲であった。
【0175】
サイクル1の終わりまでに:部分応答(Valent et al, Leuk Res. 2003;27:635-641の基準)
−Karnofsky一般状態は20%から70%に改善した
−下痢が改善し、腹水症が著しく減少した;1つの門脈血栓症が再疎通した
−輸血依存性貧血および血小板減少は持続した
−総/直接ビリルビンは4.8/2.8から2.1/1.1mg/dLに減少した;LDHは769から239IU/Lに減少した
−血清ヒスタミンは7000から1000ng/dLに減少した;血清トリプターゼは>200μg/Lの高いままであった
−末梢血:肥満細胞数は40−50%から<10%に減少した;骨髄成熟が増加した
−骨髄:IPOXでの肥満細胞のクラスターは変化がなかった;芽細胞は<5%に減少した
【0176】
PKC412治療1ヶ月後、該患者のKarnofsky一般状態は20%から70%に改善し、肝臓機能および腹水症が著しく改善し、そして門脈が再疎通した。処置32日目までに、患者は正常白血球細胞数、<5%循環肥満細胞および骨髄未成熟のほとんど完全な消散を示した。この時点での骨髄生検は、芽細胞の<5%までの減少と肥満細胞および形成異常の持続を示した。血清ヒスタミンレベルは1031ng/dLに減少した;しかしながら、血清トリプターゼは高いままであった。
【0177】
サイクル2の終わりまでに:部分応答の維持
−改善された臨床症状およびKarnofsky一般状態は維持された
−2−3週間一過性に血小板輸血非依存性であった(血小板20,000−25,000/mm)
−さらに総/直接ビリルビンが改善された:2.1/1.1から1.3/0.7mg/dLに低下した
−血清ヒスタミンは800−1200ng/dL範囲のままであった;血清トリプターゼは>200μg/Lの高いままであった
−骨髄:肥満細胞クラスターのクラスターに著しい変化はなかった;芽細胞10−15%
−末梢血:肥満細胞数は<10%のままであった;骨髄未成熟および芽細胞が増加した
【0178】
PKC412治療2ヶ月後、彼女は減少した血小板輸血が必要であり、臨床的に安定した状態のままであった。
【0179】
サイクル3の終わりまでに:疾患進行
−Karnofsky一般状態は減少し始めた;肝脾腫、腹水症、ビリルビンの増加
−PKC412用量を91日目から75mg po tidに増加させた
−PKC412を、102日目に臓器肥大の悪化を伴う疾患の進行のために停止した、
−ビリルビン(総14mg/dL)、および末梢血芽細胞の増加(おそらくクローンの、血液学的非−肥満細胞系統疾患と関連する肥満細胞白血病の進行)
−血清ヒスタミンは2525ng/dLに再増加し始めた;患者は111日目に死亡した。
【0180】
PKC412は、明白な全身性の有害事象なしに十分耐容性であった。肥満細胞白血病のこの進行した症例でのPKC412に対する部分応答は、該化合物が全身性肥満細胞症に有効であることを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−またはジ−置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−モノ−またはN,N−ジ−置換アミノスルホニル;
nおよびmは、互いに独立して、0(0を含む)から4(4を含む)の数字であり;
は水素、いずれの場合も29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、またはいずれの場合も20個までの炭素原子を有しかついずれの場合も9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環式もしくはヘテロ環式−脂肪族ラジカル、または30個までの炭素原子を有するアシルであり;
Xは2個の水素原子;1個の水素原子およびヒドロキシ;O;または水素および低級アルコキシを意味し;
QおよびQ'は独立して薬学的に許容される有機骨格(organic bone)または水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−またはジ−置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−モノ−またはN,N−ジ−置換アミノスルホニルである。〕
のスタウロスポリン誘導体または少なくとも1個の塩形成基が存在するときそれらの塩、またはその水素化誘導体の、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、薬物アレルギーもしくは食物アレルギー、血管浮腫、蕁麻疹、乳幼児突然死症候群、気管支肺アスペルギルス症、多発性硬化症または肥満細胞症の治癒的、軽減的または予防的処置用医薬組成物の製造のための、使用。

【公開番号】特開2012−144572(P2012−144572A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101493(P2012−101493)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2006−515982(P2006−515982)の分割
【原出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】