スタッカークレーン搬送設備
【課題】壁面に沿って移動し、壁面に形成された受け渡し口との間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えた搬送設備において、安価な構成で故障したスタッカークレーンの作業を代行すること。また、スタッカークレーン間の被処理体の受け渡しを容易にすること。
【解決手段】複数のスタッカークレーンが移動する軌道を共有化して、更に複数のスタッカークレーンが故障時に退避するための退避領域を設ける。また、複数のスタッカークレーンの間に被処理体を一時的に保管するための中間受け渡し部を設けて、この中間受け渡し部を介してスタッカークレーン間の被処理体の受け渡しを行う。
【解決手段】複数のスタッカークレーンが移動する軌道を共有化して、更に複数のスタッカークレーンが故障時に退避するための退避領域を設ける。また、複数のスタッカークレーンの間に被処理体を一時的に保管するための中間受け渡し部を設けて、この中間受け渡し部を介してスタッカークレーン間の被処理体の受け渡しを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の製造工場においては、粉体原料に対して秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)及び検査などの各々異なる処理を行う処理部を備えた多数の処理室が複数階に亘って、且つ各階において横方向に複数設けられている。粉体原料は、外部から搬入されて開封された後、中間保管部において、所定の搬送容器内で保管される。粉体原料は、この中間保管部から各処理室に順次搬送されて、処理された後再度中間保管部に戻されて、その後次の処理室に搬送されるといったシーケンスフローにより順次処理が行われて医薬品が製造される。
【0003】
前記中間保管部及び各処理室間における搬送容器の搬送は、スタッカークレーンを介して行われる。即ち、工場内には、スタッカークレーンの移動空間である壁面で囲まれた扁平直方体状の通路(「スタッカークレーンシャフト」などと呼ばれる)が設けられており、壁面には各処理室あるいは中間保管部との間で搬送容器の受け渡しを行うための受け渡し口が形成されている。
【0004】
前記スタッカークレーンは、移動空間の底面に形成された水平軌道に沿って移動する基部と、この基部に設けられ、上下に移動するリフトを備えており、リフトには前記移動空間の幅方向に移動し、各受け渡し口を介して処理室内に進入できるように構成された搬送台が設けられている。各処理室は、例えばその処理室の処理部と当該処理室に進入した前記搬送台との間で搬送容器の受け渡しを行う搬送機構を備えており、当該搬送機構を介してスタッカークレーンとの間で搬送容器の受け渡しを行うことができるように構成されている。前記工場には、複数の水平軌道が設けられており、これらの各軌道には、それぞれ一台のスタッカークレーンが設けられている。
【0005】
上述の処理室における各処理は、粉体原料に対して連続的に施されるため、各処理の一部が例えばトラブルなどによって停止した場合、工場内における処理全てが停止してしまう。そのため、各処理室では、例えば同一の処理部を複数設けて並列運転を行い、一の処理部が停止した場合には、他の処理部を用いてラインの停止を回避するようにしている。一方、スタッカークレーンについては、故障などにより動作しなくなった場合、各処理室間における搬送容器の搬送ができなくなり、そしてスタッカークレーンの被搬送物である搬送容器は大型であるため、搬送容器の搬送を代替することができない。このため、スタッカークレーンの部品交換等により不具合が解消するまで工場における処理全てが停止してしまい、スタッカークレーンの運転再開まで長い時間がかかることから、工場の稼働効率が低下してしまう。
【0006】
この対策として、通常時は使用しない予備のスタッカークレーンを設置しておく方法が考えられるが、コストアップになってしまう。特許文献1には、スタッカークレーンについて記載されているが、上述の課題やその解決方法については触れられていない。
【0007】
また、複数のスタッカークレーン間において搬送容器の受け渡しを行う場合、各スタッカークレーンの受け渡しポート同士を接続する他の補助搬送設備例えばトラバーサ、ベルトコンベアが必要であり、コストアップになっているという課題もある。
【0008】
【特許文献1】特開平3−188937
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、スタッカークレーンに不具合が生じても生産効率の低下を安価に抑えることができる技術を提供することである。また、スタッカークレーン間における搬送容器の受け渡しを安価に行うことのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスタッカークレーン搬送設備は、
軌道上を移動し、作業領域に設けられた受け渡し部との間において、被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
同一軌道上に設置され、この軌道に沿って並ぶ複数の作業領域が各々割り当てられた複数のスタッカークレーンと、
一のスタッカークレーンに不具合が生じた時、当該一のスタッカークレーンの作業領域の作業を別のスタッカークレーンが分担するために、各々のスタッカークレーンの作業領域から外れた領域にて、不具合の生じたスタッカークレーンが退避できるように設けられた退避領域と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
互いに隣接するスタッカークレーンの作業領域の間には、これらスタッカークレーンのいずれもが被搬送物の受け渡しを行うことができる中間受け渡し部が設けられていても良い。
前記スタッカークレーンは2台設けられ、前記退避領域は、前記軌道の両端部に設けられている構成としても良い。
前記退避領域は、いずれのスタッカークレーンについても退避できるように前記軌道から分岐して設けられていても良い。
【0012】
また、本発明のスタッカークレーン搬送設備は、
前記複数のスタッカークレーンが通常動作を行うための通常運転用プログラムと、スタッカークレーンに不具合が生じたときに、別のスタッカークレーンが作業分担するためのバックアップ用プログラムと、これらプログラムの中から選択されたプログラムに基づいて、スタッカークレーンの制御信号を出力する手段と、を有する制御部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一本の軌道上において複数のスタッカークレーンが移動するように複数のスタッカークレーンの軌道を共通化して、更に複数のスタッカークレーンが故障時などに退避できる退避領域を設けたことで、一台のスタッカークレーンが故障した場合でも、当該スタッカークレーンを退避領域に退避させ、他のスタッカークレーンがその故障したスタッカークレーンの作業を肩代わりするように動作させている。従って、生産の停止を防止できるか、あるいは生産が停止しても、その再開を速やかに行うことができ、しかも安価な設備を構成できる。また、一本の軌道上において複数のスタッカークレーンが移動するように複数のスタッカークレーンの軌道を共通化して、更に各々のスタッカークレーンの間に、軌道に沿って搬送容器を保管できる中間受け渡し部を設けたことで、この中間受け渡し部を介してスタッカークレーン間において搬送容器の受け渡しができるので、補助搬送設備が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のスタッカークレーン搬送設備の第1の実施の形態について、以下に説明する。図1は、本発明のスタッカークレーン搬送設備を適用した例えば医薬品製造工場1の一例を示しており、先ず医薬品製造工場1の全体構成について説明する。図中の鎖線部は医薬品製造工場1の外壁11を示しており、この外壁11内は、床12により上下に例えば2層に区画されている。また、外壁11内にはスタッカークレーンシャフトと呼ばれる、後述のスタッカークレーン2が移動する扁平な直方体状の通路(移動空間)13が設けられており、この通路13は、医薬品製造工場1内の上下各層に跨って、横方向(図中X軸方向)に沿って、各層を前後方向(図中Y軸方向)に分けるように設けられており、その周囲は壁(壁面)14に囲まれている。
【0015】
各層において通路13(壁14)を挟んで左右両側または片側には、医薬品原料に対して所定の処理を行う多数の処理室や、処理中の中間原料を保管するための保管室が当該通路13の長さ方向(X方向)に沿って設けられている。これらの処理室は、後述の被搬送物(搬送容器C)が搬送される搬送領域を含み、例えば医薬品原料の秤量、秤量後の原料の搬送容器Cへの充填や、その搬送容器C中の医薬品原料の造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)または成形物(製品)の検査などの医薬品原料及びその原料から得られた製品に対して各々異なる処理を行う処理部(図示せず)を備えている。
【0016】
また、通路13を区画する壁14には、処理室や保管室に対応する位置に搬送容器Cを受け渡すための受け渡し口が形成されており、この受け渡し口は例えば横方向に開閉自在なドア16によって仕切られている。このドア16を介して通路13内を移動するスタッカークレーン2とドア16の内側(処理室内または保管室内)に設けられた受け渡し部である載置台15との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。
【0017】
この載置台15は、例えば所定の間隔で配置された逆U字型に折り曲げられた2本の角材等によって構成されている。各処理室は、医薬品原料あるいは中間品に対して各々所定の処理を行う図示しない処理部と、当該処理部と載置台15との間で搬送容器Cを受け渡すための図示しない搬送機構等が設けられている。また、一カ所の処理部が上下の複数階に分かれていて、上の階(層)で受け取った原料または中間品を下の階に落下させて、下の階にて処理物を搬送容器Cに移してスタッカークレーン2に戻すシステムとしても良い。尚、図が煩雑にならないように記載を省略しているが、各層の処理室は壁により互いに区画され、所定の清浄度に保たれている。
【0018】
次に、図2を参照して通路13内を移動するスタッカークレーン2について説明する。スタッカークレーン2は、基部21、基部21に設けられた鉛直方向に伸びる柱部22、22、柱部22、22間において鉛直方向に移動可能なリフト23及びリフト23上に設置された搬送台24から構成されている。搬送台24は搬送容器Cの受け渡し手段として構成されており、通路13の前後方向(図中Y方向)に移動して、既述のドア16を介してドア16内の載置台15との間で搬送容器Cの受け渡しを行う。
また、通路13の長さ方向に沿って、通路13内の床12には軌道25が設けられており、スタッカークレーン2は、基部21に設けられた車輪26によって、この軌道25に沿って横方向に移動する。
【0019】
このスタッカークレーン2は、図3及び図4に示すように、複数台例えば2台のスタッカークレーン2a、2bが一本の軌道25上の図中左右方向に配置されており、これらのスタッカークレーン2a、2bは、通常運転時には、それぞれが作業(保管室あるいは処理室との間における搬送容器Cの受け渡し)を行うための作業領域30a、30b内を移動して、既述のように、載置台15との間において、ドア16を介して搬送容器Cの受け渡しを行うように構成されている。作業領域30a、30bは、通路13を長さ方向に略二等分した領域となるように構成されている。尚、一本の軌道25は、一本あるいは平行な複数本のレールにより構成される。
【0020】
また、それぞれの作業領域30a、30bの外側(通路13の両端)には、一台のスタッカークレーン2a(2b)が退避できる退避領域31a、31bが各々設けられており、後述するように、一方のスタッカークレーン2a(あるいは2b)が故障等の不具合により退避領域31a(あるいは31b)に退避した場合であっても、他方のスタッカークレーン2b(あるいは2a)が作業領域30a(30b)におけるスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりできるように構成されている。尚、作業領域30a、30b及び退避領域31a、31bは、特に物理的に仕切られてはいないが、便宜的にそれぞれの領域の役割を説明するために設けた区分けである。
【0021】
これらスタッカークレーン2a、2bを備えたスタッカークレーン搬送設備である医薬品製造工場1は、スタッカークレーン2a、2bの動作を制御する制御部4を備えており、図5に示すように、制御部4は、バス41に接続されたCPU42、メモリ43及びプログラム格納部44を備えている。プログラム格納部44は、スタッカークレーン2a、2bがそれぞれの作業領域30a、30bにおいて搬送容器Cを載置台15との間において受け渡しを行うようにスタッカークレーン2a、2bの各部を制御する命令が組まれた通常運転用プログラム46と、スタッカークレーン2a(または2b)が退避領域31a(または31b)に退避した後、他方のスタッカークレーン2b(2a)が一方のスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりするように、スタッカークレーン2b(2a)の動作を制御するように命令が組まれたバックアップ用プログラム45と、を備えている。
【0022】
尚、バックアップ用プログラム45及び通常運転用プログラム46は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクあるいはメモリーカードなどの記憶媒体から制御部4にインストールされる。前記バス41には、例えば表示部及び操作部を兼用したモード選択部である操作画面47が接続されている。この操作画面47は、例えばバックアップ用プログラム45及び通常運転用プログラム46のいずれかを選択できるように構成されており、医薬品製造工場1内の作業者が画面中の例えばソフトスイッチを操作することにより各モードが選択される。そして、選択された各モードに対応するバックアップ用プログラム45または通常運転用プログラム46がCPU42によって読み出されて、各ステップが実行される。
【0023】
続いて、この実施の形態の作用について図6、7を参照して説明する。始めに医薬品製造工場1内の作業者が操作画面47により通常運転用プログラム46を選択すると、スタッカークレーン2a、2bは、図6(a)、(b)に示すように、各々の作業領域30a、30bにて作業を行い、保管室あるいは処理室との間において搬送容器Cの受け渡しを行う。即ち、スタッカークレーン2a、2bが保管室あるいは処理室の前のドア16の前に移動すると共に、スタッカークレーン2a、2bのリフト23がドア16の高さに対応する高さに移動した後、ドア16が開放される。そして、搬送台24が保管室内あるいは処理室内に移動して、スタッカークレーン2a、2bと保管室あるいは処理室との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。
【0024】
通常運転時には、上述のようにスタッカークレーン2a、2bがそれぞれの作業領域30a、30bにおいて搬送容器Cの受け渡しを行っているが、例えば一方のスタッカークレーン2aに故障等の不具合が発生した時、例えばアラームが鳴り、例えばスタッカークレーン2aの電源がオフになると共に、医薬品製造工場1における生産が一時的に停止する。そして、作業者が不具合の発生した一方のスタッカークレーン2aを退避領域31aに退避させ、その後操作画面47によりバックアップ用プログラム45を選択する。これにより、他方のスタッカークレーン2bは、図7(a)、(b)に示すように、作業領域30bにおける作業に加え、作業領域30aにおいてスタッカークレーン2aが行う作業についても実施するように動作する。これにより医薬品製造工場1の生産ラインの運転が再開される。
【0025】
上述の実施の形態によれば、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとが移動する軌道25を共通化して、更にそれぞれのスタッカークレーン2a、2bが退避するための退避領域31a、31bを設けているため、スタッカークレーン2a、2bの例えば故障時に一方のスタッカークレーン2a(2b)を退避させて、他方のスタッカークレーン2b(2a)が一方のスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりできる。このため、例えばそれぞれのスタッカークレーン2a、2bに予備のスタッカークレーン2を設けなくても、スタッカークレーン2a(2b)の故障等によって医薬品製造工場1における生産が停止した場合でも、すぐに生産を再開でき、医薬品製造工場1の稼働率の低下が抑えられる。
【0026】
次いで、本発明の第2の実施の形態の一例について図8及び図9を参照して説明する。スタッカークレーン2a、2b、作業領域30a、30b及び退避領域31a、31bの構成は既述の第1の実施の形態と同様であるが、作業領域30aと作業領域30bとの間の略中央において、搬送容器Cを一時的にストックしておくための棚である中間受け渡し部50が通路13の両側に設けられている。中間受け渡し部50には、通路13側が開口し、搬送容器Cを搬出入できる大きさの収容部51が複数段例えば10段上下方向に形成されており、収容部51が横方向に複数列例えば5列形成されているが、図ではその数を省略している。中間受け渡し部50が設けられた領域は、スタッカークレーン2a、2b間における搬送容器Cの受け渡し領域52をなしており、スタッカークレーン2a、2bの双方がこの受け渡し領域52内を移動して、中間受け渡し部50内の各収容部51との間で搬送容器Cの受け渡しを行えるように構成されている。
【0027】
この第2の実施の形態の作用について、図10を参照して説明する。既述の第1の実施の形態と同様に、通常運転時には、ドア16を介してスタッカークレーン2a(2b)と保管室あるいは処理室との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。そして、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとの間において搬送容器Cの受け渡しを行う場合、例えば一方のスタッカークレーン2aが中間受け渡し部50の収容部51内に搬送容器Cを載置する。その後、他方のスタッカークレーン2bがその搬送容器Cを受け取ることで、スタッカークレーン2a、2b間における搬送容器Cの受け渡しが行われる。
この中間受け渡し部50は、スタッカークレーン2a、2bの間における搬送容器Cの受け渡し時以外例えば処理後の原料が納められた搬送容器Cを所定の時間保管しておく場合においても、搬送容器Cの一時的な保管場所として用いても良い。
【0028】
そして、例えば一方のスタッカークレーン2aが故障した時においては、既述の第1の実施の形態と同様に、一方のスタッカークレーン2aを退避領域31aに退避させて、他方のスタッカークレーン2bが一方のスタッカークレーン2aの作業を肩代わりするように構成される。
【0029】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、以下の効果が得られる。つまり、スタッカークレーン2a、2bが移動する軌道25を共通化して、更に中間受け渡し部50をスタッカークレーン2aの作業領域30aとスタッカークレーン2bの作業領域30bとの間に設けているため、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとが中間受け渡し部50を共用できるので、受け渡し手段として別途トラバーサ、ベルトコンベアまたは別のスタッカークレーンなどを設けなくても、中間受け渡し部50を介してスタッカークレーン2a、2b間において搬送容器Cの受け渡しができる。
【0030】
上述の実施の形態では、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50を形成したが、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。また、上述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、後述の図12に示すように、軌道25を作業領域30a、30bにおいて上下方向に分岐させて、退避領域31a、31bを設けても良い。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態の例について、図11を参照して説明する。図11は、第2の実施の形態における通路13をU字型に形成した例を示しており、通路13の形状以外は第2の実施の形態の構成と同じ構成である。
この例においても、通路13の両端にはスタッカークレーン2a、2bの退避領域31a、31bが設けられており、例えばスタッカークレーン2a、2bの故障時には、故障した一方のスタッカークレーン2a(2b)を退避させて、他方のスタッカークレーン2b(2a)の作業を肩代わりさせるように構成されている。また、作業領域30a、30bの間には中間受け渡し部50が設けられており、スタッカークレーン2a、2bがこの中間受け渡し部50を共用することで、スタッカークレーン2a、2bの間で搬送容器Cの受け渡しを行えるように構成されている。
【0032】
上述の実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果に加えて、以下の効果が得られる。つまり、通路13をU字型に形成することで、中間受け渡し部50を保管室あるいは処理室が設けられる領域とは異なる領域(つまり、図1における医薬品製造工場1の外壁11側)に設けることができるため、図1中の通路13のX方向の長さを抑えることができ、医薬品製造工場1の面積を小さくすることができる。つまり、保管室あるいは処理室は、中間受け渡し部50と比較して奥行きが長いため、中間受け渡し部50を保管室あるいは処理室と同じ領域に設置する場合には、中間受け渡し部50の後ろ側の領域(中間受け渡し部50における通路13の反対側の領域)がデッドスペースになってしまうが、中間受け渡し部50を外壁11に沿って設けることで、医薬品製造工場1内のスペースを有効に活用できる。
【0033】
この実施の形態では、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50を形成したが、第2の実施の形態と同様に、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。また、第2の実施の形態と同様に中間受け渡し部50を形成したが、第1の実施の形態と同様に、中間受け渡し部50を設けずに、第1の実施の形態の通路13をU字型に形成した構成であっても良い。更に、第1の実施の形態と同様に、軌道25を図10中の作業領域30a、30bにおいて上下方向に分岐させて、退避領域31a、31bを設けても良い。
【0034】
次に、図12を参照して、本発明の第4の実施の形態の一例について説明する。図12は、図中左側から3台のスタッカークレーン2a、2c及び2bが一本の軌道25上に設置されている例を示している。スタッカークレーン2cの作業領域30cにおける通路13には、通路13aが接続されており、通路13a内には、軌道25から分岐した軌道25aが敷設されている。通路13aの先端部は通路13に略平行に折れ曲がり、スタッカークレーン2cの退避領域31cをなしている。スタッカークレーン2cは、図示しない軌道25と軌道25aとの切り替え部によって、軌道25から軌道25aの軌道上に移動できるように構成されている。
【0035】
通路13の両端には、既述の実施の形態と同様に退避領域31a、31bが設けられている。また、作業領域30a、30c及び30bの間には、それぞれ中間受け渡し部50a、50bが設けられており、中間受け渡し部50a、50bが設けられた領域は、それぞれ受け渡し領域52a、52bをなしている。
【0036】
このように、スタッカークレーン2a、2b及び2cが故障した場合、それぞれ退避領域31a、31b及び31cに退避できるように構成されている。また受け渡し領域52a、52bにおいて、中間受け渡し部50a、50bを介してスタッカークレーン2a、2c間及びスタッカークレーン2c、2b間において搬送容器Cの受け渡しができるように構成されている。
【0037】
上述の実施の形態によれば、それぞれのスタッカークレーン2a、2b、2cが退避できる退避領域31a、31b、31cを設けることで、複数台のスタッカークレーン2a、2b、2cが同じ軌道25上に設置されている場合であっても、どのスタッカークレーン2a、2b、2cが故障しても他のスタッカークレーン2a、2b、2cがその故障したスタッカークレーン2a、2b、2cの作業を肩代わりすることができる。また、中間受け渡し部50a、50bをスタッカークレーン2a、2c間及びスタッカークレーン2c、2b間にそれぞれ設置することで、別途受け渡し手段を設けなくても、スタッカークレーン2a、2b、2c間において搬送容器Cの受け渡しをすることができる。
【0038】
また、上述の第2〜第4の実施の形態では、中間受け渡し部50を医薬品製造工場1内に設けたが、このような医薬品製造工場1に限られず、例えば倉庫などにおいて、複数のスタッカークレーン2同士の間で搬送容器Cの受け渡しを行う場合などに適用しても良い。このように本発明を倉庫に適用する場合には、複数のスタッカークレーン2同士の軌道25を共通化した共通移動領域に臨むように、縦横に収納領域が区画して配列された中間受け渡し部50をなす棚が設けられる。この棚にマトリックス状に設けられた各収納領域は、例えば上下に設けられた水平プレートと左右に設けられた垂直プレートとにより囲まれる領域として構成される。
【0039】
この実施の形態では、軌道25上に3台のスタッカークレーン2a、2b、2cを設置したが、3台以上例えば5台であっても、それぞれのスタッカークレーン2が退避できる領域及び各々のスタッカークレーン2間に中間受け渡し部50を設けるようにしても良い。また、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50a(50b)を形成したが、上述したように、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。更に、第1の実施の形態と同様に、中間受け渡し部50を設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のスタッカークレーンが適用される工場の斜視図である。
【図2】本発明のスタッカークレーンの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるスタッカークレーンが設置される通路の平面図である。
【図4】上記のスタッカークレーンが設置される通路の縦断面図である。
【図5】上記のスタッカークレーンの動作を制御する制御部の構成図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における通常動作時のスタッカークレーンの説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるバックアップモード時のスタッカークレーンの説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【図9】上記のスタッカークレーンの縦断面図である。
【図10】上記のスタッカークレーンの平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【符号の説明】
【0041】
2 スタッカークレーン
2a スタッカークレーン
2b スタッカークレーン
13 通路
25 軌道
30a 作業領域
30b 作業領域
31a 退避領域
31b 退避領域
50 中間受け渡し部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の製造工場においては、粉体原料に対して秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)及び検査などの各々異なる処理を行う処理部を備えた多数の処理室が複数階に亘って、且つ各階において横方向に複数設けられている。粉体原料は、外部から搬入されて開封された後、中間保管部において、所定の搬送容器内で保管される。粉体原料は、この中間保管部から各処理室に順次搬送されて、処理された後再度中間保管部に戻されて、その後次の処理室に搬送されるといったシーケンスフローにより順次処理が行われて医薬品が製造される。
【0003】
前記中間保管部及び各処理室間における搬送容器の搬送は、スタッカークレーンを介して行われる。即ち、工場内には、スタッカークレーンの移動空間である壁面で囲まれた扁平直方体状の通路(「スタッカークレーンシャフト」などと呼ばれる)が設けられており、壁面には各処理室あるいは中間保管部との間で搬送容器の受け渡しを行うための受け渡し口が形成されている。
【0004】
前記スタッカークレーンは、移動空間の底面に形成された水平軌道に沿って移動する基部と、この基部に設けられ、上下に移動するリフトを備えており、リフトには前記移動空間の幅方向に移動し、各受け渡し口を介して処理室内に進入できるように構成された搬送台が設けられている。各処理室は、例えばその処理室の処理部と当該処理室に進入した前記搬送台との間で搬送容器の受け渡しを行う搬送機構を備えており、当該搬送機構を介してスタッカークレーンとの間で搬送容器の受け渡しを行うことができるように構成されている。前記工場には、複数の水平軌道が設けられており、これらの各軌道には、それぞれ一台のスタッカークレーンが設けられている。
【0005】
上述の処理室における各処理は、粉体原料に対して連続的に施されるため、各処理の一部が例えばトラブルなどによって停止した場合、工場内における処理全てが停止してしまう。そのため、各処理室では、例えば同一の処理部を複数設けて並列運転を行い、一の処理部が停止した場合には、他の処理部を用いてラインの停止を回避するようにしている。一方、スタッカークレーンについては、故障などにより動作しなくなった場合、各処理室間における搬送容器の搬送ができなくなり、そしてスタッカークレーンの被搬送物である搬送容器は大型であるため、搬送容器の搬送を代替することができない。このため、スタッカークレーンの部品交換等により不具合が解消するまで工場における処理全てが停止してしまい、スタッカークレーンの運転再開まで長い時間がかかることから、工場の稼働効率が低下してしまう。
【0006】
この対策として、通常時は使用しない予備のスタッカークレーンを設置しておく方法が考えられるが、コストアップになってしまう。特許文献1には、スタッカークレーンについて記載されているが、上述の課題やその解決方法については触れられていない。
【0007】
また、複数のスタッカークレーン間において搬送容器の受け渡しを行う場合、各スタッカークレーンの受け渡しポート同士を接続する他の補助搬送設備例えばトラバーサ、ベルトコンベアが必要であり、コストアップになっているという課題もある。
【0008】
【特許文献1】特開平3−188937
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、スタッカークレーンに不具合が生じても生産効率の低下を安価に抑えることができる技術を提供することである。また、スタッカークレーン間における搬送容器の受け渡しを安価に行うことのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスタッカークレーン搬送設備は、
軌道上を移動し、作業領域に設けられた受け渡し部との間において、被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
同一軌道上に設置され、この軌道に沿って並ぶ複数の作業領域が各々割り当てられた複数のスタッカークレーンと、
一のスタッカークレーンに不具合が生じた時、当該一のスタッカークレーンの作業領域の作業を別のスタッカークレーンが分担するために、各々のスタッカークレーンの作業領域から外れた領域にて、不具合の生じたスタッカークレーンが退避できるように設けられた退避領域と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
互いに隣接するスタッカークレーンの作業領域の間には、これらスタッカークレーンのいずれもが被搬送物の受け渡しを行うことができる中間受け渡し部が設けられていても良い。
前記スタッカークレーンは2台設けられ、前記退避領域は、前記軌道の両端部に設けられている構成としても良い。
前記退避領域は、いずれのスタッカークレーンについても退避できるように前記軌道から分岐して設けられていても良い。
【0012】
また、本発明のスタッカークレーン搬送設備は、
前記複数のスタッカークレーンが通常動作を行うための通常運転用プログラムと、スタッカークレーンに不具合が生じたときに、別のスタッカークレーンが作業分担するためのバックアップ用プログラムと、これらプログラムの中から選択されたプログラムに基づいて、スタッカークレーンの制御信号を出力する手段と、を有する制御部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一本の軌道上において複数のスタッカークレーンが移動するように複数のスタッカークレーンの軌道を共通化して、更に複数のスタッカークレーンが故障時などに退避できる退避領域を設けたことで、一台のスタッカークレーンが故障した場合でも、当該スタッカークレーンを退避領域に退避させ、他のスタッカークレーンがその故障したスタッカークレーンの作業を肩代わりするように動作させている。従って、生産の停止を防止できるか、あるいは生産が停止しても、その再開を速やかに行うことができ、しかも安価な設備を構成できる。また、一本の軌道上において複数のスタッカークレーンが移動するように複数のスタッカークレーンの軌道を共通化して、更に各々のスタッカークレーンの間に、軌道に沿って搬送容器を保管できる中間受け渡し部を設けたことで、この中間受け渡し部を介してスタッカークレーン間において搬送容器の受け渡しができるので、補助搬送設備が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のスタッカークレーン搬送設備の第1の実施の形態について、以下に説明する。図1は、本発明のスタッカークレーン搬送設備を適用した例えば医薬品製造工場1の一例を示しており、先ず医薬品製造工場1の全体構成について説明する。図中の鎖線部は医薬品製造工場1の外壁11を示しており、この外壁11内は、床12により上下に例えば2層に区画されている。また、外壁11内にはスタッカークレーンシャフトと呼ばれる、後述のスタッカークレーン2が移動する扁平な直方体状の通路(移動空間)13が設けられており、この通路13は、医薬品製造工場1内の上下各層に跨って、横方向(図中X軸方向)に沿って、各層を前後方向(図中Y軸方向)に分けるように設けられており、その周囲は壁(壁面)14に囲まれている。
【0015】
各層において通路13(壁14)を挟んで左右両側または片側には、医薬品原料に対して所定の処理を行う多数の処理室や、処理中の中間原料を保管するための保管室が当該通路13の長さ方向(X方向)に沿って設けられている。これらの処理室は、後述の被搬送物(搬送容器C)が搬送される搬送領域を含み、例えば医薬品原料の秤量、秤量後の原料の搬送容器Cへの充填や、その搬送容器C中の医薬品原料の造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)または成形物(製品)の検査などの医薬品原料及びその原料から得られた製品に対して各々異なる処理を行う処理部(図示せず)を備えている。
【0016】
また、通路13を区画する壁14には、処理室や保管室に対応する位置に搬送容器Cを受け渡すための受け渡し口が形成されており、この受け渡し口は例えば横方向に開閉自在なドア16によって仕切られている。このドア16を介して通路13内を移動するスタッカークレーン2とドア16の内側(処理室内または保管室内)に設けられた受け渡し部である載置台15との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。
【0017】
この載置台15は、例えば所定の間隔で配置された逆U字型に折り曲げられた2本の角材等によって構成されている。各処理室は、医薬品原料あるいは中間品に対して各々所定の処理を行う図示しない処理部と、当該処理部と載置台15との間で搬送容器Cを受け渡すための図示しない搬送機構等が設けられている。また、一カ所の処理部が上下の複数階に分かれていて、上の階(層)で受け取った原料または中間品を下の階に落下させて、下の階にて処理物を搬送容器Cに移してスタッカークレーン2に戻すシステムとしても良い。尚、図が煩雑にならないように記載を省略しているが、各層の処理室は壁により互いに区画され、所定の清浄度に保たれている。
【0018】
次に、図2を参照して通路13内を移動するスタッカークレーン2について説明する。スタッカークレーン2は、基部21、基部21に設けられた鉛直方向に伸びる柱部22、22、柱部22、22間において鉛直方向に移動可能なリフト23及びリフト23上に設置された搬送台24から構成されている。搬送台24は搬送容器Cの受け渡し手段として構成されており、通路13の前後方向(図中Y方向)に移動して、既述のドア16を介してドア16内の載置台15との間で搬送容器Cの受け渡しを行う。
また、通路13の長さ方向に沿って、通路13内の床12には軌道25が設けられており、スタッカークレーン2は、基部21に設けられた車輪26によって、この軌道25に沿って横方向に移動する。
【0019】
このスタッカークレーン2は、図3及び図4に示すように、複数台例えば2台のスタッカークレーン2a、2bが一本の軌道25上の図中左右方向に配置されており、これらのスタッカークレーン2a、2bは、通常運転時には、それぞれが作業(保管室あるいは処理室との間における搬送容器Cの受け渡し)を行うための作業領域30a、30b内を移動して、既述のように、載置台15との間において、ドア16を介して搬送容器Cの受け渡しを行うように構成されている。作業領域30a、30bは、通路13を長さ方向に略二等分した領域となるように構成されている。尚、一本の軌道25は、一本あるいは平行な複数本のレールにより構成される。
【0020】
また、それぞれの作業領域30a、30bの外側(通路13の両端)には、一台のスタッカークレーン2a(2b)が退避できる退避領域31a、31bが各々設けられており、後述するように、一方のスタッカークレーン2a(あるいは2b)が故障等の不具合により退避領域31a(あるいは31b)に退避した場合であっても、他方のスタッカークレーン2b(あるいは2a)が作業領域30a(30b)におけるスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりできるように構成されている。尚、作業領域30a、30b及び退避領域31a、31bは、特に物理的に仕切られてはいないが、便宜的にそれぞれの領域の役割を説明するために設けた区分けである。
【0021】
これらスタッカークレーン2a、2bを備えたスタッカークレーン搬送設備である医薬品製造工場1は、スタッカークレーン2a、2bの動作を制御する制御部4を備えており、図5に示すように、制御部4は、バス41に接続されたCPU42、メモリ43及びプログラム格納部44を備えている。プログラム格納部44は、スタッカークレーン2a、2bがそれぞれの作業領域30a、30bにおいて搬送容器Cを載置台15との間において受け渡しを行うようにスタッカークレーン2a、2bの各部を制御する命令が組まれた通常運転用プログラム46と、スタッカークレーン2a(または2b)が退避領域31a(または31b)に退避した後、他方のスタッカークレーン2b(2a)が一方のスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりするように、スタッカークレーン2b(2a)の動作を制御するように命令が組まれたバックアップ用プログラム45と、を備えている。
【0022】
尚、バックアップ用プログラム45及び通常運転用プログラム46は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクあるいはメモリーカードなどの記憶媒体から制御部4にインストールされる。前記バス41には、例えば表示部及び操作部を兼用したモード選択部である操作画面47が接続されている。この操作画面47は、例えばバックアップ用プログラム45及び通常運転用プログラム46のいずれかを選択できるように構成されており、医薬品製造工場1内の作業者が画面中の例えばソフトスイッチを操作することにより各モードが選択される。そして、選択された各モードに対応するバックアップ用プログラム45または通常運転用プログラム46がCPU42によって読み出されて、各ステップが実行される。
【0023】
続いて、この実施の形態の作用について図6、7を参照して説明する。始めに医薬品製造工場1内の作業者が操作画面47により通常運転用プログラム46を選択すると、スタッカークレーン2a、2bは、図6(a)、(b)に示すように、各々の作業領域30a、30bにて作業を行い、保管室あるいは処理室との間において搬送容器Cの受け渡しを行う。即ち、スタッカークレーン2a、2bが保管室あるいは処理室の前のドア16の前に移動すると共に、スタッカークレーン2a、2bのリフト23がドア16の高さに対応する高さに移動した後、ドア16が開放される。そして、搬送台24が保管室内あるいは処理室内に移動して、スタッカークレーン2a、2bと保管室あるいは処理室との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。
【0024】
通常運転時には、上述のようにスタッカークレーン2a、2bがそれぞれの作業領域30a、30bにおいて搬送容器Cの受け渡しを行っているが、例えば一方のスタッカークレーン2aに故障等の不具合が発生した時、例えばアラームが鳴り、例えばスタッカークレーン2aの電源がオフになると共に、医薬品製造工場1における生産が一時的に停止する。そして、作業者が不具合の発生した一方のスタッカークレーン2aを退避領域31aに退避させ、その後操作画面47によりバックアップ用プログラム45を選択する。これにより、他方のスタッカークレーン2bは、図7(a)、(b)に示すように、作業領域30bにおける作業に加え、作業領域30aにおいてスタッカークレーン2aが行う作業についても実施するように動作する。これにより医薬品製造工場1の生産ラインの運転が再開される。
【0025】
上述の実施の形態によれば、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとが移動する軌道25を共通化して、更にそれぞれのスタッカークレーン2a、2bが退避するための退避領域31a、31bを設けているため、スタッカークレーン2a、2bの例えば故障時に一方のスタッカークレーン2a(2b)を退避させて、他方のスタッカークレーン2b(2a)が一方のスタッカークレーン2a(2b)の作業を肩代わりできる。このため、例えばそれぞれのスタッカークレーン2a、2bに予備のスタッカークレーン2を設けなくても、スタッカークレーン2a(2b)の故障等によって医薬品製造工場1における生産が停止した場合でも、すぐに生産を再開でき、医薬品製造工場1の稼働率の低下が抑えられる。
【0026】
次いで、本発明の第2の実施の形態の一例について図8及び図9を参照して説明する。スタッカークレーン2a、2b、作業領域30a、30b及び退避領域31a、31bの構成は既述の第1の実施の形態と同様であるが、作業領域30aと作業領域30bとの間の略中央において、搬送容器Cを一時的にストックしておくための棚である中間受け渡し部50が通路13の両側に設けられている。中間受け渡し部50には、通路13側が開口し、搬送容器Cを搬出入できる大きさの収容部51が複数段例えば10段上下方向に形成されており、収容部51が横方向に複数列例えば5列形成されているが、図ではその数を省略している。中間受け渡し部50が設けられた領域は、スタッカークレーン2a、2b間における搬送容器Cの受け渡し領域52をなしており、スタッカークレーン2a、2bの双方がこの受け渡し領域52内を移動して、中間受け渡し部50内の各収容部51との間で搬送容器Cの受け渡しを行えるように構成されている。
【0027】
この第2の実施の形態の作用について、図10を参照して説明する。既述の第1の実施の形態と同様に、通常運転時には、ドア16を介してスタッカークレーン2a(2b)と保管室あるいは処理室との間で搬送容器Cの受け渡しが行われる。そして、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとの間において搬送容器Cの受け渡しを行う場合、例えば一方のスタッカークレーン2aが中間受け渡し部50の収容部51内に搬送容器Cを載置する。その後、他方のスタッカークレーン2bがその搬送容器Cを受け取ることで、スタッカークレーン2a、2b間における搬送容器Cの受け渡しが行われる。
この中間受け渡し部50は、スタッカークレーン2a、2bの間における搬送容器Cの受け渡し時以外例えば処理後の原料が納められた搬送容器Cを所定の時間保管しておく場合においても、搬送容器Cの一時的な保管場所として用いても良い。
【0028】
そして、例えば一方のスタッカークレーン2aが故障した時においては、既述の第1の実施の形態と同様に、一方のスタッカークレーン2aを退避領域31aに退避させて、他方のスタッカークレーン2bが一方のスタッカークレーン2aの作業を肩代わりするように構成される。
【0029】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、以下の効果が得られる。つまり、スタッカークレーン2a、2bが移動する軌道25を共通化して、更に中間受け渡し部50をスタッカークレーン2aの作業領域30aとスタッカークレーン2bの作業領域30bとの間に設けているため、スタッカークレーン2aとスタッカークレーン2bとが中間受け渡し部50を共用できるので、受け渡し手段として別途トラバーサ、ベルトコンベアまたは別のスタッカークレーンなどを設けなくても、中間受け渡し部50を介してスタッカークレーン2a、2b間において搬送容器Cの受け渡しができる。
【0030】
上述の実施の形態では、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50を形成したが、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。また、上述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、後述の図12に示すように、軌道25を作業領域30a、30bにおいて上下方向に分岐させて、退避領域31a、31bを設けても良い。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態の例について、図11を参照して説明する。図11は、第2の実施の形態における通路13をU字型に形成した例を示しており、通路13の形状以外は第2の実施の形態の構成と同じ構成である。
この例においても、通路13の両端にはスタッカークレーン2a、2bの退避領域31a、31bが設けられており、例えばスタッカークレーン2a、2bの故障時には、故障した一方のスタッカークレーン2a(2b)を退避させて、他方のスタッカークレーン2b(2a)の作業を肩代わりさせるように構成されている。また、作業領域30a、30bの間には中間受け渡し部50が設けられており、スタッカークレーン2a、2bがこの中間受け渡し部50を共用することで、スタッカークレーン2a、2bの間で搬送容器Cの受け渡しを行えるように構成されている。
【0032】
上述の実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果に加えて、以下の効果が得られる。つまり、通路13をU字型に形成することで、中間受け渡し部50を保管室あるいは処理室が設けられる領域とは異なる領域(つまり、図1における医薬品製造工場1の外壁11側)に設けることができるため、図1中の通路13のX方向の長さを抑えることができ、医薬品製造工場1の面積を小さくすることができる。つまり、保管室あるいは処理室は、中間受け渡し部50と比較して奥行きが長いため、中間受け渡し部50を保管室あるいは処理室と同じ領域に設置する場合には、中間受け渡し部50の後ろ側の領域(中間受け渡し部50における通路13の反対側の領域)がデッドスペースになってしまうが、中間受け渡し部50を外壁11に沿って設けることで、医薬品製造工場1内のスペースを有効に活用できる。
【0033】
この実施の形態では、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50を形成したが、第2の実施の形態と同様に、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。また、第2の実施の形態と同様に中間受け渡し部50を形成したが、第1の実施の形態と同様に、中間受け渡し部50を設けずに、第1の実施の形態の通路13をU字型に形成した構成であっても良い。更に、第1の実施の形態と同様に、軌道25を図10中の作業領域30a、30bにおいて上下方向に分岐させて、退避領域31a、31bを設けても良い。
【0034】
次に、図12を参照して、本発明の第4の実施の形態の一例について説明する。図12は、図中左側から3台のスタッカークレーン2a、2c及び2bが一本の軌道25上に設置されている例を示している。スタッカークレーン2cの作業領域30cにおける通路13には、通路13aが接続されており、通路13a内には、軌道25から分岐した軌道25aが敷設されている。通路13aの先端部は通路13に略平行に折れ曲がり、スタッカークレーン2cの退避領域31cをなしている。スタッカークレーン2cは、図示しない軌道25と軌道25aとの切り替え部によって、軌道25から軌道25aの軌道上に移動できるように構成されている。
【0035】
通路13の両端には、既述の実施の形態と同様に退避領域31a、31bが設けられている。また、作業領域30a、30c及び30bの間には、それぞれ中間受け渡し部50a、50bが設けられており、中間受け渡し部50a、50bが設けられた領域は、それぞれ受け渡し領域52a、52bをなしている。
【0036】
このように、スタッカークレーン2a、2b及び2cが故障した場合、それぞれ退避領域31a、31b及び31cに退避できるように構成されている。また受け渡し領域52a、52bにおいて、中間受け渡し部50a、50bを介してスタッカークレーン2a、2c間及びスタッカークレーン2c、2b間において搬送容器Cの受け渡しができるように構成されている。
【0037】
上述の実施の形態によれば、それぞれのスタッカークレーン2a、2b、2cが退避できる退避領域31a、31b、31cを設けることで、複数台のスタッカークレーン2a、2b、2cが同じ軌道25上に設置されている場合であっても、どのスタッカークレーン2a、2b、2cが故障しても他のスタッカークレーン2a、2b、2cがその故障したスタッカークレーン2a、2b、2cの作業を肩代わりすることができる。また、中間受け渡し部50a、50bをスタッカークレーン2a、2c間及びスタッカークレーン2c、2b間にそれぞれ設置することで、別途受け渡し手段を設けなくても、スタッカークレーン2a、2b、2c間において搬送容器Cの受け渡しをすることができる。
【0038】
また、上述の第2〜第4の実施の形態では、中間受け渡し部50を医薬品製造工場1内に設けたが、このような医薬品製造工場1に限られず、例えば倉庫などにおいて、複数のスタッカークレーン2同士の間で搬送容器Cの受け渡しを行う場合などに適用しても良い。このように本発明を倉庫に適用する場合には、複数のスタッカークレーン2同士の軌道25を共通化した共通移動領域に臨むように、縦横に収納領域が区画して配列された中間受け渡し部50をなす棚が設けられる。この棚にマトリックス状に設けられた各収納領域は、例えば上下に設けられた水平プレートと左右に設けられた垂直プレートとにより囲まれる領域として構成される。
【0039】
この実施の形態では、軌道25上に3台のスタッカークレーン2a、2b、2cを設置したが、3台以上例えば5台であっても、それぞれのスタッカークレーン2が退避できる領域及び各々のスタッカークレーン2間に中間受け渡し部50を設けるようにしても良い。また、収容部51を一カ所に集合させて中間受け渡し部50a(50b)を形成したが、上述したように、例えばドア16、16間などの隙間に収容部51を分散させて、医薬品製造工場1全体のスペースが小さくなるように構成してもよい。更に、第1の実施の形態と同様に、中間受け渡し部50を設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のスタッカークレーンが適用される工場の斜視図である。
【図2】本発明のスタッカークレーンの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるスタッカークレーンが設置される通路の平面図である。
【図4】上記のスタッカークレーンが設置される通路の縦断面図である。
【図5】上記のスタッカークレーンの動作を制御する制御部の構成図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における通常動作時のスタッカークレーンの説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるバックアップモード時のスタッカークレーンの説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【図9】上記のスタッカークレーンの縦断面図である。
【図10】上記のスタッカークレーンの平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態におけるスタッカークレーンの平面図である。
【符号の説明】
【0041】
2 スタッカークレーン
2a スタッカークレーン
2b スタッカークレーン
13 通路
25 軌道
30a 作業領域
30b 作業領域
31a 退避領域
31b 退避領域
50 中間受け渡し部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を移動し、作業領域に設けられた受け渡し部との間において、被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
同一軌道上に設置され、この軌道に沿って並ぶ複数の作業領域が各々割り当てられた複数のスタッカークレーンと、
一のスタッカークレーンに不具合が生じた時、当該一のスタッカークレーンの作業領域の作業を別のスタッカークレーンが分担するために、各々のスタッカークレーンの作業領域から外れた領域にて、不具合の生じたスタッカークレーンが退避できるように設けられた退避領域と、を備えたことを特徴とするスタッカークレーン搬送設備。
【請求項2】
互いに隣接するスタッカークレーンの作業領域の間には、これらスタッカークレーンのいずれもが被搬送物の受け渡しを行うことができる中間受け渡し部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項3】
前記スタッカークレーンは2台設けられ、前記退避領域は、前記軌道の両端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項4】
前記退避領域は、いずれのスタッカークレーンについても退避できるように前記軌道から分岐して設けられていることを特徴とする請求項1まはた2に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項5】
前記複数のスタッカークレーンが通常動作を行うための通常運転用プログラムと、スタッカークレーンに不具合が生じたときに、別のスタッカークレーンが作業分担するためのバックアップ用プログラムと、これらプログラムの中から選択されたプログラムに基づいて、スタッカークレーンの制御信号を出力する手段と、を有する制御部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項1】
軌道上を移動し、作業領域に設けられた受け渡し部との間において、被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
同一軌道上に設置され、この軌道に沿って並ぶ複数の作業領域が各々割り当てられた複数のスタッカークレーンと、
一のスタッカークレーンに不具合が生じた時、当該一のスタッカークレーンの作業領域の作業を別のスタッカークレーンが分担するために、各々のスタッカークレーンの作業領域から外れた領域にて、不具合の生じたスタッカークレーンが退避できるように設けられた退避領域と、を備えたことを特徴とするスタッカークレーン搬送設備。
【請求項2】
互いに隣接するスタッカークレーンの作業領域の間には、これらスタッカークレーンのいずれもが被搬送物の受け渡しを行うことができる中間受け渡し部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項3】
前記スタッカークレーンは2台設けられ、前記退避領域は、前記軌道の両端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項4】
前記退避領域は、いずれのスタッカークレーンについても退避できるように前記軌道から分岐して設けられていることを特徴とする請求項1まはた2に記載のスタッカークレーン搬送設備。
【請求項5】
前記複数のスタッカークレーンが通常動作を行うための通常運転用プログラムと、スタッカークレーンに不具合が生じたときに、別のスタッカークレーンが作業分担するためのバックアップ用プログラムと、これらプログラムの中から選択されたプログラムに基づいて、スタッカークレーンの制御信号を出力する手段と、を有する制御部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のスタッカークレーン搬送設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−63133(P2008−63133A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245882(P2006−245882)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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