説明

スタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム

【課題】 熱交換性能を高くするとともに、システムの小型化とコスト低減、省エネルギー化を図る。
【解決手段】 液体状の水冷媒の蒸発により製氷して蓄冷する蒸発製氷器2と、この蒸発製氷器2中の気体状の水冷媒を吸引し当該蒸発製氷器2中の液体状の水冷媒を蒸発させて冷却させる水蒸気圧縮機3と、蒸発製氷器2中に複数段設置され液体状の水冷媒あるいは固体状の水冷媒を貯めることが可能な貯氷パネル4と、液体状の水冷媒および気体状の水冷媒のいずれもが通過可能なように貯氷パネル4に設けられた通過孔5と、蒸発製氷器2の底部から液体状の水冷媒を最上段の貯氷パネル4に供給して循環させる冷水管6と、該冷水管6に設けられた冷水ポンプ7と、水冷媒と他の熱媒体との間で熱交換を行うため冷水管6の途中に設置された熱交換器8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、水を冷媒とする製氷システムを用いた蓄冷装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷媒ヒートポンプ製氷システムとして、氷の生成を蒸発製氷器で、氷の貯蔵を貯氷タンクでそれぞれ行うものがある(図7、図8参照)。このような水冷媒ヒートポンプ製氷システムは、製氷部と貯氷部が異なることから一般に「ダイナミック型製氷システム」と呼ばれている(図7、図8参照)。
【0003】
例えば図7に示す従来型の水冷媒ヒートポンプ製氷システム101は、伝熱管を有しない蒸発製氷器(タンク)102を備えている。この蒸発製氷器102の上部には水蒸気圧縮機103へと続く水蒸気の吸い込み口が設けられている。この蒸発製氷器102内に水をある高さまで封入し、水蒸気圧縮機103の吸い込み力によって気液界面から水を蒸発させる。その際、残りの水は蒸発潜熱を奪われるために温度・圧力が下がっていき、水の三重点(0.01℃、0.6kPa)に達するとその一部が凍って氷になる。
【0004】
また、同じダイナミック型の水冷媒ヒートポンプ製氷システム201として、図8に示すように蒸発製氷器202内に鉛直状の着氷板(液膜流下板)204を多数設置し、その表面に沿って流れる水を気液界面で凍らせるというものもある(例えば、特許文献1参照)。このような構造とした場合、全着氷板204の表面積分だけ上述した水冷媒ヒートポンプ製氷システム101よりも蒸発面積が増えるため、蒸発製氷器202のコンパクト化が図れる点で有利となる(なお、符号203は水蒸気圧縮機である)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−241628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示した従来型の水冷媒ヒートポンプ製氷システム101の場合、蒸発製氷器102にて製氷し続けていくうち、生成された氷が気液界面を覆って蒸発が起こりにくくなり、だんだんと氷が生成されにくくなってくるという問題がある。そこで、長時間にわたって水冷媒の蒸発面積(製氷面積)を確保するため、例えば攪拌機104によって氷−水スラリーの攪拌を行ったり、スラリーポンプ105を使って氷−水スラリーを蒸発製氷器102の外部(例えば貯氷タンク106)へと搬出したりしなければならなくなっている(図7参照)。また、蒸発製氷器102の内側壁面に氷が付着し成長すると攪拌羽根の回転が妨げられ攪拌機104の運転が阻害されてしまうので、例えば蒸発製氷器102の外側壁面に温ブライン配管107を設けて壁面を加熱するなどしてこのような事態を防がなければならない。このように攪拌、搬出さらには加熱を行うための設備を設けることは、システムの大型化とコスト上昇を招くとともにエネルギー消費も大きくなるという点で問題である。
【0007】
また、図8に示したような水冷媒ヒートポンプ製氷システム201の場合にも、上述した製氷システム101と同様、氷−水スラリーの攪拌、搬出と蒸発製氷器壁面の加熱を行うための設備が必要不可欠となる。また、製氷システム201は着氷板204に流す水を蒸発製氷器202の下部から上部までポンプアップして循環させるための配管205も備えているが、この配管205の内側に付着した氷が成長・合体することによって管内流路が塞がれてしまうのを防ぐため、例えばこの配管205を外側から加熱する温ブライン等の加熱設備206も別途必要となり、さらなるシステムの大型化、コスト上昇、エネルギー消費の増大を招くという問題もある。加えて、着氷板204の変形機構や加熱機構が必要になる場合もある。
【0008】
そこで、本発明は、熱交換性能が高く、システムの小型化とコスト低減、省エネルギー化を図ることができるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムは、液体状の水冷媒の蒸発により製氷して蓄冷する蒸発製氷器と、この蒸発製氷器中の気体状の水冷媒を吸引し当該蒸発製氷器中の液体状の水冷媒を蒸発させて冷却させる水蒸気圧縮機と、蒸発製氷器中に複数段設置され液体状の水冷媒あるいは固体状の水冷媒を貯めることが可能な貯氷パネルと、液体状の水冷媒および気体状の水冷媒のいずれもが通過可能なように貯氷パネルに設けられた通過孔と、蒸発製氷器の底部から液体状の水冷媒を最上段の貯氷パネルに供給して循環させる冷水管と、該冷水管に設けられた冷水ポンプと、水冷媒と他の熱媒体との間で熱交換を行うため冷水管の途中に設置された熱交換器とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明にかかるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムは、例えば製氷運転モード時であれば冷水ポンプを停止させた状態で水蒸気圧縮機を運転することになる。こうした場合、蒸発製氷器内の圧力と温度が三重点以下まで下がると、貯氷パネル上の水の蒸発あるいは氷の昇華による吸熱作用によって、連続的に氷が生成される。
【0011】
一方、解氷運転モード時においては水蒸気圧縮機を停止させ、蒸発製氷器内を大気に開放して大気圧下とした状態で冷水ポンプを運転することになる。このとき、冷却負荷側の熱交換器に供給された冷水は当該熱交換器にて受熱し温度が上昇した後、蒸発製氷器内の最上段の貯氷パネルに供給される。供給された水は貯氷パネル上の氷と直接接触熱交換して所定の温度まで冷やされた後、蒸発製氷器の下部から再び熱交換器へと供給されるというようにして蒸発製氷器および冷水管を循環する。
【0012】
このような構造のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムは、水冷媒自身が蒸発あるいは凝固・融解する際の潜熱(蒸発熱や融解熱)を利用した蓄冷システムとして利用することができる。しかも本発明にかかる製氷システムにおいては、製氷運転モードと解氷運転モードのいずれにおいても水冷媒自身が凝固または融解する蓄冷材として機能し、尚かつ当該水冷媒自身が循環して熱交換を行うという流動熱媒体としても機能することから、冷媒−蓄冷材−流動熱媒体の間で熱交換する際のロスが非常に小さい。したがってこのスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムによれば高い熱交換性能を実現することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムにおいて、貯氷パネルに設けられた通過孔の周囲が上側へと出っ張って周壁状になっているというものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムが蒸発製氷器を複数備えているというものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムでは、蒸発製氷器内に板状の貯氷パネルが複数段設置されていることから、水冷媒の気液界面の広さが十分に確保されうる。これによれば、製氷時に生成された氷が気液界面を短時間で覆って蒸発が起こりにくくなるような事態を回避することができることから、攪拌機によって氷−水スラリーの攪拌を行ったり、スラリーポンプを使って氷−水スラリーを蒸発製氷器の外部へ搬出したりする必要がない。また、攪拌機自体が不要となることから攪拌羽根の回転阻害といった問題を考慮する必要がないので、例えば蒸発製氷器の外側壁面に温ブライン配管を設けるなどの必要もなくなる。さらには、蒸発製氷器が貯氷タンクを兼ねていることからも、ダイナミック型製氷システムにおけるような氷−水スラリーの攪拌・搬出が不要であり、また、その結果として蒸発製氷器の内側壁面への氷の付着・成長を防ぐ必要もない。したがって本発明にかかるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムによれば、システム全体での省スペース化・低コスト化・省エネ化を実現できる。
【0016】
加えて、本発明にかかるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムは、製氷運転モード時において冷水ポンプを停止させた状態で製氷することから、冷水管の内側に氷が付着して塞がれてしまうようなことがなく、管閉塞の防止策を講じる必要がない。したがってこのことも省スペース化・低コスト化・省エネ化を図るうえで有利となる。
【0017】
また、このスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムによれば、特許文献2のような着氷板の変形機構や加熱機構も不要である。
【0018】
さらには、上述したようにこのスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムにおいては水冷媒自身が蓄冷材として機能し、尚かつ流動熱媒体としても機能することから、冷媒−蓄冷材−流動熱媒体の間で直接接触熱交換が行われる。このため、配管の壁を介して熱交換を行っていた従来システムと比較して、高い熱交換性能を実現することができる。
【0019】
請求項2に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムによると、通過孔の周囲が上側に出っ張っている分だけ貯氷パネル上に水を貯めることができる。したがって、パネルの大きさや数を変えることによって、どの程度の分量の水冷媒を蓄冷材として利用するかも自在である。
【0020】
また、請求項3に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムによると、冷水を供給する蒸発製氷器と氷を生成する蒸発製氷器とで役割分担することが可能となり、一つのシステムであっても製氷運転と解氷運転とを同時に行い蓄冷熱をしながら冷却負荷に対応することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1〜図5に本発明の一実施形態を示す。本発明にかかるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1は、液体状の水冷媒(水)の蒸発により製氷して蓄冷する蒸発製氷器2と、この蒸発製氷器2中の気体状の水冷媒(水蒸気)を吸引し当該蒸発製氷器2中の液体状の水冷媒を蒸発させて冷却させる水蒸気圧縮機3と、蒸発製氷器2中に複数段設置され液体状の水冷媒あるいは固体状の水冷媒を貯めることが可能な貯氷パネル4と、水蒸気および水のいずれもが通過可能なように貯氷パネル4に設けられた通過孔5と、蒸発製氷器2の底部から液体状の水冷媒(本明細書ではこれを「冷水」とも呼ぶ)を最上段の貯氷パネル4に循環させる冷水管6と、該冷水管6に設けられた冷水ポンプ7と、冷水と他の熱媒体との間で熱交換を行うため冷水管6の途中に設置された熱交換器8とを備えている。
【0023】
蒸発製氷器2は、内部を減圧することによって液体状の水冷媒を蒸発させ、その際の吸熱作用によって当該蒸発製氷器2内に残存する液体状の水冷媒を凍らせて氷を生成するものである。本実施形態における蒸発製氷器2は、その内部に貯氷パネル4が複数段設置されているもので、これら貯氷パネル4の上面に貯まった液体状の水冷媒を凍らせる製氷装置と生成した氷を貯留しておく貯氷タンクとを兼ねている。
【0024】
この蒸発製氷器2の上部には水蒸気管9の一端が接続されている(図1、図2参照)。この水蒸気管9の他端には水蒸気圧縮機3が接続されている(図1参照)。この水蒸気圧縮機3は蒸発製氷器2内の気体を吸引して負圧にし、これによって貯氷パネル4に貯められた液体状の水冷媒(水)を蒸発させる(図1、図2参照)。水蒸気圧縮機3はさらに別の管10によって凝縮器11と接続されている。この凝縮器11は冷却水管13によって冷却塔12と接続されている。冷却水管13は、これら凝縮器11と冷却塔12とが途中に配置された環状の導水管であり、冷却水を循環させるようになっている(図1参照)。凝縮器11と冷却塔12の間には冷却水を凝縮器11側から冷却塔12側へと送り出す冷却水ポンプ14が設けられている。冷却水管13を循環する冷却水は凝縮器11において水蒸気の熱を奪い凝縮させる。熱をもらい受けた冷却水は冷却塔12にてこの熱を放熱した後、再び凝縮器11へと送り込まれる(図1参照)。
【0025】
さらに、このスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1における熱交換器8は、冷水管6によって蒸発製氷器2と接続されており、冷水の循環系統に組み込まれた形となっている(図1等参照)。熱交換器8は、冷水と空気との間で熱交換を行う冷水−空気熱交換器、あるいは冷水と他の液体との間で熱交換を行う冷水−液体熱交換器である。また、冷水管6の途中には冷水ポンプ7およびバルブ15,16が設けられている(図2参照)。冷水管6は、循環する冷水を複数段ある貯氷パネル4のうちの最上段へ供給し、各パネルを通って流下する冷水を再び循環させて熱交換器8へと送り出すように配管されている(図3、図4参照)。熱交換器8では、冷水管6を流れる冷水と空気との間、あるいは当該冷水と他の液体との間で熱交換を行う。
【0026】
貯氷パネル4には単数好ましくは複数の通過孔5が設けられており、製氷時(冷熱を蓄える時)においては水蒸気がこの通過孔5を下から上へと通過し、解氷時(冷熱を取り出す時)には冷水がこの通過孔5を上から下へと通過することができるようになっている(図5参照)。これら通過孔5の周囲は、上側へと出っ張って周壁のようになっていることが好ましい(図2等参照)。こうした場合、そのフランジ部分の出っ張り高さの分だけ貯氷パネル4上に液体状の水冷媒(水)を張ることが可能となる(図3、図4参照)。出っ張り高さを超える分の水はこの通過孔5をオーバーフローし、その下段の貯氷パネル4上に流れ落ちる(図3、図4参照)。この場合、流れ落ちた水が直下の貯氷パネル4上に貯まるようにするという観点からすれば、上下の貯氷パネル4間において通過孔5は十分にずらして配置することが好ましい。こうすることによって、水が最上段から最下段までの全てのパネル内を流れることが可能となる。
【0027】
また、これら貯氷パネル4は蒸発製氷器2内に多数枚設置されていることが好ましい。こうすることにより水冷媒の気液界面の面積が大きくなり、その分だけ製氷時(冷熱を蓄える時)に水蒸気を発生させやすくなる。また、水蒸気発生能力は保持しつつ蒸発製氷器2を小型化することも可能となる。
【0028】
続いて、本実施形態のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1における動作について説明する。
【0029】
まず、製氷運転モード(図1、図2参照)においては、冷水ポンプ7を停止させた状態で水蒸気圧縮機3を運転する。蒸発製氷器2内の圧力と温度を三重点以下まで下げることにより貯氷パネル4上の水冷媒が蒸発あるいは昇華する。この際、吸熱に伴い連続的に製氷が行われる。このように本実施形態では、製氷運転モードにおいて冷水ポンプ7を停止することから、冷水管6の凍結閉塞(冷水管6の内側に氷が付着、成長、合体することによって管内流路が氷で塞がれてしまうこと)の防止策が不要になる。したがって、例えばこの冷水管6を外側から加熱する温ブライン等の設備を設置せずに済む。
【0030】
一方、解氷運転モード(図3、図4参照)においては、水蒸気圧縮機3を停止させ、蒸発製氷器2内を大気に開放して大気圧下とし、冷水ポンプ7を運転して冷却負荷側の熱交換器8に冷水を供給する。冷水は冷却負荷側の熱交換器8にて受熱し温度が上昇した後、蒸発製氷器2の上部まで移動し、最上段の貯氷パネル4に供給される。この冷水は貯氷パネル4上の氷と直接接触熱交換して所定の温度まで冷やされた後、蒸発製氷器2の下部から再び熱交換器8へと供給される(図3参照)。ちなみに、以上のような解氷運転モードのとき冷水ポンプ7は大気圧下で動作することになるため、冷水ポンプ7の運転に必要な吸い込みヘッド分(すなわち、蒸発製氷器2下端と冷水ポンプ7との高さの差)は、例えばダイナミック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムにおける氷−水スラリーポンプのように低圧(三重点圧力)下で動作する場合(一例として、この場合であればヘッド分として2m程度必要)よりも小さくて済む。このため、本実施形態のようなスタティック型の水冷媒ヒートポンプ製氷システム1は、システム全体の小型化・コンパクト化を図るうえで従前のダイナミック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムよりも有利である。なお、上記の解氷運転モード時に大気圧下以外で動作すること自体は可能だが、大気圧下で解氷運転することは、冷水ポンプの吸い込みヘッドを小さくするという点で好ましい。
【0031】
本実施形態のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1においては、蒸発製氷器2は貯氷タンクを兼ねることから、ダイナミック型のような氷−水スラリーの攪拌・搬出が不要であり、その結果として、蒸発製氷器2の内側壁面への氷の付着・成長を防ぐ必要もないという特長を有する。また、水冷媒と冷水と氷の間で直接接触熱交換をすることができる。以上のことからこのスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1は、氷−水スラリーの攪拌・搬出、蒸発製氷器2の壁面加熱、循環水管の加熱が全て不要であり、また、蒸発製氷器2における蒸発面積が大きいことから、補助的な設備を含むシステム全体で見た場合の省スペース化・低コスト化・省エネ化が期待できる。
【0032】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態においては図1等に示したように単一の蒸発製氷器2を備えたスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1を説明したが、複数(例えば2個)の蒸発製氷器2を備えたシステムとすることもできる(図6参照)。このようなシステムとした場合、両蒸発製氷器2に役割分担させれば単一のシステムにおいて製氷運転と解氷運転とを同時に実施することも可能となり、例えば図6に示すように一方の蒸発製氷器2(蒸発製氷器2a)にて製氷運転を行い、これと同時に他方の蒸発製氷器2(蒸発製氷器2b)にて解氷運転を行うことができるようになる。
【0033】
また、上述した実施形態において説明したスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1(蒸発製氷器2が単一のもの、図1および図2参照)は冷却負荷がないかまたは少ない時間帯(例えば夜間)に製氷運転を実施することが好ましく、原則としてはこのような動作が基本になる。しかし動作時間帯がこれに限られるということはなく、例えば冷却負荷が少なくなる時間帯がないような場合であれば、図6に示したように蒸発製氷器2を複数用意し、冷水を供給する蒸発製氷器(図6の蒸発製氷器2b参照)と氷を生成する蒸発製氷器(図6の蒸発製氷器2a参照)とで役割分担することができる。こうすることにより、一つのシステムで製氷運転と解氷運転を同時に行い、蓄冷熱をしながら冷却負荷に対応することが可能となる(図6参照)。あるいは、スタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム1自体を複数用意し、製氷運転するシステムと解氷運転するシステムとに分けて蓄冷熱をしながら冷却負荷に対応することも可能である。
【0034】
さらに、本実施形態では製氷器2内に設置される貯氷パネル4の好適例として水平に複数段配置されるパネルを説明したが、所定量の水冷媒を貯めておくことができ、攪拌が不要な程度の気液界面領域(面積)を確保しうるものであればこのように水平でなくてもよく、例えば傾斜して設置されるがある程度の気液界面を確保した状態で水冷媒を張ることのできる容器などを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかるスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムの構成および製氷運転モード時における動作を示す図である。
【図2】図1に示した蒸発製氷器およびその周辺の拡大図である。
【図3】スタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムの構成および解氷運転モード時における動作を示す図である。
【図4】図3に示した蒸発製氷器およびその周辺の拡大図である。
【図5】貯氷パネルの一例を示す平面図である。
【図6】本発明の別の実施形態を示す図で、2個の蒸発製氷器を備えたスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムの一例を表したものである。
【図7】従来のダイナミック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムを示す図である。
【図8】従来のダイナミック型水冷媒ヒートポンプ製氷システムを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 スタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム
2 蒸発製氷器
3 水蒸気圧縮機
4 貯氷パネル
5 通過孔
6 冷水管
7 冷水ポンプ
8 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の水冷媒の蒸発により製氷して蓄冷する蒸発製氷器と、この蒸発製氷器中の気体状の水冷媒を吸引し当該蒸発製氷器中の液体状の水冷媒を蒸発させて冷却させる水蒸気圧縮機と、前記蒸発製氷器中に複数段設置され前記液体状の水冷媒あるいは固体状の水冷媒を貯めることが可能な貯氷パネルと、前記液体状の水冷媒および気体状の水冷媒のいずれもが通過可能なように前記貯氷パネルに設けられた通過孔と、前記蒸発製氷器の底部から前記液体状の水冷媒を最上段の前記貯氷パネルに供給して循環させる冷水管と、該冷水管に設けられた冷水ポンプと、前記水冷媒と他の熱媒体との間で熱交換を行うため前記冷水管の途中に設置された熱交換器とを備えることを特徴とするスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム。
【請求項2】
前記貯氷パネルに設けられた通過孔の周囲が上側へと出っ張って周壁状になっていることを特徴とする請求項1に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム。
【請求項3】
前記蒸発製氷器を複数備えることを特徴とする請求項1または2に記載のスタティック型水冷媒ヒートポンプ製氷システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−46871(P2006−46871A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232031(P2004−232031)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)